JP3997508B2 - 心なし研削盤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、砥石車、調整車の摩耗に拘らず、ワークを保持するブレードの再調整を不要にすることができる心なし研削盤に関する。
【0002】
【従来の技術】
心なし研削盤を使用して軸部W1 、フランジ部W2 を有するワークWを研削するとき(図7(A))、軸部W1 を研削する円錐周面1a、フランジ部W2 を研削する円錐端面1bを有するアンギュラ研削用の砥石車1と、砥石車1の円錐周面1aに対向する調整車2を組み合わせる(同図(B))。このとき、フランジ部W2 は、円錐端面1bに対して線接触し、面接触しないので、砥石車1の目詰りが少ないという利点がある。
【0003】
一方、砥石車1、調整車2の軸心1c、2cを結ぶ直線よりワークWの軸心Wc を心高hだけ高くし(同図(C))、ワークWの心高角δ=β+γ>0を適切に設定すると、ワークWの軸部W1 の真円度を高めることができる。ただし、β、γは、それぞれ砥石車1の軸心1c、調整車2の軸心2cに対するワークWの軸心Wc の心高角である。また、同図(C)において、ワークWの軸部W1 は、ブレード3を介し、砥石車1の円錐周面1aと調整車2の周面との間に保持されている。なお、このときのワークWは、軸部W1 を砥石車1の円錐周面1aに正しく一直線状に接触させるために、円錐周面1aの母線方向に保持し、砥石車1の軸心1cに対して上下に傾き角φだけ傾けることが必要である(同図(D))。ただし、傾き角φは、ブレード3をワークWの軸心Wc 方向に傾けることにより適切に設定することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
かかる従来技術によるときは、ワークWの傾き角φは、砥石車1が摩耗し、砥石車1をドレッシングする都度、ブレード3を介して微調整する必要があり、段取作業が極めて煩雑であるという問題が避けられなかった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、砥石車や調整車が摩耗しても、ワークを保持するブレードの再調整を不要にすることができる心なし研削盤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための請求項1の発明の構成は、円錐周面、円錐端面を有するアンギュラ研削用の砥石車と、砥石車の円錐周面に対向して配設する調整車と、砥石車、調整車の間にワークを保持するブレードとを2組備えてなり、砥石車は、共通の駆動軸上に方向を揃えて平行に装着し、軸心に直角方向に水平移動可能であり、調整車は、同一半径とし、スライド機構を介して台座フレームに搭載する補助フレーム上の各サブフレームに組み付ける個別の駆動軸に装着して互いに対向するように配置し、ワークの心高角を維持する方向に移動可能であり、ブレードは、ワークを砥石車、調整車の移動方向の交点に位置させて砥石車の円錐周面の母線方向に保持し、砥石車の円錐周面の頂点側に位置する一方の調整車は、ヒンジを介し、対応する砥石車の円錐周面の方向に開放可能であることをその要旨とする。
【0007】
請求項2の発明の構成は、円錐周面、円錐端面を有するアンギュラ研削用の砥石車と、砥石車の円錐周面に対向して配設する調整車と、砥石車、調整車の間にワークを保持するブレードとを2組備えてなり、砥石車は、共通の駆動軸上に方向を揃えて平行に装着し、軸心に直角方向に水平移動可能であり、調整車は、同一半径とし、スライド機構を介して台座フレームに搭載する補助フレーム上の各サブフレームに組み付ける個別の駆動軸に装着して互いに対向するように配置し、ワークの心高角を維持する方向に移動可能であり、ブレードは、ワークを砥石車、調整車の移動方向の交点に位置させて砥石車の円錐周面の母線方向に保持し、調整車は、共通のドレッシングヘッドにより一挙にドレッシングすることをその要旨とする。
【0008】
なお、ブレードには、ワークを位置決めするストッパを付設してもよい。
【0009】
【作用】
かかる発明の構成によるときは、砥石車は、軸心に対し、直角方向に移動可能であるから、摩耗やドレッシングによって半径が減少しても、半径の減少分相当だけ前進させることにより、砥石車に対するワークの相対姿勢を一定に保つことができる。一方、調整車は、ワークの心高角を維持する方向に移動可能であり、同様に、摩耗やドレッシングによって半径が減少しても、半径の減少分相当だけ前進させることにより、調整車に対するワークの相対姿勢や、ワークの心高角が変化することがない。ただし、この場合の砥石車、調整車は、それぞれの移動方向が心高角相当だけ傾いており、ワークは、ブレードを介し、両者の移動方向の交点に位置させて、砥石車の円錐周面の母線方向に保持するものとする。なお、一般に、心高角の最適値は、ワークの仕上り径に依存するが、心高角7〜8°に設定すれば、多くの小径のワークに対し、必要十分な真円度を達成することができる。
【0010】
2組の砥石車、調整車を設けることによって、2個のワークを同時に研削することができる。また、砥石車を共通の駆動軸上に装着し、調整車を個別の駆動軸上に装着することによって、調整車の径を揃えることができ、各組の砥石車、調整車によって研削する各ワークの研削条件を均一に揃えることができる。
【0011】
一方の調整車を開放可能とすれば、調整車の交換時などにおいて、広い作業スペースを容易に確保することができる。
【0012】
ブレードは、調整車用のスライド機構の台座フレーム上に立設することにより、調整車の半径が減少して調整車を前進させても、調整車の周面との相対位置関係を容易に一定に保つことができる。
【0013】
ブレードにストッパを付設すれば、ブレード上のワークは、ストッパを介して位置決めされ、砥石車のアンギュラ角が大きい場合であっても、フランジ部の研削が不十分となるおそれがない。なお、ストッパは、固定タイプでもよいが、ワークのフランジ部を砥石車の円錐端面に向けて付勢する可動タイプであってもよい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0015】
心なし研削盤は、2組の砥石車1、1、調整車2、2を備えてなり(図1、図2)、各組の砥石車1、調整車2の間には、それぞれワークWを保持するブレード3が配設されている。
【0016】
ワークWは、円筒状の軸部W1 の一端にフランジ部W2 を有する(図3)。そこで、砥石車1は、ワークWの軸部W1 を研削する円錐周面1a、フランジ部W2 を研削する円錐端面1bを有するアンギュラ研削用となっている。なお、砥石車1のアンギュラ角θ≦20°とすることにより、円錐周面1a、円錐端面1bによるワークWの軸部W1 、フランジ部W2 の切込深さの配分を適切な比率に抑えることができる。また、各調整車2は、対応する砥石車1の円錐周面1aに対向するようにして配置されている。ただし、ワークWは、軸部W1 が中実の円柱状であってもよい。
【0017】
砥石車1、1は、共通の駆動軸11に対し、方向を揃えて平行に装着されている(図1、図2)。駆動軸11は、図示しない軸受を介してサブフレーム12に組み付けられており、サブフレーム12は、スライド機構13を介し、ベースフレーム14上に前後動可能に搭載されている。すなわち、砥石車1、1は、スライド機構13を介し、駆動軸11に対して直角方向に移動可能である。また、駆動軸11は、図示しない動力伝導機構を介し、サブフレーム12上の図示しない駆動モータに連結されている。
【0018】
各調整車2は、個別の駆動軸21に装着されており、互いに対向するようにして配置されている。各駆動軸21は、サブフレーム22に組み付けられており、サブフレーム22には、図示しない動力伝導機構を介して駆動軸21を回転駆動する駆動モータ23が搭載されている。なお、砥石車1、1の円錐周面1a、1aの頂点側に位置する一方の調整車2用のサブフレーム22は、ヒンジ24を介して補助フレーム25に連結されており、補助フレーム25は、スライド機構26を介し、ベースフレーム14上の斜めの台座フレーム27に搭載されている。また、他方の調整車2用のサブフレーム22は、図示しない別のスライド機構26を介し、ベースフレーム14上の別の斜めの台座フレーム27に搭載されている。そこで、調整車2、2は、個別のスライド機構26、26上の個別の駆動軸21、21に装着されており、駆動軸21、21は、駆動軸11に対し、砥石車1、1のアンギュラ角θ相当だけ傾けて配置されている。ただし、ベースフレーム14上の台座フレーム27、27は、個別のスライド機構26、26に共通に形成してもよい。
【0019】
なお、調整車2、2用のサブフレーム22、22は、双方とも、台座フレーム27、スライド機構26上の補助フレーム25に共通に搭載してもよい。ただし、このとき、少なくとも一方のサブフレーム22は、補助フレーム25に対し、別のスライド機構を介して、台座フレーム27の上面と平行に前後動可能とし、駆動軸21、21の軸間距離を調節可能とすることが好ましい。
【0020】
各ブレード3は、各調整車2用のスライド機構26を搭載する台座フレーム27の前端において、スペーサ31、サポート32を介して立設されている。
【0021】
ブレード3は、ワークWの軸部W1 に対応する本体部3aと、ワークWのフランジ部W2 を位置決めするストッパ4用の付属部3bとを備えている(図4)。本体部3aの上端は、調整車2に対面する方向に、頂角α≒55〜70°程度の斜面3cに仕上げられており、付属部3bの上端は、一方の壁面が本体部3aの斜面3cに連続するV溝3dに仕上げられている。ただし、斜面3c、V溝3dの間には、本体部3a側を切り欠くようにして、ワークWのフランジ部W2 を収納する小溝3eが形成されている。
【0022】
ストッパ4は、短い円柱部材であって、ワークWのフランジ部W2 に当接するリング4aが一端に形成されている(図3、図4)。ストッパ4は、止めねじ4bを介し、V溝3dの両側の壁面に外周を接するようにして、V溝3dの本体部3a側の先端にねじ止めされている。ただし、ストッパ4のリング4aは、小溝3e上に僅かに突出しているものとする。
【0023】
かかる心なし研削盤は、各組の砥石車1、1、調整車2、2を使用して、2個のワークW、Wを同時に研削加工することができる(図1)。
【0024】
なお、スライド機構13による砥石車1、1の移動方向は、駆動軸11、すなわち軸心1cに直角方向であり、水平方向である(図2、図5の各矢印K1 方向)。一方、台座フレーム27、スライド機構26による各調整車2の移動方向は、ワークWに対し、所定の心高角δ=7〜8°を維持する方向に設定されている(同図の各矢印K2 方向)。すなわち、各組の砥石車1、調整車2は、それぞれの移動方向が心高角δ相当だけ傾いており、ワークWは、ブレード3を介し、砥石車1、調整車2の移動方向の交点において、砥石車1の円錐周面1aの母線方向に保持されている。ただし、ブレード3は、斜めの台座フレーム27上に直立しており(図2)、したがって、図5において、鉛直方向から心高角δ相当だけ調整車2側に傾けて図示されている。
【0025】
いま、半径R1 の砥石車1が摩耗してドレッシングされ、半径R11<R1 に減少すると(図5の実線、二点鎖線)、砥石車1を距離ΔR1 =R1 −R11だけ前進させることにより、砥石車1に対するワークWの相対姿勢を一定に保つことができる。同様に、半径R2 の調整車2が摩耗してドレッシングされ、半径R21<R2 に減少しても(同図の実線、二点鎖線)、調整車2を距離ΔR2 =R2 −R21だけ前進させることにより、調整車2に対するワークWの相対姿勢や、ワークWの心高角δが変化するおそれがない。ただし、図5において、符号1c、2cは、それぞれ砥石車1、調整車2の軸心を表わし、符号Wc は、ワークWの軸心を表わす。なお、このようにして砥石車1、調整車2を移動させても、ワークWの位置が全く変わらないから、ワークWの供給、排出も、極めて容易である。
【0026】
一方、図1において、ヒンジ24を介してサブフレーム22を支持する側の調整車2は、ヒンジ24を介し、対応する砥石車1の円錐周面1aの方向に開放することができる(同図の矢印K3 方向、二点鎖線)。そこで、このようにして調整車2を開放すれば、双方の調整車2、2に対する作業スペースを大きくとることができ、調整車2、2の交換作業、点検作業等に極めて便利である。
【0027】
また、調整車2、2は、それぞれの半径R2 が同一の場合、駆動軸21、21、すなわち軸心2c、2cが調整車2、2の移動方向に距離Δだけ離れて配列されている(図6)。そこで、調整車2、2は、共通のドレッシングヘッド5を軸心2c、2cの中間のドレッシングラインDに沿って移動させることにより、一挙にドレッシングすることができる。ただし、このときの調整車2、2は、互いに逆方向に回転駆動し(たとえば図6(B)の矢印Kd 、Kd 方向)、ドレッシングヘッド5の当り方向を同一にしてドレッシングされる周面の仕上り粗度を均一に揃えることができる。
【0028】
以上の説明において、砥石車1、調整車2は、1組のみとしてもよく、このときの調整車2は、砥石車1に対し、ヒンジ24を介して開放可能としてもよく、開放不能としてもよい。
【0029】
また、ブレード3に付設するストッパ4は、止めねじ4bによって固定する固定タイプに代えて、図示しないばねを介してワークW側に付勢する可動タイプとしてもよい。ワークWのフランジ部W2 を砥石車1の円錐端面1bに押し付けることにより、フランジ部W2 に対する研削精度を一層向上させることができる。なお、固定タイプのストッパ4付きのブレード3は、その全体を砥石車1の円錐周面1aに沿って付勢する可動タイプとしてもよい。また、ブレード3には、研削中のワークWの振動を抑えるために、適当な上部押えを組み合わせてもよい。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、アンギュラ研削用の砥石車と、調整車とを組み合わせ、調整車は、ワークの心高角を維持する方向に移動可能とすることによって、ワークは、砥石車や調整車の半径が変動しても、砥石車、調整車に対する相対姿勢が変化せず、心高角を一定に保つことができるから、砥石車、調整車の摩耗やドレッシングに拘らず、ブレードの再調整を全く不要にして加工能率を向上させることができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 全体構成模式平面図
【図2】 全体構成模式正面図
【図3】 要部拡大説明図
【図4】 要部拡大分解斜視説明図
【図5】 動作説明図(1)
【図6】 動作説明図(2)
【図7】 従来技術を示す説明図
【符号の説明】
W…ワーク
δ…心高角
1…砥石車
1a…円錐周面
1b…円錐端面
1c…軸心
2…調整車
3…ブレード
4…ストッパ
11…駆動軸
21…駆動軸
24…ヒンジ
26…スライド機構
27…台座フレーム
Claims (3)
- 円錐周面、円錐端面を有するアンギュラ研削用の砥石車と、該砥石車の円錐周面に対向して配設する調整車と、前記砥石車、調整車の間にワークを保持するブレードとを2組備えてなり、前記砥石車は、共通の駆動軸上に方向を揃えて平行に装着し、軸心に直角方向に水平移動可能であり、前記調整車は、同一半径とし、スライド機構を介して台座フレームに搭載する補助フレーム上の各サブフレームに組み付ける個別の駆動軸に装着して互いに対向するように配置し、ワークの心高角を維持する方向に移動可能であり、前記ブレードは、ワークを前記砥石車、調整車の移動方向の交点に位置させて前記砥石車の円錐周面の母線方向に保持し、前記砥石車の円錐周面の頂点側に位置する一方の前記調整車は、ヒンジを介し、対応する前記砥石車の円錐周面の方向に開放可能であることを特徴とする心なし研削盤。
- 円錐周面、円錐端面を有するアンギュラ研削用の砥石車と、該砥石車の円錐周面に対向して配設する調整車と、前記砥石車、調整車の間にワークを保持するブレードとを2組備えてなり、前記砥石車は、共通の駆動軸上に方向を揃えて平行に装着し、軸心に直角方向に水平移動可能であり、前記調整車は、同一半径とし、スライド機構を介して台座フレームに搭載する補助フレーム上の各サブフレームに組み付ける個別の駆動軸に装着して互いに対向するように配置し、ワークの心高角を維持する方向に移動可能であり、前記ブレードは、ワークを前記砥石車、調整車の移動方向の交点に位置させて前記砥石車の円錐周面の母線方向に保持し、前記調整車は、共通のドレッシングヘッドにより一挙にドレッシングすることを特徴とする心なし研削盤。
- 前記ブレードには、ワークを位置決めするストッパを付設することを特徴とする請求項1または請求項2記載の心なし研削盤。
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