JP4000013B2 - 揮散性薬剤担持体 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、防カビ剤、防虫剤等の揮散性薬剤担持体に関し、更に詳しくは、各種の揮散性薬剤を一定期間徐々に、一定量を安定的に揮散することができ、多量の香料等の薬剤を含有してもその形態安定性を保持できるなどの諸性質を有する揮散性薬剤担持体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、香料等の揮散性薬剤を各種担体に吸着・担持させて、担体表面より薬剤を徐々に揮散・放出するタイプの芳香剤等の製品が開発検討されている。かかる担体として使用される素材は、例えば、不織布、厚紙、木片、ボード板、コルクなどの繊維質の担体;シリカゲル、石膏、セラミックス、セラミックス粉末と金属粉末の焼結成形体などの多孔性無機質担体;ポリエチレン、塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などの多孔性有機質担体などが用いられている。しかしながら、従来用いられている香料含浸用担体は、使用後も原型をとどめ、エンドポイント(終了点)が確認できなかったり、担体表面の香料成分が揮散すると、担体内部の香料成分が担体表面に出がたいため、香気の経時変化(強度の減少、質の変化)が大きい。また更に、例えば、無機質担体を使用するものでは、使用後焼却処分が行えないので、使用後の処分に問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、香料等の揮散性薬剤を一定期間徐々に、一定量を安定的に揮散することができ、多量の香料等の薬剤を含有してもその形態安定性を保持でき、使用後に担体が収縮し、エンドポイントを確認することができ、さらに使用後の処分が容易である揮散性薬剤担持体を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは鋭意検討を行った結果、今回、微生物が産生するセルロースゲルの乾燥物を、揮散性薬剤の担持体として使用することにより上記課題を一挙に解決することができることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0005】
かくして、本発明は、ナタデココをカッティングし、乾燥して得られる揮散性薬剤担持体を提供するものである。
【0006】
以下、本発明の揮散性薬剤担持体についてさらに詳細に説明する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において使用される微生物が産生するナタデココは、東南アジアでココナッツの実から作られている微生物セルロースゲルの1種で、寒天に似たコリコリとした食感を有しており、近年、嗜好性食品として、デザート、飲料等に広く用いられているものである。かかる微生物が産生するナタデココは、公知の方法によって調製したものであればよく、特に限定されない。具体的に、ナタデココの調製方法の一例を挙げると、例えば、まず、ココナッツの果実の果肉をつぶした後、搾汁、布濾過して、水可溶物を採取し、これに水可溶物の5〜10%の砂糖、1〜3%の酢酸、また、必要に応じて、窒素源としてタンパク質、アミノ酸、アンモニウム塩を添加して培地を調製する。そして、この培地に所望により殺菌処理を行い、殺菌処理を行った場合は、殺菌後、充分に冷却する。次いで、微生物を接種し、30℃で7〜14日間発酵させる。接種する微生物は、ナタデココ産生能を有する細菌であればよく、例えば、ナタデココ産生酢酸菌であるアセトバクター・キシリナムATCC10821、アセトバクター・キシリナムIFO13772等が例示できる。
【0008】
通常、ココナッツの果肉に微生物を接種して1〜2日間で培地の表面に膜が生成され、約1〜2週間後に10〜15mmの厚い膜が生成される。この膜を切り取り、水洗、酸抜き等の加工処理を施すことにより、ナタデココが得られる。
【0009】
本発明の揮散性薬剤担持体は、上述したナタデココを、例えば、適当な大きさにカッティングし、真空乾燥、凍結乾燥などの適宜な乾燥手段を採用して乾燥することにより得ることができる。
【0010】
本発明の揮散性薬剤担持体に含浸・担持される薬剤としては、例えば、香料、消臭剤、殺虫剤、防虫剤、殺菌剤、忌避剤、鮮度保持剤、農薬などの少なくとも1種の揮散性薬剤を例示することができる。これらの薬剤には、揮散性を調節するなどの目的で、例えば、水、エタノール、多価アルコール、エーテル、炭化水素などの溶媒類を適宜配合することができる。また更に、所望により界面活性剤、色素、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤なども配合することができる。
【0011】
上記のように、本発明の揮散性薬剤担持体は、香料などの薬剤の変質、変色、異臭化などの不都合な変化を伴うことなしに、優れた芳香・消臭効果などの持続性及び芳香バランス性を示し、且つ、形態安定性に優れ、多量の香料を含有してもその形状を保持できるなどの優れた諸性質を示し、車内、船舶内、トイレ内、浴場内、居室内などの室内芳香・消臭剤などとして、その他広い分野において有用である。
【0012】
以下実施例により本発明の実施の態様をさらに具体的に説明する。
【0013】
【実施例】
実施例1
ココナッツ果実よりココナッツミルク水を採取し、このココナッツミルク水1000gに対し、グラニュー糖60g、ペプトン1gを添加し、クエン酸でpH4.0に調整して、85℃で10分間殺菌し、冷却した。これを240mm×240mmの容器に流し込み、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum ATCC10821)を接種し、30℃で10日間、発酵させてゲル化した。次いで、ゲル化した発酵物を60メッシュの金網で濾過して、水洗し、さらに90℃以上で30分間煮沸し、脱臭し、ゲル830gを分離した。
【0014】
得られたゲルを、約60mm角、厚さ10mm(16枚)にカットし、50mmHgの減圧下、30℃の条件にて、20時間乾燥し、50×50×7mm(縦×横×厚さ;16枚)の乾燥物0.2g(本発明品1)を得た。
(含浸試験)
実施例1で得られた本発明品1の担持体と、対照品として含浸芳香剤用に多用されているキノクロス(王子キノクロス社製のパルプ繊維不織布の商品名)を使用して、下記に示す香料及び溶剤に浸漬し、経過時間による液含浸量とその状態を観察し、その結果を表1に示した。なお、本発明品1の担持体と、対照品の担持体の重量及び寸法は以下のようである。
担持体の重量及び寸法
香料及び溶剤
・スカッシュタイプ香料#2679(長谷川香料社製)
・ソルフィット(3−メトキシ−3−メチルブタノール)
・IPソルベント1620(イソパラフィン)
【0015】
【表1】
【0016】
表1に示すように、本発明品1の担持体は、通常汎用されている対照品に比べ、液含浸するまでにやや時間を要するが、飽和液含浸量は対照品とほぼ同等であった。また、本発明品1の担持体は対照品に比べ、液飽和後の形態が安定していた。
(揮散試験)
上記の含浸試験で薬剤を飽和した担持体を、室温で開放し、経時的な重量変化(揮散状態)と担持体の状態を観察した。その結果を図1及び図2に示した。また、香料を担持したものについては、経時的な香調の変化を官能的に評価し、その結果を表2に示した。
【0017】
【表2】
【0018】
図1及び図2に示した本発明品1の担持体は、揮散重量変化の点では対照品とほぼ同等であった。しかし、対照品では薬剤の揮散に伴う形態の変化は見られなかったが、本発明品1では、含浸液としてIPソルベント1620を使用した場合は5日目付近で形の収縮が見られ、ソルフィットでは9日目、スカッシュタイプ香料#2679では20日目頃から形態の収縮が見られ、エンドポイント(終了点)を判断するのに有効である。
【0019】
表2に示した揮散時の香調変化の結果より、本発明品1は揮散試験後半においてもフレッシュ感が持続するが、対照品はフレッシュな香気がなくなり残香の重い香気に変化していた。
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、香料等の揮散性薬剤を一定期間徐々に、一定量を安定的に揮散することができ、多量の香料等の薬剤を含有してもその形態安定性を保持でき、使用後に担体が収縮し、エンドポイントを確認することができ、さらに使用後の処分が容易である揮散性薬剤担持体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶剤を担持した本発明品1と対照品の担持体の経時的な揮散重量変化を示すグラフである。
【図2】香料を担持した本発明品1と対照品の担持体の経時的な揮散重量変化を示すグラフである。
Claims (1)
- 微生物が産生するナタデココをカッティングし、乾燥して得られる乾燥物からなる揮散性薬剤担持体。
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