JP4006685B2 - 消防設備の点検用接続治具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビルディングなどに設けられた消防設備の点検用接続治具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ビルディングなどの建築物の消防設備として、連結送水管設備がある。この設備は、建築物の外部の消防車が近づき易い場所に設けた送水口に、建築物内に設けられ、逆止弁を介して屋上に達する送水管を接続し、この送水管に各階ごとに分岐管を設けて放水口を取付けたものである。
そして、火災が発生したときは、消防車の付近の送水口に消防用ホースの差込み金具を接続して消火用水を送水管に圧送すると共に、火災発生階の放水口に消防用ホースを連結して放水し、消火する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−89158号公報(第2〜第3頁、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
消防設備は定期点検が行われているが、上記のような連結送水管設備においては、従来は外観検査しか行われていなかったため、実際に送水管に水を圧送して、漏水がないかどうかの耐圧試験(点検)を行うことが望まれていたが、此の度このような点検が義務付けられることになった。
【0005】
連結送水管設備において、漏水の点検を行う場合は、前述の火災の発生の場合と同様に、送水口に消防用ホースの差込み金具を接続して送水管に水を圧送して漏水の有無を点検すればよいが、若し漏水箇所がある場合は、そこから水が流出して大きな水損を生じることになる。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、水による点検を行う前に送水管に圧縮空気を送り、空気の漏洩がないことを確認したのち水を圧送して点検を行うことにより、水損の発生を未然に防止することのできる消火設備の点検用接続治具を提供することを目的としたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る消防設備の点検用接続治具は、先端部に前記送水口の中央部付近に設けた弁座に当接するフランジを有し、該フランジの下面にシール部材が取付けられた第1の円筒部材と、先端部にフランジを有し、前記第1の円筒部材の外側に回転自在かつ軸方向に移動可能にねじ嵌合された第2の円筒部材とを備え、該第2の円筒部材が嵌合された前記第1の円筒部材を前記送水口に挿入し、前記第1の円筒部材のフランジによって前記送水口の弁座の上方に設けられて中心部側に付勢された複数の係止爪を後退させ、前記第2の円筒部材のフランジの通過によって該係止爪を復帰させて、前記第2の円筒部材のフランジの上面を該係止爪に係止させ、前記第2の円筒部材を回転させて前記第1の円筒部材を前進させ、そのフランジの下面を前記弁座に当接させて前記シール部材により前記第1の円筒部材のフランジと前記弁座との間を気密にシールするように構成したものである。
【0010】
上記の点検用接続治具において、前記送水口は差込み式の継手からなり、前記点検用接続治具は、前記第2の円筒部材の外側に前記複数の係止爪の係止を解除する解除部材を設け、前記第1の円筒部材を空気圧源に接続して前記送水口側に空気を供給するようにした。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は本発明を実施する連結送水管設備の一例の説明図である。図において、50は各階f1〜fn+1及び屋上Rfからなる建築物で、51はその外壁である。1は建築物50の外壁51の消防車が近づき易い場所に設置された連結送水管の送水口、2は屋内側に敷設された送水管で、一端が送水口1に接続された横管3と、この横管3の他端に接続され建築物50の上下方向に屋上Rfまで延長されて設置された縦管4とからなっている。そして、横管3には、常時閉止された排水弁5、逆止弁6及び常時開放された止水弁7が設けられている。
8は建築物50の3階f3以上の階及び屋上Rfにおいて、送水管2に接続された分岐管で、常時は閉止された放水口9がそれぞれ接続されている。
【0012】
次に、送水口1の一例を図2により説明する。この送水口1は一般にマチノ式継手と呼ばれているもので、本体11にはV字状に形成された差込み式の継手からなる円筒状の2つの接続口12が設けられているが、両接続口12は同じ構造なので、以下断面で示した一方の接続口12について説明する。なお、以下の説明では図の右側を上部、左側を下部という。
【0013】
13は本体11にねじ結合された中空の受け金具で、上端部には内フランジ14が設けられており、下端部には弁ガイド15がねじ結合されている。そして、受け金具13の中央部近傍に設けた弁座16と弁ガイド15との間には、パッキン18を有する弁体17が上下に摺動可能に配設されており、この弁体17は弁ガイド15との間に介装されたばね19により常に弁座16に圧着するように付勢されている。
【0014】
21は内フランジ14と弁座16との間に設けた凹溝20内に配設されたリング状で断面U字状のパッキンである。23は受け金具13の内フランジ14と、本体11の上端部に設けた内フランジ22との間に、リング状の爪座24を介して配設された複数の係止爪で、この係止爪23は図示しない付勢手段により常時中心部に向って図の位置(受け金具13の内フランジ14の内周縁より内側に突出した位置)まで付勢されている。25は本体11の内フランジ22の上面側に配設され、飾りリング26で固定された破壊板で、接続口12を閉鎖している。
【0015】
上記のような連結送水管設備において、火災が発生したときは、送水口1の近傍に停車した消防車の消防用ホースの差込み金具(図示せず)を、破壊板25を破って接続口12内に挿入する。このとき、差込み金具の先端部に設けたフランジが係止爪23の付勢力に抗して内部に侵入し、フランジの上縁部が係止爪23に係止してその位置にロックされる。このとき、フランジの先端部は受け金具13の弁座16の上面に当接し、外周部はパッキン21により水密にシールされる。
【0016】
この状態で消防車から消火用水を圧送すると、水圧により弁体17が下方に移動して開放され、消火用水は送水管2内に充水される。一方、消防隊員は火災発生階に直行して放水口9に消火用ホースを接続し、放水口9を開栓して消火用水を放水し、消火する。
【0017】
鎮火したときは、消火用水の圧送を中止すると共に放水口9を閉鎖して消火用ホースを取外し、排水弁5を開放して送水管2内の水を下水道等に排水する。
そして、差込み金具に設けた図示しない解除部材により係止爪23を後退させてロックを解除し、差込み金具を接続口12から引き抜き、破壊板25を交換して元の状態に戻す。
【0018】
ところで、連結送水管接続の耐圧検査のために漏水の点検を行う場合、前述のように、当初から送水管2に水を圧送して点検を行うと、若し水漏れ箇所があった場合はその箇所から水損を生じるおそれがあるので、本発明の発明者らはその対策について種々研究し、実験を行った結果、水による点検を行う前に送水口1から送水管2に圧縮空気を送り、漏洩がないことを確認したのち水による点検を行えば、上記のような水損を回避できることに着目した。
【0019】
しかしながら、前述のような差込み金具をコンプレッサや加圧空気ボンベの如き空気圧源に接続して送水口1の接続口12に接続しても、接続口12と差込み金具との間にガタツキが生じることがあり、また、供給する空気圧が低い(例えば、0.2MPa程度)ため、空気が漏洩して送水管2内に所定圧の空気を充填することができず、確実に点検ができないという問題が生じた。
【0020】
そこで、発明者らは、接続口12に接続したときに空気が漏洩するおそれのない点検用接続治具を開発した。以下、この点検用接続治具について説明する。
【0021】
図3は本発明に係る点検用接続治具の一例の断面図である。31は点検用接続治具30を構成する第1の円筒部材で、下部(先端部)にはフランジ32が設けられており、フランジ32の下面にはOリングの如きシール部材33が装着されている。なお、フランジ32の外径は、送水口1の受け金具13に設けた内フランジ14の内径とほぼ等しく形成されている。34は下部外周に設けたおねじ、35は上端部外周に設けられパイプレンチ等が係止する切除部、36は上部内周に設けられた空気圧源の接続具が螺入されるめねじである。
【0022】
37は第1の円筒部材31の外周に回転自在に嵌合した第2の円筒部材で、下部(先端部)には第1の円筒部材31のフランジ32と同じ外径のフランジ38が設けられており、また、下部内周には第1の部材31のおねじ34に螺合するめねじ39が設けられている。このように、両者をねじ34,39で連結することにより、第2の円筒部材37は第1の円筒部材31の外側に回転自在に嵌合さ、かつ第1の円筒部材31に対して軸方向に移動可能に設けられている。40は上部外周に着脱可能に設けた複数のハンドルである。この場合、第1,第2の円筒部材31,37のフランジ32,38の合計厚みt1は、送水口1の受け金具13の弁座16の上面と、係止爪23の下面との間隔tとほぼ等しく形成されている。なお、第2の円筒部材37のフランジ38に代えて、第2の円筒部材37の下部の送水口1の係止爪23に対応した位置に突出部を設けてもよい。
【0023】
41は円筒部42とフランジ部43からなり、第2の円筒部材37の外周に軸方向に摺動自在に嵌合された差込み解除部材で、円筒部42の外径は第2の部材37のフランジ38の外径とほぼ等しいか、又はこれより若干大きく形成されている。
【0024】
上記のような点検用接続治具30を組立てるには、先ず、ハンドル40を取外した第2の円筒部材37に上部側から差込み解除部材41を嵌合し、ついで、第2の円筒部材37にハンドル40を取付ける。この状態で、第1の円筒部材31に第2の円筒部材37を嵌合し、そのめねじ39を第1の部材31のおねじ34に螺合する。このとき、第2の円筒部材37のフランジ38の下面を第1の円筒部材31のフランジ32の上面に当接させる。
【0025】
次に、上記のような点検用接続治具30の送水口1への接続手順について説明する。先ず、破壊板25を破って、点検用接続治具30を第1の円筒部材31のフランジ32で係止爪23を後退させながら送水口1の接続口12に挿入する。なお、送水口1の種類によっては破壊板25を備えていないものもある。このタイプの送水口1の場合は、飾りリング26がキャップを構成しているので、このキャップを外して点検用接続治具30を直接接続口12に挿入すればよい。また、破壊板25があるものでも、同様に飾りリング26などのキャップを外して、破壊板25を取外してから点検を行うようにしてもよい。フランジ38が係止爪23の下端部を通過すると係止爪23は付勢手段により再び元の位置に戻り、フランジ38の上面に係止してロックする。このとき、第1の円筒部材31のフランジ32の下面と、受け金具13の弁座16の上面との間には、すき間gが生じる場合がある。このときの状態を図4に示す。
【0026】
この状態でハンドル40により第2の円筒部材37を回転する。なお、このとき第1の回転部材31が一緒に回転するようであれば、切除部35を軽く手で押えるか、パイプレンチなどの工具を取付けて固定する。これにより、第2の円筒部材37はねじ作用により軸方向に移動して後退しようとするが、そのフランジ38が係止爪23によりロックされて移動が阻止されているため、その反力により第1の円筒部材31が前進し、図5に示すように、フランジ32の下面が受け金具13の弁座16の上面に当接し、シール部材33が密着して両者の間を気密にシールする。
点検用接続治具30を送水口1から取外すときは、差込み解除部材41を前進させ、その円筒部42により係止爪23を後退させて第2の円筒部材37のフランジ38への係止を解除し、点検用接続治具30を引き出せば、容易に取外すことができる。
【0027】
上記のように構成した点検用接続治具30によれば、送水口1の接続口12にガタツクことなく確実に固定することができ、かつシール部材33により気密にシールすることができるので、空気が漏れることがない。
【0028】
次に、本発明に係る連結送水管設備の点検方法について説明する。
先ず、点検用接続治具30を前述の要領により送水口1の接続口12に接続する。そして、圧力計及び開閉弁を備えた送水口接続治具(図示せず)を点検用接続治具30の切除部35側に接続し、この送水口接続治具を直接又はホースを介してエアコンプレッサや加圧空気ボンベ等の空気圧源に接続する。なお、点検用接続治具30の切除部35にパイプレンチ等の工具をはめて、初めに切除部35のめねじ36をエアコンプレッサ等の空気圧源側のホース(又は配管)に接続し、その後点検用接続治具30を送水口1に接続してもよい。
【0029】
この状態で止水弁7を閉じ、送水口接続治具の開閉弁を開き、図示しないレギュレータにより所定の圧力(例えば、0.2MPa)に調整した空気を止水弁7の上流側に導入して開閉弁を閉じ、空気の供給を停止する。そして、所定の時間(例えば、5分間)送水口接続治具に設けた圧力計により空気の漏洩の有無を確認する(空気漏れがあれば、空気圧が低下する)。空気漏れがないか又は極く僅かな場合は、次に述べる配管全体の点検を行う。なお、最初に送水口1と放水口9との間に設けた止水弁7を閉じてその上流側の点検を行ったのは、この近辺が水漏れのおそれが一番大きいためで、送水管2全体の点検を行う前に、先ず、この部分の点検を行うことが望ましい。
【0030】
配管全体の点検を行うにあたっては、止水弁7を開放して送水口接続治具の開閉弁を開き、レギュレータにより所定の圧力(例えば、0.2MPa)に調整した空気を送水管2に導入し、その後空気の供給を停止して所定の時間(例えば、5分間)、圧力計により空気の漏れを確認する。なお、このとき、屋上の放水口9にも圧力計を取付けて、所定圧力(例えば、0.2MPa)になっているかを確認する。点検が終ったときは、屋上の放水口9を開放して送水管2内の空気を排出する。
【0031】
空気の漏れがなかった場合、又は僅かな空気の漏れ(水圧試験を行っても水損を生じない程度)の場合は、次に述べる加圧水による点検を行う。なお、漏れ量が多い場合は、点検を継続するかどうかなど、今後の対策を検討する。
【0032】
次に、圧力計及び開閉弁を介して水圧源に接続された差込み金具(図示せず)を送水口1の接続口12に接続し、設計送水圧力で送水管2に送水したのち加圧を停止し、所定の時間(例えば、3〜5分間)耐圧性能の点検を行う。異常がなければ開閉弁を閉じて排水弁5を開き、送水管2から排水して点検を終了する。なお、加圧水による点検を行う場合にも、空気による点検の場合と同様に、先ず、止水弁7を閉じてその上流側の耐圧点検を行ったのち、配管全体の耐圧点検を行うことが望ましい。
【0033】
本発明に係る連結送水管設備の点検方法によれば、はじめに配管全体に水を供給せず、先ず空気を供給して配管腐食による漏れがないかどうかを確認するようにしたので、若し、配管等にひび割れや破損による漏れ箇所があっても水漏れによる水損を生じることなく、異常のあることを知ることができる。
また、最初に止水弁を閉じて比較的漏れが発生し易い送水口の近辺を点検してから、配管全体の点検をするようにしたので、無駄なく確実に点検を行うことができる。
【0035】
【発明の効果】
本発明に係る消防設備の点検用接続治具は、先端部にシール部材が設けられた第1の円筒部材と、この第1の円筒部材の外側に回動可能に嵌合され第1の円筒部材と軸方向に移動可能にねじ連結された第2の円筒部材とを備えたので、連続送水管の接続口にガタツクことなく確実に接続され固定することができ、シール部材により気密にシールすることができるので、点検に際して空気が漏れることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を実施する連結送水管設備の一例の説明図である。
【図2】 図1の送水口の一部断面図である。
【図3】 本発明に係る点検用接続治具の一例の縦断面図及び一部を省略した側面図である。
【図4】 図1の送水口に図3の点検用接続治具を接続する作用説明図である。
【図5】 図1の送水口に図3の点検用接続治具を接続する作用説明図である。
【符号の説明】
1 送水口、2 送水管、5 排水弁、6 逆止弁、7 止水弁、9 放水口、11 送水口の本体、12 接続口、13 受け金具、16 弁座、17 弁体、23 係止爪、25 破壊板、30 点検用接続治具、31 第1の円筒部材、32 フランジ、33 シール部材、34 おねじ、37 第2の円筒部材、38 フランジ、39 めねじ、40 ハンドル、41 差込み解除部材、50 建築物。

Claims (2)

  1. 連結送水管の送水口に接続される点検用接続治具であって、
    先端部に前記送水口の中央部付近に設けた弁座に当接するフランジを有し、該フランジの下面にシール部材が取付けられた第1の円筒部材と、先端部にフランジを有し、前記第1の円筒部材の外側に回転自在かつ軸方向に移動可能にねじ嵌合された第2の円筒部材とを備え、
    該第2の円筒部材が嵌合された前記第1の円筒部材を前記送水口に挿入し、前記第1の円筒部材のフランジによって前記送水口の弁座の上方に設けられて中心部側に付勢された複数の係止爪を後退させ、前記第2の円筒部材のフランジの通過によって該係止爪を復帰させて、前記第2の円筒部材のフランジの上面を該係止爪に係止させ、
    前記第2の円筒部材を回転させて前記第1の円筒部材を前進させ、そのフランジの下面を前記弁座に当接させて前記シール部材により前記第1の円筒部材のフランジと前記弁座との間を気密にシールするように構成したことを特徴とする消防設備の点検用接続治具。
  2. 前記送水口は差込み式の継手からなり、前記点検用接続治具は、前記第2の円筒部材の外側に前記複数の係止爪の係止を解除する差込み解除部材を設け、前記第1の円筒部材を空気圧源に接続して前記送水口側に空気を供給することを特徴とする請求項1記載の消防設備の点検用接続治具。
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