JP4005682B2 - 竪型炉の操業方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄を含有するダストおよび/または鉄屑類および/または還元鉄等を鉄源とし、固体燃料の性状によらず、熱効率よく、低燃料比で難還元性の酸化物を還元溶解処理しながら銑鉄を連続的に溶製可能とする竪型炉の操業方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
未還元鉱石から銑鉄を製造する方法としては、これまでに種々開発されてきたが、今日でも高炉法がその主流となっている。この高炉法では、炉頂から装入された原料は降下していく間に、下から上に向かって流れる高温ガスによって十分に予熱されるとともに、酸化鉄は一酸化炭素(CO)により、60%以上の比率で間接還元される。高炉法では、このような間接還元率を確保するために、羽口前にレースウエイ空間を設け、ここで、ηCO(=CO2 /(CO+CO2 ))=0の還元ガスを製造するようにしている。また、上記の高温ガスとなる燃焼ガスの温度を高めるために、送風温度は1000℃以上としている。
【0003】
しかしながら、鉄を含有するダストおよび/または鉄屑等の鉄源を主原料とする溶解炉では、羽口部で還元ガスを製造する必要性が薄れ、したがって、羽口前でのコークスの燃焼は、原燃料の昇熱あるいは溶解のための熱源を確保する手段として活用することが効率的とされている。
例えば、鉄屑、鋳物屑、銑鉄等の鉄源を溶解することが主目的で、還元機能を必要としないキュポラ法では、通常、原燃料を混合して装入し、ηCO=40〜50%の条件下で、鉄源の溶解を実施している。このようなガス組成とするために、キュポラ法では、粒度100〜150mmの鋳物用大径コークスを使用しており、これによって、コークス燃焼後のソルーションロス反応を抑制している。しかし、鋳物用大径コークスは高価なことから、燃料コストの削減のため、小粒度のコークスを使用することが有効と考えられる。ところがこの場合には、吸熱反応であるソルーションロス反応速度が大きくなり、コークスの燃焼効率ηCOが低下する結果、溶融熱量が低下して安定した操業は困難になる。
一方、自己還元性鉱塊、鉄屑を主原料として、溶解まで行う還元機能を必要とする竪型炉の操業例は少ない。このような竪型炉では、高炉とは異なって、レースウエイを設けることはせず、送風温度を600℃以下と低くして操業を行っている。
【0004】
Gokselら(Transactions of the American Foundrymen's Society Vol 85 AFS Des Plaines. III. (1977). p.327-332)によれば、送風温度を450℃とした熱風キュポラで、含Cペレットを5重量%用いて行った試験の報告はあるが、常温送風キュポラあるいは含炭ペレットの多量配合時の操業についての従来例は見当たらない。
【0005】
特表平1−501401号公報には、2次羽口を有する高炉と、高炉の直径より大きな直径を備え、かつ1次羽口が存在する炉床とからなる溶銑製造装置が開示されている。この炉では、炉頂部から鉄源のみを装入し、燃料は高炉と炉床の結合部に存在する燃料ベッド上に直接添加する構造となっている。したがって、高炉内部は燃料の存在しない鉱石層となっていることから、固体燃料によるソルーションロス反応は進行せず、排ガス組成はCO2 /(CO+CO2 )の値が高い、効率の良い操業が期待できる。この炉においては、主原料となる自己還元性鉄塊が、炉床部において、コークスベッド内のコークスと接触反応し、吸熱反応である溶融還元を生じる。しかし、2次羽口部では、下記(2)式のような発熱反応を生じるため、この熱が鉱石の予熱、加熱、あるいは溶解に向けられて溶銑が得られると考えられている。
CO+1/2 O2 → CO2 +67590kcal /kmolt ・CO ・・・ (2)
しかしながら、この場合には、高炉炉頂部から燃料は装入せずに鉱石のみを装入するため、長時間にわたって連続操業を行う場合、操業時間の経過とともに、コークスベッド内のコークスが溶銑に対する浸炭に消費されるようになり、好ましくない。また、Fe−C−O平衡状態図から明らかなように、ηCO≧30%の酸化度の高いガス組成で、かつ温度1000℃以上の環境下では、Cを内装する自己還元性鉱塊であっても、FeOからFeへのガス還元は進行し難く、そのため炉下部において溶融還元が不可避となり、コークスベッド内のコークス消費の量増大、炉熱の低下、あるいは融液量増大による通気不良を招来する可能性がある。さらに、鉱石は、高温帯で溶着・溶融する際に炉壁と接触して付着物となり、棚吊りの原因となる。
【0006】
これらの問題に加え、炉の形状が複雑となるため、スケールアップの際には、炉体冷却の面で問題があり、大型化は難しいと考えられる。
一方、高炉と炉床の結合部から燃料を添加する際の添加位置と1次羽口との相互関係については、前記特表平1−501401号公報に、具体的に明記されていない。しかし、同公報の図2から判断すると、隣り合う燃料添加位置の中間に1次羽口が設置されている。
炉床平均径D≧1.00mの炉においては、このように隣り合う燃料添加位置の中間に1次羽口が存在する場合、1次羽口部で燃焼したコークスの補充は、直上にある装入物で行われる。したがって、この場合には、炉上方から降下してきた鉱石が燃焼したコークスと置き代わる状況にあり、添加した燃料がスムーズに降下するとは考えられず、操業不能に陥る可能性が大きい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の溶鉱炉操業において、例えばMn鉱石のような難還元性の鉱石を還元溶解処理するプロセスがあるが、燃料比が高くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、細粒の固体燃料を使用した低燃料比操業において、難還元性の酸化物を還元溶解処理することができる竪型炉の操業方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明に係る竪型炉の操業方法は、炉体の側壁高さ方向に多段羽口を有する竪型炉の炉上部から鉄源と固体燃料とを炉内に装入し、羽口から常温または600℃以下の酸素含有ガスを送風して還元・溶解する操業方法において、炉周辺部に細粒の固体燃料と混合して難還元性の鉱石を装入し、炉中心部に金属化率の高い鉄源を装入し、最下段を除く上段羽口径を縮小して、羽口風速を上げることにより、上段の羽口のみにレースウェイ部を形成させ、周辺部のみ低η CO 条件として、前記難還元性の鉱石を還元し、最下段羽口はレースウェイ部を形成させずに燃焼率を高くして、高η CO 条件とし、炉中心部に装入した金属化率の高い鉄源を溶解するようにしたものである。
【0010】
また、前記竪型炉において、炉周辺部に金属化率が低い鉄源と細粒の固体燃料とを混合して装入するものである。
【0011】
さらに、前記上段羽口のみに熱風送風を行うようにしたものである。
一方、前記竪型炉の最下段の羽口の突き出し位置を調整して燃焼効率を制御するようにしたものである。
【0012】
本発明は、低燃料比の操業により難還元性の酸化物を還元溶解処理するプロセスを開発したものである。すなわち、炉体の側壁高さ方向に多段羽口を有する竪型炉において、最下段を除く上段の羽口のみにレースウェイ部を形成させ、炉周辺部に細粒の固体燃料と混合して難還元性の酸化物を装入する。一方、下段の羽口は、低燃料比での操業を指向するため、レースウェイ部を形成させずに燃焼率を高くして、高ηCO条件とする。
また、竪型炉の半径方向において、原料および燃料の区分け装入を実施し、炉周辺部に積極的に細粒の固体燃料と難還元性の酸化物を装入することにより、炉周辺部のみ低ηCO条件として、難還元性の酸化物の還元溶融処理を指向する。
さらに、難還元性の酸化物の還元溶融処を行うだけでなく、鉄源の溶融処理を併用することにより、炉頂温度を200℃以下に抑えて、効率の良い操業を指向する。
そして、熱量が不足する条件下においては、上段の羽口のみに熱風送風を考慮して熱補償するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
まず、本発明の操業方法に用いる竪型炉について説明する。図1(a)〜(c)は、本発明の操業方法に用いる竪型炉の一例を示す説明図であり、図1(b)と図1(c)は、図1(a)の上部装入装置を示したものである。
図示するように、この竪型炉1の炉頂には装入装置2が設けられており、装入装置2は、バケット3、ベル4、可動アーマー5および装入ガイド6を有しており、原料および固体燃料を半径方向に区分けして装入することが可能な装置として構成されている。
【0014】
竪型炉1の炉体7の上部には、炉内の向流ガスを排気するための排ガス管8が設けられており、下部には炉内下部に送風するための羽口9が設けられている。羽口9は、炉体7の側壁高さ方向に多段に設けられており、本実施形態では、1次送風を行う下段羽口(1次羽口)9aと、2次送風を行う上段羽口(2次羽口)9bとの2段羽口として形成されている。また、これらの羽口9a,9bは、炉体7の周方向に適宜間隔で複数配置されている。送風条件は常温送風または600℃以下の熱風送風であり、1次羽口9aはレースウェイ部を形成しないような羽口径(例えば、40〜60mmφ)に設定されているが、2次羽口9bはレースウェイ部10を形成するような羽口径(例えば、約20mmφ)に設定されている。また、1次羽口9aは、装入原料によって炉内突き出し位置を変更しうるように構成されている。
なお、本実施形態では、炉体7の側壁高さ方向に設けられた多段羽口9が、1次送風を行う1次羽口9aと、2次送風を行う2次羽口9bとの2段羽口として形成されているが、最下段を除く上段の羽口のみにレースウェイ部10が形成されれば、3段以上の羽口を設けてもよい。3段以上の場合には、中段に位置する羽口にレースウェイ部を形成することが好ましい。この場合、上段(中段)の羽口はレースウェイ部を形成させて、炉周辺部の細粒コークス内に難還元性の酸化物を装入するための補助的なものであり、主な送風は最下段や、これより上段の羽口で行って燃焼効率を維持するものである。
【0015】
また、原料および固体燃料は、炉中心部11と炉周辺部12とに区分して装入可能であり、上述したように、炉頂部には半径方向に区分け装入が可能な装入装置2を有している(図1(b)、(c))。なお、炉内下部に形成されるコークスベッド13は、操業条件に応じて高さ調整して形成される。
【0016】
次に、上記の竪型炉1を用いて実施する本発明の竪型炉の操業方法を説明する。
炉頂から装入する原料は、鉄屑、銑鉄(型銑)、鋳物屑(戻り屑)、HBI(ホットブリケット還元鉄)、DRI(直接還元鉄)等の金属化率の高い鉄源と、ダスト塊成鉱、自己還元性鉱塊(含C塊成鉱)、還元鉄のような金属化率の低い鉄源を主体とし、燃料は、コークスや無煙炭等の固体燃料を主体とする。
装入方法は、コークスベッド層を形成するためにコークスを装入した後、原燃料を完全混合または層状装入する通常の装入方法と、原燃料を半径方向で区分け装入する新装入方法を採用した。
新装入方法は、装入原料の各金属化率を加重平均した平均金属化率(平均M.Fe/T.Fe )で場合分けし、平均金属化率(平均M.Fe/T.Fe )の高い原料を中心側に、平均金属化率(平均M.Fe/T.Fe )の低い原料を細粒コークスと混合して周辺側に装入することで、反応効率の高い操業を指向する。
具体的には、図2に示すように、炉中心部に鉄屑類のような金属化率の高い鉄源を溶解のみを目的として装入し、炉周辺部にダスト類のような金属化率の低い鉄源と細粒の固体燃料(細粒コークス)を装入する。また、本実施形態では、例えば合金添加元素として、炉周辺部にMn鉱石等の難還元性の酸化物を混合装入する。このように竪型炉の半径方向において、原料および燃料の区分け装入を実施し、炉周辺部に積極的に小粒度の固体燃料と難還元性の酸化物を装入することにより、炉周辺部のみ低ηCO条件として、難還元性の酸化物の還元溶融処理を指向することができる。
さらに、難還元性の酸化物の還元溶融処理を行うだけでなく、M.Feを含有する鉄源の溶融処理をも併用することにより、炉頂温度を200℃以下に抑えて、効率の良い操業を指向することができるものである。
【0017】
また、本発明の操業方法は、2次羽口9bのみに衝風してレースウェイ部10を形成させる。この2次羽口9bにレースウェイ部10を形成するのは、炉周辺部に空間部を形成して、この空間部でC+O2 =CO2 、C+CO2 =2COの反応を促進させ、周辺部のみ低ηCO条件として、難還元性鉱石を還元するためのガス条件を作り出すことにある。
一方、1次羽口9aはレースウェイ部を形成させず、炉中心部に装入した金属化率の高い鉄源の溶解に使用する。すなわち、この1次羽口9aは、低燃料比での操業を指向するため、レースウェイ部を形成させずに燃焼率を高くして、高ηCO条件とする。
炉周辺部に装入する難還元性の酸化物としては、例えば低気孔率、塊鉄鉱石、Mn鉱石、Cr鉱石等が挙げられる。
さらに、Mn鉱石のように、還元に必要なガス組成が低ηCO条件で高温度が必要な条件下においては、上段の羽口のみに熱風送風を行うことを考慮して熱補償するものである。これにより、周辺に装入されたコークスが後述の(4)式のソルーションロス反応により消費され、周辺部を低ηCO条件としつつ、吸熱量を熱補償するので、難還元鉱石の固体還元を促進するという効果が得られるものである。
【0018】
竪型炉の操業は、コークスベッド高さ、ストックレベル位置の調節と原燃料品種に応じた装入区分け法、1次羽口突き出し位置等で制御する。コークスベッドの最適高さは、鉄源の溶解が主か、鉄源の還元が主かによって異なり、目標ηCOに対応する位置にコークスベッド上端位置を設定する。なお、コークスベッド内では、コークスの燃焼反応と、燃焼後のソルーションロス反応が進行するが、両反応の反応速度を、固体燃料粒度、ガス流速、送風温度により調整する。
また、ストックレベル位置については、原燃料の昇温速度と関係し、特に、固体燃料のソルーションロス反応速度に影響するため、反応効率を低下させないための制御手段として使用する。
【0019】
上述した半径方向の区分け装入については、金属化率の高い部分と金属化率の低い部分を区分けして、前者については溶解重視の操業を指向し、1次燃焼率ηCOの上限を狙い、後者については還元重視で、原料の平均金属化率や含C量に応じて、還元に必要な1次燃料率を制御することにより、全体として最も効率の良い操業を指向することができる。金属化率の高い溶解重視部分は、1次羽口9aを有効利用し、1次送風により1次燃焼率の上限を狙う。半径方向区分け装入で、溶解重視部分を中心側に設定する場合、1次羽口9aの突き出し位置は、炉の中心と周辺の境界位置に設定すると最も効果がある。
【0020】
つぎに、1次燃料率ηCOを制御する方法を説明する。本発明のηCO制御法の一例は下記の通りである。
本発明の炉内ηCOの制御フローの概要について説明する。本発明の制御は次の▲1▼〜▲5▼のようにまとめられる。
【0021】
▲1▼竪型炉への装入鉄源の成分および配合量(使用量)から、平均金属化率(平均M.Fe/T.Fe )を求める。
より効率の良い操業を指向する場合に、半径方向区分け装入を実施するが、この装入法を適用する場合、中心部、周辺部に装入する鉄源に対し、それぞれ平均金属化率を求める。
【0022】
▲2▼この装入鉄源の平均金属化率(平均M.Fe/T.Fe )と、鉄源中の含C量とから下記(1)式(図3参照)をもとに、操業に適したηCOレベル範囲を特定する。半径方向区分け装入法を適用する場合、中心部、周辺部それぞれに適正ηCOを特定する。
1.5×C%≦ηCO−0.7×(平均M.Fe/T.Fe )≦3.0×C%・・・(1)
但し、
C : 鉄源中に含まれるC%であって、0%≦C%≦20%
ηCO : ガス利用率(%)
(平均M.Fe/T.Fe) : 平均金属化率(%)
金属化率 : 鉄源中の金属鉄(M.Fe)/鉄源中のトータル鉄(T.Fe)
平均金属化率 : 数種の鉄源を加重平均した金属化率
なお、周辺部に難還元鉱石を装入する場合は、周辺部のηCOは低ηCOが望ましいため、(1)式に従う必要はない。
【0023】
▲3▼溶解炉の操業条件(出銑量の目安)により、炉内平均ガス流速(Nm/s)が決まるため、使用する固体燃料粒度により、図4のデータから1次羽口からのコークスベッド高さを設定する。
【0024】
▲4▼ストックレベルについては、下記(3)式(図5参照)をもとに、目標ηCOに対応したストックレベル(1次羽口からの装入面高さ)H(m)を特定し、設定する。
(3)式は、最小自乗法による近似線で、鉄源種類、金属化率によって、多少異なると思われるが、目標ηCOをもとに、ストックレベルH(m)を設定する。
H=−0.02775ηCO+4.775 ・・・(3)
半径区分け装入法を採用する場合、中心部、周辺部にそれぞれ別々に、ストックレベルを設定するのが好ましい。
【0025】
▲5▼燃料比については、炉の特性である炉体放散熱(kcal/h)と、目標出銑量(t/d)ならびに鉄源種類、品質等を含む操業条件に加え、上記に示す目標ηCOが決まれば、熱・物質バランスから燃料比(kg/t)レベルが求まることから、最終的には、2次送風量の微調整、ストックレベルの微調整を実施して、目標ηCOレベルを維持するようにして操業する。
半径区分け装入法を採用する場合、中心部、周辺部それぞれ別々に、燃料比を設定して装入する。
【0026】
つぎに、鉄源と固体燃料からなる装入物の縦型炉内の装入高さ(ストックレベル)を変更することが、ηCO制御に有効なことを説明する。
ストックレベルについては、例えば、大径の鋳物用コークスを使用し、鉄屑、鋳物屑を溶解処理するキュポラ操業では、通常、下段羽口からストックレベルまでの高さ(H)/炉径(D)=4〜5に設定されているが、高炉用コークスなどの細粒コークスを使用し、かつダスト還元などの還元機能を必要とする竪型炉に関しては、ストックレベルに関する検討結果が見当たらない。そこで、鉄屑多量使用条件下で、ストックレベル変更試験を実施し、排ガスηCOとの関係を図5に整理した。
【0027】
炉床径D=1.4mの竪型炉を用いた試験結果によると、H/D=2.0と小さく設定することで、排ガスηCO>70%と高く維持できること、ストックレベルを上昇することで、排ガスηCOを低下させることが可能なことが判明した。
これは、ストックレベルを高くすると、ガスから原燃料への伝熱が良好となり、固体燃料の予熱、昇温がより上部から進行する結果、下記(4)式のソルーションロス反応領域が炉上部に拡がるためで、この結果、Cの消費量が多くなり、ηCOが低下することを示唆している。
C+CO2 =2CO ・・・(4)
このように、ストックレベルの変更は、炉内の原燃料の昇温速度を制御する役割があり、排ガスηCOの制御手段となる。
【0028】
つぎに、竪型炉内下部のコークスベッド高さを変更すること、さらには、送風量、羽口径、羽口突き出し位置の変更が、ηCO制御に有効なことを説明する。
図4は、コークス粒度および送風量(ガス流速)を変化させて、羽口からのコークスベッド高さと、その部位のηCOの推移を調査したオフラインシミュレータによる実験結果である。図4によると、羽口から送風された空気中の酸素並びに富化酸素は、下記(5)式の反応で、コークスと燃焼してCO2 を生成し、O2 が消失した部位で完全燃焼に至る。この部位が、最もガス温度が高く、これより上部では、吸熱反応である(4)式のソルーション反応が進行して、ηCOが低下し、ガス温度も低下する。
C+O2 →CO2 ・・・(5)
コークス粒度が小さくなると、(5)式の燃焼速度が速くなるため、最高ガス温度(O2 =0%でηCO=100%)の部位は、羽口に近くなる。また、送風量を増量し、ガス流速を上げた場合、羽口から吹き込まれた酸素の炉内流速が上昇し、羽口近傍のCとの接触時間が短くなるため、(5)式の燃焼反応は炉上部に拡がる。そのため、同じコークス粒度で、流速を上げると、図5に見られるように、炉内におけるηCOは流速の低い場合に比べて、全体的に高くなる。1次羽口を炉内に突き出すこと、あるいは羽口径を絞り、羽口風速を上げることは、送風酸素とCとの接触時間を短縮することに相当し、炉内流速を上げるのと同様の効果がある。このように、竪型炉内下部のコークスベッド高さを変更すること、さらには、送風量、羽口径、羽口突き出し位置を変更することは、炉内ηCO制御に有効な手段となる。
【0029】
つぎに、半径方向の区分け装入法を採用した鉄源の還元溶解法が、操業の安定性、低燃料比操業に有効で、鉄源の種類、粒度によらず、効率の良い操業が指向できること、また、鉄源、固体燃料の性状に応じて、効率の良い操業を指向するための操業方法について、説明する。
半径方向の区分け装入法については、鉄源の種類によって、適正な装入法がある。
一つは、炉内のηCOを高くして、効率の良い操業を指向する例で、鉄源のM.Fe/T.Fe による分別法であり、一方は鉄源の粒度に応じた分別法である。
【0030】
まず、最初に、鉄源の金属化率(M.Fe/T.Fe)による分別法が、操業安定化に寄与し、効率の良い操業が指向できることを説明する。
還元溶解に使用する鉄源が、数種類に及び、M.Fe/T.Feの大小で分別できる場合、好ましくは、金属化率の高い鉄源、例えば銑鉄(型銑)、鉄屑、鋳物屑、HBI、DRI等は炉中心部に装入し、金属化率の低い鉄源、例えばダスト塊成鉱、自己還元性鉱塊、一部酸化した還元鉄、ペレット類等を炉周辺部に装入する。これは、炉中心部は溶解機能、炉周辺部は還元機能を持たせる装入方法であり、炉周辺部に金属化率の低い鉄源を装入し、炉中心部に金属化率の高い鉄源を装入する理由は、炉中心部のコークスベッドの高さ制御を容易にすること、中心ガス流を確保すること、低燃料比操業を指向することにある。
【0031】
この操業を指向する場合、1次羽口は、羽口先端が炉壁よりも炉内部に突き出した構造とし、基本的には、1次羽口の先端位置を、炉中心部と炉周辺部の境界に設けるのが理想的である。また、ガス流を中心流とし、炉周辺部に装入する鉄源の還元機能を重視すると、周辺部の固体燃料は細粒が好ましく、中心部の固体燃料は大粒が好ましい。
1次羽口を炉の中心部と周辺部の境界に設定する理由は、1次送風を1次羽口〜2次羽口間の周辺部に存在する固体燃料の燃焼に使用させないためである。
炉中心部は溶解機能を主体とするため、コークスベッドを制御して、炉中心部のηCO>90%の操業を指向すれば最も効率的であり、炉中心部の固体燃料は最低燃料比である浸炭分程度とすることができる。そのため、急激なコークスベッド高さの変化を抑制できる上、粒径を維持したコークスがコークスベッドとなるため、通気・通液性を確保した低燃料比操業が可能となる。
【0032】
つぎに、金属化率の低い鉄源を炉周辺部に装入する場合に固体燃料と混合する装入法が効率的であることを説明する。
ηCOの高い操業を指向できれば、低燃料比の操業が可能となるが、還元機能を必要とする金属化率の低い鉄源をηCO>30%の条件で還元させる実験を実施したところ、コークスと混合しない条件では、鉄源中のウスタイトから鉄への還元反応は進行せず、高温部で操業に悪影響を及ぼす溶融還元を引き起こす。それに対し、金属化率の低い鉄源でも、コークスと混合して装入すると、コークスと混合しない場合に比べ、少なくとも20%以上の還元率改善効果があることが、オフラインシミュレータの検討結果で明かとなった。
このことは、金属化率の低い鉄源を装入する操業では、固体燃料(コークス)と混合する装入法が、固体燃料(コークス)と混合しない操業に比べると、鉄源の還元性改善に効果があり、その結果、溶融時のスラグ融液量を低減することができ、棚吊り回避にも寄与する。
【0033】
炉周辺部に装入する金属化率の低い鉄源の還元を促進し、溶融前の鉄源の還元率を高くする方法として、鉄を含有するダスト中にCを内装すること、内装C量を多くすることが有効である。内装C量の上限は、強度制約上20%程度である。
図3は、鉄源の平均金属化率と鉄源の還元・溶解が支障なく行えるηCOレベルを検討した一例であり、鉄を含有するダストに内装するC量によって多少ηCOレベルは異なるが、装入鉄源の金属化率から、操業可能なηCOレベルを判定できる。
固体燃料としては、一般的に、コークスを使用するが、無煙炭のような炭材なども使用できる。
【0034】
つぎに、竪型炉の半径方向に装入する原燃料の装入部位に応じて、ストックラインを変更することが有効なことについて説明する。
例えば、還元が必要でない鉄屑、銑鉄、鋳物屑等を炉中心部に装入する場合においては、ηCOは極力高い方が望ましく、ηCO>70%以上を目標とすると、ストックレベルは(1次羽口からの装入高さH)/(炉床径D)<2.0が適当である。また、還元が必要なダスト塊成鉱、自己還元性鉱塊、還元鉄を還元・溶解する場合、ηCOを低下させることが必要で、この場合、例えばηCO=50%を目標とすると、ストックレベルは、H/D=約2.4に設定すればよい。このように、装入する鉄源の種類に応じて、半径方向でストックレベルの適正値が存在する。
半径方向で、ストックレベルを制御する方法としては、専用の装入装置が必要である。
例えば、図1に示す装入装置が挙げられる。これは、炉頂半径方向において、装入物の装入位置を、炉中心部と炉周辺部に区分できるもので、この装置に装入ガイドを設け、装入ガイド内で、各装入物のストックレベルを管理する方法である。
これにより、還元の必要のない鉄源の装入部位では、コークスベッドより上の部位でのコークスのソルーションロス反応を抑制できることになり、より効率の良い操業が可能となる。
【0035】
つぎに、コークスベッド高さを維持するための制御方法について述べる。
コークスベッド高さの制御が難しいのは、これが炉の中心下部にあり、コークス比が適当でなければ、未還元のFeO分が炉下部で溶融還元し、コークスベッドを消費することによって、コークスベッドの異常消耗が引き起こされるためである。特に、炉の中心下部で、このようなコークスの異常消耗が生じると、鉄源の溶解に支障となる上、スラグの固化等により、操業不能に陥る可能性もあり、問題となる。
そこで、前記したように、炉中心部には、主として金属化率の高い鉄源、すなわち型銑、鉄屑、鋳物屑類を装入することにより、炉中心部で溶融還元の生じ難い操業とし、炉中心部のコークスベッドの異常消耗を抑制する。
また、コークスのソルーションロス反応を極力抑制するために、炉中心部に装入する固体燃料を、炉周辺部に装入する固体燃料と区別し、大径コークスを使用する。これによって、炉中心部のコークスベッドの異常損耗を抑制でき、さらに、炉下部の燃焼効率ηCOを高めた操業が可能となる。
【0036】
上段羽口の設置位置は、コークス粒度、送風量等の操業諸元によって、適正位置が存在するが、基本的には、1次羽口部でのηCOレベルが、65%<ηCO<90数%程度が目安となる。
また、コークスベッド上端位置は、装入する鉄源の種類によって異なり、還元機能の不必要な鉄源の装入部位については、1次羽口より下の位置に制御して、極力コークス燃焼を抑制するのが好ましい。一方、還元機能が必要な鉄源の装入部位では、コークスベッド上端位置は、1次羽口より上部とすることが好ましい。これは、鉄源のM.Fe/T.Fe の割合により、コークスベッド上端位置でのηCOをコントロールすることが必要なためである。
コークスベッド高さを制御または監視する簡易法として、1次羽口部での肉眼観察、炉内圧損値による判定などがある。1次羽口部での観察は、少なくとも、鉄源の溶融部位が、1次羽口上部か下部のいずれかに存在することを判定できる。 また、コークスベッド高さを、精度良く測定する方法としては、炉上部から装入した垂直ゾンデもしくは鉄線類の降下挙動を測定することによって、判定可能である。垂直ゾンデの場合、炉内温度が急に上昇し、1200℃以上となる部位に相当し、鉄線類を用いた場合、降下速度がストップした地点が、コークスベッドの上端部に相当する。
なお、本実施形態では、炉周辺部12において、難還元性の酸化物の還元溶融処を行うだけでなく、鉄源の溶融処理をも併用しているので、炉頂温度は200℃以下に抑えられ、効率の良い操業が可能となる。
【0037】
本発明でいう炉中心部と炉周辺部の境界位置は、鉄源の金属化率やコークス粒度、さらには、鉄を含有するダストの使用割合によって、多少は炉半径方向で移動する。
この炉中心部と炉周辺部の境界位置riは、各部に装入する鉄源と固体燃料の量が決まれば、下記式(6)によって求められる。
ri2 =(Wm(c)/ρm(c)+Wc(c)/ρc(c))/{(Wm(c)/ρm(c)+Wc(c)/ρc(c))+(Wm(p)/ρm(p)+Wc(p)/ρc(p))} ・・・(6)
ただし、
ri : 中心部と炉周辺部との無次元境界半径(−)
Wm(c) : 中心部に装入する鉄源重量(kg/チャージ)
Wc(c) : 中心部に装入する固体燃料重量(kg/チャージ)
Wm(p) : 周辺部に装入する鉄源重量(kg/チャージ)
Wc(p) : 周辺部に装入する固体燃料重量(kg/チャージ)
ρm(c) : 中心部に装入する鉄源の嵩密度(kg/m3 )
ρc(c) : 中心部に装入する固体燃料の嵩密度(kg/m3 )
ρm(p) : 周辺部の装入する鉄源の嵩密度(kg/m3 )
ρc(p) : 周辺部に装入する固体燃料の嵩密度(kg/m3 )
なお、このriは、無次元半径で表されており、炉中心部と炉周辺部の装入物の降下速度を一定とした場合の境界位置を示している。
このriで示される境界位置を調節するための装入方法については、種々考えられるが、ベル式の装入装置を使用する場合でも、アーマーを使用し、装入チャージ毎に中心装入、周辺装入を交互に繰り返して装入することにより、一部混合層が生成するものの、所定の境界設定は可能である。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により本発明の特徴を具体的に説明する。
炉床径1.5m、1次羽口数6本、2次羽口数6本、1次羽口部からの有効高さ4.2mの炉頂開放型の移動層型竪型炉を用いた。本装置は2段羽口構造となっている。また、装入装置については、炉半径方向で装入物の区分けが行える図1に示す装入装置を使用した。
炉頂排ガス組成は、
ηCO(TOP) =(CO2 (TOP) /(CO(TOP) +CO2 (TOP)))
で定義した。
また、操業諸元のうち、送風湿分は大気湿分15g/N3 、炉頂から装入する石灰石原単位は、スラグ塩基度=1.0を目標として設定した。
装入する鉄源割合は、実施例1、比較例1の場合、鉄屑:低気孔率難還元性塊鉄鉱石=70:30の割合とし、実施例2、比較例2の場合、鉄屑:Mn鉱石=80:20の割合である。実施例においては、固体燃料として、周辺部に約30mmの高炉用小塊コークスを使用し、中心部の浸炭補給用には、約60mmの大塊コークスを使用した。
表1に検討状況の詳細を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1、比較例1は、周辺部に難還元性塊鉄鉱石と小粒コークスを混合装入し、中心部に鉄屑、+浸炭用大塊コークスを装入した条件である。
実施例2、比較例2は、周辺部にMn鉱石と小粒コークスを混合装入し、中心部に鉄屑、+浸炭用大塊コークスを装入した条件である。
また、実施例1、2は上段羽口径を縮小して、レースウェイ部を形成させたのに対し、比較例1、2は、上段羽口部にはレースウェイを作らない条件での操業である。
実施例1、2の操業は、比較例1、2に比べ、低コークスで操業が実施できており、難還元性鉱石である気孔率の低い塊鉄鉱石及びMn鉱石の処理が効率よく行えることを確認した。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、炉体の側壁高さ方向に多段羽口を有する竪型炉を用い、炉上部から鉄源と固体燃料とを炉内に装入し、羽口から常温または600℃以下の酸素含有ガスを送風して還元・溶解する操業を行う場合に、上段の羽口のみにレースウェイ部を形成させ、炉周辺部に細粒の固体燃料と混合して難還元性の酸化物を装入することにより、細粒の固体燃料を使用した低燃料比操業において、難還元性の鉱石を還元溶解処理しながら所望の品質を有する溶銑を連続的に製造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は反応装置および装入装置の一例を示す説明図、図1(b)は、中心装入時の上部装入装置の説明図、図1(c)は、周辺部装入時の上部装入装置の説明図である。
【図2】竪型炉の中心部に鉄屑類のみとし、周辺部に細粒コークス+ダスト類+難還元性の酸化物とした装入を示す説明図である。
【図3】鉄源の平均金属化率と鉄源の還元・溶解が支障なく行えるηCOレベルとの関係を示す説明図である。
【図4】図4(a)は、炉内ガス流速:0.35Nm/sで、コークス粒度が変化した時のコークスベッド高さとηCOの関係図、図4(b)は、コークス粒度:30mmで、炉内ガス流速が変化した時のコークスベッド高さとηCOの関係図、図4(c)は、炉内ガス流速が変化した時のコークスベッド高さとηCOの関係図である。
【図5】ストックレベルとηCOの関係図である。
【符号の説明】
1 竪型炉
2 装入装置
3 バケット
4 ベル
5 可動アーマー
6 装入ガイド
7 炉体
8 排ガス管
9 羽口
9a 下部羽口(1次羽口)
9b 上部羽口(2次羽口)
10 レースウェイ部
11 炉中心部
12 炉周辺部
13 コークスベッド
Claims (4)
- 炉体の側壁高さ方向に多段羽口を有する竪型炉の炉上部から鉄源と固体燃料とを炉内に装入し、羽口から常温または600℃以下の酸素含有ガスを送風して還元・溶解する操業方法において、炉周辺部に細粒の固体燃料と混合して難還元性の鉱石を装入し、炉中心部に金属化率の高い鉄源を装入し、最下段を除く上段羽口径を縮小して、羽口風速を上げることにより、上段の羽口のみにレースウェイ部を形成させ、周辺部のみ低η CO 条件として、前記難還元性の鉱石を還元し、最下段羽口はレースウェイ部を形成させずに燃焼率を高くして、高η CO 条件とし、炉中心部に装入した金属化率の高い鉄源を溶解するようにしたことを特徴とする竪型炉の操業方法。
- 前記竪型炉の炉周辺部に金属化率が低い鉄源と細粒の固体燃料とを混合して装入することを特徴とする請求項1に記載の竪型炉の操業方法。
- 前記上段羽口のみに熱風送風を行うようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の竪型炉の操業方法。
- 前記竪型炉の最下段の羽口の突き出し位置を調整して燃焼効率を制御するようにしたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の竪型炉の操業方法。
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