JP3999533B2 - レンズキャップの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光半導体装置に使用するレンズキャップの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザダイオード等の光半導体素子を搭載する光半導体装置には、図3に示すように、ステム10に光半導体素子12を搭載し、レンズキャップ20をステム10に封着して、光半導体素子12を封止した製品がある。14は光半導体素子12を接合する放熱体、16a、16bはアウターリード、18はアースリードである。
この光半導体装置に使用しているレンズキャップ20は、キャップ本体22の頂部の中央にレンズ装着孔24を設け、レンズ装着孔24にガラスレンズ26を気密に溶着したものである。
【0003】
図2に、キャップ本体22にガラスレンズ26を溶着して形成するレンズキャップの従来の製造工程を示す。
S10は、キャップ本体22と球状に形成したガラス材とを組立治具に配置する工程である。図4(a)にカーボン治具30に、球状に形成したガラス材32とキャップ本体22を配置した状態を示す。カーボン治具30の底面にはガラス材32を溶融してガラスレンズ26の曲面形状に成形するための成形凹部30aが形成されている。
第1溶着(S11)は、カーボン治具30内でガラス材32を溶融し、キャップ本体22にガラスレンズ26を溶着する工程である。図4(b)が、ガラスレンズ26をキャップ本体22に溶着した状態を示す。
【0004】
第2溶着(S13)は第1溶着によってキャップ本体22に溶着されたガラスレンズ26の曲面形状を規定値に補正するための処理である。第1溶着および第2溶着ともガラス材を溶融する温度まで加熱して行われる。S12は第2溶着を行う前に、エアガンによりガラス表面を清浄にする工程である。
次いで、化学研磨処理(S14)により、キャップ本体22の表面に形成されている酸化被膜を除去する。この酸化被膜はキャップ本体22にガラスレンズ26を溶着するために設けられている。
【0005】
第3溶着(S16)は、化学研磨処理(S14)を行った際にガラスレンズ26の表面が化学的に荒らされることがあるため、加熱温度を第1溶着、第2溶着時よりもやや低く設定してガラスレンズ26の表面のみを溶融し、ガラスレンズ26の表面に生じている曇りなどを除去するための処理である。第3溶着(S16)を行う前にもエアガンによってワークをエア吹き(S15)する。
S17は、最後にキャップ本体22の表面にめっきを施す工程である。キャップ本体22に施すめっきとしては、たとえば、無電解ニッケルめっき、電解ニッケルめっき等が行われる。S18は製品をキャリアに収納する工程である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来のレンズキャップの製造方法においては、図2に示すように第1、第2、第3溶着を経てレンズキャップが製造される。しかしながら、従来のレンズキャップの製造方法においては、キャップ本体22に施すめっき(S17)を、ガラスレンズの表面の曇り等を除くための第3溶着の後に行っているため、めっき処理の際に使用するアルカリ系の薬品等によってガラスレンズ26の表面が侵されて曇りが生じたり、バレルめっきによってめっきすることから、ワークが互いに擦れ合ってガラスレンズ26の表面に傷が生じたりするという問題があった。
【0007】
このため、従来はレンズキャップを製造した後、製品検査を行って不良品を取り除いているが、近年は、レンズキャップの光学的特性の評価基準が厳しくなってきているため、ガラスレンズ26の表面に生じた曇りや傷によって製品不良となりやすく、製品の歩留まりが非常に悪くなっている。
そこで、本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、ガラスレンズの表面に傷や曇り等がなく、光学的特性にすぐれた品質のよいレンズキャップを歩留まりよく生産することができ、かつレンズキャップを効率的に生産することができるレンズキャップの製造方法を提供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため次の構成を備える。
すなわち、キャップ本体に設けたレンズ装着孔にガラスレンズを気密に溶着して形成するレンズキャップの製造方法において、前記キャップ本体とガラス材とを治具内に配置して、前記ガラス材を加熱して溶融することにより所定の曲面形状にガラス材を成形するとともに、前記レンズ装着孔に気密にガラス材を溶着してキャップ本体にガラスレンズを設け、ガラス材の溶着用としてキャップ本体の表面にあらかじめ設けられていた酸化被膜を化学研磨により除去し、次に、キャップ本体にめっきを施した後、非酸化性雰囲気中において、ガラスレンズの表面の傷、曇りを除去する加熱処理を施して製品とすることを特徴とする。
また、前記レンズ装着孔に気密にガラス材を溶着する際に、レンズ装着孔にガラス材を溶着する第1溶着を行った後、レンズ装着孔に溶着されたガラス材を所定の曲面形状に修整する第2溶着を行うことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について添付図面にしたがって詳細に説明する。
図1は本発明に係るレンズキャップの製造方法を示す工程図である。以下、この製造工程にしたがってレンズキャップの製造方法について説明する。
まず、S1はキャップ本体とガラス材とを治具に配置する工程である。キャップ本体とガラス材とを治具に配置する方法は、前述した図4に示す方法と同様である。図4ではキャップ状に形成したキャップ本体22を使用しているが、キャップ本体22の形状、寸法、材質等はとくに限定されるものではない。ガラス材32は図4(a)に示すように球状に形成したものを使用している。
【0010】
なお、キャップ本体22の内面および外表面にはあらかじめ酸化被膜が形成されている。酸化被膜は、キャップ本体22を酸化雰囲気中で加熱することによって形成することができる。酸化被膜はキャップ本体22の内面と外表面の全体に形成される。酸化被膜はキャップ本体22に気密にガラス材32を溶着しやすくするために設けるものである。
【0011】
治具内にキャップ本体22とガラス材32を配置した後、第一溶着(S2)により、ガラス材32が溶融する温度まで加熱し、キャップ本体22にガラス材32を溶着する。図4に示すように、ガラス材32が成形凹部30aの内面形状にならって所定の曲面形状に成形される。実施形態の加熱温度は、ガラス材32が溶融するように850℃に加熱した。
第2溶着(S4)はガラスレンズ26を所定の曲面形状に補正する工程である。本実施形態ではこの第2溶着においても、ガラス材32が溶融する850℃に加熱した。
【0012】
本実施形態で第1溶着と第2溶着にわけてガラスレンズ26を成形しているのは、ガラスレンズ26を所定形状に精度よく形成するためである。したがって、第1溶着のみでガラスレンズ26が精度よく成形できれば、第1溶着のみでガラスレンズの成形を終了しても良いし、第2溶着でも所定精度の成形ができない場合には、さらに成形操作を行ってもよい。このように、ガラスレンズ26を所定の曲面形状に形成する操作は2回の処理操作に限定されるものではない。なお、第2溶着(S4)を行う前にエアガンによってワークをエア吹きし(S3)、ガラスレンズ26の表面を清浄にする。
【0013】
次に、化学研磨(S5)によりキャップ本体22の内面および外表面に形成されている酸化被膜を除去する。ワークを化学研磨用の処理液に浸漬して酸化被膜を除去する。
化学研磨処理を行った後、本実施形態では第3溶着処理を行う前に、キャップ本体にめっき(S6)を施す。すでに、化学研磨を施して酸化被膜を除去しているから、キャップ本体には問題なくめっきを施すことができる。
なお、キャップ本体に施すめっきには、無電解ニッケルめっき、電解ニッケルめっき等の適宜めっきを選択することができる。キャップ本体にめっきを施す際は、従来と同様にバレルめっきによればよい。
【0014】
従来のレンズキャップの製造方法においては、キャップ本体にめっきを施した後に第3溶着を行ったのに対して、本実施形態のレンズキャップの製造方法では、キャップ本体にめっきを施した後に、第3溶着(S7)を行うことが特徴的である。
第3溶着は、キャップ本体に溶着されているガラスレンズの表面を溶融して、ガラスレンズの表面に生じている傷や曇りを除去するための加熱処理である。第3溶着を行う場合は、図4(b)に示すように、キャップ本体22を下向きにして治具内に配置し、ガラスレンズ26の表面を加熱する。本実施形態では、第3溶着の加熱温度を750℃程度とした。このように、第3溶着処理ではワークがかなり高温に加熱されるから、キャップ本体に設けためっきが劣化したり、治具によってワークが汚れたりしないようにしなければならない。
【0015】
このため、本実施形態では、第3溶着(S7)を行う際には、めっきが劣化しないよう、窒素ガス雰囲気等の非酸化性雰囲気中でワークを加熱すること、ワークを支持する治具として、金属系の材料によって形成した汚れが付着しにくい治具を使用する。
第3溶着処理は従来の製造方法と同様に、ガラスレンズの表面を溶融する処理であり、非酸化性雰囲気下で処理すること、清浄な治具を使用するといった他は従来と同様な操作によって第3溶着処理を行うことができる。
そして、めっき(S6)を行った後に、第3溶着処理する方法による場合は、化学研磨およびめっき処理の際にガラスレンズ26の表面が化学的に荒れてしまったり、曇ったり、ワークが相互に擦れ合ってガラスレンズ26の表面に傷がついてしまったりした場合でも、ガラスレンズ26の表面が溶融されることによって曇りや傷を修整することが可能となる。
【0016】
本実施形態において、めっき(S6)の後に第3溶着(S7)を行っているのは、化学研磨(S5)やめっき(S6)によってガラスレンズ26が受ける損傷を第3溶着処理によって取り除くことができ、ガラスレンズ26の光学的特性を十分に確保することができるからである。
実際、上記のようにめっき(S6)を施した後に第3溶着(S7)を行うことによって、化学研磨やめっきによってガラスレンズに生じた損傷をほぼ100%解消することができる。これにより、レンズキャップの歩留まりを従来にくらべて大きく向上させることができる。
【0017】
また、めっき(S6)の処理の際に、従来はガラスレンズ26の表面が化学的な処理によって損傷を受けてしまうことから、前処理で使用する薬品などが制約され、十分な前処理ができない場合があるが、本実施形態のようにめっき後に第3溶着を行う方法によれば、めっきの際の前処理を十分に行うことができ、キャップ本体とめっき被膜との密着性を向上させることができて、めっきの品質を向上させることが可能になる。めっき被膜の品質を向上させることで、第3溶着の際にめっき被膜が劣化されにくくなるという利点もある。
【0018】
また、本実施形態の方法によれば、化学研磨(S5)とめっき(S6)という化学的な処理については、引き続いた工程として行えるから、従来にくらべて化学研磨とめっきを効率的に行うことができる。また、第3溶着の処理が最終工程となるから、第3溶着の際にワークを支持していた治具から、そのまま収納用のキャリアへ製品を移載することが可能となり、製品の収納操作も容易になる。このように、本実施形態のレンズキャップの製造方法によれば、レンズキャップを製造する全体の工程が効率化され、生産効率を向上させることが可能となる。
【0019】
【発明の効果】
本発明に係るレンズキャップの製造方法によれば、上述したように、めっき工程の後にガラスレンズの表面の傷や曇りを除去する加熱処理を行うことによって、ガラスレンズの表面に生じる傷や曇りを解消して、光学的特性のすぐれた良好な品質のレンズキャップを製造することができる。また、生産工程を効率化することができレンズキャップの生産性を向上させることができる等の著効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るレンズキャップの製造工程を示す説明図である。
【図2】従来のレンズキャップの製造工程を示す説明図である。
【図3】レンズキャップの構成を示す説明図である。
【図4】キャップ本体にガラスレンズを溶着する方法を示す説明図である。
【符号の説明】
10 ステム
12 光半導体素子
20 レンズキャップ
22 キャップ本体
24 レンズ装着孔
26 ガラスレンズ
30 カーボン治具
30a 成形凹部
32 ガラス材
Claims (2)
- キャップ本体に設けたレンズ装着孔にガラスレンズを気密に溶着して形成するレンズキャップの製造方法において、
前記キャップ本体とガラス材とを治具内に配置して、前記ガラス材を加熱して溶融することにより所定の曲面形状にガラス材を成形するとともに、前記レンズ装着孔に気密にガラス材を溶着してキャップ本体にガラスレンズを設け、
ガラス材の溶着用としてキャップ本体の表面にあらかじめ設けられていた酸化被膜を化学研磨により除去し、
次に、キャップ本体にめっきを施した後、
非酸化性雰囲気中において、ガラスレンズの表面の傷、曇りを除去する加熱処理を施して製品とすることを特徴とするレンズキャップの製造方法。 - レンズ装着孔に気密にガラス材を溶着する際に、レンズ装着孔にガラス材を溶着する第1溶着を行った後、
レンズ装着孔に溶着されたガラス材を所定の曲面形状に修整する第2溶着を行うことを特徴とする請求項1記載のレンズキャップの製造方法。
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