JP2002148250A5 - - Google Patents
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Description
【書類名】 明細書
【発明の名称】 エンジン排ガス中の粒子状物質の分析方法および装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタを加熱炉内に設け、まず、加熱炉内に不活性ガスを流しながらフィルタを所定温度で加熱して粒子状物質中の炭化水素を気化し、気化した炭化水素を酸化してCO2 とし、前記CO2 をガス分析部で分析し、その後、前記加熱炉内に酸素を流しながら前記フィルタを加熱してこのフィルタ上に残った粒子状物質を酸化してCO2 を発生させ、このCO2 をガス分析部で分析するようにしたことを特徴とするエンジン排ガス中の粒子状物質の分析方法。
【請求項2】 加熱炉に対して不活性ガスまたは酸素を択一的に供給するガス供給部と、前記不活性ガスまたは酸素が供給されている状態においてエンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタを所定温度で加熱する加熱炉と、この加熱によって発生するガスを酸化する酸化処理部と、この酸化処理部からのガスが供給され、CO2 の濃度を測定するガス分析部とを含むエンジン排ガス中の粒子状物質の分析装置。
【請求項3】 エンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタを加熱炉内に設け、まず、加熱炉内に不活性ガスを流しながらフィルタを所定温度で加熱して粒子状物質中の炭化水素とサルフェートを気化し、気化した炭化水素を酸化してCO2 とする一方、気化したサルフェートを還元してSO2 とし、前記CO2 およびSO2 をガス分析部で分析し、その後、前記加熱炉内に酸素を流しながら前記フィルタを加熱してこのフィルタ上に残った粒子状物質を酸化してCO2 を発生させ、このCO2 をガス分析部で分析するようにしたことを特徴とするエンジン排ガス中の粒子状物質の分析方法。
【請求項4】 加熱炉内に不活性ガスを流しながらフィルタを加熱する際、まず、低沸点の炭化水素が気化する程度の低温加熱を行い、その後、高沸点の炭化水素が気化する程度の高温加熱を行うようにしてなる請求項1または3に記載のエンジン排ガス中の粒子状物質の分析方法。
【請求項5】 気化したサルフェートを還元してSO2 とする際に、加熱した石英綿に前記サルフェートを通すようにした請求項3または4に記載のエンジン排ガス中の粒子状物質の分析方法。
【請求項6】 加熱炉に対して不活性ガスまたは酸素を択一的に供給するガス供給部と、前記不活性ガスまたは酸素が供給されている状態においてエンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタを所定温度で加熱する加熱炉と、この加熱によって発生するガスを酸化または還元する酸化還元処理部と、この酸化還元処理部からのガスが供給され、CO2 およびSO2 の濃度を測定するガス分析部とを含むエンジン排ガス中の粒子状物質の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばディーゼルエンジンなどから排出されるガス中に含まれる粒子状物質(パーティキュレートマター、以下、PMという)の分析方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術とその問題点】
ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれるPMを測定する手法として、ディーゼルエンジンから排出される高温の排ガスを清浄な空気で希釈し、この希釈排ガスを定容量吸引してPMをフィルタによって捕集し、このフィルタを精密天秤などで秤量して、PM捕集前のフィルタとの重量差に基づいて定量分析するフィルタ重量法が一般に知られている。
【0003】
しかしながら、上記フィルタ重量法においては、フィルタに吸着した水分が測定誤差として大きく影響するため、捕集前後のフィルタ中の水分を一定にするため定温・定湿処理が必要となる。また、低濃度PMの排ガスを測定する場合、例えば200mgのフィルタの上に捕集された0.1mgのPMを正確に秤量する必要があり、フィルタそのものの重量の測定誤差がPM重量の測定誤差に大きな影響を与えるといった問題がある。
【0004】
これに対して、特公平7−58264号公報に示されるように、PMを捕集したフィルタを加熱炉において段階的に昇温加熱しPMを酸化してガス分析計で測定する手法がある。
【0005】
しかしながら、PMの大部分は、ドライスート(Dry Soot)と呼ばれる無機炭素(以下、ドライスートという)、SOF(Soluble Organic Fraction)と呼ばれる炭化水素(以下、SOFという)およびサルフェートと呼ばれる硫酸水和物(以下、サルフェートという)から構成されており、前記公報に記載された手法によっては、高沸点SOFの分離および酸化雰囲気中でのサルフェートの還元が困難であり、このため、PM中の大部分を占めるドライスート、SOFおよびサルフェートを個々に分別してその重量を測定することが困難であった。
【0006】
この発明は、上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、エンジン排ガス中に含まれるPMにおけるドライスート、SOFおよびサルフェートを、それらが微量であっても、個々に分別して簡便かつ精度よく測定することができるエンジン排ガス中の粒子状物質の分析方法および装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明のエンジン排ガス中のPMの分析方法は、エンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタを加熱炉内に設け、まず、加熱炉内に不活性ガスを流しながらフィルタを所定温度で加熱して粒子状物質中の炭化水素を気化し、気化した炭化水素を酸化してCO2 とし、前記CO2 をガス分析部で分析し、その後、前記加熱炉内に酸素を流しながら前記フィルタを加熱してこのフィルタ上に残った粒子状物質を酸化してCO2 を発生させ、このCO2 をガス分析部で分析するようにしている(請求項1)。
また、この発明のエンジン排ガス中のPMの分析方法は、エンジン排ガス中に含まれるPMを捕集したフィルタを加熱炉内に設け、まず、加熱炉内に不活性ガスを流しながらフィルタを所定温度で加熱してPM中のSOFとサルフェートを気化し、気化したSOFを酸化してCO2 とする一方、気化したサルフェートを還元してSO2 とし、前記CO2 およびSO2 をガス分析部で分析し、その後、前記加熱炉内に酸素を流しながら前記フィルタを加熱してこのフィルタ上に残ったPMを酸化してCO2 を発生させ、このCO2 をガス分析部で分析するようにしてもよい(請求項3)。
【0008】
そして、上記分析方法を実施する具体的な装置として、この発明では、加熱炉に対して不活性ガスまたは酸素を択一的に供給するガス供給部と、前記不活性ガスまたは酸素が供給されている状態においてエンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタを所定温度で加熱する加熱炉と、この加熱によって発生するガスを酸化する酸化処理部と、この酸化処理部からのガスが供給され、CO2 の濃度を測定するガス分析部とを含む装置を用いている(請求項2)。
また、加熱炉に対して不活性ガスまたは酸素を択一的に供給するガス供給部と、前記不活性ガスまたは酸素が供給されている状態においてエンジン排ガス中に含まれるPMを捕集したフィルタを所定温度で加熱する加熱炉と、この加熱によって発生するガスを酸化または還元する酸化還元処理部と、この酸化還元処理部からのガスが供給され、CO2 およびSO2 の濃度を測定するガス分析部とを含む装置を用いてもよい(請求項6)。
【0009】
この発明のエンジン排ガス中の粒子状物質の分析方法は、エンジンからの排ガスが流れる流路にフィルタを設置し、排ガスを定流量流して排ガス中のPMをフィルタで捕集する。このフィルタを例えば1000℃に保温された加熱炉内に設け、まず、加熱炉内に窒素ガスなどの不活性ガスを流しながらフィルタを加熱してPM中のSOFとサルフェートを気化し、気化したSOFを酸化してCO2 とする一方、気化したサルフェートを還元してSO2 とし、前記CO2 およびSO2 をガス分析部で分析することによって、CO2 濃度およびSO2 濃度が得られる。これらのCO2 濃度およびSO2 濃度と不活性ガスの全流量とからCO2 およびSO2 の重量が得られ、これらの重量に基づいて、フィルタに捕集されたSOFおよびサルフェートの重量が得られる。
【0010】
その後、前記加熱炉内に酸素を流しながら前記フィルタを加熱してこのフィルタ上に残ったPMを酸化してCO2 を発生させ、このCO2 をガス分析部で分析することにより、CO2 濃度が得られる。このCO2 濃度と酸素の全流量とからCO2 の重量が求められ、この重量に基づいてフィルタに捕集されたドライスートの重量が得られる。
【0011】
そして、上記エンジン排ガス中のPMの分析方法において、加熱炉内に不活性ガスを流しながらフィルタを加熱する際、まず、低沸点のSOFが気化する程度の低温加熱を行い、その後、高沸点のSOFが気化する程度の高温加熱を行うようにしてもよい(請求項4)。このようにした場合、高沸点のSOFと低沸点のSOFとを区別して測定することができる。
【0012】
また、上記エンジン排ガス中のPMの分析方法において、気化したサルフェートを還元してSO2 とする際に、加熱した石英綿に前記サルフェートを通すようにしてもよい(請求項5)。このようにした場合、サルフェートの加熱を効率良くかつ確実に行うことができ、サルフェートをより確実にSO2 へと還元させることが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1および図2は、この発明の第1の実施の形態を示している。まず、図1は、エンジン排ガス中の粒子状物質の分析装置の一つの構成例を概略的に示すもので、この図において、1はエンジン排ガス中に含まれるPMを捕集したフィルタ2(PMを捕集するための構成は後述する)を加熱するための加熱炉で、例えば電気炉よりなり、加熱用ヒータ3を備えている。この加熱用ヒータ3は、温度調整機構(図示していない)によってその発熱状態が制御され、したがって、加熱炉1内の温度は、任意の所定温度になるように設定される。
【0014】
4は加熱炉1に対して不活性ガス(例えば窒素ガス)または酸素を択一的に供給するガス供給部で、流量測定および流量制御の機能を備えたマスフローコントローラなどの流量制御装置5、6をそれぞれ備えた窒素ガス供給路7および酸素供給路8と、これらの供給路7,8の下流側および加熱炉1への接続流路9がそれぞれ接続される三方電磁弁10とから構成されている。
【0015】
11は加熱炉1において生じたガスが流れるガス流路で、その下流側は二つの互いに並列的なガス流路12,13に分岐している。そして、これらのガス流路12,13の下流側には、酸化還元処理部14およびガス分析部15がこの順に直列に設けられている。
【0016】
より詳しくは、一方のガス流路12には、マスフローメータなどの流量計16、例えばCuOなどの酸化触媒が設けられ、酸素を供給するための酸素供給路17が接続された酸化処理部14AおよびCO2 分析計15Aがこの順に設けられている。そして、他方のガス流路13には、前記流量計16と同様の流量計18、例えばカーボンなどの還元触媒が設けられた還元処理部14BおよびSO2 分析計15Bがこの順に設けられている。ここで用いるCO2 分析計15AおよびSO2 分析計15Bは、例えば非分散型赤外線ガス分析計(NDIRガス分析計)である。つまり、酸化還元処理部14においては、酸化処理部14Aと還元処理部14Bとが互いに並列的に配置され、ガス分析部15においては、CO2 分析計15AとSO2 分析計15Bとが互いに並列的に配置されている。
【0017】
なお、図示していないが、ガス流路9,11およびガス流路12,13のガス分析部13までの部分(酸化処理部14Aおよび還元処理部14Bも含む)は、例えばヒータによって適宜の温度になるように加熱・保温できるように構成されている。これは、加熱炉1において生じたガスに含まれる成分の変化を防止するとともに、酸化および還元処理が確実に行われるようにするためである。
【0018】
そして、19は装置各部からの信号(流量信号Qや濃度信号Cなど)に基づいて演算を行ったり、この演算結果に基づいて装置各部に対して制御信号を送出する演算制御部で、例えばパソコンよりなる。
【0019】
ところで、前記フィルタ2は、不純物の少ない例えば石英からなり、このフィルタ2にエンジン排ガス中に含まれるPMを捕集させるには、例えば、図2に示すように構成され、エンジンからの排ガスを定流量流すことができるサンプリング装置が用いられる。すなわち、図2において、20は例えば自動車に搭載されるディーゼルエンジン、21はこれに連なる排気管である。22は排気管21に挿入接続され、排気管21中を流れる排ガスGをサンプリングするためのプローブで、その下流側はサンリングされた排ガスGを希釈する希釈トンネル23に接続されている。24はこの希釈トンネル23の上流側に接続される希釈用空気の供給管である。
【0020】
25は希釈トンネル23の下流側に接続され、希釈されたサンプルガスSが流れるガス流路で、この流路25の下流側は二つの流路26,27に分岐し、それぞれの流路26,27にサンプルガスS中に含まれるPMを捕集するためのフィルタ装置28,29を設けて、一方の流路26はPM採取時の排気ガスを流すためのサンプルガス流路に、また、他方の流路27はPM非採取時の排気ガスを流すためのバイパス流路にそれぞれ構成されている。なお、フィルタ装置28,29のうち、一方のフィルタ28が測定用フィルタであり、他方のフィルタ装置29はダミーフィルタである。
【0021】
30はサンプルガス流路26、バイパス流路27の下流側に設けられる流路切換え手段としての三方電磁弁で、その下流側はガス流路31に接続され、このガス流路31には、回転数制御によって吸引能力を変えることができる吸引ポンプ、例えばルーツブロアポンプ32と、測定精度の高い流量計、例えばベンチュリ計33とがこの順に設けられている。
【0022】
次に、上記構成のエンジン排ガス中の粒子状物質の分析装置を用いた粒子状物質の分析方法について、図3をも参照しながら説明する。この図3は、加熱炉1内の雰囲気およびフィルタ2の加熱温度の時間的変化と、各雰囲気における出力の状態を示すものである。符号a,cはCO2 濃度出力、bはSO2 濃度出力である。
【0023】
まず、分析に先立って、図2に示したサンプリング装置を用いて、エンジン20からの排ガスGを定流量サンプリングして、この排ガスG中のPMをフィルタ2に捕集する。
【0024】
前記PMを捕集したフィルタ2を、内部が予め1000℃になるように加熱されている加熱炉1内に載置する。そして、まず、ガス供給部4の電磁弁10を動作させて窒素ガス供給路7を加熱炉1と連通させ、流量制御装置5を介して加熱炉1内に窒素ガスを供給する。このときの窒素ガスの流量は、流量制御装置5によって測定され、その結果は流量信号Qとしてパソコン19に送られる。
【0025】
前記加熱炉1内においては、窒素ガス雰囲気下においてフィルタ2が1000℃で加熱されることにより、フィルタ2に捕集されたPM中のSOFおよびサルフェートがガス化し、これらが窒素ガスとともにガス流路11に流れ出る。
【0026】
前記ガス流路11を流れ出たガス(ガス化したSOFおよびサルフェートや他の発生ガスを含んでいる)は、二分された状態でガス流路12,13を流れる。そして、一方のガス流路12を流れるガスは、流量計16を経て酸化還元処理部14の酸化処理部14Aに流れ込む。この酸化処理部14Aには酸素が供給されており、ガス化したSOFおよびサルフェートのうちのSOFが酸化触媒および酸素によって酸化されて、CO2 およびH2 Oになり、他のガスとともにガス分析部15のCO2 分析計15Aに送られ、CO2 濃度が測定される。また、他方のガス流路13を流れるガスは、流量計18を経て酸化還元処理部14の還元処理部14Bに流れ込み、ガス化したSOFおよびサルフェートのうちのサルフェートが還元触媒によって還元されて、SO2 になり、他のガスとともにガス分析部15のSO2 分析計15Bに送られ、SO2 濃度が測定される。
【0027】
なお、図4に示すように、前記還元処理部14Bにおいて、還元触媒を設ける代わりに、石英綿34を設けて、これにサルフェートを通すようにすることにより、サルフェートのSO2 への還元を促進するようにしてもよい。
【0028】
すなわち、サルフェートを気化することにより、SO3 が得られ、このSO3 に熱を加えることにより、
SO3 →SO2 +(1/2)O2 −23.1kcal
という反応が起こるが、SO 3 をヒータ35によって加熱した管36の内部に通すだけでは、SO 3 が十分に加熱されず、SO2 への還元が行われないまま分析計15Bへと送られるおそれがある。しかし、上記のように還元処理部14B内に石英綿を設けて、これをヒータで加熱しておき、この石英綿にSO 3 を通すようにすれば、SO 3 が石英綿を通過していくとき、管壁からの熱が石英綿によりSO 3 に効率良く伝わるようになり、SO 3 を効率よくかつ確実に加熱することができ、SO2 への還元がより確実に行われ、PM中のサルフェートを精度良く測定することが可能となる。もちろん、前記還元処理部14Bに、前記還元触媒と石英綿の両方を設けてもよい。
【0029】
そして、前記ガス分析部15からは、例えば図3において符号a,bで示すような形状のCO2 濃度およびSO2 濃度信号が出力され、これがパソコン19に入力される。パソコン19には、窒素ガスの流量を表す信号が入力されているので、この窒素ガス流量とCO2 濃度およびSO2 濃度とに基づいて、フィルタ2に捕集されたPM中のSOFおよびサルフェートの重量がそれぞれ求められる。
【0030】
次いで、前記ガス供給部4の電磁弁10を切り換えて、酸素供給路8を加熱炉1と連通させ、流量制御装置6を介して加熱炉1内に酸素を供給する。このときの酸素の流量は、流量制御装置6によって測定され、その結果はパソコン19に流量信号として送られる。 【0031】
前記加熱炉1内においては、酸素雰囲気下においてフィルタ2が1000℃で加熱されることにより、前記フィルタ2に残ったドライスートが燃焼(酸化)してCO2 およびCO(これはほとんど微量)が発生し、これらが酸素とともにガス流路11に流れ出る。
【0032】
前記ガス流路11を流れ出たガス(前記燃焼によって生じたCO2 およびCOや他の発生ガスを含んでいる)は、ガス流路12,13に分岐して流れる。そして、一方のガス流路12を流れるガスは、流量計16を経て酸化還元処理部14の酸化処理部14Aに流れ込む。この酸化処理部14Aには酸素が供給されているので、前記ガス中に含まれているCOが酸化されてCO2 となり、前記ガス中のCO2 と混ざり、他のガスとともにガス分析部15のCO2 分析計15Aに送られ、CO2 濃度が測定される。また、他方のガス流路13を流れるガスは、流量計18を経て酸化還元処理部14の還元処理部14Bに流れ込むが、この場合、なんら処理されることなくガス分析部15のSO2 分析計15Bに送られ、濃度測定されることなく廃棄される。
【0033】
そして、前記ガス分析部15からは、図3において符号cで示すような形状のCO2 濃度を表す信号が出力され、これがパソコン19に入力される。パソコン19には、酸素流量を表す信号が入力されているので、この酸素流量とCO2 濃度とに基づいて、フィルタ2に捕集されたPM中のドライスートの重量が求められる。
【0034】
この実施の形態においては、フィルタ2によるPMの捕集に際して、エンジン20からの排ガスGを希釈しているので、この希釈率を考慮に入れて、前記ドライスート、SOFおよびサルフェートの重量に基づいて演算を行うことにより、前記排ガスG中のドライスート、SOFおよびサルフェートの重量を得ることができる。
【0035】
上述のように、この発明のエンジン排ガス中の粒子状物質の分析方法および装置においては、PMを捕集したフィルタ2を加熱炉1内に収容し、まず、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気において前記フィルタ2を所定の温度で加熱して、SOFおよびサルフェートをガス化し、これらをさらにそれぞれ酸化または還元処理して、CO2 およびSO2 とし、これらの濃度を測定し、これらの濃度に基づいて、フィルタ2に捕集されたPM中のSOFおよびサルフェートの重量を求めるとともに、前記フィルタ2を加熱炉1内において酸素雰囲気下で加熱してCO2 を発生させ、このCO2 の濃度を測定し、この濃度に基づいて、フィルタ2に捕集されたPM中のドライスートの重量を求めるようにしているので、エンジン20の排ガスG中に含まれるPMにおけるドライスート、SOFおよびサルフェートを、個々に分別して簡便かつ精度よく測定することができる。
【0036】
上述の実施の形態においては、加熱炉1の下流側に設けられるガス流路11をガス流路12,13に二分し、一方のガス流路12に酸化処理部14AおよびCO2 分析計15Aを設け、他方のガス流路13に還元処理部14BおよびSO2 分析計15Bを設けていたため、装置の全体構成が複雑となる。この点を解消する構成を、第2の実施の形態として、図5を参照しながら説明する。
【0037】
図5において、33は加熱炉1の下流側のガス流路11に設けられる流量計で、第1の実施の形態における流量計16,18と同様のものである。そして、この流量計33の下流側に設けられる酸化還元処理部14には、白金(Pt)を主成分とする酸化還元触媒が設けられるとともに、酸素供給路17が接続されている。また、この酸化還元処理部14の下流側に設けられるガス分析部15は、CO2 分析計15AとSO2 分析計15Bとが直列的に配置されている。
【0038】
上記図5に示されるエンジン排ガス中の粒子状物質の分析装置を用いた粒子状物質の分析方法について説明すると、まず、分析に先立って、図2に示したサンプリング装置を用いて、エンジン20からの排ガスGを定流量サンプリングして、この排ガスG中のPMをフィルタ2に捕集する。
【0039】
前記PMを捕集したフィルタ2を、内部が予め1000℃になるように加熱されている加熱炉1内に載置する。そして、まず、ガス供給部4の電磁弁10を動作させて窒素ガス供給路7を加熱炉1と連通させ、流量制御装置5を介して加熱炉1内に窒素ガスを供給する。このときの窒素ガスの流量は、流量制御装置5によって測定され、その結果は流量信号としてパソコン19に送られる。
【0040】
前記加熱炉1内においては、窒素ガス雰囲気下においてフィルタ2が1000℃で加熱されることにより、フィルタ2に捕集されたPM中のSOFおよびサルフェートがガス化し、これらが他の発生ガスや窒素ガスとともにガス流路11に流れ出る。
【0041】
前記ガス流路11を流れ出たガス(ガス化したSOFおよびサルフェートを含んでいる)は、流量計33を経て酸化還元処理部14に流れ込む。この酸化還元処理部14には酸素が供給されているので、ガス化したSOFおよびサルフェートのうちのSOFが酸化還元触媒および酸素によって酸化されて、CO2 およびH2 Oとなる一方、前記サルフェートが酸化還元触媒によって還元されて、SO2 になる。これらのCO2 、H2 OおよびSO2 は、その状態で、ガス分析部15に送られる。
【0042】
そして、前記ガス分析部15に流れ込んだガスは、まず、CO2 分析計15AにおいてCO2 の濃度が測定され、次いで、SO2 分析計15BにおいてSO2 濃度が測定され、ガス分析部15からはCO2 濃度およびSO2 濃度信号が出力され、これがパソコン19に入力される。パソコン19には、窒素ガスの流量を表す信号が入力されているので、この窒素ガス流量とCO2 濃度およびSO2 濃度とに基づいて、フィルタ2に捕集されたPM中のSOFおよびサルフェートの重量がそれぞれ求められる。
【0043】
次いで、前記ガス供給部4の電磁弁10を切り換えて、酸素供給路8を加熱炉1と連通させ、流量制御装置6を介して加熱炉1内に酸素を供給する。このときの酸素の流量は、流量制御装置6によって測定され、その結果はパソコン19に流量信号として送られる。 【0044】
前記加熱炉1内においては、酸素雰囲気下においてフィルタ2が1000℃で加熱されることにより、前記フィルタ2に残ったドライスートが燃焼(酸化)してCO2 およびCO(これはほとんど微量)が発生し、これらが酸素とともにガス流路11に流れ出る。
【0045】
前記ガス流路11を流れ出たガス(前記燃焼によって生じたCO2 およびCOを含んでいる)は、流量計33を経て酸化還元処理部14に流れ込む。この酸化還元処理部14には酸素が供給されているので、前記ガス中に含まれているCOが酸化されてCO2 となり、前記ガス中のCO2 とともにガス分析部15のCO2 分析計15Aに送られ、CO2 濃度が測定され、この濃度信号はパソコン19に入力される。そして、CO2 分析計15Aを出たガスは、SO2 分析計15Bに送られるが、濃度測定されることなく廃棄される。
【0046】
前記パソコン19には、酸素の流量を表す信号が入力されているので、この酸素ガス流量と前記CO2 濃度とに基づいて、フィルタ2に捕集されたPM中のドライスートの重量が求められる。
【0047】
そして、この第2の実施の形態においても、フィルタ2によるPMの捕集に際して、エンジン20からの排ガスGを希釈しているので、上述の第1の実施の形態と同様に、希釈率を考慮に入れて、前記ドライスート、SOFおよびサルフェートの重量に基づいて演算を行うことにより、前記排ガスG中のドライスート、SOFおよびサルフェートの重量を得ることができる。
【0048】
上述のように、第2の実施の形態によっても、エンジン20の排ガスG中に含まれるPMにおけるドライスート、SOFおよびサルフェートを、個々に分別して簡便かつ精度よく測定することができる。
【0049】
そして、上述した第2の実施の形態においては、加熱炉1において生じたガスを途中で二分せず、また、ガス分析部15においては、直列に配置されたCO2 分析計15AおよびSO2 分析計15Bを順次通過させるようにしているので、装置の全体構成がシンプルであるといった利点がある。
【0050】
上述の第1および第2の実施の形態においては、最初に加熱炉1内で行う不活性ガス雰囲気でのフィルタ2の加熱を、一定の温度(1000℃)で行うようにしていたが、この加熱を、低温加熱と高温加熱との組み合わせによって行うようにしてもよい。以下、これを第3の実施の形態として説明する。
【0051】
ディーゼルエンジン20から排出される排ガスG中に含まれるSOFとしては、軽油に起因するものとエンジンオイルに起因するものとがあり、前者のSOFは比較的低温(例えば350℃程度)で気化し、後者のSOFは比較的高温(700℃程度)で気化する。前記第1および第2の実施の形態においては、加熱炉1内を不活性ガス雰囲気にしてフィルタ2を加熱する場合、フィルタ2を一定温度になるようにしていたため、軽油に起因するSOFとエンジンオイルに起因するSOFとを区別して測定することができなかった。 【0052】
これに対して、第3の実施の形態においては、不活性ガス雰囲気下でのフィルタ2の加熱を行う場合、フィルタ2の加熱温度を、低沸点のSOFが気化する程度の低温加熱を行い、その後、高沸点のSOFが気化する程度の高温加熱を行うのである。このように、不活性ガス雰囲気下でのフィルタ2の加熱を、低高2段階の温度で行うことにより、軽油に起因するSOFとエンジンオイルに起因するSOFとを区別して測定することができる。 【0053】
前記低高2段階の温度での加熱手法としては、例えば、加熱炉1内の温度を温度調整機構によって切り換え、最初に低温状態でフィルタ2を加熱し、次いで、高温状態でフィルタ2を加熱したり、あるいは、加熱炉1内に低温加熱部と高温加熱部とを設け、低温加熱部による加熱後、フィルタ2を高温加熱部に移動して加熱するなど適宜の方法がある。
【0054】
この発明は、上述の実施の形態に限られるものではなく、種々に変形して実施することができる。例えば、加熱炉1として、高周波加熱炉や赤外イメージ炉を用いてもよい。そして、加熱炉1に供給される不活性ガスとして、窒素ガスのほかに、アルゴンガスなど適宜のものを用いてもよい。
【0055】
また、窒素ガス雰囲気下においてフィルタ2を所定温度で加熱した際に生ずるガス化したSOFを酸化処理部14A、あるいは、酸化還元処理部14において酸化した場合、CO2 とともにH2 Oが生ずるが、このH2 Oは、CO2 やSO2 の測定に干渉成分となることがある。そこで、ガス分析部15に供給する前にこれを除去するようにしたり、また、ガス分析部15に設けられるCO2 分析計15AやSO2 分析計15Bとして、干渉成分の影響を補償できるような構成のガス分析計を用いてもよい。
【0056】
さらに、ガス分析部15に設けられるガス分析計として、フーリエ変換赤外分光光度計を用いたガス分析装置(FTIRガス分析装置)を設けてもよい。このFTIRガス分析装置は、これ1台でCO2 およびSO2 の濃度を同時に測定することができるとともに、NOX なども測定できるので、PM中に含まれるドライスート、SOFおよびサルフェートは勿論のこと、他の成分の濃度も一挙に測定することができる。また、ガス分析部15に設けられるガス分析計として、マススペクトロメータ(質量分析計)を用いてもよい。このマススペクトロメータにおいても、これ1台でCO2 、SO2 、NOX などの測定を同時に行うことができる。したがって、これらのFTIRガス分析装置あるいはマススペクトロメータをガス分析部15に設けた場合、装置全体の構成が簡略化される。
【0057】
上記3つの実施の形態では、粒子状物質中の炭化水素およびドライスートをCO2 に変化させ、ガス分析部15においてCO2 の分析(濃度測定)を行うとともに、粒子状物質中のサルフェートをSO2 に変化させ、ガス分析部15においてSO2 の分析(濃度測定)を行うようにしているが、このような構成に限るものではなく、例えば、前記ガス分析部15において、CO2 のみまたはSO2 のみを分析するようにしてもよい。
【0058】
前記ガス分析部15においてCO2 のみを分析する場合には、加熱炉1に対して不活性ガスまたは酸素を択一的に供給するガス供給部4と、前記不活性ガスまたは酸素が供給されている状態においてエンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタ2を所定温度で加熱する加熱炉1と、この加熱によって発生するガスを酸化する酸化処理部14Aと、この酸化処理部14Aからのガスが供給され、CO2 の濃度を測定するガス分析部15(CO2 分析計15A)とを含む装置を用いて、エンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタ2を加熱炉1内に設け(セットし)、まず、加熱炉1内に不活性ガスを流しながらフィルタ2を所定温度(例えば、約1000℃)で加熱して粒子状物質中の炭化水素を気化し、気化した炭化水素を酸化してCO2 とし、前記CO2 をガス分析部15(CO2 分析計15A)で分析し、その後、前記加熱炉1内に酸素を流しながら前記フィルタ2を加熱してこのフィルタ2上に残った粒子状物質(ドライスート)を酸化してCO2 を発生させ、このCO2 をガス分析部(CO2 分析計15A)で分析するようにすればよい。
【0059】
前記ガス分析部15においてSO2 のみを分析する場合には、加熱炉1に対して不活性ガスを供給するガス供給部と、前記不活性ガスが供給されている状態においてエンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタ2を所定温度で加熱する加熱炉1と、この加熱によって発生するガスを還元する還元処理部14Bと、この還元処理部14Bからのガスが供給され、SO2 の濃度を測定するガス分析部15(SO2 分析計15B)とを含む装置を用いて、エンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタ2を加熱炉1内に設け(セットし)、まず、加熱炉1内に不活性ガスを流しながらフィルタ2を所定温度(例えば、約1000℃)で加熱して粒子状物質中のサルフェートを気化し、気化したサルフェートを還元してSO2 とし、前記SO2 をガス分析部15(SO2 分析計15B)で分析するようにすればよい。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、PM中のドライスート、SOFおよびサルフェートを簡単かつ精度よく測定することができる。特に、従来のフィルタ重量法や冒頭に掲げた公報に開示された手法などでは測定できなかったPM中の大部分を占めるドライスート、SOFおよびサルフェートを個々に分別してその濃度または重量を測定することができるとともに、低濃度のPMも精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
この発明のエンジン排ガス中の粒子状物質の分析装置の一例を概略的に示す図である。 【図2】
フィルタにPMを捕集させるためのサンプリング装置の一例を概略的に示す図である。 【図3】
この発明の動作説明のための図である。
【図4】
この発明の還元処理部の他の例を概略的に示す図である。
【図5】
この発明のエンジン排ガス中の粒子状物質の分析装置の他の例を概略的に示す図である。
【符号の説明】
1…加熱炉、2…フィルタ、4…ガス供給部、14…酸化還元処理部、15…ガス分析部、G…エンジン排ガス。
【発明の名称】 エンジン排ガス中の粒子状物質の分析方法および装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタを加熱炉内に設け、まず、加熱炉内に不活性ガスを流しながらフィルタを所定温度で加熱して粒子状物質中の炭化水素を気化し、気化した炭化水素を酸化してCO2 とし、前記CO2 をガス分析部で分析し、その後、前記加熱炉内に酸素を流しながら前記フィルタを加熱してこのフィルタ上に残った粒子状物質を酸化してCO2 を発生させ、このCO2 をガス分析部で分析するようにしたことを特徴とするエンジン排ガス中の粒子状物質の分析方法。
【請求項2】 加熱炉に対して不活性ガスまたは酸素を択一的に供給するガス供給部と、前記不活性ガスまたは酸素が供給されている状態においてエンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタを所定温度で加熱する加熱炉と、この加熱によって発生するガスを酸化する酸化処理部と、この酸化処理部からのガスが供給され、CO2 の濃度を測定するガス分析部とを含むエンジン排ガス中の粒子状物質の分析装置。
【請求項3】 エンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタを加熱炉内に設け、まず、加熱炉内に不活性ガスを流しながらフィルタを所定温度で加熱して粒子状物質中の炭化水素とサルフェートを気化し、気化した炭化水素を酸化してCO2 とする一方、気化したサルフェートを還元してSO2 とし、前記CO2 およびSO2 をガス分析部で分析し、その後、前記加熱炉内に酸素を流しながら前記フィルタを加熱してこのフィルタ上に残った粒子状物質を酸化してCO2 を発生させ、このCO2 をガス分析部で分析するようにしたことを特徴とするエンジン排ガス中の粒子状物質の分析方法。
【請求項4】 加熱炉内に不活性ガスを流しながらフィルタを加熱する際、まず、低沸点の炭化水素が気化する程度の低温加熱を行い、その後、高沸点の炭化水素が気化する程度の高温加熱を行うようにしてなる請求項1または3に記載のエンジン排ガス中の粒子状物質の分析方法。
【請求項5】 気化したサルフェートを還元してSO2 とする際に、加熱した石英綿に前記サルフェートを通すようにした請求項3または4に記載のエンジン排ガス中の粒子状物質の分析方法。
【請求項6】 加熱炉に対して不活性ガスまたは酸素を択一的に供給するガス供給部と、前記不活性ガスまたは酸素が供給されている状態においてエンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタを所定温度で加熱する加熱炉と、この加熱によって発生するガスを酸化または還元する酸化還元処理部と、この酸化還元処理部からのガスが供給され、CO2 およびSO2 の濃度を測定するガス分析部とを含むエンジン排ガス中の粒子状物質の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばディーゼルエンジンなどから排出されるガス中に含まれる粒子状物質(パーティキュレートマター、以下、PMという)の分析方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術とその問題点】
ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれるPMを測定する手法として、ディーゼルエンジンから排出される高温の排ガスを清浄な空気で希釈し、この希釈排ガスを定容量吸引してPMをフィルタによって捕集し、このフィルタを精密天秤などで秤量して、PM捕集前のフィルタとの重量差に基づいて定量分析するフィルタ重量法が一般に知られている。
【0003】
しかしながら、上記フィルタ重量法においては、フィルタに吸着した水分が測定誤差として大きく影響するため、捕集前後のフィルタ中の水分を一定にするため定温・定湿処理が必要となる。また、低濃度PMの排ガスを測定する場合、例えば200mgのフィルタの上に捕集された0.1mgのPMを正確に秤量する必要があり、フィルタそのものの重量の測定誤差がPM重量の測定誤差に大きな影響を与えるといった問題がある。
【0004】
これに対して、特公平7−58264号公報に示されるように、PMを捕集したフィルタを加熱炉において段階的に昇温加熱しPMを酸化してガス分析計で測定する手法がある。
【0005】
しかしながら、PMの大部分は、ドライスート(Dry Soot)と呼ばれる無機炭素(以下、ドライスートという)、SOF(Soluble Organic Fraction)と呼ばれる炭化水素(以下、SOFという)およびサルフェートと呼ばれる硫酸水和物(以下、サルフェートという)から構成されており、前記公報に記載された手法によっては、高沸点SOFの分離および酸化雰囲気中でのサルフェートの還元が困難であり、このため、PM中の大部分を占めるドライスート、SOFおよびサルフェートを個々に分別してその重量を測定することが困難であった。
【0006】
この発明は、上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、エンジン排ガス中に含まれるPMにおけるドライスート、SOFおよびサルフェートを、それらが微量であっても、個々に分別して簡便かつ精度よく測定することができるエンジン排ガス中の粒子状物質の分析方法および装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明のエンジン排ガス中のPMの分析方法は、エンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタを加熱炉内に設け、まず、加熱炉内に不活性ガスを流しながらフィルタを所定温度で加熱して粒子状物質中の炭化水素を気化し、気化した炭化水素を酸化してCO2 とし、前記CO2 をガス分析部で分析し、その後、前記加熱炉内に酸素を流しながら前記フィルタを加熱してこのフィルタ上に残った粒子状物質を酸化してCO2 を発生させ、このCO2 をガス分析部で分析するようにしている(請求項1)。
また、この発明のエンジン排ガス中のPMの分析方法は、エンジン排ガス中に含まれるPMを捕集したフィルタを加熱炉内に設け、まず、加熱炉内に不活性ガスを流しながらフィルタを所定温度で加熱してPM中のSOFとサルフェートを気化し、気化したSOFを酸化してCO2 とする一方、気化したサルフェートを還元してSO2 とし、前記CO2 およびSO2 をガス分析部で分析し、その後、前記加熱炉内に酸素を流しながら前記フィルタを加熱してこのフィルタ上に残ったPMを酸化してCO2 を発生させ、このCO2 をガス分析部で分析するようにしてもよい(請求項3)。
【0008】
そして、上記分析方法を実施する具体的な装置として、この発明では、加熱炉に対して不活性ガスまたは酸素を択一的に供給するガス供給部と、前記不活性ガスまたは酸素が供給されている状態においてエンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタを所定温度で加熱する加熱炉と、この加熱によって発生するガスを酸化する酸化処理部と、この酸化処理部からのガスが供給され、CO2 の濃度を測定するガス分析部とを含む装置を用いている(請求項2)。
また、加熱炉に対して不活性ガスまたは酸素を択一的に供給するガス供給部と、前記不活性ガスまたは酸素が供給されている状態においてエンジン排ガス中に含まれるPMを捕集したフィルタを所定温度で加熱する加熱炉と、この加熱によって発生するガスを酸化または還元する酸化還元処理部と、この酸化還元処理部からのガスが供給され、CO2 およびSO2 の濃度を測定するガス分析部とを含む装置を用いてもよい(請求項6)。
【0009】
この発明のエンジン排ガス中の粒子状物質の分析方法は、エンジンからの排ガスが流れる流路にフィルタを設置し、排ガスを定流量流して排ガス中のPMをフィルタで捕集する。このフィルタを例えば1000℃に保温された加熱炉内に設け、まず、加熱炉内に窒素ガスなどの不活性ガスを流しながらフィルタを加熱してPM中のSOFとサルフェートを気化し、気化したSOFを酸化してCO2 とする一方、気化したサルフェートを還元してSO2 とし、前記CO2 およびSO2 をガス分析部で分析することによって、CO2 濃度およびSO2 濃度が得られる。これらのCO2 濃度およびSO2 濃度と不活性ガスの全流量とからCO2 およびSO2 の重量が得られ、これらの重量に基づいて、フィルタに捕集されたSOFおよびサルフェートの重量が得られる。
【0010】
その後、前記加熱炉内に酸素を流しながら前記フィルタを加熱してこのフィルタ上に残ったPMを酸化してCO2 を発生させ、このCO2 をガス分析部で分析することにより、CO2 濃度が得られる。このCO2 濃度と酸素の全流量とからCO2 の重量が求められ、この重量に基づいてフィルタに捕集されたドライスートの重量が得られる。
【0011】
そして、上記エンジン排ガス中のPMの分析方法において、加熱炉内に不活性ガスを流しながらフィルタを加熱する際、まず、低沸点のSOFが気化する程度の低温加熱を行い、その後、高沸点のSOFが気化する程度の高温加熱を行うようにしてもよい(請求項4)。このようにした場合、高沸点のSOFと低沸点のSOFとを区別して測定することができる。
【0012】
また、上記エンジン排ガス中のPMの分析方法において、気化したサルフェートを還元してSO2 とする際に、加熱した石英綿に前記サルフェートを通すようにしてもよい(請求項5)。このようにした場合、サルフェートの加熱を効率良くかつ確実に行うことができ、サルフェートをより確実にSO2 へと還元させることが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1および図2は、この発明の第1の実施の形態を示している。まず、図1は、エンジン排ガス中の粒子状物質の分析装置の一つの構成例を概略的に示すもので、この図において、1はエンジン排ガス中に含まれるPMを捕集したフィルタ2(PMを捕集するための構成は後述する)を加熱するための加熱炉で、例えば電気炉よりなり、加熱用ヒータ3を備えている。この加熱用ヒータ3は、温度調整機構(図示していない)によってその発熱状態が制御され、したがって、加熱炉1内の温度は、任意の所定温度になるように設定される。
【0014】
4は加熱炉1に対して不活性ガス(例えば窒素ガス)または酸素を択一的に供給するガス供給部で、流量測定および流量制御の機能を備えたマスフローコントローラなどの流量制御装置5、6をそれぞれ備えた窒素ガス供給路7および酸素供給路8と、これらの供給路7,8の下流側および加熱炉1への接続流路9がそれぞれ接続される三方電磁弁10とから構成されている。
【0015】
11は加熱炉1において生じたガスが流れるガス流路で、その下流側は二つの互いに並列的なガス流路12,13に分岐している。そして、これらのガス流路12,13の下流側には、酸化還元処理部14およびガス分析部15がこの順に直列に設けられている。
【0016】
より詳しくは、一方のガス流路12には、マスフローメータなどの流量計16、例えばCuOなどの酸化触媒が設けられ、酸素を供給するための酸素供給路17が接続された酸化処理部14AおよびCO2 分析計15Aがこの順に設けられている。そして、他方のガス流路13には、前記流量計16と同様の流量計18、例えばカーボンなどの還元触媒が設けられた還元処理部14BおよびSO2 分析計15Bがこの順に設けられている。ここで用いるCO2 分析計15AおよびSO2 分析計15Bは、例えば非分散型赤外線ガス分析計(NDIRガス分析計)である。つまり、酸化還元処理部14においては、酸化処理部14Aと還元処理部14Bとが互いに並列的に配置され、ガス分析部15においては、CO2 分析計15AとSO2 分析計15Bとが互いに並列的に配置されている。
【0017】
なお、図示していないが、ガス流路9,11およびガス流路12,13のガス分析部13までの部分(酸化処理部14Aおよび還元処理部14Bも含む)は、例えばヒータによって適宜の温度になるように加熱・保温できるように構成されている。これは、加熱炉1において生じたガスに含まれる成分の変化を防止するとともに、酸化および還元処理が確実に行われるようにするためである。
【0018】
そして、19は装置各部からの信号(流量信号Qや濃度信号Cなど)に基づいて演算を行ったり、この演算結果に基づいて装置各部に対して制御信号を送出する演算制御部で、例えばパソコンよりなる。
【0019】
ところで、前記フィルタ2は、不純物の少ない例えば石英からなり、このフィルタ2にエンジン排ガス中に含まれるPMを捕集させるには、例えば、図2に示すように構成され、エンジンからの排ガスを定流量流すことができるサンプリング装置が用いられる。すなわち、図2において、20は例えば自動車に搭載されるディーゼルエンジン、21はこれに連なる排気管である。22は排気管21に挿入接続され、排気管21中を流れる排ガスGをサンプリングするためのプローブで、その下流側はサンリングされた排ガスGを希釈する希釈トンネル23に接続されている。24はこの希釈トンネル23の上流側に接続される希釈用空気の供給管である。
【0020】
25は希釈トンネル23の下流側に接続され、希釈されたサンプルガスSが流れるガス流路で、この流路25の下流側は二つの流路26,27に分岐し、それぞれの流路26,27にサンプルガスS中に含まれるPMを捕集するためのフィルタ装置28,29を設けて、一方の流路26はPM採取時の排気ガスを流すためのサンプルガス流路に、また、他方の流路27はPM非採取時の排気ガスを流すためのバイパス流路にそれぞれ構成されている。なお、フィルタ装置28,29のうち、一方のフィルタ28が測定用フィルタであり、他方のフィルタ装置29はダミーフィルタである。
【0021】
30はサンプルガス流路26、バイパス流路27の下流側に設けられる流路切換え手段としての三方電磁弁で、その下流側はガス流路31に接続され、このガス流路31には、回転数制御によって吸引能力を変えることができる吸引ポンプ、例えばルーツブロアポンプ32と、測定精度の高い流量計、例えばベンチュリ計33とがこの順に設けられている。
【0022】
次に、上記構成のエンジン排ガス中の粒子状物質の分析装置を用いた粒子状物質の分析方法について、図3をも参照しながら説明する。この図3は、加熱炉1内の雰囲気およびフィルタ2の加熱温度の時間的変化と、各雰囲気における出力の状態を示すものである。符号a,cはCO2 濃度出力、bはSO2 濃度出力である。
【0023】
まず、分析に先立って、図2に示したサンプリング装置を用いて、エンジン20からの排ガスGを定流量サンプリングして、この排ガスG中のPMをフィルタ2に捕集する。
【0024】
前記PMを捕集したフィルタ2を、内部が予め1000℃になるように加熱されている加熱炉1内に載置する。そして、まず、ガス供給部4の電磁弁10を動作させて窒素ガス供給路7を加熱炉1と連通させ、流量制御装置5を介して加熱炉1内に窒素ガスを供給する。このときの窒素ガスの流量は、流量制御装置5によって測定され、その結果は流量信号Qとしてパソコン19に送られる。
【0025】
前記加熱炉1内においては、窒素ガス雰囲気下においてフィルタ2が1000℃で加熱されることにより、フィルタ2に捕集されたPM中のSOFおよびサルフェートがガス化し、これらが窒素ガスとともにガス流路11に流れ出る。
【0026】
前記ガス流路11を流れ出たガス(ガス化したSOFおよびサルフェートや他の発生ガスを含んでいる)は、二分された状態でガス流路12,13を流れる。そして、一方のガス流路12を流れるガスは、流量計16を経て酸化還元処理部14の酸化処理部14Aに流れ込む。この酸化処理部14Aには酸素が供給されており、ガス化したSOFおよびサルフェートのうちのSOFが酸化触媒および酸素によって酸化されて、CO2 およびH2 Oになり、他のガスとともにガス分析部15のCO2 分析計15Aに送られ、CO2 濃度が測定される。また、他方のガス流路13を流れるガスは、流量計18を経て酸化還元処理部14の還元処理部14Bに流れ込み、ガス化したSOFおよびサルフェートのうちのサルフェートが還元触媒によって還元されて、SO2 になり、他のガスとともにガス分析部15のSO2 分析計15Bに送られ、SO2 濃度が測定される。
【0027】
なお、図4に示すように、前記還元処理部14Bにおいて、還元触媒を設ける代わりに、石英綿34を設けて、これにサルフェートを通すようにすることにより、サルフェートのSO2 への還元を促進するようにしてもよい。
【0028】
すなわち、サルフェートを気化することにより、SO3 が得られ、このSO3 に熱を加えることにより、
SO3 →SO2 +(1/2)O2 −23.1kcal
という反応が起こるが、SO 3 をヒータ35によって加熱した管36の内部に通すだけでは、SO 3 が十分に加熱されず、SO2 への還元が行われないまま分析計15Bへと送られるおそれがある。しかし、上記のように還元処理部14B内に石英綿を設けて、これをヒータで加熱しておき、この石英綿にSO 3 を通すようにすれば、SO 3 が石英綿を通過していくとき、管壁からの熱が石英綿によりSO 3 に効率良く伝わるようになり、SO 3 を効率よくかつ確実に加熱することができ、SO2 への還元がより確実に行われ、PM中のサルフェートを精度良く測定することが可能となる。もちろん、前記還元処理部14Bに、前記還元触媒と石英綿の両方を設けてもよい。
【0029】
そして、前記ガス分析部15からは、例えば図3において符号a,bで示すような形状のCO2 濃度およびSO2 濃度信号が出力され、これがパソコン19に入力される。パソコン19には、窒素ガスの流量を表す信号が入力されているので、この窒素ガス流量とCO2 濃度およびSO2 濃度とに基づいて、フィルタ2に捕集されたPM中のSOFおよびサルフェートの重量がそれぞれ求められる。
【0030】
次いで、前記ガス供給部4の電磁弁10を切り換えて、酸素供給路8を加熱炉1と連通させ、流量制御装置6を介して加熱炉1内に酸素を供給する。このときの酸素の流量は、流量制御装置6によって測定され、その結果はパソコン19に流量信号として送られる。 【0031】
前記加熱炉1内においては、酸素雰囲気下においてフィルタ2が1000℃で加熱されることにより、前記フィルタ2に残ったドライスートが燃焼(酸化)してCO2 およびCO(これはほとんど微量)が発生し、これらが酸素とともにガス流路11に流れ出る。
【0032】
前記ガス流路11を流れ出たガス(前記燃焼によって生じたCO2 およびCOや他の発生ガスを含んでいる)は、ガス流路12,13に分岐して流れる。そして、一方のガス流路12を流れるガスは、流量計16を経て酸化還元処理部14の酸化処理部14Aに流れ込む。この酸化処理部14Aには酸素が供給されているので、前記ガス中に含まれているCOが酸化されてCO2 となり、前記ガス中のCO2 と混ざり、他のガスとともにガス分析部15のCO2 分析計15Aに送られ、CO2 濃度が測定される。また、他方のガス流路13を流れるガスは、流量計18を経て酸化還元処理部14の還元処理部14Bに流れ込むが、この場合、なんら処理されることなくガス分析部15のSO2 分析計15Bに送られ、濃度測定されることなく廃棄される。
【0033】
そして、前記ガス分析部15からは、図3において符号cで示すような形状のCO2 濃度を表す信号が出力され、これがパソコン19に入力される。パソコン19には、酸素流量を表す信号が入力されているので、この酸素流量とCO2 濃度とに基づいて、フィルタ2に捕集されたPM中のドライスートの重量が求められる。
【0034】
この実施の形態においては、フィルタ2によるPMの捕集に際して、エンジン20からの排ガスGを希釈しているので、この希釈率を考慮に入れて、前記ドライスート、SOFおよびサルフェートの重量に基づいて演算を行うことにより、前記排ガスG中のドライスート、SOFおよびサルフェートの重量を得ることができる。
【0035】
上述のように、この発明のエンジン排ガス中の粒子状物質の分析方法および装置においては、PMを捕集したフィルタ2を加熱炉1内に収容し、まず、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気において前記フィルタ2を所定の温度で加熱して、SOFおよびサルフェートをガス化し、これらをさらにそれぞれ酸化または還元処理して、CO2 およびSO2 とし、これらの濃度を測定し、これらの濃度に基づいて、フィルタ2に捕集されたPM中のSOFおよびサルフェートの重量を求めるとともに、前記フィルタ2を加熱炉1内において酸素雰囲気下で加熱してCO2 を発生させ、このCO2 の濃度を測定し、この濃度に基づいて、フィルタ2に捕集されたPM中のドライスートの重量を求めるようにしているので、エンジン20の排ガスG中に含まれるPMにおけるドライスート、SOFおよびサルフェートを、個々に分別して簡便かつ精度よく測定することができる。
【0036】
上述の実施の形態においては、加熱炉1の下流側に設けられるガス流路11をガス流路12,13に二分し、一方のガス流路12に酸化処理部14AおよびCO2 分析計15Aを設け、他方のガス流路13に還元処理部14BおよびSO2 分析計15Bを設けていたため、装置の全体構成が複雑となる。この点を解消する構成を、第2の実施の形態として、図5を参照しながら説明する。
【0037】
図5において、33は加熱炉1の下流側のガス流路11に設けられる流量計で、第1の実施の形態における流量計16,18と同様のものである。そして、この流量計33の下流側に設けられる酸化還元処理部14には、白金(Pt)を主成分とする酸化還元触媒が設けられるとともに、酸素供給路17が接続されている。また、この酸化還元処理部14の下流側に設けられるガス分析部15は、CO2 分析計15AとSO2 分析計15Bとが直列的に配置されている。
【0038】
上記図5に示されるエンジン排ガス中の粒子状物質の分析装置を用いた粒子状物質の分析方法について説明すると、まず、分析に先立って、図2に示したサンプリング装置を用いて、エンジン20からの排ガスGを定流量サンプリングして、この排ガスG中のPMをフィルタ2に捕集する。
【0039】
前記PMを捕集したフィルタ2を、内部が予め1000℃になるように加熱されている加熱炉1内に載置する。そして、まず、ガス供給部4の電磁弁10を動作させて窒素ガス供給路7を加熱炉1と連通させ、流量制御装置5を介して加熱炉1内に窒素ガスを供給する。このときの窒素ガスの流量は、流量制御装置5によって測定され、その結果は流量信号としてパソコン19に送られる。
【0040】
前記加熱炉1内においては、窒素ガス雰囲気下においてフィルタ2が1000℃で加熱されることにより、フィルタ2に捕集されたPM中のSOFおよびサルフェートがガス化し、これらが他の発生ガスや窒素ガスとともにガス流路11に流れ出る。
【0041】
前記ガス流路11を流れ出たガス(ガス化したSOFおよびサルフェートを含んでいる)は、流量計33を経て酸化還元処理部14に流れ込む。この酸化還元処理部14には酸素が供給されているので、ガス化したSOFおよびサルフェートのうちのSOFが酸化還元触媒および酸素によって酸化されて、CO2 およびH2 Oとなる一方、前記サルフェートが酸化還元触媒によって還元されて、SO2 になる。これらのCO2 、H2 OおよびSO2 は、その状態で、ガス分析部15に送られる。
【0042】
そして、前記ガス分析部15に流れ込んだガスは、まず、CO2 分析計15AにおいてCO2 の濃度が測定され、次いで、SO2 分析計15BにおいてSO2 濃度が測定され、ガス分析部15からはCO2 濃度およびSO2 濃度信号が出力され、これがパソコン19に入力される。パソコン19には、窒素ガスの流量を表す信号が入力されているので、この窒素ガス流量とCO2 濃度およびSO2 濃度とに基づいて、フィルタ2に捕集されたPM中のSOFおよびサルフェートの重量がそれぞれ求められる。
【0043】
次いで、前記ガス供給部4の電磁弁10を切り換えて、酸素供給路8を加熱炉1と連通させ、流量制御装置6を介して加熱炉1内に酸素を供給する。このときの酸素の流量は、流量制御装置6によって測定され、その結果はパソコン19に流量信号として送られる。 【0044】
前記加熱炉1内においては、酸素雰囲気下においてフィルタ2が1000℃で加熱されることにより、前記フィルタ2に残ったドライスートが燃焼(酸化)してCO2 およびCO(これはほとんど微量)が発生し、これらが酸素とともにガス流路11に流れ出る。
【0045】
前記ガス流路11を流れ出たガス(前記燃焼によって生じたCO2 およびCOを含んでいる)は、流量計33を経て酸化還元処理部14に流れ込む。この酸化還元処理部14には酸素が供給されているので、前記ガス中に含まれているCOが酸化されてCO2 となり、前記ガス中のCO2 とともにガス分析部15のCO2 分析計15Aに送られ、CO2 濃度が測定され、この濃度信号はパソコン19に入力される。そして、CO2 分析計15Aを出たガスは、SO2 分析計15Bに送られるが、濃度測定されることなく廃棄される。
【0046】
前記パソコン19には、酸素の流量を表す信号が入力されているので、この酸素ガス流量と前記CO2 濃度とに基づいて、フィルタ2に捕集されたPM中のドライスートの重量が求められる。
【0047】
そして、この第2の実施の形態においても、フィルタ2によるPMの捕集に際して、エンジン20からの排ガスGを希釈しているので、上述の第1の実施の形態と同様に、希釈率を考慮に入れて、前記ドライスート、SOFおよびサルフェートの重量に基づいて演算を行うことにより、前記排ガスG中のドライスート、SOFおよびサルフェートの重量を得ることができる。
【0048】
上述のように、第2の実施の形態によっても、エンジン20の排ガスG中に含まれるPMにおけるドライスート、SOFおよびサルフェートを、個々に分別して簡便かつ精度よく測定することができる。
【0049】
そして、上述した第2の実施の形態においては、加熱炉1において生じたガスを途中で二分せず、また、ガス分析部15においては、直列に配置されたCO2 分析計15AおよびSO2 分析計15Bを順次通過させるようにしているので、装置の全体構成がシンプルであるといった利点がある。
【0050】
上述の第1および第2の実施の形態においては、最初に加熱炉1内で行う不活性ガス雰囲気でのフィルタ2の加熱を、一定の温度(1000℃)で行うようにしていたが、この加熱を、低温加熱と高温加熱との組み合わせによって行うようにしてもよい。以下、これを第3の実施の形態として説明する。
【0051】
ディーゼルエンジン20から排出される排ガスG中に含まれるSOFとしては、軽油に起因するものとエンジンオイルに起因するものとがあり、前者のSOFは比較的低温(例えば350℃程度)で気化し、後者のSOFは比較的高温(700℃程度)で気化する。前記第1および第2の実施の形態においては、加熱炉1内を不活性ガス雰囲気にしてフィルタ2を加熱する場合、フィルタ2を一定温度になるようにしていたため、軽油に起因するSOFとエンジンオイルに起因するSOFとを区別して測定することができなかった。 【0052】
これに対して、第3の実施の形態においては、不活性ガス雰囲気下でのフィルタ2の加熱を行う場合、フィルタ2の加熱温度を、低沸点のSOFが気化する程度の低温加熱を行い、その後、高沸点のSOFが気化する程度の高温加熱を行うのである。このように、不活性ガス雰囲気下でのフィルタ2の加熱を、低高2段階の温度で行うことにより、軽油に起因するSOFとエンジンオイルに起因するSOFとを区別して測定することができる。 【0053】
前記低高2段階の温度での加熱手法としては、例えば、加熱炉1内の温度を温度調整機構によって切り換え、最初に低温状態でフィルタ2を加熱し、次いで、高温状態でフィルタ2を加熱したり、あるいは、加熱炉1内に低温加熱部と高温加熱部とを設け、低温加熱部による加熱後、フィルタ2を高温加熱部に移動して加熱するなど適宜の方法がある。
【0054】
この発明は、上述の実施の形態に限られるものではなく、種々に変形して実施することができる。例えば、加熱炉1として、高周波加熱炉や赤外イメージ炉を用いてもよい。そして、加熱炉1に供給される不活性ガスとして、窒素ガスのほかに、アルゴンガスなど適宜のものを用いてもよい。
【0055】
また、窒素ガス雰囲気下においてフィルタ2を所定温度で加熱した際に生ずるガス化したSOFを酸化処理部14A、あるいは、酸化還元処理部14において酸化した場合、CO2 とともにH2 Oが生ずるが、このH2 Oは、CO2 やSO2 の測定に干渉成分となることがある。そこで、ガス分析部15に供給する前にこれを除去するようにしたり、また、ガス分析部15に設けられるCO2 分析計15AやSO2 分析計15Bとして、干渉成分の影響を補償できるような構成のガス分析計を用いてもよい。
【0056】
さらに、ガス分析部15に設けられるガス分析計として、フーリエ変換赤外分光光度計を用いたガス分析装置(FTIRガス分析装置)を設けてもよい。このFTIRガス分析装置は、これ1台でCO2 およびSO2 の濃度を同時に測定することができるとともに、NOX なども測定できるので、PM中に含まれるドライスート、SOFおよびサルフェートは勿論のこと、他の成分の濃度も一挙に測定することができる。また、ガス分析部15に設けられるガス分析計として、マススペクトロメータ(質量分析計)を用いてもよい。このマススペクトロメータにおいても、これ1台でCO2 、SO2 、NOX などの測定を同時に行うことができる。したがって、これらのFTIRガス分析装置あるいはマススペクトロメータをガス分析部15に設けた場合、装置全体の構成が簡略化される。
【0057】
上記3つの実施の形態では、粒子状物質中の炭化水素およびドライスートをCO2 に変化させ、ガス分析部15においてCO2 の分析(濃度測定)を行うとともに、粒子状物質中のサルフェートをSO2 に変化させ、ガス分析部15においてSO2 の分析(濃度測定)を行うようにしているが、このような構成に限るものではなく、例えば、前記ガス分析部15において、CO2 のみまたはSO2 のみを分析するようにしてもよい。
【0058】
前記ガス分析部15においてCO2 のみを分析する場合には、加熱炉1に対して不活性ガスまたは酸素を択一的に供給するガス供給部4と、前記不活性ガスまたは酸素が供給されている状態においてエンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタ2を所定温度で加熱する加熱炉1と、この加熱によって発生するガスを酸化する酸化処理部14Aと、この酸化処理部14Aからのガスが供給され、CO2 の濃度を測定するガス分析部15(CO2 分析計15A)とを含む装置を用いて、エンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタ2を加熱炉1内に設け(セットし)、まず、加熱炉1内に不活性ガスを流しながらフィルタ2を所定温度(例えば、約1000℃)で加熱して粒子状物質中の炭化水素を気化し、気化した炭化水素を酸化してCO2 とし、前記CO2 をガス分析部15(CO2 分析計15A)で分析し、その後、前記加熱炉1内に酸素を流しながら前記フィルタ2を加熱してこのフィルタ2上に残った粒子状物質(ドライスート)を酸化してCO2 を発生させ、このCO2 をガス分析部(CO2 分析計15A)で分析するようにすればよい。
【0059】
前記ガス分析部15においてSO2 のみを分析する場合には、加熱炉1に対して不活性ガスを供給するガス供給部と、前記不活性ガスが供給されている状態においてエンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタ2を所定温度で加熱する加熱炉1と、この加熱によって発生するガスを還元する還元処理部14Bと、この還元処理部14Bからのガスが供給され、SO2 の濃度を測定するガス分析部15(SO2 分析計15B)とを含む装置を用いて、エンジン排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集したフィルタ2を加熱炉1内に設け(セットし)、まず、加熱炉1内に不活性ガスを流しながらフィルタ2を所定温度(例えば、約1000℃)で加熱して粒子状物質中のサルフェートを気化し、気化したサルフェートを還元してSO2 とし、前記SO2 をガス分析部15(SO2 分析計15B)で分析するようにすればよい。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、PM中のドライスート、SOFおよびサルフェートを簡単かつ精度よく測定することができる。特に、従来のフィルタ重量法や冒頭に掲げた公報に開示された手法などでは測定できなかったPM中の大部分を占めるドライスート、SOFおよびサルフェートを個々に分別してその濃度または重量を測定することができるとともに、低濃度のPMも精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
この発明のエンジン排ガス中の粒子状物質の分析装置の一例を概略的に示す図である。 【図2】
フィルタにPMを捕集させるためのサンプリング装置の一例を概略的に示す図である。 【図3】
この発明の動作説明のための図である。
【図4】
この発明の還元処理部の他の例を概略的に示す図である。
【図5】
この発明のエンジン排ガス中の粒子状物質の分析装置の他の例を概略的に示す図である。
【符号の説明】
1…加熱炉、2…フィルタ、4…ガス供給部、14…酸化還元処理部、15…ガス分析部、G…エンジン排ガス。
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