JP4003318B2 - ニッケル基単結晶超合金 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はニッケル基単結晶超合金に関し、ハフニウムを添加して耐熱性の向上を図るようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
高温度に対する耐熱性が要求されるガスタービンエンジンのタービンブレードやベーンなどのに使用される材料として、従来からニッケル基超合金が知られている。
【0003】
このニッケル基単結晶超合金としては、従来、第1世代としてタングステン、モリブデン、タンタルなどの重元素を添加して粒内強度を向上させたものが開発され、さらに第2世代のニッケル基単結晶超合金としてレニウムを2.8〜3.2重量%添加することにより、第1世代のものに比べ約25℃高い温度で使用可能なものが開発され、米国キャノン・ムスケゴン社のCMSX−4合金として商業的に知られている。
【0004】
また、第2世代のニッケル基単結晶超合金よりさらに優れた第3世代のものの開発が行われており、特開平7−138683号公報には、耐火性元素であるタングステン+レニウム+モリブデン+タンタルの含有総量をより多くすることで機械的性質を改善したニッケル基単結晶超合金が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ガスタービンエンジンの性能向上には、構成部材の耐熱温度に対する一層の性能向上が不可欠であり、特に、耐熱性に関する性質の1つであるクリープラプチャー強度の一層の向上が課題となっている。
【0006】
この発明はかかる従来技術の有する課題を解決するためになされたもので、これまで強化元素として多量に添加された例のないハフニウムを多量に添加することで融点を上昇し、クリープラプチャー強度など耐熱性の向上を図ることができるニッケル基単結晶超合金を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
ニッケル基単結晶超合金は、ニッケルからなるマトリックスであるγ相と、合金元素の金属間化合物からなるγ´相(Ni 3 (Al ,Ti )とで構成されている。
【0008】
このようなニッケル基単結晶超合金を構成するγ´相の金属間化合物単体の研究で、これまで鋳型との反応が生じるなどのため、添加が嫌われているハフニウムを添加することで、γ´相の高温強度が著しく向上することが分かり、ニッケル基単結晶超合金に多量のハフニウムを添加することで、本願発明を完成したものである。
【0009】
すなわち、上記従来技術が有する課題を解決するため、この発明のニッケル基単結晶超合金は、レニウム:2〜7重量%と、モリブデン:0.5〜5.0重量%と、タングステン:2.0〜6.0重量%と、クロム:0〜5.0重量%と、アルミニウム:3.0〜6.0重量%と、タンタル:3.0〜8.0重量%と、ハフニウム:0<〜5.0重量%と、残部のニッケルおよび偶発的不純物とからなることを特徴とするものである。
【0010】
このニッケル基単結晶超合金によれば、ハフニウムを0<〜5.0重量%の範囲、特に0.15〜5.0重量%の多量の添加によって融点が上昇するとともに、固溶強化が図られ、クリープラプチャー強度など耐熱特性の向上を図ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明のニッケル基単結晶超合金の一実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
このニッケル基単結晶超合金は、レニウム:2〜7重量%と、モリブデン:0.5〜5.0重量%と、タングステン:2.0〜6.0重量%と、クロム:0〜5.0重量%と、アルミニウム:3.0〜6.0重量%と、タンタル:3.0〜8.0重量%と、ハフニウム:0<〜5.0重量%と、残部のニッケルおよび偶発的不純物とからなるものである。
【0013】
このニッケル基単結晶超合金の添加元素のそれぞれについて説明すると、まず、レニウムは、2〜7重量%含有される。このレニウムの添加により、固溶強化がなされるとともに、溶融開始温度を高めるのに効果がある。
【0014】
モリブデンは0.5〜5.0重量%含有される。このモリブデンの添加により固溶強化がなされるが、レニウムほど効果的ではない。
【0015】
タングステンは2.0〜6.0重量%含有される。このタングステンの添加により、固溶強化がなされるとともに、γ一次相の強化に寄与する。また、合金の溶融開始温度を高めるのに効果がある。
【0016】
クロムは任意添加元素であり、0〜5.0重量%含有される。このクロムの添加により、耐高温腐蝕性の向上に寄与する。
【0017】
アルミニウムは3.0〜6.0重量%含有される。このアルミニウムはγ一次相を構成する主要な元素であり、このアルミニウムの添加により、耐酸化性および析出強化がなされる。
【0018】
タンタルは3.0〜8.0重量%含有される。このタンタルの添加により、固溶強化がなされる。
【0019】
ハフニウムは0<〜5.0重量%含有され、好ましくは0.15〜5.0重量%である。このハフニウムは、これまでのニッケル基単結晶超合金に比べて多量に添加され、この多量の添加によって固溶強化が図られる。
【0020】
このハフニウムは、一方向凝固合金で凝固完了後の冷却過程で生じる粒界割れを防ぐ目的で添加されており、γ´相そのものへの何からかの強化がなされると考えられるものである。
【0021】
このニッケル基単結晶超合金の添加元素の残りの部分は、ニッケルおよび偶発的不純物からなる。この偶発的不純物は工業的製造過程で入り込むものであり、その混入量は極力抑えるべきものである。
【0022】
このような添加元素からなるニッケル基単結晶超合金は、予め目標組成に溶製したメルティング・ストックを用い、これを鋳型で単結晶化すること等で得ることができ、得られた単結晶化後の成分分析結果も目標組成通りのものが得られることを確認している。また、この単結晶化には、工業レベルの大型炉を用いて試作したが、単結晶化および鋳造性について、特に試作上の問題を生じることはなかった。
【0023】
こうして得られるニッケル基単結晶超合金は、モリブデン、レニウム、タングステンなどが多く固溶していること、特に単結晶化はデンドライト凝固範囲で温度勾配、凝固速度を制御するため、凝固偏析が避けられないこと、また、固液界面における偏析係数には合金元素によって差異があり、デンドライト内および最終凝固部周辺で顕著な濃度勾配が生じることから、成分元素の拡散を利用しながら適切な昇温速度の設定、あるいは保持時間設定による溶体化を多段階で施して最高温温度での溶体化処理が行われる。例えば、鋳造のままの単結晶材で、昇温・降温速度を20℃/min とし、最高温温度での溶体化処理条件を1340℃、3時間に設定すれば良い。
【0024】
また、溶体化処理後、必要に応じて時効処理が行われる。例えば、上記溶体化処理後、1080℃、4時間の時効処理を行う。
【0025】
このようなニッケル基単結晶超合金では、600〜1000℃での高温引張試験において、ハフニウムを添加しないものに比べ、改善効果が著しく、1000℃/200MPa 及び1050℃/140MPa のクリープ破断試験においてもハフニウム添加による著しい効果が認められた。
【0026】
また、ヤング率の測定においては第2世代のニッケル基単結晶超合金と同程度の値であった。
【0027】
以上のように、このニッケル基単結晶超合金によれば、ハフニウムの多量添加によって、固溶強化が図られ、融点が上昇するとともに、クリープラプチャー強度など耐熱特性の向上を図ることができる。
【0028】
したがって、このニッケル基単結晶超合金を高温度に対する耐熱性が要求されるガスタービンエンジンのタービンブレードやベーンなどの材料として使用することで、一層の性能向上を図ることができる。
【0029】
【実施例】
以下、この発明のニッケル基単結晶超合金の一実施例について、比較例とともに説明するが、この発明はこれら実施例に何等限定されるものではない。
【0030】
この発明のニッケル基単結晶超合金として表1に示す目標組成の実施例(STDHf )と、比較のためハフニウムが添加されていない以外に同一目標組成のものを比較例(STD)として用意した。
【0031】
実施例(STDHf )及び比較例(STD)それぞれの超合金について予め溶製した10kg のメルティング・ストックを用い、13mmφ×100mmの丸棒の鋳型で単結晶化を行った。
【0032】
そして、単結晶化後の化学成分について分析し、表1に示すように、ほぼ目標通りの化学成分であることを確認した。
【0033】
【表1】
【0034】
こうして得られた鋳造のままの単結晶材について、示差熱分析を利用した溶体化処理温度の推定を行い、その結果として比較例の場合を図1に示すように、昇温、降温速度をいずれも20℃/min とした。
【0035】
また、鋳造のままの単結晶材のミクロ組織を観察した結果、図示省略したが、凝固偏析を示し、デンドライトコアが明瞭に認められた。
【0036】
そして、最高温温度での溶体化処理条件を、示差熱分析結果、ミクロ組織の観察結果などに鑑み、1340℃、3時間に設定した。
【0037】
この結果、図示省略したが、共晶γ/γ´が完全に固溶した良好な溶体化組織が得られた。
【0038】
なお、実施例のハフニウム添加材では、最高温温度での溶体化処理を完了するまでの過程で、一部の試料については、部分溶融するものが見られた。
【0039】
さらに、この溶体化処理後、1080℃、4時間の時効処理を行った。
【0040】
こうして得られた実施例と比較例について、特性評価のため、高温引張試験、クリープ破断試験およびヤング率の測定試験を行った。
【0041】
高温引張試験の結果を示したものが図2であり、同図から明らかなように、600〜1000℃までの範囲おいて、比較例に比べてハフニウム添加の実施例の高温引張特性が著しく改善されることが分かる。
【0042】
また、1000℃/200MPa 及び1050℃/140MPa のクリープ破断試験結果を示したものが図3であり、同図から明らかなように、比較例に比べてハフニウム添加の実施例のクリープ破断時間が著しく改善され、4〜4.6倍にも改善されている。
【0043】
これら高温引張試験およびクリープ破断試験結果から、粒界が存在しない単結晶合金においても、ハフニウムの添加により高温特性の改善が認められたことから、ハフニウム添加がγ´相そのものの強化に寄与している可能性が高いと推察される。
【0044】
ヤング率の測定試験として、室温(RT)、900、1000、1100℃のヤング率を測定し、その結果を図4に示した。
【0045】
なお、ヤング率の測定は、厚さ2mm、幅10mm、長さ100mmの試料を用い、真空理工製の内部摩擦測定装置で共振法により求めた。
【0046】
この結果、比較例と実施例のヤング率がほぼ同等であり、その絶対値も第2世代のニッケル基単結晶超合金の値と比較して室温においては低めの値を示すが、600〜1100℃の範囲ではむしろ高い値を示した。
【0047】
【発明の効果】
以上、一実施の形態とともに具体的に説明したように、この発明のニッケル基単結晶超合金によれば、ハフニウムを0<〜5.0重量%の範囲、特に0.15〜5.0重量%の多量の添加によって融点が上昇するとともに、固溶強化が図られ、クリープラプチャー強度など耐熱特性の向上を図ることができる。
【0048】
したがって、このニッケル基単結晶超合金を高温度に対する耐熱性が要求されるガスタービンエンジンのタービンブレードやベーンなどの材料として使用することで、一層の性能向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ハフニウムを添加しない比較例のニッケル基単結晶超合金の示差熱分析結果を示すグラフである。
【図2】この発明のニッケル基単結晶超合金の一実施例の高温引張試験結果を示すグラフである。
【図3】この発明のニッケル基単結晶超合金の一実施例のクリープ破断試験結果を示すグラフである。
【図4】この発明のニッケル基単結晶超合金の一実施例のヤング率測定試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
STDHf 実施例(ハフニウム添加)
STD 比較例(ハフニウム添加せず)
Claims (1)
- レニウム:2〜7重量%と、モリブデン:0.5〜5.0重量%と、タングステン:2.0〜6.0重量%と、クロム:0〜5.0重量%と、アルミニウム:3.0〜6.0重量%と、タンタル:3.0〜8.0重量%と、ハフニウム:0<〜5.0重量%と、残部のニッケルおよび偶発的不純物とからなることを特徴とするニッケル基単結晶超合金。
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