JP4009598B2 - 赤外線固体撮像素子 - Google Patents

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Description

この発明は、入射赤外線による温度変化を2次元配列された半導体センサで検出する熱型赤外線固体撮像素子に関し、特に、半導体センサからの電気信号を信号処理回路にて積分処理した後に出力する熱型赤外線固体撮像素子に関する。
一般的な熱型赤外線固体撮像素子では、断熱構造を有する画素を2次元に配列し、入射した赤外線によって画素の温度が変化することを利用して赤外線像を撮像する。非冷却型の熱型赤外線固体撮像素子の場合、画素を構成する温度センサには、ポリシリコン、アモルファスシリコン、炭化ケイ素や酸化バナジウム等のボロメータの他、ダイオードやトランジスタ等の半導体素子を用いたものが知られている。特に、ダイオード等の半導体素子は、電気特性や温度依存性のバラツキが固体間で非常に小さいため、各画素の特性を均一にする上で有利である。
また、熱型赤外線固体撮像素子では、画素は2次元に配列されており、行ごとに駆動線によって接続され、列ごとに信号線によって接続されている。垂直走査回路とスイッチにより各駆動線が順番に選択され、選択された駆動線を介して電源から画素に通電される。画素の出力は信号線を介して積分回路に伝えられ、積分回路で積分及び増幅され、水平走査回路とスイッチによって順次出力端子へ出力される(例えば、非特許文献1参照)。
これらの熱型赤外線固体撮像素子において、積分回路に入力される電圧に対して画素の両端電圧以外に駆動線での電圧降下が影響する。ところが、駆動線での電圧降下量は画素列毎に異なるため、積分回路の出力も画素列毎に異なった値となり、撮像した画像に駆動線の抵抗によるオフセット分布が発生してしまう。また、熱型赤外線固体撮像素子の赤外光に対するレスポンス、即ち、画素の両端電圧の変化は、駆動線における電圧降下成分にくらべはるかに小さい。このため、駆動線による電圧降下分布によって増幅器が飽和等をおこし、必要な増幅度を確保できない問題もある。
また、画素のレスポンスには赤外光のレスポンス以外に素子温度変化によるレスポンスも含まれるため、素子出力が素子温度変化とともにドリフトする問題もある。即ち、画素が完全に断熱され、赤外線吸収による温度変化のみを検出することが理想であるが、画素の断熱構造は有限の熱抵抗をもつため、検出動作を行っているときに環境温度が変化すると出力も変化してしまう。この環境温度の変化による出力変動は入射赤外線の変化と区別がつかないため、赤外線の測定精度が低下して安定した画像取得ができなくなってしまう。
こうした問題を解消するため、特開2003−222555号公報では、次のような構成を採用している。
(1) 積分回路に差動積分回路を用いる。
(2) 駆動線に平行なバイアス線を設け、その抵抗を駆動線と実質同じにし、かつ、バイアス線の画素列毎に画素用電流源と実質同じ電流を流す電流源を設ける。
(3) 差動積分回路の入力に、画素用電流源の両端電圧と、バイアス線に接続した電流源の両端電圧とを入力する。
(4) 素子温度変化に応じた出力をだす参照信号出力回路を設け、その出力を低域通過フィルタやバッファを介してバイアス線に与える。
バイアス線と駆動線の抵抗は実質同じであるので、バイアス線と駆動線の電圧降下量はほぼ同じになる。即ち、駆動線抵抗による電圧降下分布は差動積分回路で減算され、外部に出力されない。さらにバイアス線に加えられる電圧は、画素の素子温度変動にたいする信号出力変化を出力する参照信号出力回路をもとに生成されているので、素子温度変動によるドリフトも差動積分回路で減算され、外部に出力されない。
石川等、「従来のシリコンICプロセスを用いた低コスト320×240非冷却IRFPA」、Part of the SPIE Conference on infrared Technology and Applications XXV、1999年4月発行、Vol.3698、p.556頁から564頁 特開2003−222555号公報
しかしながら、上記従来の熱型赤外線固体撮像素子においては、バイアス線に加える電圧の僅かなバラツキにより、後段回路で不具合が生じる問題があった。即ち、バイアス線に加える電圧は、参照信号出力回路から低域通過フィルタやバッファアンプを通じて供給される。ところが、このバイアス線に加える電圧については、製造ばらつき等種々の要因によって素子ごとにバラツキのある直流電圧オフセット成分が生じる。この直流電圧オフセット成分は微小であるが、増幅度の高い差動積分回路(多くの場合ゲイン10以上)によって増幅され、さらに素子が組込まれたカメラ内部のアンプ回路でも増幅されるため、後段回路のダイナミックレンジを超えてしまい、クリップ発生等を生じ易い。そこで、実際の素子製造においては、素子ごとにバッファアンプの内部回路定数の変更や新たな電圧調整回路を付加することにより、バイアス線に与える電圧の微調整が必要であった。バイアス調整による電圧変化は一般に高利得の差動積分回路に入力されるので、調整回路に高精度なものを必要とし、これらの微調整は製造コストの上昇をまねく要因にもなっていた。
そこで本件発明は、駆動線での電圧降下によるオフセット分布と、素子温度変動による温度ドリフトとを抑制しながら、後段回路でのダイナミックレンジオーバーが生じ難い熱型赤外線固体撮像素子を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本件発明に係る赤外線固体撮像素子は、断熱構造と赤外線吸収構造を有し、少なくとも1個以上直列接続されたダイオードによって感光画素が構成され、前記感光画素が2次元状に配置された画素エリアと、前記感光画素の一方の極を行毎に共通接続した駆動線と、前記駆動線を順に選択し電源に接続する垂直走査回路と、前記感光画素の他方の極を列毎に共通接続すると共に、その各終端に第1の定電流化手段が接続された信号線と、前記画素エリアの列毎に設けられた第2群の定電流化手段を並列接続し、前記駆動線と略同一の電圧降下を生じるバイアス線と、前記画素エリアの列毎に設けられ、前記第1の定電流化手段と前記第2の定電流化手段の両端電圧の差を一定時間積分して出力する差動積分回路と、前記差動積分回路の出力信号を列毎に選択して出力端子に導く水平走査回路とを有する熱型赤外線固体撮像素子であって、さらに、実質的に素子全体の温度変化に応じて変化する参照信号を出力する参照信号出力回路を有し、
前記バイアス線上の所定位置の電圧と前記参照信号との差分信号を取出し、前記差分信号と基準電圧の差に応じたバイアス電圧を生成し、該バイアス電圧を前記バイアス線に入力することを特徴とする。
本件発明においても、従来の熱型赤外線固体撮像素子と同様に、バイアス線と駆動線の電圧降下量はほぼ同じであるため、駆動線抵抗による電圧降下分布は差動積分回路で減算され、外部に出力されない。しかしながら、本件発明に係る熱型赤外線固体撮像素子では、参照信号出力回路の参照信号を直接バイアス電圧とするのではなく、参照信号とバイアス線の電圧との差分を取り、その差分信号を所定の基準電圧と対比し、その差に応じたバイアス電圧を生成してバイアス線にフィードバックする。このため、本件発明では、素子温度変化を反映した参照信号に応じてバイアス線の電圧を変化させると同時に、製造バラツキ等によって生じるバイアス線の電圧バラツキをフィードバック機構によって自動修正することができる。これにより、従来必要であった電圧微調整回路をなくし、自動調整とすることも可能となる。
即ち、本件発明によれば、従来の駆動線での電圧降下によるオフセット分布抑制と温度ドリフト抑制いう特徴を生かしつつ、バイアス電圧のバラツキを自動修正して、後段回路でのダイナミックレンジオーバーが生じ難い熱型赤外線固体撮像素子を提供することができる。
尚、本件発明において、「バイアス線上の所定位置」とは、バイアス線上の固定された位置であれば良く、特定の位置には限定されない。即ち、本件発明において、バイアス線上の所定位置の電圧を取出すのは、バイアス線全体の電圧レベルをモニタするためであるので、どの位置で電圧をモニタしても発明の原理には影響しない。「バイアス線上の所定位置」は、後述する例に示すようにバイアス線の水平走査開始側の端部でも良いし、逆に水平走査終了側の端部でも良く、それ以外の位置でも良い。
また、本件発明において、「基準電圧」とは、ある一定の電圧であれば良く、特定の電圧値には限定されない。即ち、本件発明において、「基準電圧」はフィードバックするバイアス電圧を一定の電圧に自動修正する際の基準となるものである。従って、「基準電圧」は、ある一定の電圧であり、かつ、差動積分回路の出力信号が後段回路のダイナミックレンジに入るように選択されたものであれば、それがどのような電圧であっても発明の原理には影響しない。
実施の形態1.
図1は、本件発明の実施の形態1に係る熱型赤外線固体撮像素子を示す回路図である。
従来の熱型赤外線固体撮像素子と同様に、複数個が直列接続され、赤外線吸収構造と断熱構造を備えたダイオードによって個々の感光画素1(以下、単に「画素1」)が構成されており、その画素1が2次元状に配列された画素エリアを構成している。画素1の各行ごとに駆動線3が共通して接続されている。また、画素1の各列ごとに信号線5が共通して接続され、各信号線5の終端には第1群の定電流化手段として定電流源2が接続されている。また、垂直走査回路4とスイッチにより駆動線3が順番に選択され、各駆動線3が電源6に接続される。一方、定電流源2に近接して画素1の各列毎に、第2群の定電流化手段として、定電流源2と略同一の電流を流す定電流源20が配置されており、駆動線3と略平行なバイアス線19によって並列接続されている。バイアス線19は、駆動線3と略同一の電圧降下を生じるように、駆動線3と略同一の抵抗値を有している。尚、バイアス線19は、駆動線3と略同一の電圧効果を生じれば良く、必ずしも駆動線3と同一の抵抗を有する必要はない。定電流源2の電流値が定電流源20と異なる場合には、それに応じてバイアス線19と駆動線3が異なる抵抗を有していても良い。
画素1の各列毎に差動増幅積分回路7が形成されており、定電流源2の両端電圧と定電流源20の両端電圧との差を積分、増幅して出力する。そして、水平走査回路8によって水平選択スイッチ9が順次オンされ、列毎に配置された差動積分回路7の出力信号が、出力アンプ11を介して出力端子10から外部に出力される。バイアス線19では駆動線3と略同一の電圧降下を生じているため、上記構成によって駆動線3での電圧降下分を出力からキャンセルし、駆動線3に由来するオフセット分布が除去される。
ここで、従来は、素子温度を反映した参照信号を直接バイアス線19に入力していたが、本件発明では、参照信号とバイアス線の電圧との差分を取り、その差分信号を所定の基準電圧と対比し、その差に応じたバイアス電圧を生成してバイアス線にフィードバックする。これにより、バイアス線の電圧を参照信号に応じて(素子温度に応じて)変化させながら、製造バラツキ等によるバイアス線の電圧バラツキを自動修正することができる。
本実施の形態では、画素エリアの左側1列の画素から断熱構造及び/又は赤外線吸収構造を除外して参照画素12とし、この参照画素12に接続された定電流源2の両端電圧を参照信号として読み出す。この参照信号は、通常の画素1の信号と同じようにして読み出される。即ち、参照画素12に接続された電流源2の両端電圧と、それに隣接してバイアス線19に接続された電流源20の両端電圧とが、各々、差動積分回路7のマイナス側とプラス側に入力されて、積分、増幅される。そして、水平駆動回路8とスイッチ9によって、通常の画像読出しの1ライン毎に参照画素12に対応した出力信号が読み出され、アンプ11を介して出力端子10から出力される。
出力端子10には、サンプルホールド回路13が接続されており、参照画素12の出力信号をサンプルホールドする。そして、サンプルホールド回路13にサンプルホールドされた電圧は、バイアス発生回路(基本的には減算回路)14のマイナス側端子に入力され、バイアス発生回路14においてプラス側端子15に入力された基準電圧と比較され、その差に応じたバイアス電圧が生成される。生成したバイアス電圧は、低域通過フィルタ16、バッファアンプ17及び低域通過フィルタ18を介してバイアス線19に入力される。
ここで、差動積分回路7の減算極性とバイアス発生回路14の減算極性は、参照画素12に対応する出力信号の変化が抑制される方向に選択されている。即ち、バイアス線19の電圧(バイアス線19に接続した電流源20の電圧)が差動積分回路7のプラス側に入力された場合には、その差動積分回路7の出力はバイアス発生回路14のマイナス側に入力される。逆に、バイアス線19の電圧が差動積分回路7のマイナス側に入力された場合には、差動積分回路7の出力はバイアス発生回路14のプラス側に入力される。これにより、バイアス発生回路14は、サンプルホールドされた信号と基準電圧の差に応じて、この差を減少させる方向にバイアス線19の電圧を変化させることになる。
従って、本件発明によれば、製造バラツキ等によるバイアス線の電圧バラツキが自動修正される。このため、参照画素12に対応する素子出力(画像信号の基準電圧レベルに相当する)は、回路内における直流オフセット成分の製造バラツキの影響を受けずにほぼ一定となり、素子ごとの特性バラツキによる素子内外の後段回路でのダイナミックレンジオーバーが防止できる。しかも、バイアス線19の電圧は、従来と同じく列ごとにある電流源による駆動線電圧降下を模擬するだけでなく、参照画素12による素子温度ドリフト情報を反映して変化するので、従来例における駆動線での電圧降下によるオフセット分布抑制と温度ドリフト抑制という特徴はそのまま生かされる。
即ち、通常画素1に対応する差動積分回路7のマイナス側端子には(a)駆動線3の電圧降下成分、(b)環境温度による画素1の画素信号変化成分、(c)入射赤外線による画素1の出力変化成分が入力される一方、差動積分回路7のプラス側端子には、(a’)バイアス線19での電圧降下成分と(b’)環境温度による参照信号変化成分が入力される。(a)駆動線3の電圧降下成分は(a’)バイアス線での電圧降下成分によってキャンセルされ、(b)環境温度による画素1の画素信号変化成分は、(b’)環境温度による参照信号変化成分によってキャンセルされるため、差動積分回路7では(c)入射赤外線による画素1の出力変化のみ残して減算処理される。
本件発明の効果について、図2乃至図4を参照しながら、さらに詳細に説明する。尚、図面の簡単のため、図2において、スイッチ9、アンプ11、低域通過フィルタ16、18及びバッファアンプ17は省略している。
図3に示すように、バイアス発生回路14は、例えば減算回路21と減算回路21の出力をレベルシフトさせる働きを持つソースフォロワ回路22とから構成される。減算回路21としては、例えばオペアンプを用いた周知の減算回路を用いることができる。図3に示す例では、オペアンプのマイナス側端子に抵抗R、プラス側端子に抵抗Rが接続され、オペアンプのプラス側端子と抵抗Rの間は抵抗Rを介してグラウンド接続され、オペアンプのマイナス側端子と抵抗Rの間には抵抗Rを介してオペアンプ出力がフィードバックされている。また、ソースフォロワ回路としては、例えばPチャネルMOSトランジスタ43を駆動トランジスとして電流源42と組合せた回路を用いることができる。
2、3に示すように、サンプルホールド回路13にサンプルホールドした出力をVバイアス発生回路14の端子に入力される基準電圧をVとすると、減算回路21における抵抗RとRが等しく、抵抗RとRが等しい場合は、減算回路21の出力Vは(1)式のようになる。
Figure 0004009598
減算回路21の出力Vは、ソースフォロワ回路22でレベルシフトされた後、低域通過フィルタ16及び18で雑音成分が除去され、バッファアンプ17で電流駆動能力が増幅されたのちバイアス線19に与えられる。これら回路での合計のレベルシフト量、即ちバイアス発生回路14の入力端からバイアス線19の入力端までの合計のレベルシフト量をVとすると、バイアス線への入力電圧をVは次式で与えられる。
Figure 0004009598
ここでGは、図2に示すように、出力端子10からバイアス線19の入力端までの合計の利得であり、この例ではR/Rに回路22以降の利得変化を乗じた値となる。尚、サンプルホールド回路13では利得やレベルシフトは殆ど生じないが、もし出力端子10からバイアス発生回路14の入力端までの間に新たな利得成分やレベルシフト成分がある場合には、それらを含めてGとVを考えれば良い。
上記(2)式から分かるように、出力信号Vから参照画素の出力タイミングに合わせてサンプルホールド回路13でサンプルホールドされた出力信号V(=参照画素出力信号)に対するバイアス線の入力電圧Vの関係は図4に示すように逆比例になる。即ち、参照画素出力信号Vが増大するに従い、バイアス線の入力電圧Vは小さくなる。
一方、参照画素の出力信号は次のようにして決まる。まず図2に示すように、参照画素を構成しているダイオード12は、他の画素と同様に、電源6と定電流源2によって定電流駆動されており、定電流源2の両端電圧を参照信号Vprとして出力する。参照画素は赤外線吸収構造及び/又は断熱構造を有さず、実質的に赤外線入射量に対するレスポンスを示さないため、参照信号Vprは素子温度変化のみに応じて変化する。即ち、参照画素12、電源6及び定電流源2によって参照信号出力回路が構成され、素子温度変化に応じた参照信号Vprを出力している。この参照信号Vprは、他の画素信号と同様に、差動積分回路7のマイナス端子側に入力される。差動積分回路7のプラス端子側には、バイアス線19に接続した定電流源20の両端電圧が入力される。差動積分回路7の入力端から出力端子10までの利得、即ちこの例では差動積分回路7から出力アンプ11までの合計利得をA、そこで発生する直流オフセット電圧の合計をVofとすると、参照画素12に対応するバッファアンプ11の出力Vは次の(3)式のようになる。
Figure 0004009598
さて、(2)式における参照画素出力信号Vは、参照画素12に対応するタイミングで出力されたVをサンプルホールド回路13でサンプルホールドしたものであるから、(2)式は次の(4)式に書き換えることができる。
Figure 0004009598
(3)式と(4)式を整理すると、Vは次の式で表すことができる。
Figure 0004009598
(5)式からわかるように、AとGが共に1より十分に大きければ、VはVとほぼ等しくなる。
Figure 0004009598
例えば、AとGが共に10以上、好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上であれば、(5)式の第2項と第3項の影響は非常に小さくなり、参照画素12に対応するバッファアンプ11の出力Vは基準電圧Vにほぼ等しくなるように制御されることになる。参照画素12に対応した参照画素出力信号は、赤外線吸収以外の要素、例えば環境温度変化や製造バラツキを反映しているから、参照画素出力信号が一定の基準電圧Vに制御されるということは、製造バラツキによる出力変動が自動修正できることを意味している。従って、基準電圧Vを後段回路のダイナミックレンジ内で適切に設定しておけば、製造バラツキによるダイナミックレンジオーバを防止することができる。これにより、素子毎に行っていたバイアス線電圧の微調整、例えばバッファアンプ17の内部回路定数の変更や新たな電圧調整回路付加等が不要になる。
尚、本実施の形態における基準電圧Vは、後段回路のダイナミックレンジに入るような一定の値であれば良く、特に特定の電圧には限定されない。但し、本実施の形態では、基準電圧Vは画像信号の基準電圧レベルとなるため、後段回路に含まれるアンプのダイナミックレンジのほぼ中心であることが好ましい。例えば、一般的な回路構成では、差動積分回路7のプラス及びマイナス入力端子に入れる信号が相等しいときの出力電圧を後段回路のダイナミックレンジ中心として設計する場合が多い。そのような場合には、差動積分回路7のプラス及びマイナス入力端子に入れる信号が相等しいときの出力電圧VにVを一致させることが好ましい。
また、素子温度が変化し、Vprが変化してもこの関係は維持される。まず、環境温度が上昇し、参照画素12と電流源20の接続点、すなわち差動積分回路のマイナス側入力電圧をVprが上昇すると、(3)式に従ってVが低下する。しかし、直ちに(4)式により、Vも上昇するため、(3)式に従ってVが上昇する。即ち、Vの変化を抑制するようなフィードバックループが形成されることになる。
ところで、本実施の形態においてAは画素1の出力増幅度に相当するため10以上にとるのが一般的である。また、Gの値として10以上に設定することも、単段のオペアンプで実現できる。従って、AとGが共に1より十分に大きいという条件は容易に充たし得る。
一方、AとGが共に1より十分大きいという条件が充たされない場合、(5)式に示すように環境温度や製造バラツキによって変化するV、Vpr、Vofの影響が出力Voに現れる。しかしながら、必要とされる使用温度範囲や許容される製造バラツキは、撮像素子の用途や設計によっても異なる。従って、用途や設計によっては、AとGが共に1より十分大きいという条件が充たされない場合であっても本件発明を適用可能であることは言うまでもない。
例えば、AとGが共に1より十分大きいという条件が充たされない場合であっても、AとGの積が1より十分大きい条件ではVは次式で表すことができる。
Figure 0004009598
一般にV、V、Vprは同程度の電圧オーダであるので、(7)式における第2項は第1項に比べ小さくなり、参照画素出力は基準電圧Vrにほぼ調整される。このような関係が充たされるには、AvとGの積が10以上、より好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上であることが望ましい。
以下、本実施の形態に係る熱型赤外線固体撮像素子の各構成について詳細に説明する。
(差動積分回路7)
差動積分回路の構成例を図7に示す。図7は、本件発明者が先に特許出願(特願2000−386974)したもので、演算増幅器を用いた一般的な構成にくらべ簡略になる効果がある。図7に示す差動積分回路は、定電流源2の両端電圧と定電流源20の両端電圧を入力側に接続した差動電圧電流変換アンプ25と、差動電圧電流変換アンプ25の出力側に接続された積分容量26と、積分容量26を周期的に電圧Vrefにリセットするように接続されたリセットトランジスタ27を備える。差動電圧電流変換アンプ25は、負帰還なしの状態で接続されており、その出力インピーダンスと積分容量25のキャパシタンスCとの積(=時定数)が積分時間Tの5倍以上となるように設定されている。
積分容量26の入力端には、サンプルホールド用トランジスタ45、サンプルホールド容量47、リセットトランジスタ46から成るサンプルホールド回路28が接続されている。積分後の出力は、サンプルホールド回路28でサンプリングされ、バッファ29を介して出力される。図7の差動積分回路7では、負帰還をしない状態の差動電圧電流変換アンプ25を用いて積分回路を構成しているため回路構成が簡略となる。
ここで、図7に示す差動電圧電流変換アンプ25が積分動作をすることについて説明する。一般の帰還を施していない電圧増幅器の入出力応答特性αは、電圧増幅器の相互コンダクタンスをgm、出力インピーダンスをRout、積分時間をTiとして、
Figure 0004009598
で表される。ここで、Tは時定数である。Ta≫Tiであれば、
Figure 0004009598

となり、積分器の応答特性となる。
a≫Tiという条件は、出力インピーダンスRoutと積分容量の積で表される時定数が積分時間に比べ充分長いことを示している。例えば、時定数Tを積分時間Tの少なくとも5倍以上とすれば、積分器の応答特性からのずれを10%以内とすることができる。時定数Tを大きくするためには、出力インピーダンスRoutが非常に大きな電圧増幅器を使えばよい。一般に、電圧利得g・Routの大きな負帰還を用いない単一のアンプは、出力インピーダンスRoutが大きくなる。例えば、一般的な演算増幅器のうちの差動アンプのみを取出して、図7に示すように負帰還や入力抵抗無しで接続することにより、差動電圧電流変換アンプ25とすることができる。したがって、図7の差動積分回路によれば、極めて簡単な回路構成によって、積分回路を構成することができる。
(低域通過フィルタ)
低域通過フィルタ16と18は、参照画素12に対応する出力とサンプルホールド回路13、バイアス発生回路14で発生する雑音をカットし温度ドリフト成分のみを抽出するためのものである。一般に、高S/Nを目指す赤外線検出器では、電源系の雑音は電源回路で充分低減されており、検出部からの雑音が装置の雑音主成分となる。バイアス発生回路14の出力には参照画素12で発生した雑音成分として含まれるが、参照画素12の雑音成分と画素1の雑音成分は無相関である。このため、差動積分回路7からの出力における雑音が画素1の出力のみを積分する場合に比べて√2倍になる。一方、環境温度変化による検出部出力変化や、環境温度変化に伴う電源回路特性変動による電源電圧の変化は、その変動が一般に秒オーダ以上の緩やかなものである。したがって、それをバイアス電圧が通過するラインの帯域は、赤外線を検出する信号ラインに必要な帯域にくらべて充分狭くてもよい。そこで、出力端子10から差動積分回路7の入力端子にフィードバックするライン上に低域通過フィルタ16と18を入れ、温度ドリフト成分のみを通過するようにすれば、差動による雑音増加を抑制することができる。尚、このような赤外線固体撮像素子の画素にとっての雑音帯域幅の代表的な値は数KHzであるので、その1/100以下にカットオフ周波数をきめておけば良い。素子温度変動の観点からは、その変動周期は早くて秒オーダであるから数Hzの帯域があれば十分である。また、本実施の形態では低域通過フィルタ16、18をバッファ17の前後に挿入しているが、何れか一方だけでもよい。
低域通過フィルタ16及び18の回路構成例を、図8(a)と図8(b)に示す。以下に示す構成は、低域通過フィルタ16及び18のいずれにも用いることができる。
図8(a)の低域通過フィルタは、受動素子を用いたもので30は抵抗もしくはリアクタンスであり、31は容量である。バッファアンプ17の後側に挿入するフィルタ(=低域通過フィルタ18)としては直流電圧降下がないリアクタンスの方が望ましい。一方、バッファアンプ17の手前側に設けるフィルタ(=低域通過フィルタ16)としては、フィルタとしての特性が得られ易い抵抗を用いる方が望ましい。また、抵抗30は、電源回路6の内部抵抗あるいはバッファアンプ17の内部抵抗で代用してもよい。図8(b)の低域通過フィルタは、能動素子である演算増幅器32を用いた積分回路であり、この回路構成も低域通過フィルタとして一般的であるので詳細な説明は省略する。
本発明における低域通過フィルタ16及び18は、図8(a)及び(b)に例示するものに限定されるものではなく、他のフィルタ(例えば、スイッチトキャパシタ回路)を用いることもできる。また、低域通過フィルタ16及び18は、バッファアンプ17の前側か後側のいずれか一方だけに設けても良いが、その場合はバッファアンプ17の前側のフィルタ(=フィルタ16)を残すことが好ましい。バッファアンプ17の後側には大きな電流が流れるため、フィルタでの電圧降下がバイアス電圧の変動の原因となるからである。
(画素、参照画素)
図11(a)及び(b)は、本実施の形態に係る熱型赤外線固体撮像素子における画素1の構造例を模式的に示す断面図及び斜視図である。画素1において、温度センサとなるPN接合ダイオード902が、2本の長い支持脚1101によってシリコン基板1102に設けられた中空部1103の上に支持されており、ダイオード902の電極配線1104が支持脚1101に埋め込まれている。PN接合ダイオード902は、感度を高めるために複数個が直列に接続されていることが好ましい。中空部1103は、ダイオード902とシリコン基板1102との間の熱抵抗を高めて、断熱構造を形成している。この例では、ダイオード902がSOI基板のSOI層上に形成されており、SOI層下の埋め込み酸化膜が中空構造を支持する構造体の一部になっている。また、ダイオード部に熱的に接触している赤外線吸収構造1106が、図の上方から入射する赤外線を効率良く吸収できるように、支持脚1101の上方に張り出した構造となっている。尚、図11(b)では下部の構造を判りやすくするため、図の前方の部分での赤外線吸収構造を除いて描いてある。
赤外線が画素1に入射すると、赤外線吸収構造1106で吸収され、上記の断熱構造により画素1の温度が変化し、温度センサとなるダイオード902の順方向電圧特性が変化する。このダイオード902の順方向電圧特性の変化量を、所定の検出回路で読み取ることにより、入射した赤外線量に応じた出力信号を取出すことができる。熱型赤外線固体撮像素子では、画素1が2次元に多数配列されており、それらを順にアクセスしていく構造となっている。このような素子では画素間の特性均一性が重要であるが、ダイオードの順方向電圧やその温度依存性は固体間のバラツキが非常に小さく、熱型赤外線撮像素子にとって温度センサにダイオードをもちいることは特性均一性を図る上で特に有効である。尚、本件発明において、赤外線吸収構造は、素子に入射した赤外線を吸収して温度センサの温度上昇を生ぜしめる構造であれば良く、上記形態には限定されない。また、本件発明において、断熱構造は、赤外線吸収による温度センサの温度変化を妨げる構造であれば良く、上記の中空構造には限定されない。
(参照画素12、参照信号出力回路40)
参照信号を出力する回路構成として、本実施の形態では画素エリア内の左側1列分の画素から断熱構造及び/又は赤外線吸収構造を除外することによって参照画素を構成している。断熱構造と赤外線吸収構造のいずれか一方若しくは両方をなくす他は画素1と実質的に同一の構造の画素を参照画素とすることにより、素子温度変化のみを検出することが可能となる。赤外線吸収に対する感度が必要なレベルにまで落ちれば、断熱構造と赤外線吸収構造のいずれか一方は残していても良い。参照画素12は、電源6と定電流源2によって定電流駆動されており、定電流源2の両端電圧を参照信号Vprとして出力する。即ち、参照画素12、電源6及び定電流源2によって参照信号出力回路40が構成されている。参照画素12によって参照信号を出力することにより、素子温度に対する画素1の応答特性を正確に模擬することができ、精度の高い温度ドリフト補正が可能となる。特に、本実施の形態のように、画素エリアの一部の画素から断熱構造及び/又は赤外線吸収構造を除外して参照画素12とすれば、製造条件の僅かな違いによる特性のズレを防止して、画素1の温度応答特性を一層精度良く模擬することができる。その場合、撮像画像に参照画素の信号が現れないように、参照画素を画素エリアの水平又は垂直の1辺に設けることが好ましい。尚、参照信号出力回路において、参照画素ではなくサーミスタを利用することも勿論可能である。
また本実施の形態では、参照画素12を画素エリア左端の1列に設けているため、1水平走査毎、即ち画素1行分の出力毎に参照画素12の信号をサンプルホールドする。尚、参照画素12は、図1に示すような1列のみではなく複数列設けてもよい。参照画素12を複数列設けて、それらの参照画素出力信号を平均化することにより、参照画素12で発生するランダム雑音を抑制することができる。
(サンプルホールド回路13)
サンプルホールド回路13は、特に限定されず、例えば図7に示したサンプルホールド回路28と同じものを用いることもできる。また、サンプルホールド回路13の他の例を図9に示す。図9は、オペアンプ33を用いた周知の例であり、サンプルホールド容量34にサンプルホールドスイッチ35が接続されている。サンプルホールドスイッチ35のゲートには参照画素12の出力タイミングでクロックが与えられ、スイッチが開状態となる。
複数の参照画素12の出力を平均化してサンプルホールドする場合の回路例を図10に示す。図9の回路の前段に図8(a)又は(b)に示したような低域通過フィルタをいれたものである。平均化する参照画素は時間に対して連続的に出力されるので、フィルタの時定数を時間に対する出力変化が抑制されるように設定すればよい。
なお、本実施の形態において、サンプルホールド回路13、バイアス発生回路14、低域通過フィルタ16、18、バッファアンプ17を画素1と同一チップに設けてもよく、チップ外に設けてもよいのは言うまでもない。またバッファアンプ18の機能はバイアス発生回路14に含めてもよい。また、参照画素12に対応するバッファアンプ11の出力の変化を抑制する向きであれば、差動積分回路7、バイアス発生回路14のプラス、マイナス側入力の接続構成はこの例に限らない。例えば、図1においてプラス、マイナス側入力の向きを全て逆転しても良い。一方のみ逆転し、バッファアンプ17に反転アンプを含めてもよい。
実施の形態2
図5は、実施の形態2に係る熱型赤外線固体撮像素子を示す回路図である。本実施の形態では、参照画素12を画素エリアの端の下側1行に配置した点が実施の形態1と異なる。その他の点は実施の形態1と同様である。実施の形態1では、1水平走査毎、即ち1行の出力毎に参照信号出力をサンプルホールドしていたが、本実施の形態では、1フレーム毎、即ち全画素読出し周期毎に参照信号出力をサンプルホールドする。
この例においても複数行参照画素を設け、それらの参照画素信号出力を平均化してもよい。平均化することで参照画素で発生するランダム雑音の抑制が行える。また、複数行設けた参照画素のうち、特定行の画素のみについて参照画素信号出力をサンプルホールドしても良い。
実施の形態3
図6は、実施の形態3に係る熱型赤外線固体撮像素子を示す回路図である。本実施の形態では、第1及び第2の定電流化手段として、負荷抵抗23及び24を用いる。その他の点は、実施の形態1と同様である。負荷抵抗23及び24を略同一の抵抗とし、駆動線3とバイアス線19の抵抗を略同一としておけば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
尚、上記実施の形態1乃至3においては、画素エリア内の一部の感光画素から赤外線吸収構造及び/又は断熱構造を除外して参照画素とする例について説明したが、本件発明はこれに限定されない。例えば、素子温度に応じた信号を出力できる参照信号出力回路が、例えば図2に示すような構成を経てバイアス線の入力に接続していれば、参照信号出力回路自身が画素エリア外にあっても実施の形態1乃至3と同様の効果を得ることができる。
実施の形態4
図12は、実施の形態1乃至3に係る熱型赤外線固体撮像素子53を用いた赤外線カメラ50の一例を示すブロック図である。シャッタ52が開くと、撮像対象から入射した赤外光線がレンズ51によって赤外線固体撮像素子53の画素エリアに集光され、赤外線固体撮像素子53から画像信号が出力される。出力された画像信号は、増幅回路54で増幅され、A/D変換回路55、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)56及びD/A変換兼増幅回路55を経てモニタ58に出力される。
本実施の形態に係る赤外線カメラによれば、実施の形態1乃至3に係る熱型赤外線固体撮像素子53を用いているため、駆動線によるオフセット分布や温度ドリフトが抑制され、環境温度の変化に拘わらず均一な画像を安定して取得することができる。また、撮像素子53内のバイアス電圧が自動調整されるため、素子出力の電圧レベルのバラツキが少なく、増幅回路54やD/A兼増幅回路57におけるクリップ等の不具合が抑制される。
図1は、本発明の実施の形態1に係る熱型赤外線固体撮像素子を示す回路図である。 図2は、実施の形態1に係る熱型赤外線固体撮像素子の一部を示す回路図である。 図3は、本件発明に用いるバイアス発生回路の一例を示す回路図である。 図4は、参照画素出力電圧Vとバイアス線の入力電圧Vの関係を模式的に示すグラフである。 図5は、本発明の実施の形態2に係る熱型赤外線固体撮像素子を示す回路図である。 図6は、本発明の実施の形態3に係る熱型赤外線固体撮像素子を示す回路図である。 図7は、本件発明に用いる差動積分回路の一例を示す回路図である。 図8(a)及び(b)は、本件発明に用いる低域通過フィルタの例を示す回路図である。 図9は、本件発明に用いるサンプルホールド回路の例を示す回路図である。 図10は、本件発明に用いるサンプルホールド回路の別の例を示す回路図である。 図11(a)及び(b)は、本件発明に係る熱型赤外線固体撮像素子の画素構造の例を示す断面図(a)及び斜視図(b)である。 図12は、実施の形態4に係る赤外線カメラを示すブロック図である。
符号の説明
1 画素、 2 第1群の定電流源(第1群の定電流化手段)、 3 駆動線、 4 垂直駆動回路、 7 差動積分回路、 8 水平駆動回路、 12 参照画素、 13 サンプルホールド回路、 14 バイアス発生回路、 16及び18 低域通過フィルタ、 17 バッファアンプ、 20 第2群の定電流源(第2群の定電流化手段)。

Claims (11)

  1. 断熱構造と赤外線吸収構造を有し、少なくとも1個以上直列接続されたダイオードによって感光画素が構成され、前記感光画素が2次元状に配置された画素エリアと、
    前記感光画素の一方の極を行毎に共通接続した駆動線と、
    前記駆動線を順に選択し電源に接続する垂直走査回路と、
    前記感光画素の他方の極を列毎に共通接続すると共に、その各終端に第1の定電流化手段が接続された信号線と、
    前記画素エリアの列毎に設けられた第2群の定電流化手段を並列接続し、前記駆動線と略同一の電圧降下を生じるバイアス線と、
    前記画素エリアの列毎に設けられ、前記第1の定電流化手段と前記第2の定電流化手段の両端電圧の差を一定時間積分して出力する差動積分回路と、
    前記差動積分回路の出力信号を列毎に選択して出力端子に導く水平走査回路とを有する熱型赤外線固体撮像素子であって、
    さらに、実質的に素子全体の温度変化に応じて変化する参照信号を出力する参照信号出力回路を有し、
    前記バイアス線上の所定位置の電圧と前記参照信号との差分信号を取出し、前記差分信号と基準電圧の差に応じたバイアス電圧を生成し、該バイアス電圧を前記バイアス線に入力することを特徴とする熱型赤外線固体撮像素子。
  2. 前記参照信号出力回路が、断熱構造と赤外線吸収構造のいずれか一方又は両方を有しない他は前記感光画素と実質同じ構造の参照画素を有することを特徴とする請求項1に記載の熱型赤外線固体撮像素子。
  3. 前記画素エリアの一部の感光画素から断熱構造及び/又は赤外線吸収構造を除外して参照画素としたことを特徴とする請求項2に記載の熱型赤外線固体撮像素子。
  4. 断熱構造と赤外線吸収構造を有し、少なくとも1個以上直列接続されたダイオードによって感光画素が構成され、前記感光画素が2次元状に配置された画素エリアと、
    前記画素エリアの少なくとも一部の感光画素から、断熱構造及び/又は赤外線吸収構造を除外して構成した参照画素と、
    前記感光画素及び前記参照画素の一方の極を行毎に共通接続した駆動線と、
    前記駆動線を順に選択し電源に接続する垂直走査回路と、
    前記感光画素及び前記参照画素の他方の極を列毎に共通接続すると共に、その各終端に第1の定電流化手段が接続された信号線と、
    前記画素エリアの列毎に設けられた第2群の定電流化手段を並列接続し、前記駆動線と略同一の電圧降下を生じるバイアス線と、
    前記画素エリアの列毎に設けられ、前記第1の定電流化手段と前記第2の定電流化手段の両端電圧の差を一定時間積分して出力する差動積分回路と、
    前記差動積分回路の出力信号を列毎に選択して出力端子に導く水平走査回路とを有する熱型赤外線固体撮像素子であって、
    さらに、前記差動積分回路の出力信号のうち、前記参照画素に対応する信号である参照画素出力信号をサンプルホールドするサンプルホールド回路と、
    前記参照画素出力信号を基準電圧と比較し、その差に応じたバイアス電圧を生成して前記バイアス線に出力するバイアス発生回路を有し、
    前記差動積分回路の減算極性と、前記バイアス発生回路における前記参照画素出力信号−前記基準電圧間の減算極性とが、前記参照画素出力信号の変化が抑制される方向に選択されていること特徴とする熱型赤外線固体撮像素子。
  5. 前記差動積分回路から前記出力端子までの回路利得と、前記サンプルホールド回路から前記バイアス線までの回路利得との積が10以上であることを特徴とする請求項4に記載の熱型赤外線固体撮像素子。
  6. 前記差動積分回路から出力端子までの利得と、前記サンプルホールド回路からバイアス線までの回路利得の各々が、10以上であることを特徴とする請求項4に記載の熱型赤外線固体撮像素子。
  7. 前記参照画素が複数あり、それら参照画素の出力を平均化してサンプルホールドすることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の熱型赤外線固体撮像素子。
  8. 前記差動積分回路は、差動電圧電流変換アンプと該差動電圧電流変換アンプの出力端子に接続されて周期的にリセットされる容量を備え、前記差動電圧電流変換アンプによって入力信号の差を電流に変換し、その電流を前記容量において積分することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の熱型赤外線固体撮像素子。
  9. 前記参照画素が、前記画素エリアにおいて垂直又は水平方向の少なくとも1辺に形成されたことを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の熱型赤外線固体撮像素子。
  10. 前記バイアス電圧が、低域通過フィルタ及び/又はバッファ回路を通じて前記バイアス線に入力されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の熱型赤外線固体撮像素子。
  11. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載の熱型赤外線固体撮像素子と、
    前記熱型赤外線固体撮像素子に赤外線像を結像させる光学系と、
    前記熱型赤外線固体撮像素子から出力された画像信号を増幅する増幅回路と、
    前記増幅回路によって増幅された画像信号をモニタに出力する出力端子と、
    を備えた赤外線カメラ。
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