JP4009902B2 - ポリエステルの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボトルをはじめとして、フィルム、シート等の包装材料およびタイヤコ−ド等の産業資材用繊維などに用いられるポリエステルの製造方法に関し、さらに詳しくは、異物をほとんど含まず、透明性に優れた中空成形体等を与え、また、成形体の成形時に金型汚れが発生しにくいポリエステルや、製膜時および紡糸時のフィルタ−詰まりが少なく、操業性の改善されたポリエステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルは機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリヤー性に優れているので、特にジュース、清涼飲料、炭酸飲料などの飲料充填用容器や、包装用フイルム、オ−ディオ・ビデオ用フイルム等の素材として最適であり、大量に使用されている。
【0003】
また、衣料用繊維やタイヤコ−ドなどの産業資材としても世界的な規模で大量に使用されている。
一般にポリエステルは、副生物であるアセトアルデヒドを含有する。ポリエステル中のアセトアルデヒド含有量が多い場合には、これから成形された容器やその他包装の材質中のアセトアルデヒド含有量も多くなり、前記の容器等に充填された前記の飲料の風味や臭いに影響を及ぼす。したがって、従来よりポリエステル中のアセトアルデヒド含有量を低減させるために種々の方策が採られており、溶融重縮合プレポリマ−を固相重合するのが代表的な方法である。
【0004】
このようなポリエステルを射出成形機などの成形機に供給して中空成形体用プリフォームを成形し、このプリフォームを所定形状の金型に挿入し延伸ブロー成形したあと、ボトルの胴部を熱処理(ヒートセット)して中空成形容器に成形され、さらには必要に応じてボトルの口栓部を熱処理(口栓部結晶化)させるのが一般的である。
【0005】
溶融重縮合ポリエステルプレポリマ−は、溶融重縮合終了後に細孔から押出され、冷却水で冷却しながらチップ化される。このチップ化工程での冷却水として蒸留水を用いるとコストの面から不利であるため、河川からの水や地下水、排水等を簡易処理した工業用水を用いるのが一般的である。しかしながら、工業用水を用いて冷却処理をした場合、得られた成形容器の内容物の風味や香りが非常に悪くなるという問題が起こる場合が多々あり、この解決が待たれていた。また、このような場合、得られたポリエステルの成型時での結晶化が早過ぎ、透明性の悪いボトルになったり、また口栓部結晶化による口栓部の収縮が規格内に納まらずにキャッピング不良となる問題もあった。
【0006】
本発明者らの検討結果によると、これはチップ化工程において、工業用水に含まれている自然界由来の細菌、バクテリア等や、腐敗した植物、動物に起源を有する有機粒子や有機化合物等の含有量が一定値以上の場合、これらの物質がポリエステルチップの表面に吸着、浸透して、成形容器の内容物の風味や臭い等に悪影響を与えていることが判った。また、工業用水に含まれているナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素(珪酸)等の金属含有物質の含有量が一定値より多い場合、これらの金属の酸化物や水酸化物等の金属含有物質がポリエステルチップに付着、浸透して、成形時での結晶化が促進され、透明性の悪いボトルとなることがわかった。さらには金属含有物質が、チップ化工程の冷却槽や冷却水配管にスケ−ルとなって付着するため、これらの洗浄を困難にさせる等の問題が生じた。特にナトリウムの含有はスケールの発生は起こらないものの、ナトリウムイオンがチップ表面層に浸透し、このナトリウムイオンを核として結晶化が進むため、ボトルを白化させる大きな要因となっていた。
【0007】
また、チップ化工程においてチップ表面に付着して固相重合反応装置に持ち込まれた前記の金属含有物質は、ポリエステルチップの表面層の一部と共に固相重合装置の器壁に固着し、これが約170℃以上の高温度での長時間加熱によって金属含有量の高いスケ−ルとなって器壁に付着していく。そして、これが時々剥離してポリエステルチップ中に混入し、ボトル等成形体中の異物となって商品価値を低下さす場合があった。
【0008】
また、フイルムや繊維を製造する際には、紡糸時や製膜時に前記のスケ−ルが溶融ポリマ−濾過フィルタ−に詰まるためフィルタ−濾過圧の上昇が激しくなり、操業性や生産性が悪くなるという問題もあった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の問題点を解決することにあり、異物をほとんど含まず、透明性に優れた中空成形体等を与え、また、成形体の成形時に金型汚れが発生しにくいポリエステルおよびフィルタ−濾過圧上昇の少ないポリエステルを製造する方法に関するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のポリエステルの製造方法は、ナトリウムの含有量(N)、マグネシウムの含有量(M)、珪素の含有量(S)及びカルシウムの含有量(C)が、下記の(1)〜(4)の少なくとも一つを満足する冷却水を用いて冷却しながらチップ化した溶融重縮合ポリエステルプレポリマ−を固相重合するポリエステルの製造方法であって、固相重合ポリエステル中に含まれるファインの融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度が、265℃以下であることを特徴とするポリエステルの製造方法である。
N ≦1.0(ppm) (1)
M ≦0.5(ppm) (2)
S ≦2.0(ppm) (3)
C ≦1.0(ppm) (4)
【0011】
この場合において、チップ化工程の冷却水として、少なくともイオン交換装置で処理した水を使用することができる。
【0012】
この場合において、前記の溶融重縮合ポリエステルプレポリマ−および/または固相重合後のポリエステルからファインおよび/またはフイルム状物を除去することができる。
【0013】
この場合において、前記の固相重合前のポリエステルのファイン含有量、フイルム状物含有量、あるいはファイン含有量とフイルム状物含有量の合計含有量のいずれかの含有量が500ppm以下であることができる。
【0014】
この場合において、固相重合ポリエステルのファイン含有量が5000ppm以下であることができる。
【0015】
ここで、ファインとはJIS−Z8801による呼び寸法1.7mmの金網をはった篩いを通過したポリエステルの微粉末を意味し、またフイルム状物とはJIS−Z8801による呼び寸法5.6mmの金網をはった篩い上に残ったポリエステルのうち、2個以上のチップが融着したり、あるいは正常な形状より大きく切断されたチップ状物を除去後のフイルム状物を意味し、これらの含有量は下記の測定法によって測定する。
【0016】
この場合において、ポリエステルが、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする、極限粘度が0.55〜2.0デシリットル/グラムのポリエステルであることができる。
【0017】
この場合において、ポリエステルが、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする、極限粘度が0.67〜1.5デシリットル/グラム、アセトアルデヒド含有量が10ppm以下、環状3量体含有量が0.5重量%以下、ファイン含有量が500ppm以下、射出成形して得られた成形板のヘイズが15%以下、かつDSCで測定した成形板の昇温時の結晶化温度(以下「Tc1」と称することがある)が150〜175℃の範囲であるポリエステルであることができる。
【0018】
また、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルの場合、固相重合ポリエステル中に含まれるファインの、融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度が、265℃以下であることができる。
【0019】
ここで、下記に記載するように、ファインの融点は示差走査熱量計(DSC)を用いて測定し、DSCの融解ピ−ク温度を融点と呼ぶ。そして、この融点を表す融解ピ−クは、1つ、またはそれ以上の複数の融解ピ−クから構成され、本発明では、融解ピークが1つの場合には、そのピーク温度を、また融解ピ−クが複数個の場合には、これらの複数の融解ピ−クの内、最も高温側の融解ピ−ク温度を、「ファインの融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度」と称して、実施例等においては「ファインの融点」とする。
【0020】
この場合において、前記の固相重合ポリエステルを水と接触処理させることができる。
【0021】
この場合において、前記の固相重合ポリエステルをポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタ−ル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を配合させることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリエステルの製造方法の実施の形態を具体的に説明する。
本発明に係るポリエステルは、好ましくは、主として芳香族ジカルボン酸成分とグリコ−ル成分とから得られる結晶性ポリエステルであり、さらに好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の85モル%以上含むポリエステルであり、特に好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の95モル%以上含むポリエステルである。
【0023】
本発明に係るポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体等が挙げられる。
【0024】
また本発明に係るポリエステルを構成するグリコ−ル成分としては、エチレングリコ−ル、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール等が挙げられる。
前記ポリエステル中に共重合して使用される酸成分としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニ−ル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマ−酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0025】
前記ポリエステル中に共重合して使用されるグリコ−ル成分としては、エチレングリコ−ル、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコ−ル、ポリブチレングリコ−ル等のポリアルキレングリコ−ルなどが挙げられる。
【0026】
更にポリエステルが実質的に線状である範囲内で多官能化合物、例えばトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロ−ルプロパン等を共重合してもよく、また単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0027】
本発明に係るポリエステルの好ましい一例は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレート単位を85モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのはエチレンテレフタレート単位を95モル%以上含む線状ポリエステル、即ち、ポリエチレンテレフタレ−ト(以下、PETと略称)である。
【0028】
また本発明に係るポリエステルの好ましい他の一例は、主たる繰り返し単位がエチレン−2、6−ナフタレートから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2、6−ナフタレート単位を85モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのは、エチレン−2、6−ナフタレート単位を95モル%以上含む線状ポリエステル、即ち、ポリエチレンナフタレ−トホモポリマーまたはコポリマーである。
【0029】
また本発明に係るポリエステルの好ましいその他の例としては、プロピレンテレフタレート単位を85モル%以上含む線状ポリエステル、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート単位を85モル%以上含む線状ポリエステル、またはブチレンテレフタレート単位を85モル%以上含む線状ポリエステルである。
上記のポリエステルは、従来公知の製造方法によって製造することが出来る。即ち、PETの場合には、テレフタール酸とエチレングリコール及び必要により他の共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコール及び必要により他の共重合成分を反応させてメチルアルコールを留去しエステル交換させた後、減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。ついで極限粘度を増大させ、アセトアルデヒド含有量等を低下させる為に固相重合を行う。固相重合前の結晶化促進のため、溶融重合ポリエステルを吸湿させたあと加熱結晶化させたり、また水蒸気を直接ポリエステルチップに吹きつけて加熱結晶化させたりしてもよい。
【0030】
前記溶融重縮合反応は、回分式反応装置で行っても良いし、また連続式反応装置で行っても良い。これらいずれの方式においても、溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。固相重合反応は、溶融重縮合反応と同様、回分式装置や連続式装置で行うことが出来る。溶融重縮合と固相重合は連続で行っても良いし、分割して行ってもよい。
【0031】
以下にはポリエチレンテレフタレートを例にして連続方式での好ましい製造方法の一例について説明する。
まず、エステル化反応により低重合体を製造する場合について説明する。テレフタル酸またはそのエステル誘導体1モルに対して1.02〜1.5モル、好ましくは1.03〜1.4モルのエチレングリコールが含まれたスラリーを調整し、これをエステル化反応工程に連続的に供給する。
【0032】
エステル化反応は、少なくとも2個のエステル化反応器を直列に連結した多段式装置を用いてエチレングリコールが還流する条件下で、反応によって生成した水またはアルコールを精留塔で系外に除去しながら実施する。第1段目のエステル化反応の温度は240〜270℃、好ましくは245〜265℃、圧力は0.2〜3kg/cm2G、好ましくは0.5〜2kg/cm2Gである。最終段目のエステル化反応の温度は通常250〜280℃好ましくは255〜275℃であり、圧力は通常0〜1.5kg/cm2G、好ましくは0〜1.3kg/cm2Gである。3段階以上で実施する場合には、中間段階のエステル化反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらのエステル化反応の反応率の上昇は、それぞれの段階で滑らかに分配されることが好ましい。最終的にはエステル化反応率は90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。これらのエステル化反応により分子量500〜5000程度の低次縮合物が得られる。
【0033】
上記エステル化反応は原料としてテレフタル酸を用いる場合は、テレフタル酸の酸としての触媒作用により無触媒でも反応させることができるが重縮合触媒の共存下に実施してもよい。
【0034】
また、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの第3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムなどの水酸化第4級アンモニウムおよび炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの塩基性化合物を少量添加して実施すると、ポリエチレンテレフタレートの主鎖中のジオキシエチレンテレフタレート成分単位の割合を比較的低水準(全ジオール成分に対して5モル%以下)に保持できるので好ましい。
【0035】
次に、エステル交換反応によって低重合体を製造する場合は、テレフタル酸ジメチル1モルに対して1.1〜1.6モル、好ましくは1.2〜1.5モルのエチレングリコールが含まれた溶液を調整し、これをエステル交換反応工程に連続的に供給する。
【0036】
エステル交換反応は、1〜2個のエステル交換反応器を直列に連結した装置を用いてエチレングリコールが還留する条件下で、反応によって生成したメタノールを精留塔で系外に除去しながら実施する。第1段目のエステル交換反応の温度は180〜250℃、好ましくは200〜240℃である。最終段目のエステル交換反応の温度は通常230〜270℃、好ましくは240〜265℃であり、エステル交換触媒として、Zn,Cd,Mg,Mn,Co,Ca,Baなどの脂肪酸塩、炭酸塩やPb,Zn,Sb,Ge酸化物等を用いる。これらのエステル交換反応により分子量約200〜500程度の低次縮合物が得られる。
【0037】
前記の出発原料であるジメチルテレフタレート、テレフタル酸またはエチレングリコールとしては、パラキシレンから誘導されるバージンのジメチルテレフタレート、テレフタル酸あるいはエチレンから誘導されるエチレングリコールは勿論のこと、使用済みPETボトルからメタノール分解やエチレングリコール分解などのケミカルリサイクル法により回収したジメチルテレフタレート、テレフタル酸、ビスヒドロキシエチルテレフタレートあるいはエチレングリコールなどの回収原料も、出発原料の少なくとも一部として利用することが出来る。前記回収原料の品質は、使用目的に応じた純度、品質に精製されていなければならないことは言うまでもない。
【0038】
次いで得られた低次縮合物は多段階の液相縮重合工程に供給される。重縮合反応条件は、第1段階目の重縮合の反応温度は250〜290℃、好ましくは260〜280℃であり、圧力は500〜20Torr、好ましくは200〜30Torrで、最終段階の重縮合反応の温度は265〜300℃、好ましくは275〜295℃であり、圧力は10〜0.1Torr、好ましくは5〜0.5Torrである。3段階以上で実施する場合には、中間段階の重縮合反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらの重縮合反応工程の各々において到達される極限粘度の上昇の度合は滑らかに分配されることが好ましい。
【0039】
重縮合反応は、重縮合触媒を用いて行う。重縮合触媒としては、Ge、Sb、Ti、またはAlの化合物が用いられるが、Ge化合物とTi化合物、Ge化合物とAl化合物、Sb化合物とTi化合物、Sb化合物とGe化合物の混合触媒の使用も好都合である。これらの化合物は、粉体、水溶液、エチレングリコ−ル溶液、エチレングリコ−ルのスラリ−等として反応系に添加される。
【0040】
Ge化合物としては、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム粉末またはエチレングリコールのスラリー、結晶性二酸化ゲルマニウムを水に加熱溶解した溶液またはこれにエチレングリコールを添加加熱処理した溶液等が使用されるが、特に本発明で用いるポリエステルを得るには二酸化ゲルマニウムを水に加熱溶解した溶液、またはこれにエチレングリコールを添加加熱した溶液を使用するのが好ましい。これらの重縮合触媒はエステル化工程中に添加することができる。Ge化合物を使用する場合、その使用量はポリエステル中のGe残存量として10〜150ppm、好ましくは13〜100ppm、更に好ましくは15〜70ppmである。
【0041】
Ti化合物としては、テトラエチルチタネ−ト、テトライソプロピルチタネ−ト、テトラ−n−プロピルチタネ−ト、テトラ−n−ブチルチタネ−ト等のテトラアルキルチタネ−トおよびそれらの部分加水分解物、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン等が挙げられる。Ti化合物は、生成ポリマ−中のTi残存量として0.1〜10ppmの範囲になるように添加する。
Sb化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレ−ト、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられる。
【0042】
Sb化合物は、生成ポリマ−中のSb残存量として50〜250ppmの範囲になるように添加する。
【0043】
また、Al化合物としては、具体的には、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn-プロポキサイド、アルミニウムiso-プロポキサイド、アルミニウムn-ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso-プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに塩基性酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートがとくに好ましい。Al化合物は、生成ポリマ−中のAl残存量として5〜200ppmの範囲になるように添加する。
【0044】
また、本発明のポリエステルの製造方法においては、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を併用してもよい。アルカリ金属、アルカリ土類金属としては、Li,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種であることが好ましく、アルカリ金属ないしその化合物の使用がより好ましい。
【0045】
アルカリ金属ないしその化合物を使用する場合、特にLi,Na,Kの使用が好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。前記のアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、粉体、水溶液、エチレングリコ−ル溶液等として反応系に添加される。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、生成ポリマ−中のこれらの元素の残存量として1〜50ppmの範囲になるように添加する。
【0046】
また、安定剤として種々のP化合物を使用することができる。本発明で使用されるP化合物としては、リン酸、亜リン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニ−ルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジエチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジフェニ−ルエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。P化合物は、生成ポリマ−中のP残存量として1〜1000ppmの範囲になるように前記のポリエステル生成反応工程の任意の段階で添加することができる。
【0047】
このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルプレポリマ−は固相重合される。前記のポリエステルを従来公知の方法によって固相重合する。まず固相重合に供される前記のポリエステルは、不活性ガス下または減圧下あるいは水蒸気または水蒸気含有不活性ガス雰囲気下において、100〜210℃の温度で1〜5時間加熱して予備結晶化される。次いで不活性ガス雰囲気下または減圧下に190〜230℃の温度で1〜30時間の固相重合を行う。
【0048】
前記のようにして得られた溶融重縮合ポリエステルプレポリマ−は、溶融重縮合終了後に細孔から押出され、冷却水で冷却しながらチップ化される。このチップ化工程での冷却水として蒸留水を用いるとコストの面から不利であるため、河川からの水や地下水、排水等、またはこれらを簡易処理した工業用水を用いるのが一般的である。
【0049】
しかしながら、工業用水を用いて冷却処理をした場合、得られた成形容器の内容物の風味や香りが非常に悪くなるという問題や得られたポリエステルの成型時での結晶化が早過ぎ、透明性の悪いボトルになったり、また口栓部結晶化による口栓部の収縮が規格内に納まらずにキャッピング不良となる問題もあった。また、工業用水中の金属化合物が長時間の加熱によってスケ−ルとなって固相重合装置の反応器壁に付着し、これが時々剥離したり、またチップ表面に融着したりしてポリエステルチップに混入し、ボトル等成形体中の異物となって商品価値を低下さすという問題があった。
【0050】
本発明のポリエステルの製造方法では、ナトリウムの含有量(N)、マグネシウムの含有量(M)、珪素の含有量(S)及びカルシウムの含有量(C)が、下記の(1)〜(4)の少なくとも一つを満足する冷却水を用いて冷却しながらチップ化した溶融重縮合ポリエステルプレポリマ−を固相重合することによって上記の問題点を解決するものである。
N ≦ 1.0(ppm) (1)
M ≦ 0.5(ppm) (2)
S ≦ 2.0(ppm) (3)
C ≦ 1.0(ppm) (4)
なお、(1)〜(4)のすべてを満足する水を用いることが好ましい。
【0051】
冷却水中のナトリウム含有量(N)は、好ましくはN≦0.5ppmであり、さらに好ましくはN≦0.1ppmである。
冷却水中のマグネシウム含有量(M)は、好ましくはM≦0.3ppmであり、さらに好ましくはM≦0.1ppmである。
また、冷却水中の珪素の含有量(S)は、好ましくはS≦0.5ppmであり、さらに好ましくはS≦0.3ppmである。
さらに、冷却水中のカルシウム含有量(C)は、好ましくはC≦0.5ppmであり、さらに好ましくはC≦0.1ppmである。
【0052】
また、冷却水中のナトリウム含有量(N)、マグネシウム含有量(M)、珪素の含有量(S)およびカルシウム含有量(C)の下限値は、N≧0.001ppm、M≧0.001ppm、S≧0.02ppmおよびC≧0.001ppmであることが好ましい。このような下限値以下にするには、莫大な設備投資が必要であり、また運転費用も非常に高くなり経済的な生産は困難である。また、逆に結晶化速度が遅くなり過ぎ、結晶収縮の範囲が規格に合わず、ボトルとした場合の口栓部のキャッピング不良が起こることがある。
【0053】
ナトリウムの含有量(N)、マグネシウムの含有量(M)、珪素の含有量(S)及びカルシウムの含有量(C)が、前記の(1)〜(4)を満足する冷却水を用いて冷却しながらチップ化した溶融重縮合ポリエステルプレポリマ−を固相重合したポリエステルからの成形体の透明性は非常に優れており、また紡糸時のフィルタ−詰まりが少なく操業性が非常に安定する。
【0054】
以下にチップの冷却水のナトリウム含有量、マグネシウム含有量、珪素含有量、カルシウム含有量を前記の範囲に抑える方法を例示するが、本発明はこれに限定するものではない。
【0055】
冷却水のナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素を低減させるために、チップ冷却工程に工業用水が送られるまでの工程で少なくとも1ヶ所以上にナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素を除去する装置を設置する。また、粒子状になった二酸化珪素やアルミノ珪酸塩等の粘土鉱物を除去するためにはフィルターを設置する。ナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素を除去する装置としては、イオン交換装置、限外濾過装置や逆浸透膜装置などが挙げられる。
【0056】
また、チップ冷却水として系外から導入する水の中に存在する粒径が1〜25μmの粒子を50000個/10ml以下にした水を使用することが望ましい。導入水中の粒径1〜25μmの粒子の個数は、好ましくは10000個/10ml以下、より好ましくは5000個/10ml以下、さらに好ましくは2000個/10ml以下、特に好ましくは1000個/10ml以下である。
【0057】
導入水中の粒径25μmを越える粒子は、特に規定するものではないが、好ましくは2000個/10ml以下、より好ましくは500個/10ml以下、さらに好ましくは100個/10ml、特に好ましくは10個/10ml以下である。
【0058】
なお、導入水中の粒径1μm未満の粒子に関しては、本発明で特に規定するものではないが、透明な成形体や適正な結晶化速度を持つ成形体を与えるポリエステルを得るためには、少ない方が好ましい。粒径1μm未満の粒子数としては好ましくは100000個/10ml以下、より好ましくは50000個/10ml以下、さらに好ましくは20000個/10ml以下、特に好ましくは10000個/10ml以下である。1μm以下の粒子を水中から除去、コントロールする方法としてはセラミック膜、有機膜等の膜を用いた精密濾過法や限外濾過法等を用いることができる。
【0059】
以下にチップ化工程で導入する導入水中の、粒径1〜25μmの粒子を50000個/10ml以下に制御する方法を例示するが、本発明はこれに限定するものではない。
【0060】
冷却水中の粒径1〜25μmの粒子数を50000個/10ml以下にする方法としては、工業用水等の自然水をチップ化工程に供給するまでの少なくとも1ヶ所以上に粒子を除去する装置を設置する。好ましくは自然界の水の採取口から、前記したチップ化工程に至るまでの間に粒子を除去する装置を設置し、チップ化工程に供給する水中の、粒径1〜25μmの粒子の含有量を50000個/10ml以下にすることが好ましい。粒子を除去する装置としてはフィルター濾過装置、膜濾過装置、沈殿槽、遠心分離器、泡沫同伴処理機等が挙げられる。例えばフィルター濾過装置であれば、方式としてベルトフィルター方式、バグフィルター方式、カートリッジフィルター方式、遠心濾過方式等の濾過装置が挙げられる。中でも連続的に行うにはベルトフィルター方式、遠心濾過方式、バグフィルター方式の濾過装置が適している。またベルトフィルター方式の濾過装置であれば濾材としては、紙、金属、布等が挙げられる。また粒子の除去と導入水の流れを効率良く行なうため、フィルターの目のサイズは5〜100μm、好ましくは10〜70μm、さらに好ましくは15〜40μmがよい。また、これらのフィルターで濾過した後、1μm程度の目のフィルターで濾過することが好ましい。
【0061】
水中の粒径1〜25μmの粒子数の下限は特に規定するものではないが、1個/10ml以上、さらには10個/10ml以上であることが好ましい。水中の粒径1〜25μmの粒子数を1個/10ml未満にしようとすると、設備が大きくなったりし、経済的な生産の面で不利になることがある。
【0062】
また、チップの冷却水は繰り返しリサイクルしながら使用することが経済性、生産性を向上させる点から好ましい。冷却水のリサイクル工程中に、フィルタ−や温度調節機、アセトアルデヒド等の不純物を除去する装置等を設けることができる。また、前記の粒子やナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素を除去する装置を設けることもできる。
【0063】
本発明の製造方法において、ポリエステルのチップの形状は、シリンダ−型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよい。その平均粒径は通常1.5〜5mm、好ましくは1.6〜4.5mm、さらに好ましくは1.8〜4.0mmの範囲である。例えば、シリンダ−型の場合は、長さは1.5〜4mm、径は1.5〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は10〜30mg/個の範囲が実用的である。
【0064】
前記のようにして溶融重縮合されたポリエステルは、チップ化されたあと輸送配管中を貯蔵用サイロや固相重合工程に輸送される。このようなチップの輸送を、例えば空気を使用した強制的な低密度輸送方法で行うと、ポリエステルのチップの表面には配管との衝突によって大きな衝撃力がかかり、この結果ファインやフイルム状物が多量に発生する。
【0065】
このようなファインやフイルム状物はポリエステルの結晶化を促進させる効果を持っており、多量に存在する場合には得られた成形体の透明性が非常に悪くなる。また、このようなファインやフイルム状物等には、下記のようにして測定した融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度が正常な融点より約10〜20℃以上高い融点を持つものが含まれる。また、回転式の固相重合装置を用いて固相重合したり、あるいは次工程への輸送方法としてポリエステルチップに衝撃力やせん断力がかかる送り装置を用いたりする場合にも、融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度が正常な融点より約10〜20℃以上高い融点のファインやフイルム状物が非常に多量に発生する。これは、チップ表面に加わる衝撃力等の大きな力のためにチップが発熱すると同時にチップ表面においてポリエステルの配向結晶化が起こり、緻密な結晶構造が生じるためではないかと推定される。
【0066】
前記のような融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度が正常な融点より約10〜20℃以上高い融点を持つポリエステルのファインやフイルム状物をポリエステルチップと共に固相重合処理したり、また引き続き水との接触処理等の処理をすると、これらの融点は処理前よりさらに高くなる。また、融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度が正常な融点より約10℃以上高くない融点を持つファインやフイルム状物でも、前記のこれらの処理によって、これらの融点は正常な融点より約10〜20℃以上高い融点を持つようになる。これは、これらの処理により、結晶構造がさらに緻密な結晶構造に変化するためであろうと推定される。
【0067】
このような融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度が正常な融点より約10〜20℃以上高い融点のファインやフイルム状物を含むポリエステルを通常の成形条件で成形する場合は、溶融成形時にこのような高融点の結晶が完全に溶融せず、結晶核として残る。この結果、加熱時の結晶化速度が非常に早くなるため中空成形容器の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらなくなり、口栓部のキャッピング不良となり内容物の漏れが生じるという問題が起こる。また中空成形用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となり、厚み斑が生じ、また結晶化速度が速いため得られた中空成形体の透明性が悪くなり、また透明性の変動も大となり問題となる。
【0068】
融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度が正常な融点より約10〜20℃以上高い融点を持つのファイン等を含むポリエステルから透明性や延伸性の良好な中空成形用予備成形体やシ−ト状物を得ようとする場合には、正常な融点より約30〜50℃以上高い温度において溶融成形しなければならない。ところが、このような高温度では、ポリエステルの熱分解が激しくなり、アセトアルデヒドやホルムアルデヒド等の副生物が大量に発生し、その結果得られた成形体等の内容物の風味などに大きな影響を及ぼすことになるのである。また、本発明の製造方法で得られたポリエステルに下記のようなポリオレフィン樹脂等の樹脂を配合する場合は、これらの樹脂は本発明に係るポリエステルより熱安定性に劣る場合が多いので、上記のごとく正常な融点より約30〜50℃以上高い温度の成形においては熱分解を起して多量の副生物を発生させるため、得られた成形体等の内容物の風味などにより一層大きな影響を及ぼすことになる。
【0069】
したがって、溶融重縮合工程で溶融重縮合され、次いでチップ化されたポリエステルは、ファインおよび/またはフイルム状物を分離除去するためにファイン等除去工程へ輸送され、次工程で処理される前に、これらを出来るだけ多量に除去することが重要である。
【0070】
ファイン等の除去方法としては、固相重合工程の直前または固相重合後に別々に設置した振動篩工程及び空気流による気流分級工程、重力式分級工程等で処理する方法等が挙げられる。これらの工程をさらに追加してもよい。
【0071】
そして、ファイン等除去工程によってファインおよび/またはフイルム状物を除去した後の溶融重縮合ポリエステルのファイン含有量、フイルム状物含有量、あるいはファイン含有量とフイルム状物含有量の合計含有量のいずれかの含有量を500ppm以下にすることによって上記の問題点を解決するものであり、好ましくは300ppm以下、より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下に低下させるのが望ましい。
【0072】
主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルの場合は、前記のファイン等除去工程によって処理されたポリエステル中に含まれるファインおよび/またはフイルム状物の、融解ピ−ク温度の最も高温側の融解ピ−ク温度が265℃を超える場合には、前記の理由により得られたポリエステルの結晶化速度が早くなりすぎたり、またその変動が非常に大きくなり、得られた中空成形用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となり、厚み斑が生じ、また得られた中空成形体の透明性が悪くなり、また透明性の変動も大となり大きな問題となる。
【0073】
なお本発明においては、下記に記載するように、ファインの融点は示差走査熱量計(DSC)を用いて測定し、DSCの融解ピ−ク温度を融点と呼ぶ。そして、この融点を表す融解ピ−クは、1つ、またはそれ以上の複数の融解ピ−クから構成され、本発明では、融解ピークが1つの場合には、そのピーク温度を、また融解ピ−クが複数個の場合には、これらの複数の融解ピ−クの内、最も高温側の融解ピ−ク温度を、「ファインの融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度」と称して、実施例等においては「ファインの融点」とする。
【0074】
また、融解ピ−ク温度の最も高温側の融解ピ−ク温度が265℃を越えるファインを含まないようにする方法としては、次のような方法が挙げられる。すなわち、溶融重縮合後ダイスより溶融ポリエステルを水中に押出して水中でカットする方式、あるいは大気中に押出した後、直ちに冷却水で冷却しながらカットする方式によってチップ化し、ついでチップ状に形成したポリエステルチップを水切り後、振動篩工程および空気流による気流分級工程によって所定のサイズ以外の形状のチップやファインやフイルム状物を除去し、プラグ輸送方式やバケット式コンベヤ−輸送方式により貯蔵用タンクに送る。
【0075】
前記のタンクからのチップの抜出はスクリュ−式フィ−ダ−により、次工程へはプラグ輸送方式やバケット式コンベヤ−輸送方式によって輸送し、固相重合工程の直前に空気流による気流分級工程、あるいは振動式篩分工程等を設けてファイン除去処理を行う。また、前記のファインやフイルム状物の除去処理を行った溶融重縮合ポリエステルを、固相重合工程直前で空気流による気流分級工程、あるいは振動式篩分工程等によって、再度ファインやフイルム状物の除去を行い、固相重合工程へ直接投入することもできる。溶融重縮合したプレポリマ−チップを固相重合設備へ輸送する際や固相重合後のポリエステルチップを篩分工程、水処理工程や貯槽等へ輸送する際には、これらの輸送の大部分はプラグ輸送方式やバケット式コンベヤ輸送方式を採用し、また結晶化装置や固相重合反応器からのチップの抜出しはスクリュ−フィ−ダ−を使用するなどして、チップと工程の機器や輸送配管等との衝撃を出来るだけ抑えることができる装置を使用する。
【0076】
また前記の固相重合ポリエステルは、ファインおよび/またはフイルム状物を分離除去するためにファイン等除去工程へ輸送され、次工程で処理される前に、これらを出来るだけ多量に除去することが重要である。そして本発明では、ファイン等除去工程によってファインおよび/またはフイルム状物を除去した後の固相重合ポリエステルのファイン含有量を5000ppm以下にすることによって上記の問題点を解決するものであり、好ましくは3000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下、最も好ましくは100ppm以下に低下させるのが望ましい。
【0077】
したがって、本発明によって得られる主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルの場合は、ファイン等除去工程によって処理されたポリエステル中に含まれるファインの融解ピ−ク温度の最も高温側の融解ピ−ク温度が、265℃以下であることによって上記の問題点を解決するものである。
【0078】
本発明のポリエステルの製造方法によって、回分式固相重合装置または連続式固相重合装置のいずれの装置を用いる場合でも、半年から1年以上の期間に渡って継続的に生産を実施しても、異物をほとんど含まず、透明性に優れた中空成形体等を与える固相重合ポリエステルや、製膜時および紡糸時のフィルタ−詰まりが少なく、操業性の改善された固相重合ポリエステルを得ることが可能となるのである。
【0079】
特に、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルの場合には、溶融重縮合プレポリマ−のチップ化時の冷却水として前記の(1)〜(4)の少なくとも一つを満足する冷却水を用い、ファイン等除去工程によってファインおよび/またはフイルム状物を除去してファイン含有量、フイルム状物含有量、あるいはファイン含有量とフイルム状物含有量の合計含有量のいずれかの含有量を500ppm以下、好ましくは300ppm以下、より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下とした溶融重縮合ポリエステルプレポリマ−を固相重合し、次いでこの固相重合ポリエステルのファイン含有量500ppm以下好ましくは300ppm以下、より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、最も好ましくは30ppm以下に減少さすことによって、射出成形して得られた厚さ5mmの成形板のヘイズが15%以下で、かつ射出成形して得られた厚さ2mmの成形板の昇温時の結晶化温度(Tc1)が150〜175℃の範囲である、中空成形体用途に適した固相重合ポリエステルを得ることができる。成形板のヘイズは好ましくは10%以下、さらに好ましくは8%以下であり、また昇温時の結晶化温度(Tc1)は好ましくは155〜170℃、さらに好ましくは158〜168℃の範囲である。
【0080】
成形板のヘイズが15%を超える場合は,得られた中空成形体の透明性が悪くなり、特に延伸中空成形体の場合には問題となる。また、Tc1が175℃を越える場合は、加熱結晶化速度が非常に遅くなり中空成形体口栓部の結晶化が不十分となり、内容物の漏れの問題が発生する。また、Tc1が150℃未満の場合は、中空成形体の透明性が低下し問題となる。
【0081】
本発明の製造方法によって得られるポリエステル、特に、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルの極限粘度は0.55〜2.00デシリットル/グラム、好ましくは0.60〜1.70デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.70〜1.50デシリットル/グラムの範囲である。極限粘度が0.55デシリットル/グラム未満では、得られた成形体等の機械的特性が悪い。また、2.00デシリットル/グラムを越える場合は、成型機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加したり、成形体が黄色に着色する等の問題が起こる。
【0082】
また本発明の製造方法によって得られるポリエステル、特に、主たる繰り返し単位がエチレン−2、6−フタレートから構成されるポリエステルの極限粘度は0.40〜1.50デシリットル/グラム、好ましくは0.42〜1.00デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.45〜0.90デシリットル/グラムの範囲である。極限粘度が0.40デシリットル/グラム未満では、得られた成形体等の機械的特性が悪い。また、1.50デシリットル/グラムを越える場合は、成型機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加したり、成形体が黄色に着色する等の問題が起こる。
【0083】
また、本発明の製造方法によって得られるポリエステルのアセトアルデヒド含有量は10ppm以下、好ましくは8ppm以下、更に好ましくは5ppm以下、ホルムアルデヒド含有量は7ppm以下、好ましくは6ppm以下、更に好ましくは4ppm以下である。アセトアルデヒド含有量が10ppmを超える場合やホルムアルデヒド含有量が7ppmを消える場合は、このようなポリエステルから得られた成形体等の内容物の風味や臭い等が悪くなる。
【0084】
また、本発明の製造方法によって得られるポリエステルに共重合されたジエチレングリコール量は前記のポリエステルを構成するグリコール成分の1.0〜5.0モル%、好ましくは1.3〜4.5モル%、更に好ましくは1.5〜4.0モル%である。ジエチレングリコール量が5.0モル%を越える場合は、熱安定性が悪くなり、成型時に分子量低下が大きくなったり、またアセトアルデヒド含有量やホルムアルデヒド含有量の増加量が大となり好ましくない。またジエチレングリコ−ル含有量が1.0モル%未満の場合は、得られた成形体の透明性が悪くなる。
【0085】
また、本発明の製造方法によって得られるポリエステルの環状3量体の含有量は0.5重量%以下、好ましくは0.45重量%以下、さらに好ましくは0.40重量%以下である。本発明のポリエステルから耐熱性の中空成形体等を成形する場合は加熱金型内で熱処理を行うが、環状3量体の含有量が0.5重量%以上含有する場合には、加熱金型表面へのオリゴマー付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する。
【0086】
ポリエステルは、環状三量体などのオリゴマー類が成形時に金型内面や金型のガスの排気口、排気管等に付着することによる金型汚れ等を防止するために、固相重合の後に水との接触処理を行なう。
【0087】
このような水との接触処理の効果は、下記の方法によってポリエステルを窒素雰囲気下で290℃で60分間溶融させた後の環状3量体増加量(△CT量)によって判定し、環状3量体増加量(△CT量)は0.50重量%以下、好ましくは0.30重量%以下、さらに好ましくは0.10重量%以下が望ましい。
前記のポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法を次に述べる。
【0088】
熱水処理方法としては、水中に浸ける方法やシャワ−でチップ上に水をかける方法等が挙げられる。処理時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間で、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
【0089】
以下に水処理を工業的に行う方法を例示するが、これに限定するものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えないが、工業的に行うためには連続方式の方が好ましい。
【0090】
ポリエステルのチップをバッチ方式で水処理する場合は、サイロタイプの処理槽が挙げられる。すなわちバッチ方式でポリエステルのチップをサイロへ受け入れ水処理を行う。ポリエステルのチップを連続方式で水処理する場合は、塔型の処理槽に継続的又は間欠的にポリエステルのチップを上部より受け入れ、水処理させることができる。
【0091】
そして、水処理方法が連続方式の場合であってもバッチ的の場合であっても、系外から導入する水の中に存在する粒径が1〜25μmの粒子の個数をX、ナトリウムの含有量をN、マグネシウムの含有量をM、カルシウムの含有量Cを、珪素の含有量をSとした場合、下記(5)〜(9)の少なくとも一つを満足させて水処理を行う。
1 ≦ X ≦ 50000 (個/10ml) (5)
0.001 ≦ N ≦ 1.0 (ppm) (6)
0.001 ≦ M ≦ 0.5 (ppm) (7)
0.001 ≦ C ≦ 1.0 (ppm) (8)
0.01 ≦ S ≦ 2.0 (ppm) (9)
【0092】
水処理槽に導入する水中の粒子個数、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、珪素の含有量のいずれかを上記範囲に設定することにより、スケ−ルと呼ばれる酸化物や水酸化物等の金属含有物質が処理水中に浮遊、沈殿、さらには処理槽壁や配管壁に付着したりし、これがポリエステルチップに付着、浸透して、成形時での結晶化が促進され、透明性の悪いボトルになることを防ぐことができる。
【0093】
水処理槽に導入する水中の粒子数を50000個/10ml以下にする方法としては、工業用水等の自然水を処理槽に供給するまでの工程の少なくとも1ヶ所以上に粒子を除去する装置を設置する。好ましくは自然界の水の採取口から、前記した処理槽、処理槽から排水した水を再度処理槽に戻す配管、ファイン除去装置等、水処理に必要な付帯設備を含めた処理装置に至るまでの間に粒子を除去する装置を設置し、処理装置に供給する水中の、粒径1〜25μmの粒子の含有量を1〜50000個/10ml以下にすることが好ましい。粒子を除去する装置としてはチップ冷却水中の粒子除去に使用するのと同様の装置が挙げられる。
【0094】
また水処理槽に導入する水中のナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素を低減させるために、工業用水等の自然水を処理槽に供給するまでの工程で少なくとも1ヶ所以上にナトリウムやマグネシウム、カルシウム、珪素を除去する装置を設置する。これらの装置としてはチップ冷却水の処理に使用するのと同様の装置が挙げられる。
【0095】
水処理の方法が連続的、又はバッチ的のいずれの場合であっても、処理槽から排出した処理水のすべて、あるいは殆どを工業排水としてしまうと、新しい水が多量に入用であるばかりでなく、排水量増大による環境への影響が懸念される。即ち、処理槽から排出した少なくとも一部の処理水を、水処理槽へ戻して再利用することにより、必要な水量を低減し、また排水量増大による環境への影響を低減することが出来、さらには水処理槽へ返される排水がある程度温度を保持していれば、処理水の加熱量も小さく出来るため、処理層から排出された処理水は水処理層へ戻して再利用されることが好ましい。また、水を再利用させることで処理層中の処理水の流量を上げることができ、結果としてポリエステルチップに付着したファインやフイルム状物を洗い流すことができるため、ファイン等の除去効果も生まれる。ここで、水処理槽から排出された後、再び処理槽に戻して再利用される処理水としては、水処理槽のオ−バ−フロ−口から排出された水と処理槽よりポリエステルチップと共に排出され、次いで前記チップから分離された処理水がある。
【0096】
しかし、水処理において処理槽から排出される処理水には、処理槽にポリエステルチップを受け入れる段階で既にポリエステルチップに付着しているファインやフイルム状物、水処理時にポリエステルチップ同士あるいは処理槽壁との摩擦で発生するポリエステルのファインやフイルム状物が含まれている。また新しい処理水中にも無機物質由来の微粒子や腐敗植物、動物に起因する有機微粒子等が含まれている。
【0097】
したがって、処理槽から排出した処理水を再度処理槽へ戻して再利用すると、処理槽内の処理水に含まれるファイン量や微粒子量は次第に増加し、処理水中に含まれているファイン、フイルム状物や微粒子が処理槽壁や配管壁に付着して、配管を詰まらせる場合があった。
【0098】
また処理水中に含まれているファイン、フイルム状物や微粒子がポリエステルチップに付着し、この後、水分を乾燥除去する段階でポリエステルチップにファイン、フイルム状物や微粒子が付着あるいは浸透するため、ポリエステルのファイン、フイルム状物や微粒子の含有量が非常に多くなり、このようにして得られたポリエステルは結晶性が促進されて、得られたボトルの透明性は悪くなり、またボトル口栓部結晶化時の結晶化度が過大となって口栓部の寸法が規格に入らなくなり、そのため口栓部のキャッピング不良、内容物の漏れが生じる場合があった。
【0099】
したがって、本発明においては、水処理層へ供給または充填するポリエステルのファイン含有量、フイルム状物含有量、あるいはファイン含有量とフイルム状物含有量の合計含有量のいずれかの含有量を約500ppm以下、好ましくは300ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下に制限することによって上記の問題点を解決することが好ましい。ファイン等含有量が500ppmを越える場合には、処理槽内の処理水中のファイン等含有量が急激に増加するため配管を詰まらせたりするし、また処理後のポリエステルチップに付着したファイン含有量が多くなり、このファインの影響によって結晶性が促進され、成形体がボトルの場合は透明性の悪いボトルしか得られなくなる。
【0100】
水処理槽に投入するポリエステルのファインやフイルム状物の含有量を減少させる方法としては、例えば固相重合後のポリエステルチップを篩分工程や空気流によるファイン等除去工程を通す方法が挙げられる。
【0101】
また、本発明において、水処理槽から排出された後、少なくともその一部を再度処理槽へ戻して再利用される処理水中に存在する粒径が1〜40μmの粒子を100000個/10ml以下、好ましくは80000個/10ml以下、さらに好ましくは50000個/10ml以下に維持するのが望ましい。ここでは、このようにして処理槽に戻して再利用される処理水をリサイクル水と称する。
【0102】
以下に前記リサイクル水中の粒径が1〜40μmの粒子数を100000個/10ml以下にする方法を例示するが、本発明はこの限りではない。前記リサイクル水中の粒径が1〜40μmの粒子数を100000個/10ml以下にする方法としては、処理槽から排出した処理水が再び処理槽に返されるまでの工程で少なくとも1ヶ所以上にファインと微粒子を除去する装置を設置する。ファインと微粒子を除去する装置としてはフィルタ−濾過装置、膜濾過装置、沈殿槽、遠心分離器、泡沫同伴処理機等が挙げられる。例えばフィルタ−濾過装置であれば、方式として自動自己洗浄方式、ベルトフィルタ−方式、バグフィルタ−方式、カ−トリッジフィルタ−方式、遠心濾過方式等の濾過装置が挙げられる。中でも連続的に行うにはベルトフィルタ−方式、遠心濾過方式、バグフィルタ−方式の濾過装置が適している。またベルトフィルタ−方式の濾過装置であれば濾材としては、紙、金属、布等が挙げられる。またファインの除去と処理水の流れを効率良く行なうため、フィルタ−の目のサイズは5〜100μm、好ましくは5〜70μm、さらに好ましくは5〜40μmがよい。
【0103】
また、系外から導入する水は、水処理槽からチップと共に排出され、次いで濾過等の処理を行ったあと再利用される処理水と一緒にして処理槽へ供給することも可能である。
【0104】
またポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエチレンテレフタレ−ト1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエチレンテレフタレ−トと水蒸気とを接触させる。
【0105】
この、ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
【0106】
以下に粒状ポリエチレンテレフタレ−トと水蒸気または水蒸気含有ガスとの接触処理を工業的に行なう方法を例示するが、これに限定されるものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えない。
【0107】
ポリエステルのチップをバッチ方式で水蒸気と接触処理をする場合は、サイロタイプの処理装置が挙げられる。すなわちポリエステルのチップをサイロへ受け入れ、バッチ方式で、水蒸気または水蒸気含有ガスを供給し接触処理を行なう。
【0108】
ポリエステルのチップを連続的に水蒸気と接触処理する場合は塔型の処理装置に連続で粒状ポリエチレンテレフタレ−トを上部より受け入れ、並流あるいは向流で水蒸気を連続供給し水蒸気と接触処理させることができる。
【0109】
水蒸気または水蒸気含有ガスによる接触処理の場合も、処理する前のポリエステルチップのファイン含有量、フイルム状物含有量、あるいはファイン含有量とフイルム状物含有量の合計含有量のいずれかの含有量を前記の水処理の場合と同様に約500ppm以下に減少させておくことが望ましい。
【0110】
上記の如く、水又は水蒸気で処理した場合は粒状ポリエチレンテレフタレ−トを、例えば振動篩機、シモンカ−タ−などの水切り装置で水切りし、必要に応じて次の乾燥工程へ移送する。
【0111】
水又は水蒸気と接触処理したポリエステルのチップの乾燥は通常用いられるポリエステルの乾燥処理を用いることができる。連続的に乾燥する方法としては、上部よりポリエステルのチップを供給し、下部より乾燥ガスを通気するホッパ−型の通気乾燥機が通常使用される。
【0112】
バッチ方式で乾燥する乾燥機としては大気圧下で乾燥ガスを通気しながら乾燥してもよい。
【0113】
乾燥ガスとしては大気空気でも差し支えないが、ポリエステルの加水分解や熱酸化分解による分子量低下を防止する点からは乾燥窒素、除湿空気が好ましい。
【0114】
本発明においては、このような乾燥後のポリエステルを前記と同様にして篩分工程や空気流によるファイン等除去工程を通すことによって、ポリエステルのファイン含有量を約5000ppm以下、好ましくは3000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下、最も好ましくは100ppm以下に低下させるのが望ましい。
【0115】
また、中空成形体では、用途によってその口栓部を加熱結晶化処理するが、成形条件の変動や加熱条件の変動によって結晶化のコントロ−ルが難しい場合があり、不良品が大量に発生することがある。このような問題を解決するために、本発明の製造方法においては、前記のポリエステルにポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタ−ル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂を配合させることが望ましい。
【0116】
前記のポリオレフィン樹脂等の配合割合は、0.1ppb〜50000ppm、好ましくは0.3ppb〜10000ppm、より好ましくは0.5ppb〜100ppm、さらに好ましくは1.0ppb〜1ppm、特に好ましくは1.0ppb〜45pbbである。配合量が0.1ppb未満の場合は、結晶化速度が非常におそくなり、中空成形体の口栓部の結晶化が不十分となるため、サイクルタイムを短くすると口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良となったり、また、耐熱性中空成形体を成形する延伸熱固定金型の汚れが激しく、透明な中空成形体を得ようとすると頻繁に金型掃除をしなければならない。また50000ppmを超える場合は、結晶化速度が早くなり、中空成形体の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良となり内容物の漏れが生じたり、また中空成形体用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる。
【0117】
また、シ−ト状物の場合、50000ppmを越えると透明性が非常に悪くなり、また延伸性もわるくなって正常な延伸が不可能で、厚み斑の大きな、透明性の悪い延伸フイルムしか得られない。また、前記のポリオレフィン樹脂等を単独使用する場合は、加熱金型汚れ防止には殆ど効果がないが、特定量のファインとの共存によって金型汚れに非常に効果があることが分かっている。
【0118】
本発明のポリエステルの製造方法において、ポリエステルに配合されるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはα−オレフィン系樹脂が挙げられる。またこれらの樹脂は結晶性でも非晶性でもかまわない。
【0119】
本発明のポリエステルの製造方法において、ポリエステルに配合されるポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンと、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、低・中・高密度ポリエチレン等(分岐状又は直鎖状)のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン系樹脂が挙げられる。
【0120】
また本発明のポリエステルの製造方法において、ポリエステルに配合されるポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンと、エチレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、ブロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体等のプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0121】
また本発明のポリエステルの製造方法において、ポリエステルに配合されるα−オレフィン系樹脂としては、4−メチルペンテン−1等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィンと、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、ブテン−1単独重合体、4−メチルペンテン−1単独重合体、ブテン−1−エチレン共重合体、ブテン−1−プロピレン共重合体等のブテン−1系樹脂や4−メチルペンテン−1とC2〜C18のα−オレフィンとの共重合体、等が挙げられる。
【0122】
また、本発明のポリエステルの製造方法において、ポリエステルに配合されるポリアミド樹脂としては、例えば、ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタムの重合体、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン単位と、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸単位との重縮合体、及びこれらの共重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン8、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/MXD6、ナイロンMXD6/MXDI、ナイロン6/66、ナイロン6/610、ナイロン6/12、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等が挙げられる。またこれらの樹脂は結晶性でも非晶性でもかまわない。
【0123】
また、本発明のポリエステルの製造方法において、ポリエステルに配合されるポリアセタ−ル樹脂としては、例えばポリアセタ−ル単独重合体や共重合体が挙げられる。ポリアセタ−ル単独重合体としては、ASTM−D792の測定法により測定した密度が1.40〜1.42g/cm3、ASTMD−1238の測定法により、190℃、荷重2160gで測定したメルトフロー比(MFR)が0.5〜50g/10分の範囲のポリアセタ−ルが好ましい。
【0124】
また、ポリアセタ−ル共重合体としては、ASTM−D792の測定法により測定した密度が1.38〜1.43g/cm3、ASTMD−1238の測定法により、190℃、荷重2160gで測定したメルトフロー比(MFR)が0.4〜50g/10分の範囲のポリアセタ−ル共重合体が好ましい。これらの共重合成分としては、エチレンオキサイドや環状エ−テルが挙げられる。
【0125】
また、前記のポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂をポリエステルに配合させる方法としては、前記ポリエステルに前記熱可塑性樹脂を、その含有量が前記範囲となるように直接に添加し溶融混練する方法、または、マスタ−バッチとして添加し溶融混練する方法等の慣用の方法によるほか、前記の熱可塑性樹脂を、前記ポリエステルの製造段階、例えば、溶融重縮合時、溶融重縮合直後、予備結晶化直後、固相重合時、固相重合直後等のいずれかの段階、または、製造段階を終えてから成形段階に到るまでの間等、で粉粒体として直接に添加するか、或いは、ポリエステルチップの流動条件下に前記の熱可塑性樹脂製の部材に接触させる等の方法で混入させた後、溶融混練する方法等によることもできる。
【0126】
ここで、ポリエステルチップ状体を流動条件下に前記の熱可塑性樹脂製の部材に接触させる方法としては、前記の熱可塑性樹脂製の部材が存在する空問内で、ポリエステルチップを前記部材に衝突接触させることが好ましく、具体的には、例えば、ポリエステルの溶融重縮合直後、予備結晶化直後、固相重合直後等の製造工程時、また、ポリエステルチップの製品としての輸送段階等での輸送容器充填・排出時、また、ポリエステルチップの成形段階での成形機投入時、等における気力輸送配管、重力輸送配管、サイロ、マグネットキャッチャ−のマグネット部等の一部を前記の熱可塑性樹脂製とするか、または、前記の熱可塑性樹脂をライニングするとか、或いは前記移送経路内に棒状又は網状体等の前記の熱可塑性樹脂製部材を設置する等して、ポリエステルチップを移送する方法が挙げられる。ポリエステルチップの前記部材との接触時間は、通常、0.01秒〜数分程度の極短時間であるが、ポリエステルに前記の熱可塑性樹脂を微量混入させることができる。
【0127】
また、本発明においては、適切な結晶化速度を持ち、結晶化速度変動が少ない成形体を与えるポリエステルを製造するために、ポリエステルを前記の熱可塑性樹脂からなる部材と接触処理させる前に、ポリエステルをファインやフイルム状物を除去する篩分工程や空気流によるファイン等除去工程で処理することによって、ポリエステルのファイン含有量、フイルム状物含有量、あるいはファイン含有量とフイルム状物含有量の合計含有量のいずれかの含有量を500ppm以下に低下させることが望ましい。
【0128】
また一方、前記の熱可塑性樹脂からなる部材とポリエステルを接触処理させる場合、前記の熱可塑性樹脂はポリエステルチップの表面に付着した状態で存在しているのが望ましいが、ポリエステルチップが前記部材へ衝突する際の衝撃力や接触する際の圧着力等の大きさによって、あるいは前記の熱可塑性樹脂部材の耐衝撃性や耐剥離性等の性質によって、前記の熱可塑性樹脂部材がポリエステルチップに付着しない状態で、すなわちポリエステルチップとは独立した状態で、前記の接触処理されたポリエステルチップと混合された状態になっているものもある。このような混合状態のポリエステルから得られた成形体は、その結晶化速度が非常に早くなりすぎたり、またその速度の変動が非常に大きくなる。
【0129】
中空成形体用予備成形体の場合には、これの白化や透明性の斑がひどく、正常な延伸が不可能で、厚み斑が大きい、透明性の悪い中空成形体しか得られない。また通常は微細な細粒として存在するが、時には平均粒径が約0.5〜数mmの大きさの粒状体や塊状体の形態でポリエステルチップと独立した状態で前記の接触処理されたポリエステル中に混在する場合もある。このような場合には、前記の熱可塑性樹脂は得られた成形体中で異物となり、その結果、得られた成形体には、厚み斑、空孔、白化等の欠点が非常に多くなる。したがって、ポリエステルチップと独立して存在している前記の熱可塑性樹脂の細粒状体、粒状体や塊状体を成形前に除去しておくことが望ましい。
【0130】
前記の熱可塑性樹脂からなる部材と接触処理されたポリエステルから前記の熱可塑性樹脂の細粒状体、粒状体や塊状体を分離除去する方法としては下記のような方法が挙げられる。すなわち、溶融重縮合ポリエステルまたは固相重合ポリエステルを前記の熱可塑性樹脂からなる部材と接触処理させたあと、振動篩工程及び空気流による気流分級工程等で処理する方法、あるいはイオン交換水による水洗工程で処理する方法、あるいは浮遊選別処理する方法等によって処理することによって、これらの細粒状、粒状及び塊状の前記の熱可塑性樹脂を除去する。このような前記の熱可塑性樹脂の細粒状体、粒状体や塊状体を分離除去する方法は、後記のポリエステルのファインやフイルム状物を除去する方法としても有効である。
【0131】
本発明のポリエステルの製造方法によって得られる固相重合ポリエステルのファイン含有量は、5000ppm以下、好ましくは3000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下、最も好ましくは100ppm以下に低下させるのが望ましい。その用途が中空成形体の場合は、ファイン含有量は500ppm以下が好ましい。
【0132】
ポリエステルの製造工程においては、溶融重縮合工程から固相重合工程、あるいは固相重合工程から篩分工程や気流分級工程等の各工程を経由してサイロ、成形機のホッパ−、輸送用コンテナ−等の容器に充填されるが、これらの工程間のポリエステルの輸送や乾燥には、一般に送風機等によって処理設備近辺の空気を工程に採りいれて使用される。従来は、このような空気は、これを未処理のままで使用するか、または、JIS B 9908(1991)で規定される形式3のような低性能フィルタユニットを装着した清浄機によって処理しただけで使用するのが一般的であった。しかし、このような工程で処理された空気を用いると、透明性が悪い成形体しか得られないという問題が生じる場合があった。
【0133】
したがって、本発明のポリエステルの製造方法においては、溶融重縮合工程において得られたポリエステルチップを次の工程に輸送する段階から、それ以降の工程においてポリエステルと接触する気体として、粒径0.3〜5μmの粒子が1000000(個/立方フィ−ト)以下の系外より導入される気体を使用することが望ましい。
【0134】
なお、気体中の粒径0.3μm未満の粒子に関しては、特に規定するものではないが、透明な成形体を与える樹脂を得るためには、少ない方が好ましい。粒径0.3μm未満の粒子数としては好ましくは10000000(個/立方フィ−ト)以下、より好ましくは5000000(個/立方フィ−ト)以下、さらに好ましくは2000000(個/立方フィ−ト以下)である。
【0135】
以下に、系外から導入する気体中の粒径0.3〜5μmの粒子数を1000000(個/立方フィ−ト)以下に制御する方法を例示するが、本発明はこれに限定するものではない。
【0136】
系外から導入する気体中の粒径0.3〜5μmの粒子数を1000000(個/立方フィ−ト)以下にする方法としては、系外から導入する気体がポリエステルチップと接触するまでの工程中の少なくとも1ケ所以上に前記の粒子を除去する清浄化装置を設置する。前記の気体が処理設備近辺の空気の場合は、前記の空気採りいれ口から送風機によって導入した空気がポリエステルチップと接触するまでの工程中に、JIS B 9908(1991)で規定される形式1又は/及び形式2のフィルタユニットを装着した気体清浄装置を設置し、前記の空気中の粒径0.3〜5μmの粒子数を1000000(個/立方フィ−ト)以下にすることが好ましい。また、前記の空気採りいれ口にJIS B 9908(1991)で規定される形式3のフィルタユニットを装着した気体清浄装置を設置して、前記のフィルタユニットを装着した気体清浄装置と併用することによって前記のフィルタユニットの寿命を延ばすことが可能である。
【0137】
気体中の粒子を除去するJIS B 9908(1991)で規定される形式1の超高性能のフィルタ(以下、HEPAフィルタと略称する)ユニットの素材としては、ガラス繊維からなる濾紙が挙げられる。
【0138】
また、JIS B 9908(1991)で規定される形式2の高性能フィルタユニットの素材としては、ポリプロピレン繊維からなるフィルタやポリテトラフルオロエチレンフイルムとPET繊維布の積層体からのフィルタ等が挙げられる。
一般には、ポリプロピレン繊維製の静電フィルタが使用される。
【0139】
また、JIS B 9908(1991)で規定される形式3の低性能フィルタユニットの素材としては、PETやポリプロピレンからなる不織布等が挙げられる。
【0140】
本発明の製造方法によって得られるポリエステルは、使用済みPETボトルをケミカルリサイクル法によって精製し回収したジメチルテレフタレートやテレフタル酸などの原料を少なくとも出発原料の一部として用いて得たPETや、使用済みPETボトルをメカニカルリサイクル法により精製し回収したフレーク状PETやチップ状PETなどと混合して用いることができる。
【0141】
本発明に係るポリエステルには、必要に応じて他の添加剤、例えば、公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、酸素吸収剤、酸素捕獲剤、外部より添加する滑剤や反応中に内部析出させた滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、顔料などの各種の添加剤を配合してもよい。
【0142】
上記の本発明の製造方法によって得られたポリエステルは、射出成形及び延伸ブロ−成形されて延伸中空成形体に、ダイレクトブロ−成形により中空成形体に、また押出成形されてシ−ト状物あるいはこれをさらに延伸したフイルム等に成形される。また、通常の溶融紡糸機によってタイヤコ−ド用原糸に紡糸、延伸される。
【0143】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、本明細書中における主な特性値の測定法を以下に説明する。
【0144】
(1)ポリエステルの極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
【0145】
(2)ポリエステルのジエチレングリコ−ル含有量(以下[DEG含有量]という)
メタノ−ルによって分解し、ガスクロマトグラフィ−によりDEG量を定量し、全グリコ−ル成分に対する割合(モル%)で表した。
【0146】
(3)ポリエステルのアセトアルデヒド含有量(以下「AA含有量」という)
試料/蒸留水=1グラム/2ccを窒素置換したガラスアンプルに入れた上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィ−で測定し、濃度をppmで表示した。
【0147】
(4)ポリエステルの環状3量体の含有量
試料をヘキサフルオロイソプロパノ−ル/クロロフォルム混合液に溶解し、さらにクロロフォルムを加えて希釈する。これにメタノールを加えてポリマ−を沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミドで定容とし、液体クロマトグラフ法よりエチレンテレフタレ−ト単位から構成される環状3量体を定量した。
【0148】
(5)ポリエステルの溶融時の環状3量体増加量(△CT量)
乾燥したポリエステルチップ3gをガラス製試験管に入れ、窒素雰囲気下で290℃のオイルバスに60分浸漬させ溶融させる。溶融時の環状3量体増加量は、次式により求める。
溶融時の環状3量体増加量(重量%)=
溶融後の環状3量体含有量(重量%)−溶融前の環状3量体含有量(重量%)
【0149】
(6)ファインの含有量およびフイルム状物含有量の測定
樹脂約0.5kgを、JIS−Z8801による呼び寸法5.6mmの金網をはった篩(A)と呼び寸法1.7mmの金網をはった篩(直径20cm)(B)を2段に組合せた篩の上に乗せ、テラオカ社製揺動型篩い振トウ機SNF−7で1800rpmで1分間篩った。この操作を繰り返し、樹脂を合計20kg篩った。
前記の篩(A)上にフイルム状物とは別に、2個以上のチップがお互いに融着したものや正常な形状より大きなサイズに切断されたチップ状物が捕捉されている場合は、これらを除去した残りのフイルム状物および篩(B)の下にふるい落とされたファインは、別々にイオン交換水で洗浄し岩城硝子社製G1ガラスフィルターで濾過して集めた。これらをガラスフィルタ−ごと乾燥器内で100℃で2時間乾燥後、冷却して秤量した。再度、イオン交換水で洗浄、乾燥の同一操作を繰り返し、恒量になったことを確認し、この重量からガラスフィルタ−の重量を引き、ファイン重量およびフイルム状物の重量を求めた。ファイン含有量あるいはフイルム状物含有量は、ファイン重量またはフイルム状物重量/篩いにかけた全樹脂重量、である。これらの値より合計含有量を求める。
【0150】
(7)ファインの融解ピ−ク温度(ファインの融点)の測定
セイコ−電子工業(株)製の示差走査熱量計(DSC)、RDC−220を用いて測定。(6)において、20kgのポリエステルから集めたファインを25℃で3日間減圧下に乾燥し、これから一回の測定に試料4mgを使用して昇温速度20℃/分でDSC測定を行い、融解ピ−ク温度の最も高温側の融解ピ−ク温度を求める。測定は最大10ケの試料について実施し、最も高温側の融解ピ−ク温度の平均値を求める。
【0151】
(8)ポリエステルチップの平均密度、プリフォ−ム口栓部密度
硝酸カルシュウム/水混合溶液の密度勾配管で30℃で測定した。
また、口栓部密度は、(12)の方法により結晶化させた試料10個の平均値として求めた。
【0152】
(9)成形体の昇温時の結晶化温度(Tc1)
セイコ−電子工業株式会社製の示差熱分析計(DSC)、RDC−220で測定。下記(14)の成形板の2mm厚みのプレ−トの中央部からの試料10mgを使用。昇温速度20℃/分で昇温し、その途中において観察される結晶化ピ−クの頂点温度を測定し、昇温時結晶化温度(Tc1)とする。
【0153】
(10)ヘイズ(霞度%)およびヘイズ斑
下記(13)の成形体(肉厚5mm)および(14)の中空成形体の胴部(肉厚約0.45mm)より試料を切り取り、日本電色(株)製ヘイズメ−タ−で測定。
また、10回連続して成形した中空成形体のヘイズを測定し、ヘイズ斑は下記により求めた。
ヘイズ斑=ヘイズの最大値/ヘイズの最小値
【0154】
(11)中空成形体の異物
下記(14)の中空成形体3本を目視で観察し、平均値を求め、下記のように評価した。
◎ : 異物が存在しない
○ : 異物の量が非常に少ない(中空成形体1本あたり0.5mm以下の大きさの異物が3個以下)
△ : 中空成形体1本あたり0.5mm以上の大きさの異物が5〜10個
× : 非常に沢山存在する(中空成形体1本あたり0.5mm以上の大きさの異物が10個以上)
【0155】
(12)プリフォ−ム口栓部の加熱による密度上昇
プリフォ−ム口栓部を自家製の赤外線ヒ−タ−によって90秒間熱処理し、天面から試料を採取し密度を測定した。
【0156】
(13)段付成形板の成形
乾燥したポリエステルを名機製作所製M−150C(DM)射出成型機により、シリンダー温度290℃において、10℃に冷却した段付平板金型を用い成形する。得られた段付成形板は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11mmの厚みの約3cm×約5cm角のプレートを階段状に備えたもので、1個の重量は約146gである。2mm厚みのプレ−トはTc1測定に、また5mm厚みのプレ−トはヘイズ(霞度%)測定に使用する。
【0157】
(14)中空成形体の成形
ポリエステルを窒素を用いた乾燥機で乾燥し、名機製作所製M−150C(DM)射出成型機により樹脂温度295℃でプリフォームを成形した。このプリフォームの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた後、コ−ポプラスト社製LB−01延伸ブロー成型機を用いて二軸延伸ブロー成形し、引き続き約155℃に設定した金型内で熱固定し、2000ccの中空成形体を得た。
【0158】
(15)中空成形体からの内容物の漏れ評価
前記(14)で成形した中空成形体に90℃の温湯を充填し、キャッピング機によりキャッピングをしたあと容器を倒し放置後、内容物の漏洩を調べた。また、キャッピング後の口栓部の変形状態も調べた。
【0159】
(16)チップ化工程に導入される導入水および水処理工程の導入水中のナトリウム含有量、カルシウム含有量、マグネシウム含有量および珪素含有量
導入水を採取し、岩城硝子社製1G1ガラスフィルタ−で濾過後、濾液を島津製作所製誘導結合プラズマ発光分析装置で測定。
【0160】
(17)チップ化工程に導入される導入水および水処理工程の導入水中の粒子径および粒子数測定
光遮光式の粒子測定器パシフィックサイエンティフィックカンパニー社製HIAC/ROYCO.カウンター4100型、サンプラー3000型を用いて測定した。
【0161】
(実施例1)
ストランド状に押出した溶融重縮合PETを、工業用水(河川伏流水由来)をフィルタ−濾過装置およびイオン交換装置で処理した、粒径1〜25μmの粒子が約2550個/10ml、ナトリウム含有量が0.05ppm、マグネシウム含有量が0.03ppm、カルシウム含有量が0.03ppm、珪素含有量が0.09ppmの冷却水で冷却しながらチップ化装置でチップ状に切断した。この溶融重縮合プレポリマ−を振動式篩分工程および気流分級工程に輸送し、ファインおよびフイルム状物を除去することにより、ファイン含有量を約10ppm以下とした。
【0162】
この樹脂をオ−バ−ホ−ルし、清浄化した連続固相重合装置へ投入した。窒素雰囲気下、約155℃で結晶化し、さらに窒素雰囲気下で約200℃に予熱後、連続固相重合反応器に送り窒素雰囲気下で約207℃で固相重合した。固相重合後篩分工程およびファイン除去工程で連続的に処理し、ファインを除去した。
なお、製造工程における溶融重合プレポリマ−チップや固相重合チップの輸送は全てプラグ式輸送方式を用いた。
連続生産開始から10日目、3ヶ月目および6ヶ月目に得られたPETをそれぞれ評価した。得られたPETの極限粘度はすべて0.75デシリットル/グラム、DEG含有量は2.6〜2.8モル%、アセトアルデヒド含有量は2.8ppm〜3.0ppm、環状3量体の含有量は0.30〜0.32重量%、密度は1.4018〜1.4020g/cm3、ファイン等の含有量は15〜29ppm、またファインの融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度は245〜247℃あった。原子吸光分析により測定した触媒金属のGe残存量は45〜48ppm、またP残存量は30〜33ppmであった。
【0163】
これらのPETについて成形板及び二軸延伸成形ボトルによる評価を実施した。
成形板のヘイズは3.5〜4.6%、成形板のTc1は169〜167℃、口栓部の密度は1.377〜1.380g/cm3と問題のない値であり、前記の各経時時点でのPETからの中空成形体の異物は、「◎(異物が存在しない)」か、「○(異物の量が非常に少ない)」であり、問題なかった。
また、内容物の漏れ試験でも、問題はなく、口栓部の変形もなかった。得られたボトルの胴部ヘイズは0.9〜1.5%、ヘイズ斑は1.1〜1.3と良好であった。ボトルのAA含有量は21.0ppmと問題のない値であった。
【0164】
(実施例2)
実施例1で得られた連続生産6ヶ月目のPETを次のようにして水処理した。なお、水処理前の極限粘度は0.75デシリットル/グラム、DEG含有量は2.6モル%、アセトアルデヒド含有量は2.9ppm、環状3量体の含有量は0.31重量%、密度は1.4018g/cm3、ファイン等の含有量は15ppm、またファインの融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度は245℃あった。
処理槽上部の原料チップ供給口(1)、処理槽の処理水上限レベルに位置するオ−バ−フロ−排出口(2)、処理槽下部のポリエステルチップと処理水の混合物の排出口(3)、オ−バ−フロ−排出口から排出された処理水と、処理槽下部の排出口から排出されたポリエステルチップの水切り装置(4)を経由した処理水が、濾材が紙の連続式フィルタ−であるファイン濾過除去装置(5)および吸着塔(8)を経由して再び水処理槽へ送られる配管(6)、ISP社製のGAFフィルタ−バッグPE−1P2S(ポリエステルフェルト、濾過精度1μm)である水中の粒子除去装置とイオン交換装置を経由した、系外からの新しいイオン交換水をこの配管(6)の途中の導入口(9)に導入して得た水の導入口(7)を備えた内容量50m3の塔型の、図1に示す処理槽を使用して前記のPETチップを連続的に水処理した。
【0165】
前記の固相重合PETチップを処理水温度95℃にコントロ−ルされた処理槽の上部の供給口(1)から連続投入し、水処理時間3時間で水処理槽下部の排出口(3)からPETチップを処理水と共に連続的に抜出しながら水処理を行った。上記処理装置のイオン交換水導入口(9)の手前で採取した導入水中の粒径1〜25μmの粒子含有量は約1900個/10ml、ナトリウム含有量が0.02ppm、マグネシウム含有量が0.02ppm、カルシウム含有量が0.02ppm、珪素含有量が0.08ppmであり、また濾過装置(5)および吸着塔(8)で処理後のリサイクル水の粒径1〜40μmの粒子数は約12000個/10mlであった。
水処理後のPETは、脱湿加熱空気による乾燥機で連続的に乾燥後、振動式篩工程および気流分級工程でファイン等の除去処理を行った。得られたPETの極限粘度は0.75デシリットル/グラム、DEG含有量は2.6モル%、環状3量体の含有量は0.31重量%、環状3量体増加量は0.05重量%、AA含有量は2.8ppm、ファイン含有量は10ppm、またその融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度は245℃であった。
なお、製造工程における溶融重合プレポリマ−チップや固相重合チップ、水処理後のチップの輸送は全てプラグ式輸送方式を用いた。
このPETについて成形板及び二軸延伸成形ボトルによる評価を実施した。結果を表1に示す。
成形板のヘイズは3.9%、成形板のTc1は167℃、口栓部の密度は1.377g/cm3と問題のない値であり、5000本以上の連続延伸ブロー成形を実施したが、金型汚れは認められず、またボトルの透明性も良好であった。
また、内容物の漏れ試験でも、問題はなく、口栓部の変形もなかった。得られたボトルの胴部ヘイズは1.0%、ヘイズ斑は1.1、厚み斑は1.03と良好であった。ボトルの異物は、「○(異物の量が非常に少ない)」であり、問題なかった。ボトルのAA含有量は16.4ppmと問題のない値であった。
【0166】
(実施例3)
予め実施例2で得られた水処理済みPETと直鎖状低密度ポリエチレン(MI=約0.9g/10分、密度=約0.923g/cm3)を2軸押出機によって混練りして前記ポリエチレンを微分散させたPETマスタ−を作り、実施例2で得られたPETにこのマスタ−を前記ポリエチレンが約10ppbになるように混合して、前記(13)および(14)の方法によって成形板および二軸延伸成形ボトルを得た。結果を表1に示す。
結果は問題なかった。
【0167】
(実施例4)
ストランド状に押出した溶融重縮合ポリエチレンナフタレ−ト(以下「PEN」と略称する)を、工業用水(河川伏流水由来)をフィルタ−濾過装置およびイオン交換装置で処理した、粒径1〜25μmの粒子が約2800個/10ml、ナトリウム含有量が0.04ppm、マグネシウム含有量が0.02ppm、カルシウム含有量が0.03ppm、珪素含有量が0.09ppmの冷却水で冷却しながらチップ化装置でチップ状に切断した。この溶融重縮合プレポリマ−を振動式篩分工程および気流分級工程に輸送し、ファインおよびフイルム状物を除去することにより、ファイン含有量を約10ppm以下とした。
この樹脂をオ−バ−ホ−ルし、清浄化した回分式固相重合装置へ投入した。窒素置換後、装置内を減圧下にしながら昇温して行き、約140℃で予備結晶化を行い、次いで約160℃で結晶化したあと、約0.1torr下、約240℃で固相重合し、IV1.02のPENを得た。固相重合後、篩分工程で処理しファイン等を除去し、ファイン含有量を35ppmとした。回分式固相重合を連続して100バッチ行い、100バッチ目のPENを用いてダイレクトブロ−成形機により300mlの容器を成形し、(11)の評価基準で異物を検査した。異物は「○(異物の量が非常に少ない)」で、問題なかった。
【0168】
(実施例5)
固相重合工程に投入する溶融重縮合PET(連続生産6ヶ月目)のファイン等の含有量を約300ppm、またシート成形工程に投入する固相重合PETのファイン等含有量を約3800ppmにするように工程条件を変更する以外は実施例1と同様にして固相重合し、極限粘度0.73デシリットル/グラム、アセトアルデヒド含有量約10ppm、環状3量体の含有量は0.52重量%のPETを得た。このPETを用いて自家製シート製膜機にて0.5mm厚みのシートを得た。500メッシュのステンレス金網3枚を重ねあわせたフィルターで濾過しながら製膜したが、金網フィルターの手前に設置した圧力計の上昇はわずかであり、得られたシートには異物はほとんど見られなかった。なお、異物検査は、シート(巾約1m×10m長さ)を目視で観察して行い、0.5mm以上の大きさの異物の個数を測定した。
【0169】
(比較例1)
実施例1で使用したイオン交換装置を使用せずに工業用水をそのままチップ化時の冷却水として使用する以外は実施例1と同様にして溶融重縮合プレポリマ−チップを得た。このプレポリマ−をファイン等除去処理をせずに、オ−バ−ホ−ルおよび清浄化した連続固相重合装置へ投入して実施例1と同様にして固相重合し、得られたPETをファイン等除去処理を行わずに成形に供した。なお、製造工程における溶融重合プレポリマ−チップや固相重合チップの輸送は実施例1と同様の方法によらず、低密度輸送方法によった。
チップ化時の冷却水として使用した工業用水中に含まれる粒径1〜25μmの粒子は約492300〜654000個/10ml、ナトリウム含有量が4.3〜7.5ppm、マグネシウム含有量が1.0〜2.0ppm、カルシウム含有量が6.2〜7.1ppm、珪素含有量が10.1〜15.5ppmであった。連続生産開始から3ヶ月目に得られたPETを評価した。得られたPETの極限粘度はすべて0.75デシリットル/グラム、アセトアルデヒド含有量は2.8ppmppm、環状3量体の含有量は0.31重量%、密度は1.4019g/cm3、ファイン等の含有量は約5750ppmであった。またファインの融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度は279℃あった。また、ファイン中には褐色、ねずみ色等をした異物がかなりの量存在し、X線マイクロアナライザ−分析によると、これらにはカルシウム、珪素等の金属が検出された。
これらのPETについて成形板及び二軸延伸成形ボトルによる評価を実施した。
成形板のヘイズは34.9%、成形板のTc1は142℃、口栓部の密度は1.398g/cm3と非常に高く、中空成形体の異物は、「×(非常に沢山存在する)」で、商品価値のないものであった。また、内容物の漏れ試験では、内容物の漏れが認められた。得られたボトルの胴部ヘイズは15.2%と非常に悪く、また異物が存在する部分は異物が芯になって厚みが異常に厚くなっており問題である。
【0170】
(比較例2)
比較例1と同様にして製造した連続生産6ヶ月後のPETについてシート成形評価を行った。なお、固相重合工程に投入する溶融重縮合PET(連続生産6ヶ月目)のファイン等の含有量を約1500ppm、またシート成形工程に投入する固相重合PETのファイン等含有量は約7500ppm、極限粘度は0.73デシリットル/グラムであった。
これを実施例4と同様にしてシートを製造したが、1日の生産で背圧が急上昇し、金網が破れ、正常な生産が不可能であった。また得られたシートの異物は、無数に存在し、商品価値がないものであった。
【0171】
【表1】
Figure 0004009902
【0172】
【発明の効果】
本発明によれば、異物をほとんど含まず、透明性に優れた中空成形体等を与え、また、成形体の成形時に金型汚れが発生しにくいポリエステルや、製膜時および紡糸時のフィルタ−詰まりが少なく、操業性の改善されたポリエステルを有利に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例で用いた水処理装置の概略図である。
【符号の説明】
1 原料チップ供給口
2 オ−バ−フロ−排出口
3 ポリエステルチップと処理水との排出口
4 水切り装置
5 ファイン除去装置
6 配管
7 リサイクル水または/およびイオン交換水の導入口
8 吸着塔
9 イオン交換水導入口

Claims (9)

  1. ナトリウムの含有量(N)、マグネシウムの含有量(M)、珪素の含有量(S)及びカルシウムの含有量(C)が、下記の(1)〜(4)の少なくとも一つを満足する冷却水を用いて冷却しながらチップ化した溶融重縮合ポリエステルプレポリマ−を固相重合するポリエステルの製造方法であって、固相重合ポリエステル中に含まれるファインの融解ピ−ク温度の最も高温側のピ−ク温度が、265℃以下であることを特徴とするポリエステルの製造方法。
    N ≦1.0(ppm) (1)
    M ≦0.5(ppm) (2)
    S ≦2.0(ppm) (3)
    C ≦1.0(ppm) (4)
  2. チップ化工程の冷却水として、少なくともイオン交換装置で処理した水を使用することを特徴とする請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
  3. 前記の溶融重縮合ポリエステルプレポリマ−および/または固相重合後のポリエステルからファインおよび/またはフイルム状物を除去することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  4. 前記の固相重合前のポリエステルのファイン含有量、フイルム状物含有量、あるいはファイン含有量とフイルム状物含有量の合計含有量のいずれかの含有量が500ppm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  5. 前記の固相重合ポリエステルのファイン含有量が5000ppm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  6. 固相重合ポリエステルが、エチレンテレフタレート単位を85モル%以上含む、極限粘度が0.55〜2.0デシリットル/グラムのポリエステルであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  7. 固相重合ポリエステルが、エチレンテレフタレート単位を85モル%以上含む、極限粘度が0.67〜1.5デシリットル/グラム、アセトアルデヒド含有量が10ppm以下、環状3量体含有量が0.5重量%以下、ファイン含有量が500ppm以下、射出成形して得られた厚さ5mmの成形板のヘイズが15%以下、かつDSCで測定した成形板の昇温時の結晶化温度(Tc1)が150〜175℃の範囲であるポリエステルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  8. 前記の固相重合ポリエステルを水と接触処理させることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
  9. 前記の固相重合ポリエステルにポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタ−ル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を配合させることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
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