JP3998190B2 - 燃焼手段からの排ガス中に含まれている粒子状物質中の窒素化合物の分析方法および分析装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大気中に浮遊する粒子状物質、特に車両に搭載された内燃機関(例えばディーゼルエンジンなど)などの燃焼手段から排出される排ガス中に含まれている粒子状物質(PM:パーティキュレートマター)の窒素化合物の分析方法および分析装置に関する。
【従来の技術】
【0002】
大気中には、種々の粒径の粒子状物質が存在するが、粒径10μm以下の粒子状物質が、人体に悪影響を及ぼす可能性が高いことが知られている。その中で、さらに粒径2.5μm以下の微小浮遊粒子状物質(Fine Particle)が特に都市部の大気中に多く存在しており、この微小浮遊粒子状物質がディーゼル車の排気ガス中に多く含まれている。前述のようなディーゼル車の排気ガス中の微小浮遊粒子状物質は、元素状炭素、炭化水素、窒素化合物や硫黄酸化物が含まれており、人体の健康に有害となる可能性が高いことが近年の研究で明らかになりつつある。
【0003】
このようなディーゼル車等の内燃機関からの排ガス中に含まれる粒子状物質を測定する手法として、エンジンから排出される高温の排ガスを清浄な空気で希釈し、この希釈排ガスを定容量吸引し、フィルタによってガス中の粒子状物質を捕集し、このフィルタを精密天秤などで秤量して、粒子状物質捕集前のフィルタとの重量差に基づいて定量分析するフィルタ重量法が一般に知られている。しかしながら、このようなフィルタ重量法においては、フィルタに吸着した水分が測定誤差として大きく影響するため、捕集前後のフィルタ中の水分を一定にするため定温・定湿処理が必要となる。また、低濃度PMの排ガスを測定する場合、例えば200mgのフィルタの上に捕集された0.1mgの粒子状物質を正確に秤量する必要があり、フィルタそのものの重量の測定誤差が粒子状物質の重量の測定誤差に大きな影響を与えるといった問題がある。
【0004】
これに対して、次に記載する特許文献1(特開2001−343319号)に示されるように、粒子状物質をテープ状のフィルタの異なる位置において捕集し、β線吸収方式などの検出手法を用いて検出する手法がある。
【特許文献1】
特開2001−343319号
【0005】
これに対して、次の特許文献2(特公平7−58264号)に記載されているように、排ガス中の微粒子をフィルタ上で捕集し、微粒子を加熱して微粒子中の炭素を酸化させて二酸化炭素に変換し、この二酸化炭素の濃度を二酸化炭素メータなどを用いて測定し、求めた二酸化炭素の濃度から、微粒子内の炭素の質量を算出し、排ガス中の微粒子濃度を検出する方法がある。
【特許文献2】
特公平7−58264号
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの手法では、排ガス等の中に含まれる粒子状物質の量(濃度)を検出することはできても、粒子状物質中に含まれる窒素化合物などの量を知ることはできない。
【0007】
これに対し、粒子状物質中の窒素化合物の量を検出する手法として、ガス中のPMに含まれている窒素化合物を溶媒(たとえば水)に溶融し、イオンクロマトグラフなどを用いて、硝酸イオン、アンモニウムイオンを測定し、これらの測定値から窒素化合物の量を算出する検出手法が試みられているが、検出に多大な時間を要するという欠点があり、フィルタに捕集された粒子状物質を容易に検出することは実質的に不可能である。
【0008】
本発明は、上述のような事情を鑑みたもので、ディーゼルエンジン等の燃焼手段からの排ガスに含まれる粒子状物質中の窒素化合物の量を、比較的短い時間で、正確に検出することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明において、請求項1に記載の発明では、内燃機関等の燃焼手段からの排ガスを採取し、この排ガス中に含まれる成分を分析する分析方法において、前記燃焼手段からの排ガスを取得するステップと、前記流路中に設けられたフィルタ手段により、排ガス中に含まれている粒子状物質を捕集するステップと、前記フィルタ手段により捕集された粒子状物質を加熱手段に投入し、該加熱手段に助燃ガスを供給して、粒子状物質中の窒素化合物を窒素酸化物に変換するステップと、変換された窒素酸化物を検出手段により検出するステップと、前記検出手段により検出した窒素酸化物の量についてのデータを、所定のデータベースに記憶された補正値および/または補正式を用いて、演算制御部において演算し補正するステップとからなる燃焼手段からの排ガス中に含まれている粒子状物質中の窒素化合物の分析方法において、
前記助燃ガスを供給する供給量や助燃ガス中に含まれている酸素濃度をパラメータとし、前記窒素化合物から窒素酸化物への変換に及ぼす影響を予め実験などによって求めて前記記憶部に記憶するとともに、該パラメータが及ぼす変換率への影響を用いて前記検出手段によって検出された値を補正し、補正された窒素酸化物濃度値を得ることを特徴とする燃焼手段からの排ガス中に含まれている粒子状物質中の窒素化合物の分析方法を提案している。これによって、粒子状物質中に含まれている窒素化合物を分析して得られる結果を、より適切に求めることが可能である。特に、ガスに含まれる粒子状物質中の炭素の濃度(または炭素の有無)のみではなく、例えば、助燃ガスを供給する供給量V[L/min]や、助燃ガス中に含まれている酸素の割合P[%]などの値をパラメータとした場合において、これらの値をパラメータが及ぼす変換率への影響を考慮したNOx濃度値が得られることができる。(段落〔0030〕)ここで、粒子状物質を加熱手段に投入する手法としては、フィルタ手段によって捕集された粒子状物質をフィルタ手段より外して直接投入してもよいし、フィルタ手段そのものを投入してもよい。また、フィルタ手段がフィルタケースとフィルタ本体から形成されるようなものである場合は、フィルタ本体のみを取り出して投入してもよい。
【0010】
また、前記補正値および/または補正式が、検出手段による窒素化合物の検出において、燃焼手段からの排ガス中に含まれる粒子状物質中の炭素化合物の濃度に応じて定められた値および/または式であってもよい。これによって、粒子状物質中に炭素化合物が含まれている場合に、この炭素化合物が窒素化合物の検出に及ぼす影響を低減させることが可能となり、より精度の高い検出を行うことができる。
【0011】
また、粒子状物質を加熱手段に投入する手法としては、フィルタ手段によって捕集された粒子状物質をフィルタ手段より外して直接投入してもよいし、フィルタ手段そのものを投入してもよい。また、フィルタ手段がフィルタケースとフィルタ本体から形成されるようなものである場合は、フィルタ本体のみを取り出して投入してもよいが、前記フィルタ(フィルタ手段もしくはフィルタ本体)が耐熱性を有しているのであれば、加熱手段による粒子状物質中の窒素化合物の加熱が、粒子状物質捕集後のフィルタ自体の投入により、加熱が行われるようにしてもよい。この場合、フィルタによって捕集された窒素化合物を、フィルタから分離することなく加熱することができるため、検出に必要な作業工数を低減させることができる。
【0012】
また、前記窒素化合物から変換された窒素酸化物が、還元手段において窒素ガスに還元されるとともに、該還元された窒素ガスが、ガスクロマトグラフにおいて分離された後に、検出手段において検出され、その測定値が前記記憶部に記憶され、演算処理され補正されることを特徴とする燃焼手段からの排ガス中に含まれている粒子状物質中の窒素化合物分析方法を提案している。
【0013】
さらに本発明は、エンジン排ガス中の窒素化合物の分析装置も含んでおり、燃焼手段からの排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタ手段を、ガス供給部から助燃ガスを供給しながら所定温度に加熱し、前記粒子状物質中の窒素化合物を窒素酸化物に変換するための加熱部と、前記加熱手段内で発生したガスを検出するための検出部と、所定の補正値および/または補正式を記憶するための記憶部を有する演算処理部とを有し、
前記助燃ガスを供給する供給量や助燃ガス中に含まれている酸素濃度をパラメータとし、前記窒素化合物から窒素酸化物への変換に及ぼす影響を予め実験などによって求めて前記記憶部に記憶するとともに、該パラメータが及ぼす変換率への影響を用いて前記検出手段によって検出された値を補正し、補正された窒素酸化物濃度値を得ることを特徴とする燃焼手段からの排ガス中に含まれている粒子状物質中の窒素化合物分析装置を提案している。
【0014】
さらに、前記所定の補正値および/または補正式が、検出手段による窒素酸化物の検出において、排ガス中に含まれる炭素の濃度に応じて定められた値または式であってもよい。これによって、窒素酸化物の検出によって得られた検出値を、より正確に求めることが可能となる。
【0015】
さらに、前記フィルタ手段が耐熱性を有し、加熱手段による粒子状物質中の窒素化合物の加熱が、粒子状物質捕集後のフィルタ手段を加熱することにより行われてもよい。ここでいうフィルタ手段とは、フィルタそのものであってもよいし、フィルタケースとフィルタ本体とから形成されるものであってもよい。後者の場合、少なくともフィルタ本体が耐熱性を有しており、フィルタ本体のみを加熱することによって行うことになる。
【0016】
さらに、前記加熱部の下流に還元手段が設けられ、前述窒素化合物から変換された窒素酸化物は、還元手段において窒素ガスに還元されるとともに、該還元された窒素ガスは、さらにその下流に設けられたガスクロマトグラフにおいて分離された後に、検出手段において検出され、その測定値は前記記憶部に記憶され、演算処理され補正されることを特徴とする燃焼手段からの排ガス中に含まれている粒子状物質中の窒素化合物分析装置を提案している。
【0017】
本発明の原理に基づくエンジン排ガス中の窒素化合物分析方法および窒素化合物分析装置について、実施例を示しながら詳細を説明する。図1は、本発明に関する排ガス分析装置の一例であって、20は例えば自動車等に搭載される、排ガスSを排出するディーゼルエンジンなどの内燃機関、21は内燃機関1に連なる排気管である。22は排気管21に挿入接続され、排気管21中を流れる排ガスG1をサンプリングして取得するためのプローブで、その下流側において、サンプリングされた排ガスG1を希釈する希釈トンネル23に接続されている。24はこの希釈トンネル23の上流側に接続されている希釈用空気の供給管である。
【0018】
25は、希釈トンネル23の下流側に接続され、希釈された排ガスG1が流れるガス流路で、この流路25の下流側は二つの流路26、27に分岐し、それぞれの流路26,27に排ガスG1中に含まれる粒子状物質(PM)を捕集するためのフィルタ手段28,29が設けられている。このうち、一方の流路26は粒子状物質採取時の排気ガスG1を流すためのサンプルガス流路に、また、他方の流路27は粒子状物質を採取しない時の排気ガスG1を流すためのバイパス流路として用いられるよう、構成されている。なお、フィルタ手段は例えば耐熱性を有する石英などのフィルタ本体などより構成されている。
【0019】
30は、サンプルガス流路26、バイパス流路27の下流側に設けられる流路切り換え手段としての三方電磁弁で、その下流側はガス流路31に接続され、このガス流路31には、回転数制御によって吸引能力を変えることができる吸引ポンプ、例えばルーツブロアポンプ32と、測定精度の高い流量計、例えばベンチュリ計33とがこの順に設けられている。
【0020】
次に、図2を用いて本発明の実施形態の一例を説明する。1はエンジン排ガスG1中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタ手段28を加熱するための加熱炉(たとえば電気炉)であり、加熱用ヒータ2およびチャンバ3より構成されている。前記加熱用ヒータ2は、温度調整機構(図示していない)によってその発熱状態が制御され、加熱炉1内の温度を任意の所定温度に制御可能な構造となっている。本実施例では、加熱炉1内は、例えば700℃以上かつ1000℃以下,好ましくは800℃程度の一定温度に保つのが好ましい。
【0021】
4は、加熱炉1に対して助燃ガス(たとえばO2)を供給するガス供給部で、ガス供給部4から加熱炉1に助燃ガスを供給するガス供給路5には、例えば流量測定および流量制御の機能を備えた例えばマスフローコントローラなどの流量制御装置6が備えられており、およそ3L/minの助燃ガスが供給されている。ガス供給路5においては、必要に応じて電磁弁7などが備えられていてもよい。なお、フィルタ手段28に捕集された排ガスG1中の窒素化合物は、加熱炉1内において加熱されることにより、窒素酸化物(NO/NOx)となって排出される。なお、窒素化合物を窒素酸化物へより効率よく変換させるために、加熱炉1の後段に酸化触媒(図示せず)を設けてもよい。この場合、通常用いる酸化触媒として、例えば酸化鉄や二酸化マンガン、白金系触媒などが考えられる。
【0022】
また、ガス供給部4から供給する助燃ガスとしてO2を用いる場合、加熱炉1内における窒素化合物の加熱(燃焼)に対して過剰酸素とならないよう、適宜酸素濃度を変化させた助燃ガス(例えばAir(大気))を用いる必要がある。助燃ガス中の酸素濃度は、加熱炉1内において加熱された窒素化合物が窒素酸化物へ変換される効率に影響を及ぼすため、予め多種の酸素濃度を有する助燃ガスを用いて窒素化合物を加熱した場合の窒素化合物から窒素酸化物への変換効率を各々全て測定し、その測定値を記憶手段などに記憶させておくことが好ましい。
【0023】
8は、加熱炉1から排出されるガス(G2)が流れるガス流路で、その下流側において、窒素酸化物を検出するための検出手段9が接続されている。前記検出手段9は、ガスG2中の窒素酸化物(NO/NOx)を検出するための検出器であって、たとえば化学発光検出器(CLD)などの分析計が用いられる。10は、加熱炉1からのガスG2を吸引などの手段によって引き込むための負圧ポンプであって、単位時間あたりのガス吸引量が一定になるように設定されているとともに、検出手段9の内部を減圧している。
【0024】
なお、加熱炉1から検出手段9までをつなぐガス流路8は、例えばヒータなどの温調手段によって適宜の温度になるように加熱・保温できるように構成されていてもよい。これによって、加熱炉1内において生じたガスG2に含まれる成分の変化を防止することが可能となる。
【0025】
そして、11は検出手段9や流量制御装置6などからの信号に基づいて演算処理を行ったり、演算結果に基づいて制御信号を送信するための演算制御部で、例えばパソコンなどよりなる。この演算制御部には、記憶部12が内蔵または外付けで設けられており、演算処理に必要なデータを予め記憶させておき、適宜のタイミングでこれらのデータを読み出し、演算処理に用いることが可能な構成となっている。
【0026】
次に、フィルタ(フィルタ手段28)を加熱炉1内に手動もしくは自動によって設置した後、加熱するステップの詳細な説明を図3を用いて行う。図3は、ガス供給部4より供給される助燃ガス(例えばO2)が、ガス供給路5を経由して試料載置位置Mまで注入され、フィルタ(フィルタ手段28)が加熱用ヒータ2によって加熱されている様子を表す。ここで、助燃ガス(O2)はおよそ3L/min程度の一定量で供給されており、加熱ヒータによってフィルタは約1分程度加熱される。13は、加熱されたフィルタより発生したガスG2を効率良く酸化させるための酸化処理手段であって、例えば白金系触媒などが用いられる。フィルタを加熱することによって生じたガスG2は、酸化処理手段13を通過することで、フィルタに付着した粒子状物質の窒素化合物成分が効率よく酸化され、窒素酸化物となって検出手段9に流入される。
【0027】
なお、検出手段9として、例えば化学発光検出器(CLD)が用いられており、図4に示すような構成を有している。ガス流路8を経て検出手段9に流入されたガスG2は、コンバータ14を通過し、ガスG2中のNO2の大部分がNOに変換される。次に、ガスG2中のNOは、オゾン供給手段15から供給されるオゾンO3と反応し、以下の式1に記載の化学反応を起こす。
【式1】
NO+O3→NO2+O2およびNO2 *+O2
NO2 *→NO2+hν
【0028】
すなわち、励起された状態のNO2 *が基底状態のNO2になる際に発光する光の量は、ガスG2中に含まれるNOの量に比例し、この発光量を光電管などの電気検出手段9aを用いて検出し、NOの濃度、すなわちガスG2中のNOxの濃度を求める。なお、9bは光電管からの電気信号を増幅するための増幅器である。
【0029】
ここで、上記実施例において記載したNOxの濃度検出法について、種々の実験を繰り返した結果、以下の事実が判明した。すなわち、内燃機関20からの排ガスに含まれている粒子状物質に炭素Cが含まれている場合、粒子状物質中の窒素化合物を加熱した際に生じる窒素酸化物(NO/NOx)への変換に影響を及ぼす。ゆえに、炭素Cをある一定濃度含んだ粒子状物質を燃焼した場合の粒子状物質中の窒素化合物から窒素酸化物への変換効率と、炭素Cを全く含まない場合の粒子状物質を燃焼した場合の粒子状物質中の窒素化合物から窒素酸化物への変換効率をそれぞれ実験等によって求めておき、その各々の変換効率を演算制御部11内に設けられた記憶部12などに記憶させておき、測定対象のガス(排ガス)を実際に測定したときの測定値(ガスG2中のNOxの濃度)について、粒子状物質中の炭素の濃度によって、測定値を補正する必要がある。また、粒子状物質中の炭素の濃度の検出については、検出手段9により、ガス中(ガスG2中)に含まれるCO2濃度によって容易に求めることが可能である。また、より簡単に測定値の補正を行いたい場合には、粒子状物質中に炭素が含まれているか否かのみで測定値を補正してもよい。この場合においては、ガス中に含まれるCO2の濃度がある一定値以上である場合に、粒子状物質中に炭素が含まれていると判断することで、補正を行うことができる。
【0030】
このように、排ガス中のNOxの濃度検出を化学発光検出法を用いて行う場合、排ガス中の粒子状物質に含まれる炭素の影響を考慮する必要がある。さらに、今までの実験によると、粒子状物質中の窒素化合物を加熱した際に生じる窒素酸化物(NO/NOx)への変換に及ぼす要因は、ガスに含まれる粒子状物質中の炭素の濃度(または炭素の有無)のみではなく、他の要因も多々考えられる。例えば、助燃ガスを供給する供給量V[L/min]や、助燃ガス中に含まれている酸素の割合P[%]などが挙げられる。これらの値をパラメータとした場合において、排ガス中に含まれる粒子状物質中の窒素化合物を燃焼(加熱)した際に生じる窒素酸化物(NO/NOx)への変換に及ぼす影響を予め実験などによって求めておき、検出手段9によって検出された値を前記演算式(影響)によって補正すれば、上記パラメータが及ぼす変換率への影響を考慮したNOx濃度値が得られることになる。このような実験等によって予め求めた演算式は、演算制御部11内に設けられた記憶部12などに記憶され、適宜のタイミングで読み出され、補正などの演算に用いられる。
【0031】
図5は、前述のような化学発光検出法によって求められたNOxの量をグラフに表したものである。横軸は検出に要した時間T[秒]、縦軸は検出したNOxの濃度R[ppm]を示しており、特定の検出時間(例えば10秒間)内に検出されたNOxの検出値をグラフ状にプロットしている。これらのプロットした点によって描かれたグラフと、横軸とで囲まれた面積(積分値)を演算によって求めた値が、ガス2中に含まれているNOx成分量の値となる。なお、検出したNOxの成分量のうち、NOの成分量とNO2の成分量を同時に検出し、同一のグラフ上に示す。なお、粒子状物質中の窒素化合物を燃焼(加熱)した際に、他の窒素酸化物(例えばN2O)への変換が行われていないことが、他の分析方法(例えばFTIR)を用いて確認されている。
【0032】
次に、図6を用いて本発明の他の実施形態を説明する。なお、図1ないし図4における装置の構成と同一の部分については、同一の符号を付すと共に、説明は省略する。16は、図2における加熱炉1に代えて用いられる高周波誘導加熱装置などの加熱手段であって、誘導加熱炉16a、高周波電源部16b、電源部16c、出力設定装置16d、および自動制御手段16eによって構成されており、試料ガス中の成分の濃度を測定するために試料を誘導加熱炉内で燃焼させ、そのとき発生する燃焼ガスを検出手段に供給する構成を有している。なお、17はキャリアガスを供給するためのキャリアガス発生手段である。キャリアガスとしては、例えばヘリウムやアルゴンなどを用いられる。
【0033】
助燃ガスを供給するガス供給部4から助燃ガス(O2)が供給されたのち、加熱手段16内においてフィルタ手段28が加熱され、フィルタ手段28に捕集されたガスG1中に含まれる窒素化合物が燃焼される。このとき、加熱手段16においては、排ガスG1中の窒素化合物を加熱するための特定の加熱パターンに基づいて加熱を行うようにするのが好ましい。このような加熱は、高周波電源部16bが誘導加熱炉16a内のソレノイド(図示せず)に電力を供給することによって行われ、また、フィルタ手段28を加熱して得られたガスG2の量を自動制御手段16eなどによってモニタリングし、前記ガスの量に応じて電源部16cの制御を行い、高周波電源部16bからの電力供給量を制御する。前記加熱パターンは、自動制御手段16e内に設けられた記憶部(図示せず)内にプログラムの形式で保存されていてもよい。
【0034】
前述のような燃焼によって、排ガスG1内に含まれている窒素化合物は窒素酸化物(NOx)に、炭素は二酸化炭素(CO2)に変換される。この変換されたNOxは、還元手段18において窒素ガス(N2)に還元される。前記還元手段18は、例えば還元管や還元炉などが用いられる。
【0035】
還元手段18を通過したガスG2は、ガス吸収管(図示せず)を通過して除湿されたのち、ガスクロマトグラフ19を通過する。ガスクロマトグラフ19において、還元されたN2およびCO2が分離された後、流路8を通じて検出手段9’へ流入する。この実施例の場合、検出手段9’は、化学発光検出器に代えて熱伝導度検出器が用いられる。検出手段9’において検出されたN 2 の量は、演算処理部11などによって記憶され、適宜処理される。
【0036】
なお、本実施例の場合においては、排ガス中に含まれる粒子状物質中の炭素が、窒素化合物から窒素酸化物への変換(酸化)に影響を及ぼすことはない。このため、この実施例の場合においては、他の要素についての補正値または補正式を用いて測定値の補正を行うことが好ましい。この場合、考えられる補正のための要素としては、例えば加熱手段16によって加熱される加熱パターンに用いる加熱温度、加熱時間などが考えられる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によると、エンジン等の内燃機関からの排ガスを採取し、この排ガス中に含まれる成分を分析する分析方法において、排ガス中に含まれている粒子状物質を捕集したフィルタ手段を、加熱手段に投入して加熱することによって粒子状物質中の窒素化合物を酸化させて窒素酸化物に変換し、この窒素酸化物を検出手段により検出させたのち、検出したデータを、所定のデータベースに記憶された補正値を用いて補正することによって、窒素化合物が窒素酸化物に変換される際の、前記粒子状物質中に含まれている炭素や、助燃ガス中に含まれている酸素濃度などによる、変換効率への影響を低減することができる。これによって、前記排ガスに含まれている粒子状物質中の窒素化合物の量をより正確に求めることができる。
【0038】
また、酸化させた窒素酸化物を、還元手段によって窒素に変換し、この窒素を検出手段によって検出させることにより、前記排ガス中にふくまれている窒素化合物の量を求めてもよい。この場合、窒素化合物の検出速度が速くなり、短時間の測定により窒素化合物の量を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関するエンジン排ガス分析装置の全体構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態の一例を表す窒素化合物分析装置の構成を示す図である。
【図3】フィルタ手段を加熱するための加熱炉内を詳細に表した図である。
【図4】本発明に検出手段の一例として用いられる、化学発光検出器(CLD)の構造の概要を表した図である。
【図5】化学発光検出法によって求められたNOxの濃度を表すグラフである。
【図6】本発明の他の実施形態の一例を表す窒素化合物分析装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
1…加熱炉、4…ガス供給部、6…流量制御装置、9…検出手段、11…演算制御部、12…記憶部、18…還元手段
Claims (6)
- 燃焼手段からの排ガスを取得するステップと、
前記排ガスを採取する流路中に設けられたフィルタ手段により、排ガス中に含まれている粒子状物質を捕集するステップと、
前記フィルタ手段により捕集された粒子状物質を加熱手段に投入し、該加熱手段に助燃ガスを供給して、粒子状物質中の窒素化合物を窒素酸化物に変換するステップと、
変換された窒素酸化物を検出手段により検出するステップと、
前記検出手段により検出した窒素酸化物についてのデータを、所定の記憶部に記憶した補正値および/または補正式を用いて、演算制御部において演算し補正するステップと
からなる燃焼手段からの排ガス中に含まれている粒子状物質中の窒素化合物の分析方法において、
前記助燃ガスを供給する供給量や助燃ガス中に含まれている酸素濃度をパラメータとし、前記窒素化合物から窒素酸化物への変換に及ぼす影響を予め実験などによって求めて前記記憶部に記憶するとともに、該パラメータが及ぼす変換率への影響を用いて前記検出手段によって検出された値を補正し、補正された窒素酸化物濃度値を得ることを特徴とする燃焼手段からの排ガス中に含まれている粒子状物質中の窒素化合物の分析方法。 - 前記補正値および/または補正式が、検出手段による窒素酸化物の検出において、燃焼手段からの排ガスに含まれる粒子状物質中の炭素化合物の濃度に応じて定められた補正値および/または補正式であることを特徴とする請求項1記載の燃焼手段からの排ガス中に含まれている粒子状物質中の窒素化合物分析方法。
- 前記窒素化合物から変換された窒素酸化物が、還元手段において窒素ガスに還元されるとともに、該還元された窒素ガスが、ガスクロマトグラフにおいて分離された後に、検出手段において検出され、その測定値が前記記憶部に記憶され、演算処理され補正されることを特徴とする請求項1記載の燃焼手段からの排ガス中に含まれている粒子状物質中の窒素化合物分析方法。
- 燃焼手段からの排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタ手段を、ガス供給部から助燃ガスを供給しながら所定温度に加熱し、前記粒子状物質中の窒素化合物を窒素酸化物に変換するための加熱部と、前記加熱手段内で発生したガスを検出するための検出部と、所定の補正値および/または補正式を記憶するための記憶部を有する演算処理部とを有し、
前記助燃ガスを供給する供給量や助燃ガス中に含まれている酸素濃度をパラメータとし、前記窒素化合物から窒素酸化物への変換に及ぼす影響を予め実験などによって求めて前記記憶部に記憶するとともに、該パラメータが及ぼす変換率への影響を用いて前記検出手段によって検出された値を補正し、補正された窒素酸化物濃度値を得ることを特徴とする燃焼手段からの排ガス中に含まれている粒子状物質中の窒素化合物分析装置。 - 前記補正値および/または補正式が、検出部による窒素化合物の検出において、燃焼手段からの排ガス中に含まれる粒子状物質中の炭素の濃度に応じて定められた補正値およびまたは補正式であることを特徴とする請求項4記載の燃焼手段からの排ガス中に含まれている粒子状物質中の窒素化合物分析装置。
- 前記加熱部の下流に還元手段が設けられ、前述窒素化合物から変換された窒素酸化物は、還元手段において窒素ガスに還元されるとともに、該還元された窒素ガスは、さらにその 下流に設けられたガスクロマトグラフにおいて分離された後に、検出手段において検出され、その測定値は前記記憶部に記憶され、演算処理され補正されることを特徴とする請求項4記載の燃焼手段からの排ガス中に含まれている粒子状物質中の窒素化合物分析装置。
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