JP4002373B2 - ウインドレギュレータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スプロケットに巻き掛けられた可撓性を有するテープを移動させることによりドアガラスを昇降させるウインドレギュレータに関する。
【0002】
【従来の技術】
以下、パワーウインドレギュレータを例にして従来の技術を説明する。従来のパワーウインドレギュレータは、ワイヤ方式かセクタ方式が主流であった。ワイヤ方式のパワーウインドレギュレータは、軽量で車両搭載性に優れているという長所があるが、その一方で耐久性に難点があると共にコスト的にも高くなるという短所がある。これに対し、セクタ方式のパワーウインドレギュレータは、安価で耐久性にも優れているという長所があるが、その一方で重量が重くなり車両搭載性が悪いという短所がある。つまり、ワイヤ方式の長所がセクタ方式の短所となり、ワイヤ方式の短所がセクタ方式の長所になるという背反関係にあった。
【0003】
そこで両者の長所を兼ね備えたパワーウインドレギュレータの開発がなされ、所謂テープ式のパワーウインドレギュレータが案出されるに至った。この種のテープ式のパワーウインドレギュレータの構成の一例を概説すると、サイドドア内にドアガラス昇降方向を長手方向として配設されたガイドレールと、このガイドレールに沿って昇降可能に支持されかつドアガラスの下端部が固定されたキャリアプレートと、ガイドレールの下端部等に回転可能に配設されたスプロケットと、ガイドレールの下端部等にブラケットを介して固定されかつスプロケットに駆動力を付与するパワーウインドモータと、ガイドレールの上端部等に配設されたテープガイドと、このテープガイドとスプロケットに中間部が巻き掛けられかつキャリアプレートに端末部が固定された可撓性を有するテープと、を含んで構成されている。
【0004】
上記構成によれば、パワーウインドモータが正転駆動又は逆転駆動すると、スプロケットがその軸線回りに正転又は逆転する。このため、ガイドレールに沿って細長い環状に配置されたテープが正転方向又は逆転方向へ移動する。これにより、キャリアプレートが上昇又は下降し、ドアガラスが上昇又は下降するようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のテープ式のパワーウインドレギュレータによる場合、図6に示されるように、テープ100に形成された係合孔102がスプロケットの係合歯104の歯底外形形状と略同一の形状を成しており、寸法的にも略同一の寸法に設定されているため、スプロケットからテープ100に繰り返し正転方向及び逆転方向への回転力(移動力)が作用することにより、係合孔102の四隅に応力集中が生じるという問題がある。
【0006】
このため、従来では、テープ100の幅方向の端部と係合孔102の四隅との距離を充分に確保することで、或るいは、テープ100の厚さを厚めに設定することで対応してきた。しかし、前者の場合にはテープ100が幅広になるためパワーウインドレギュレータ全体がテープ幅方向に大型化し、又後者の場合にはテープ100が厚くなるためパワーウインドレギュレータ全体がテープ厚さ方向に大型化するという不具合が生じる。加えて、サイドドアの厚さや他の機能部品のレイアウトとの兼ね合いからパワーウインドレギュレータの設置スペースに制約があり、いずれの対応を採ったとしても一定の限度がある。
【0007】
また、特に、サイドドアの形状に合わせてガイドレールをその長手方向に湾曲させた場合等には、テープ100に捩じれ力が作用するため、上述した応力集中は一層大きなものとなる。従って、テープ100の耐久性を低下させないために、格別の対応が必要となり、苦慮するところであった。
【0008】
本発明は上記事実を考慮し、テープを用いた構成において、装置の大型化を招くことなく、テープの耐久性を向上させることができるウインドレギュレータを得ることが目的である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、車両用サイドドア内の所定位置にドアガラス昇降方向を長手方向として配置されたガイドレールと、このガイドレールに沿ってスライド可能に設けられ、ドアガラスの下縁側を支持するガラス支持体と、車両用サイドドア内の所定位置に配置されると共に駆動力が付与されることにより軸線回りに回転し、更に外周部に複数の係合歯が所定の間隔で形成されたスプロケットと、このスプロケットの係合歯が係合される複数の係合孔が所定の間隔で形成されると共に当該スプロケットに巻き掛けられた状態で配策され、更にガラス支持体と連結されて配策方向へ移動することにより当該ガラス支持体をガイドレールに沿って昇降させる可撓性を有するテープと、を含んで構成されたウインドレギュレータであって、前記テープの長手方向中心線に対して所定の角度を成して傾斜するように形成されていると共に、前記テープの係合孔の隅部にはスプロケットの係合歯から受ける係合荷重の一部を逃がす逃げ部が設けられており、かつ、前記スプロケットの係合歯も、当該スプロケットの周方向中心線に対して所定の角度を成して傾斜するように形成されている、ことを特徴ことを特徴としている。
【0010】
上記構成の本発明によれば、車両用サイドドア内の所定位置に配置されたスプロケットに駆動力が付与されると、当該スプロケットがその軸線回りに回転する。スプロケットの外周部には複数の係合歯が所定の間隔で形成されており、又可撓性を有するテープには係合歯が係合される複数の係合孔が所定の間隔で形成されている。そして、テープの係合孔がスプロケットの係合歯に係合された状態で、テープがスプロケットに巻き掛けられている。このため、スプロケットが回転すると、その際の回転力は係合歯から係合孔の周縁部に伝達される。これにより、テープがその配策方向へ移動される。テープにはドアガラスの下縁側を支持するガラス支持体が連結されており、当該ガラス支持体は車両用サイドドア内の所定位置にドアガラス昇降方向を長手方向として配置されたガイドレールに沿ってスライド可能に設けられているため、テープがその配策方向へ移動すると、ガラス支持体がガイドレールに沿って昇降される。これにより、ドアガラスが昇降される。
【0011】
ここで、本発明では、テープの係合孔の隅部にスプロケットの係合歯から受ける係合荷重の一部を逃がす逃げ部が設けられているため、当該係合孔の隅部に対する応力集中は著しく低減される。このため、従来技術のようにテープの幅方向の端部と係合孔の四隅との距離を充分に確保する必要がなくなり、その分だけ、本発明によれば、テープの幅方向寸法を小さくすることができる。或るいは、従来技術のようにテープの厚さを厚めにしておく必要がなくなり、その分だけ、本発明によれば、テープを薄くすることができる。従って、本発明によれば、装置の大型化を招くことなく(言い換えれば、ウインドレギュレータをテープ幅方向及びテープ厚さ方向の双方に小型化しつつ)、テープの耐久性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明では、テープに形成された上記係合孔は、当該テープの長手方向中心線に対して所定の角度を成して傾斜するように形成されているため、係合孔がテープの長手方向中心線に対して直交するように形成されている場合に比し、テープの幅方向寸法を小さくすることができる。従って、ウインドレギュレータをより一層テープ幅方向に小型化することができ、ひいては車両搭載性を向上させることができる。
【0015】
さらに、本発明では、スプロケットの係合歯も当該スプロケットの周方向中心線に対して所定の角度を成して傾斜するように形成されているため、テープの係合孔がスプロケットの係合歯にスムーズに係合される。従って、ウインドレギュレータの作動の円滑化を図ることができる。
【0016】
請求項2記載の本発明に係るウインドレギュレータは、請求項1に記載の発明において、前記ガイドレールは車両用サイドドアの形状に合わせて長手方向に湾曲されており、これに伴って前記スプロケットの係合歯と前記テープの係合孔との噛み合い状態が一部において捩じれている、ことを特徴としている。
【0017】
上記構成の本発明によれば、ガイドレールが車両用サイドドアの形状に合わせて長手方向に湾曲されており、これに伴ってスプロケットの係合歯とテープの係合孔との噛み合い状態が一部において捩じれているため、本来であれば当該捩じれて噛み合った部分において係合荷重が増加する。
【0018】
しかし、本発明によれば、上記の如く、係合孔及び係合歯のいずれも傾斜して形成されているため、この傾斜を利用して、テープの係合孔とスプロケットの係合歯との噛み合い状態を正規状態に近づけることができる。しかも、本発明によれば、テープの係合孔の隅部に逃げ部が形成されているため、テープの捩じれに起因した係合歯に対する係合孔の係合荷重の増加(こじれ)を逃げ部で吸収することができる。よって、本発明によれば、テープに捩じれが生じる場合においても、テープの耐久性を向上させることができると共にウインドレギュレータの作動の円滑化を図ることができる。
【0019】
請求項3記載の本発明に係るウインドレギュレータは、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記テープをメインテープとして有すると共に、前記ガラス支持体はドアガラスの下縁一端部側に配置されて当該ドアガラスの下縁一端部側を支持する第1ガラス支持体とされ、さらに、ドアガラスの下縁他端部側に配置されて当該ドアガラスの下縁他端部側を支持する第2ガラス支持体と、この第2ガラス支持体と連結されると共にメインテープ又は第1ガラス支持体とも連結され更に配策方向へ移動することにより当該第2ガラス支持体を昇降させる可撓性を有するサブテープと、を備えている、ことを特徴としている。
【0020】
上記構成の本発明に係るウインドレギュレータでは、二本のテープが使用される。すなわち、スプロケットに巻き掛けられたテープはメインテープとされ、スプロケットが駆動回転されることにより、ドアガラスの下縁一端部側を支持する第1ガラス支持体がガイドレールに沿って昇降される。このメインテープ又は第1ガラス支持体にはサブテープが連結されているため、メインテープが移動することによりサブテープもその配策方向へ移動する。サブテープにはドアガラスの下縁他端部側を支持する第2ガラス支持体が連結されているため、サブテープがその配策方向へ移動することにより第2ガラス支持体が昇降し、これによりドアガラスが昇降される。
【0021】
ここで、上述したように、二本のテープ(メインテープ及びサブテープ)を使用してウインドレギュレータ(システム)を成立させた場合、テープの配策スペースを少なくさせる観点からも、メインテープとサブテープとが一部において重合する部分が生じてくる。この場合、メインテープに捩じれが生じるだけでなく、サブテープにも捩じれ部分が生じ、結果的にはサブテープに生じた捩じれがメインテープの捩じれに加わるかたちになる。よって、二本のテープを使用してウインドレギュレータ(システム)を成立させると、係合孔の隅部に応力集中が生じやすくなるといえる。従って、このようなシステム構成のウインドレギュレータに対して、上述した発明を適用すると、応力集中の低減或るいは緩和に非常に効果的であり、メインテープひいてはウインドレギュレータの耐久性向上に資することができる。
請求項4記載の本発明に係るウインドレギュレータは、車両用サイドドア内の所定位置にドアガラス昇降方向を長手方向として配置されたガイドレールと、このガイドレールに沿ってスライド可能に設けられ、ドアガラスの下縁一端部側に配置されて当該ドアガラスの下縁一端部側を支持する第1ガラス支持体と、車両用サイドドア内の所定位置に配置されると共に駆動力が付与されることにより軸線回りに回転し、更に外周部に複数の係合歯が所定の間隔で形成されたスプロケットと、このスプロケットの係合歯が係合される複数の係合孔が所定の間隔で形成されると共に当該スプロケットに巻き掛けられた状態で配策され、更に第1ガラス支持体と連結されて配策方向へ移動することにより当該第1ガラス支持体をガイドレールに沿って昇降させる可撓性を有するメインテープと、ドアガラスの下縁他端部側に配置されて当該ドアガラスの下縁他端部側を支持する第2ガラス支持体と、この第2ガラス支持体と連結されると共にメインテープ又は第1ガラス支持体とも連結され更に配策方向へ移動することにより当該第2ガラス支持体を昇降させる可撓性を有するサブテープと、を備え、前記メインテープの係合孔の隅部には、スプロケットの係合歯から受ける係合荷重の一部を逃がす逃げ部が設けられている、ことを特徴としている。
上記構成の本発明に係るウインドレギュレータでは、請求項1記載の発明の作用と請求項3記載の発明の作用の両方が得られる。
【0022】
【発明の実施の形態】
〔第1実施形態〕
以下、図1〜図5を用いて、本発明に係るウインドレギュレータの第1実施形態について説明する。
【0023】
図2には、本実施形態に係るパワーウインドレギュレータ10の車両用サイドドア18への組付状態の正面図が示されている。また、図1には、当該パワーウインドレギュレータ10のアッセンブリ状態の正面図が拡大して示されている。なお、これらの図に示された矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示している。
【0024】
図1及び図2に示されるように、パワーウインドレギュレータ10は、ドアガラス昇降方向を長手方向として配置された一本の長尺状のガイドレール12を備えている。ガイドレール12の上端部には、略四分円形状のテープガイド部14A及び取付ブラケット部14Bを含んで構成されたメインアッパテープガイド14が一体的に設けられている。同様に、ガイドレール12の下端部には、略半円形状のテープガイド部16A及び取付ブラケット部16Bを含んで構成されたメインロアテープガイド16が一体的に設けられている。ガイドレール12は、これらの取付ブラケット部14B、16Bを介して車両用サイドドア18のドアインナパネルに取り付けられている。なお、ガイドレール12の取付位置は、ドアインナパネルにおける車両前方側とされている。
【0025】
上述したガイドレール12はチャンネル状に形成されており、当該ガイドレール12の長手方向中間部にはスライダ20を介して「第1ガラス支持体」としての第1キャリアプレート22がスライド可能に支持されている。この第1キャリアプレート22には、ドアガラス24の下縁前端側が固定されている。なお、ドアガラス24の周縁部(前縁部、上縁部、後縁部)は、ドアフレームに沿って配設されかつ上部を構成する略逆U字形状のガラスサッシ本体26Aと、当該ガラスサッシ本体26Aの前部下側を構成するガラスサッシ前部26Bと、当該ガラスサッシ本体26Aの後部下側を構成するガラスサッシ後部26Cとから成るドアガラスサッシ(ドアガラスラン)26(図2参照)に挿嵌されて昇降動作がガイドされるようになっている。
【0026】
また、車両用サイドドア18のドアインナパネルの略中央部、即ちメインアッパテープガイド14から車両後方側へ所定距離だけ離間した位置には、広義には「駆動手段」として把握されるパワーウインドモータ28が配設されている。パワーウインドモータ28はガイドレール12等のレギュレータ本体とは別個独立に構成されている。具体的に説明すると、パワーウインドモータ28は、ドアインナパネルへの取付座とされる取付ブラケット部30と、この取付ブラケット部30に支持されてパワーウインドスイッチが操作されることにより正転駆動及び逆転駆動のいずれも可能なモータ本体32と、このモータ本体32の駆動力を減速して伝達するギヤ機構(図示省略)と、このギヤ機構を介して伝達された駆動力によって時計方向又は反時計方向へ駆動回転するスプロケット34と、このスプロケット34を覆うスプロケットカバー36とを含んで構成されている。なお、スプロケットカバー36の上部接線方向にはアッパテープガイド部36Aが一体に形成されており、又スプロケットカバー36の下部接線方向にはロアテープガイド部36Bが一体に形成されている。
【0027】
上述したスプロケット34及びガイドレール12側には、可撓性を有しかつ長尺状かつ樹脂製のメインテープ38が配策されている。具体的には、メインテープ38の中間部38Aは、メインアッパテープガイド14のテープガイド部14A及びメインロアテープガイド16のテープガイド部16Aにそれぞれ巻き掛けられた後にスプロケット34にも巻き掛けられている。さらに、メインテープ38の一方の端末部38Bと他方の端末部38Cとは、スプロケット34とメインロアテープガイド16との間にてクリップ40で固定されている。これにより、メインテープ38は正面視で略直角三角形状の閉ループを成しており、これがメインテープ38の配策経路とされる。
【0028】
一方、ドアインナパネルにおける車両後方側には、単一のサブテープガイド42が配設されている。サブテープガイド42は、略切欠半円形状のテープガイド部42Aと取付ブラケット部42Bとを含んで構成されており、当該取付ブラケット部42Bを介してドアインナパネルに取り付けられている。なお、サブテープガイド42の取付位置は、パワーウインドモータ28を中心としてメインロアテープガイド16と略反対側とされている。
【0029】
上記サブテープガイド42の下方側には、「第2ガラス支持体」としての第2キャリアプレート44が配置されている。この第2キャリアプレート44には、ドアガラス24の下縁後端側が固定されている。
【0030】
上述したサブテープガイド42には、可撓性を有しかつ長尺状かつ樹脂製のサブテープ46が配策されている。具体的には、サブテープ46の中間部46Aは、サブテープガイド42のテープガイド部42Aに巻き掛けられた後にスプロケットカバー36のロアテープガイド部36Bを挿通されている。サブテープ46の一方の端末部46Bは第2キャリアプレート44に固定されており、更にサブテープ46の他方の端末部46Cはメインテープ38の一方の端末部38B及び他方の端末部38Cと共にクリップ40で固定されている。これにより、サブテープ46は正面視で角度記号「∠」を縦向きにした形状の配策経路に沿って移動可能とされている。
【0031】
ここで、図3に示されるように、上述したガイドレール12は、車両用サイドドア18の形状に合わせてその長手方向へ湾曲した形状を成している。なお、図3では、メインテープ38に形成された後述する係合孔50の図示は省略している。これに対応して、即ちガイドレール12がその長手方向へ湾曲していることに起因してメインテープ38がスプロケット34へ向かうにつれて捩じれることを考慮して、図4に示されるように、スプロケット34の外周部に所定の間隔で形成されかつ歯底から歯先へ向かうにつれて徐々に先細りになる略四角錐台形状に形成された係合歯48は、スプロケット34の周方向中心線CLに対して所定角度傾斜した状態で形成されている。なお、図4では、後述する係合孔50の両側部に一体に形成された一対の逃げ部52の図示は省略している。また、図4に実線で描かれたメインテープ38は捩じれていない状態であり、二点鎖線で描かれたメインテープ38が捩じれた状態である。さらに、これに対応して、即ちスプロケット34の傾斜した係合歯48へメインテープ38が捩じれながら係合されることを考慮して、図5に示されるように、メインテープ38の長手方向に所定の間隔で形成された係合孔50も、その長手方向中心線CLに対して所定角度傾斜した状態で形成されている。なお、中心線CLに対する係合孔50の傾斜角度と係合歯48の傾斜角度は同一に設定されている。また、係合孔50の平面形状は、係合歯48の歯底形状と概略一致する略平行四辺形状とされている。
【0032】
さらに、本実施形態では、図1及び図5に示されるように、上記係合孔50の両側部には、テープ長手方向に長い長円状の逃げ部52がそれぞれ一体に形成されている。従って、スプロケット34の係合歯48の四つの角部は、係合孔50の四つの角部と非接触の状態か又は仮にいずれかの角部が接触したとしても軽度な接触状態で、当該係合孔50内へ係合されている。
【0033】
また、上述したサブテープ46には、メインテープ38に形成された係合孔50は形成されていない。従って、サブテープ46の中間部46Aはスプロケットカバー36のロアテープガイド部36B内へ挿通されているものの、スプロケット34の係合歯48には係合されない構成である。
【0034】
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0035】
ドアガラス24を上昇させるべく、図示しないパワーウインドスイッチが操作されると、パワーウインドモータ28のモータ本体32が正転駆動される。モータ本体32が正転駆動されると、図示しないギヤ機構を介してスプロケット34が図2において反時計方向へ回転する。スプロケット34にはメインテープ38の中間部38Aが巻き掛けられているため、スプロケット34が反時計方向へ回転すると、その際の回転力が当該スプロケット34の係合歯48からメインテープ38の係合孔50の周縁部に伝達される。これにより、メインテープ38がその配策方向(矢印A方向)へ移動されて、第1キャリアプレート22がガイドレール12に沿って上昇される。
【0036】
メインテープ38にはサブテープ46の他方の端末部46Cが連結されているため、メインテープ38が閉ループを左回りに回転して矢印A方向へ移動すると、サブテープ46はその配策方向(矢印A’方向)へ引っ張られる(プルされる)。従って、サブテープ46は矢印A’方向へ移動して、第2キャリアプレート44を上昇させる。
【0037】
上記作動により、ドアガラス24はドアガラスサッシ26にガイドされながら上昇移動され、ドアガラス閉止状態とされる。
【0038】
逆に、ドアガラス24を下降させるべく、図示しないパワーウインドスイッチが操作されると、パワーウインドモータ28のモータ本体32が逆転駆動される。モータ本体32が逆転駆動されると、図示しないギヤ機構を介してスプロケット34が図2において時計方向へ回転する。スプロケット34が時計方向へ回転すると、その際の回転力が当該スプロケット34の係合歯48からメインテープ38の係合孔50の周縁部に伝達される。これにより、メインテープ38がその配策方向(矢印B方向)へ移動されて、第1キャリアプレート22がガイドレール12に沿って下降される。
【0039】
メインテープ38にはサブテープ46の他方の端末部46Cが連結されているため、メインテープ38が閉ループを右回りに回転して矢印B方向へ移動すると、サブテープ46はその配策方向(矢印B’方向)へ押圧される(プッシュされる)。従って、サブテープ46は矢印B’方向へ移動して、第2キャリアプレート44を下降させる。なお、ドアガラス24の下降時には、その自重が加わるため、サブテープ46による第2キャリアプレート44の押圧力は前記自重が加わる分だけ低減される。逆に言えば、サブテープ46には、ドアガラス24の自重を考慮した程度の剛性が備わっていればよい。また、サブテープ46自体には係合孔50は形成されておらず、スプロケット34には噛み合っていないため、サブテープ46がスプロケット34から駆動力を直接付与されることはない。
【0040】
上記作動により、ドアガラス24はドアガラスサッシ24にガイドされながら下降移動され、ドアガラス開放状態とされる。
【0041】
ここで、本実施形態では、メインテープ38の係合孔50の両側部にテープ長手方向に長い長円状の逃げ部52を形成し、メインテープ38の係合孔50がスプロケット34の係合歯48に係合された際に、当該係合歯48の四つの角部を係合孔50の四隅に接触させないように又は仮に接触したとしても軽度の接触となるようにしたので、スプロケット34の係合歯48から高い係合荷重を受けることはない。このため、メインテープ38の係合孔50の四隅に対する応力集中を著しく低減させることができる。従って、従来技術のようにテープの幅方向の端部と係合孔の四隅との距離を充分に確保する必要がなくなり、その分だけ、本実施形態によれば、メインテープ38の幅方向寸法を小さくすることができる。或るいは、従来技術のようにテープの厚さを厚めにしておく必要がなくなり、その分だけ、本実施形態によれば、メインテープ38を薄くすることができる。その結果、本実施形態によれば、装置の大型化を招くことなく(言い換えれば、パワーウインドレギュレータ10をテープ幅方向及びテープ厚さ方向の双方に小型化しつつ)、メインテープ38の耐久性を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態では、メインテープ38に形成された上記係合孔50は、略平行四辺形状に形成されかつメインテープ38の長手方向中心線CLに対して所定の角度を成して傾斜するように形成されているため、係合孔50がメインテープ38の長手方向中心線CLに対して直交するように形成されている場合に比し、メインテープ38の幅方向寸法を小さくすることができる(図5において実線で図示したメインテープ38の幅方向寸法P<図5において二点鎖線で図示した係合孔62が長手方向中心線CLに対して直交する場合のメインテープ60の幅方向寸法Q)。従って、パワーウインドレギュレータ10をより一層テープ幅方向に小型化することができ、ひいては車両搭載性を向上させることができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、スプロケット34の係合歯48も当該スプロケット34の周方向中心線CLに対して所定の角度を成して傾斜するように形成されているため、メインテープ38の係合孔50がスプロケット34の係合歯48にスムーズに係合される。従って、パワーウインドレギュレータ10の作動の円滑化を図ることができる。
【0044】
また、本実施形態では、車両用サイドドア18の形状に合わせてガイドレール12がその長手方向へ湾曲されており、これに伴ってメインテープ38の係合孔50とスプロケット34の係合歯48との噛み合い状態が一部において捩じれている。しかし、本実施形態によれば、上記の如く、係合孔50及び係合歯48のいずれも傾斜して形成されているため、この傾斜を利用して、メインテープ38の係合孔50とスプロケット34の係合歯48との噛み合い状態を正規状態に近づけることができる。なお、図4の一番下に図示された係合歯48と係合孔50の噛み合い状態がスプロケット34に対するメインテープ38の正規噛み合い状態であり、その上に二点鎖線で図示された係合歯48と係合孔50との噛み合い状態がメインテープ38が捩じれながらも係合歯48と係合孔50の傾斜を利用して正規噛み合い状態に近づけられた状態である。しかも、本実施形態によれば、上述したようにメインテープ38の係合孔50の両側部に逃げ部52が形成されているため、メインテープ38の捩じれに起因した係合歯48に対する係合孔50の係合荷重の増加(こじれ)を逃げ部52で吸収することができる。よって、本実施形態によれば、メインテープ38に捩じれが生じる場合においても、メインテープ38の耐久性を向上させることができると共にパワーウインドレギュレータ10の作動の円滑化を図ることができる。
【0045】
さらに、本実施形態では、略直角三角形状の閉ループを成すメインテープ38と、当該メインテープ38に他方の端末部46Cが連結されたプッシュ・プルタイプのサブテープ46とを組み合わせて、パワーウインドレギュレータシステムを成立させているが、このとき、メインテープ38とサブテープ46とが一部(スプロケット34の配設位置からクリップ40による固定位置までの区間)において重合している。この場合、メインテープ38に捩じれが生じるだけでなく、サブテープ46にも捩じれ部分が生じ(即ち、重合した部分に捩じれが生じ)、結果的にはサブテープ46に生じた捩じれがメインテープ38の捩じれに加わるかたちになる。よって、一般に、二本のテープを使用してパワーウインドレギュレータシステムを成立させると、係合孔の隅部に応力集中が生じやすくなるといえる。従って、このようなシステム構成のパワーウインドレギュレータ10に対して、逃げ部52が形成された係合孔50を有するメインテープ38を使用すると、応力集中の低減或るいは緩和に非常に効果的であり、メインテープ38ひいてはパワーウインドレギュレータ10の耐久性向上に資することができる。
【0050】
なお、上述した各実施形態では、パワーウインドモータ28を使ったパワーウインドレギュレータ10に対して本発明を適用したが、これに限らず、マニュアル式のウインドレギュレータに対して本発明を適用してもよい。
【0051】
また、上述した各実施形態では、メインテープ38にサブテープ46の他方の端末部46Cを連結したが、これに限らず、第1キャリアプレート22にサブテープ46の他方の端末部46Cを連結してもよい。
【0052】
さらに、上述した各実施形態では、メインテープ38にあっては略直角三角形状の閉ループを構成するように配策し、サブテープ46にあっては角度記号「∠」を縦向きにした形状に配策したが、これに限らず、サブテープについても閉ループを構成するように配策してもよい。
【0053】
また、上述した各実施形態では、メインテープ38或るいはサブテープ46がガイド面上を摺動していく所謂固定式のテープガイドを使用したが、これに限らず、メインテープ38或るいはサブテープ46の移動に伴って軸線回りに転動するプーリをテープガイドとして使用してもよい。
【0054】
さらに、上述した各実施形態では、メインテープ38にのみ係合孔50を形成し、当該メインテープ38にのみスプロケット34の駆動力が直接伝達されるように構成したが、これに限らず、サブテープ46にも係合孔を形成し、メインテープ38に重合した状態でスプロケット34の係合歯48に係合させ、スプロケット34の駆動力がサブテープ46にも直接伝達されるようにしてもよい。
【0055】
また、上述した各実施形態では、第1キャリアプレート22に対してのみガイドレール12を配設したが、これに限らず、第2キャリアプレート44に対してもガイドレールを設置する構成を採ってもよい。
【0056】
さらに、上述した各実施形態では、メインテープ38の係合孔50の両側部に長円状の一対の逃げ部52を形成する構成を採ったが、これに限らず、係合孔50の四隅に円形状等の四つの逃げ部をそれぞれ形成する構成を採ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態に係るパワーウインドレギュレータのアッセンブリ状態を拡大して示す正面図である。
【図2】 図1に示されるパワーウインドレギュレータが車両用サイドドアに搭載された状態を示す正面図である。
【図3】 図1に示されるパワーウインドレギュレータのガイドレールを図1の矢印3方向から観た状態で示す側面図である。
【図4】 スプロケットにメインテープが捩じれて巻き掛けられた状態を示す拡大図である。
【図5】 第1実施形態に係るメインテープを拡大して示す要部拡大正面図である。
【図6】 従来使用されてきたメインテープを拡大して示す要部拡大正面図である。
【符号の説明】
10 パワーウインドレギュレータ
12 ガイドレール
18 車両用サイドドア
22 第1キャリアプレート(第1ガラス支持体)
24 ドアガラス
28 パワーウインドモータ
34 スプロケット
38 メインテープ
44 第2キャリアプレート(第2ガラス支持体)
46 サブテープ
48 係合歯
50 係合孔
52 逃げ部

Claims (4)

  1. 車両用サイドドア内の所定位置にドアガラス昇降方向を長手方向として配置されたガイドレールと、
    このガイドレールに沿ってスライド可能に設けられ、ドアガラスの下縁側を支持するガラス支持体と、
    車両用サイドドア内の所定位置に配置されると共に駆動力が付与されることにより軸線回りに回転し、更に外周部に複数の係合歯が所定の間隔で形成されたスプロケットと、
    このスプロケットの係合歯が係合される複数の係合孔が所定の間隔で形成されると共に当該スプロケットに巻き掛けられた状態で配策され、更にガラス支持体と連結されて配策方向へ移動することにより当該ガラス支持体をガイドレールに沿って昇降させる可撓性を有するテープと、
    を含んで構成されたウインドレギュレータであって、
    前記テープの長手方向中心線に対して所定の角度を成して傾斜するように形成されていると共に、前記テープの係合孔の隅部にはスプロケットの係合歯から受ける係合荷重の一部を逃がす逃げ部が設けられており、
    かつ、前記スプロケットの係合歯も、当該スプロケットの周方向中心線に対して所定の角度を成して傾斜するように形成されている、
    ことを特徴とするウインドレギュレータ。
  2. 前記ガイドレールは車両用サイドドアの形状に合わせて長手方向に湾曲されており、これに伴って前記スプロケットの係合歯と前記テープの係合孔との噛み合い状態が一部において捩じれている、
    ことを特徴とする請求項1に記載のウインドレギュレータ。
  3. 前記テープをメインテープとして有すると共に、前記ガラス支持体はドアガラスの下縁一端部側に配置されて当該ドアガラスの下縁一端部側を支持する第1ガラス支持体とされ、
    さらに、ドアガラスの下縁他端部側に配置されて当該ドアガラスの下縁他端部側を支持する第2ガラス支持体と、この第2ガラス支持体と連結されると共にメインテープ又は第1ガラス支持体とも連結され更に配策方向へ移動することにより当該第2ガラス支持体を昇降させる可撓性を有するサブテープと、を備えている、
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のウインドレギュレータ。
  4. 車両用サイドドア内の所定位置にドアガラス昇降方向を長手方向として配置されたガイドレールと、
    このガイドレールに沿ってスライド可能に設けられ、ドアガラスの下縁一端部側に配置されて当該ドアガラスの下縁一端部側を支持する第1ガラス支持体と、
    車両用サイドドア内の所定位置に配置されると共に駆動力が付与されることにより軸線回りに回転し、更に外周部に複数の係合歯が所定の間隔で形成されたスプロケットと、
    このスプロケットの係合歯が係合される複数の係合孔が所定の間隔で形成されると共に当該スプロケットに巻き掛けられた状態で配策され、更に第1ガラス支持体と連結されて配策方向へ移動することにより当該第1ガラス支持体をガイドレールに沿って昇降させる可撓性を有するメインテープと、
    ドアガラスの下縁他端部側に配置されて当該ドアガラスの下縁他端部側を支持する第2ガラス支持体と、
    この第2ガラス支持体と連結されると共にメインテープ又は第1ガラス支持体とも連結され更に配策方向へ移動することにより当該第2ガラス支持体を昇降させる可撓性を有するサブテープと、
    を備え、
    前記メインテープの係合孔の隅部には、スプロケットの係合歯から受ける係合荷重の一部を逃がす逃げ部が設けられている、
    ことを特徴とするウインドレギュレータ。
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