JP4000576B2 - レール継目による軌道狂いの位置照合方法 - Google Patents

レール継目による軌道狂いの位置照合方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高速軌道検測車で測定された軌道狂いのデータを処理する場合に、その得られたデータと実際の軌道との位置照合をレール継目の位置を基準にして行うようにした技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄道では、線路上の特定の位置を示すのに、キロ程と呼ばれる指標が用いられている。キロ程は、ある定められた出発点からその位置までの線路に沿って測られた距離を表すものであり、実際には、適当な間隔でキロポストと呼ばれる標識を線路脇に立設して表示している。鉄道保守管理システムでは、このキロ程を利用して軌道狂いのデータの位置照合を行うようにしている。例えば、高速軌道検測車では、図3に示すように、線路上を高速で走行しながら二つのレールの高低狂い,平面性狂い,軌間狂い,通り狂い,水準狂い等の軌道狂いのデータを測定しており、また同時にレール継目の位置及び自動列車停止装置(以下は、ATSという)の地上子の位置等も検知している。
【0003】
而して、高速軌道検測車で測定した軌道狂いのデータを実際に応用するためには、測定したデータをキロ程で表される線路上の位置と正確に対応させて位置照合することが必須要件となる。そのため、従来では高速軌道検測車で自動的に検知することのできるATS地上子の検知マークを利用して軌道狂いのデータの位置照合を行っていた。これは、ATS地上子の設置位置が予めキロ程で知られていることを利用したものである。
【0004】
従来のATS地上子を利用した位置照合は、図4に示すキロ程データ番号対照表(以下は、KDT表という)を利用して行っている。KDT表は、ある特定区間におけるATS地上子の一部をピックアップしてそのキロ程を書き込むと共に、前記特定区間を例えば1mごとに区画してそれぞれに1,2,3……というふうに順次番号を付したときの前記ピックアップした地上子に対応するデータ番号を書き込んでいる。そして、計算上のキロ程と計算誤差も同時に表示している。尚、図4のKDT表において、「ID」は線名とキロ程の昇順・降順を表すものであり、「ID 23121」のうちの「231」は北陸線を意味し、その後の「21」はキロ程の昇順(データがキロ程の小さい方から大きい方に並ぶ)を表している。ちなみに、データがキロ程の大きい方から小さい方に並ぶ降順の場合は「22」となる。「DX」はデータのサンプリング間隔であり、この場合1mを意味している。また「SV」は、高速軌道検測車で測定を開始する地点のキロ程を表しており、例では302k034Mを意味している。「S」は、キロ程の指標を意味するものであり、この従来技術ではATS地上子である。「C」は、特定区間の開始点を意味する。「B」は、カーブ区間を直線区間に変更する等により、短くなった断絶区間の終点を意味する。また「W」は、逆に線路を迂回させる等してキロ程が延びて重複する区間が形成された場合の終点を意味する。
【0005】
更に、図4のKDT表において、計算キロ程とは、(ひとつ前の地上子のキロ程)+(データ番号−(ひとつ前のデータ番号))×(データ間隔)×Sで表される計算上のキロ程である。ここで、Sはキロ程昇順の場合は1、キロ程降順の場合は−1とする。また計算誤差とは、計算キロ程から実際のATS地上子のキロ程を引いた値であり、位置合わせの妥当性を確認するためのものである。なお、地上子と地上子との間は、地上子のキロ程とこれに対応するデータ番号との対応を計算して求めることにより、測定したデータのすべてのサンプリング点をキロ程に1対1で対応させることが可能である。これにより、地上子と地上子との間の特定区間における軌道狂いの保線作業は、高速軌道検測車の出力チャートから保線作業を必要とする動狂いの区間を特定し、該特定された区間に対応するデータ番号を割り出し、割り出したデータ番号に対応する実際の軌道の位置を確認した上で行っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記ATSの地上子は、信通区の管理にあり、保線区の受持ちではない。そのため、軌道全体の大がかりな信号線改修工事等に際し、ATS地上子の位置が10〜15メートル範囲等で変動する場合があるが、連絡ミスや失念等の人為的ミスにより信通区から保線区への連絡が不十分となり、保線区の台帳に記載された該当するATS地上子のキロ程の更新がされないままになる場合がある。つまり、ATS地上子の位置が変動したにも拘らず、前記KDT表の地上子の位置データが校正されないまま高速軌道検測車で測定された軌道狂いのデータの後処理(地上処理)に使用され、正確な位置照合ができない場合があった。このような位置照合に不正確な部分があると、高速軌道検測車で測定された軌道狂いをマルチプルタイタンパ等を用いて整正する場合に、軌道狂いの発生している地点の位置が誤って認識され、軌道狂いの生じている軌道の整正が行われずに、軌道狂いの生じていない正常な軌道の整正作業が行われることになり、却って軌道狂いを多く発生させるという問題があった。
【0007】
しかも、KDT表におけるATS地上子は、2〜3Kmごとにピックアップしているので、その中に位置の変動したATS地上子があると、高速軌道検測車で測定された軌道狂いデータのKDT表との位置照合のズレが、次に検知されるATS地上子の地点にまで及び、2〜3Kmの広範囲で位置照合のズレが発生するという問題があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は従来の前記課題に鑑みてこれを改良除去したものであって、レール継目を利用して軌道狂いの位置照合を行い、補助的に軌道狂いの高低狂いの波形を利用することで二重の位置照合を行い、高精度の位置照合が行える方法を提供せんとするものである。
【0009】
而して、前記課題を解決するために本発明が採用した請求項1の手段は、レール継目台帳に記載されたレール継目の現地キロ程と、高速軌道検測車で検測して得られた前記レール継目の位置データに当該高速軌道検測車の検測区間を所定間隔ごとに分割した各区間に付したデータ番号を割り当てたレール継目データ番号との対応関係、及び、レール継目の現地キロ程をレール継目データ番号を用いて補正して得た計算キロ程とレール継目の現地キロ程との誤差を記録したキロ程データ番号対照表を作成し、高速軌道検測車で検測して得た軌道狂い位置のデータ番号を前記キロ程データ対照表と照合することにより、前記軌道狂い位置を現地キロ程で特定することを特徴とするレール継目による軌道狂いの位置照合方法である。
レール継目の間隔は、レールの種類によってその長さが異なり、25mのものや50mのもの、更には200mを越えるロングレールもあり、これらのレールの継目は、保線区において管理されており、レール継目のキロ程が台帳に記録されている。しかも、このレール継目の位置は、レールを交換しない限りは、その位置が変更されることはない。従って、レール継目のキロ程を基準としてKDT表を作成し、高速軌道検測車で測定された軌道狂いのデータと位置照合することにより、ズレが生じることは全くなくなる。つまり、正確な位置照合が可能であり、保線作業の区間を誤る等のこともない。
【0010】
本発明が採用した請求項2の手段は、前記キロ程データ番号対照表に、高速軌道検測車で検測して得た過去の高低狂いのチャート波形を加えたものを基準ファイルとし、高速軌道検測車で検測して得た軌道狂い位置のデータ番号を前記キロ程データ番号対照表と照合すると共に、高速軌道検測車で得た高低狂いのチャート波形と前記基準ファイルの過去の高低狂いのチャート波形とを照合することにより、前記起動狂いの位置をキロ程で特定することを特徴とするレール継目による軌道狂いの位置照合方法である。
この発明では、前記請求項1のレール継目を基準とする位置照合に加えて、高低狂いの波形を利用することにしている。高低狂いの波形は、マルチプルタイタンパ等による保線作業及びレール頭頂面を研磨するレール削正作業を行わない限りにおいては、過去のデータと殆ど同じ波形である。そのため、レール継目の間隔が25mのように短い場合には、高速軌道検測車から出力されるチャート上において、レール継目の位置がどのキロ程に対応するものであるのかその位置特定が困難な場合があるが、このような場合に、過去の高低狂いの波形と高速軌道検測車で検測された高低狂いの波形とを照合させれば、軌道狂いの位置を間違うことなく特定することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の構成を図面に示す発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。図1及び図2は本発明の一実施の形態に係るものであり、図1は基準ファイルの作成要領を示すフローチャート図、図2はレール継目を基準としたKDT表である。本発明では、このレール継目を基準として作成したKDT表と、高速軌道検測車で過去に測定された軌道狂いのうちの高低狂いの波形とを基準ファイルとし、この基準ファイルによって高速軌道検測車で測定されたデータの位置照合を行うようにしている。位置照合は、レール継目を基準とした基準ファイルを、パソコン等のコンピュータ端末機器で作成し、これを利用して行うようにしている。なお、レール継目には、通常の継目と、ロングレールに用いられる伸縮継目(EJ)と、列車運行制御のための閉塞区間を形成するための接着絶縁継目(IJ)等があり、これらの全てを含むものである。
【0012】
基準ファイルの作成は、図1のフローチャートで示すように、先ず、高速軌道検測車で測定された最近の軌道狂いのデータと、図4に示す従来のATS地上子を基準としたKDT表とを、ホストコンピュータ等からパソコン画面上へコピーして開始する。そして、KDT表におけるキロ程の指標Sを、ATS地上子のキロ程から軌道狂いのデータ(チャート)上に表れたレール継目のキロ程に置き換える。これはチャート上に表れた全てのレール継目に対して行う。これにより図2に示すKDT表には、高速軌道検測車の検測区間におけるレール継目の現地キロ程と、前記検測区間を例えば1mごとに区画してそれぞれに1,2,3……というように順次番号を付したデータ番号を前記レール継目に割り当てたデータ番号とが書き込まれる。そして、現地のキロ程と計算上のキロ程との誤差も同時に表示される。図2のKDT表において、「ID」は線名とキロ程の昇順・降順を表し、「DX」はデータのサンプリング間隔(この場合1m)を意味している。また「SV」は、高速軌道検測車で測定を開始する地点のキロ程を表しているのは、図4のKDT表と同じである。計算キロ程は、図4のKDT表と同じく、(ひとつ前の地上子のキロ程)+(データ番号−(ひとつ前のデータ番号))×(データ間隔)×Sで算出される計算上のキロ程(キロ程昇順の場合はS=1、キロ程降順の場合はS=−1)である。計算誤差とは、レール継目の計算キロ程から現地キロ程を引いた値であり、位置合わせの妥当性を確認するためのものである。従って、レール継目のキロ程を入力すると、自動的にこれに対応するデータ番号及び計算キロ程並びに計算誤差が表示される。然る後は、高速軌道検測車で測定されたチャート上のレール継目のキロ程の位置補正データを入力する。これは、パソコン画面上へ表示されたチャート上のレール継目のキロ程が、保線区のレール継目の台帳に記録されているその地点の現地の(実際の)キロ程と異なる場合に、チャート上のキロ程を現地のキロ程に補正するものである。位置補正後のデータは、プリントアウトして書面で確認する等に利用される。
【0013】
次に、このプリントアウトした位置補正後のチャート上のレール継目のキロ程と、保線区の台帳に記録された実際のレール継目のキロ程とを対比し、くい違いのあるチャート上のキロ程をパソコン画面上のリストにメモする。そして、このメモを見てチャート上のキロ程を更新し、補正の処理を実行する。これは、前記位置補正データでの補正作業が正確に行われたかどうかを確認し、補正が正確に行われていないものについては、これを更に補正してデータを更新するようにするための作業である。このようにしてすべてのレール継目の地点で、高速軌道検測車で検測されたチャート上のレール継目のキロ程と、保線区台帳に記録されている実際のレール継目のキロ程とを対比し、すべての地点でくい違い量がゼロであるかどうかを判定する。NOであれば、位置補正データを更新する作業メニューのところへ戻り、同様の処理を繰り返して行い、すべての地点でくい違い量がゼロになるようにする。YESであれば、出来上がったものをKDT表とする。なお、再確認の意味でKDT表の全体についてもう一度、保線区台帳のレール継目のキロ程とくい違いがないかどうかを確認する。
【0014】
このようにしてレール継目のキロ程を基準として作成されたKDT表と、高速軌道検測車の軌道狂いのデータ(チャート)とをパソコンの保存領域へ保存し、基準ファイルとする。なお、この基準ファイルの使用に際しては、保存された軌道狂いのデータのうち、高低狂いのデータのみを使用する。つまり、基準ファイルを正確に定義すれば、レール継目を基準として作成されたKDT表と、高低狂いの波形とをいうことになる。
【0015】
次に、この基準ファイルを用いて、新たに高速軌道検測車で測定された軌道狂いのデータの位置照合を行う場合を説明する。先ず、高速軌道検測車のチャート出力された測定データから保線作業を必要とする軌道狂いの生じている区間を特定する。そして、この特定区間に対応するデータ番号を、レール継目を基準にして作成されたKDT表から割り出し、割り出したデータ番号に対応する実際の軌道の位置を確認して現地の保線作業を行うようにすればよい。レール継目とレール継目との間のキロ程は、レール継目の現地キロ程とこれに対応するデータ番号との対応から計算して求めることができ、測定した軌道狂いデータのすべてのサンプリング点をキロ程と1対1対応させることが可能である。レール継目の間隔が200m以上等の十分なものである場合は、チャート上のレール継目の位置をその前後のものと間違うことはなく、KDT表を用いるだけで軌道狂いの位置照合を正確に行うことが可能である。つまり、レール継目のキロ程を基準としたKDT表だけを基準ファイルとして用いること可能である。
【0016】
ところが、高速軌道検測車のチャート出力におけるレール継目の位置は、レール継目の間隔が短い25mレール等の場合は、チャート出力上に多数表れ、その特定が難しくなり、チャート出力上のレール継目の位置をKDT表のレール継目に対応させることが困難になるおそれがある。またレール交換により、レール継目の位置が変動し、KDT表のレール継目のキロ程が変更されていない場合は、正確な位置照合ができなくなる。そのため、この実施の形態では、基準ファイル内に納められた過去の高速軌道検測車で測定された高低狂いの波形と、今回測定された高低狂いの波形とを照合することにより、軌道狂いの位置を特定するようにしている。これは、高低狂いの波形は、マルチプルタイタンパによる保線作業やレール頭頂面の削正作業を行わない限りは、全く異なることがないので、その波形が一致するように照合させることで、軌道狂いの位置を特定することが可能だからである。なお、レール交換作業等により、レール継目の位置が変更になったことが明らかな場合は、そのキロ程の情報をレール継目台帳及びKDT表へフィードバックしてこれを校正すればよい。
【0017】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に係る本発明にあっては、レール継目台帳に記載されたレール継目の現地キロ程と、高速軌道検測車で検測して得られた前記レール継目の位置データに当該高速軌道検測車の検測区間を所定間隔ごとに分割した各区間に付したデータ番号を割り当てたレール継目データ番号との対応関係、及び、レール継目の現地キロ程をレール継目データ番号を用いて補正して得た計算キロ程とレール継目の現地キロ程との誤差を記録したキロ程データ番号対照表を作成し、高速軌道検測車で検測して得た軌道狂い位置のデータ番号を前記キロ程データ対照表と照合することにより、前記軌道狂い位置を現地キロ程で特定するようにしたから、位置照合のズレがなくなる。つまり、正確な位置照合が可能であり、保線作業の区間を誤る等のこともない。
【0018】
また請求項2に係る本発明にあっては、前記レール継目を基準としたキロ程データ番号対照表に、高速軌道検測車で検測した過去の高低狂いのチャート波形を加えてこれを基準ファイルとし、基準ファイルのレール継目の位置と高速軌道検測車で検測されたレール継目の位置とを照合すると共に、基準ファイルの高低狂いのチャート波形と高速軌道検測車で検測された高低狂いのチャート波形とを照合することで、高速軌道検測車で検測された軌道狂いの位置照合を二重に行うようにしている。高低狂いの波形は、マルチプルタイタンパ等による保線作業及びレール頭頂面を研磨するレール削正作業を行わない限りにおいては、過去のデータと殆ど同じ波形である。そのため、高低狂いの波形照合を併用することにより、軌道狂いの位置を間違うことなく特定でき、正確な位置照合が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る基準ファイルの作成要領を示すフローチャートである。
【図2】本発明に係るレール継目を基準としたKDT表を示す図面である。
【図3】高速軌道検測車で測定された軌道狂いのデータを示す図面である。
【図4】従来のATS地上子を基準としたKDT表を示す図面である。

Claims (2)

  1. レール継目台帳に記載されたレール継目の現地キロ程と、高速軌道検測車で検測して得られた前記レール継目の位置データに当該高速軌道検測車の検測区間を所定間隔ごとに分割した各区間に付したデータ番号を割り当てたレール継目データ番号との対応関係、及び、レール継目の現地キロ程をレール継目データ番号を用いて補正して得た計算キロ程とレール継目の現地キロ程との誤差を記録したキロ程データ番号対照表を作成し、高速軌道検測車で検測して得た軌道狂い位置のデータ番号を前記キロ程データ対照表と照合することにより、前記軌道狂い位置を現地キロ程で特定することを特徴とするレール継目による軌道狂いの位置照合方法。
  2. 請求項1に記載したキロ程データ番号対照表に、高速軌道検測車で検測して得た過去の高低狂いのチャート波形を加えたものを基準ファイルとし、高速軌道検測車で検測して得た軌道狂い位置のデータ番号を前記キロ程データ番号対照表と照合すると共に、高速軌道検測車で得た高低狂いのチャート波形と前記基準ファイルの過去の高低狂いのチャート波形とを照合することにより、前記起動狂いの位置をキロ程で特定することを特徴とするレール継目による軌道狂いの位置照合方法。
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