JP3999249B2 - 睡眠誘導剤、ストレス性不眠症改善剤 - Google Patents
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近年、かつてないほど,睡眠に対する関心が高くなっている。その大きな理由は2つある。一つは,脳科学の進歩によって,睡眠の重要性がしだいに認識されてきたことである。もう一つは,現代社会が睡眠を慢性的に犠牲にする活動様式になり,さまざまな悪影響を生じたことである。
不眠症は人の健康を維持するために必要な睡眠時間が量的にあるいは質的に不足し、そのために社会生活に支障をきたし、自覚的にも悩んでいる状態である。不眠症状がどのくらい続いているかによって、数日の場合には「一過性不眠」、1〜3週間の場合には「短期不眠」、1ヶ月以上続く場合には「長期不眠」と呼ぶ。不眠の原因はさまざまであるが、多くの場合、何等かのストレスと関わること、そしてこのストレスは長引くほど、不眠の症状が重くなる傾向がある。不眠に対しては睡眠薬、精神安定剤、ストレス緩和剤などの投与が一般的な治療法として用いられている。
しかしながら、不眠症改善効果は対象者の心神的な状態や周囲の環境に大きく左右されることと共に、使用した薬剤の作用点の特徴のほか、副作用や薬物依存性などの理由で制限されることも多い。従って、これら睡眠薬、精神安定剤、ストレス緩和剤の欠点を改善するために新たな医薬品及び機能性食品などの開発が必要とされる。
(2)セリンユニット(Serine Unit)を有する化合物であるセリン、ホスホセリン、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルセリン、アセチルセリン、又はシステインのそれぞれはL−型であり、これらの化合物から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とするストレス性不眠症改善剤。
(3)セリンが、蛋白質加水分解法、化学合成法、酵素法、発酵法、又は天然原料から抽出・精製のいずれかの方法によって製造されたものであることを特徴とする(1)又は(2)記載の睡眠誘導剤又はストレス性不眠症改善剤。
(4)ホスファチジルセリンが、天然原料から抽出されたもの、或いは酵素による塩基転換反応によって製造されたものであることを特徴とする(1)又は(2)記載の睡眠誘導剤又はストレス性不眠症改善剤。
(5)リゾホスファチジルセリンが、天然原料から抽出されたもの、或いは酵素による塩基転換反応又はホスファチジルセリンの脂肪酸解離によって製造されたものであることを特徴とする(1)又は(2)記載の睡眠誘導剤又はストレス性不眠症改善剤。
(6)ホスホセリン、システイン、アセチルセリンが、蛋白質加水分解法、化学合成法、酵素法、発酵法、又は天然原料から抽出・精製のいずれかの方法によって製造されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の睡眠誘導剤又はストレス性不眠症改善剤。
(7)セリンユニットを有する化合物であるセリン、ホスホセリン、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルセリン、アセチルセリン、又はシステインから選択される1種又は2種以上の含有量が、5質量%以上であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の睡眠誘導剤又はストレス性不眠症改善剤。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載された睡眠誘導剤又はストレス性不眠症改善剤を含有することを特徴とする睡眠誘導用又はストレス性不眠症改善用医薬品。
2.本発明により副作用を起こさず安全な睡眠誘導剤、ストレス性不眠改善剤を提供することができる。
3.L−型構造を有するセリンユニットを有する化合物であるセリン、ホスホセリン、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルセリン、アセチルセリン、又はシステインを用いた睡眠誘導剤、ストレス性不眠改善剤を提供する。
セリンユニット(Serine Unit)を有する化合物としては、特に次の一般式1に示されるセリンユニットを有する化合物である。
セリン[Serine(Ser)]、ホスホセリン[Phospho-Serine(Phos-S)]、ホスファチジルセリン[Phosphatidyl-Serine(PS)]、リゾホスファチジルセリン[Lyso-Phosphatidyl-Serine(Lyso-PS)]、アセチルセリン[Acetyl-Serine(Ace-S)]を挙げることができる。また、このセリンユニット(Serine Unit)に接続するR基が、リン酸基である場合は、より強い活性が得られる。
本発明に関わるリゾホスファチジルセリンは、天然物である、大豆、綿実などの植物種子や卵黄、魚介類、鳥獣肉類などから抽出により製造することができる。又は、これらから製造されたリゾレシチンを用いてホスファチジル基転移反応を行うことにより、リゾホスファチジルセリン高含有リン脂質原料が製造できる。リゾホスファチジルセリンはホスファチジルセリンの脂肪酸部分が解離されたものであるから、ホスファチジルセリンから酵素や化学的処理により生成・抽出・精製して製造することもできる。本発明に関わるリゾホスファチジルセリンは特に製造方法を限定するものではない。
図6はL−セリン(L-Serine)、図7はO−ホスホ−L−セリン(O-Phospho-L-Serine)、図8はL−α−ホスファチジルセリン(L-α-Phosphatidyl-Serine)、図9はL−α−リゾホスファチジルセリン(L-α-Lyso-Phosphatidyl-Serine)、図10はO−アセチル−L−セリン(O-Acetyl-L-Serine)、図11はL−システイン(L-Cysteine)、図12はL−α−ホスファチジルコリン(L-α-Phosphatidyl-Choline)、図13はL−α−ホスファチジルエタノールアミン(L-α-Phosphatidyl-Ethanolamin)を示す。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
試験条件1は、実施例1〜4に適用する。各実施例は、時期と化合物を変えて実験を行った。
試験動物:卵用種雄ニワトリヒナ(Julia、5又は6日齢)を試験に使用した。試料を投与する前に、試験動物は体重に応じて群分けを行い、6〜10羽を一組にした。
飼育条件:30±1℃の条件下で、市販飼料(豊橋飼料社製、AX)と水を自由摂食させた。
試験試料:次の試薬はそれぞれ0.1%のエバンスブルーを含む0.85%の生理食塩水に溶かし(必要時にさらに5%のDMSOにより助溶する)、調製した。
(1)L−セリン(和光純薬工業社製、99%)
(2)D−セリン(和光純薬工業社製、99%)
(3)O−ホスホ−L−セリン(SIGMA社製、98%)
(4)O−アセチル−L−セリン(和光純薬工業社製、99%)
(5)L−システイン(和光純薬工業社製、99%)
(6)グリシン(和光純薬工業社製、99%)
(7)L−α−リゾホスファチジルセリン(MP Biomedicals社製、98%、牛脳由来)
行動観察:投与から10分後、各ニワトリヒナを群飼育ケージから行動観察用分離飼育ケージに移した。脳室投与の直後に単離ストレス状況下で10分間の行動を3つの角度からビデオカメラで記録した。
パターン1:自発運動―鳴いたり、動いたりにして不安の指標とする
パターン2:中間状態―立ちままで、鳴く場合もあるが、特に指標としない
パターン3:睡眠行動―立ち状態で目を閉じたり、坐って頭を下げたりにして睡眠行為の指標とする
試験条件2は、実施例5に適用する。
試験動物:卵用種雄ニワトリヒナ(Julia、4又は5日齢)を試験に使用した。試料を投与する前に、試験動物は体重を応じて群分けを行い、6〜10羽を一組にした。
飼育条件:29±1℃の条件下で、市販飼料(豊橋飼料社製、AX)と水を自由摂食させた。
試験試料:次の試薬はそれぞれ0.1%のエバンスブルーを含むTris−HCl Buffer中に懸濁させ、調製した。
(1)L−α−ホスファチジルセリン(SIGMA、98%、牛脳由来)
(2)L−α−ホスファチジルコリン(SIGMA、99%、大豆由来)
(3)L−α−ホスファチジルエタノールアミン(SIGMA、98%、牛脳由来)
行動観察:試験条件1と同じ
結果解析:試験条件1と同じ
(1)Control 群(10匹)、
(2)L−セリン[L-Serine(L-Ser)] 0.21μmol投与群(8匹)
(3)L−セリン[L-Serine(L-Ser)] 0.42μmol投与群(7匹)
(4)L−セリン[L-Serine(L-Ser)] 0.84μmol投与群(7匹)
表1、図1に示したように、L-セリン0.84μmol投与群において、コントロール群に比べて明らかな睡眠誘導効果、ストレス性不眠症改善効果を示した。
(1)Control 群(7匹)
(2)L−セリン[L-Serine(L-Ser)] 0.82μmol投与群(7匹)
(3)D−セリン[L-Serine(D-Ser)] 0.82μmol投与群(7匹)
さらに、L−セリンの構造ユニット(Serine Unit)を持つ他の化合物の睡眠誘導効果、ストレス性不眠症改善効果を確認するために、次の実施例を行った。
(1)Control 群(7匹)、
(2)L−セリン[L-Serine(L-Ser)] 0.84μmol投与群(7匹)
(3)O−ホスホ−L−セリン[O-Phospho-L-Serine(Phos-S)] 0.84μmol
投与群(6匹)
(4)O−アセチル−L−セリン[O-Acetyl-L-Serine(Ace-S)] 0.82μmol
投与群(7匹)
(5)L−システイン[L-Cysteine(Cys)] 0.82μmol投与群(6匹)
(1)Control 群(7匹)
(2)L−セリン[L-Serine(Ser)] 0.84μmol投与群(7匹)
(3)グリシン[Glycine(Gly)] 0.84μmol投与群(7匹)
(4)L−α−リゾホスファチジルセリン[L-α-lysophosphatidylserine(Lyso-PS)] 0.82μmol投与群(6匹)
(1)Control 群(10匹)
(2)L−α−ホスファチジルセリン[L-α-Phosphatidyl-Serine(PS)] 0.21μmol投与群(9匹)
(3)L−α−ホスファチジルエタノールアミン[L-α-Phosphatidyl-Ethanolamin(PE)] 0.21μmol投与群(7匹)
(4)L−α−ホスファチジルコリン[L-α-Phosphatidyl-Choline(PC)]0.21μmol投与群(5匹)
PS、Lyso-PS、PEとPCは脂質部分に共通な構造を持つリン脂質であり、PSとLyso-PSに睡眠誘導効果、ストレス性不眠症改善効果を示し、一方、PEとPCにこの様な効果を示していないことは、セリンユニット(Serine Unit)が睡眠誘導効果、ストレス性不眠症改善効果を有することを裏づけた。
睡眠誘導効果又はストレス性不眠症改善効果を持つセリンとホスファチジルセリンを含有することを特徴とする健康食品用ソフトカプセル剤の製造 セリン、ホスファチジルセリン25%含有液体大豆レシチン、ホスファチジン酸、システン、グリシン、ホスホセリン、ビタミンEオイル、ビタミンB1(チアミン硝酸塩)、ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、ミツロウとパーム油は表6に示した配合量となるように混合し、30分間撹拌した。80メッシュで篩過した後、真空撹拌機で脱泡処理を行った。ソフトカプセル充填機により内容量が250mgとなるように充填した。皮膜は通常用いられるゼラチン、グリセリン混合物を用いた。乾燥後、液漏れ検査、形状選別検査、目視検査を合格した粒について規格試験を行った結果、カプセル長径、カプセル短径、カプセル総重量、カプセル皮膜重量、カプセル内容物重量、皮膜水分含有量、崩壊時間、酸価、過酸化物価、一般生菌数、大腸菌群等の諸規格を満たす製剤であることが確認された。
睡眠誘導効果又はストレス性不眠症改善効果を持つセリンを含有することを特徴とする健康食品用飲料の製造。セリン、グリシン、クエン酸、マルチトール、エリスリトール、トレハロース、オレンジ果汁、ラカンカエキス、香料は表6に示した様な配合量で配合し、最後に水を50mlになるように加え、原料を水に混合・溶解させ、容器に充填を行い、85℃10分の殺菌を行った。殺菌後冷却し、本飲料を完成させた。
処方例1及び2を表6に示す。
試験方法注):
(1)試験サンプル:トレハロース(林原商事社製;プラセボ品とする)、グリシン(協和発酵工業社製;比較品とする)、L-セリン(協和発酵工業社製;被験品とする)
(2)デザイン:プラセボを対照とする二重盲検交差試験
(3)被験者数:45例
(4)試験期間:摂取期間は4日間連続で、ウオッシュアウトは原則として3日間以上とし、これを3回(各プラセボ、グリシン、セリン)繰り返す(表6 試験スケジュール 参照)
(5)摂取方法:就寝30分前にそれぞれ3gを水とともに摂取する
注)試験は次の非特許引用文献の方法に従い行った。
非特許引用文献:小栗 貢ら、精神医学、Vol.27(7)、791〜799、1985
(1)選択基準:(a)年齢20歳以上65歳未満の男女
(b)睡眠に不満を感じる者
(2)除外基準:(a)背景調査の結果、睡眠に問題がないと判断された者
(b)妊娠、妊娠していると思われる婦人、授乳中の婦人
(c)重度花粉症、胃腸疾患、肝疾患、腎疾患、心疾患を有する者
(d)睡眠に影響を及ぼす薬(風邪薬、抗アレルギー薬などを含む)、サプリメントを試験期間に中断できない者。
(1)背景調査:年齢、性別、生活習慣、既往歴、睡眠状態を観察期間に記載させる。
(2)生活調査:体調、身体活動の程度、被験品、コーヒーなどの摂取状態を摂取期間中毎日、就寝前に記載させる。
(3)睡眠調査:OSA(起床直後の主観的睡眠感)睡眠調査票(精神医学、27巻、7号 1985年7月791〜799ページ参照)、睡眠日記を用いて、睡眠時間、質、目覚めの爽快感などを摂取期間中に毎日、起床から30分以内に記載させる。
図15と16に示したように、睡眠維持因子と寝つき因子において、セリン摂取はプラセボ摂取及びグリシン摂取に比べて、顕著な睡眠改善効果を示した。さらに、ストレスを感じている試験対象をピックアップ(計27名)して統計した結果においても、セリン摂取はプラセボ摂取及びグリシン摂取に比べて、顕著な寝つき改善効果を示した(表7、図15〜17)。
Claims (8)
- セリンユニット(Serine Unit)を有する化合物であるセリン、ホスホセリン、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルセリン、アセチルセリン、又はシステインのそれぞれはL−型であり、これらの化合物から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする睡眠誘導剤。
- セリンユニット(Serine Unit)を有する化合物であるセリン、ホスホセリン、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルセリン、アセチルセリン、又はシステインのそれぞれはL−型であり、これらの化合物から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とするストレス性不眠症改善剤。
- セリンが、蛋白質加水分解法、化学合成法、酵素法、発酵法、又は天然原料から抽出・精製のいずれかの方法によって製造されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の睡眠誘導剤又はストレス性不眠症改善剤。
- ホスファチジルセリンが、天然原料から抽出されたもの、或いは酵素による塩基転換反応によって製造されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の睡眠誘導剤又はストレス性不眠症改善剤。
- リゾホスファチジルセリンが、天然原料から抽出されたもの、或いは酵素による塩基転換反応又はホスファチジルセリンの脂肪酸解離によって製造されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の睡眠誘導剤又はストレス性不眠症改善剤。
- ホスホセリン、システイン、アセチルセリンが、蛋白質加水分解法、化学合成法、酵素法、発酵法、又は天然原料から抽出・精製のいずれかの方法によって製造されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の睡眠誘導剤又はストレス性不眠症改善剤。
- セリンユニットを有する化合物であるセリン、ホスホセリン、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルセリン、アセチルセリン、又はシステインから選択される1種又は2種以上の含有量が、5質量%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の睡眠誘導剤又はストレス性不眠症改善剤。
- 請求項1〜7のいずれかに記載された睡眠誘導剤又はストレス性不眠症改善剤を含有することを特徴とする睡眠誘導用又はストレス性不眠症改善用医薬品。
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