JP4008693B2 - 電力線搬送を用いた空港設備監視制御システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空港、飛行場等の滑走路、誘導路等に設置される多数の灯火、航空機検出センサ等設備の動作状態を監視制御する電力線搬送を用いた空港設備監視制御システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電力線搬送技術を用いて、空港,飛行場等に設置される多数の灯火,センサ等設備の動作状態を監視制御する空港設備監視制御システムは、商用交流電源を受けて定電流を発生する電源発生装置CCRから導出される電力線に直列に親局およびそれぞれゴムトランス介して各端末(子局)が接続され、これら各端末に個別に灯火やセンサ等が接続されている。
【0003】
前記親局は、電力線モデムが設けられ、中央監視室に設置される上位システムからの制御信号および各端末からの灯火・センサ等監視信号を受信し、電力線モデムが電力線搬送技術を用いて、電力線を介して各端末へ制御信号を伝送し、また中央監視室に対して灯火等監視信号を伝送する。
【0004】
また、各端末においても、親局と同様に電力線モデムが設けられ、親局からの制御信号を受けて各灯火を制御する一方、電力線モデムが電力線搬送技術を用いて、前記電力線を介して前記親局に対して当該灯火・センサの監視信号を送信する構成となっている。
【0005】
ところで、以上のような空港設備監視制御システムにおける電源発生装置は、電力線に定電流の電力を供給するものであって、具体的には、図11に示すごとく、2.5Aの低振幅電流波形S1および7.2Aの高振幅波形S2のうち、サイリスタスイッチを用いて、低振幅の電流波形S1のゼロクロス点から図12に示すごとく複数パターンの何れか1つのパターンである位相角度で位相制御を行うことにより、高振幅の電流波形S2を選択し、灯火その他の空港設備に使用するために定められている所定の定電流(例えば6.6A)を出力し、電力線に供給する形態となっている。
【0006】
一方、電源発生装置CCRから導出される電力線に直列に親局およびそれぞれゴムトランス介して各端末が接続されるが、これら各端末側では、ゴムトランスの2次側にスイッチ回路が設けられ、このスイッチ回路によりゴムトランスの2次側を短絡/開放することにより、電力線搬送を用いた通信を行う構成となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、以上のような空港設備監視制御システムのごとく、ゴムトランス2次側の短絡/開放によって電力線搬送による通信を行う場合、ゴムトランスが7.2Aに相当する高振幅波形S2にそった飽和状態になると、ゴムトランス2次側にそれ以上の電流供給が不可能となるので、結果として端末に接続される灯火が暗くなる現象が発生する。
【0008】
また、ゴムトランス2次側にリレー回路が設けられ、一定時間にわたってリレー回路の短絡/開放の操作を繰り返した場合、開放による過電圧の発生により信号は発生するが、信号レベルが一定していないためにどのような信号が発生するか不明であり、受信側では適切な処理ができない問題がある。
【0009】
いずれにせよ、ゴムトランスの2次側の短絡/開放による信号の発生は、ゴムトランス2次側の開放による過電圧発生という偶発的な現象を利用して信号を発生するものであり、信号が安定しないことから、通信品質が低下してしまう。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、定量的な送信信号を発生可能とし、またノイズを除去して適切な信号を受信し、信頼性の高い通信品質を確保する電力線搬送を用いた空港設備監視制御システムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
(1) 上記課題を解決するために、電源発生装置から導出される電力線に変成器を介して親局が接続され、また当該電力線にそれぞれゴムトランスを介して灯火、航空機検出センサを有する端末が接続され、前記親局:端末=1:n(nは第1の整数)が前記電力線を用いて相互に通信を行う電力線搬送を用いた空港設備監視制御システムであって、前記電源発生装置の出力側近傍の前記電力線に設置され、当該電源発生装置から発生するノイズと各端末側の灯火、センサによる信号とがそれぞれ影響しないように信号分離するフィルタ装置と、このフィルタ装置に前記変成器を介して接続される前記親局は、前記電源発生装置から発生する所定数周期の電源波形に同期してスタート信号及びコマンドを当該電源波形に注入する親局側信号送信処理系と、前記ゴムトランスの2次側に接続される各端末は、前記親局側信号送信処理手段で注入されるスタート信号及びコマンドに対し、所定数周期の電源波形ごとに各電源クロス検出タイミングから所定の位相角度ずらし、予め割当てられた前記各端末のアドレス順序に従って順次所要とする信号を当該電源波形に注入する各端末側信号送信処理系とを備えた電力線搬送を用いた空港設備監視制御システムである。
【0012】
本発明は以上のような構成とすることにより、電源発生装置と各端末とを結ぶ電力線間にフィルタ装置を介在し、電源発生装置から発生するノイズは当該電源発生装置側に流し、各端末側の灯火によって生じる信号は端末側に流すことにより、互いに影響しないようにする。また、親局側および各端末側とも電源発生装置から発生する電源波形に同期し、かつ、親局側からのスタート信号及びコマンドの注入後、各端末は、予め割当てられる所定数周期の電源波形ごとに信号を注入するので、電力線上の電源波形に信号を重畳する場合でも、親局と各端末が適切に通信することができる。
【0013】
(2) また、前記(1)の前記信号送信処理系としては、前記電源波形の零クロスの検出タイミングを用いて、当該電源波形の正負の間でそれぞれ同数となる複数、かつ同量の送信パターンにより信号を注入することにより、ゴムトランスの飽和を防ぐことが可能となり、ひいてはゴムトランス2次側に接続される灯火のちらつきを発生を抑制することが可能となる。
【0014】
(3) また、前記(1)または前記(2)の信号送信処理系としては、前記送信パターンの範囲内で所定の周波数信号に対し、当該周波数信号の正側(信号注入時間):負側(信号未注入時間)=n(nは第2の整数):1の関係をもつ送信信号で変調し、前記電源波形に注入することにより、ゴムトランスの飽和を防ぐことが可能となり、より大きな信号を発生することが可能となる。
【0015】
(4) さらに、前記(1)ないし(3)に記載の信号送信処理系としては、ゴムトランスの2次側ラインに接続される当該信号送信処理系出力端にリレー接点を含むスイッチを接続し、送信信号を注入しない場合にスイッチをオンすることにより、前記信号送信処理系の電力消費を容易に抑制することが可能である。
【0016】
(5) さらに、前記(1)または前記(2)に記載する信号送信処理系としては、所定の周波数信号を発生する信号発生回路と、前記送信パターンの範囲内で当該周波数信号の正側(信号注入時間):負側(信号未注入時間)=n(nは第2の整数):1の関係をもつ送信信号を送信する演算処理制御手段と、前記信号発生回路から発生する周波数信号を当該周波数信号の正側:負側=n(nは第2の整数):1の関係をもつ送信信号で変調する送信指令出力回路と、この送信指令出力回路から出力される変調された送信指令を受けて開放し、前記ゴムトランスの2次側ラインに所定の過電圧を発生させるスイッチ回路と、このスイッチ回路の開放により発生する過電圧が前記所定の過電圧を越える電圧を吸収する保護機能回路とを備えた構成である。
【0017】
本発明は以上のような構成とすることにより、保護機能回路がスイッチ回路の開放によって発生する過電圧が前記所定の過電圧を越える電圧を吸収するので、電源波形に常に定量的な信号を注入することが可能である。
【0018】
(6) さらに、信号送信処理系から発生される電源波形の正負の間でそれぞれ同数となる複数、かつ同量の送信パターンにより注入される信号を受信する前記親局または各端末の信号受信処理系は、電源波形の周期内に複数回にわたって同一の信号を受信した場合、有効な受信信号として処理するので、ノイズ信号成分を破棄し、所定の角度で発生されるであろう信号の有無を適切に判断し、有効な信号とすることが可能である。
【0019】
(7) さらに、信号送信処理系から発生される電源波形の正負の間でそれぞれ同数となる複数、かつ同量の送信パターンにより注入される信号を受信する前記親局または前記各端末の信号受信処理系は、使用する信号の周波数の倍調波成分信号を受信し、所定期間信号レベルのピークを越える信号量から受信信号の有無を判断することにより、ノイズの無い信号を取出すことが可能である。
【0020】
(8) さらに、端末の信号送信処理系としては、電源周期の零クロス毎に送信タイミングを除いて過電圧の発生有無を判断し、所定回数過電圧発生のときに灯火の断芯と判断し、送信処理を優先することにより、信号送信時の過電圧と区別して灯火の断芯と判断でき、ひいては灯火断芯時と判断したときには親局に優先的に監視信号を送信することが可能である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は本発明に係る電力線搬送を用いた空港設備監視制御システムの一実施の形態を示す系統構成図である。
【0023】
この空港設備監視制御システムは、例えば中央監視室に設置され、空港内の設備である各種の灯火L,航空機検出センサC等の動作状態表示、灯火Lの点灯・消灯制御、各端末の動作テスト、各端末のリセット等の操作を行うオペレータコンソール1およびこのコンソール1に制御LANを介して接続され、当該オペレータコンソール1の間で相互に信号の授受を行う監視制御盤2等を備えた上位システム3と、商用交流電源から所定の定電流電源波形を生成し発生する電源発生装置(CCR)4と、この電源発生装置4から導出される電力線5のうち、電源発生装置4の出力側に比較的近い位置に設けられるバイパスフィルタ機能をもったフィルタ装置6と、このフィルタ装置6から親局専用変成器7を介して接続され、各種の灯火L,…の動作状態その他各種のセンサC,…の信号である監視信号を収集し上位システム3に通知したり、また上位システム3からの制御信号を電力線5を介して各端末9に送信する親局8と、前記電力線5にそれぞれゴムトランス10を介して直列に接続され、各灯火L,…やセンサC,…の動作状態を個別に監視し、また親局側からの制御信号を受けて灯火Lの点灯・消灯を制御する子局である各端末9,…とによって構成されている。
【0024】
なお、監視制御盤2は、様々な電力線回路情報を集中的に管理するものであって、1つの電源回路を統括する親局8とは伝送LANを介して接続され、当該親局8とともに個々の電力線の回路情報を共有する機能をもっている。
【0025】
電源発生装置4は、図2に示すように、低振幅の電流波形S1のゼロクロス点から所要の位相角度で位相制御することにより高振幅の電流波形S2を選択し全体の電流値を変えることにより、灯火Lの明るさを調整する。位相制御の位置は、灯火が明るいほど0度付近に移動し、灯火が暗いほど180度付近に移動し、また回路規模によっても位置が異なる。
【0026】
前記親局8は、電力線5上に介挿されるフィルタ装置6に親局専用変成器7を介して接続され、内部的には上位システム3の監視制御盤2の間で信号の授受を行う上位I/F部11、各端末9からの監視信号を受信しフィルタリング処理するとともにCPU処理可能な信号に変換する受信系12、前記上位I/F部11で受けた制御信号に基づいて親局専用変成器7の2次側を短絡/開放することにより電力線搬送による監視信号を送信する送信系13および制御信号や監視信号を所要の伝送形式に適する形に処理したり、所定のタイミングで信号を伝送させるなどの処理を行うCPUで構成された演算処理制御手段14などが設けられ、具体的には後記する図3に示す端末とほぼ同様な構成が採用されている。
【0027】
フィルタ装置6は、電源発生装置4の近傍に親局8や各端末9が接続されたとき、その近傍の電力線上のノイズ量が大きくなることから、見かけ上の距離を延ばすために電力線5の1次側に直列にそれぞれ距離延長用コイル(図示せず)が接続されている。
【0028】
前記各端末9は、図1及び図3に示すように電力線5にゴムトランス10を介して接続され、内部的には、親局8からの制御信号を受信しフィルタリング処理するとともにCPU処理可能な信号に変換する受信系21、センサCの状態を取り込むセンサI/F部22、灯火Lの断芯有無の状態を検出する断芯検出系23、前記受信系21で受信された制御信号を解析し、灯火制御に関する信号に変換し灯火制御系24に送出し、また断芯検出系23によって検出された監視信号を所定のタイミングで伝送可能な状態に設定する前記CPUで構成された演算処理制御手段25およびこの演算処理制御手段25により処理された監視信号に基づいてゴムトランス10の2次側を短絡/開放することにより電力線搬送を行う送信系26等によって構成されている。これら演算処理制御手段25および送信系26は要旨との関係では信号送信処理系を構成する。
【0029】
前記受信系21は、ゴムトランス10の2次側に設けられた変成器などの信号抽出部21a、この信号抽出部21aによって抽出される信号を信号増幅部,フィルタHPF,LPFなどを通すフィルタ回路要素21b、この回路要素21bから出力される信号を取得する受信信号取得回路21cの他、同じく信号抽出部21a,フィルタLPF,信号増幅部,比較部COMP等を含んで電力線5に供給される電源波形の零クロスを取得する電源零クロス取得回路21dによって構成されている。
【0030】
前記センサI/F部22は、説明の便宜上、灯火Lとの関係だけを説明していることから、特に図示していないが、図3と同様な構成となっている。
【0031】
断芯検出系23は、ゴムトランス10の2次側に設けられた変成器23aなどを介して灯火Lの断芯を検出する断芯検出回路23bが設けられている。
【0032】
灯火制御系24は、ゴムトランス10の2次側に設けられた電源CT24a、この電源CT24aを介して自己端末の動作電源を取得する電源取得回路24b、灯火Lを保護するための各種の保護回路24c、灯火Lの点灯・消灯を制御するための例えばトライアックなどの灯火制御部24d、過電流を検出するための電流検出部21eなどにより構成されている。
【0033】
演算処理制御手段25は、灯火制御部24に接続される灯火L等の状態その他必要な信号を取り込んで所要とするデータを作成し、また親局8から電力線5を通して受信される信号に基づいて灯火制御部24dを介して灯火Lを制御し、さらに外部機器または入力機器からの指示に従って必要な処理を実行する機能をもっている。
【0034】
前記送信系26は、演算処理制御手段25からのタイミングを受けて所定周波数例えば10KHzの周波数信号を発生する信号発生回路26a、演算処理制御手段25から出力される灯火等の動作状態に応じた監視信号を用いて、信号発生回路26aからの周波数信号を変調し出力する送信指令出力回路26b、ゴムトランス10の2次側に設けられ、送信指令出力回路26bの送信指令に基づいて所定のオン・オフの信号を発生するスイッチ回路26c及び保護機能回路が設けられている。
【0035】
前記保護回路24cおよびスイッチ回路26cの出力側に設けられる保護機能回路にはそれぞれリレー接点X1、X2が設けられている。保護回路24cのリレー接点X1は、端末特有のリレー接点であって、灯火Lが断芯した場合にオンさせて灯火制御系24を保護することにある。スイッチ回路26c出力側の保護機能回路のリレー接点X2は、送信系26の未使用時の消費電力を軽減するために設けたものである。
【0036】
次に、以上のような空港設備監視制御システムの動作について図面を参照して説明する。
【0037】
先ず、監視制御システムの一般的な動作としては、監視制御盤2が親局8から伝送されてくる灯火LやセンサCの監視信号を受信し、オペレータコンソール1に送信し、灯火等の動作状態を表示する。その他、上位システム3のコンソール1は、管制官から必要な制御指示を入力し、監視制御盤2および親局8を介して各端末9に対し灯火Lの点灯・消灯制御、各端末の動作テスト、各端末のリセット等の制御信号を送出し、その端末側の応答状態をオペレータコンソール1により集中監視し、かつ、制御を実行する。
【0038】
親局8は、通常,1つの電源発生装置4に1台接続され、上位システム3/各端末9,…との間で情報の授受を行い、上位システム3/下位端末9に所要とする信号を伝送する。
【0039】
親局8と各端末9,…との間の信号授受は、親局8が1次局となり、送信系13,26が演算処理制御手段14,25で作成される例えばテキストデータ等の情報を所定のタイミングに従って電力線5に伝送する。
【0040】
よって、以上のような監視制御システムは、灯火/センサの状態が実際に現場まで調査することなく、上位システム3に設置されるオペレータコンソール1により遠隔操作することにより、親局8を介して各端末9に接続される多数の灯火を制御することができ、さらに上位システム3により灯火/センサの状態を一括管理することにより、例えばセンサの情報をもとに灯火制御することができ、空港,飛行場の自動運用を確立することが可能である。そして、空港等の自動運用により、空港等設備の運用面で大幅にコストダウンを図ることが可能となる。
【0041】
次に、本願各請求項に係る電力線搬送を用いた空港設備監視制御システムについて個別に説明する。
【0042】
(1) この監視制御システムは、電源発生装置4から発生する電力を空港設備である灯火Lに用いる一方、灯火L、センサCの監視制御に関する信号の通信媒体として、電源発生装置4から発生する電力が供給される電力線5を用い、かつ、電源発生装置4から発生する電力波形に対し灯火L、センサCの監視制御に関する信号を重畳して搬送する電力線搬送方式が用いられている。このとき、電源発生装置4の出力側にバイパスフィルタなどのフィルタ装置6を設置する。このバイパスフィルタ内には使用する周波数毎にLCのI型共振回路が設けられ、電源発生装置4から発生するノイズは自身の電源発生装置側に、灯火L側で用いられる信号は灯火L側に流れるようにする。つまり、バイパスフィルタを用いることにより、電力線搬送に用いる信号が電源発生装置4側に障害を与えないような構成となっている。
【0043】
さらに、本発明システムにおいては、図4に示すように親局8側が予め定める所定数周期の電源波形に同期し、スタート信号及び各端末送信要求のコマンドを注入する。因みに、親局8は断芯検出や灯火制御系24aを除き端末9とほぼ同じ構成を用いているので、電源零クロスを検出し、演算処理制御手段14がスイッチ回路を制御し、スタート信号やコマンドを注入することになる。
【0044】
一方、各端末9は、親局8からスタート信号及びコマンドの送信終了後、所定数周期の電源波形ごとに予め割当てられる各端末アドレスの順序に従って灯火L/センサCの動作状態である監視信号を送信する。つまり、各端末9の演算処理制御手段25は、電源零クロス取得回路21dからの零クロス検出信号および受信信号取得回路21cからの受信信号に基づき、例えば断芯検出回路23bや電源取得回路24bの出力等から灯火Lの動作状態を判断し、所定のタイミングで監視信号を送信する。
【0045】
従って、以上のような実施の形態によれば、親局8が電源波形に同期してスタート信号、コマンドを注入し、各端末9では、自局に割当てられた所定数周期の電源波形に自身端末のアドレスを同期させつつ灯火L等の監視信号を注入するので、親局8と端末9が1:nの関係にある場合でも、所要とする信号を整然と送信できる。
【0046】
(2) また、別の発明に係る監視制御システムにおいては、各端末9の演算処理制御手段25および送信系26を含む信号送信処理系としては、図5に示すタイミングにより所要とする監視信号等を送信する。具体的には、演算処理制御手段25は、同図(a)に示す電源波形に対する電源零クロス取得回路21dの零クロス検出タイミングから30度、150度、210度、330度の位相角度のときに同図(b)に示すごとく1ビットのタイミング用クロックを発生し、このクロックに基づいて同図(c)に示すような送信パターン内において監視信号等を送信し、ゴムトランス10を介して電力線5に注入する。この送信パターンは、監視信号等を送信するための時間ないし信号発生幅に相当する。
【0047】
すなわち、このシステムは、電源波形の正負に同量の信号を注入し、正負何れにおいても同量のエネルギーを消費させることにより、ゴムトランス10の2次側に現われる高振幅の電流波形にそって飽和するのを回避するので、より大きなレベルの信号を発生させることが可能となる。なお、正側である1度〜180度と負側である181度〜360度との間でそれぞれ信号注入時間の合計が等しくなるように設定すれば、任意の信号注入時間を設定することができる。
【0048】
従って、以上のような実施の形態によれば、電源波形の正負に同量の信号を注入し、正負何れにおいても同量のエネルギーを消費させることにより、ゴムトランス10の2次側の飽和を防ぐことができ、ひいてはゴムトランス10の2次側に接続される灯火Lのちらつをなくすことができる。
【0049】
なお、親局8の演算処理制御手段14を含む送信系13についても同様に電源波形の正負に同量の信号を注入するものである。
【0050】
(3) さらに、別の発明に係る監視制御システムは、各端末9の演算処理制御手段25の図5(c)に示す送信パターン内で送信系26から監視信号等を送信するが、送信系26においては具体的には図6に示すような信号処理を実行し監視信号等を電源波形に重畳する。先ず、送信信号発生回路26aから例えば10KHzの周波数信号S11を発生し(図6(a)参照)、送信指令出力回路26bに供給する一方、演算処理制御手段25から送信パターン内において周波数信号の正側信号(監視信号等の信号注入時間):負側信号(信号未注入時間)=3:1となるような不均衡な監視信号等を含む信号S12を送出し(図6(b)参照)、送信指令出力回路26bに設けられる送信指令用接点スイッチ26baをオン・オフ制御することにより、当該送信指令出力回路26bから10KHzの周波数信号S11が監視信号等で変調された信号を出力し、スイッチ回路26cを制御し、ゴムトランス2次側の商用電源波形に重畳し、親局8側に送信する。
【0051】
従って、以上のような実施の形態によれば、正側:負側=3:1(n:1)となる不均衡な信号注入を行った場合、正側:負側=1:1の信号注入と比較し、信号の注入効率がよくなり、ゴムトランス10の飽和を防ぐことができ、より大きな信号を発生させることが可能となる。
【0052】
本システムは、どちらかと言えば、商用電源波形にノイズ的な信号を注入することにあるが、例えば正負均一なバランスのよい信号を注入すると、ノイズ的な信号にならず、注入効率が悪くなる。その点、正負で不均衡な信号であれば、ノイズ的な信号となり、信号の注入効率を上げることが可能となり、ゴムトランス10の飽和を防ぐことに役立つものである。
【0053】
なお、親局8の演算処理制御手段14を含む送信系13についても、正側:負側=3:1となるような不均衡な信号注入を行うことにより、信号の注入効率を上げることが可能である。
【0054】
(4) さらに、別の発明に係る監視制御システムは、端末9側の演算処理制御手段25では、監視信号等を送信しない場合を把握できるので、信号不送信時にリレー接点x2を短絡し、信号送信時のみリレー接点x2を開放する制御を行うことにより、送信系26による電力消費の損失を防ぐことが可能となる。
【0055】
図7は送信系26を構成するスイッチ回路26cの具体的な回路構成を示す図であって、それぞれスイッチ機能をもった4個のFETQ3〜Q6で構成され、そのうちFETQ3,Q4がシリアル接続され、同様にFETQ5,Q6がシリアル接続され、これらが並列回路を構成している。そして、この並列回路にはFETQ1とQ2がシリアルに接続された保護機能回路が設けられている。さらに、これらFETQ1とFETQ2のゲートとドレイン間に例えば300Vの過電圧を阻止する過電圧保護素子26caを設けられている。
【0056】
このシステムの構成は、送信系26に並列にリレー接点x2を設け、信号を送信しない時には図示するようにリレー接点x2を短絡制御することにより、送信系26の電力消費を抑制する。
【0057】
また、当該送信系回路では、信号注入時、送信指令出力回路26bから出力される送信指令によってFETQ3〜FETQ6がOFFし、過電圧が発生する。電源波形の正側の時はFETQ3、Q5により過電圧が発生し、電源波形の負側の時はFETQ4、Q6によって過電圧が発生する。このとき、リレー接点x2を開放すれば、本来の送信系回路として有効に機能させることができる。
【0058】
さらに、例えば300Vの過電圧を阻止する過電圧保護素子26caを設け、過電圧保護素子以上の電圧が発生することを防ぐとともに、過電圧保護素子以上の過電圧となったとき、FETQ1またはFETQ2に電圧が加わり、FETQ1,Q2がONすることにより、設定された電圧を超えた分の電圧をバイパスする構成となっている。
【0059】
図8は同じく送信系26を構成するスイッチ回路26cの別の具体的な回路構成を示す図であって、図7と比較して異なるところは、送信系主回路に代えて各過電圧保護素子26caにそれぞれ並列にリレー接点x2−1,x2−2を設けた例であり、小容量のリレー接点に置換え可能となるので、より小型の端末9を実現することが可能である。
【0060】
(5) さらに、別の発明に係る監視制御システムとしては、前述する図5によれば、複数の個所に信号を注入することにより、同じ信号が複数存在する。例えば図5では、例えば4個所注入する場合、受信側である親局8側演算処理制御手段14(逆の受信の場合には端末側演算処理制御手段25となる)は、図9に示すごとく、最低2回規定の信号を受信したときに当該信号が有効であると判断する処理を実行する。
【0061】
具体的には、電源波形から零クロスを検出した後、所定の信号取得タイミングか否かを判断し(S1)、信号取得タイミングと判断されたとき、順次所定の角度30度、150度、210度、330度毎の信号取得を行う(S2)。この取得結果、信号有りと判断された場合(S3)、それぞれ当該信号が規定長以上か否かを判断し(S4)、規定長以下の場合には完全なノイズ信号として破棄し(S5)、規定長以上である場合には何れの角度の信号かを判断し(S6)、所定角度外の信号であれば、同様に完全なノイズ信号として破棄する(S5)。
【0062】
ステップS6において所定角度の信号であれば、その角度及び信号を受信バッファ(図示せず)に格納する(S7)。そして、受信バッファに信号を格納した後、所定角度に関する2回の信号受信有りかを判断し(S8)、1回のみ信号受信有りの場合には無効と判断し、受信信号を破棄する(S9)。一方、全く信号受信無しか、あるいは2回以上信号有りと判断された場合、受信信号無しまたは受信信号は有効と判断し、上位システム3に信号無し、あるいは有効な受信信号を伝送する(S10)。
【0063】
図10は送信パターンと受信パターンとの関係の他、受信信号の採用・不採用の状態を表した図である。
【0064】
従って、以上のような実施の形態によれば、受信信号の中から完全なノイズを除去する一方、所定の角度のときに送信された規定長さ以上の信号を複数回受信した場合に有効な受信信号と判断するので、的確に信号の有無を判断でき、端末9からの信号および信号無しを上位システム3に通知できる。
【0065】
(6) さらに、別の発明に係る監視制御システムの実施の形態について説明する。
【0066】
図2に示すごとく、電源発生装置4から発生される定電流電源波形の位相制御によって低振幅電流波形S1から高振幅電流波形S2に切換えた場合、一般的にはノイズが発生するが、図3に示すように受信系21にローパスフィルタLPFを設ける他、受信信号取得回路21cおよび演算処理制御手段25を用いて、受信波形からノイズを除去することが行われている。
【0067】
具体的には、ローパスフィルタLPFを通した後の受信波形x(n)に対し、受信信号取得回路21cおよび演算処理制御手段25において、図11に示すように予めノイズレベルを設定し、使用周波数αの1倍波、2倍波、3倍波、の振幅スペクトラムを取り込むが、信号注入開始のスタート信号期間(図4参照)以前のピーク値をノイズレベルと定義し、このノイズレベルを所定レベル(しきい値)を越えたときに信号有りと判断する。
【0068】
その結果、定電流電源波形の位相制御によってノイズが発生するが、信号注入開始のスタート信号期間以前のピーク値をノイズとするので、ノイズを除去した受信信号を確実に取り込むことが可能である。
【0069】
なお、以上のような技術手段は、端末だけでなく、親局8においても同様の適用できるものである。
【0070】
(7) さらに、別の発明に係る監視制御システの実施の形態について説明する。
【0071】
端末9側では、ゴムトランス10の2次側の負荷を変動させる信号発生要因としては、送信系26からの信号発生の他、灯火断芯検出時の過電圧発生が上げられ、これらの判定が難しい。
【0072】
そこで、端末9側の演算処理制御手段25は、図12に示すように、送信開始時、予め内蔵される過電圧カウンタのカウント値をリセットした後(S11)、電源波形の零クロス毎にチェック処理を実施し(S12)、送信タイミングか否かを判断し、送信タイミングに達したとき、送信を実行する(S13,S14)。ステップS13において送信タイミングでない場合、過電圧発生か否かを判断し(S15)、過電圧発生の場合には過電圧カウンタが+1をインクリメントした後(S16)、この過電圧カウンタのカウント値nが予め定められるカウント値4以上となったか否かを判断し(S17)、過電圧カウンタのカウント値=4以上となった場合、灯火Lが断芯であると判断する(S18)。
【0073】
従って、以上のような実施の形態によれば、送信時期を除いて各電源波形毎に過電圧の発生状況を計数し、所定回数以上過電圧を計数したとき、灯火断芯による過電圧と判断するので、信号送信時の過電圧と確実に識別しながら灯火Lの断芯を検出することができる。
【0074】
なお、本願発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、各実施の形態は可能な限り組み合わせて実施することが可能であり、その場合には組み合わせによる効果が得られる。さらに、上記各実施の形態には種々の上位,下位段階の発明が含まれており、開示された複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得るものである。例えば問題点を解決するための手段に記載される全構成要件から幾つかの構成要件が省略されうることで発明が抽出された場合には、その抽出された発明を実施する場合には省略部分が周知慣用技術で適宜補われるものである。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、定量的な送信信号を発生することができ、またノイズを除去して適切な受信信号を受信でき、高い通信品質を確保できる電力線搬送を用いた空港設備監視制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わる電力線搬送を用いた空港設備監視制御システムの全体構成を示す図。
【図2】 図1に示す電源発生装置から発生される2つの定電流電源波形のうち、低振幅電流電源波形をある位相角度で位相制御し、高振幅電流電源波形に切換えたときの電流波形の変化を表す図。
【図3】 図1に示す各端末側の構成を具体的に示す図。
【図4】 本発明システムに係る第1の実施の形態を説明する図であって、親局と各端末との電源波形に対する送信信号の送信タイミング図。
【図5】 本発明システムに係わ第2の実施形態を説明する図であって、電源波形に対する送信パターの発生状態を説明する図。
【図6】 本発明システムに係る第3の実施形態を説明する図であって、図5に示す送信パターンごとに変調された送信信号を発生するための説明図。
【図7】 本発明システムに係る第4の実施の形態を説明する図であって、送信系を構成するスイッチ回路の一構成例図。
【図8】 本発明システムに係わ第2の実施形態を説明する図であって、送信系を構成するスイッチ回路の他の構成例を示す図。
【図9】 本発明システムに係る他の実施形態を説明する図であって、受信信号有りを判断するフローチャート。
【図10】 図9に示す判断結果、受信信号を有効な信号として採用するか否かを表す図。
【図11】 本発明システムに係る別の実施の形態を説明する図であって、電源波形のノイズ除去後の受信信号の有無を判断するための一例図。
【図12】 本発明システムに係る別の実施の形態を説明する図であって、信号送信時の過電圧と区別して灯火断芯時の過電圧を識別するための説明図。
【図13】 従来例を説明する電源発生装置から発生される低振幅電流電源波形と高振幅電流電源波形とを示す図。
【図14】 複数のパターンによる位相制御を説明する図。
【符号の説明】
1…オペレータコンソール
2…監視制御盤
3…上位システム
4…電源発生装置
5…電力線
6…フィルタ装置
8…親局
L…灯火
C…センサ
9…端末
10…ゴムトランス
12,21…受信系(21a〜21d)
13,26…送信系(26a〜26c)
14,25…演算処理制御手段
23…断芯検出系(23a,23b)
24…灯火制御系(24a〜24e)
Claims (8)
- 電源発生装置から導出される電力線に変成器を介して親局が接続され、また当該電力線にそれぞれゴムトランスを介して灯火、航空機検出センサを有する端末が接続され、前記親局:端末=1:n(nは第1の整数)が前記電力線を用いて相互に通信を行う電力線搬送を用いた空港設備監視制御システムにおいて、
前記電源発生装置の出力側近傍の前記電力線に設置され、当該電源発生装置から発生するノイズと各端末側の灯火,センサにより発生する信号とがそれぞれ影響しないように信号分離するフィルタ装置と、
このフィルタ装置に前記変成器を介して接続される前記親局は、前記電源発生装置から発生する所定数周期の電源波形に同期してスタート信号及びコマンドを当該電源波形に注入する親局側信号送信処理系と、
前記ゴムトランスの2次側に接続される各端末は、前記親局側信号送信手段に注入されるスタート信号及びコマンドに対し、所定数周期の電源波形ごとに各電源クロス検出タイミングから所定の位相角度ずらし、予め割当てられた前記各端末のアドレス順序に従って順次所要とする信号を当該電源波形に注入する各端末側信号送信処理系と
を備えたことを特徴とする電力線搬送を用いた空港設備監視制御システム。 - 請求項1に記載の電力線搬送を用いた空港設備監視制御システムにおいて、
前記信号送信処理系は、前記電源波形の零クロスの検出タイミングを用いて、当該電源波形の正負の間でそれぞれ同数となる複数、かつ同量の送信パターンにより信号を注入すること特徴とする電力線搬送を用いた空港設備監視制御システム。 - 請求項1又は請求項2に記載の電力線搬送を用いた空港設備監視制御システムにおいて、
前記信号送信処理系は、前記送信パターンの範囲内で所定の周波数信号に対し、当該周波数信号の正側(信号注入時間):負側(信号未注入時間)=n(nは第2の整数):1の関係をもつ送信信号で変調し、前記電源波形に注入することを特徴とする電力線搬送を用いた空港設備監視制御システム。 - 請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の空港設備監視制御システムにおいて、
前記信号送信処理系は、ゴムトランスの2次側ラインに接続される当該信号送信処理系出力端にリレー接点を含むスイッチを接続し、送信信号を注入しない場合にスイッチをオンし、前記信号送信処理系の電力消費を抑制することを特徴とする電力線搬送を用いた空港設備監視制御システム。 - 請求項1又は請求項2に記載の電力線搬送を用いた空港設備監視制御システムにおいて、
前記信号送信処理系は、所定の周波数信号を発生する信号発生回路と、前記送信パターンの範囲内で当該周波数信号の正側(信号注入時間):負側(信号未注入時間)=n(nは第2の整数):1の関係をもつ送信信号を送信する演算処理制御手段と、前記信号発生回路から発生する周波数信号を当該周波数信号の正側:負側=n(nは第2の整数):1の関係をもつ送信信号で変調する送信指令出力回路と、この送信指令出力回路から出力される変調された送信指令を受けて開放し、前記ゴムトランスの2次側ラインに所定の過電圧を発生させるスイッチ回路と、このスイッチ回路の開放により発生する過電圧が前記所定の過電圧を越える電圧を吸収する保護機能回路とを備えたことを特徴とする電力線搬送を用いた空港設備監視制御システム。 - 請求項1又は請求項2に記載の電力線搬送を用いた空港設備監視制御システムにおいて、
前記信号送信処理系から発生される電源波形の正負の間でそれぞれ同数となる複数、かつ同量の送信パターンにより注入される信号を受信する前記親局または各端末の信号受信処理系は、前記電源波形の周期内に複数回にわたって同一の信号を受信した場合、有効な受信信号として処理することを特徴とする電力線搬送を用いた空港設備監視制御システム。 - 請求項1、請求項2および請求項6の何れか一項に記載の電力線搬送を用いた空港設備監視制御システムにおいて、
前記信号送信処理系から発生される電源波形の正負の間でそれぞれ同数となる複数、かつ同量の送信パターンにより注入される信号を受信する前記親局または前記各端末の信号受信処理系は、使用する信号の周波数の倍調波成分信号を受信し、所定期間信号レベルのピークを越える信号量から受信信号の有無を判断することを特徴とする電力線搬送を用いた空港設備監視制御システム。 - 請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の電力線搬送を用いた空港設備監視制御システムにおいて、
前記信号送信処理系は、電源周期の零クロス毎に送信タイミングを除いて過電圧の発生有無を判断し、所定回数過電圧発生のときに灯火の断芯と判断し、送信処理を優先することを特徴とする電力線搬送を用いた空港設備監視制御システム。
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