JP4003708B2 - セラミックグリーンシートの取扱方法および取扱装置ならびに積層セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、セラミックグリーンシートの取扱方法および取扱装置ならびに積層セラミック電子部品の製造方法に関するもので、特に、セラミックグリーンシートに損傷を与えないようにするための改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
たとえば積層セラミックコンデンサのような積層セラミック電子部品を製造する場合、内部導体が印刷されたマザーセラミックグリーンシートを、キャリアフィルムによって裏打ちされた状態で用意し、このマザーセラミックグリーンシートから所定の寸法を有するセラミックグリーンシートを切り出し、次いで、この所定の寸法を有するセラミックグリーンシートをキャリアフィルムから剥離し、さらに、キャリアフィルムから剥離されたセラミックグリーンシートを積み重ねることが行なわれている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなセラミックグリーンシートの取り扱いを行なうのに適した装置として、図5に示すような取扱装置1が案出されている。
【0004】
取扱装置1は、キャリアフィルム2によって裏打ちされたマザーセラミックグリーンシート3を、キャリアフィルム2を介して位置決めするためのカットテーブル4を備えている。マザーセラミックグリーンシート3の表面には、内部導体が印刷されていることもある。
【0005】
キャリアフィルム2およびマザーセラミックグリーンシート3は、たとえば、カットテーブル4の上面に沿って間欠的に搬送される。カットテーブル4には、図示しないが、真空吸引に基づきキャリアフィルム2を吸着するための負圧を与える複数の吸引口が設けられていて、それによって、キャリアフィルム2は、カットテーブル4に対して位置決めされる。
【0006】
また、カットテーブル4の上方には、カット刃5が位置される。カット刃5は、カットテーブル4に対して近接・離隔可能に設けられ、その近接によって、マザーセラミックグリーンシート3から所定の寸法を有するセラミックグリーンシート6を切り出すためのものである。
【0007】
また、カット刃5によって囲まれた空間内には、吸着ヘッド7が位置される。吸着ヘッド7は、カット刃5と同様、カットテーブル4に対して近接・離隔可能に設けられる。吸着ヘッド7の下面は、切り出されたセラミックグリーンシート6を吸着するための吸着面8とされる。この吸着面8の詳細の一例が、図6に示されている。
【0008】
吸着面8には、それぞれ負圧が与えられる複数の吸引口9および10が分布しており、切り出されたセラミックグリーンシート6は、これら吸引口9および10を介してそれぞれ与えられる負圧に基づく吸着によって吸着面8上に保持される。吸引口9および10は、吸着面8の中央に分布する中央吸引口9と周縁部に分布する周縁吸引口10とに分類される。好ましくは、図6によく示されているように、周縁吸引口10は、中央吸引口9より高い分布密度をもって設けられ、それによって、セラミックグリーンシート6を、その周縁部においてより強く吸着し得るようにされる。
【0009】
このような取扱装置1は、次のように動作する。
【0010】
まず、カット刃5が、吸着ヘッド7とともに下降する。これによって、カット刃5は、マザーセラミックグリーンシート3から所定の寸法を有するセラミックグリーンシート6を切り出す。このような切り出しを可能とするため、少なくともこの切り出しの段階では、カット刃5の刃先は、吸着ヘッド7の吸着面8より突出した状態とされる。また、この突出度合いは、マザーセラミックグリーンシート3の厚みよりわずかに長く突出するように選ばれ、それによって、カット刃5は、マザーセラミックグリーンシート3を完全に切断するが、キャリアフィルム2を完全には切断することがないようにされる。
【0011】
また、上述したように、カット刃5とともに吸着ヘッド7が下降したとき、その吸着面8をセラミックグリーンシート6に接触させる。このとき、吸引口9および10には負圧が及ぼされていて、上述のように切り出されたセラミックグリーンシート6を吸着面8上に吸着する。次いで、吸着ヘッド7は、カット刃5とともに上昇する。これによって、セラミックグリーンシート6は、キャリアフィルム2から剥離されるとともに、吸着ヘッド7によって保持された状態となる。図5には、この段階にある取扱装置1の状態が図示されている。
【0012】
次いで、セラミックグリーンシート6を保持した吸着ヘッド7は、図示しないが、カットテーブル4とは別の場所に位置される積み重ねテーブルの上方にまで移動され、次いで、積み重ねテーブル上においてセラミックグリーンシート6を積み重ねるように、吸着ヘッド7が下降される。そして、このようにセラミックグリーンシート6を吸着ヘッド7によって保持した状態で積み重ねテーブル上に搬送する工程を繰り返し実施することによって、複数のセラミックグリーンシート6からなる積層体が作製される。
【0013】
この積層体は、加圧された後、必要に応じて、個々の積層セラミック電子部品を与える寸法に切断される。そして、切断された積層体は、焼成され、次いで、外部電極等が形成されることによって、所望の積層セラミック電子部品が得られる。
【0014】
【特許文献1】
特開平9−129501号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
近年の電子機器の小型化に対する要望に伴い、そこで用いられる積層セラミックコンデンサのような積層セラミック電子部品についても小型化が進んでいる。特に、積層セラミックコンデンサについて言えば、小型化を図りながらも、大容量化を図ることが望まれている。積層セラミックコンデンサにおいて、小型化かつ大容量化を進めるための有効な手段として、誘電体層の薄層化を進めながら多層化を図る方法がある。
【0016】
誘電体層の薄層化は、前述の図5に示した取扱装置1において取り扱われるマザーセラミックグリーンシート3あるいはセラミックグリーンシート6の厚みをより薄くすることによって達成される。一般に、セラミックグリーンシートが薄くなればなるほど、その取り扱いが困難になるが、図5に示した取扱装置1は、セラミックグリーンシート6が薄くなっても、これを取り扱うのに適した構造を有している点で評価される。
【0017】
しかしながら、セラミックグリーンシート6がたとえば10μm以下の厚みというように極めて薄くされた場合には、取扱装置1によって取り扱われたセラミックグリーンシート6において損傷がもたらされることがある。より具体的には、吸引口9および10の各々の吸着面8側に位置するエッジと接触する部分で、セラミックグリーンシート6が切断されるなどして破損されることがある。この原因は、次のとおりである。
【0018】
図7には、取扱装置1に備える吸着ヘッド7に設けられた特定の吸引口、たとえば中央吸引口9の1つが拡大されて断面図で示されている。
【0019】
前述したように、吸着ヘッド7によるセラミックグリーンシート6の吸着は、吸引口9および10への負圧の供給によって達成される。そのため、吸引口9および10の大きさや負圧の強さすなわち吸引圧の低さ等によって差があるものの、セラミックグリーンシート6の、吸引口9および10の開口を覆うように延びる部分は、図7に示すように、吸引口9および10の内部へと引き込まれる傾向がある。他方、吸引口9および10は、通常、吸着面8を与える金属板にドリル加工やレーザ加工を施すことによって形成されたものであるので、吸引口9および10の吸着面8側に位置するエッジ11には、比較的鋭い角が残されている。また、多孔質吸引板においても、吸引面の平面性を出すために、平面研磨が施されるので、同様の鋭い角が残る。
【0020】
このようなことから、セラミックグリーンシート6が吸引口9および10の内方へ引き込まれたとき、鋭いエッジ11がセラミックグリーンシート6に食い込むようになり、エッジ11が当接する部分において、セラミックグリーンシート6に破損が生じることになる。
【0021】
なお、上述したような吸引口9および10の内方へセラミックグリーンシート6の一部が引き込まれる現象は、通常、キャリアフィルム2によって裏打ちされている状態では生じにくいものであるが、キャリアフィルム2から剥離された後に生じやすい。
【0022】
そこで、この発明の目的は、上述したようなセラミックグリーンシートの破損を生じにくくすることができる、セラミックグリーンシートの取扱方法および取扱装置ならびに積層セラミック電子部品の製造方法を提供しようとすることである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
この発明は、カットテーブル上に、キャリアフィルムによって裏打ちされたマザーセラミックグリーンシートを位置決めし、カットテーブルに対してカット刃を近接させることによって、マザーセラミックグリーンシートから所定の寸法を有するセラミックグリーンシートを切り出し、その吸着面にそれぞれ負圧が与えられる複数の吸引口を分布させている吸着ヘッドを、切り出されたセラミックグリーンシートに近接させることによって、セラミックグリーンシートを吸着面上に吸着し、次いで、吸着ヘッドをカットテーブルから離隔させることによって、セラミックグリーンシートを、キャリアフィルムから剥離するとともに、吸着ヘッドによって保持した状態とする、各工程を備える、セラミックグリーンシートの取扱方法にまず向けられる。
【0024】
このようなセラミックグリーンシートの取扱方法において、上述した技術的課題を解決するため、セラミックグリーンシートをキャリアフィルムから剥離した後、吸引口に与えられる負圧を弱める工程を備え、剥離した後においては、負圧を弱めた状態で、切り出されたセラミックグリーンシートが吸着ヘッドによって保持されていることを特徴としている。
【0025】
この発明は、また、キャリアフィルムによって裏打ちされたマザーセラミックグリーンシートを、キャリアフィルムを介して位置決めするためのカットテーブルと、カットテーブルに対して近接・離隔可能に設けられ、マザーセラミックグリーンシートから所定の寸法を有するセラミックグリーンシートを切り出すためのカット刃と、カットテーブルに対して近接・離隔可能に設けられ、その吸着面にそれぞれ負圧が与えられる複数の吸引口を分布させており、切り出されたセラミックグリーンシートを、複数の吸引口を介してそれぞれ与えられる負圧に基づく吸着によって吸着面上に保持するための吸着ヘッドとを備え、カット刃のカットテーブルに対する近接によって、マザーセラミックグリーンシートから所定の寸法を有するセラミックグリーンシートを切り出すとともに、吸着ヘッドのカットテーブルに対する近接によって、セラミックグリーンシートを吸着し、次いで、吸着ヘッドのカットテーブルに対する離隔によって、セラミックグリーンシートを、キャリアフィルムから剥離するとともに、吸着ヘッドによって保持した状態とする、セラミックグリーンシートの取扱装置にも向けられる。
【0026】
このようなセラミックグリーンシートの取扱装置において、前述した技術的課題を解決するため、この発明は、セラミックグリーンシートをキャリアフィルムから剥離した後、吸引口に与えられる負圧を弱めた状態で、吸着ヘッドが、切り出されたセラミックグリーンシートを、吸着面上に保持するように構成されていることを特徴としている。
【0027】
この発明は、また、上述したようなセラミックグリーンシートの取扱方法を用いる、積層セラミック電子部品の製造方法にも向けられる。
【0028】
この積層セラミック電子部品の製造方法では、セラミックグリーンシートを吸着ヘッドによって保持した状態とする工程の後、セラミックグリーンシートを吸着ヘッドによって保持した状態でカットテーブルとは別の場所に位置される積み重ねテーブル上に搬送する工程と、この搬送する工程を繰り返し実施することによって、複数のセラミックグリーンシートからなる積層体を得る工程とをさらに備えることを特徴としている。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下に説明するこの発明の一実施形態は、前述の図5ないし図7を参照して説明した取扱装置1に対して、その基本的構成を同様にしながら、一部において改良を加えようとするものである。したがって、この実施形態を説明するにあたり、図5ないし図7をも参照する。
【0030】
図1は、この実施形態特有の特徴を最もよく表わしている図面であって、吸引口9のエッジ11の部分を拡大して示す断面図である。
【0031】
図1によく示されているように、この実施形態では、吸引口9の吸着面8側に位置するエッジ11に、曲面12が設けられていることを特徴としている。この曲面12の曲率半径13は、好ましくは、100μm以上に選ばれる。
【0032】
なお、図1には、中央吸引口9が図示されたが、周縁吸引口10についても、これと同様の曲面がエッジに設けられている。
【0033】
取扱装置1におけるその他の構成については、前述したとおりであって、前述の説明をここに援用する。
【0034】
上述のように、エッジ11に曲面12を設けることによる効果を確認するため、以下のような実験を実施した。
【0035】
厚み5μmであって、7重量%のバインダを含むマザーセラミックグリーンシート3を用意した。
【0036】
他方、吸着ヘッド7として、吸着面8の寸法が150mm×150mmであって、350μmの直径をそれぞれ有する吸引口9および10が合計で5000個形成されたものを用いた。ここで、吸引口9および10の各エッジ11において、表1に示すように、曲面12を設けないもの(すなわち、曲率半径13が0)と、曲率半径13を50μm、100μm、150μm、200μmおよび250μmというように種々の曲率半径13を有する曲面12を設けたものとを用意した。
【0037】
次いで、キャリアフィルム2によって裏打ちされたマザーセラミックグリーンシート3から所定の寸法を有するセラミックグリーンシート6を切り出すとともに、真空度260Torrの負圧を吸引口9および10に与えながら吸着ヘッド7によってセラミックグリーンシート6を吸着し、その後、吸着ヘッド7をカットテーブル4から離隔させることによって、セラミックグリーンシート6をキャリアフィルム2から剥離した。
【0038】
上述の剥離後、吸着ヘッド7による吸着状態を5秒間保持した後、吸着ヘッド7による吸着を解除し、セラミックグリーンシート6における吸引口9および10の跡を500箇所顕微鏡で観察し、セラミックグリーンシート6に破損が生じていないかどうかを調査した。調査した全箇所数に対する破損が生じている箇所数の比率、すなわち「破損発生率」を以下の表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1からわかるように、吸引口9および10のエッジ11に曲面12を設けることによって、曲面を設けない場合に比べて、破損発生率を低下させることができる。また、曲面12の曲率半径13を100μm 以上としたときには、破損発生率を0/500とすることができる。
【0041】
なお、上述した実験例では、吸引口9および10に及ぼす負圧の真空度を260Torrとしたが、図7に示すようにセラミックグリーンシート6が吸引口9および10の内方へ引き込まれる度合は、吸引口9および10に及ぼす負圧の大きさに依存するため、セラミックグリーンシート6における破損発生率は、このような負圧の大きさにも依存する。図2に、これら吸引圧とシート破損発生率との関係が図示されている。図2において、太線は、吸引口のエッジに曲面を設けた場合を示し、破線は、エッジに曲面を設けない場合を示している。
【0042】
図2に示すように、まず、吸引口のエッジに曲面を設けた場合は、曲面を設けない場合に比べて、一般的に、シート破損発生率を低下させる傾向が現れている。
【0043】
また、吸引圧を上げた場合、すなわち負圧を弱め、大気圧により近づけた場合には、エッジに曲面を設けない場合であっても、シート破損発生率を低くすることができる。
【0044】
しかしながら、吸引圧を上げると、吸着ヘッドによってセラミックグリーンシートを十分に吸着することができず、セラミックグリーンシートをキャリアフィルムから剥離するとき、この剥離をし損なったり、剥離したセラミックグリーンシートに皺が寄ったりするといった剥離不良が発生しやすくなる。この傾向が、図3に示されている。
【0045】
図3からわかるように、剥離不良を防止するためには、吸引圧を一定値以下に下げる、すなわち負圧を一定値以上に強めることが重要である。
【0046】
しかしながら、剥離不良を生じないようにするため、吸引圧を下げすぎると、図2に示すように、エッジに曲面を設けた場合であっても、シート破損が生じることがある。
【0047】
また、シート破損の発生は、吸着ヘッド7によってセラミックグリーンシート6を吸着して保持する時間、すなわち吸引口9および10に負圧を及ぼし続ける吸引時間によっても左右される。図4には、吸引圧を260Torrに設定した場合における、吸引時間とシート破損発生率との関係が示されている。図4からわかるように、吸引時間が長くなればなるほど、シート破損発生率がより高くなる傾向がある。
【0048】
他方、吸着ヘッド7によるセラミックグリーンシート6の吸着状態において、吸着ヘッド7が必要とする吸着力に注目すると、セラミックグリーンシート6をキャリアフィルム2から剥離するときに強い吸着力が必要であって、剥離した後、セラミックグリーンシート6を単に保持する場合には、それほど強い吸着力を必要としない。
【0049】
上述のことから、吸着ヘッド7による大きな吸着力が要求される、セラミックグリーンシート6をキャリアフィルム2から剥離する段階において、負圧を強めるように吸引圧を下げ、セラミックグリーンシート6の剥離が完了した後は、負圧を弱めるように吸引圧を上げるようにすれば、剥離不良を生じにくくしながら、シート破損も生じにくくすることができる。
【0050】
また、上述のように、セラミックグリーンシート6のキャリアフィルム2からの剥離を完了した後に吸引圧を上げる場合、周縁吸引口10については、剥離時の吸引圧を維持しながら、中央吸引口9においてのみ吸引圧を上げるようにしてもよい。
【0051】
このように、周縁吸引口10においてのみ比較的強い負圧を維持するようにすれば、吸着ヘッド7からのセラミックグリーンシート6の脱落を確実に防止しながら、中央吸引口9において負圧を弱めることができる。その結果、中央吸引口9のエッジ11によってセラミックグリーンシート6が破損することをより確実に防止することができる。なお、この場合には、周縁吸引口10のエッジ11によってセラミックグリーンシート6に破損が生じることもあり得るが、このような周縁部における破損は、以下のように積層セラミック電子部品を製造する場合には、それほど問題とはならない。
【0052】
すなわち、積層セラミック電子部品を製造する場合、セラミックグリーンシート6を吸着ヘッド7によって保持した状態としてから、この状態で、セラミックグリーンシート6をカットテーブル4とは別の場所に位置される積み重ねテーブル上に搬送する工程が実施され、この搬送する工程を繰り返し実施することによって、複数のセラミックグリーンシート6からなる積層体が作製される。次いで、この積層体は、さらにカットされ、個々の積層セラミック電子部品ための電子部品本体となり得る生のチップを得るようにされる。
【0053】
上述したように、積層体をカットして、積層セラミック電子部品のための生のチップを得る場合、積層体の周縁部は、利用されずに捨てられることが多い。したがって、この場合、セラミックグリーンシート6の周縁部に破損が生じていても、この部分は、利用されずに捨てられるので、通常、それほど問題となることはない。
【0054】
以上、この発明を、図示した実施形態に関連して説明したが、この発明の範囲内において、その他、種々の変形例が可能である。
【0055】
たとえば、図示の実施形態では、吸引口9および10は、それぞれ、断面円形をなしていたが、その他の断面形状に変更されてもよい。
【0056】
また、この発明に係るセラミックグリーンシートの取扱方法が積層セラミック電子部品の製造方法に適用される場合には、通常、マザーセラミックグリーンシートの段階で、その表面に内部電極のような内部導体が印刷されるが、このような内部導体の印刷は、積み重ねテーブル上でのセラミックグリーンシートの積み重ね工程において実施されてもよい。したがって、この発明に係るセラミックグリーンシートの取扱装置および取扱方法は、何らの内部導体も印刷されていないセラミックグリーンシートを取り扱う場合にも適用することができる。
【0057】
【発明の効果】
この発明によれば、セラミックグリーンシートを吸着ヘッドによって吸着しながら、キャリアフィルムから剥離した後、吸着ヘッドに備える吸引口に与えられる負圧を弱めた状態で、切り出されたセラミックグリーンシートを、吸着ヘッドの吸着面上に保持するようにしているので、より強い負圧を必要とする剥離工程では、より強い負圧を与えることによって確実な剥離を達成することを保証しながら、セラミックグリーンシートを単に保持すれば足りる段階では、負圧を弱めることによって、吸引口のエッジによるセラミックグリーンシートの損傷を生じにくくすることができる。
【0058】
このようなことから、この発明は、特に薄いセラミックグリーンシートを取り扱う場合に有利に適用されることができる。そして、この発明に係るセラミックグリーンシートの取扱方法が積層セラミック電子部品の製造方法に適用された場合には、有利に積層セラミック電子部品の多層化を図りながら薄型化を図ることができ、高い歩留りをもって、小型でかつ優れた性能を有する積層セラミック電子部品を製造することができる。特に、積層セラミックコンデンサの製造に適用された場合には、小型でありながら大容量を有利に実現することができる。
【0059】
なお、上述のように負圧を弱める場合、複数の吸引口のうち、周縁部に分布する周縁吸引口においては剥離時の負圧を維持しながら、中央に分布する中央吸引口において負圧を弱めるようにすれば、剥離後における吸着ヘッドによるセラミックグリーンシートの保持の安定性を実質的に損なわせることなく、通常の積層セラミック電子部品の製造にあたって必要とするセラミックグリーンシートの中央部における損傷を確実に防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態によるセラミックグリーンシートの取扱装置に備える吸着ヘッド7に設けられた吸引口9の一部を拡大して示す断面図である。
【図2】吸引口のエッジに曲面が設けられる場合(実線)と曲面が設けられない場合(破線)とを比較しながら、吸引口に与えられる吸引圧とシート破損発生率との関係を示す図である。
【図3】吸引圧と剥離不良発生率との関係を示す図である。
【図4】吸引時間とシート破損発生率との関係を示す図である。
【図5】この発明にとって興味ある、かつ図1に示した吸着ヘッド7を備えるセラミックグリーンシートの取扱装置1を一部断面で図解的に示す正面図である。
【図6】図5に示した吸着ヘッド7の吸着面8を示す図である。
【図7】この発明が解決しようとする課題を説明するための吸着ヘッド7の一部を断面で示す正面図である。
【符号の説明】
1 セラミックグリーンシートの取扱装置
2 キャリアフィルム
3 マザーセラミックグリーンシート
4 カットテーブル
5 カット刃
6 セラミックグリーンシート
7 吸着ヘッド
8 吸着面
9 中央吸引口
10 周縁吸引口
11 エッジ
Claims (3)
- カットテーブル上に、キャリアフィルムによって裏打ちされたマザーセラミックグリーンシートを位置決めし、
前記カットテーブルに対してカット刃を近接させることによって、前記マザーセラミックグリーンシートから所定の寸法を有するセラミックグリーンシートを切り出し、
その吸着面にそれぞれ負圧が与えられる複数の吸引口を分布させている吸着ヘッドを、切り出された前記セラミックグリーンシートに近接させることによって、前記セラミックグリーンシートを前記吸着面上に吸着し、次いで、
前記吸着ヘッドを前記カットテーブルから離隔させることによって、前記セラミックグリーンシートを、前記キャリアフィルムから剥離するとともに、前記吸着ヘッドによって保持した状態とする、
各工程を備える、セラミックグリーンシートの取扱方法であって、
前記セラミックグリーンシートを前記キャリアフィルムから剥離した後、前記吸引口に与えられる前記負圧を弱める工程を備え、前記剥離した後においては、前記負圧を弱めた状態で、切り出された前記セラミックグリーンシートが前記吸着ヘッドによって保持されていることを特徴とする、セラミックグリーンシートの取扱方法。 - キャリアフィルムによって裏打ちされたマザーセラミックグリーンシートを、前記キャリアフィルムを介して位置決めするためのカットテーブルと、
前記カットテーブルに対して近接・離隔可能に設けられ、前記マザーセラミックグリーンシートから所定の寸法を有するセラミックグリーンシートを切り出すためのカット刃と、
前記カットテーブルに対して近接・離隔可能に設けられ、その吸着面にそれぞれ負圧が与えられる複数の吸引口を分布させており、切り出された前記セラミックグリーンシートを、複数の前記吸引口を介してそれぞれ与えられる負圧に基づく吸着によって前記吸着面上に保持するための吸着ヘッドと
を備え、
前記カット刃の前記カットテーブルに対する近接によって、前記マザーセラミックグリーンシートから所定の寸法を有する前記セラミックグリーンシートを切り出すとともに、前記吸着ヘッドの前記カットテーブルに対する近接によって、前記セラミックグリーンシートを吸着し、次いで、前記吸着ヘッドの前記カットテーブルに対する離隔によって、前記セラミックグリーンシートを、前記キャリアフィルムから剥離するとともに、前記吸着ヘッドによって保持した状態とする、セラミックグリーンシートの取扱装置であって、
前記セラミックグリーンシートを前記キャリアフィルムから剥離した後、前記吸引口に与えられる前記負圧を弱めた状態で、前記吸着ヘッドが、切り出された前記セラミックグリーンシートを、前記吸着面上に保持するように構成されていることを特徴とする、セラミックグリーンシートの取扱装置。 - 請求項1に記載のセラミックグリーンシートの取扱方法を用いる、積層セラミック電子部品の製造方法であって、前記セラミックグリーンシートを前記吸着ヘッドによって保持した状態とする工程の後、前記セラミックグリーンシートを前記吸着ヘッドによって保持した状態で前記カットテーブルとは別の場所に位置される積み重ねテーブル上に搬送する工程と、前記搬送する工程を繰り返し実施することによって、複数の前記セラミックグリーンシートからなる積層体を得る工程とをさらに備える、積層セラミック電子部品の製造方法。
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