JP3998672B2 - 共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維 - Google Patents

共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維 Download PDF

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Description

本発明は、共重合ポリトリメチレンテレフタレート(以下、ポリトリメチレンテレフタレートをPTTと略記する)、その製造方法、それを用いた繊維及び繊維製品に関する。詳しくは、カチオン染料可染性のPTT繊維の原料となる、高い分子量を有する共重合PTT及びその製造方法、それを用いた繊維及び繊維製品に関する。
更に詳しくは、高い固相重合速度で生産でき、溶融時の粘度の低下速度が小さい、カチオン染料可染性のPTT繊維の原料となる、色相に優れた高分子量の共重合PTT、及び、タフネスが高く、染色や熱セット時に大きく収縮せず、加工特性に優れたカチオン染料可染性のPTT繊維及び該繊維製品に関する。
テレフタル酸やテレフタル酸の低級アルコールエステルと1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコールともいう)の重縮合体から溶融紡糸によって得られるPTT繊維は、従来にない驚くべきほどのソフトな風合いやドレープ性、優れたストレッチ性、低温染色性、耐候性等、ポリエチレンテレフタレート繊維(以下、ポリエチレンテレフタレートをPETと略記する)やナイロン6繊維等の既存の合成繊維では得られない、多くの特徴を兼ね備えている。
本出願人は、PTT、PTT繊維、及び、その加工、商品等の開発に関連する数多くの困難を克服し、世界で初めてPTT繊維(登録商標「ソロ」繊維)を最近上市した。
PTT繊維は、他の素材繊維と複合することや後加工処理することで、その用途を一層拡大することができる。しかしながら、これまでのPTT繊維では、複合する相手の繊維や加工技術の種類によっては、染色に関わる問題が生じる場合があった。例えば、PTT繊維は実質的に分散染料でしか染色することができないので、PTT繊維をポリウレタン弾性糸と複合したり、またはPTT繊維の布帛をポリウレタン樹脂加工したりする場合は、分散染料が構造の粗なウレタン弾性糸や樹脂に移行し、洗濯堅牢性、汗堅牢性やドライクリーニング堅牢性等の染色堅牢性が低下するという問題があった。
これに対し、PTT繊維をカチオン染料に対して可染化すると、カチオン染料は、PTT中に導入された染着座席であるスルホン酸塩にイオン結合するので、上記のような染料が移行するという問題が起こらず、高い染色堅牢性が達成される。また、染色後の布帛の鮮明性が高くなるという特徴も発現する。
本発明者らは、染色に関わる上記の問題を解決しつつ、PTT繊維の優れた特徴をより一層生かす手段として、カチオン染料可染性を有するPTT繊維(以下、CD−PTT繊維と略記する)をすでに提案した(特許文献1)。この技術は、ジカルボン酸成分であるテレフタル酸又は/及びテレフタル酸ジメチルに代表されるテレフタル酸の低級アルコールエステルと、ジオール成分である1,3−プロパンジオールとをエステル化反応させ、次いで重縮合反応する際の任意の段階で、カチオン染料の染着座席となるエステル形成性スルホン酸金属塩を添加することにより、CD−PTT繊維の原料となり得るカチオン染料可染性を有するPTT(以下、CD−PTTと略記する)及びその繊維を提供するものである。この技術は、従来困難であったカチオン染料可染性を有するPTTを提供するという点において優れているものの、工業的生産性の点からはまだ不充分な点があった。また、前記技術により得られるCD−PTTは、白度においても優れてはいるものの、更に高レベルの白度や強度が要求される繊維用途においては必ずしも満足のいくものではなかった。
一方、CD−PTTではなく、PTTのホモポリマー(以下、ホモPTTという)について、特許文献2には、1,3−プロパンジオールとテレフタル酸成分とをエステル化反応させ、得られたエステル化反応物を重縮合して極限粘度が0.7〜0.8のプレポリマーを得た後、得られたプレポリマーを190〜210℃の温度で固相重縮合して極限粘度を0.9以上とすることにより、b値が10以下でオリゴマー含有量が1wt%以下のPTTを得る方法が開示されている。また、特許文献3には、チタン触媒とマグネシウム触媒を組み合わせて、固相重合速度、溶融安定性に優れたホモPTTの重合技術が開示されている。
しかしながら、前記いずれの公報にも、CD−PTTやエステル形成性スルホン酸金属塩を共重合する意義については記載も示唆もない。特に、後述のとおり、共重合成分としてエステル形成性スルホン酸金属塩を用いた場合には、ホモPTTよりも溶融安定性が悪くなるため、ホモPTTで用いられている技術をそのままCD−PTTに適用しても同様の効果は期待できないが、前記の公報にはその解決策についても何ら記載も示唆もない。また、いずれの公報に記載のホモPTTも白度の点から充分なものではなく、特に前記特許文献3では、重合時にマグネシウム触媒を併用しているので、ポリマーのL値(明るさ)が70未満であり、黒ずんだポリマーしか得ることができず、鮮明な発色が要求されるCD−PTT繊維への適用はできない。
公知のCD−PTT繊維についても、CD−PTTポリマーと同様に改善すべき点があった。すなわち、従来のCD−PTT繊維は、1)分子量の低いポリマーからできているのでタフネスが低く(タフネスとは繊維の強靱さを示すものであり、通常は繊維強度と伸度の1/2乗の積で表される。)、布帛にした時に破れやすいという問題、及び、2)分子量が低いにもかかわらず過度に延伸されているので、染色や熱セット等の加工時の熱で非晶部分の分子が配向緩和を起こして大きく収縮するので、ごわごわになりソフトな風合いを十分に発現させることが難しいという問題があった。
国際公開第99/09238号パンフレット 特開平08−311177号公報 特開2000−159876号公報
本発明者らは、CD−PTTの重合技術や紡糸技術に関する研究を精力的に進める段階で、以下のような問題を見いだした。
CD−PTTの溶融重合においては、共重合されたスルホン酸金属塩同士が溶融状態で互いにイオン架橋するために、溶融粘度が著しく上昇する。そのために、重縮合反応段階で1,3−プロパンジオールの留去が阻害されて、重合度が上がりにくくなるという問題がある。更にCD−PTTは、類似構造を有するPETやポリブチレンテレフタレート、ホモPTTに比べて、溶融時の熱安定性が低く、重縮合時間を長くしても分子量が上がらず、繊維化に必要な分子量に高める前に熱分解による解重合が起こり、ポリマー自体も黄色く着色して、高分子量のCD−PTTを得ることができないという問題がある。
本発明者らは、CD−PTTの高分子量化の検討を進めた結果、低分子量のCD−PTT(以下、プレポリマーと略記する)を一旦作成し、プレポリマーを固相重合することにより、溶融重合では到達できないほどの高分子量を有するCD−PTTを得ることに成功した。しかしながら、詳細に溶融重合特性、色相、固相重合特性を検討した結果、工業的にこの技術を実施するには以下のような課題があった。
すなわち、溶融重合でできるプレポリマーの末端カルボキシル基量等の特性がある特定の範囲から外れると、固相重合速度や得られた高分子量CD−PTTの溶融安定性や色相が大きく低下する。特に、末端カルボキシル基量は、エステル形成性スルホン酸塩の共重合比率、触媒、添加剤、重縮合反応条件等と深い関係がある。そのため、本発明の目的とする高分子量のCD−PTTを得るためには、これらの条件を精密に制御する必要があることを、本発明者らは新たに見出した。
一方、繊維化においては、分子量が低いCD−PTTを原料として用いた場合、溶融紡糸後、高い延伸倍率を適用することにより、引張強度は比較的高くできるものの、強度を高めるために分子を過度に引き伸ばしているために繊維の収縮率は高くなる。このような収縮率の高い繊維は、布帛化して染色等の後加工をすると、繊維が大きく収縮して布帛が硬くなり、PTTの低弾性率から予想されるソフトな風合いを十分発現することはできない。
このような現象は、PTTと類似構造を有するPET繊維ではあまり起こらない。この理由は、PETの分子構造は伸びきり構造を取りやすいのに対して、PTTは螺旋状の分子構造をしているためであり、PTT繊維では延伸で分子を無理に引き伸ばすことができたとしても、加熱すると非晶部分は大きく収縮して分子が安定な螺旋構造を取るので、結果として繊維が大きく収縮するからである。また、収縮率の大きさを考慮してソフトな風合いを出すこともできるが、布帛作成時に織り密度、編み密度を非常に低く設定しなくてはならず、その設計が非常に難しいのが現状であった。
本発明の第1の課題は、高い固相重合速度で生産でき、溶融時の粘度の低下速度が小さく、カチオン染料可染性のPTT繊維の原料として好適で、色相に優れた高分子量の共重合PTTとその製造方法を提供することである。
本発明の第2の課題は、タフネスが高く、染色や熱セット時に大きく収縮せず、加工特性に優れたカチオン染料可染性のPTT繊維とその製造方法を提供することである。
本発明者らは、CD−PTTの溶融重合特性、固相重合特性を詳細に検討した結果、カチオン染料の染着座席となるエステル形成性スルホン酸金属を用い、溶融重合の終了段階での末端カルボキシル基量を特定の範囲にすることにより、上記課題を解決できる可能性を見いだした。更に、良好なカチオン染料染色性、染色堅牢性を達成するために必要とされるポリマーの要件を見出し、本発明のCD−PTTに到達した。
更に、本発明者らは、均一に押し出すことのできる特定範囲の高重合度CD−PTTを、紡口表面温度や紡口周りの雰囲気温度を特定範囲とした紡口より押し出し、配向性、結晶性が低く延伸性の良好な未延伸糸を経て、該未延伸糸を特定範囲の倍率で延伸することにより、タフネスが高く、染色や熱セット時に大きく収縮せず、加工特性に優れた繊維が得られることを見出し、本発明のPTT繊維に到達した。
すなわち、本発明は下記の通りである。
1.下記の(1)〜(6)を満足することを特徴とする共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維。
(1)エステル形成性スルホン酸塩が全ジカルボン酸成分に対して0.5〜5モル%共重合されていること。
(2)0.1〜2.5wt%のビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテルが共重合されていること。
(3)極限粘度が0.65〜1.4dl/gであること。
(4)末端カルボキシル基量が5〜40ミリ当量/kg繊維であること。
(5)タフネスが16以上であること。
ここでタフネスは次式より計算した値である。
タフネス=[強度(cN/dtex)]×[伸度(%)]1/2
(6)U%が0〜3%であること。
2.下記の(7)及び(8)を満足することを特徴とする上記1.記載の共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維。
(7)動的損失正接のピーク温度が105〜140℃であること。
(8)沸水収縮率が0〜16%であること。
3.タフネスが17.5以上であることを特徴とする上記1.又は2.記載の共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維。
4.下記(a)〜(d)を満足する共重合体ポリトリメチレンテレフタレートを紡口表面温度を250〜295℃で、下記式で示される紡糸ドラフトが50〜1500になるように紡口より押出し、冷却固化させた後、100〜3000m/分の速度で破断伸度が200〜400%、結晶化ピーク温度が64〜80℃である未延伸糸を引取り、該未延伸糸をを45〜80℃の温度にて最高延伸倍率の60〜90%の延伸倍率で延伸し、100〜160℃の温度にて熱処理することを特徴とする上記1.〜3.のいずれかに記載の共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維の製造方法。
(a)エステル形成性スルホン酸塩が全ジカルボン酸成分に対して0.5〜5モル%共重合されていること。
(b)0.1〜2.5wt%のビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテルが共重合されていること。
(c)極限粘度が0.65〜1.5dl/gであること。
(d)末端カルボキシル基量が25ミリ当量/kg樹脂以下であること。
紡糸ドラフト=(V2)/(V1)
V1:紡口から押出される際のポリマーの線速度(m/分)
V2:第一ロール速度(m/分)(第一ロールを使用しない場合は、巻き取り速度)
5.共重合ポリトリメチレンテレフタレートを、紡口下に長さ50〜300mm、温度150〜350℃の加熱筒を備えた紡口から押出すことを特徴とする上記4.記載の共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維の製造方法。
6.未延伸糸を、一旦巻き取った後、延伸することを特徴とする上記4.又は5.に記載の共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維の製造方法。
7.引き取った未延伸糸を、一旦巻き取ることなく、続けて延伸することを特徴とする上記4.又は5.に記載の共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維の製造方法。
8.上記1.又は2.に記載の共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維を捲縮処理した後に切断して得られる共重合ポリトリメチレンテレフタレート短繊維であって、繊維長が3〜300mm、捲縮度が5%以上であることを特徴とする共重合ポリトリメチレンテレフタレートの短繊維。
9.上記1.又は2.に記載の共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維を一部又は全部に用いた繊維製品。
10.上記8.に記載の共重合ポリトリメチレンテレフタレートの短繊維を一部又は全部に用いた繊維製品。
タフネスが高く、染色や熱セット時に大きく収縮せず、加工特性に優れたカチオン染料可染性のPTT繊維とその製造方法が提供できた。
本発明の共重合PTTは、PTTにエステル形成性スルホン酸塩を0.5〜5モル%共重合したポリエステルである。ここで、PTTとは、テレフタル酸を酸成分とし、1,3−プロパンジオールをジオール成分としたポリエステルである。エステル形成性スルホン酸塩は、カチオン染料の染着座席となるもので、本発明の目的を達成するためには必須な共重合成分である。理由は不明であるが、エステル形成性スルホン酸塩を共重合することにより、ホモPTTよりも遙かに色相が優れるという驚くべき効果を奏する。
本発明で用いるエステル形成性スルホン酸塩としては、下記一般式で表されるようなスルホン酸塩基を含有する化合物が例示されるが、PTTに共重合することができ、スルホン酸塩部分を有していれば特に制限はない。例えば、金属塩ではなく、テトラアルキルホスホニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩のような有機塩であってもよい。良好な色相のPTTが得られるという点から、下記式のような金属塩が好ましい。
Figure 0003998672
式中、R1 、R2 は、−COOH、−COOR、−OCOR、−(CH2nOH、−(CH2n〔O(CH2mpOH、または、−CO〔O(CH2nmOH、であり、R1、R2は同一の基でも、相異なる基でもよい。Rは炭素数1〜10のアルキル基であり、n、m、pは1以上の整数である。Mは金属、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属である。Zは炭素数1〜30までの3価の有機基で、好ましくは3価の芳香族基である。
好ましいエステル形成性スルホン酸塩化合物の具体例としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸、2−ナトリウムスルホ−4−ヒドロキシ安息香酸等、またはこれらのメチルエステル、ジメチルエステル等のエステル誘導体が挙げられる。特にこれらのメチルエステル、ジメチルエステル等のエステル誘導体は、ポリマーの白度、重合速度が優れるという点で好ましく用いられる。
エステル形成性スルホン酸塩の共重合比率は、ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分の総モル数に対して0.5〜5モル%であることが必要である。エステル形成性スルホン酸塩化合物の共重合比率が0.5モル%未満になると、カチオン染料で染色したときの発色性が低くなる。また、エステル形成性スルホン酸塩化合物の割合が5モル%を超えると、ポリマーの耐熱性が悪化し、重合性、紡糸性が非常に悪化する他、繊維が黄変しやすくなる。カチオン染料に対する染色性を十分維持しながら、重合性、紡糸性を兼ね備えるという観点から、好ましくは1〜3モル%、特に好ましくは、1.2〜2.5モル%である。
更に、本発明のCD−PTTには、ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル(以下、BPEと略記する)がポリマー質量に対して0.1〜2.5wt%共重合されていることが必要である。BPEは下記の構造式で示される化学物質である。
HOCH2CH2CH2OCH2CH2CH2OH
BPEは、CD−PTTの原料である1,3−プロパンジオールが脱水2量化して生成する物質である。
ホモPTT製造の際、原料としてテレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸低級アルコールエステルを用いて重合すると、通常0.1wt%未満のBPEが副生してポリマーに共重合される。また、原料としてテレフタル酸を用いて重合すると、テレフタル酸のプロトンが1,3−プロパンジオールの2量化の触媒となるために、0.3wt%以上のBPEがポリマーに共重合される。これに対し、CD−PTT製造の際、エステル形成性スルホン酸塩もBPE生成の触媒となり、BPEの共重合比率は、どのようなテレフタル酸誘導体を原料に用いようともホモPTTの場合よりも高くなる。BPE量が多くなると、ポリマーの溶融安定性や重合反応性、耐光性に悪影響を及ぼすが、適度に存在すると染色時の染料吸尽率を高めたり、アルカリ減量加工しやすいという効果を奏する。従って、BPE量を精密に制御することがポリマー設計上重要となる。
BPEが0.1wt%未満では、融点は高くなり、溶融安定性は高くなるが、カチオン染料の吸尽率がやや低くなるという欠点が生じる。2.5wt%を超えると、融点が低くなり、熱安定性が低くなったり、耐光性が低下したりする。BPEの共重合比率は、用いる原料カルボン酸誘導体によって異なるが、テレフタル酸の低級アルコールエステルの場合は0.1〜0.4wt%、テレフタル酸を用いる場合は0.4〜2.5wt%が好ましく、繊維の熱安定性、耐光性と染料吸尽率の好ましいバランスから、好ましくは0.11〜2.2wt%、より好ましくは0.15〜1.8wt%である。
本発明のCD−PTTには、本発明の目的を阻害しない範囲で、エステル形成性スルホン酸塩以外の成分を共重合してもよい。このような共重合成分としては、例えば、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタメチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルグルタル酸、2−メチルアジピン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、分子量400〜100000のポリエチレングリコール、分子量400〜100000のポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。共重合比率としては、共重合成分により異なるが、通常はポリマー質量に対して10wt%以下である。
更に必要に応じて、本発明のCD−PTTに各種の添加剤、例えば、酸化チタン等の艶消し剤、熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤などを、共重合、または混合してもよい。特に、艶消し剤として酸化チタンを用いる場合は、ポリマー質量当たり0.01〜0.1wt%が好ましい。
本発明のCD−PTTは、極限粘度が0.65〜1.5dl/gであることが必要である。極限粘度が0.65dl/g未満の場合は、得られる繊維の強度が低い。また、極限粘度が1.5dl/gを越える場合は、溶融粘度が高すぎるために、ギアポンプでの計量がスムーズに行われなくなり、吐出不良等で紡糸性は低下する。好ましくは0.7〜1.5dl/g、特に好ましくは0.85〜1.25dl/gで、強度、紡糸性に優れたCD−PTTを得ることができる。
本発明のCD−PTTは、末端カルボキシル基量が25ミリ当量/kg樹脂以下であることが必要である。ここで、ミリ当量/kg樹脂とは、1kgのCD−PTT当たりの末端カルボキシル基量を示す。また、ミリ当量/kg繊維という単位は、1kgのCD−PTT繊維当たりの末端カルボキシル基量を示す。末端カルボキシル基量が25ミリ当量/kg樹脂を越えると、溶融安定性が不十分になったり、染色加工等の加熱水溶液処理中での強度の低下が起こりやすくなる。好ましくは、2〜25ミリ当量/kg樹脂であり、更に好ましくは2〜20ミリ当量/kg樹脂であり、最も好ましくは2〜15ミリ当量/kg樹脂である。
本発明のCD−PTTは、カチオン染料で染色したときに鮮やかな発色性を達成するという観点から、L値が70以上、更には80以上であることが好ましい。また、鮮やかな発色性を達成するという観点から、b*値が−5〜8、更には−2〜6であることが好ましく、最も好ましくは−1〜5である。
本発明のCD−PTTの融点は、溶融安定性の観点から、好ましくは223℃以上、更に好ましくは、225℃以上である。
本発明のCD−PTTの好ましい製造方法について、以下に説明する。
本発明のCD−PTTの製造方法は、テレフタル酸の低級アルコールエステルを用いる場合とテレフタル酸を用いる場合では、重合方法が若干異なるので分けて説明する。
まず最初に、実質的にテレフタル酸は用いずに、テレフタル酸の低級アルコールエステルを用いる場合について説明する。
本発明のCD−PTTは、主たるジカルボン酸成分であるテレフタル酸の低級アルコールエステルと、主たるジオール成分である1,3−プロパンジオールを反応させて、テレフタル酸の1,3−プロパンジオールエステル又は/及びそのオリゴマーを生成させ、その後、重縮合反応を完結させて、得られたポリマーを一旦固化させた後、固相状態で加熱して、少なくとも極限粘度を重縮合反応終了時点での極限粘度よりも0.1dl/g以上上げるという方法で、かつ、以下の(a)、(b)の条件を満たす重合方法で製造できる。
(a)反応開始から重縮合反応終了までの任意の段階で、全ジカルボン酸成分の0.5〜5モル%に相当する量のエステル形成性スルホン酸塩を添加すること。
(b)固相重合開始前の共重合PTTの末端カルボキシル基量が5〜40ミリ当量/kg樹脂であること。
本発明のCD−PTTの製造方法は、テレフタル酸の低級アルコールエステルと1,3−プロパンジオールを縮合させて、テレフタル酸の1,3−プロパンジオールエステル又は/及びそのオリゴマーを生成するエステル交換反応工程、得られた縮合物を加熱して1,3−プロパンジオールを留去しながらプレポリマーを得る重縮合反応工程、そしてプレポリマーを固相重合する工程からなる。
まず最初に、エステル交換反応工程から説明する。
重合原料であるテレフタル酸の低級アルコールエステルに対する1,3−プロパンジオールの仕込み比率は、モル比で0.8〜3であることが好ましい。仕込み比率が0.8未満では、エステル交換反応が進行しにくく、また、仕込み比率が3より大きくなると融点が低くなる他、得られたポリマーの白度が低下する傾向がある。好ましくは、1.4〜2.5であり、更に好ましくは、1.5〜2.3である。
触媒は、反応を円滑に進行させるために用いることが好ましく、例えば、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシドに代表されるチタンアルコキサイド、非晶性酸化チタン沈殿物、非晶性酸化チタン/シリカ共沈殿物、非晶性ジルコニア沈殿物等の金属酸化物、酢酸カルシウム、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸アンチモン等の金属カルボン酸塩等を、全カルボン酸成分モノマーに対して0.01〜0.2wt%用いることが、反応速度、ポリマーの白度、熱安定性を兼ね備えることから好ましい。これらの触媒のうち、エステル形成性スルホン酸塩と反応して不融の異物の生成量が少ないという点で、チタン化合物、酢酸カルシウム、酢酸コバルトが好ましい。反応温度としては200〜250℃程度で、副生するメタノール等のアルコールを留去しながら反応を行うことができる。反応時間は通常2〜10時間、好ましくは2〜4時間である。こうして得られた反応物は、テレフタル酸の1,3−プロパンジオールエステル又は/及びそのオリゴマーを含むものである。
エステル交換反応の後には、重縮合反応を行う。重縮合反応では、必要に応じて更に、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシドに代表されるチタンアルコキサイド、非晶性酸化チタン沈殿物、非晶性酸化チタン/シリカ共沈殿物、非晶性ジルコニア沈殿物等の金属酸化物を、全カルボン酸成分モノマーに対して0.01〜0.2wt%添加し、公知の方法に従って重縮合反応を行うことができる。
本発明が目的とする、固相重合速度が速く、溶融安定性や色相に優れたCD−PTTを得るためには、重縮合反応が終了した時点のプレポリマーの末端カルボキシル基量が5〜40ミリ当量/kg樹脂であることが必要である。40ミリ当量/kg樹脂を越えると、固相重合速度が著しく低下すると共に、溶融時の安定性が悪くなり、分子量低下が起こりやすく、得られたCD−PTTの色相も悪くなる。また、5ミリ当量/kg樹脂よりも少ないと、エステル結合できるカルボキシル基量が少なすぎて、固相重合速度が低下する。好ましくは5〜35ミリ当量/kg樹脂、更に好ましくは10〜32ミリ当量/kg樹脂である。
このようなプレポリマーの末端カルボキシル基量を達成する方法としては、例えば、重縮合反応の温度としては240〜270℃で、プレポリマーの末端カルボキシル基量を評価しながら、最適重合時間、通常は4時間以内、好ましくは1〜3時間の範囲の時間を設定することである。重縮合温度は、好ましくは250〜270℃であり、真空度としては、0.13〜133Paである。また、重縮合時の1,3−プロパンジオールの留去を効率的に行うためには、重合物の表面積を高くすることが大切である。そのためには、例えば、ヘリカル型撹拌機等を用いて効率的な撹拌を行うと共に、釜の容積に対する原料仕込みの比率を70%以下、好ましくは60%以下にすることがよい。更に、重縮合反応段階の溶融物の粘度が時間の経過と共に上昇するうちに重縮合反応を停止することが好ましい。時間を伸ばしても溶融粘度が上がらなかったり、むしろ下がったりする前に重縮合反応を終えることが大切である。なぜならば、時間を伸ばしても溶融粘度が上がらなかったり、むしろ下がったりする場合は、重合反応よりも熱分解反応が優位になり、熱分解によって生成する末端カルボキシル基量が増加するからである。
エステル形成性スルホン酸塩の添加は、エステル交換反応開始段階から重縮合反応終了後までの任意の段階で行うことができ、この場合、CD−PTTに実質的に共重合される。添加量は、前記と同様の理由から、全ジカルボン酸成分の0.5〜5モル%である。
エステル形成性スルホン酸塩の添加方法は、固体のまま添加しても、また適当な溶剤に溶解してから添加してもよく、特に好ましくは1,3−プロパンジオールに溶解させて添加することが、添加のしやすさ、計量の正確性の観点から好ましい、1,3−プロパンジオール等の溶剤に溶解させる場合は、できる限り溶剤量を減らすことが融点の低下を防ぐ観点から好ましい。また、溶解させる場合には加熱してもよい。溶解の段階で1,3−プロパンジオールと反応させてもよく、そのために、触媒として公知のエステル交換触媒であるリチウム、カルシウム、コバルト、マンガン、チタン、アンチモン、亜鉛、すず等のカルボン酸塩、チタンアルコキシド、非晶性金属酸化物塩を、エステル形成性スルホン酸塩に対して0.01〜200wt%添加してもよい。
例えば、エステル形成性スルホン酸塩として、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを用いた場合、1,3−プロパンジオール中で5−ナトリウムスルホイソフタル酸モノ(1,3−プロパンジオール)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ビス(1,3−プロパンジオール)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸モノメチルモノ(1,3−プロパンジオール)等に変化していてもよく、また、1,3−プロパンジオール中に含まれる微量水分によって5−ナトリウムスルホイソフタル酸やそのモノメチルエステルに加水分解されていてもよい。
本発明のCD−PTTの製造方法において、末端カルボキシル基量の低下、熱安定性、溶融安定性やポリマーの白度を高める方法としては、上記の好ましい触媒量、反応温度等を適用すると同時に、重合の任意の段階で熱安定剤や着色抑制剤を添加することが特に好ましい。
熱安定剤としては、5価または3価のリン化合物やヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。例えば、5価または3価のリン化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、リン酸、亜リン酸等が挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンゼン)イソフタル酸、トリエチルグリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレン−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
添加量としては、CD−PTTに対し0.01〜0.5wt%が好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.1wt%添加する。尚、この範囲であっても、触媒量との量比の関係で、熱安定剤が多くなると、重縮合反応や固相重合反応の速度を低下させる場合があるので、量比を適宜実験の上設定することが好ましい。このような量比の決定は、当業者であれば何ら困難なく行うことができる。
また、着色抑制剤としては、酢酸コバルト、蟻酸コバルト等のコバルト化合物、市販の蛍光増白剤等が挙げられ、CD−PTTに対し0.0001〜0.1wt%添加することもできる。これらの添加剤は、重合の任意の段階で添加することができる。
更に、触媒、熱安定剤とごく少量のエステル形成性スルホン酸金属塩が変性してできる不融性凝集物を減らすために、酢酸リチウム、炭酸リチウム、蟻酸リチウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、蟻酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属塩又は/及びアルカリ土類金属塩を重合の任意の段階で添加することが好ましく、その添加量としては、エステル形成性スルホン酸塩に対し1〜100モル%が好ましく、さらに好ましくは1〜20モル%である。特に好ましくはアルカリ金属塩の使用であり、その中でも特に好ましくはリチウム塩、水酸化塩の使用である。
不融性凝集物の量が多いと、紡口パック内の圧力上昇が大きくなって、糸切れが起こりやすくなったり、それを防ぐために紡口パックの交換頻度が多くなって、生産性が低下するといった問題が生じるが、上記の添加剤を用いることでこの問題を回避できる。このアルカリ金属塩の添加は、重合の任意の段階で添加することができるが、エステル交換反応が終了する時点で添加することが、効果を達成するうえで好ましく、エステル形成性スルホン酸金属塩と同時に添加することが特に好ましい。
以上説明したようにして得られたプレポリマーは、固相重合によって極限粘度を高めることが必要である。特に、固相重合することなしに極限粘度を0.65以上に高めることは困難である。これは、極限粘度を上げるために重縮合の反応温度を高くしたりすると、熱分解が起こり粘度が上がらなくなってしまう場合があるからである。固相重合を行うことにより、溶融安定性や色相を低下させることなく、極限粘度を0.65以上に高めることも容易にできる。固相重合は、チップ状、粉状、繊維状、板状、ブロック状等にしたプレポリマーを、窒素、アルゴン等の不活性ガスの存在下、あるいは1.33×104Pa以下、好ましくは1.33×103Pa以下の減圧下で、170〜220℃、3〜48時間程度行うことができる。
固相重合を行う利点としては、極限粘度を上げることができることの他、昇華性を有しているオリゴマーが固相重合中にポリマーから抜け出すので、ポリマー中の環状、線状オリゴマーの量を2wt%以下、好ましくは1wt%以下にすることができる。また、本発明の方法で得たプレポリマーを用いる限り、固相重合によってCD−PTTの色相が悪くなることはほとんどない。更に、溶融重合で得たプレポリマーに対して、末端カルボキシル基量を大きく低下させることができ、その結果、溶融安定性、白度に優れたCD−PTTを得ることができる。
次に、テレフタル酸を用いる場合の好ましい製造方法について説明する。
本発明のCD−PTTは、主たるジカルボン酸成分であるテレフタル酸と、主たるジオール成分である1,3−プロパンジオールを反応させて、テレフタル酸の1,3−プロパンジオールエステル又は/及びそのオリゴマーを生成させ、その後、重縮合反応を完結させ、得られたポリマーを一旦固化させた後、固相状態で加熱して、少なくとも極限粘度を重縮合反応終了時点での極限粘度よりも0.1dl/g以上上げること、及び、下記の(a)〜(c)の条件を満たすことを特徴とする共重合ポリトリメチレンテレフタレートの製造方法により製造できる。
(a)テレフタル酸に対する1,3−プロパンジオールのモル比が0.8〜2.5であること。
(b)テレフタル酸と1,3−プロパンジオールを主とするジオールの反応において、テレフタル酸の反応率が75〜100%の段階で、全ジカルボン酸成分の0.5〜5モル%に相当する量のエステル形成性スルホン酸塩を添加すること。
(c)固相重合開始前の共重合ポリトリメチレンテレフタレートの末端カルボキシル基量が5〜40ミリ当量/kg樹脂であること。
本発明のCD−PTTの製造方法は、テレフタル酸と1,3−プロパンジオールを縮合させて、テレフタル酸の1,3−プロパンジオールエステル又は/及びそのオリゴマーを生成させるエステル化反応、得られた縮合物を加熱して1,3−プロパンジオールを留去しながらプレポリマーを得る重縮合反応、そしてプレポリマーを固相重合する方法からなる。
まず最初に、エステル化反応から説明する。
重合原料であるテレフタル酸に対する1,3−プロパンジオールの仕込み比率は、モル比で0.8〜2.5であることが必要である。仕込み比率が0.8未満では、エステル化工程は完全には進行しない。また、仕込み比率が2.5より大きくなると融点が低くなる他、得られたポリマーの白度が低下する。好ましくは0.8〜1.5であり、更に好ましくは1〜1.3である。
エステル化反応を円滑に進行させるために好ましく用いられる触媒の種類、添加量、またエステル化反応の条件等は、すでに述べたテレフタル酸の低級アルコールエステルを用いたエステル交換反応の場合と同様である。尚、この場合、反応系の外に留去されるものは水である。
エステル形成性スルホン酸塩の添加は、エステル化反応の反応率、すなわち、テレフタル酸の反応率が75〜100%の段階で、全ジカルボン酸成分の0.5〜5モル%に相当する量のエステル形成性スルホン酸塩を添加することが、本発明のCD−PTTを得るために必要な条件である。反応率が75%未満では、BPEの共重合比率が多くなって本発明の範囲を外れてしまう。これは、反応率が低いと、未反応のテレフタル酸由来のプロトンの量が多く、それがBPEの生成を加速するからである。反応率が90%以上で添加することが好ましく、95%以上エステル化反応が完了してから添加することが最も好ましい。エステル形成性スルホン酸塩の添加方法は、テレフタル酸の低級アルコールエステルを用いた時と同様の方法が適用できる。
エステル化反応の後には、重縮合反応、固相重合を行うが、この条件は、すでに述べたテレフタル酸の低級アルコールエステルを用いた重縮合反応の場合と同様であり、添加剤も同じように使用できる。
以上のようにして得られる高分子量のCD−PTTは、原料ポリマーが白度に優れているので、公知の紡糸方法によって、カチオン染料に染色可能で、しかも公知のCD−PTT繊維よりもはるかに優れた発色性、鮮明性を示す繊維となる。特に、以下に示す特定の紡糸を行うことにより、本発明の目的とする高タフネスであって、加工時に過度に収縮しない加工性のよい繊維となる。
すなわち、本発明の好ましいCD−PTT繊維は、エステル形成性スルホン酸塩が全ジカルボン酸成分に対して0.5〜5モル%共重合されているポリトリメチレンテレフタレートからなり、下記(A)〜(C)を満足することを特徴とするPTT繊維である。
(A)極限粘度 :0.65〜1.4dl/g
(B)動的損失正接のピーク温度 :105〜140℃
(C)沸水収縮率 :0〜16%
本発明のCD−PTT繊維の極限粘度は0.65〜1.4dl/gであることが必要である。極限粘度がこの範囲であることにより、初めてタフネスの高い繊維となる。極限粘度が0.65dl/g未満の場合は、重合度が低すぎるために満足できるタフネスが達成できない。一方、極限粘度が1.4dl/gを越える場合は、紡糸時に溶融粘度が高すぎるためにメルトフラクチャー等が生じ、均一な繊維にならず、その結果、かえってタフネスが低下してしまう。また、紡糸条件を調整しても分子の緊張状態を下げることが難しく、沸水収縮率が高くなってしまう。繊維の極限粘度は好ましくは0.68〜1.3dl/g、特に好ましくは0.7〜1.2dl/gである。
本発明のCD−PTT繊維の動的損失正接のピーク温度(以下、Tmaxと略記する)は105〜140℃であることが必要である。Tmaxは、動的粘弾性測定から求められる値であり、非晶部分の分子の緻密性に対応する。この値が大きくなるほど非晶部分が緻密な構造となっていることを表す。Tmaxが105℃未満では、非晶部分の緻密性が低く、分子の繊維軸方向への配向が悪くなって繊維のタフネスが小さくなり、布帛にした場合に破れやすくなる場合がある。一方、140℃を越えると、非晶部分の分子の緻密性が高くなりすぎて、カチオン染料が入りにくくなり、染色物が濃色に発色しなくなることがある。タフネスと染色物の発色のかねあいから、Tmaxは110〜120℃が特に好ましい。
本発明のCD−PTT繊維の沸水収縮率(以下、BWSと略記する)は、0〜16%であることが必要である。BWSが16%を越える場合は、分子が過度に緊張した状態になっているために、得られる布帛を染色等の後加工で熱処理した際、大きく収縮してしまい、布帛が硬くごわごわした風合となり、PTT繊維が本来有するソフトな風合いが発現しない場合がある。一方、0%未満、すなわち沸水中で繊維が伸びる場合は、熱セット等の後処理をしてもシワの無い布帛を得ることができない場合がある。BWSは、より好ましくは3〜15%であり、更に好ましくは、5〜14%である。
本発明のCD−PTT繊維の破断伸度は20〜70%であることが好ましい。繊維のタフネスを向上し、延伸時や後加工時の毛羽や糸切れの発生を抑制する点から、破断伸度は20%以上であることが好ましい。また、繊維のタフネスを向上させ、均一に延伸して、太さムラの小さい繊維を得るという点から、破断伸度は70%以下であることが好ましい。破断伸度のより好ましい範囲は25〜65%であり、更に好ましくは30〜60%、特に好ましくは35〜55%である。 本発明のCD−PTT繊維のタフネスは、16以上であることが好ましい。ここでタフネスは、下記式より計算した値である。
タフネス=[強度(cN/dtex)]×[伸度(%)]1/2
タフネスが16以上では、得られる布帛は裂けにくくなる。タフネスの上限は特に限定されるものではなく、高ければ高いほどよい。本発明のCD−PTTの高分子量の効果が十分に生かされ、得られた繊維製品の耐久性、強靱性を十分に発揮させるためには、タフネスは17.5以上が好ましく、更に好ましくは18以上、最も好ましくは19以上である。
本発明のCD−PTT繊維の破断強度は、2.2cN/dtex以上であることが好ましい。2.2cN/dtex未満では、強度が低いために、タフネスを高めようとした場合、伸度を大きくする必要があり、布帛にした際に力の加わった部分が変形したままになる、いわゆる型抜けが発生しやすくなる。破断強度は、より好ましくは2.4cN/dtex以上、更に好ましくは2.6cN/dtex以上、特に好ましくは2.8cN/dtex以上である。
本発明のCD−PTT繊維の20%伸長時の弾性回復率は、PTTが本来有する優れたストレッチ性を達成するために、60%以上であることが好ましい。更に好ましくは、65%以上、特に好ましくは70%以上である。
本発明のCD−PTT繊維の密度は1.330g/cm3以上であることが好ましい。密度は、繊維の結晶性を表す指標である。密度が高いほど結晶化度が高いことを示す。結晶化度を十分に高め、PTT特有の優れたストレッチ性を発揮するため、また結晶化により分子を十分に固定して、BWSを本発明の好ましい範囲とするためには、密度が1.330g/cm3以上であることが好ましい。一方、PTTの結晶密度が1.431g/cm3(材料、第35巻、第396号、第1067頁、1986年発行参照)であることより、共重合しているCD−PTTの密度の上限もこの値を越えることはないと考えられる。密度は、より好ましくは1.335g/cm3以上、更に好ましくは1.340g/cm3以上である。
本発明のCD−PTT繊維のU%は0〜3%であることが好ましい。
一定速度にて繊維をUSTER・TESTER3に通すと、図1に示すようなむら曲線(繊維の質量変化)が得られる。この結果より下記式(1)に従ってU%を求めることができる。後加工時の毛羽や糸切れを抑制し、機械物性ムラや染めムラを抑えるという点から、U%は2%以下であることが好ましく、更に好ましくは1.5%以下である。
U%=[a/(Xave×T)]×100 ・・・(1)
式中の符号は、図1において、Xaveは平均値、aは質量の瞬時値(Xi)とXaveとの間の面積(斜線部)、Tは測定時間を表す。
本発明のCD−PTT繊維の色相は、YI値(黄色度)が−30〜5、かつWI値(白色度)が50〜150であることが好ましい。色相がこの範囲であることにより、淡色に染色する際に、希望した色の布帛としたり、優れた発色性としたりすることが容易となる。このような範囲の色相とするためには、ポリマーの白度を本発明における範囲のb*及びL値とすると共に、溶融、押出温度等を本発明の範囲内として、熱分解による着色を抑制することが重要である。YI値は−20〜4.5がより好ましく、−10〜3が更に好ましい。また、WI値は60〜100がより好ましく、70〜90が更に好ましい。
本発明のCD−PTT繊維は、マルチフィラメント、スフ、短繊維、紡績糸、モノフィラメント等、用途に応じて任意の形態をとることができる。例えば、仮撚り糸や撚糸といった加工糸であってもよい。総繊度は特に限定されないが、通常5〜1000dtex、好ましくは10〜300dtex、単糸繊度は特に限定されないが、通常0.1〜20dtex、好ましくは0.5〜10dtex、更に好ましくは1〜5dtexである。特にモノフィラメントの場合は、5〜10000dtexの間で用途に応じて適宜選択することが望ましい。
繊維の断面形状は、丸、三角、その他の多角形、扁平、L型、W型、十字型、井型、ドッグボーン型など特に制限はなく、中実繊維であっても中空繊維であってもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲であれば、艶消し剤の含有量や極限粘度等の異なる2種類以上の本発明の範囲内のポリマーを用いて、鞘芯、サイドバイサイド、積層構造等の複合構造繊維としたり、断面形状やポリマー種を変えた複合混繊繊維としても良い。
本発明のCD−PTT繊維は、パーン、チーズ状パッケージ等、いかなる形態で巻かれていてもよい。
チーズ状パッケージの場合は、バルジ率が20%以下であることが好ましい。図2(A)は糸が望ましい形状に巻かれたチーズ状パッケージ(100)を示す。糸は糸管等の巻芯(103)上に平らな端面(102)を形成した円筒状糸層(104)に巻かれている。バルジは、図2(B)に示すように、巻糸の収縮による締め付け力が強く働き、巻糸が滑った時に起こるチーズ状パッケージ(100)の膨らみのある端面(102a)である。バルジ率とは、図2(A)または図2(B)に示す最内層の巻幅Q、及び、最も膨らんでいる部分の巻幅Rを測定して、下記式を用いて算出した値である。
バルジ率(%)={(R−Q)/Q}×100
バルジ率が20%以下のチーズ状パッケージは、本発明の範囲内の極限粘度、Tmax、BWSとすることで達成することが容易となる。チーズ状パッケージのバルジ率が20%を越えるものは、運搬時に巻糸が崩れ解舒できなくなったり、解舒張力の斑による糸切れ、毛羽、染色斑等が起こりやすい。最悪の場合は、端面が糸管よりも出っ張るために運搬することができなくなる。また巻締まりが大きくなるため、巻取機のスピンドルから取り外し出来なくなる場合も多い。
バルジ率は好ましくは15%以下であり、更に好ましくは10%以下、最も好ましくは0%である。
チーズ状パッケージは、繊維を解舒する際の張力を下げるとともに、張力の変動を抑えるためには、巻幅Qを40〜300mm、糸管の直径を50〜250mmとすることが好ましい。
次に、本発明のCD−PTT繊維の好ましい製造方法を示す。
基本的には、本発明のCD−PTT繊維は、エステル形成性スルホン酸塩が、全ジカルボン酸成分に対して0.5〜5モル%共重合されており極限粘度が0.65〜1.5dl/gのポリトリメチレンテレフタレートを溶融紡糸するに際し、該ポリトリメチレンテレフタレートを、紡口表面温度を250〜295℃で紡口より押出し、冷却固化させた後、100〜3000m/分の速度で引き取って得られる未延伸糸を、30〜90℃の温度にて最高延伸倍率の30〜99%の延伸倍率にて延伸し、100〜200℃の温度にて熱処理することによって製造できる。CD−PTTは、本発明の原出願明細書の請求項1に記載されたCD−PTTを使用することが最も好ましい。
本発明のCD−PTT繊維の製造方法においては、引き取った未延伸糸を一旦巻き取った後に延伸するコンベンショナルな方法(以下、コンベ法という)、一旦巻き取ることなく続けて延伸する、いわゆるスピンドローテイクアップ法(以下、SDTU法と略す)のいずれでも良い。未延伸糸を引き取るとは、コンベ法では、図3に示す巻取機12で巻き取ることを指し、SDTU法では、図5に示す第1ロール18に巻き付けるまでを指す。乾燥から未延伸糸を引き取るまでは、コンベ法もSDTU法も同じなので、図3を用いて説明する。
乾燥機1で100ppm以下の水分率まで乾燥されたCD−PTTを、250〜290℃に設定された押出機2に供給し溶融する。溶融されたCD−PTTは、250〜295℃に設定されたスピンヘッド4に送液され、ギヤポンプで計量される。その後、紡口パック5に装着された複数の孔を有する紡口6より押出される。押出機に供給するCD−PTTの水分率は、ポリマーの重合度低下を抑制するという観点から50ppm以下が好ましく、更に好ましくは30ppm以下である。
本発明のCD−PTT繊維を製造するために重要な第1のポイントは、高い重合度で、且つ、配向性、結晶性が低く、延伸性の良好な未延伸糸を得ることである。
高い重合度の未延伸糸とするためには、本発明のCD−PTTのように分子量が高く、溶融安定性に優れたポリマーを使用すると共に、重合度が低下しないように、溶融温度を下げてポリマーの分解を抑制することが望ましい。分解が激しくなると、繊維が着色するという好ましくない問題も発生する。一方、延伸性の良好な未延伸糸を得るためには、溶融温度を上げてポリマーを完全に溶融させ、延伸を阻害するような分子鎖の絡み合いを十分解きほぐす必要がある。特に高重合度ポリマーでは、絡み合いが激しいので、溶融温度を高めることが望ましい。
これらを両立させるためには、特定の範囲の温度条件を選定することが望ましい。すなわち、押出機の温度を好ましくは250〜280℃、より好ましくは255〜275℃、更に好ましくは260〜270℃とし、スピンヘッドの温度を好ましくは260〜295℃、より好ましくは265〜290℃、更に好ましくは270〜285℃として、且つ、押出機の温度よりスピンヘッドの温度を高くすることが好ましく、5℃以上高くすることがより好ましい。スピンヘッドの温度は、後述する、紡口表面温度とも密接に関わるので、紡口表面温度が適正な範囲となるように、上記範囲内より選択するのが望ましい。
次に、高重合度のCD−PTTでは、分子間の相互作用が強いために、ポリマーを押し出す時から冷却固化させて繊維を引き取るまでの間に分子が配向しやすいので、分子の配向を抑えて未延伸糸の配向度を下げる必要がある。この点が本発明においては、非常に重要なポイントである。未延伸糸の配向度を下げるためには、紡口下のポリマーを分子間相互作用の少ない状態にし、且つ、分子の急激な変形を抑制する必要がある。このためには、紡口表面温度を高めることにより、押し出すポリマーの温度を高め、且つ押し出したポリマーをゆっくりと固化させ、ポリマーの細化速度、すなわち、変形速度を下げる必要がある。
従って、本発明においては、紡口表面温度を250〜295℃といった特定温度範囲にすることが重要なポイントの一つである。紡口表面温度が250℃未満では、糸切れや毛羽の多発や糸ムラの発生等の問題が発生する。また、紡口表面温度が295℃を越えると熱分解が激しくなり、未延伸糸の重合度が低くなってしまったり、着色してしまったりする。紡口表面温度は255〜290℃が好ましく、260〜285℃が更に好ましい。
このような紡口表面温度にするためには、スピンヘッド温度を適切にするとともに、紡口直下に加熱筒を設置することが好ましい。紡口表面温度を高めるためにスピンヘッド温度を高くし過ぎすると、熱分解が激しくなって得られた繊維が着色したり、重合度が下がってしまう。加熱筒を用いることにより、ポリマーの熱分解を抑制し、且つ、紡口表面及び、紡口下の雰囲気温度を高めて、押し出されたポリマーが急激に冷却固化することを抑制できる。
加熱筒温度は100〜350℃が好ましく、150〜300℃が更に好ましく、260〜250℃が特に好ましい。加熱筒の長さは、ポリマー分子の絡み合いをほぐす効果と紡糸の作業性より考えて、50〜300mmが好ましく、100〜250mmが更に好ましい。
ポリマーの変形速度を下げるためには、ドラフトを低くすることも好ましい。紡糸時のドラフトは10〜2000の範囲とすることが好ましい。ここで紡糸ドラフトとは、下記の式で表される値である。
紡糸ドラフト=(V2)/(V1)
ただし、V1は、紡口から押し出される際のポリマーの線速度(m/分)であり、V2は、第1ロール速度(m/分)(第1ロールを使用しない場合は、巻取り速度)である。
ドラフトが10未満では、紡口径が小さくなりすぎるために押出圧力が高くなって、メルトフラクチャー等が発生するために、均一に押し出すことが容易でなくなる。ドラフトが2000を越えると、ポリマーの変形速度が大きくなるため、未延伸糸の配向度が高くなりやすい。紡糸ドラフトは50〜1500がより好ましく、さらに好ましくは100〜1000、特に好ましくは150〜500である。
本発明で用いる紡口は、直径が0.2〜0.7mm、直径と長さの比が1:0.25〜1:3の範囲であることが好ましい。直径が0.2mm未満であったり、直径と長さの比が3を越えると、押出圧力が高くなり、メルトフラクチャー等が発生するために、均一に押し出すことが容易でなくなる。一方、直径が0.7mmを越えると、繊維のムラが大きくなりやすかったり、ドラフトが高くなるために繊維が配向し、延伸性が低下することがある。また、直径と長さの比が0.25未満では、長期間紡口を用いるうちに紡口が変形したり、欠けたりしてしまうことがある。紡口の直径は0.25〜0.6mmがより好ましく、0.3〜0.5mmが更に好ましい。また、直径と長さの比は1:0.5〜1:2がより好ましく、1:0.75〜1:1.5が更に好ましい。
紡口より押し出されたポリマーは、冷却固化されて繊維となる。冷却は、0〜40℃の冷風をポリマーに当てて行うことが好ましい。
冷却固化された繊維は、直接巻き取っても良いが、図3に示す第1引き取りロール等を経由して巻取機で巻き取るか、図5に示す第1ロールで引き取った後、続けて延伸を行うことが好ましい。
本発明においては、未延伸糸を巻き取る速度、あるいは、ロール等に引き取る速度を100〜3000m/分とすることも重要なポイントである(以下、「引き取り速度」と記載した場合は、未延伸糸を巻き取る速度と、ロール等に引き取る速度の両方を意味する)。この範囲内の引き取り速度とすることで、未延伸糸の配向を抑えることが容易となる。押し出されポリマーは自重で落下するので、引き取り速度を100m/分未満とするのは困難である。一方、引き取り速度が3000m/分を越えると、ポリマーの変形速度が大きくなり、且つ、空気抵抗が大きくなるので、未延伸糸の配向を抑えることが困難となる。
引き取り速度は300〜2000m/分が好ましく、600〜1600m/分が更に好ましく、800〜1200m/分が特に好ましい。
本発明における未延伸糸は、破断伸度が150〜600%、結晶化ピーク温度が64〜80℃であることが望ましい。破断伸度が150%未満では、分子の絡み合いが激しいために、延伸により繊維を十分配向させ、破断エネルギーを高めることが困難となる傾向がある。一方、破断伸度が600%を越える場合は、未延伸糸が脆くなり、糸切れのため、安定して延伸することが困難となる傾向がある。破断伸度は180〜500%がより好ましく、200〜400%が特に好ましい。
一方、結晶化ピーク温度とは、入力補償型示差走査熱量計を用いて20℃/分で未延伸糸の熱分析を行った際に見られる結晶化ピークのピークトップの温度である。未延伸糸の分子の規則性が高くなるに従い、より低温で結晶化するために、結晶化ピーク温度は低くなる。本発明では、結晶化させないで、できるだけ高倍率延伸をすることが望ましいので、結晶化ピーク温度はできるだけ高い方が好ましい。結晶化ピーク温度が64℃未満では、延伸の際にすぐに結晶化してしまい、高倍率延伸することが困難となる傾向がある。CD−PTTでは、結晶化ピーク温度が80℃を越えることはない。結晶化ピーク温度は、より好ましくは66〜80℃、更に好ましくは68〜80℃である。
冷却固化された繊維は、引き取られるまでに、仕上げ剤付与装置9によって仕上げ剤を付与されることが好ましい。仕上げ剤を付与することにより、繊維の集束性、制電性、滑り性などが良好となり、巻取時や後加工時に毛羽や糸切れが発生することを抑制することができる。ここで仕上げ剤とは、乳化剤を用いて油剤を乳化した水エマルジョン液、油剤を溶剤に溶かした溶液、あるいは油剤そのものであり、繊維の集束性、制電性、滑り性などを向上させるものである。ここで油剤とは、脂肪族エステル、鉱物油、分子量1000〜20000のポリエーテルの1種類以上を含み、これらの和が40〜90wt%である混合物が好ましく、必要に応じて成分を選択することが好ましい。
本発明において、油剤は、濃度1〜50wt%の水エマルジョン液として繊維に付与することが好ましい。水エマルジョン液とすることにより油剤の付着ムラを抑制したり、巻糸のフォームを良好にすることが容易となる。水エマルジョン液の濃度は5〜40wt%がより好ましく、10〜30wt%が特に好ましい。油剤の濃度が低い場合は、好ましい油剤量を繊維に付着させるためには、多量の仕上げ剤を繊維に付与する必要がある。濃度が1wt%未満では、仕上げ剤量が多くなりすぎ、繊維に付与することが困難となる。一方、濃度が50wt%を越えると、仕上げ剤の粘度が高く、しかも一定量の油剤を繊維に付着させようとしたときに仕上げ剤の量が少なくなるため、繊維に均一に油剤を付与しにくくなる。
油剤は、繊維の質量に対して0.2〜3wt%付着させることが好ましい。0.2wt%未満では、油剤の効果が小さく、静電気により糸がばらけたり、摩擦により糸切れや毛羽が発生したりする場合がある。また3wt%を越えると、繊維の走行時の抵抗が大きくなりすぎたり、油剤がロール、熱板、ガイド等に付着してこれらを汚したりする場合がある。油剤は、繊維の質量に対して0.25〜2.5wt%付着させることが好ましく、特に好ましくは0.3〜2wt%である。もちろん油剤の一部が繊維内部に浸透していてもよい。
仕上げ剤を付与する方法としては、公知のオイリングロールを用いる方法や、例えば特開昭59−116404号公報などに記載されているガイドノズルを用いる方法が可能であるが、仕上げ剤付与装置自体の摩擦による糸切れ、毛羽の発生を抑制するためには、ガイドノズルを用いる方法が好ましい。
コンベ法では、図3に示す、第1引き取りロール10、第2引き取りロール11等の2組以上の引き取りロールを用いて、巻取り張力を制御して未延伸糸を巻き取ることが好ましい。この結果、未延伸糸の巻姿を良好にできるため、延伸する際に、未延伸糸を解舒する張力の変動が少なくなり、毛羽、糸切れ発生の少ない、均一で品位の良い繊維を得ることが容易となる。未延伸糸の巻取り張力は、0.04〜0.3cN/dtexが好ましく、0.05〜0.2cN/dtexがより好ましく、0.06〜0.15cN/dtexが特に好ましい。
次に、未延伸糸を延伸する方法を説明する。
本発明の繊維を製造するために重要な第2のポイントは、前記した、配向度の低い未延伸糸を、適正な範囲の倍率で延伸することである。このためには、最高延伸倍率の30〜99%の延伸倍率にて延伸を行う必要がある。ここで最高延伸倍率とは、実際に繊維を製造する場合と同様な延伸設備、条件にて、延伸を行った際、延伸倍率を上げていって、繊維が破断しない最高の延伸倍率を言う。延伸倍率が最高延伸倍率の99%を越える場合は、糸切れが発生するために、安定して延伸することが困難となる。延伸倍率が最高延伸倍率の30%未満では、均一に延伸することが困難となり、太さムラの大きい繊維となりやすい。延伸を行う倍率は、最高延伸倍率の50〜95%が好ましく、60〜90%が更に好ましい。
このような延伸を行う際の温度は30〜90℃が好ましい。ここで延伸を行う際の温度とは、延伸前に繊維を加熱する温度であり、コンベ法(図4)では第1延伸ロール、SDTU法(図5)では第1ロールの温度に該当する。温度をこの範囲とすることで、延伸時の糸切れや毛羽の発生を抑制して高倍率延伸することが容易となり、本発明の目的とする破断エネルギーの大きい繊維を得ることが容易となる。延伸温度は45〜80℃がより好ましく、55〜75℃が特に好ましい。
延伸された繊維は、結晶化させて、収縮率を下げ、強度を高めるために、熱処理を行うことが好ましい。熱処理は、工程を単純にするために、延伸に続けて行うことが好ましい。
熱処理温度は50〜200℃、熱処理時間は0.001〜1秒であることが好ましい。温度が50℃未満、あるいは、時間が0.001秒未満では、繊維を十分結晶化させて構造を固定することができにくいために、収縮率を下げたり、繊維の破断エネルギーを高めることが困難となったりする傾向がある。一方、200℃を越えると、糸切れや毛羽が発生して、連続して繊維を延伸することが困難となる傾向がある。熱処理の温度は、好ましくは60〜180℃、更に好ましくは80〜160℃である。
熱処理時間は長くても良いが、繊維を連続して延伸−熱処理する場合は、生産性や設備のサイズより考えて、1秒以下であることが好ましい。結晶化度は、熱処理温度と熱処理時間によって決まるので、延伸速度に応じて熱処理温度、熱処理時間を選ぶことがより好ましい。
コンベ法で繊維を製造する場合は、通常PETやナイロン繊維等をコンベ法で製造する際に用いる延撚機や、ロール延伸機等を用いて延伸を行うことができる。
コンベ法にて未延伸糸を延伸する方法の一例を、図4を用いて説明する。
コンベ法で得られた未延伸糸13は、前記した延伸温度に加熱された第1延伸ロールと第2延伸ロールの間で延伸され、前記した熱処理温度に加熱されたホットプレート15で熱処理された後、巻取機17で巻き取られる。途中に延伸点を固定させるための延伸ピンや、繊維を交絡させる装置、繊維を偏向させるためのロールやガイド類を設置しても良い。また、巻き取ると同時に撚りを掛けることも好ましい。
次に、SDTU法で繊維を製造する方法の一例を図5を用いて説明する。
前記した延伸温度に加熱した第1ロール18にて引き取られた未延伸糸は、次に、前記した熱処理温度に加熱した第2ロール19に巻き付け、第1ロール18と、第1ロール18よりも速度を速めた第2ロール19との間で延伸した後、第2ロールで熱処理を行い、第2ロールよりも低速の巻取機21を用いて巻き取られる。ここで20は自己駆動しないフリーロールである。
第1ロール18の速度は、前記した未延伸糸の引き取り速度の範囲とすることが重要である。第2ロール19の速度は延伸倍率によって決定されるが、通常600〜6000m/分である。
延伸−熱処理された繊維は、巻取機21を用いて巻き取られる。
巻取速度は、延伸倍率、リラックス倍率によって決定されるが、通常600〜6000m/分である。
また、巻取機21の速度は、第2ロール19よりも低くすることがSDTU法においては好ましい。本発明のCD−PTT繊維を、巻取機21の速度が第2ロール19の速度と同じにして製造した場合、巻き取られた繊維が収縮し、その収縮力によって糸管が締め付けられるために、1kg以下という少量の巻き量でも、チーズ状パッケージを巻取機のスピンドルより取り外すことができなくなったり、20%以上のバルジ率となるような現象、いわゆる巻締まりが発生する場合がある。この結果、良好な繊維を得ることができなかったり、パッケージからの解舒張力が高くなり且つ大きく変動するために、安定して後加工を行うことが困難となる。これに対して、巻取機の速度を第2ロールよりも低くすると、得られるパッケージの巻締まりを抑制することができる。
リラックス比(巻取機速度/第2ロール速度)は0.8〜0.999が好ましく、より好ましくは0.83〜0.99、更に好ましくは0.85〜0.95である。しかしながら、このようなリラックス比を適用しても、巻量を2kgより多くすると巻締まりが生じる場合がある。この場合、樹脂、金属あるいは肉厚の紙製などの強度の高い糸管を用いて巻締まりによる糸管の変形を防止すれば、巻取り機のスピンドルから容易に取り外すことができる。また巻量を、例えば2kg以下の少ない量にして巻き取ることも巻締まりを抑制する有効な方法となる。巻締まりを抑制するためには、巻き取る前に、繊維を20℃(ポリマーのガラス転移点)以下に冷却することが好ましい。CD−PTTは、例えばPETと比較して、分子が屈曲構造をしているために比較的低温でも動きやすく、巻き取られている間も熱によって収縮しやすく、巻締まりが極めて起こりやすい。
そこで、このような冷却を施すことで、分子運動を抑制することが可能となり、その結果、巻締まりを抑制することができる。冷却後の糸温度は低ければ低いほど良いが、通常10〜70℃、好ましくは0〜50℃である。糸の冷却方法としては、冷風を吹き付けたり、水、有機溶媒等の冷却液に浸漬したり、低温の板やロール上を滑らせたりする等の方法を用いることができるが、繊維を冷却するためのロールを、第2ロール19と巻取機21の間に設置することが最も好ましい。このような方法により、2kg以上、好ましくは5kg以上の巻量とすることも可能である。第2ロール19と巻取機21の間の張力は0.02〜0.20cN/dtexであることが好ましい。この範囲の張力となるように、巻取機の速度を調整することが好ましい。
従来行われてきたPETやナイロンの溶融紡糸では、このように低い張力で巻き取ろうとすると、糸の走行が安定せず、糸が巻取機のトラバースから外れたりして糸切れが発生したり、巻糸を次の糸管に自動で切り替える時に切替ミスが発生したりする。しかしながら、驚くべきことに、CD−PTT繊維では、本発明のように極く低い張力で巻き取ってもこのような問題が発生せず、しかも低い張力とすることにより、巻締まりがなく良好な巻姿のチーズ状パッケージを得ることが容易となる。このように低い張力でも安定して巻取りができるのは、PTT繊維の特徴である低弾性率と高弾性回復率に起因していると考えられる。
張力が0.02cN/dtex未満では、張力が弱すぎるために巻取機の綾振りガイドでの綾振りが良好にできず、巻フォームが悪くなってしまったり、トラバースより糸が外れ、糸切れが起こったりしやすい。また、0.20cN/dtexを越えると、たとえ繊維を冷却して巻き取ったとしても巻締まりが発生しやすくなる。巻き取るときの張力は、好ましくは0.025〜0.15cN/dtex、更に好ましくは0.03〜0.10cN/dtexである。
本発明では、紡糸過程で必要に応じて、交絡処理を行ってもよい。交絡処理は、仕上げ剤付与の前後、巻取前のいずれか、あるいは複数の場所で行っても良い。
本発明に用いる巻取機21としては、スピンドル駆動方式、タッチロール駆動方式、スピンドルとタッチロールの双方が駆動している方式等のいずれの巻取機でもよいが、スピンドルとタッチロールの双方が駆動している方式の巻取機が、糸を多量に巻き取るためには好ましい。タッチロールあるいはスピンドルどちらか一方のみが駆動する巻取機の場合、他方は駆動軸からの摩擦により回転しているため、スピンドルに取り付けられている糸管とタッチロールでは滑りにより表面速度が異なってしまう。このためタッチロールからスピンドルに糸が巻き付けられる際、糸が伸ばされたり、ゆるんだりしてしまい張力が変わって巻姿が悪化してしまったり、糸がこすられてダメージを受けたりしやすい。スピンドルとタッチロールの双方が駆動することによりタッチロールと糸管の表面速度の差を制御することが可能となって滑りを減らすことができ、糸の品質や、巻姿を良好にすることができる。
繊維を巻き取る際の綾角は3.5〜8°であることが好ましい。3.5°未満では、糸同士があまり交差していないために滑りやすく、綾落ちやバルジの発生が起こりやすい。また8°を越えると、糸管の端部に巻かれる糸の量が多くなるために、中央部に比べ端部の径が大きくなる。このため巻き取っている際は、端部のみがタッチロールに接触してしまい糸品質が悪化してしまったり、また、巻き取った糸を解舒する際の張力変動が大きくなり、毛羽や糸切れが多発したりしやすい。綾角は4〜7°が更に好ましく、5〜6.5°が特に好ましい。
以上のようにして得られたCD−PTT繊維は、短繊維としても用いることもできる。短繊維とする場合は、繊維長が3〜300mm、捲縮度が5%以上であることが好ましい。このような短繊維とすることで、紡績糸からなるインナー、スポーツ等の衣料用素材、詰め綿、不織布等の資材分野に好適に使用することができる。繊維長が3mm未満であったり、捲縮度が5%未満では、繊維同士を絡み合わせることが容易でなくなり、300mmを越えると、紡績工程等の工程通過性が悪化する。繊維長は5〜200mmがより好ましく、10〜150mmが更に好ましい。捲縮度は8〜35%がより好ましい。
また、このような短繊維は、10%伸長時の弾性回復率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。弾性回復率が80%未満では、ストレッチ性が劣ったものとなりやすい。更に、短繊維は屈曲回復率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。屈曲回復率が80%未満では、詰め綿等に使用した場合、復元性に欠け、へたり易くなる傾向がある。
このような短繊維は、本発明で得られた長繊維を、スタッファボックス捲縮、スチームジェットまたは他の熱流体捲縮、ギヤ捲縮などの方法を用いて捲縮させた後に切断して得ることができる。繊維は、予備コンデショニングせずに捲縮させても良いが、弾性回復率や屈曲回復率を高めるためには、熱処理を行った後に捲縮させることが好ましい。熱処理は、定長または緊張下が好ましい。また、熱処理温度は100〜160℃、熱処理時間は0.01〜90分であることが好ましい。
以上のようにして得られたCD−PTT繊維又は短繊維は、単独使い、または布帛の一部に使用することで、ソフト性、ストレッチ性、発色性の優れた繊維製品となる。
尚、本発明において、繊維製品とは、本発明のCD−PTT繊維又は短繊維を用いた製品であれば特に制限はなく、アウター、インナー、裏地、スポーツ等の衣料用の他、カーペット用原糸、芯地、フロッキー、バック、カーシート、合皮等の資材用等が挙げられる。繊維製品中における本発明のCD−PTT繊維又は短繊維の混合割合については特に制限はなく、目的に応じて任意に設定できるが、通常は1〜100%、好ましくは5〜100%である。特に本発明の繊維又は短繊維は、高タフネスかつ収縮率が小さいので、単独、または布帛の一部に使用した織編物に、染色等の熱処理を受ける後加工を施しても、布帛が過度に収縮せず、非常にソフトな風合いが維持できるとともに、優れた破裂強度、引き裂き強度を有する布帛とすることができる。
布帛の一部に他の繊維を使用する場合、他の繊維としては特に制限はないが、特にポリウレタン弾性糸に代表されるストレッチ繊維、セルロース繊維、ウール、絹、アセテート等の繊維と混用することにより、ナイロン繊維やPET繊維を用いた布帛では得られない特徴を発現させることができる。すなわち、例えば、カチオン染料又は/及び分散染料を用いて常圧染色できると共に、従来になかったソフトさ、ストレッチ性を持つ独特の風合いの布帛となる。
本発明の繊維製品は、その形態、製編織方法について特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、本発明の繊維又は短繊維を経糸または緯糸に用いる平織物、リバーシブル織物等の織物、経編、緯編、丸編等の編物などが挙げられ、その他の交撚、合糸、交絡を施しても良い。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例などにより何ら限定されるものではない。
なお、測定方法、評価方法等は下記の通りである。
(1)極限粘度[η]
極限粘度(dl/g)は、オストワルド粘度管を用い、35℃にて、o−クロロフェノールを用いて、比粘度ηspと濃度C(g/100ml)の比ηsp/Cを濃度ゼロに外挿し、以下の式に従って求めた。
[η]=lim(ηsp/C)
C→0
(2)BPEの共重合比率微粉末化したポリマー2gを精秤後、2Nの水酸化カリウムのメタノール溶液25mlに加え、還流下、4時間かけて加溶媒分解した。得られた分解物を用い、ガスクロマトグラフィーにより定量した。
カラムは、DURABONDDB−WAX0.25mm×30m(0.25μm)を用い、ヘリウムを100ml/分で流しながら、150〜230℃まで20℃/分の昇温速度で測定した。
(3)融点
融点は、PerkinElmer社製Pyris1DSC(入力補償型示差走査熱量計)を用いて測定した。一旦、室温から280℃まで100℃/分で昇温し、2分間放置後、500℃/分で0℃まで降温後、1分間放置し、その後20℃/分で280℃まで昇温して測定した。尚、融点の測定において、一度溶解後、冷却してから融点を測定するのは、重合後のポリマー取り出し時にポリマーが受ける熱履歴を一度キャンセルするためである。
融点は、融解ピークのピーク値とした。ピーク値は、測定者によるバラツキを避けるために、付属の解析ソフトを用いて決定した。
(4)末端カルボキシル基量
ポリマー(樹脂)1gにベンジルアルコール25mlを加え、窒素雰囲気下で200℃で15分間加熱した。その後、フェノールフタレイン指示薬を3滴、クロロホルム25mlを添加した後、0.02Nの水酸化カリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、末端カルボキシル基量(ミリ当量/kg樹脂)を求めた。
(5)ポリマーの色相(L値、b*値)
ポリマーの色相は、スガ試験機(株)のカラーコンピューターを用いて測定した。L値はポリマーの明るさを示し、b*値は黄色の程度を示す。いずれの値も、数値が高いほどその程度が大きくなる。
(6)溶融安定性
得られたポリマー1gを30mlのガラス製封管に入れ、130℃で24時間真空乾燥した。乾燥後、封管の口部を内部が真空のまま溶融し、外部から空気が入らないようにした。樹脂の入った封管をオイルバス中で270℃、2時間保持した。溶融後、封管からポリマーを取り出し、溶融させる前の極限粘度に対する溶融後の極限粘度の比率を溶融安定度とした。
(7)エステル化反応率
エステル化反応において、テレフタル酸の反応率をエステル化反応率とした。この場合、テレフタル酸の反応は下記の式に従うが、テレフタル酸1モル中の全カルボキシル基が反応すると、2モルの水が生成する。2モルの水が生成した時、エステル化反応率は100%と定義し、エステル化反応時に生成した水の量からエステル化反応率を求めた。
HOOCφCOOH+HOCH2CH2CH2OH
→テレフタル酸エステル+2H2
なお、式中、φはフェニレン基を表す。
(8)動的損失正接のピーク温度(Tmax)
オリエンテック社製レオバイブロンを用い、乾燥空気中、測定周波数110Hz、昇温速度5℃/分にて、各温度における動的損失正接(tanδ)、および動的弾性率を測定した。その結果から、動的損失正接−温度曲線を求め、この曲線上で動的損失正接のピーク温度であるTmax(℃)を求めた。
(9)沸水収縮率(BWS)
JIS−L−1013に基づき、かせ収縮率として求めた。
(10)強度(破断強度)、伸度(破断伸度)、タフネス
JIS−L−1013に基づいて定速伸長型引張試験機であるオリエンテック(株)社製テンシロンを用いて、つかみ間隔20cm、引張速度20cm/分にて測定した。
タフネスは上記の方法にて測定した強度、伸度を用いて、下記式より計算した。
タフネス=[強度(cN/dtex)]×[伸度(%)]1/2
(11)弾性回復率
弾性回復性は、下記の方法で得られる弾性回復率として求めた。
繊維をチャック間距離20cm(L0)で引っ張り試験機に取り付け、所定の伸長率まで引っ張り速度20cm/分で伸長し、1分間放置する。この後、再び同じ速度で収縮させ、応力−歪み曲線を描く。収縮中、応力がゼロになった時の伸度を残留伸度(La)とする。弾性回復率は以下の式に従って求めた。
弾性回復率(%)=[(L0−La)/L0]×100
(12)複屈折率
繊維便覧(原料編)、第969頁(第5刷、1978年丸善株式会社発行)に準じ、光学顕微鏡とコンペンセーターを用いて、繊維の表面に観察される偏光のリターデーションから求めた。
(13)密度
JIS−L−1013に基づいて、四塩化炭素およびn−ヘプタンにより作成した密度勾配管を用いて、密度勾配管法にて測定を行った。
(14)U%
ツェルベガーウスター株式会社製のUSTER・TESTER3を用い、下記の条件にて測定して求めた。
測定速度:100m/分
測定時間:1分
測定回数:2回
撚り種類:S撚り
(15)繊維の色
下記の方法にて作成した評価布帛を用いて行った。ASTM−E313−73に準拠した方法にて白色度であるWI値を、ASTM−D1925−70に準拠した方法にて黄色度であるYI値を、下記の条件にて測定した。
〔評価布帛の作成方法〕
1)サンプルを一口編み地とする。
2)スコアロールFC−250を2g/リットル入れた70℃の温水中にて20分精練する。
3)テンターを用いて、180℃で30秒間熱セットを行う。
〔測定方法〕
装置:分光測色計:MacbethCE−3000(マクベス社製)
測定条件:ASTM−D1925−70(YI値)、ASTM−E313−73(WI値)に準拠して、下記の方法にて測定を行った。
視野:2°
光源:C(CIE−1964)
鏡面光沢:含む
UV光:含む
計算は、次式に従って行い、YI値、WI値を算出した。
YI=100×(1.28X−1.06Z)/Y
WI=4×0.847Z−3Y
ここでX、Y、Zは、試料のXYZ表色系における三刺激値である。
(16)バルジ率
図2(A)または図2(B)に示す糸層(104)の最内層の巻幅Q、及び、最も膨らんでいる部分の巻幅Rを測定して、以下の式に従って算出した。
バルジ率(%)={(R−Q)/Q}×100
(17)未延伸糸の結晶化ピーク温度
PerkinElmer社製Pyris1DSC(入力補償型示差熱量計)を用いて、下記の条件にて測定し、結晶化に由来する発熱ピークのピーク値を結晶化ピーク温度とした。ピーク値は、付属の解析ソフトを用いて決定した。
測定温度:0〜280℃
昇温速度:20℃/分
(18)油剤付着率
JIS−L−1013に基づき、繊維をジエチルエーテルで洗浄し、ジエチルエーテルを留去して、繊維表面に付着した純油剤量を繊維質量で割って求めた比率を油剤付着率とした。
(19)捲縮度
試料に初荷重0.01764cN/dtex(0.02mg/デニール)をかけた時の長さをa、0.265cN/dtex(0.3mg/デニール)の荷重をかけた時の長さをbとし、次式に従って求めた。試験は10回行い、平均値を捲縮度の値として用いた。
捲縮度(%)=[(b−a)/b]×100
(20)屈曲回復率
切断前の繊維を、幅30mm、長さ40mm、厚さ40μmの板に、0.0294cN/dtex(1/30mg/デニール)の初荷重をかけた状態で繊維が重ならないように5回巻き付け、繊維の折り曲げ部に1kgの荷重をかける。30秒後に荷重を取り外し、板の中央で繊維を切り、10分後の回復角度を測定し、回復率を算出した。
〔実施例1〕
テレフタル酸ジメチル1300g(6.7モル)、1,3−プロパンジオール1144g(15モル)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル40.5g(0.14モル)、酢酸カルシウム1水和塩2.4g(0.014モル)、酢酸リチウム2水和塩1.0g(0.01モル)を3リットルのオートクレーブに仕込み、220℃でメタノールを留去しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応率は95%であった。エステル交換反応終了後、トリメチルホスフェート0.65gとチタンテトラブトキシド1.34gを添加し、30分攪拌後、1,3−プロパンジオールを留去しながら、13.3〜66.5Paの真空度で、270℃、1.5時間重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、得られた溶融物を水中にロープ状にして投入し、得られたロープ状物を細かく切断して、チップ状のプレポリマーを得た。尚、重縮合反応の終了時点では、溶融粘度は、時間の経過と共にまだ高くなる傾向を示していた。
プレポリマーの極限粘度は0.54dl/g、末端カルボキシル基量は16ミリ当量/kg樹脂であった。得られたプレポリマーを215℃、窒素気流下で固相重合を行った。プレポリマーの固相重合速度は速く、得られたCD−PTTは、溶融安定性に優れ、優れた色相を示した(表1)。
得られたポリマーチップを水分率30%まで乾燥後、押出機で265℃で溶融して、285℃のスピンヘッドに送液し、直径0.35mm、長さ0.35mmの丸型孔が36個開いた紡口を経て押し出した。紡口下には、250℃に加熱した長さ100mmの加熱筒を設置した。この時の紡口表面温度は271℃であった。紡糸速度800m/分で紡糸して未延伸糸を作成した。次いで、得られた未延伸糸をホットロール60℃、ホットプレート140℃にて、伸度が40%になるように延伸速度600m/分で延撚を行い、56dtex/36f、極限粘度0.86、強度2.8cN/dtex、伸度40%、弾性率2.0cN/dtex、Tmax116℃、BWS13.1%の延伸糸を得た。
得られた繊維を一口編地にし、カチオン染料を用いて染色を行った。カチオン染料としてはカヤクリルブラックBS−ED(日本化薬(株)製、8%omf、浴比1:50)を用い、分散剤としてはディスパーTL(明成化学(株)製)を1g/リットル使用した。硫酸ナトリウム3g/リットルと酢酸と酢酸ナトリウムを用いてpHを4に調整した水溶液に染料を加えて染液とした。120℃、1時間染色を行った後、センカノールA−900(センカ(株)製)1g/リットル、浴比1:50で70℃、15分間ソーピングした。染料の吸尽率は85%であり、得られた染色物は濃色に染色されていた。
また、フェードメーターを用いて、耐光性テストを63℃で30時間行ったが、退色はほとんどなかった。
〔実施例2〕
実施例1にて、重縮合反応を260℃、1.5時間で行った以外は、実施例1と同様にしてプレポリマーを得た。プレポリマーの極限粘度は0.52dl/g、末端カルボキシル基量は16ミリ当量/kg樹脂であった。得られたプレポリマーを215℃で窒素気流下にて固相重合を行った。プレポリマーの固相重合速度は速く、得られたCD−PTTは、溶融安定性に優れ、優れた色相を示した(表1)。
〔比較例1〕
実施例1にて、重縮合反応を290℃、2時間で行った以外は、実施例1と同様にしてプレポリマーを得た。プレポリマーの極限粘度は0.58dl/g、末端カルボキシル基量は45ミリ当量/kg樹脂であった。得られたプレポリマーを215℃で窒素気流下にて固相重合を行った。プレポリマーの固相重合速度は実施例1のプレポリマーと比べて遅く、得られたCD−PTTは、溶融安定性、色相が低下していた(表1)。
〔比較例2〕
重縮合反応を2.5時間にした以外は、実施例1と同様にして重合実験を行った。重縮合反応が約2時間経過した段階から重縮合反応が終了するまでの間は、溶融粘度が上がらない状態となっていた。重縮合反応による分子鎖の成長と熱分解による解重合がほぼ平衡状態になっていたものと思われる。
プレポリマーの極限粘度は0.60dl/g、末端カルボキシル基量は43ミリ当量/kg樹脂であった。得られたプレポリマーを215℃、窒素気流下固相重合を行った。プレポリマーの固相重合速度は、実施例1におけるプレポリマーの場合と比べて遅く、得られたCD−PTTは、溶融安定性、色相が低下していた(表1)。
〔比較例3〕
実施例1において、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、極限粘度0.92のホモPTTを得た。得られたCD−PTTの物性については、表1に記載されているように、SIPM量、BPE量が、本発明の範囲を外れていた。
また、色相、特にb*値が悪かった。理由は必ずしも明らかではないが、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを用いなかったためと考えられる。したがって、エステル形成性スルホン酸塩は、ポリマーの白度を高める効果があると考えられる。
また、実施例1と同様にカチオン染料による染色実験を行ったが、吸尽率は8%であった。エステル形成性スルホン酸塩を共重合しないと、カチオン染料では染色できないことが判った(表1)。
〔実施例3〕
5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルのモル数を2.5モル%にした以外は、実施例1と同様にして行った。得られたポリマーは、溶融安定性に優れ、優れた色相を示した(表1)。
〔比較例4〕
テレフタル酸ジメチルとエチレングリコール(モル比1:1.6)を用い、酢酸マンガン(テレフタル酸ジメチル量の0.05wt%)を触媒としてエステル交換反応させた。得られたテレフタル酸ビス(ヒドロキシエチル)0.98モルに、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル0.02モル、酢酸リチウム2水和塩200mg、触媒として三酸化アンチモン125mg(この場合、チタンテトラブトキシドを用いると、ポリマーはひどく着色する。)、熱安定剤としてトリメチルホスフェート130mgを加え、290℃、13.3〜66.5Paの真空下で溶融重合を行った。得られた共重合PETの極限粘度は0.50dl/g、融点は256℃、末端カルボキシル基量は45ミリ当量/kg樹脂、b*値は7.8であった。
こうして得られた共重合PETを乾燥後、20μmの焼結フィルターを通して紡口パックから25g/分の吐出量で、0.23mmの24個の孔から押し出したところ、1週間でパック内の圧力が紡糸開始時点より約1.96×104kPa上がった。
これに対し、同様の実験を実施例1のCD−PTTを用いて行ったところ、1週間でパック内の圧力は紡糸開始時点から約2.94×103kPaしか上がらなかった。
5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルをポリエチレンテレフタレートに共重合すると、スルホン酸塩が変性して不融化した凝集物(マンガン、5−ナトリウムスルホイソフタル酸とリン化合物の錯体)が大量に生成するが、本発明のCD−PTTでは、そのような凝集物の生成量は少ないことがわかる。
〔参考例1〕
テレフタル酸1300g(7.8モル)、1,3−プロパンジオール911g(12.0モル)、チタンテトライソプロポキシド1.35g、酢酸コバルト4水和塩0.13gを3リットルのオートクレーブに仕込み、250℃で精留塔を用いて水を留去しながらエステル化反応を行った。エステル化反応率は98%であった。エステル化反応率は、留去した水の量から算出した。
エステル化終了後(エステル化反応率98%)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル47.3g(0.16モル)と酢酸リチウム2水和塩1.09g(0.01モル)を添加した。このとき、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルと酢酸リチウム2水和塩は1,3−プロパンジオールの15%溶液として添加した。テレフタル酸に対する1,3−プロパンジオールのモル比(以下、G値と略記する)は、1.5であった。スルホン酸塩のモル数は、全カルボン酸モル数の2.0モル%に相当する。
次いで、トリメチルホスフェートを0.65g添加し、1,3−プロパンジオールを留去しながら、13.3〜66.5Paの真空度で3時間重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、得られた溶融物を水中にロープ状にして投入し、得られたロープ状物を細かく切断して、チップ状のポリマーを得た。得られたポリマーは、溶融安定性に優れ、優れた色相を示した(表2)。
得られたポリマーを用いて、表3に示す条件で紡糸を行った。得られた繊維(56dtex/36f)は、強度2.5cN/dtex、伸度35%、弾性率22cN/dtex、Tmax117℃、BWS13.3%であった。
得られた繊維を一口編地にし、実施例1と同様にカチオン染料を用いて染色を行った。染料の吸尽率は75%であり、得られた染色物は濃色に染色されていた。また、フェードメーターを用いて、耐光性テストを63℃で30時間行ったが、退色はほとんどなかった。
また、このCD−PTTを用いて、比較例4と同様にパック内の圧力上昇のテストを行ったところ、1週間でパック内の圧力は紡糸開始時点から約2.94×103kPaしか上がらなかった。5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルをポリエチレンテレフタレートに共重合すると、スルホン酸塩が変性して不融化した凝集物が大量に生成するが、本発明のCD−PTTでは、そのような凝集物の生成量は少ないことがわかる。
〔参考例2〕
G値を変えて、参考例1と同様にして行った。得られたポリマーは、溶融安定性に優れ、優れた色相を示した(表2)。
〔比較例5〕
5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルをエステル化反応する前に、すなわち、重合開始前にテレフタル酸と一緒にオートクレーブに仕込んだ以外は、参考例1と同様にして行った。得られたポリマーは、融点が大きく低下し、溶融安定性、色相の低下が見られた(表2)。
また、重合時間を更に延長しても、極限粘度は0.6dl/g以上に高くはならなかった。これに対して、参考例1のポリマーは、重合時間を延長すると、最大極限粘度は0.8dl/gまで到達した。
〔比較例6〕
G値を3.0にした以外は参考例1と同様にして行った。得られたポリマーは、融点が低下し、溶融安定性、色相の低下が見られた(表2)。
〔比較例7〕
エステル化反応率が60%の時に5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを添加した以外は、参考例1と同様にして行った。得られたポリマーは、融点が低下し、溶融安定性、色相の低下が見られた(表2)。
〔比較例8〕
参考例1において、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを添加しなかったこと以外は、参考例1と同様にして行った。得られたポリマーは、重合度や溶融粘度も高いが、カチオン染料では実質的に染色できず、b*値が高かった(黄色みが強かった)(表2)。
〔実施例4〕
参考例2で得たCD−PTTを、窒素雰囲気下、215℃で固相重合した。得られたポリマーは、溶融安定性に優れ、優れた色相を示した(表2)。
〔参考例3〕
参考例1において、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルと酢酸リチウム2水和塩を1,3−プロパンジオールに溶解せず、そのまま固体で添加した以外は、参考例1と同様にして行った。得られたポリマーは、溶融安定性に優れ、優れた色相を示した(表2)。
〔実施例5〜8〕
テレフタル酸ジメチル1300g(6.7モル)、1,3−プロパンジオール1144g(15モル)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル40.5g(0.14モル)、酢酸カルシウム1水和塩2.4g(0.014モル)、酢酸リチウム2水和塩1.0g(0.01モル)を3リットルのオートクレーブに仕込み、220℃でメタノールを留去しながらエステル交換反応を行った。次いで、トリメチルフォスフェート0.65g、チタンテトラブトキシド1.34g、二酸化チタンを理論ポリマー量の0.05wt%添加した後、1,3−プロパンジオールを留去しながら、13.3〜66.5Paの真空度で、270℃、2時間重縮合反応を行った。
得られたプレポリマー(末端カルボキシル基量は19ミリ当量/kg樹脂)を更に、窒素気流下、210℃にて固相重合し、表3に示した極限粘度のポリマーを得た。得られたポリマーチップは、いずれもb*が−3〜5の範囲内で、かつL値が85以上であり、白度に優れていた。
得られたポリマーチップを水分率50%まで乾燥後、押出機で265℃で溶融して、285℃のスピンヘッドに送液し、直径0.35mm、長さ0.35mmの丸型孔が36個開いた紡口を経て押し出した。紡口下には、250℃に加熱した100mmの加熱筒を設置した。用いた加熱筒の温度、紡口表面温度、紡糸ドラフトは表3に記載した。
次に、押し出した溶融フィラメントに、温度20℃、風速0.4m/分の冷風を当てて冷却固化した後、ガイドノズルを用いて、ステアリル酸オクチル60wt%、ポリオキシエチレンアルキルエーテル15wt%、リン酸カリウム3wt%を含んだ油剤を濃度20wt%の水エマルジョン仕上げ剤として、繊維に対して油剤付着率が1.0wt%となるように付与した。
油剤を付与した繊維は、表3に示した巻取速度の第1引き取りロールを介した後、第2引き取りロールを介して、張力が0.1cN/dtexとなるようにして、巻取機12に巻き取って未延伸糸を得た。巻き取った未延伸糸の物性は表3に示した。いずれの未延伸糸も、本発明で示した好ましい範囲の伸度、結晶化ピーク温度であった。
巻き取った未延伸糸を、図4に示す延伸機にて、第1延伸ロールを60℃、ホットプレートを140℃として、表3に示す延伸倍率にて延伸を行い、56dtex/24フィラメントの繊維を得た。
得られた繊維の物性を表5に記す。いずれの場合も紡糸、延伸時に毛羽の発生は認められなかった。また、いずれの繊維も本発明の範囲に相当するものであり、収縮率が低くタフネスが大きい繊維であった。
〔比較例9〜11〕(コンベ法)
種々のCD−PTTを用い、実施例5と同様にして繊維を製造した。得られた繊維の物性を表5に示す。
比較例9では、用いたポリマーの重合度が低いために、得られた繊維の重合度が低く、タフネスも低く、且つ、BWSが大きいものであった。
比較例10では、加熱筒がないために紡口表面温度が低下するので、得られた未延伸糸は結晶化ピーク温度が低いものであった。得られた未延伸糸を延伸したが、Tmaxが105℃未満、BWSが16%を越え、本発明の範囲より外れていた。また、繊維のタフネスが低く、満足できる繊維ではなかった。
比較例11では、引き取り速度が速いために、未延伸糸の伸度、結晶化ピーク温度が共に低いものであった。得られた未延伸糸を延伸したが、Tmaxが105℃未満、BWSが16%を越え、本発明の範囲より外れていた。また、繊維のタフネスが低い繊維であった。
〔実施例9及び10〕(SDTU法)
実施例5と同様にして得たポリマー(表4に記載)を用いて、図5に示すSDTU紡糸装置にて紡糸した。紡糸は、表4に示した条件以外は実施例5と同様にして行い、乾燥〜仕上げ剤付与を行った。仕上げ剤を付与した繊維は、表4に示した条件に設定した第1ロール、第2ロール、巻取機を用いて、表4に示した条件にて、延伸、熱処理、巻取りを行い86dtex/24フィラメントの繊維を得た。得られた繊維物性を表5に記す。
また、延伸を行う前の未延伸糸の物性を測定するために、第一ロールと同じ速度にて直接巻き取った未延伸糸の物性を測定した。結果を表4に示す。
未延伸糸の物性は、いずれの場合も伸度、結晶化ピーク温度が好ましい範囲であった。得られた繊維は、いずれの場合も紡糸時に毛羽の発生は認められず、得られた繊維の物性も本発明の範囲に相当するものであり、収縮率が低く、タフネスが大きい繊維であった。
また、繊維を4kg巻き取って得たチーズ状パッケージは、巻取機のスピンドルより容易に取り外すことができ、バルジ率も表5に示すように本発明の範囲であり、巻締まり現象は見られなかった。
〔比較例12〕(SDTU法)
表4に示した条件以外は、実施例9と同様にして紡糸を行い、繊維を得た。得られた繊維の物性を表5に示す。
比較例12では、加熱筒がないために、得られた繊維のTmaxが105℃未満であり、本発明の範囲より外れていた。また、繊維のタフネスが低い繊維であった。また、繊維を4kg巻き取ったところ、巻締まりが激しく、チーズ状パッケージを巻取機のスピンドルより取り外すことができなかった。
また、延伸を行う前の未延伸糸の物性を測定するために、第1ロールと同じ速度にて直接巻き取った未延伸糸の物性を測定した。未延伸糸は、表4に示すように、結晶化ピーク温度が本発明の好ましい範囲より低いものであった。
〔実施例11〕
実施例5で得られた繊維を、150℃、5分間の定長湿熱処理した後、スタッファボックス捲縮により捲縮付与し、切断して短繊維を得た。得られた短繊維は繊維長が60mm、捲縮度14%、弾性回復率が95%であった。また切断前の捲縮繊維の屈曲回復率は90%と良好であった。
得られた短繊維は、染色性が良好で、ソフトな風合いを有し、且つ、ストレッチ性の優れた紡績糸や詰め綿等とすることができた。
〔実施例12〕
実施例5で得られた繊維と233dtexのロイカ(旭化成工業株式会社製のポリウレタン系弾性繊維)を用いて経編地を編成した。編成のゲージは28G、ループ長はCD−PTT繊維が1080mm/480コース、ストレッチ繊維が112mm/480コースとし、打ち込み密度を90コース/2.54cmとした。また、CD−PTT繊維の混率は75%に設定した。
得られた生地を90℃、2分間リラックス精練し、160℃、1分間乾熱セットを施した。次いで、染料としてカヤクリルブラックBS−ED(日本化薬(株)製カチオン染料)8%omfを用い、分散剤としてディスパーTL(明成化学(株)製、非イオン系活性剤)を1g/リットル使用し、硫酸ナトリウム3g/リットルと酢酸と酢酸ナトリウムを用いて、pHを4に調整した水溶液に染料を加えて染液とし、染料濃度8%omf、浴比1:50で105℃、1時間染色を行った。染色後、常法により仕上げを行った。
得られた染色布帛は十分に染色され、また、染色堅牢性にも優れていた。この染色編地は、染色の際に過度に収縮することもなく、非常にソフトで、ストレッチ性に富み、且つ、張り、腰のある優れた風合いを示した。
以上の実施例及び比較例を表に示す。
Figure 0003998672
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本発明により、融点が高く、その結果、溶融時の粘度低下が小さく、色相に優れたCD−PTT繊維の原料として好適な高い分子量を有するCD−PTTを得ることができる。
更に、本発明のポリマー及びその製造方法は、従来予想しえなかったほどの優れた特徴を有する。
優れた特徴の第一は、本発明のCD−PTTは、同様の方法に従って重合したホモPTTに比べてポリマーの白度が大きく向上することである。この理由は明らかではないが、白度が高いということは、繊維に加工したときの発色性が一層優れるという観点から極めて好ましい効果である。特に、鮮明性が要求されるカチオン染料による染色では、繊維の白度が高いことにより発色性を高めることができる。
第二は、CD−PTTと類似構造を持つカチオン染料可染性のポリエチレンテレフタレートの末端カルボキシル基量は、通常40ミリ当量/kg樹脂より大きな値となるが、それに対して、本発明のPTTの末端カルボキシル基量はかなり低い値であるということである。末端カルボキシル基量が大きいと、溶融重合終了段階でプレポリマーを重合釜から出す時に、払い出し時間と共に白度、極限粘度が低下したり、プレポリマーの物性が大きく変化したりするという問題がある。また、繊維としては、染色や加工時の繊維強度が大きく低下したりしてしまうという問題がある。これに対して、本発明におけるプレポリマーから得られるCD−PTT、CD−PTT繊維ではそのような問題はほとんど生じない。
第三は、本発明のCD−PTTは、エステル形成性スルホン酸金属塩、触媒、熱安定剤等に由来する不融性凝集物の生成量が少ないことである。凝集物が少ないと、紡口パックの交換周期が長くなり、長期の連続紡糸が可能となるために、高い生産性が達成できる。また、凝集物が少ないと、毛羽や糸切れが少なくなり、紡糸収率が高くなる。類似構造を持つカチオン染料可染性のポリエチレンテレフタレートでは、用いる触媒等が異なるので多量の凝集物が含まれ、凝集物の問題が今なお完全には解決されていない。
以上のように、本発明のCD−PTTは優れた性能を有しているので、繊維をはじめ、成型体、フィルム等の原料としても有用である。特に本発明のCD−PTT繊維は、カチオン染料で染色でき、高タフネスで、染色、加工等での過度の収縮がないので、布帛設計が容易であり様々な衣料に応用可能である。特に、ウレタン弾性糸、ポリエステル弾性糸等の複合化、ウレタン樹脂加工をする用途に特に好適である。
具体的な用途である繊維製品としては、アウター、インナー、スポーツ等の衣料一般、カーペット、フロッキー、モノフィラメント、バック等の資材、スパンボンド、マイクロウエブ、スパンレース等の不織布等が挙げられる。
繊維をUSTER・TESTER3に通した際の、むら曲線(繊維の質量変化)を示す図である。図1において、Mは質量、tは時間、Xiは質量の瞬間値、Xaveは平均値、Tは測定時間、aはXiとXaveとの間の面積(斜線部分)を表す。 (A)は、本発明のPTT繊維を糸管に巻き付けたチーズ状パッケージの状態(望ましい形状)を示す概略図である。 (B)は、バルジのあるチーズ状パッケージの状態(望ましくない形状)を示す概略図である。 本発明のCD−PTT繊維の製造方法の一例(コンベ法)を模式的に示す概略図である。 本発明のCD−PTT繊維の製造方法の一例(コンベ法)において、一旦巻き取った未延伸糸を延伸する工程の一例を模式的に示す概略図である。 本発明のCD−PTT繊維の製造方法の他の一例(SDTU法)を模式的に示す概略図である。
符号の説明
1:乾燥機
2:押出機
3:ベンド
4:スピンヘッド
5:紡口パック
6:紡口
7:加熱筒
8:冷却風
9:仕上げ剤付与装置
10:第1引き取りロール
11:第2引き取りロール
12:巻取機(パッケージ)
13:未延伸糸
14:第1延伸ロール
15:ホットプレート
16:第2延伸ロール
17:巻取機
18:第1ロール
19:第2ロール
20:フリーロール
21:巻取機
21a:スピンドル
21b:タッチロール

Claims (10)

  1. 下記の(1)〜(6)を満足することを特徴とする共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維。
    (1)エステル形成性スルホン酸塩が全ジカルボン酸成分に対して0.5〜5モル%共重合されていること。
    (2)0.1〜2.5wt%のビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテルが共重合されていること。
    (3)極限粘度が0.65〜1.4dl/gであること。
    (4)末端カルボキシル基量が5〜40ミリ当量/kg繊維であること。
    (5)タフネスが16以上であること。
    ここでタフネスは次式より計算した値である。
    タフネス=[強度(cN/dtex)]×[伸度(%)]1/2
    (6)U%が0〜3%であること。
  2. 下記の(7)及び(8)を満足することを特徴とする請求項1記載の共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維。
    (7)動的損失正接のピーク温度が105〜140℃であること。
    (8)沸水収縮率が0〜16%であること。
  3. タフネスが17.5以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維。
  4. 下記(a)〜(d)を満足する共重合体ポリトリメチレンテレフタレートを紡口表面温度を250〜295℃で、下記式で示される紡糸ドラフトが50〜1500になるように紡口より押出し、冷却固化させた後、100〜3000m/分の速度で破断伸度が200〜400%、結晶化ピーク温度が64〜80℃である未延伸糸を引取り、該未延伸糸を45〜80℃の温度にて最高延伸倍率の60〜90%の延伸倍率で延伸し、100〜160℃の温度にて熱処理することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維の製造方法。
    (a)エステル形成性スルホン酸塩が全ジカルボン酸成分に対して0.5〜5モル%共重合されていること。
    (b)0.1〜2.5wt%のビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテルが共重合されていること。
    (c)極限粘度が0.65〜1.5dl/gであること。
    (d)末端カルボキシル基量が25ミリ当量/kg樹脂以下であること。
    紡糸ドラフト=(V2)/(V1)
    V1:紡口から押出される際のポリマーの線速度(m/分)
    V2:第一ロール速度(m/分)(第一ロールを使用しない場合は、巻き取り速度)
  5. 共重合ポリトリメチレンテレフタレートを、紡口下に長さ50〜300mm、温度150〜350℃の加熱筒を備えた紡口から押出すことを特徴とする請求項4記載の共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維の製造方法。
  6. 未延伸糸を、一旦巻き取った後、延伸することを特徴とする請求項4又は5に記載の共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維の製造方法。
  7. 引き取った未延伸糸を、一旦巻き取ることなく、続けて延伸することを特徴とする請求項4又は5に記載の共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維の製造方法。
  8. 請求項1又は2に記載の共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維を捲縮処理した後に切断して得られる共重合ポリトリメチレンテレフタレート短繊維であって、繊維長が3〜300mm、捲縮度が5%以上であることを特徴とする共重合ポリトリメチレンテレフタレートの短繊維。
  9. 請求項1又は2に記載の共重合ポリトリメチレンテレフタレート繊維を一部又は全部に用いた繊維製品。
  10. 請求項8に記載の共重合ポリトリメチレンテレフタレートの短繊維を一部又は全部に用いた繊維製品。
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