JP3998194B2 - ドラムヒーターを使用しない電子写真システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式の複写機、FAX及びプリンターに使用する一成分系或いは二成分系現像材におけるトナーを用いるとともに、ドラムヒーターを使用しない電子写真システムに関するものであり、特にアモルファスシリコン感光体を使用したシステムに適したトナーを用いるとともに、ドラムヒーターを使用しない電子写真システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、販売されている複写機やレーザープリンターは、帯電、露光工程において感光体に静電潜像を形成し、現像工程において感光体の潜像を可視像化、更に転写工程において感光体上のトナー像を紙に転写、その後、熱、圧力等による定着工程を経て印刷画像を得る電子写真方式が広く採用されている。
【0003】
この電子写真システムは、繰り返し使用において感光体表面が帯電工程におけるコロナ曝露や現像工程におけるトナーフィルミング等種々の原因により徐々に劣化させられる事になる。従来使用されているセレン系感光体や有機感光体は、表面硬度が極端に高くないため複写工程中の種々の摺擦力により汚染された表面が削り取られ、本来の印字操作に関して問題として現れることはなかった。しかしこの種の感光体は前述の通り表面硬度が高くないため、耐久性に乏しく、また、取り扱いも多くの注意を払う必要があり面倒である。その結果、アモルファスシリコン感光体の使用が強く望まれるようになってきた。アモルファスシリコン(以下a−Si)感光体は、従来のセレン系感光体や有機感光体と異なり、無公害で、かつ高い光感度を有し、更にビッカース硬度が1500〜2000と非常に硬い等、耐久性・取り扱い性等に対して多くの優れた特性を有しており、理想的な感光体材料と考えられ、実用化が広がっている。一方、a−Si感光体も繰り返し使用において、表面層の酸化による水分の吸着や、コロナ放電によって発生するイオン物質の付着等の表面劣化が観測されており、その結果印字画像において、鮮明な画像が得られない、いわゆる画像流れ現像として現れてくることがわかっている。a−Si感光体の場合はいったん劣化した表面層は、その硬度が高いため連続プリントでの摺擦力では研磨・クリーニングすることはできない。よってこの対策のため、感光体内部にヒーターを組み込み、感光体の表面温度を40〜50℃に加熱し、トラブルの発生を防いできた。ヒーターを無くす試みとして、a−Si感光体表面層の構造についての提案があったが(特許文献1〜3)、実用化には至っていない。
【0004】
【特許文献1】
特開昭62−168161号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開昭62−272275号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開昭63−186252号公報(特許請求の範囲)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アモルファスシリコンドラムを用いた場合でも、劣化したドラム表面を適度に研磨し、ドラムヒーターを使用しなくても常に鮮明な画像が得られる技術を提供することを目的としている。複写機・プリンターの小型化、パーソナル化の中でドラムヒーターを使用すると、該システムが複雑になってしまうという問題があった。又、ヒーターの昇温には一定の時間を要し電源を入れてからプリントするまでの時間(ウォームアップタイム)が長く、そのため消費電力を要するという問題もあった。また、感光体を加熱すると、トナーのTg温度(ガラス転移温度)近くまで昇温されるために、感光体表面にトナーが固着してしまうという問題もあった。前述の目的の通り、本発明はこれらの問題点を解決するためになされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のアモルファスシリコン感光体を用いた電子写真システムは、形状係数SF1(丸さの度合い)を255〜300の範囲内の値とし、かつSF2(凹凸の度合い)を210〜250の範囲内の値としたトナー原粉に対し研磨クリーニング剤としての酸化チタン及びシリカ粉末としての疎水性シリカを外添した静電潜像現像用トナーを用い、当該トナーと、研磨クリーニング剤粒子とを共に現像した後、トナーの転写工程において、トナーと、研磨クリーニング剤粒子とを分離させるとともに、ドラムヒーターを使用しないことにより、アモルファスシリコン感光体を使用した場合でも、劣化した感光体表面を適度に研磨・クリーニングする事ができ、ドラムヒーター無しの状態でも常に安定した画像形成が可能になることを見出した。感光体を効率よく研磨・クリーニングするためには、トナーに添加された研磨クリーニング剤粒子がトナーと共に現像された後、転写工程においてトナーと分離させる必要がある。つまり、トナーのみが転写材に転移され、研磨クリーニング剤は廃棄トナー側に回り込みクリーニングブレード部や、摺擦ローラー等が存在するシステムにおいてはその部分に、いかにより高い濃度で研磨剤を存在させるかという事がドラム表面の研磨・クリーニング性に大きく関与するのである。
【0007】
転写工程において、トナーと研磨クリーニング剤を分離させる手段として研磨剤の抵抗値、平均粒度のファクターに加え、トナー原粉の形状が大きく関わっていることがわかった。トナー形状が不定形の場合、図1のようにトナー原粉のくぼみ等に研磨クリーニング剤が偏在し、確保され、研磨クリーニング剤の物性を所定の値に設定しても転写時にトナーから分離しづらくなる。これに対してトナー原粉にある程度球形化が進んだものを使用すると、図2のように研磨クリーニング剤はトナー原粉表面に均一に分散し、その結果転写工程でのトナー原粉からの分離が容易に行われるのである。
【0008】
今回、トナーの形状分析にルーゼックス形状分析装置を使用し、SF1(丸さ度合い)とSF2(凹凸度合い)を測定し、その時の研磨クリーニング剤の転写性との関連を調査した。SF1を255〜300の範囲内の値とし、かつSF2を210〜250の範囲内の値とするトナー原粉を使用したとき、廃棄トナー側の研磨クリーニング剤濃度が高くなり、ドラム表面の研磨・クリーニングが効率よく行われることがわかった。ここで、丸さの度合を示すSF1は、以下の数1のようにして算出され、これを図3を参照して説明する。
【0009】
【数1】
(A :面積
ML:最大長径)
【0010】
また、凹凸の度合を示すSF2は、以下の数2のようにして算出され、これを図4を参照して説明する。
【0011】
【数2】
(A :面積
PM:最大長を取る断面状態における外周)
【0012】
研磨クリーニング剤の抵抗を1×102 〜1×1010(Ω・cm)に限定する理由として、転写プロセスにおいて、非転写材の抵抗が1×1010Ω・cmを超えた場合には、転写効率が急速に低下することが一般的に知られている。また、抵抗が1×102Ω・cm未満では、添加量にもよるが、トナーの帯電性を低下させ、十分な現像性が得られない。このような研磨剤として、炭化珪素(SiC)、マグネナイト(Fe3O4)、酸化チタン(TiO2)、酸化スズ(SnO2)、表面導電処理を施した無機粉体などがある。
【0013】
また、ドラムヒーターを使用しない電子写真システムに静電潜像現像用トナーに使用するにあたり、シリカ微粉末について、1次粒子径が100(nm)以下の疎水性シリカであることが好ましく、トナーに対する添加量が0.3〜2重量%であることが好ましく、さらには、1種類単独、または2種以上の併用で使用されていることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
特に、アモルファスシリコン感光体の表面層(最表面)の元素比率が下記組成式(I)として表された場合、Xが0.95≦X<1であって、又、最表面のビッカース硬度が300以下であって、表面層の光導電層に接する側の硬度が大きく、自由表面側に向かって徐々に硬度が小さくなることを特徴とする感光体と組み合わせることにより、アモルファスシリコン感光体の長所である耐久性を維持しながら、ドラムヒーター無しの状態で、高湿環境での印字テストにおいても、画像流れの全く生じない、優れた印字品質を保持する事ができる。
【0015】
【化2】
【0016】
【実施例】
以下の本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0017】
[実施例1]
スチレン/アクリル樹脂 100重量部
ニグロシン染料 3重量部
ポリプロピレンワックス 5重量部
カーボンブラック 8重量部
上記組成からなる混合物を2軸押し出し機にて溶融混練した。これを冷却し粗粉砕した後、機械式粉砕機を用いて中粉砕、微粉砕を行い、平均粒度7ミクロンでSF1:275、SF2:210の形状係数を持つトナーを得た。このトナーに疎水性シリカ0.5%と、体積抵抗(体積固有抵抗)1.9×103Ωcmで平均粒径0.35ミクロンの導電性TiO2を2%添加し、ヘンシェルミキサーで混合した。このようにして得られたトナー5部を95部のキャリアと混合し、2成分現像剤を作製し京セラ製a−Si感光体搭載プリンターFS−1550の改造機を用いて画像評価を行なった。通常環境にて5万枚のプリントを行った後、32.5℃−80%RHの環境に10時間放置し、画像サンプルを取り画像流れの有無を確認したところ全く画像流れ現像は見られなかった。ドラム表面を観察したところ、キズ等の表面異常は観測されなかった。
【0018】
[実施例2]
スチレン/アクリル樹脂 100重量部
マグネタイト 60重量部
ニグロシン染料 3重量部
ポリプロピレンワックス 5重量部
上記の組成からなる混合物から、実施例1と同様の方法によって平均粒径7μmのトナーを作製した。形状係数はSF1:255、SF2:230となった。このトナー原粉に実施例1と同じ外添処理を行い、a−Siドラム搭載プリンターFS−1550を改造した一成分現像プロセスで、通常環境にて5万枚プリントした後32.5℃−80%RHの環境にて10時間放置し画像評価を行ったところ、特に異常は認められなかった。またドラム表面を観察したところ、キズなどの欠陥は観測されなかった。
【0019】
[比較例1]
実施例2と同じ組成からなる混合物を2軸押し出し機にて溶融混練した後、これを冷却し粗粉砕、中粉砕を経てジェットミルにて微粉砕を行い、平均粒径7μmのトナーを得た。このトナーの形状係数はSF1:330、SF2:265であった。実施例1、2と同じ外添処理を施し、同様な実験を行ったところ、画像、ドラム表面とも、異常が見られた。上記実施例・比較例の実験結果を表1にまとめる。
【0020】
【表1】
【0021】
【発明の効果】
本発明のトナーを使用することにより、a−Siドラムを搭載した複写機・プリンターにおいてドラムヒーターを使用しなくても、高温高湿下で画像流れのない鮮明な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 トナー原粉に対する研磨クリーニング剤の付着状態を示す説明図である。
【図2】 トナー原粉に対する研磨クリーニング剤の付着状態を示す説明図である。
【図3】 SF1について示す説明図である。
【図4】 SF2について示す説明図である。
Claims (6)
- ヒータレスのアモルファスシリコン感光体を用いた電子写真システムにおいて、形状係数SF1(丸さの度合い)を255〜300の範囲内の値とし、かつSF2(凹凸の度合い)を210〜250の範囲内の値としたトナー原粉に対して、研磨クリーニング剤としての酸化チタン及びシリカ微粉末としての疎水性シリカを外添した静電潜像現像用トナーを用い、
当該トナーと、研磨クリーニング剤としての酸化チタンとを共に現像した後、トナーの転写工程において、当該トナーと、研磨クリーニング剤としての酸化チタンとを分離させることを特徴とするドラムヒーターを使用しない電子写真システム。 - 上記研磨クリーニング剤について、体積抵抗(体積固有抵抗)が1×102〜1×1010(Ω・cm)の範囲にあり、平均粒度が0.1〜3.0(μm)の範囲にあり、かつトナーに対する添加量が0.3〜5重量%であることを特徴とする請求項1記載のドラムヒーターを使用しない電子写真システム。
- 上記シリカ微粉末について、1次粒子径が100(nm)以下の疎水性シリカであることを特徴とする請求項1または2記載のドラムヒーターを使用しない電子写真システム。
- 上記シリカ微粉末について、トナーに対する添加量が0.3〜2重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のドラムヒーターを使用しない電子写真システム。
- 上記シリカ微粉末について、1種類単独、または2種以上の併用で使用されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のドラムヒーターを使用しない電子写真システム。
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