JP3997644B2 - 現像ロール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真装置に用いられる現像ロールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、複写機やプリンター等の電子写真装置による複写はつぎのようにして行われる。すなわち、軸中心に回転する感光ドラムに原稿像を静電潜像として形成し、これにトナーを付着させてトナー像を形成する。ついで、このトナー像を複写紙に転写することにより複写が行われる。この場合、上記感光ドラム表面に対して静電潜像を形成させるためには、予め感光ドラム表面を帯電させ、この帯電部分に対して原稿像を光学系を介して投射し、光の当たった部分の帯電を打ち消すことにより静電潜像をつくるということが行われている。そして、感光ドラム上に静電潜像を現像し、可視像を形成する現像方法としては、使用する現像剤の種類に応じて従来より各種の方法が提案されている。その一例として、トナーのみを現像剤として用いる一成分現像方式が知られている。
【0003】
上記一成分現像方式における現像装置としては、例えば図9に示すような現像装置が用いられている。この現像装置は、一成分現像剤(トナー)71を担持する現像ロール72が、感光ドラム73と圧接され、かつ感光ドラム73側に開口したトナーボックス74の内部に収容されている。さらに、上記現像ロール72には、ポリウレタンフォーム、スポンジ等からなる発泡体を用いた弾性ロール75が当接され、この弾性ロール75によりトナー71が供給されるようになっている。一方、上記トナーボックス74の開口縁部上端に、層形成ブレード76が接着されている支持ホルダー77の一端(層形成ブレード76の接着部と反対側)が固定され、かつ他端側の層形成ブレード76は、その先端部(支持ホルダー77との接着部から延びた先の部分)が現像ロール72の外周面に圧接された構成となっている。
【0004】
このような構成の現像装置においては、つぎのようにして感光ドラム73の外周面にトナー像が形成される。すなわち、まず現像ロール72と感光ドラム73とが図示のとおり回転するとともに、上記層形成ブレード76と現像ロール72の外周面の摩擦によりトナー71が摩擦帯電し、かつ上記現像ロール72の外周面に均一なトナー層が形成される。そして、上記トナー層のトナー71により、感光ドラム73の外周面に形成された静電潜像がトナー像として顕在化する。このようにして、感光ドラム73の外周面にトナー像が形成される。このため、上記層形成ブレード76には、トナー71を摩擦帯電させるとともに、現像ロール72の外周面に均一なトナー層を形成させる機能が要求される。そこで、このような要求を満足するものとして、従来から、ステンレス等の金属製材料が用いられている。
【0005】
一方、上記現像ロール72の形成材料としては、従来よりウレタン樹脂が用いられている。最近の電子写真装置は小型化等の要請から低トルクモータが使用されることが多く、上記ウレタン樹脂の硬度が高すぎると、スタート時にロールが円滑に回転しなかったり、スティックスリップによるクリック音が発生する等の問題が生じる。そのため、低硬度のウレタン樹脂を用いた現像ロールが提案されている(特開平5−323777号公報、特開平3−187732号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の現像装置においては、現像ロール72、感光ドラム73、弾性ロール75および層形成ブレード76の各構成部材にバイアスがかかり、各構成部材間にバイアス差が生じている。そのため、感光ドラム73や層形成ブレード76を現像ロール72に圧接して使用する場合は、優れた耐電圧(以下「耐圧」と略す)性能を備えた現像ロール72を用いる必要がある。しかしながら、上記従来の現像ロール72は、一般に、ウレタンベースゴム層の表面にウレタン樹脂からなる表層が形成された2層構造であるため耐圧性能が劣り、耐圧性能を上げるために各層の抵抗を上げると抵抗むらが発生しやすく、複写画像に濃度むらが発生するという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、優れた耐圧性能を備え、かつ、複写画像に濃度むらが発生しない現像ロールの提供をその目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の現像ロールは、軸体の外周面にベースゴム層が形成され、上記ベースゴム層の外周に中間層が形成され、上記中間層の外周に表層が形成された現像ロールであって、上記ベースゴム層の体積電気抵抗が1×103 〜1×107 Ω・cmの範囲に設定され、上記中間層の表面電気抵抗が1×104 〜1×106 Ωの範囲に設定され、かつ、上記表層の体積電気抵抗が1×105 〜1×109 Ω・cmの範囲に設定されているという構成をとる。
【0009】
一般に、現像ロールを構成する各層の電気抵抗を高くすると耐圧性能が向上するが、逆に残留電荷が高くなり、ばらつきも大きくなるため、濃度の階調性が出にくくなったり、ベースゴム層の抵抗むらによって濃度むらが発生する等の問題が生じる。そこで、本発明者らは、濃度の階調性に影響を与えず、濃度むらが発生せず、しかも優れた耐圧性能を備えた現像ロールを得るべく、現像ロールの電気特性を中心に研究を重ねた。その結果、現像ロールをベースゴム層、中間層および表層の3層構造とするとともに、現像ロール全体の電気抵抗を中抵抗領域(1×105 〜1×108 Ω)に設定することが望ましいことを突き止めた。そして、各層の電気抵抗について鋭意研究を重ねた結果、ベースゴム層の体積電気抵抗を1×103 〜1×107 Ω・cmの範囲、中間層の表面電気抵抗を1×104 〜1×106 Ωの範囲に、表層の体積電気抵抗を1×105 〜1×109 Ω・cmの範囲にそれぞれ設定すると、現像ロール全体の電気抵抗が中抵抗(1×105 〜1×108 Ω)に設定され、所期の目的が達成できることを見出し本発明に到達した。
【0010】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0011】
本発明の現像ロールの一例を図1に示す。この現像ロールは、軸体1の外周面に沿ってベースゴム層2が形成され、その外周面に中間層3が形成され、さらにその外周面に表層4が形成されて構成されている。
【0012】
上記軸体1は特に制限するものではなく、例えば金属製の中実体からなる芯金や、内部を中空にくり抜いた金属製の円筒体等が用いられる。そして、その材料としては、ステンレス、アルミニウム、鉄にメッキを施したもの等があげられる。また、必要に応じ軸体1上に接着剤、プライマー等を塗布することができる。なお、接着剤、プライマー等は必要に応じて導電化してもよい。
【0013】
上記軸体1の外周面に形成されるベースゴム層2形成材料としては、特に制限はなく、例えばシリコーンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリウレタン系エラストマー等があげられる。なかでも、低硬度でへたりが少ないという点から、シリコーンゴムが特に好ましい。なお、ベースゴム層2形成材料としてシリコーンゴムを用いた場合には、シリコーンゴム表面をコロナ放電、プラズマ等により活性化させる工程や、さらにその後、プライマーを塗布する工程を行ってもよい。
【0014】
上記ベースゴム層2形成材料には導電剤を適宜に添加してもよい。上記導電剤としては、従来から用いられているカーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、c−TiO2 、c−ZnO、c−SnO2 、イオン導電剤(四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等)等があげられる。なお、上記「c−」は、導電性を有するという意味である。
【0015】
上記ベースゴム層2の外周に形成される中間層3形成材料としては、特に制限はなく、例えばアクリロニトリル−ブタジエンゴム(ニトリルゴム)(以下「NBR」と略す)、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(水素化ニトリルゴム)(以下「H−NBR」と略す)、ポリウレタン系エラストマー、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、ヒドリンゴム、ナイロン等があげられる。なかでも、接着性およびコーティング液の安定性の点から、H−NBRが特に好ましい。
【0016】
上記H−NBRは、アクリロニトリル量が40〜50%の範囲に設定され、かつ、ヨウ素価が18〜56mg/100mgの範囲に設定されたものが好ましく、特に好ましくはアクリロニトリル量が45〜50%の範囲で、かつ、ヨウ素価が18〜45mg/100mgの範囲である。そして、このようなH−NBRは例えばつぎのようにして製造することができる。すなわち、まずアクリロニトリルとブタジエンの乳化重合を行い、原料となるNBRを製造する。ついで、原料NBRをアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の溶剤に溶解し、Rh、Pd、Pt等の貴金属触媒の存在下において水素付加反応を行い(NBRに水素添加処理を施し)脱溶剤化することにより、目的とするH−NBRを製造することができる。なお、アクリロニトリル量は原料となるNBRによって上記範囲に設定でき、ヨウ素価(水素添加量)は反応させる水素濃度等によって上記範囲に設定することができる。
【0017】
上記中間層3形成材料には、導電剤、硫黄等の加硫剤、グアニジン、チアゾール、スルフェンアミド、ジチオカルバミン酸塩、チウラム等の加硫促進剤、ステアリン酸、亜鉛華(ZnO)、軟化剤等を適宜に添加してもよい。なお、導電剤としては、前記と同様のものが用いられる。
【0018】
上記中間層3の外周に形成される表層4としては特に限定はなく、例えばシリコーングラフトアクリルポリマー、アクリルグラフトシリコーンポリマー、アクリルゴム、ウレタン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0019】
上記シリコーングラフトアクリルポリマーとしては、アクリル系単量体から誘導される直鎖状の構造部分からなる主鎖に、シロキサンから誘導される構造部分からなる側鎖がグラフト化したものが好ましい。具体的には、下記の一般式(1)で表されるものが特に好ましい。
【0020】
【化1】
【0021】
上記一般式(1)において、繰り返し数kは1〜3000の正数であり、好ましくは1〜300の正数である。また、繰り返し数nは1〜3000の正数であり、好ましくは1〜300の正数である。
【0022】
上記一般式(1)において、Yはアクリル系単量体から誘導される直鎖状の構造部分である。上記アクリル系単量体としては、具体的には、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2,2−ジメチルプロピル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−tert−ブチルフェニル、アクリル酸2−ナフチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸4−メトキシフェニル、アクリル酸2−メトキシカルボニルフェニル、アクリル酸2−エトキシカルボニルフェニル、アクリル酸2−クロロフェニル、アクリル酸4−クロロフェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−シアノベンジル、アクリル酸4−シアノフェニル、アクリル酸p−トリル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル、アクリル酸2−シアノエチル、アクリル酸3−オキサブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸2,2−ジメチルプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−2−tert−ブチルフェニル、メタクリル酸2−ナフチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸4−メトキシフェニル、メタクリル酸2−メトキシカルボニルフェニル、メタクリル酸2−エトキシカルボニルフェニル、メタクリル酸2−クロロフェニル、メタクリル酸4−クロロフェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−シアノベンジル、メタクリル酸4−シアノフェニル、メタクリル酸p−トリル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−シアノエチル、メタクリル酸3−オキサブチル、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリルアミド、ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ピペリジルアクリルアミド、メタクリルアミド、4−カルボキシフェニルメタクリルアミド、4−メトキシカルボキシフェニルメタクリルアミド、メチルクロロアクリレート、エチル−α−クロロアクリレート、プロピル−α−クロロアクリレート、イソプロピル−α−クロロアクリレート、メチル−α−フルオロアクリレート、ブチル−α−ブトキシカルボニルメタクリレート、ブチル−α−シアノアクリレート、メチル−α−フェニルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソボニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のラジカル重合性単量体があげられる。そして、これらアクリル系単量体の1種が重合または2種以上が共重合することにより、Yで表される直鎖状の構造部分が構成される。
【0023】
上記一般式(1)において、Zはアクリル系単量体から誘導される構造部分であって、シロキサンから誘導される構造部分を有するものである。これは、下記の一般式(2)または一般式(3)で表されるものから誘導される。
【0024】
【化2】
【0025】
【化3】
【0026】
そして、上記一般式(3)または一般式(4)の好ましい具体例としては、下記の構造式(a)〜(r)に示すものがあげられる。
【0027】
【化4】
【0028】
【化5】
【0029】
【化6】
【0030】
【化7】
【0031】
上記一般式(1)で表される構造を備えたシリコーングラフトアクリルポリマーは、シロキサンから誘導される構造部分〔側鎖〕を除いたアクリルポリマー部分〔主鎖〕のガラス転移温度が、−35〜30℃の範囲にあることが好ましく、特に好ましくは−30〜0℃の範囲である。すなわち、上記アクリルポリマー部分〔主鎖〕のガラス転移温度が−35℃を下回ると、粘着性が大きくなり摩擦係数も大きくなるためトナーフィルミングが生じ、複写画像が悪くなり、30℃を越えると硬くなりすぎ、スタート時にロールが円滑に回転しなかったり、クリック音が発生する等の問題が生じるからである。また、他部品との圧接時に跡がロールに残りやすいという問題もある。
【0032】
上記シロキサンから誘導される構造部分〔側鎖〕を除いたアクリルポリマー部分〔主鎖〕のガラス転移温度は、例えばつぎのようにして設定することができる。すなわち、上記アクリルポリマー部分〔主鎖〕のガラス転移温度が−35〜30℃の範囲となるように、下記のFox式に従い、各アクリル系重合体の重量比率を設定することにより行われる。
【0033】
【数1】
1/Tg=(W1 /Tg1 )+(W2 /Tg2 )+…+(Wm /Tgm )
W1 +W2 +…+Wm =1
〔式中、Tgはアクリルポリマー部分のガラス転移温度を示し、Tg1 ,Tg2 ,…,Tgm は各アクリル系単量体のガラス転移温度を示す。また、W1 ,W2 ,…,Wm は各アクリル系単量体の重量比率を示す。〕
【0034】
上記ガラス転移温度(Tg )は、DSC(示差走査熱量測定)または動的粘弾性のtanδピークにより測定することができる。
【0035】
前記一般式(1)で表される構造を備えたシリコーングラフトアクリルポリマーの数平均分子量は、10,000〜300,000の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは30,000〜100,000の範囲である。すなわち、上記シリコーングラフトアクリルポリマーの数平均分子量が10,000を下回ると表層の強度が劣る傾向が見られ、300,000を超えると表層の形成が困難になるからである。
【0036】
上記一般式(1)で表される構造を備えたシリコーングラフトアクリルポリマーにおける(Z)n 部分の数平均分子量は、260〜100,000の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは2,000〜50,000の範囲である。すなわち、上記(Z)n 部分の数平均分子量が260を下回ると、柔軟性、低摩擦係数化、離型性等のシリコーンの効果が少なくなり、100,000を超えると、べたつきが生じるからである。
【0037】
上記(Z)n 部分の含有率は、上記シリコーングラフトアクリルポリマー全重量の5〜60重量%の範囲になるよう設定することが好ましい。すなわち、上記(Z)n 部分の含有率が5重量%を下回ると、柔軟性、低摩擦係数化、離型性等のシリコーンの効果が少なくなり、60重量%を超えるとシリコーン特有のべたつきが生じるからである。
【0038】
上記特定のシリコーングラフトアクリルポリマーは、例えばつぎのようにして製造することができる。すなわち、上記(Y)k 部分と(Z)n 部分を、アゾ系重合開始剤の存在下に、ラジカル共重合させることにより製造することができる。このような重合は、溶媒を用いる溶液重合法、バルク重合法、エマルジョン重合法等によって行うことが好ましく、特に好ましくは溶液重合法である。
【0039】
上記アゾ系重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス−4−シアノバレリン酸、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート、アゾビス−1−シクロヘキサカルボニトリル等があげられ、特にAIBNが好ましい。また、上記ラジカル共重合の際の重合温度は50〜150℃の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは60〜100℃である。また、重合時間は3〜100時間の範囲が好ましく、特に好ましくは5〜10時間である。
【0040】
なお、上記シリコーングラフトアクリルポリマーとしては、前記一般式(1)で表される構造を備えたものが好ましいが、この構造にさらに別のアクリル系単量体から誘導される直鎖状の構造部分〔(X)m 部分〕が連結された、下記の一般式(4)で表される構造を備えたものを使用することもできる。
【0041】
【化8】
【0042】
上記一般式(4)において、Xはアクリル系単量体から誘導される直鎖状の構造部分であり、上記アクリル系単量体としては、前記一般式(1)において例示したものと同様のものがあげられる。
【0043】
上記表層4の形成材料であるアクリルグラフトシリコーンポリマーとしては、特に限定はないが、シロキサンから誘導される直鎖状の構造部分からなる主鎖に、アクリル系単量体から誘導される構造部分からなる側鎖がグラフト化したものが好ましい。具体的には、下記の一般式(5)〜(7)で表されるものが特に好ましい。
【0044】
【化9】
【0045】
上記一般式(5)で表される構造部分の好ましい具体例としては、下記の構造式に示すものがあげられる。
【0046】
【化10】
【0047】
前記一般式(6)および一般式(7)におけるXは、水素またはハロゲン化炭化水素基、シアン化炭化水素基等の炭素官能性基を示す。上記ハロゲン化炭化水素基としては、例えばハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基、ハロゲン化アルケニル基等があげられ、上記シアン化炭化水素基としては、例えばシアノ基、シアン化アラルキル基、シアン化アリール基、シアン化アラルキル基、シアン化アルケニル基等があげられる。
【0048】
上記アクリルグラフトシリコーンポリマーは、アクリル系単量体から誘導される構造部分〔側鎖〕のガラス転移温度(Tg)が、30〜150℃の範囲に設定されていることが好ましく、特に好ましくは60〜120℃の範囲である。すなわち、上記ガラス転移温度(Tg)が30℃未満であると、低摩擦係数化、離型性、べたつき防止効果が減少する傾向がみられ、150℃を超えると、溶剤への溶解性が低下し、トナー離型性に劣る傾向がみられるからである。なお、上記アクリル系単量体から誘導される構造部分〔側鎖〕のガラス転移温度(Tg)の測定は、前述したFox式に準じて行うことができる。
【0049】
上記アクリルグラフトシリコーンポリマーにおいて、シロキサンから誘導される直鎖状の構造部分からなる主鎖の分子量は、1,500〜20,000の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは3,000〜10,000の範囲である。すなわち、上記分子量が1,500未満であると、適度な帯電性、低摩擦係数化、離型性等のシリコーンの効果が得にくくなり、20,000を超えると、相溶性が低下し、効果が減少したり、シリコーンのべたつきが生じる傾向がみられるからである。
【0050】
上記アクリルグラフトシリコーンポリマーにおける、アクリル系単量体から誘導される構造部分は、特に限定はなく、例えば下記の一般式(8)で表されるものがあげられる。上記アクリル系単量体としては、前述と同様のものがあげられ、これらアクリル系単量体の1種が重合または2種以上が共重合することにより、アクリル系単量体から誘導される構造部分が構成される。
【0051】
【化11】
【0052】
上記一般式(8)で表される構造部分の好ましい具体例としては、下記の構造式に示すものがあげられる。
【0053】
【化12】
【0054】
上記アクリルグラフトシリコーンポリマーにおいて、アクリル系単量体から誘導される構造部分からなる側鎖の分子量は、200〜20,000の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは1,000〜10,000の範囲である。すなわち、上記分子量が200未満であると、適度な帯電性が得られにくいため前述の効果が得にくくなり、20,000を超えると前述の効果が得にくくなるからである。
【0055】
上記アクリルグラフトシリコーンポリマーは、例えば前記シロキサンから誘導される構造部分と、アクリル系単量体から誘導される構造部分とを、前述のアゾ系重合開始剤の存在下に前述のラジカル共重合させることにより製造することができる。また、上記アクリルグラフトシリコーンポリマーは、例えば上記シロキサンから誘導される構造部分と、アクリル系単量体から誘導される構造部分とを、アニオン重合触媒の存在下にアニオン重合反応させることにより製造することもできる。上記アニオン重合触媒としては、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、メチル、エチル、プロピル、ブチル等の脂肪族炭化水素、ナフタリン、アントラセン、フェナントレン、トリフェニレン、ナフタセン、アセナフチレン、トランススチルベン、ビフェニル、スチレン、メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ベンゾニトリル、ジフェニルエチレン、ジフェニルブタジエン等の芳香族炭化水素等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0056】
このようにして得られるアクリルグラフトシリコーンポリマーは、分子量が3,000〜300,000の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは10,000〜100,000の範囲である。すなわち、上記分子量が3,000未満であると前述の効果が得にくくなり、ブリードして感光体を汚染する傾向がみられ、300,000を超えると、他の材料との相溶性が低下し、分離して低摩擦等の効果が得にくくなるからである。
【0057】
上記アクリルグラフトシリコーンポリマーにおいて、前記シロキサンから誘導される直鎖状の構造部分からなる主鎖と、アクリル系単量体から誘導される構造部分からなる側鎖との比率は、重量比で、主鎖/側鎖=5/95〜60/40の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは主鎖/側鎖=10/90〜40/60の範囲である。すなわち、主鎖の比率が60を超える(側鎖の比率が40を下回る)と、シリコーン成分が増えすぎ、他の材料との相溶性が悪くなる傾向がみられ、主鎖の比率が5を下回る(側鎖の比率が95を超える)と、シリコーン成分が減少するため適度な帯電性、離型性が得にくく、強度への効果が減少する傾向がみられるからである。
【0058】
上記表層4形成材料には、導電剤、帯電制御剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、補強剤、滑剤、離型剤、染料、顔料、難燃剤、オイル、架橋剤等を適宜に添加することもできる。上記導電剤としては前述と同様のものがあげられ、上記帯電制御剤としては、従来から用いられている四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、アジン系(ニグロシン系)化合物、アゾ化合物、オキシナフトエ酸金属錯体、界面活性剤(アニオン系、カチオン系、ノニオン系)等があげられ、上記架橋剤としては、イソシアネート基含有物や、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、−SH基等を含有する硬化剤があげられる。
【0059】
上記表層4形成材料は、例えばつぎのようにして作製することができる。すなわち、まず先に述べた方法に従いシリコーングラフトアクリルポリマー、アクリルグラフトシリコーンポリマー等を作製し、これらを有機溶剤に溶解する。ついで、必要により、導電剤、帯電制御剤等を加えたものをサンドミル等で分散することにより、塗工用のコーティング液を作製する。上記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン、メタノール、イソプロピルアルコール等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0060】
あるいは、上記シリコーングラフトアクリルポリマー、アクリルグラフトシリコーンポリマー、導電剤等を2軸混練機等で分散し、これらを前記有機溶剤に溶解することにより、塗工用のコーティング液を作製してもよい。
【0061】
そして、本発明の現像ロールは、例えばつぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、前記ベースゴム層2形成材料用の各成分をニーダー等の混練機を用いて混練し、ベースゴム層2形成材料を作製する。また、前記中間層3形成材料用の各成分をロール等の混練機を用いて混練し、この混合物に前記有機溶剤を加えて混合、攪拌することにより、中間層3形成材料(コーティング液)を作製する。さらに、先に述べた方法に従い、前記表層4形成材料(コーティング液)を作製する。
【0062】
つぎに、図2に示すように、軸体1を準備し、その外周面に必要に応じて接着剤、プライマー等を塗布した後、下蓋5を外嵌した円筒型6内に上記軸体1をセットする。つぎに、前記ベースゴム層2形成材料を注型等した後、上記円筒型6に上蓋7を外嵌する。ついで、上記ロール型全体を加熱して上記ベースゴム層2形成材料を加硫し(150〜220℃×30分)、ベースゴム層2を形成する。続いて、このベースゴム層2が形成された軸体1を脱型し、必要に応じ反応を完結させる(200℃×4時間)。ついで、必要に応じロール表面にコロナ放電処理を行う。さらに必要に応じロール表面にカップリング剤の塗布を行う。そして、上記ベースゴム層2の外周に中間層3形成材料となるコーティング液を塗布し、もしくは上記ベースゴム層2形成済みのロールを前記コーティング液中に浸漬して引き上げた後、乾燥および加熱処理を行うことにより、ベースゴム層2の外周に中間層3を形成する。さらに、上記中間層3の外周に表層4形成材料となるコーティング液を塗布し、もしくは上記中間層3形成済みのロールを前記コーティング液中に浸漬して引き上げた後、乾燥および加熱処理を行うことにより、中間層3の外周に表層4を形成する。上記コーティング液の塗布方法は、特に制限するものではなく、従来公知のディッピング法、スプレーコーティング法、ロールコート法等があげられる。このようにして、軸体1の外周面に沿ってベースゴム層2が形成され、その外周に中間層3が形成され、さらにその外周に表層4が形成された3層構造の現像ロールを作製することができる。
【0063】
本発明の現像ロールは、各層の電気抵抗が下記の範囲になるように製造する必要がある。上記ベースゴム層2の体積電気抵抗は1×103 〜1×107 Ω・cmの範囲に設定する必要があり、好ましくは1×104 〜1×106 Ω・cmの範囲である。すなわち、上記ベースゴム層2の体積電気抵抗が1×103 Ω・cm未満であると耐圧性能に劣り、1×107 Ω・cmを超えると、濃度むらが生じ、濃度の階調性に再現性がなくなるからである。また、上記中間層3の表面電気抵抗は1×104 〜1×106 Ωの範囲に設定する必要があり、好ましくは5×104 〜2×105 Ωの範囲である。すなわち、上記中間層3の表面電気抵抗が1×104 Ω未満であると耐圧性能に劣り、1×106 Ωを超えると濃度むらが生じるからである。そして、上記表層4の体積電気抵抗は1×105 〜1×109 Ω・cmの範囲に設定する必要があり、好ましくは1×106 〜1×108 Ω・cmの範囲である。すなわち、上記表層4の体積電気抵抗が1×105 Ω・cm未満であると耐圧性能に劣り、1×109 Ω・cmを超えると、電荷がたまりやすく残像が出たり、ベースゴム層の抵抗むらをひろいやすく濃度むらが発生するからである。
【0064】
なお、各層の電気抵抗は、つぎのようにして測定する。
【0065】
〔ベースゴム層の体積電気抵抗〕
図3に示すように、ステンレス板31上に、上記ベースゴム層形成材料からなるシート32(厚み2mm)を載置した後、上記ステンレス板31に10Vの電圧を印加し、上記シート32の体積電気抵抗を測定する。
【0066】
〔中間層の表面電気抵抗〕
図4に示すように、ポリエチレンテレフタレートフィルム41上に、上記中間層形成材料を塗布して塗膜42(厚み50〜60μm)を形成する。一方、長方形状の筐体43を準備し、筐体43の下面に2本の銅テープ44(10×50mm)を10mm間隔で貼りつける。そして、上記銅テープ44の1本に1000Vの電圧を印加したものを上記塗膜42上に荷重3000gで押圧し、塗膜42の表面電気抵抗を測定する。
【0067】
〔表層の体積電気抵抗〕
図5に示すように、導電性ポリエチレンテレフタレートフィルム(マイラーシート)21上に、上記表層形成材料を塗布して塗膜22(厚み50〜60μm)を形成する。そして、これをSME−8311電極23(東亜電波社製)で挟み、1Vの電圧を印加した時の電流を電流計24(KEITHLEY−6517、ケスレー社製)を用いて測定し、これを体積電気抵抗に換算する。なお、図において、25はアルミ箔であり、上記導電性ポリエチレンテレフタレートフィルム(マイラーシート)21とクリップ(図示せず)で固定されている。
【0068】
本発明の現像ロールにおいて、ベースゴム層2の厚みは、通常1〜15mmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは1〜5mmの範囲である。また、中間層3の厚みは、通常5〜40μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは10〜20μmの範囲である。そして、表層4の厚みは通常5〜30μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは5〜20μmの範囲である。
【0069】
本発明の現像ロールにおける硬度は、JIS Aによる硬度の測定値が、70(Hs:JIS A)以下の範囲にあるものが好ましく、特に好ましくは60(Hs:JIS A)以下の範囲である。
【0070】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0071】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記の繰り返し単位から構成されたシリコーングラフトアクリルポリマーを前述の方法に準じて作製した。
【0072】
【化13】
【0073】
【実施例1〜5、比較例1〜6】
まず、下記の表1〜表3に示す各成分を同表に示す割合で配合し、前記方法に従い各層の形成材料を調整した。そして、軸体となる芯金(直径10mm、SUS304製)を準備し、前記方法に従い、上記芯金上にベースゴム層を形成した。ついで、上記ベースゴム層の表面にコロナ放電処理を行った後、さらにカップリング剤の塗布を行った。そして、上記ベースゴム層の外周に中間層および表層を順次形成して3層構造の現像ロールを得た。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
このようにして得られた実施例品および比較例品の現像ロールについて、下記の基準に従い、残留電荷、残留電荷むら、ロールの電気抵抗、耐圧、画出時濃度むら、および画出時濃度階調性について比較評価を行った。これらの結果を、後記の表4〜表6に併せて示した。
【0078】
〔残留電荷〕
図6に示すように、現像ロール51を回転数60rpmで矢印方向に回転させながら、コロナ放電線(コロトロン)52を用いて100μAのコロナ電流を印加し現像ロール51の表面を帯電した。そして、表面電位計53により上記現像ロール51表面の残留電荷を測定した。なお、各層の残留電荷も上記と同様にして測定した。
【0079】
〔残留電荷むら〕
現像ロールの残留電荷の最大値と平均値の差を残留電荷むらとして表示した。
【0080】
〔ロールの電気抵抗〕
図7に示すような装置を用いて金属ロール法により測定した。すなわち、ステンレス製の金属ロール61上に現像ロール62を接触させ、現像ロールの両端を荷重700gで押圧した。ついで、上記現像ロール62の一端に100Vの電圧を印加しロールの電気抵抗を測定した。
【0081】
〔耐圧〕
図8(A),(B)に示した装置を用いて測定した。すなわち、接触していない2本のステンレス製の金属ロール61,61上に現像ロール62を載置し、現像ロール62の両端を荷重500gで押圧した。ついで、一方の金属ロール61に300Vの電圧を印加した時の電流値を測定した。そして、電流値が10μA未満の場合を○、電流値が10μA以上の場合を×として表示した。
【0082】
〔画出時濃度むら〕
現像ロールを電子写真複写機に組み込みハーフトーンの画像出しを行った。そして、マクベス濃度計で濃度を測定し、最大値と最小値の差が0.05以内の場合を○、0.05〜0.10の場合を△、0.1以上の場合を×として表示した。
【0083】
〔画出時濃度階調性〕
現像ロールを電子写真複写機に組み込みグレースケールの画像出しを行った。そして、色階調が10以上のものを○、7〜9のものを△、6以下のものを×として表示した。
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】
【0087】
上記表4〜表6の結果から、実施例品の現像ロールは、優れた耐圧性能を備え、しかも濃度むらが発生せず、濃度階調性にも優れていることがわかる。これに対して、比較例品の現像ロールは、耐圧、画出時濃度むら、画出時濃度階調性の少なくとも1つの特性に劣ることがわかる。
【0088】
【発明の効果】
以上のように、本発明の現像ロールは、ベースゴム層と中間層と表層の3層構造からなり、しかも上記ベースゴム層の体積電気抵抗が1×103 〜1×107 Ω・cmの範囲に設定され、上記中間層の表面電気抵抗が1×104 〜1×106 Ωの範囲に設定され、かつ、上記表層の体積電気抵抗が1×106 〜1×109 Ω・cmの範囲に設定されている。その結果、現像ロール全体の電気抵抗が中抵抗(1×105 〜1×108 Ω)となり、優れた耐圧性能を備えるようになるとともに、濃度むらも発生しなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の現像ロールの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の現像ロールの製法の一例を示す断面図である。
【図3】ベースゴム層の体積電気抵抗の測定方法を示す説明図である。
【図4】中間層の表面電気抵抗の測定方法を示す説明図である。
【図5】表層の体積電気抵抗の測定方法を示す説明図である。
【図6】残留電荷の測定方法を示す説明図である。
【図7】ロールの電気抵抗の測定方法を示す説明図である。
【図8】(A)は耐圧の測定方法を示す説明図、(B)は耐圧の測定方法を示す断面図である。
【図9】従来の現像装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
1 軸体
2 ベースゴム層
3 中間層
4 表層
Claims (2)
- 軸体の外周面にベースゴム層が形成され、上記ベースゴム層の外周に中間層が形成され、上記中間層の外周に表層が形成された現像ロールであって、上記ベースゴム層の体積電気抵抗が1×103 〜1×107 Ω・cmの範囲に設定され、上記中間層の表面電気抵抗が1×104 〜1×106 Ωの範囲に設定され、かつ、上記表層の体積電気抵抗が1×105 〜1×109 Ω・cmの範囲に設定されていることを特徴とする現像ロール。
- 上記表層が金属製層形成ブレードと接触しており、かつ、表層と金属製層形成ブレードの間に電位差が生じている請求項1記載の現像ロール。
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