JP4001548B2 - 耐震壁の説明装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造の異なる複数の耐震壁のエネルギー吸収作用の特性を判りやすく説明するための耐震壁の説明装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄骨造の住宅では外壁や間仕切壁の一部に耐震壁が構成される。この耐震壁は地震や風によって付与されるエネルギーを吸収して躯体に対する影響を軽減させるための構造体であり、躯体の構造に対応させてラーメン構造の耐震要素を有する耐震壁や、ブレース構造の耐震要素を有する耐震壁、或いは剛体構造の耐震要素を有する耐震壁として構成されている。このような耐震壁によるエネルギーの吸収作用は、地震時或いは強風時に住宅に対して付与される力に対抗する強度や、揺れに対応するための重要な要素である。
【0003】
特に、耐震壁は住宅が完成した後は壁の内部に納まってしまい外部から視認することが出来なくなるため、住宅の計画段階で、耐震壁の機能について顧客に充分に理解してもらうことが好ましい。このため、耐震壁の構造やエネルギーの吸収作用について、耐震壁の図面や動画を利用して説明することが行われている。
【0004】
また専門的な知識を持たない者に対して耐震壁の構造を説明するために、異なる構造を持った耐震壁の模型を作成し、この模型を展示スタンドに並べて展示することで、直接手にして夫々の構造や作用を比較し得るようにした構造形式の学習模型が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−175164号公報。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
耐震壁の構造や地震時,風に対するエネルギーの吸収作用については、住宅の重要な要素であるにも関わらず、顧客が容易に理解し得るような説明をなし得ないのが実情である。
【0007】
例えば、図面を利用して顧客に説明する場合、図面自体には動きがないため、地震時の挙動を細かく説明することは困難な部類に属し、お互いに充分な納得を得ることが出来ないという問題がある。また動画を利用する場合、個々の動きを理解し得るものの、この動きを生じさせる力の程度を実感することが出来ず、従って、異なる耐震壁の特性を比較して説明するようなことが出来ないという問題がある。
【0008】
また特許文献1に記載された学習模型では、個々の耐震壁の構造と動きを理解する上で有利である。しかし、異なる構造を持った複数の耐震壁の動きを比較して検討したいという要求が生じたとき、この要求を満足することが出来ない。
【0009】
本発明の目的は、複数の耐震壁の構造を説明することが出来、且つ異なる耐震壁によるエネルギーの吸収作用を比較して説明することが出来る耐震壁の説明装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係る耐震壁の説明装置は、構造の異なる複数の耐震壁のエネルギーの吸収作用を説明する装置であって、一対の横部材と一対の縦部材をピン接合してなる同一高さの四角形状のフレームに対して可撓性を有し屈曲変形し得る複数の部材を異なる形式で配置連結することによって形成された持ち運び可能な大きさの構造の異なる複数の耐震壁の模型を前記一対の横部材を一対のアタッチメントに接続することによって同一面内に並べて配置し、前記一対のアタッチメントを左右方向に動かすことによってこれらの構造の異なる複数の耐震壁の模型に同時に同一方向に同一距離移動する力を付与して夫々の耐震壁の変形状態を目視し得るように構成したものである。
【0011】
上記耐震壁の説明装置(以下、単に「説明装置」という)では、例えばブレース構造を含む複数のエネルギー吸収構造等の異なる耐震壁を夫々持ち運びが可能な大きさで、且つ同じ壁寸法の模型とし、これらの模型を並べて配置することによって夫々の構造を直接目視によって確認しつつ説明することが出来る。このため、図面によることなく、構造の説明を行うことが可能であり、顧客にとって容易に理解することが出来る。
【0012】
また異なる構造の耐震壁を並べて、一対の横部材を一対のアタッチメントに接続し、この一対のアタッチメントを手で左右に動かして同一方向に同一距離移動する力(同一の力)を付与することで、夫々の耐震壁の変形状態を確認することが出来る。このため、住宅の計画段階に於ける建物の構造について貴重な説明をすることが出来る。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下上記説明装置の好ましい実施形態について説明する。本発明に係る説明装置は、顧客を含む被説明者に、住宅の躯体を構成する異なる構造を持った複数の耐震壁と、これらの耐震壁に外部から同一の力を作用させたときの個々の耐震壁の挙動及びエネルギー吸収作用と、を判りやすく説明し得るように構成したものである。特に、構造の異なる複数の耐震壁を並べて同一の力を付与することによって夫々の耐震壁が如何なる変形をしてエネルギーを吸収するか、の点について明確に説明することが可能となり、これにより、被説明者は具体的に且つ合理的に理解を深めることが可能となる。
【0014】
耐震壁の耐震要素は、水平方向に配置されて躯体を構成する梁に添えられる一対の横部材と前記水平部材の両端部を縦方向に接続する一対の縦部材からなる四角形状のフレームと、このフレームを利用して構成され外部から付与された力に応じて変形することでエネルギーを吸収する構成材と、を有して構成されており、住宅の躯体に於ける予め設定された位置に配置されるものである。
【0015】
特に、耐震壁の構造は住宅の躯体の構造に応じて予め設計段階で設定されているのが一般的である。このような耐震壁の構成材の構造としては、ラーメン構造,ブレース構造(筋交い構造),偏心ブレース,剛体構造(矩形フレーム構造)等があり、耐震壁の模型は、前記した異なる構造を持った耐震壁に対応して構成される。耐震壁の模型として特に好ましいものはブレース構造や偏心ブレース構造であり、これらの模型では耐震要素の構成材の変形状態を示し易いという利点がある。
【0016】
被説明者に耐震壁の構造を説明するための模型は、被説明者の好ましい理解を得るために、実際の住宅に適用されている耐震壁と同一の構造を有し、且つ予め設定された縮尺の基に構成されたものであることが好ましい。しかし、耐震壁の模型が実際の耐震壁と同一の構造を有する場合、この模型を変形させるために必要な力は極めて大きくなり、説明者が手で付与し得る力では変形させることが出来ないという問題が生じる。このため、耐震壁の模型は、外部から付与された力に応じて容易に変形し得るように構成されている。
【0017】
耐震壁の模型を外部から付与された力の応じて容易に変形し得るように構成するには、夫々の耐震壁のフレームを構成する横部材と縦部材とをピンを利用して接合することで回動可能なフレームとし、且つフレームを利用して構成される構成材を変形可能な材料を用いて構成することが好ましい。要するに、本発明に係る模型は、構成材がエネルギーを如何に吸収するかを被説明者に判りやすく説明するためのものであり、フレームがエネルギーの吸収に寄与しないようにすることが好ましい。従って、フレームを構成する部材の四隅をピン接合することが好ましい。
【0018】
構造の異なる複数の耐震壁の模型に於いて、フレームを構成する縦部材は同じ寸法を有することが好ましい。このように、各耐震壁の模型が同じ高さを有することによって、これらの耐震壁の模型に外部から同一の力を付与したときの挙動の比較を容易に行うことが可能となる。また被説明者が手にとって確認する際にも、同一の高さ寸法を有することで、理解を得やすくすることが可能となる。
【0019】
複数の耐震壁の模型に同一方向に同一距離移動する力を付与して動きの比較を行う場合、夫々の耐震壁の模型を並べておくことが好ましい。特に、被説明者である顧客から出張説明の要求がなされた場合、耐震壁の模型に対する力は説明者が自ら付与し得るように構成することが好ましい。
【0020】
このため、構造の異なる複数の耐震壁の模型を並べ、これらの耐震壁の模型のフレームを構成する一対の横部材を夫々対応するアタッチメントに接続して連続させるように構成することが好ましい。このようにアタッチメントを介して複数の構造の異なる耐震壁の模型を連続させ、説明者が手で持ってアタッチメントに力を付与することで、このとき付与された力は並べられた複数の耐震壁の模型に同一の大きさで作用することになる。従って、特別な力の発生機構を必要とすることなく、複数の耐震壁の模型に同一の力を付与することが可能となる。
【0021】
上記の如く、個々の耐震壁の模型を利用することで、対応する耐震壁の構造を説明することが可能であり、且つ被説明者は明確に理解することが可能である。そして複数の耐震壁の模型をアタッチメントに接続して該アタッチメントに力を付与することで、これらの複数の耐震壁の模型に同時に同一の力を付与することが可能である。このため、同一の力が付与した状態に於ける構造の異なる耐震壁の変形状態を視認することが可能となり、且つこの状態でエネルギーの吸収機能の説明を受けることで、より明確な理解を得ることが可能である。更に、被説明者が自らこれらの模型に力を付与して体験することも可能である。
【0022】
次に、本発明に係る説明装置の好ましい実施例について図を用いて説明する。図1は代表的な例としての偏心ブレース構造の一例(以下「高耐震フレーム構造」という)の耐震壁の模型を示す図である。図2は高耐震フレーム構造の耐震壁の模型が変形した状態を説明する図である。図3は代表的な例としての筋交い構造の耐震壁の模型を示す図である。図4は筋交い構造の耐震壁の模型が変形した状態を説明する図である。図5は複数の構造の異なる耐震壁の模型をアタッチメントを介して連続させた状態を説明する図である。図6はアタッチメントを介して各耐震壁の模型に同一の大きさの力を付与して変形させた状態を説明する図である。
【0023】
図1は高耐震フレーム構造の耐震壁と同様の構造を持った模型Aである。模型Aは、横方向に配置された一対の横部材1と、横部材1の左右両端を接続する縦方向に配置された一対の縦部材2と、水平方向に配置されて縦部材2を連結する連結部材3と、縦部材2と連結部材3とを斜めに結ぶ斜め部材4と、を有して構成されている。
【0024】
横部材1と縦部材2との接合部、及び縦部材2と水平部材3,斜め部材4との接合部は、夫々ピン6によって互いに回動可能に接続されており、外部から付与された力が小さい場合であっても、横部材1が容易に平行移動し得るように構成されている。また連結部材3は可撓性を持った、例えばゴムのような材料によって構成されており、横部材1の平行移動に伴って容易に屈曲変形し得るように構成されている。
【0025】
上記構成に於いて、横部材1は、厚さが3mm程度で、長さが約25cm程度の平板を用いて形成されており、また縦部材2は、厚さが3mm程度で、長さが約50cm程度の平板を用いて形成されている。従って、模型Aは人が充分に持ち運びし得る程度の大きさで且つ重量の大きいものではない。
【0026】
模型Aが対応する実際の耐震壁では、連結部材の中央部には塑性体が配置され、地震時に大きなエネルギーが付与されたとき、該塑性体が最初に降伏して地震エネルギーを吸収し得るように構成されている。しかし模型Aでは塑性体は配置されず、その代わり、連結部材3は塑性体の降伏に対応し得るような可撓性を持った部材として構成される。
【0027】
上記の如く構成された模型Aでは、図2に示すように、下側の横部材1を固定して上側の横部材1に横方向の力を付与することで、容易に横部材1を平行移動させ、これにより横部材1と縦部材2の交点を中心として平行四辺形状に変形させることが可能であり、この横部材1の平行移動に伴って連結部材3が屈曲変形することが可能である。従って、連結部材3の屈曲変形の発生を、付与された力に対するエネルギー吸収能であることを説明することが可能となり、耐震壁の構造と、エネルギーの吸収作用を具体的に説明して理解を得ることが可能となる。
【0028】
上記の如く構成された模型Aは、容易に持ち運びが可能であり、顧客を含む被説明者の求めに応じて出張することが可能であり、説明に当たって構造を詳しく説明し、且つ明快な理解を得ることが可能である。
【0029】
図3は筋交い構造の耐震壁と同様の構造を持った模型Bであって、ブレース構造とも呼ばれるものである。この模型Bは、横方向に配置された一対の横部材7と、横部材7の左右両端を接続する縦方向に配置された一対の縦部材8と、横部材7と縦部材8との交点を斜めに結ぶ2本の斜め部材9とを有して構成されている。横部材7と縦部材8及び斜め部材9の交点はピン6によって互いに回動可能に接合されており、斜め部材9は例えばゴムのような可撓性を持った屈曲変形可能な材料を用いて構成されている。
【0030】
上記構成に於いて、横部材7及び縦部材8は前述した模型Aの横部材1,縦部材2と同一の材料を用いており、特に、縦部材8は同一の長さを持って形成されている。従って、模型Bは幅方向の寸法が模型Aとは無関係に設定されるものの、縦方向の寸法は同一寸法を持って形成されている。
【0031】
上記の如く構成された模型Bを単独で変形させる場合、図4に示すように、下側の横部材7を固定して上側の横部材7に横方向の力を付与することで、容易に横部材7を平行移動させ、これにより横部材7と縦部材8の交点を中心として平行四辺形状に変形させることが可能であり、この横部材7の平行移動に伴って、一方の斜め部材9が屈曲変形することが可能である。
【0032】
従って、一方の斜め部材9が屈曲変形することが付与された力に対するエネルギー吸収能であること、また一方の斜め部材9のみが屈曲変形する理由を含めて説明することが可能となり、耐震壁の構造と、エネルギーの吸収作用を具体的に説明して理解を得ることが可能となる。
【0033】
上記の如く構成された模型Bは、容易に持ち運びが可能であり、顧客を含む被説明者の求めに応じて出張することが可能であり、説明に当たって構造を詳しく説明し、且つ明快な理解を得ることが可能である。
【0034】
次に、図5,図6により、模型A,Bに同一の力を付与して両者の特性を比較説明する装置について説明する。図に示すように、模型A,Bは互いに横方向に配置されると共に、上下の横部材1,7がアタッチメント11,12によって連結されており、これにより、模型A,Bは互いに一体化した構造として構成されている。このように、模型A,Bは同一平面内に配置されることとなり、周囲の被説明者が見やすいという利点がある。
【0035】
各横部材1,7のアタッチメント11,12に対する接続構造は特に限定するものではなく、例えばアタッチメント11,12に各横部材1,7を嵌合し得る寸法を持った溝(図示せず)を形成しておき、この溝に模型A,Bの横部材1,7を嵌合すると共に楔等を差し込んで固定することが可能である。
【0036】
そして図6(a)に示すように、アタッチメント11,12に力を付与してを相対的に左右方向に動かすことで、模型A,Bには同一の力が付与され、この力に応じて、同図(b)に示すように、各模型A,Bに変形が生じる。この変形は、模型Aでは連結部材3が斜め材4との交点を起点として上下方向に変形するのに対し、模型Bでは一方の斜め部材9が屈曲変形するにも関わらず他方の斜め材9には変形が生じないという特徴を有する。
【0037】
従って、各模型A,Bの変形の特性を説明し、且つこの変形に伴うエネルギーの吸収作用を説明することで、被説明者は、構造の違いと共にエネルギー吸収作用の違いを理解することが可能である。
【0038】
尚、上記実施例では、耐震壁の模型として高耐震フレーム構造の模型Aと、筋交い構造の模型Bを用いて説明したが、これらの模型A,Bにのみ限定するものではなく、剛体構造(矩形フレーム)の模型やパネル構造の模型も含めた全ての異なる構造を持った耐震壁の模型を対象とすることが可能である。
【0039】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明に係る説明装置は、持ち運びが可能な大きさの構造の異なる耐震壁の模型を一対のアタッチメントに接続することで同一面内に並べて配置し、この模型を被説明者に提示して説明することで、夫々の構造を直接目視によって確認することが出来る。このため、被説明者は、住宅の耐震性能や耐風性能に関連する耐震壁の構造を容易に理解することが出来る。
【0040】
特に、異なる構造の耐震壁を並べて同一方向に同一距離移動する力を付与することで、夫々の耐震壁の変形状態を確認することが出来、同一のエネルギーに対する吸収能力を比較することが出来る。このため、住宅の計画段階に於ける建物の構造を決定する上で貴重な説明をすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】代表的な例としてのラーメン構造の耐震壁の模型を示す図である。
【図2】ラーメン構造の耐震壁の模型が変形した状態を説明する図である。
【図3】代表的な例としての筋交い構造の耐震壁の模型を示す図である。
【図4】筋交い構造の耐震壁の模型が変形した状態を説明する図である。
【図5】複数の構造の異なる耐震壁の模型をアタッチメントを介して連続させた状態を説明する図である。
【図6】アタッチメントを介して各耐震壁の模型に同一の大きさの力を付与して変形させた状態を説明する図である。
【符号の説明】
A,B 模型
1,7 横部材
2,8 縦部材
3 連結部材
4 斜め部材
6 ピン
9 斜め部材
11,12 アタッチメント
Claims (1)
- 構造の異なる複数の耐震壁のエネルギーの吸収作用を説明する装置であって、一対の横部材と一対の縦部材をピン接合してなる同一高さの四角形状のフレームに対して可撓性を有し屈曲変形し得る複数の部材を異なる形式で配置連結することによって形成された持ち運び可能な大きさの構造の異なる複数の耐震壁の模型を前記一対の横部材を一対のアタッチメントに接続することによって同一面内に並べて配置し、前記一対のアタッチメントを左右方向に動かすことによってこれらの構造の異なる複数の耐震壁の模型に同時に同一方向に同一距離移動する力を付与して夫々の耐震壁の変形状態を目視し得るように構成したことを特徴とする耐震壁の説明装置。
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