JP3999585B2 - 養殖魚介類への栄養補給体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はカキ,アコヤガイ,ホタテガイ,アワビなどの貝類又はクルマエビ,イセエビ等の養殖で、生育に必要な栄養素を補給する養殖魚介類への栄養補給体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カキ養殖では、例えばホタテ貝殻62に付着した種カキ63を購入し、該ホタテ貝殻62を7mの懸垂ロープ61に種カキ63を30cm程の間隔で通す作業(種さし)を行い、そのホタテ貝殻付き懸垂ロープ6をイカダ1台当たり約180本吊して養殖が行われる(図3参照)。隣接する懸垂ロープ間隔は50cm程度である。直径約15cmほどのホタテ貝殻の表裏には15〜20個の種カキ63が付いていて、風波の静かな内湾で行われる垂下式養成のもとで種カキ63が日数をかけて成長していく。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、イカダ8には既述のごとく多数の懸垂ロープ61が近接配置されるため、周辺部6aに吊るされた懸垂ロープ61のカキは栄養素に富んだ海水に直かに当たり順調に成長しても、イカダの中央内部6bに吊るされた懸垂ロープ61のカキは栄養素がいきわたらず生育が悪かった(図2参照)。
貝類の成長には貝殻を大きくするのに大量のカルシウムを必要とする。またカキ等の貝類はタウリンなどのアミノ酸の他、マグネシウム等のミネラルを多く含んでおり、こうしたことからマグネシウムを必要とする。カキの成長過程で、これらカルシウム,マグネシウムは海水中の溶存カルシウム,溶存マグネシウムから吸収することになるが、イカダ8の中央内部6bに配された懸垂ロープ61のカキは溶存カルシウム,溶存マグネシウムが既に外周縁側のカキに捕捉,吸収されて充分吸収できないでいた。さらにいえば、長年の養殖により湾内の海水中の溶存カルシウム,溶存マグネシウム等の栄養が不足し、外海に近いイカダに比べ湾内奥に配されるイカダ8のカキの収穫量が落ちていた。
【0004】
本発明は上記問題点を解決するもので、魚介類の養殖で不足しがちなカルシウム分さらにマグネシウム分を簡便にして効率よく補給し、魚介類を順調に成長させることができる養殖魚介類への栄養補給体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、請求項1の発明の要旨は、貝殻の粉末( 1 )と、主成分を水酸化マグネシウムとし、その接着力によって前記貝殻の粉末 ( 1 ) を塊状に固めるバインダー( 2 )と、が混練固化して塊状体に成形され、且つ該バインダーは該塊状体を海水中に置くことにより時間をかけて貝殻の粉末 ( 1 ) 及びバインダー ( 2 ) が徐々に海水中に溶解し該塊状体の形状を小さくするか消失させる結合剤になっていることを特徴とする養殖魚介類への栄養補給体にある。請求項2の発明たる養殖魚介類への栄養補給体は、請求項1で、前記貝殻の粉末 ( 1 ) が100重量部に対し、前記バインダー ( 2 ) が5〜50重量部の範囲にあることを特徴とする。請求項3の発明たる養殖魚介類への栄養補給体は、請求項1又は2で、前記バインダーの主成分を海水法により生成されてなる水酸化マグネシウムとする共に前記塊状体に貫通孔を縦通させてなることを特徴とする。
請求項4の発明の要旨は、貝殻の粉末100重量部に対し、主成分を水酸化マグネシウムとし、その接着力によって前記貝殻の粉末を塊状に固めるバインダー5〜50重量部を配合すると共に水30〜60重量部を加えて混練しペースト状体とし、次いで、そのペースト状体を用いて所定大きさの中間品を成形し、その後、該中間品を乾燥し固化させて塊状体の栄養補給体とし、該栄養補給体を海水中に置くことにより数ヶ月の時間をかけて貝殻の粉末及びバインダーが徐々に海水中に溶解しその形状を小さくするか消失するようにしたことを特徴とする養殖魚介類への栄養補給体の製造方法にある。
【0006】
請求項1,4の発明のごとく、貝殻の粉末とバインダーとが混練固化して塊状体に成形されると、粉末化により接触面積が増えるので、貝殻そのものより貝殻のカルシウム分が溶解しやすくなる。貝殻の粉末とバインダーとの配合調整によって、海水中への持続的なカルシウム分の溶解を図ることができる。養殖カキ等のむき身にはマグネシウムなどのミネラル分が多く含まれている。このマグネシウムは海水中から吸収することになるが、バインダーの主成分を水酸化マグネシウムとすれば、カルシウムと共に不足しがちなマグネシウムを効率良く補うことができる。マグネシウム等を充分含み、ミネラルバランスに富み栄養価の高いむき身が得られる。しかも、水酸化マグネシウムがバインダーとして機能する。バインダーの接着力によって貝殻の粉末を塊状に固め、養殖魚介類の栄養補給体とすることができる。この栄養補給体を海水中に置けば、時間をかけて貝殻粉末 , バインダーが徐々に海水中に溶解して、栄養補給体形状を小さくするか消失させることができ、簡便にして効率良く栄養補給できる。一度海水中に吊るせば、追加栄養補給することも管理チェックすること等もいらず作業負担がない。
請求項2の発明のごとく、貝殻の粉末 ( 1 ) が100重量部に対し、バインダー ( 2 ) が5〜50重量部の範囲にあると、成形段階で固化し易くなる。
請求項3の発明のごとく、バインダーの主成分を海水法により生成されてなる水酸化マグネシウムとすると、養殖魚介類に必要なマグネシウム補給も円滑に進む。そして、海水法により生成されてなるマグネシウム化合物であれば、もともと海水から得られたものであり、環境に優しく海洋汚染につながらない。塊状体に貫通孔を縦通させた栄養補給体とすると、他に収納袋などを要せずして栄養補給体のロープ等への取り付けが容易になる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る養殖魚介類への栄養補給体及びその製造方法について詳述する。図1は養殖魚介類への栄養補給体(以下単に「栄養補給体」という。)の一製造方法の説明図、図2は種カキが付着したホタテ貝殻付き懸垂ロープと栄養補給体付きロープとがイカダに吊設された様子を示す概略平面図、図3は図2の斜視図、図4はロープに取着される栄養補給体の縦断面図、図5はイカダに吊設される種カキが付着したホタテ貝殻付き懸垂ロープと栄養補給体付きロープとの位置関係を示す説明図、図6は他態様の栄養補給体の斜視図である。ここでの栄養補給体はカキ養殖に適用する。
【0008】
(1)栄養補給体の製造方法
本発明の栄養補給体は例えば次のようにして製造される。まず、貝殻の粉末1とバインダー2が用意される(図1のイ)。
貝殻は、カキ,アコヤガイ,ホタテガイ,アワビ,アサリ,ハマグリ等の貝類養殖で、むき身にして出荷された後に残る殻を用いる。ここでの貝殻の粉末1はカキ殻を粉末化したものである。本実施形態は財団法人鳥羽市開発公社製,有限会社アスク鳥羽販売の商品名「しおさい」を使用する。「しおさい」は収穫されたカキからかき殻だけを集め、これを天日干し,塩分除去した後、粗割,粉砕し粉末化させている。最大粒径が約2mmにして平均粒径が0.5mm程度で粒度分布する。
【0009】
バインダー2は貝殻の粉末1を結合させ所望の塊状体51に成形できる結合剤である。バインダー2の接着力によって貝殻の粉末1を塊状に固め、養殖魚介類の栄養補給体5とすることができる。バインダー2は、また栄養補給体5を海水中に置けば、数ヶ月の時間をかけて貝殻粉末1,バインダー2が徐々に海水中に溶解して、栄養補給体形状を小さくするか消失させることのできる結合剤になっている。
貝殻を粉末にするのはバインダー2によって所望形状の栄養補給体5を造ることができるだけでなく、貝殻原形のままの状態よりも一旦粉末化されたものの方が海水中にカルシウム分が溶解し易いからである。バインダー2の種類や量、貝殻粉末1や水3との配合比、塊状体51の形状等を調整することによってカキ養殖の養成に適合する栄養補給体5に造ることができる。
バインダー2は貝殻粉末1を結合させる機能を有し、さらに魚介類の成長に必要で魚介類の養殖でとかく不足しがちなマグネシウム,亜鉛等のミネラル分を含めばより好ましくなる。本実施形態はバインダー2の主成分を海水法(海水を主原料とする製法)により生成されてなる水酸化マグネシウム2aとする。具体的にはナイカイ塩素株式会社製の商品名「60%水マグ」を使用する。「60%水マグ」の成分にはマグネシウムの他にカルシウム,塩素,鉄等の微量成分を含むがこれらは海水に含んでいた微量成分であり、海を汚染することはない。「60%水マグ」はその平均粒径が190μmで、前記「しおさい」の平均粒径よりも小さい。
【0010】
栄養補給体5の製造方法は、前記貝殻の粉末1とバインダー2とを所定比率で配合すると共に、これに水3を必要量加えて攪拌機M等で混練し、ペースト状体41(スラリー状体)とする(図1のロ)。
貝殻粉末1とバインダー2の比率は貝殻粉末1が100重量部に対しバインダー2が5〜50重量部が好ましい。バインダー2が水酸化マグネシウム2aであっても5〜50重量部が好ましく、より好ましくは30〜50重量部となる。バインダー2がこの数値範囲を越えると成形段階で固化し難くなり、逆にこの数値範囲より小さくても固化し難くなるからである。水3の量は、貝殻粉末1が100重量部に対し30〜60重量部が好ましく、より好ましくは40〜50重量部となる。斯る水3の量が確保されると、貝殻の粉末1とバインダー2とを所定比率で配合したものをペースト状体41に混練一体化できる。上記数値範囲より水3が多いと後の乾燥工程に時間を要し、さらに混練してもバインダー2と貝殻粉末1が分離する傾向が見られる一方、上記範囲より水3が少なくなると貝殻粉末1とバインダー2の混練操作が困難になる。
【0011】
次に、前記ペースト状体41から所定量を取り出し製品形状たる栄養補給体5に近似した中間品42を造る(図1のハ)。本実施形態は、図1に示すごとくそろばん玉した栄養補給体5用の成形型(図示せず)にペースト状体41を流し込んで中間品42を成形する。中間品42の大きさはそろばん玉の円形が15〜20cmφで、そろばん玉の高さは7cm程である。そろばん玉の貫通孔422の径は1cmφ程度である。ここでの成形型は流し込み石膏型とするが、これに限定されず、中間品42,栄養補給体5の形状,用途等に応じて押出し成形型や圧縮成形型等を用いることができる。
【0012】
その後、前記中間品42を乾燥し固化させて塊状体51の栄養補給体5とする。ここでの中間品42の乾燥は室内自然乾燥とした。数日後に中間品42から殆どの水分が除去されて塊状体51に固化した所望の栄養補給体5が得られる。
中間品42の乾燥処理は天日干しや乾燥機を使った強制乾燥とすることができる。ただ理由は定かでないが、中間品42を自然乾燥させて栄養補給体5とした方が、海水中に数ヶ月に亘ってカルシウム分が徐々に溶解しカキ養殖に適合する栄養補給体5を製造し易いのを確認している。
【0013】
(2)栄養補給体
栄養補給体5は、例えば前記栄養補給体5の製造方法により造られ、貝殻の粉末1とバインダー2とを具備して、これらが混練一体化して塊状体51に形成されたものである。
貝殻の主成分は炭酸カルシウムである。前記「しおさい」は炭酸カルシウムが92.6%と大量のカルシウムを含み、これ以外に珪酸0.48%,マグネシウム0.2%,カリウム0.1%等を含む成分構成である。カキ殻を粉末にして水3に溶解し易くして、そのままカキ殻の生育に再循環利用するものであり、極めて都合のいいものになっている。
【0014】
バインダー2は既述のごとく貝殻粉末1を結合させ所望形状に成形できる結合剤である。バインダー2はその主成分をマグネシウム化合物とすればより好ましくなる。マグネシウム化合物には水酸化マグネシウム,炭酸マグネシウム,酸化マグネシウム,塩化マグネシウム,硝酸マグネシウム,硫酸マグネシウム等がある。養殖カキ等のむき身にはマグネシウムなどのミネラル分が多く含まれている。このマグネシウムは海水中から吸収することになるが、カルシウムと共に不足しがちなマグネシウムを効率良く補うことができるからである。バインダー2に海水から得られるマグネシウム化合物を採用すれば、もともと海水を原料にしているため環境に優しく、海を汚染しない。またカキ養殖などで生育された魚介類は人の口に入る食物であり、食品安全面から好ましいものとなる。海水から得られるマグネシウム化合物には海水法による水酸化マグネシウム2aの他に塩化マグネシウム(にがり)等がある。
【0015】
前記貝殻の粉末1と水3と前記水酸化マグネシウム2aとが所定配合で混合してなるペースト状体41から、乾燥処理で前記水3を大半取り除くことにより貝殻粉末1と水酸化マグネシウム2aが混練一体化した所定形状(塊状体51)の栄養補給体5が出来上がる(図1,図4)。栄養補給体5は水酸化マグネシウム2aがバインダー2として機能するのを実験で確かめている。貝殻粉末1と水酸化マグネシウム2aが混練一体化した状態になると、水酸化マグネシウム2aの粉末が貝殻粉末1の間に入り込み隙間を埋め、物理的な結合力で貝殻粉末1と接合力を強めて塊状体51にすることができると想定される。そして、栄養補給体5は貝殻粉末1の量と水酸化マグネシウム量の配合を調整することにより、カキ養殖等の魚介類の栄養補給剤としての役割を果たす。栄養補給体5をイカダ8に吊るしておくだけで、数ヶ月に亘って栄養補給体5が周りから徐々に海水に溶け出し、栄養補給体5が小さくなっていき、カキの成長に必要なカルシウム、さらにマグネシウムを提供できる。
【0016】
栄養補給体5は例えば図6に示すような(イ)球体、(ロ)円盤体、(ハ)錘体、(ニ)角柱等の様々な形状を採ることができる。また(ホ)のように栄養補給体5を1〜5cm程度の小粒の塊状体51とし、複数の栄養補給体5をネット等の網状体Nに収納させて使用することもできる。(ロ)の円盤体の場合はその直径が10〜15cmで、高さが4〜5cm程度になる。栄養補給体5はその塊状体51に縦通する貫通孔52が設けられるとより好ましくなる。貫通孔52にロープ9等を挿通させて、ロープ9に栄養補給体5を簡単に取り付けることができる。
本実施形態の栄養補給体5は既述のごとくそろばん玉形状をしている。そろばん玉形状した栄養補給体5は、例えば貫通孔52にカキ養殖で使われた使用済みロープ91を通した後、ロープ91にクギ7を差込んでこのクギ7に栄養補給体5が係止され下に落ちないようにして取着する(図4)。一本のロープ91に所定間隔をあけていくつもの栄養補給体5を容易に取着でき、イカダ式養成法のカキ育成に打ってつけとなる。
【0017】
栄養補給体5は例えば図2,図3のような垂下式養成法のイカダ8に吊設使用される。イカダ8にはホタテ貝殻付き懸垂ロープ6が所定間隔W1を開けて多数吊るされ、各懸垂ロープ6には種カキ63が付着したホタテ貝殻62が30cm程の間隔で配設される。フレッシュな海水に接するイカダの周辺部6aに比べ、イカダの内部6bに配される種カキ63は栄養分が届きにくい。一定大きさのエリア(例えば破線で囲ったエリア)毎に分割し、各エリアのほぼ中央に栄養補給体5を吊設することによりカルシウム等の栄養分をイカダ8に吊るしたカキ全体に充分いきわたらせることが可能となる。栄養補給体5は懸垂ロープ9の垂直方向に所定間隔L2を開けて複数配設し、栄養補給体5の溶解した栄養素が水平方向及び垂直方向に対してうまく分散するよう設定する。例えば栄養補給体5の垂直方向の配設間隔L2を、種カキ63が付着したホタテ貝殻62の間隔L1の2倍に設定し、種カキ63が成長しても栄養補給体5が邪魔にならぬよう、栄養補給体5が種カキ付きホタテ貝殻62の間に配されるようにする(図5)。栄養補給体5は、種カキが付着したホタテ貝殻付き懸垂ロープ6をイカダ8に取り付ける時に一緒に吊り下げてもよいが、カキがカルシウム分を必要とする8〜10月の成長時期に合わせて設置すればより一層の効果が期待できる。
【0018】
次に、栄養補給体5をイカダ8に吊るして養殖カキの成育状況を調べたので、これについて説明する。湾内奥のイカダ8を選び、図1の円形が約15cmφで、高さが7cmのそろばん玉形状した栄養補給体5を、図2のTの位置に吊り下げた。10月にセットして翌年の6月に引き上げてみると、殆どのカキの成育が未だ3〜4cmであったのに対し、栄養補給体5が在る周りのカキだけは卵をもち、15cm程の大きさにまで成長していた。また、図6(ホ)のごとく網状体Nに直径2cm程度の塊状体51にした栄養補給体5を5〜8個収納したものを、湾奥部のイカダの各所に試験的に約2m間隔で吊してみたところ、約半年後、そのカキの品質及び大きさで、外洋縁のイカダで成育したカキと比較しても遜色のない良好なものが得られた。なお、栄養補給体5の貝殻の粉末1には前記「しおさい」を、バインダー2には前記「60%水マグ」を用いた。
【0019】
(3)効果
このように構成した栄養補給体5及びその製造方法によれば、貝殻を一旦粉末にしているので、貝殻そのものよりも海水中にカルシウム分が溶解し易い。貝殻粉末1とバインダー2とを混練固化して塊状体51に成形されるので、バインダー2の種類,使用量等を選択することにより海水中への溶解速度を調整できる。カルシウム分を数ヶ月間継続して海水中に溶解させることができる。カルシウムを必要とするカキ等の魚介類の養殖において、長年継続することによりカルシウム分が不足してカキ等が小粒になったり殻が薄く弱くなったりしている問題を解決できる。
栄養補給体5を単に海水中に沈めるだけで、養殖カキ等の魚介類がカルシウム分を必要とする数ヶ月の期間に亘って栄養補給体5を徐々に海水中へ溶解させ、養殖魚介類の順調な成育を促すことができる。一度海水中に吊るせば、追加栄養補給することも管理チェックすること等もいらず作業負担がない。簡便にして効率良く栄養補給できる。湾内でイカダの置かれる位置によって収穫量が著しく異なり、湾内奥のイカダは収穫量が落ちていたが、これを大幅に改善できる。内湾で行われるイカダ式養成法では、カキの養殖イカダの設置場所をくじ引きで決めるのが一般的である。湾の外洋部のイカダに吊るされたカキは大きく成育し、品質的に高いことが経験的に知られているからである。湾奥部に当たった養殖業者はその年の運の悪さを嘆いていたが、本発明品たる栄養補給体5を使用すればこうした問題を一気に解消できる。
【0020】
また、バインダー2の主成分をマグネシウム化合物とすれば、カキ等の身に必要な栄養素であるマグネシウム分も効果的に供給できる。特に、海水から得られる水酸化マグネシウム2a等のマグネシウム化合物(海水法により生成されたマグネシウム化合物)を採用すれば、マグネシウム以外の成分はもともと海水に含まれていていたものであり環境破壊につながらない。マグネシウム等を充分含み、ミネラルバランスに富み栄養価の高いむき身が得られる。マグネシウムは古代ギリシャのマグネシアで採れる白い鉱物が種々の病気を治す効果があり、その有効成分がこの金属であることが判って名付けられたとされる。そして、マグネシウムは生体機能に深く関係する一方で、食生活が近代化するなかで摂取量が減少する栄養素であることが判ってきている。こうした点から、本発明は極めて有益なものとなっている。
【0021】
さらに、塊状体51からなる栄養補給体5に貫通孔52を設ければ取り付けが容易になる。ロープ9を貫通孔52に通し、ロープ9にクギ7を差込むことによって適宜間隔をおいて必要な数の栄養補給体5を簡単に取着できる。カキ養殖で使用済みのロープ91を用いれば廃物利用が図れる。カキ本体の懸垂ロープ6は収穫時にカキ殻で傷つけられる場合があり、再利用は難しかった。塊状体51は収穫時のカキ重量に比べれば軽く、カキ殻で傷つけられたロープ91であっても充分耐える。
加えて、栄養補給体5の貫通孔52にロープ9を通して、イカダ8に栄養補給体5を図3のごとく吊設すれば、成長するカキに近い位置から栄養分を効率良く供給できる。カキ殻を粉末状態で海水中に蒔いても、かき殻粉末が分散消失して必要なカキに到達せず効果が弱まる。これに対し、本発明によればカキに近い位置に本栄養補給体5を配することにより本栄養補給体5のカルシウム分を効果的に供給し、且つ無駄なく使用できる。栄養補給体5が当初大きく、且つ栄養補給体5とカキが付着するホタテ貝殻62との距離が接近していてカキの成長を邪魔するように見えても、カキの成長にしたがって栄養補給体5は小さく消失する方向にあるので何ら支障はない。理にかない合理的な成育ができる。
【0022】
尚、本発明においては、前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更した実施形態とすることができる。貝殻粉末1の貝殻,バインダー2,栄養補給体5の形状,大きさ,材料等は用途に合わせて適宜選択できる。実施形態ではカキ養殖について述べたが、カルシウムが必要な他の貝類やクルマエビ等の甲殻類等の魚介類の養殖に適用できる。
【0023】
【発明の効果】
以上ごとく、本発明の養殖魚介類への栄養補給体及びその製造方法は、魚介類の養殖で不足しがちなカルシウム分さらにマグネシウム分を簡便にして効率よく補給し、魚介類を順調に成長させることができ、また海を汚染することもないなど魚介類の養殖に優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る養殖魚介類への栄養補給体の一製造方法の説明図である。
【図2】種カキが付着したホタテ貝殻付き懸垂ロープと栄養補給体付きロープとがイカダに吊設された様子を示す概略平面図である。
【図3】図2の斜視図である。
【図4】ロープに取着される栄養補給体の縦断面図である。
【図5】イカダに吊設される種カキが付着したホタテ貝殻付き懸垂ロープと栄養補給体付きロープとの位置関係を示す説明図である。
【図6】他態様の栄養補給体の斜視図である。
【符号の説明】
1 貝殻の粉末(貝殻粉末)
2 バインダー
3 水
41 ペースト状体
42 中間品
5 栄養補給体
51 塊状体
52 貫通孔
Claims (4)
- 貝殻の粉末( 1 )と、主成分を水酸化マグネシウムとし、その接着力によって前記貝殻の粉末 ( 1 ) を塊状に固めるバインダー( 2 )と、が混練固化して塊状体に成形され、且つ該バインダーは該塊状体を海水中に置くことにより時間をかけて貝殻の粉末 ( 1 ) 及びバインダー ( 2 ) が徐々に海水中に溶解し該塊状体の形状を小さくするか消失させる結合剤になっていることを特徴とする養殖魚介類への栄養補給体。
- 前記貝殻の粉末 ( 1 ) が100重量部に対し、前記バインダー ( 2 ) が5〜50重量部の範囲にある請求項1記載の養殖魚介類への栄養補給体。
- 前記バインダーの主成分を海水法により生成されてなる水酸化マグネシウムとする共に前記塊状体に貫通孔を縦通させてなる請求項1又は2に記載の養殖魚介類への栄養補給体。
- 貝殻の粉末100重量部に対し、主成分を水酸化マグネシウムとし、その接着力によって前記貝殻の粉末を塊状に固めるバインダー5〜50重量部を配合すると共に水30〜60重量部を加えて混練しペースト状体とし、次いで、そのペースト状体を用いて所定大きさの中間品を成形し、その後、該中間品を乾燥し固化させて塊状体の栄養補給体とし、該栄養補給体を海水中に置くことにより数ヶ月の時間をかけて貝殻の粉末及びバインダーが徐々に海水中に溶解しその形状を小さくするか消失するようにしたことを特徴とする養殖魚介類への栄養補給体の製造方法。
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JP5497952B1 (ja) * | 2013-08-09 | 2014-05-21 | 河村 良成 | 魚介類への栄養補給剤の作製法 |
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