JP4008182B2 - 中空成形用ニードル型ノズル及び成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液状加圧流体を使用する中空成形用のニードル型ノズルに関する。詳しくは、液状加圧流体の注入口と排出口、及び液状加圧流体の排出用加圧ガスの注入口が、一つのニードル型ノズルに設けられた中空成形用ニードル型ノズルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
樹脂をキャビティ内に完全充填する途中、或いは完全充填工程後に流体を注入して中空成形品を得る成形法に関して多くの検討がなされている。
流体としては、例えば、(i)ガス、(ii)気化性液体、(iii)液体が使用されている。流体が、上記(i)の場合、例えば空気では、成形品の樹脂の冷却効果は小さいが、中空成形後のガスは、成形品のノズル孔から放出されても、中空部内に残っても問題はない。
流体が上記(ii)の場合、例えば低沸点液体では、気化熱による成形品の樹脂の冷却効果が期待できるが、気化により生じたガスは中空成形の樹脂の加圧に使用され、中空成形後のガスは(i)と同様排気される。排気が有害ガスであれば、問題が生じるので、少量の水を導入して蒸発気化させ、冷却と水蒸気による加圧効果を利用した技術が知られており、排気や残留水分は特に問題にならないが、満液の水を利用するのに比較して、冷却や加圧が十分ではない。
流体が上記(iii)の場合、例えば満液として用いる水では、成形品の樹脂の冷却効果は大きいが、中空成形後の液体は成形品の中空部内に多く残ると、型開き時や製品突き出し時に成形品内部より出て金型に付着する恐れがある。金型に付着した液体は、次ショットの成形品表面に付着して外観を悪くしたり、又、金型が腐食する恐れがある。
【0003】
実開平5−68630号公報には、ガス吹込ノズルと冷媒供給口と排気口を有する中空成形用吹込ノズルを使用して、液体窒素を注入して中空成形する方法が開示されている。この技術では同心円筒内に配置された冷媒供給口から液体窒素等が供給され、溶融樹脂を顕熱及び潜熱により冷却固化させた後、気化した窒素ガスが排気口から排出されるが、高価な液化ガスを使用したり、樹脂圧入時に排気口に樹脂が詰まるという問題がある。
【0004】
特開平8−290447号公報(特許第2838670号)には、中空成形用ノズルを使用して、少量の水を注入し、気化させて冷却、加圧させる方法と、多めに水を注入し空洞内に水が残存する方法が開示されている。少量の水の注入の場合には前記の問題がある。多めに水を注入する場合には、注入装置を吸引モードにして、残った水を、注入した場所から吸引する方法が記載されている。しかし、中空部は水注入口以外では外部と遮断されているため、吸引を行うと中空部内が負圧になり、それ以上の水の排出は困難となる。
【0005】
又、液体を満液で使用する方法として、中空成形に使用した液体を排出するために、加圧ガス注入口を液体注入部以外の別の場所に設けて、そこから加圧ガスを注入して液体注入口より液体を排出する方法もある。この方法では、成形品に、液体注入部と加圧ガス注入口の穴が2箇所も開き、しかも液体注入時に加圧ガス注入口が液体で冷却され、固化の進行した樹脂で覆われてしまい、加圧ガスが液体中入部に入り込まないといったトラブルが発生する場合が有る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、液状加圧流体を注入して中空成形を行う際に、成形品に複数のノズル孔を開けることなく、成形品の中空内に液状加圧流体が殆ど残存せず、金型に流体が付着する量が殆ど無く、あるいはまた、樹脂がノズルに詰まり難いニードル型ノズル、及びそれを使用した中空成形法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討した結果、成形品に複数のノズル孔を開けることなく、1本のニードル型ノズルを使用して、ノズル内に2系列の流路を設け、水の注入には該2系列の流路を使用して中空成形し、中空内の水を排出するために、加圧ガスの注入と水の排出にそれぞれ1系列を使用することにより、成形及び排水効率がよく、金型を錆びさせることがない等、上記問題点を解決しうることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明の第1は、金型内の樹脂に液状加圧流体を注入して行う中空成形用のニードル型ノズルにおいて、ニードル型ノズル(1)内に注入孔(2)及び注入排出孔(3)を有し、その少なくとも一方から液状加圧流体(F)を樹脂(P)に注入して中空成形を行った後、注入孔(2)から加圧ガス(A)を注入して、中空内の液状加圧流体(F)を注入排出孔(3)から排出することを特徴とするニードル型ノズルを提供する。
また本発明の第2は、注入孔(2)の周辺に注入排出孔(3)が複数設けられることを特徴とする本発明の第1に記載のニードル型ノズルを提供する。
本発明の第3は、液状加圧流体(F)が、注入孔(2)及び注入排出孔(3)の両者から注入されることを特徴とする本発明の第1又は2に記載のニードル型ノズルを提供する。
本発明の第4は、液状加圧流体(F)が室温で液体の状態であることを特徴とする本発明の第1〜3のいずれかに記載のニードル型ノズを提供する。
本発明の第5は、液状加圧流体(F)が水であることを特徴とする本発明の第1〜3のいずれかに記載のニードル型ノズルを提供する。
本発明の第6は、本発明の第1〜5のいずれかに記載のニードル型ノズルを使用した中空成形方法を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の液状加圧流体注入用ニードル型ノズル1は、注入孔2及び注入排出孔3を有し、その少なくとも一方から液状加圧流体Fを注入して中空成形を行った後、注入孔2から加圧ガスAを注入して、中空内の液状加圧流体Fを注入排出孔3から排出できる構造を有する。
図1に、本発明のノズル1の一例を示す。図1(a)は金型内に突出した先端部の上面図である。ノズル1は外筒11及び内筒12からなり、内筒12は中心に注入孔2を有し、内筒12の外面の一部は切欠かれて外筒11の内面との間で注入排出孔3を形成する。図1(a)では、注入排出孔3が3箇所形成されている。
図1(b)は図1(a)のA−A’断面図であり、ノズル1が中空成形用金型10に取り付けられた状態、及び、ノズル1への液状加圧流体(F)及び加圧ガス(A)の供給および排出に関するラインや設備も示す。
注入孔2および注入排出孔3の形成方法は、ノズル1の内部に注入孔2および注入排出孔3の2種類の孔が設けられればどのような方法で設けられてもよく、上記図1の方法の他に、例えば金属筒の内部に、単に上記2種類の孔を開けたものでもよいし、2本の円筒を同心円筒状に設けたものでもよい。注入孔2および注入排出孔3の数にも、本発明の効果が達成される範囲内において、特に限定はない。
なお、注入孔2および注入排出孔3の配置は、後述するように注入孔2からガスAを供給し、流体Fを注入排出孔3から排出するので、その場合に、ガスAの供給時に、流体Fの排出がアスピレータ効果(ガスエジェクタ効果)により妨げられないように、注入孔2が注入排出孔3を取り巻かない構造がよく、好ましくは複数の注入排出孔3が設けられ、それらが注入孔2の周辺に対照的に、あるいは注入孔2を取り巻くように設けられる。図1(a)は、注入孔2の周辺に3箇所の注入排出孔3が設けられた例である。
注入孔2の先端は、注入排出孔3の開口部よりも突き出して(図5(a))、アスピレータ効果を低減させることもできる。あるいは、注入排出用流路を二重管により設けて注入排出孔3を該二重管の側面に設けて(図5(b))、アスピレータ効果を低減させることもできる。
【0010】
図2は、金型10のキャビティに樹脂ゲート5(図中では単にゲート5と記載している。他の図も同じ。)から樹脂(P)が注入された状態(ここでは、完全充填する途中、すなわちショートショットの状態)を示す。
図3は、注入された溶融状態の樹脂(P)内に、ノズル1の注入孔2及び注入排出孔3の両者から、流体(F)が供給されて樹脂(P)内に中空部8が形成され、金型10内で中空成形品9が成形された状態を示す。注入孔2及び注入排出孔3の両者から、流体(F)が供給されるので、樹脂(P)が注入孔2及び注入排出孔3に多少詰まっても、押し流して、除くことが可能である。
液状加圧流体(F)の供給流路は、図3から判るように、注入孔2が1箇所及び注入排出孔3が3箇所あるので合計2系列の4流路である。液状加圧流体(F)は、このうち少なくとも1系列の流路、好ましくは全2系列の全流路から供給されて樹脂(P)内へ注入される。
図4は、注入孔2からガス(A)が供給され、中空部8内の流体(F)が注入排出孔3から排出され、中空部8内がガス(A)で置換された状態を示す。なお、流体(F)の排出を完全に行ったり、ノズルに流体が残って金型を濡らさないように、流体(F)の大部分を排出後に、注入排出ガス(A)を必要に応じて注入排出孔3から排出させてもよい。
図4から判るように、加圧ガス(A)の供給流路は、注入孔2の1系列の1流路であり、流体(F)の排出流路は、注入排出孔3が3箇所あるので1系列の3流路である。
即ち、本発明の液状加圧流体注入用ニードル型ノズルは、液状加圧流体の流路を2系列有し、該2系列の中の1系列以上の流路より液状加圧流体を注入後、該2系列中の1系列の流路より加圧ガスを注入し、該2系列中の加圧ガス注入流路以外の残りの系列の1以上の流路より液状加圧流体を排出するニードル型ノズルである。
【0011】
ノズル1の外径は、成形品の寸法にもよるが、直径1〜10mm、通常3〜5mmである。ノズル1の外径があまりに大きいと、成形品の機能や外観を損ない、あまりに小さいと流体(F)の排出に時間がかかる。
流体(F)の供給時間は、1〜60秒、好ましくは5〜30秒である。
流体(F)の排出時間は、1〜60秒、好ましくは5〜30秒である。
ノズル1の金型内に設けられる場所は、成形品の形状にもよるが、流体(F)の排出が容易で、流体(F)の残存し易い場所であり、好ましくは重力で流体(F)が溜まる場所である。
【0012】
キャビティへの樹脂(P)の注入は、ショートショットでもハーフショットでもフルショットでもよい。また、金型10にはサイドキャビティを設けて、流体(F)注入時に余分の樹脂がそこに逃げるようにしてもよい。
流体(F)の上記樹脂(P)への注入のタイミングは、金型キャビティ内に樹脂(P)を充填する途中であっても所定量の充填終了後であってもよい。
【0013】
樹脂(P)
樹脂(P)としては、中空射出成形が可能な樹脂であれば、制限はないものが好ましい。樹脂(P)としては、合成樹脂でも天然に由来する樹脂でも、結晶性でも、非晶性でもよい。具体的には、合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1等のポリオレフィン;塩化ビニル系樹脂;ポリスチレン、ABS等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル;シュウ酸、吉草酸等の脂肪族ジカルボン酸類、エチレングリコール、プロパンジオール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール等のジオール類、及び/又は乳酸、カプロラクトン等からなる脂肪族ポリエステル;液晶性ポリエステル;ポリカーボネート;ポリアリレート;6−ナイロン、6,6−ナイロン、4,6−ナイロン、6,12−ナイロンなどのポリアミド;ポリアセタール;ポリウレタン;フッ素樹脂;ポリフェニレンオキシド;ポリアリーレンサルファイド;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリケトン;ポリエーテルケトン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリベンゾイミダゾール;シリコーン系樹脂;これらのアロイ等が挙げられる。
天然に由来する樹脂としては、微生物の産生するポリヒドロキシ酪酸のような脂肪族ポリエステル等が挙げられる。
樹脂には、各種の添加剤、充填材、強化剤を配合することができる。
【0014】
液状加圧流体(F)
液状加圧流体(F)としては、中空成形時、排出時に気化し難いものが好ましく、水;水溶液;鉱物油、植物油、動物油などの油類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類;炭化水素類、塩素化炭化水素類、フッ素化炭化水素類;その他の有機液体などが挙げられる。液状加圧流体(F)としては、樹脂(P)に作用して溶解、変形などを生じないものが好ましい。
流体(F)は、好ましくは温度調節され、必要であれば濾過されて、中空成形に使用される。
流体(F)に加える圧力は、0.1〜150MPa、好ましくは0.1〜30MPaである。
【0015】
加圧ガス(A)
加圧ガス(A)の種類は、流体(F)の排出に使用できるものであれば特に制限はないが、成形品や流体(F)に影響を与えないもの、安全性の高いものが好ましく、空気、窒素、二酸化炭素等が挙げられる。これらのガスは乾燥したものでもよい。
加圧ガス(A)に加える圧力は、流体(F)の排出速度にもよるが、0.1〜30MPa、好ましくは常圧0.1〜10MPaである。
【0016】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1に示すタイプのニードル型ノズルをモデル金型に取り付けて使用した。ニードル型ノズルの外径は5mm、中心の注入孔の孔径は1.6mm、注入排出孔は弦型のものが3箇所設けられており、各々弦長さ2mm、最大間隔0.97mmである。
金型のキャビティは縦20cm、直径4cmである。ニードル型ノズルは金型の底部に取り付けた。
樹脂としては、無充填ポリアセタール樹脂 ジュラコンTMM270S(ポリプラスチックス(株)製)を使用した。
シリンダー温度200℃、金型温度80℃に設定し、液状加圧流体に80℃、圧力0.7MPaの水、加圧ガスに室温、圧力0.5MPaの空気を使用した。樹脂を金型キャビティにショートショットした後、注入孔および注入排出孔の全系列を用いて10秒間水を注入し、次に20秒間注入孔より空気を注入して水を排出し、中空射出成形品を得た。成形品の断面の肉厚は約3mmでほぼ均肉になり、均一な収縮により、寸法精度の優れた成形品が得られた。
成形品の中空成形及び冷却に水を使用すると、窒素による中空成形に比較して冷却時間が短く、水の排出も支障無く、速やかに行われ、中空部内にも殆ど水は残存せず、金型を水で濡らすこともなかった。また、中空射出成形後、ノズル内を点検したが、注入孔及び注入排出孔には樹脂が詰まっておらず、次回の中空射出成形が順調に行われた。
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、液状加圧流体を注入して中空成形を行う際に、成形品に複数のノズル孔を開けることなく、成形品の中空内に液状加圧流体が殆ど残存せず、金型に流体が付着する量が殆ど無く、また、樹脂がノズルに詰まり難い。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明のノズルの一例の上面図である。
(b)本発明のノズルの一例のA−A’縦断面図及び関連設備を示す図である。
【図2】本発明のニードル型ノズルが設けられた金型に樹脂を充填した一例の断面図である。
【図3】図2で、樹脂を充填した後、液状加圧流体を注入した一例の断面図である。
【図4】図3で、液状加圧流体を注入した後、加圧ガスを注入して液状加圧流体を排出する一例の断面図である。
【図5】本発明のニードル型ノズルの先端部付近の他の例を示す図である。
【符号の説明】
1 ニードル型ノズル
2 注入孔
3 注入排出孔
5 樹脂ゲート
8 中空部
9 成形品
10 金型
11 外筒
12 内筒
A 加圧ガス
F 液状加圧流体
P 樹脂
Claims (6)
- 金型内の樹脂に液状加圧流体を注入して行う中空成形用のニードル型ノズルにおいて、ニードル型ノズル(1)内に注入孔(2)及び注入排出孔(3)を有し、その少なくとも一方から液状加圧流体(F)を樹脂(P)に注入して中空成形を行った後、注入孔(2)から加圧ガス(A)を注入して、中空内の液状加圧流体(F)を注入排出孔(3)から排出することを特徴とするニードル型ノズル。
- 注入孔(2)の周辺に注入排出孔(3)が複数設けられることを特徴とする請求項1に記載のニードル型ノズル。
- 液状加圧流体(F)が、注入孔(2)及び注入排出孔(3)の両者から注入されることを特徴とする請求項1又は2に記載のニードル型ノズル。
- 液状加圧流体(F)が室温で液体の状態であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のニードル型ノズル。
- 液状加圧流体(F)が水であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のニードル型ノズル。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のニードル型ノズルを使用した中空成形方法。
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