JP4006828B2 - 高純度の片末端ラジカル重合性官能基含有オルガノポリシロキサンの製造方法 - Google Patents

高純度の片末端ラジカル重合性官能基含有オルガノポリシロキサンの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高純度の片末端ラジカル重合性官能基含有オルガノポリシロキサン(以下ラジカル重合性シリコーンと略称する)の製造方法に関し、特に、製造工程中に副生するラジカル重合性シラノ−ルを除去するための精製工程に特徴を有する製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
ラジカル重合性シリコーンから得られるグラフトポリマーは各種フィルム、プラスチック、ゴム、ワックスなどの高分子製品や紙、ガラス等の表面処理剤、叉はシャンプー、リンス、ヘアーセット剤等の改質剤として用いられ、これらの製品に撥水性、防汚性、非接着性、耐熱性、耐摩耗性、生体適合性などの機能を付与することができる。
従来、分子量が制御され、かつ、分散度が低いラジカル重合性シリコーンは、シクロトリシロキサンを有機リチウム化合物またはリチウムシラノレートを重合開始剤として開環重合し、ラジカル重合性官能基をもつ末端停止剤で反応を停止することによって製造されている。このような製造方法として特開昭59−78236号公報を例示することができる。
この製造方法における反応式を以下に示す。
【0003】
【化8】
Figure 0004006828
ここにpは3または4であり、R1、R2、R3、n及びmは後述する通りである。
【0004】
有機リチウム化合物またはリチウムシラノレートを重合開始剤として、シクロトリシロキサンまたはシクロテトラシロキサンを開環重合させる。生成した開環重合体は末端がリチウムシラノレ−トであるためにモノマ−であるシクロトリシロキサンまたはシクロテトラシロキサンが完全に消費されるまで重合が進行する。
【0005】
このような重合物にクロロシランを反応させると片末端に官能基のあるポリシロキサンを合成することができる。これらのクロロシランは末端停止剤と呼ばれる。下式はメタクリル酸エステル基を導入させた例である。
【0006】
【化9】
Figure 0004006828
ここにn、mは上述した通りである。
【0007】
上式のように、片末端にラジカル重合官能性基を導入するためには、アニオン開環重合開始剤である有機リチウム化合物またはリチウムシラノレートと等モルもしくは過剰のモル数の末端停止剤を使用しなければならない。このように製造した反応液には塩化リチウムが混入しているため、塩化リチウムを水で抽出する方法が取られる。この際に過剰に使用した末端停止剤が下式のように加水分解を受けラジカル重合性シラノ−ルを生成する。下式はメタクリル酸エステルの場合を例示した。
【0008】
【化10】
Figure 0004006828
【0009】
この様に生成したラジカル重合性シラノ−ルは製品であるラジカル重合性シリコーンに対し好ましからざる夾雑物となる。したがって、ラジカル重合性シラノ−ルのような夾雑物を除くために、減圧下に加熱して留去するといった方法をとることが一般的であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、減圧下に加熱してラジカル重合性シラノ−ルを除去する方法は、ラジカル重合性シラノ−ルが留去途中で重合を起こし、製造設備の停止などのトラブルの原因となる。また、このようなラジカル重合性シラノ−ルは加熱することによってラジカル重合性シリコーンと共重合を起こすことがあり、この共重合体は好ましからざる高分子化合物としてラジカル重合性シリコーンに混入する。
通常のラジカル重合性モノマーは製造工程で一部が重合したとしても、蒸留操作による精製工程で重合した部分との分離が可能である。しかしながら、ラジカル重合性シリコーンは、それ自体にポリマーの性質をもっており、一般に蒸気圧を持たないために、通常のラジカル重合性モノマーのように蒸留操作による精製工程で重合した部分との分離ができない。
【0011】
このようにして生成する好ましからざる高分子化合物の混入は、このラジカル重合性シリコーンをほかのラジカル重合性モノマーと共重合し、構造が明確なグラフトポリマーを製造する際に重大な問題となり、グラフトポリマーに本来付与すべき撥水性、防汚性、非接着性、耐熱性、耐摩耗性、生体適合性などの機能を低下させる原因となる。
【0012】
本発明者らは、好ましからざる高分子化合物が混入したラジカル重合性シリコーンから好ましからざる高分子化合物を除くことにより好ましからざる高分子化合物の混入していないラジカル重合性シリコーンを取り出すという精製方法を見出した。しかしながら、さらに根本的な解決法が望まれていた。
この様な実状において本発明者らは鋭意検討した結果、ラジカル重合性シラノ−ルが混入したラジカル重合性シリコーンから吸着剤によりラジカル重合性シラノ−ルを除くという精製方法を見出した。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、R(RSiO) Li[nは0以上500以下の整数である。]を開始剤とし、(RSiO)[pは3または4である。]の環状化合物を開環重合させた後、一般式(5)、(6)または(7)で示される化合物で重合を停止することよりなる、一般式(1)で示される数平均分子量が500以上50000以下で分散度(Mw/Mn)が1.8以下の片末端ラジカル重合性官能基含有オルガノポリシロキサンの製造工程において、副生するラジカル重合性シラノ−ルを含む片末端ラジカル重合性官能基含有オルガノポリシロキサンから、二酸化珪素を主成分とする吸着剤を用いる精製工程によって、ラジカル重合性シラノ−ルを除去することを特徴とする片末端ラジカル重合性官能基含有オルガノポリシロキサンの製造方法に関するものである。
【0014】
【化11】
Figure 0004006828
【化12】
Figure 0004006828
【化13】
Figure 0004006828
【化14】
Figure 0004006828
【0015】
(式中R1、R2、R3はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基または弗素を含む炭素数1〜4のアルキル基であり、R4、R5はメチル基またはフェニル基または弗素を含む炭素数1〜4のアルキル基であり、R6は一般式(2)、(3)または(4)で示される基であり、mは式(1)で示されるオルガノポリシロキサンの数平均分子量が500〜50000になるような値を取ることができ、Xはハロゲン元素またはアシルオキシ基である。)
【0016】
【化15】
Figure 0004006828
【化16】
Figure 0004006828
【化17】
Figure 0004006828
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
(RSiO) Li(nは0以上500以下)で表わされる開始剤としては、リチウムトリアルキルシラノレートまたはアルキルリチウムが用いられる。具体的にはリチウムトリメチルシラノレート、リチウムトリエチルシラノレート、リチウムトリプロピルシラノレート、リチウムトリブチルシラノレート、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなどがあげられるが、特にn−ブチルリチウムまたはリチウムトリメチルシラノレートが好ましい。
【0018】
また、(R45SiO)P[pは3または4]で表わされる環状化合物としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサエチルシクロトリシロキサン、オクタエチルシクロテトラシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサンなどがあげられるが、このうちヘキサメチルシクロトリシロキサンおよびオクタメチルシクロテトラシロキサンが好ましく、中でも特にヘキサメチルシクロトリシロキサンが好ましい。
【0019】
開環重合の停止には一般式(5)または一般式(6)または一般式(7)で示される化合物を使用する。この中のXはハロゲン元素またはアシルオキシ基であるが、入手の容易さから塩素元素であることが好ましい。
開環重合後、重合停止を行なった反応液は通常反応溶媒を留去し、目的のラジカル重合性シリコーンを取り出す。
【0020】
本発明の精製工程で使用する二酸化珪素を主成分とする吸着剤は、好ましくは50%以上のSiO2分を含むものが良い。ラジカル重合性シリコーンに金属分などが混入しないように望ましくは二酸化珪素が95%以上のものが好ましい。過度の水分が含有していないものが好ましいが、通常流通している吸着剤に含まれている程度の水分や結晶水などであれば問題にならない。形状は比表面積を大にする必要が有るため粒状又は粉体状が好ましい。粒度分布や粒径などに特に限定はない。粒度分布や粒径などの問題は本発明を実施したときの製造設備における処理時間や経済性などに影響する。
本発明で使用される吸着剤としての具体例としてシリカゲルが好ましい。シリカゲルとしては天然品及び合成品のどちらでもよい。シリカゲルを酸処理したり、あるいは減圧下に加熱するなどして活性化処理したものを用いることもできる。市販のものでは脱水剤、乾燥剤、クロマトグラフ用の充填剤等の高純度のシリカゲルも使用することができる。
【0021】
吸着剤によりラジカル重合性シリコーンからラジカル重合性シラノ−ルを吸着させる方法は吸着の一般的な方法が採用できる。ラジカル重合性シリコーンに吸着剤を添加して攪拌することによりラジカル重合性シラノ−ルを吸着させる方法、吸着剤を充填した塔にラジカル重合性シリコーンを通しラジカル重合性シラノ−ルを吸着させる方法などが例示される。
【0022】
吸着操作を行うときのラジカル重合性シリコーンに対する吸着剤の使用量は特に限定されない。本発明を実施したときの経済性など理由によって決定される。また、吸着の方法に関わらず吸着させるときの温度には特に規定はないが、操作の容易性から通常室温で行われる。。
攪拌槽方式で吸着操作を行なった場合は、吸着によりラジカル重合性シラノ−ルを除いた後、吸着剤を濾過により除かねばならないが、この場合も濾過の一般的な方法が採用できる。濾過の装置としては加圧濾過器、減圧濾過器、遠心濾過器などが例示される。
本発明のラジカル重合性シリコーンの精製方法を実施例により詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるわけではない。
【0023】
【実施例】
α−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサンの合成
300mlフラスコに窒素気流下、トルエン100gとヘキサメチルシクロトリシロキサン90gを仕込み、150℃で1時間トルエン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン溶液24gを留出させながら共沸脱水を実施した。この系を室温まで冷却後、得られた生成物の組成をGC(ガスクロマトグラフィー)で分析したところ、トルエン83.0g、ヘキサメチルシクロトリシロキサン83.0gであった。次に、n−ブチルリチウムの1.64mol/l−ヘキサン溶液を4.5ml加え、1時間撹拌後、無水酢酸0.07gを添加し、100℃で30分間撹拌した。次に、15℃で、ジメチルホルムアミドを8ml加え、2時間重合させた。次いで、3−メタクリロキシプロピルジメチルクロロシランを1.6g加え、3時間攪拌して重合を停止させた。このときのヘキサメチルシクロトリシロキサンの転化率は82%であった。さらに、得られた生成物にイオン交換水を加えて水洗し、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水した後に濾過した。[ロータリーエバポレーターで、濾液からトルエン、未反応のヘキサメチルシクロトリシロキサンおよび低分子量不純物を溜去させた。]
実施例1
α−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン(Mn=13000)の60wt%トルエン溶液50g(ラジカル重合性シラノ−ルを230ppm含有している)およびシリカゲル40〜60mesh(関東化学(株)製)1.5gをガラス容器に入れ、撹拌子を入れて1.5時間攪拌を行った。
攪拌終了後、濾過し、濾液中のラジカル重合性シラノ−ルをFID−GCで測定したところ50ppm以下であった。
【0024】
実施例2〜9
シリカゲル40〜60mesh(関東化学(株)製)1.5gを入れる代わりに表1に示す吸着剤1.5gを加えた以外は、実施例1と同様に行なった。
濾液中のラジカル重合性シラノ−ルをFID−GCで測定したところ、いずれも50ppm以下であった。
【0025】
比較例1〜6、比較例
シリカゲル40〜60mesh(関東化学(株)製)1.5gを入れる代わりに表1に示す吸着剤1.5gを加えた以外は、実施例1と同様に行なった。
濾液中のラジカル重合性シラノ−ルをFID−GCで測定した。いずれも表1に示す量のラジカル重合性シラノ−ルが残っていた。
【0026】
表1
Figure 0004006828
【0027】
実施例10
直径30mmのガラスカラムにワコーゲルC−300(和光純薬(株)製)を充填高さ35mmになるように充填した。このカラムの上部からα−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン(Mn=13000)の60wt%トルエン溶液(ラジカル重合性シラノ−ルを1070ppm含有している)を通液速度約10ml/分で通液した。流出液800mlをFID―GCを測定したところラジカル重合性シラノ−ルは検出されなかった。
【0028】
実施例11
直径30mmのガラスカラムにシリカゲルBW38(富士デヴィソン(株)製)を充填高さ35mmになるように充填した。このカラムの上部からα−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン(Mn=13000)の60wt%トルエン溶液(ラジカル重合性シラノ−ルを1070ppm含有している)を通液速度約2ml/分で通液した。流出液1000mlをFID―GCを測定したところラジカル重合性シラノ−ルは検出されなかった。
【0029】
【発明の効果】
本発明は二酸化珪素を主成分とする吸着剤により不純物を除去するため、製造されたラジカル重合性シリコーンは、分子量分布が狭く制御され、分子の片末端にラジカル重合性官能基を1個有し、ラジカル重合性シラノ−ルを含まないとともに、不純物であるラジカル重合による高分子量化合物を含まない単分散ポリマーである。このような高純度のラジカル重合性シリコーンを用いることにより、グラフト重合時に構造が明確なグラフトポリマーを得ることができる。この高純度のラジカル重合性シリコーンまたはこれを用いたグラフトポリマーは、各種フィルム、プラスチック、ゴム、ワックスなどの高分子物質や紙、ガラスなどの表面処理剤、またはシャンプー、リンス、ヘアーセット剤などの日用品の改質剤として用いられ、これらの製品に撥水性、防汚性、非接着性、耐熱性、耐摩耗性、生体適合性などの機能を付与することができる。

Claims (2)

  1. (RSiO) Li[nは0以上500以下の整数である。]を開始剤とし、(RSiO)[pは3または4である。]の環状化合物を開環重合させた後、一般式(5)、(6)または(7)で示される化合物で重合を停止することよりなる、一般式(1)で示される数平均分子量が500以上50000以下で分散度(Mw/Mn)が1.8以下の片末端ラジカル重合性官能基含有オルガノポリシロキサンの製造工程において、副生するラジカル重合性シラノ−ルを含む片末端ラジカル重合性官能基含有オルガノポリシロキサンから、二酸化珪素を主成分とする吸着剤を用いる精製工程によって、ラジカル重合性シラノ−ルを除去することを特徴とする片末端ラジカル重合性官能基含有オルガノポリシロキサンの製造方法。
    Figure 0004006828
    Figure 0004006828
    Figure 0004006828
    Figure 0004006828
    (式中R、R、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基または弗素を含む炭素数1〜4のアルキル基であり、R、Rは独立にメチル基またはフェニル基または弗素を含む炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは一般式(2)、(3)または(4)で示される基であり、mは式(1)で示されるオルガノポリシロキサンの数平均分子量が500〜50000になるような値を取ることができ、Xはハロゲン元素またはアシルオキシ基である。)
    Figure 0004006828
    Figure 0004006828
    Figure 0004006828
  2. 二酸化珪素を主成分とする吸着剤がシリカゲルである請求項1に記載の片末端ラジカル重合性官能基含有オルガノポリシロキサンの製造方法。
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