JP3996314B2 - 研磨用砥粒分散剤および研磨用スラリー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は研磨用砥粒分散剤および研磨用スラリーに関する。さらに詳しくは、シリコンウエハ、ガラス等の研磨加工を行う際の砥粒の分散剤および研磨用スラリーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリコンウエハ、ガラスの表面を研磨する方法としては、上下の回転する定盤の間でアルミナなどからなる平均粒径0.1〜50μmの砥粒と砥粒の分散用分散剤、防錆剤および水を混合したスラリーを連続的に供給し、研磨する方法が使われている。その際に求められるものは研磨速度の向上と研磨後の表面における微細なキズの低減、研磨機械に対する防錆性であり、砥粒の分散剤としてはアルキルフェノ−ル型ノニオン界面活性剤(アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物)が使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤では研磨速度、キズの低減いずれも十分ではなく、さらにこれらのものは環境中に放出された場合、生分解などにより環境ホルモン様作用を示す物質に転換される懸念があり、大量に使用することは好ましくないといった問題を有している。またこの問題を解決するために、ノニオン界面活性剤と無機の防錆剤の組合せが提案されているが、研磨速度、キズの低減、研磨機械に対する防錆性いずれも十分とは言えない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤を使用せずに、加工速度が速く、キズ発生の少ない研磨用砥粒分散剤を得るべく鋭意検討した結果、特定の表面張力、砥粒の分散安定性を与えるポリエーテル化合物と有機防錆剤との組み合わせにより、上記問題点が解決されることを見いだし本発明に到達した。
【0005】
すなわち本発明は、非アルキルフェノール型ポリエ−テル化合物(A)と有機防錆剤(B)からなり、100倍の水希釈液の25℃における表面張力が20〜40dyne/cmを示し、砥粒の分散安定性が水のみの場合と比べ1.1倍以上であることを特徴とする研磨用砥粒分散剤(I)であって、(A)が、アルキル基の炭素数6〜24のポリオキシエチレンモノアルキルエーテルもしくはポリオキシエチレンモノアルケニルエーテル(a−1)と下記(a−2)からなり、(a−1)と(a−2)の重量比が1/5〜5/1であり、(B)が、アルキルアミン(b−1)、アルキルアミンのエチレンオキサイド付加物(b−2)、アルカノールアミン(b−3)、アルキルアミンの弱酸塩(b−4)およびアルカノ−ルアミンの弱酸塩(b−5)からなる群より選ばれる1種以上の有機防錆剤であることを特徴とする研磨用砥粒分散剤(I);並びに該研磨用砥粒分散剤(I)、砥粒(D)および水からなる研磨用スラリーである。
(a−2):下記一般式(1)で示される化合物の1種または2種以上の混合物からなる非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤
Z−〔{ (AO)n/(EO)m}R1〕p (1)
(式中、R1は炭素数1〜18のアルキルもしくはアルケニル基、炭素数2〜24のアシル基または水素原子;Zは炭素数1〜6のp価のアルコール類の残基;Aは炭素数3〜4のアルキレン基;Eはエチレン基;pは1〜6の整数;p個のnの合計は平均が10〜200となる正の整数;p個のmの合計は平均が1〜300となる0または1以上の整数;{(AO)n/(EO)m}は付加形式がブロック状またはランダム状を表す。)
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明で規定する表面張力は、ウィルヘルミー式表面張力計により測定される値であり、例えば協和界面化学株式会社製自動表面張力計などで測定される。
本発明で規定する砥粒の分散安定性は、研磨用砥粒分散剤の100倍の水希釈液[分散剤(I)1重量部をイオン交換水で希釈して100重量部としたもの]に平均粒径10μmの炭化珪素製砥粒(たとえばフジミインコーポレーテッド社製C#400)を20重量%となるよう混合したスラリーを、内径2.8cm、高さ24cmの100ml活栓付きメスシリンダーに100mlとり、25℃において、1分間で上下に30回振りよく混合した後静置し、砥粒の沈降面が液面から50mmを下降する間に要する時間を計ることで測定される。
【0007】
本発明の非アルキルフェノール型ポリエーテル化合物(A)としては有機防錆剤(B)と配合したうえ、必要に応じてキレート剤、pH調整剤、防腐剤、消泡剤、水などを添加し、砥粒分散剤としたときに、100倍の水希釈液の25℃における表面張力が20〜40dyne/cmを示し、砥粒の分散安定性が水のみの場合と比べ1.1倍以上を達成するものが用いられる。(A)の好ましい例には、アルキル基の炭素数6〜24のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルもしくはポリエチレングリコールモノアルケニルエーテル(a−1)と下記(a−2)および/または下記(a−3)からなり、(a−1)と(a−2)および/または(a−3)の重量比が1/5〜5/1であるものが含まれる。1/4〜3/1であるものがさらに好ましい。
(a−2):下記一般式(1)で示される化合物の1種または2種以上の混合物からなる非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤
Z−〔{ (AO)n/(EO)m}R1〕p (1)
(式中、R1は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜24のアシル基または水素原子;Zは炭素数1〜6のp価のアルコール類の残基;Aは炭素数3〜4のアルキレン基;Eはエチレン基;pは1〜6の整数;p個のnの合計は平均が10〜200となる正の整数;p個のmの合計は平均が1〜300のとなる0または1以上の整数;{(AO)n/(EO)m}は付加形式がブロック状またはランダム状を表す。)
(a−3):数平均分子量2000〜25,000のポリオキシアルキレンポリオールおよび有機ポリイソシアネ−トから誘導され、重量平均分子量が10,000〜300,000であるポリウレタン化合物。
【0008】
本発明における(a−1)は通常、炭素数6〜24の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド(以下EOと略記)を付加することにより得られる。
炭素数6〜24の脂肪族アルコールとしては天然アルコールでも合成アルコール(チーグラーアルコール、オキソアルコールなど)でもよい。
具体例としては、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコールなどの飽和脂肪族アルコール;オクテニルアルコール、デセニルアルコール、ドデセニルアルコール、トリデセニルアルコール、ペンタデセニルアルコール、オレイルアルコール、ガドレイルアルコール、リノレイルアルコールなどの不飽和脂肪族アルコール;エチルシクロヘキシルアルコール、プロピルシクロヘキシルアルコール、オクチルシクロヘキシルアルコール、ノニルシクロヘキシルアルコール、アダマンチルアルコールなどの環状脂肪族アルコールが挙げられる。これら脂肪族系アルコールは1級または2級が好ましく、特に1級が好ましい。また、アルキル基部分は直鎖状でも分岐状でもよく、炭素数8〜18のものが好ましい。
本発明の(a−1)のHLBは、通常10〜15、好ましくは11〜15である。なお本発明で規定するHLBは、親水基部分の分子量を界面活性剤の分子量で除した値に20を掛けた、グリフィンの定義によるHLBを用いる。(a−1)の具体例としてはオクチルアルコールのEO3モル付加物(HLB10.1)、ラウリルアルコールのEO7モル付加物(HLB12.5)、ミリスチルアルコールのEO9モル付加物(HLB13.0)、ミリスチルアルコールのEO12モル付加物(HLB14.2)パルミチルアルコールのEO9モル付加物(HLB12.4)などが挙げられる。好ましくはラウリルアルコールのEO7モル付加物、ミリスチルアルコールのEO9モル付加物である。
【0009】
本発明の(a−1)の数平均分子量は通常200〜1500、好ましくは300〜1000である。〔分子量の測定はゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)による。以下も同じ。〕
【0010】
本発明の一般式(1)で示される非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤(a−2)において、Zはp価(pは1〜6の数)のアルコール類の残基である。
【0011】
上記のp価のアルコール類としては、炭素数が1〜6の1〜6価のアルコール類、好ましくは脂肪族または脂環族アルコールが挙げられる。
具体的にはメタノール、エタノール、n−およびi−プロパノール、n−、i−、sec−およびt−ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノールなどの1価アルコール;エチレングリコールなどの2価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、グルコースなどの4〜6価のアルコールなどが挙げられる。
これらのアルコール類のうち、好ましくは炭素数2〜5の2〜4価のアルコール類である。
【0012】
本発明の一般式(1)で示される非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤(a−2)において、(AO)nは炭素数3〜4のアルキレンオキサイド(以下AOと略記)を付加することにより生成するポリオキシアルキレン基を表す。AOとしてはプロピレンオキサイド(以下POと略記)、1,2−、2,3−、1,3−および1,4−ブチレンオキサイド、およびこれらのの2種以上の併用(ブロックおよび/またはランダム付加)が用いられる。好ましいのはPOである。また(EO)mはEOを付加して生成する(ポリ)オキシエチレン基を表す。
アルコール類へのAOおよびEOの付加は通常の方法で行うことができ、無触媒または触媒(アルカリ触媒、アミン系触媒、酸性触媒)の存在下で、常圧または加圧下に1段階または多段階で行われる。
【0013】
一般式(1)中のnは、炭素数3〜4のオキシアルキレン基の数、すなわちAOの付加モル数を表し、通常p個のnの合計は平均が10〜200、好ましくは10〜50の正の整数である。上記範囲外では水に不溶になったり、泡立ちが大きくなったりするため被研磨物の表面にキズが発生しやすくなる。
一般式(1)中のmは、オキシエチレン基の数、すなわちEOの付加モル数を表し、通常p個のmの合計は平均が1〜300、好ましくは10〜100の0または1以上の整数である。上記の範囲内であれば水に易溶であり、また泡立ちが大きくなりすぎないため被研磨物の表面にキズが発生し難くなる。
m/nは水に対する溶解性および低泡性の点から1/10〜6/1、特に3/10〜5/1が好ましい。
【0014】
一般式(1)中の{ (AO)n/(EO)m}は、AOとEOとのランダム付加および/またはブロック付加を表す。付加の形態はランダム付加、ブロック付加(たとえばAO−EO、EO−AO、AO−EO−AO、AO−EO−AO−EOなどの順次付加)および両者の混合系(たとえばランダム付加後にEO付加)のいずれでもよい。これらのうち好ましくはブロック状付加であり、さらに、アルコール類にまずAOを付加した後に末端にEOを付加したもの、すなわち、R1と結合する側の末端がオキシエチレン基であるものが好ましい。
【0015】
本発明の一般式(1)で示される非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤において、R1は炭素数1〜18のアルキルもしくはアルケニル基、炭素数2〜24のアシル基または水素原子である。pが2以上の場合、複数個のR1は同一でも異なっていてもよい。
炭素数1〜18のアルキル基としては直鎖および/または分岐アルキル鎖、例えばエチル、メチル、プロピル、デシル、ステアリル基などが挙げられる。炭素数1〜18のアルケニル基としてはオレイル基などが挙げられる。
炭素数1〜18のアルキル基を持つ化合物の製造方法としては、アルコール類にAOおよびEOを付加させた後に、炭素数1〜18のアルキルクロライド、アルキルブロマイドなどアルキルハライドを反応させ得ることができる。
炭素数2〜24のアシル基としては、例えばアセチル、ブチル、ステアロイル、オレオイル基などの脂肪族アシル;ベンゾイル、トルオイル、ナフトイル基などの芳香族アシル基(アロイル基)が挙げられる。これらのアシル基のうちで好ましいものは、脂肪族アシル基であり、特に好ましくはアセチル基、オレオイル基である。
炭素数2〜24のアシル基を持つ化合物の製造方法としては、アルコール類にAOおよびEOの付加を行った後に、炭素数2〜24の酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフトエ酸などのカルボン酸との脱水エステル化により得ることができる。また上記カルボン酸のエステル形成性誘導体(酸無水物、酸塩化物、低級アルキルエステル)を用いることでも得ることができる。
【0016】
本発明の一般式(1)で示される非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤(a−2)の数平均分子量は、一般式(1)を満たすものであれば特に制限はないが、好ましくは2000〜20000、さらに好ましくは3000〜10000である。
【0017】
本発明のポリウレタン化合物(a−3)を誘導するポリオキシアルキレンポリオールとしては、多価アルコールにAOが付加した構造の化合物およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
多価アルコ―ル(a1)としては、エチレングリコ―ル、プロピレングリコ―ル、1,3−ブチレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ―ル、1,6−ヘキサンジオ―ル、ジエチレングリコ―ル、ネオペンチルグリコ―ル、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼンなどの2価アルコ―ル;グリセリン、トリメチロ―ルプロパン、ペンタエリスリト―ル、ジグリセリン、α−メチルグルコシド、ソルビト―ル、キシリット、マンニット、ジペンタエリスリト−ル、グルコ−ス、フルクト−ス、ショ糖などの3〜8価の多価アルコ―ルなどが挙げられる。
多価アルコールに付加するAO(アルキレン基の炭素数2〜18)としては、EO、PO、1,2−、2,3−もしくは1,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン(THF)、スチレンオキサイド、炭素数6〜18のα−オレフィンオキサイド、エピクロルヒドリンなどがあげられる。
AOは単独でも2種以上併用してもよく、後者の場合はブロック付加(チップ型、バランスド型、活性セカンダリ―型など)でもランダム付加でも両者の混合系〔ランダム付加後にチップしたもの:分子中に任意に分布されたエチレンオキシド鎖を0〜50重量%(好ましくは5〜40重量%)有し、0〜30重量%(好ましくは5〜25重量%)のEO鎖が分子末端にチップされたもの〕でもよい。
ポリイソシアネートとの反応性の点から、ポリオキシアルキレンポリオールとしては末端部分にEOが付加しているもの(チップ型、ランダムチップ型、バランスド型)が好ましい。これらの中で特に好ましいものはポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールにEOを付加したものである。ポリオキシアルキレンポリオール中の平均のオキシエチレン単位含有量は50重量%以上が好ましく、85重量%以上が特に好ましい。
【0018】
ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は通常2,000〜25,000、好ましくは3,000〜20,000である。数平均分子量が2,000以上であれば、ポリウレタン化合物が水に易溶性となり、25,000以下であればポリイソシアネートのとの反応性が良好であり、目的とする性能を有する高分子化合物を得ることが容易である。
さらに低分子のポリオールを、水溶性または水分散性を損なわない範囲で併用してもかまわない。
本発明で用いられる低分子ポリオールとしては、2〜8価の多価アルコール、該多価アルコールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−、1,3−、2,3−もしくは1,4−ブチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリンなど)付加物(分子量500未満)などが挙げられる。
上記多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、2,2−ビス(4,4’−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンなどの2価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール;ペンタエリスリト―ル、ジグリセリン、α−メチルグルコシド、ソルビト―ル、キシリット、マンニット、ジペンタエリスリト−ル、グルコ−ス、フルクト−ス、ショ糖などの4〜8価のアルコ―ルなどが挙げられる。
【0019】
本発明のポリウレタン化合物(a−3)を誘導する有機ポリイソシアネートとしては、従来からポリウレタン製造に使用されているものが使用できる。このようなポリイソシアネートには、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ポリイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネートおよびこれらのポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物など)およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
【0020】
上記芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、 粗製MDI[粗製ジアミノフェニルメタン〔ホルムアルデヒドと芳香族アミン(アニリン)またはその混合物との縮合生成物;ジアミノジフェニルメタンと少量(たとえば5〜20重量%)の3官能以上のポリアミンとの混合物〕のホスゲン化物:ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)]、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
【0021】
上記脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートなどの脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0022】
上記脂環式ポリイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−および/または2,6−ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0023】
上記芳香脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、m−および/またはp−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0024】
また、上記ポリイソシアネートの変性物には、変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、トリヒドロカルビルホスフェート変性MDI)、ウレタン変性TDI、ビウレット変性HDI、イソシアヌレート変性HDI、イソシアヌレート変性IPDIなどのポリイソシアネートの変性物およびこれらの2種以上の混合物[たとえば変性MDIとウレタン変性TDI(イソシアネート含有プレポリマー)との併用]が含まれる。該ウレタン変性ポリイソシアネート[過剰のポリイソシアネート(TDI、MDIなど)とポリオールとを反応させて得られる遊離イソシアネート含有プレポリマー]の製造に用いるポリオールとしては、当量が30〜200のポリオールたとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール;トリメチロールプロパン、グリセリンなどのトリオール;ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの高官能ポリオール;およびこれらのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド)付加物が挙げられる。これらのうちで好ましいものは官能基数2〜3のものである。
上記変性ポリイソシアネートおよびプレポリマーの遊離イソシアネート基含量は通常8〜33%、好ましくは10〜30%、とくに好ましくは12〜29%のものである。
これらのうちで好ましいものはジイソシアネート類および粗製MDIであり、特に好ましいものはMDI、HDI、IPDI、およびHDIである。
【0025】
本発明の(a−3)中のウレタン基(−NHCOO−)の濃度は好ましくは0.1〜5重量%である。ウレタン基濃度が0.1%以上であれば砥粒の分散安定性機能が良好であり、5重量%以下であれば(a−3)の水溶性が良好である。(a−3)の重量平均分子量は通常10,000〜300,000、好ましくは30,000〜200,000である。分子量分布(GPCを用いて測定される重量平均分子量を数平均分子量で除した数値)は、好ましくは1.2〜6.0、さらに好ましくは1.3〜4.0である。(a−3)の重量平均分子量が10,000以上であれば砥粒の分散安定性が良好であり、300,000以下であれば砥粒スラリーの粘度が適当な範囲であり、作業性が良好となる。
本発明の(a−3)を誘導する際の、ポリオキシアルキレンポリオール中の水酸基(OH)と有機ポリイソシアネート中のイソシアネート基(NCO)の官能基のモル比(OH)/(NCO)は、好ましくは8/10〜10/8である。
【0026】
本発明の(a−3)の製法は特に限定されず、通常のウレタンポリマーを作成する方法でポリオキシアルキレンポリオールおよび有機ポリイソシアネートを反応させることにより得られる。反応温度は、通常30〜200℃好ましくは50〜180℃である。反応時間は通常0.1〜8時間である。反応終了後、エチレンジアミン等公知の反応停止剤を使用してもかまわない。この反応は、通常無溶剤系で行うが、イソシアネートに対して不活性な有機溶剤中で行ってもよい。溶剤としてはアセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、トルエン、ジオキサン等があげられる。これらの溶剤を用いた場合は、通常、反応後に溶剤を溜去して(a−3)を得る。
【0027】
本発明の(a−1)と(a−2)および/または(a−3)との重量比は好ましくは1/5〜5/1である。重量比が1/5より大きい場合は、研磨速度が十分な速さであり、5/1より小さい場合は研磨中に被研磨物にキズが発生し難くなる。また、(a−2)と(a−3)を併用する場合の(a−2)と(a−3)の重量比は、広範囲、例えば9/1〜1/9にわたり変えることができる。
【0028】
本発明における有機防錆剤(B)としては、特に限定されないが、例えば、炭素数2〜16の脂肪族または脂環族アミン類(b−1)(オクチルアミンなどのアルキルアミン;オレイルアミンなど;シクロヘキシルアミンなどのシクロアルキルアミン);そのEO(1〜2モル)付加物(b−2);アルカノールアミン類(b−3)(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノプロパノールアミンなど);そのEO(1〜2モル)付加物(b−3’);脂肪族カルボン酸類(オレイン酸、ステアリン酸など)とアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩;スルフォン酸類(石油スルホネートなど);りん酸エステル類(ラウリルホスフェートなど)などがある。具体的には、[石油製品添加剤](昭和49年8月10日幸書房発行)に記載のさび止め剤が使用できる。
【0029】
さらにほう酸などの無機弱酸;酢酸、プロピオン酸、オレイン酸などのモノカルボン酸系有機弱酸;シュウ酸、アジピン酸などの多価カルボン酸系有機弱酸;クエン酸などのヒドロキシカルボン酸系有機弱酸;またはジメチルリン酸など有機リン酸系弱酸などの弱酸と、アルキルアミン類(b−1)との塩(b−4)が有機防錆剤として使用できる。また前記アルカノールアミン類(b−3)と上記弱酸との塩(b−5)も有機防錆剤として使用してもよい。
これらのうち好ましいのはアルキルアミン(b−1)、アルキルアミン類のエチレンオキサイド付加物(b−2)、アルカノールアミン類(b−3)、アルキルアミン類の弱酸塩(b−4)、アルカノ−ルアミン類の弱酸塩(b−5)であり、さらに好ましいのは(b−3)と(b−5)であり、特に好ましいのは、ホウ酸との塩である。
【0030】
本発明の研磨用砥粒分散剤(I)中の(B)の割合は特に限定されないが、(A)100重量部に対して好ましくは10〜100重量部、好ましくは30〜80重量部である。また(A)、(B)はそれぞれ前述した化合物のうち2種以上を併用しても良い。
【0031】
本発明の(I)には、粘度を調整する目的で、メタノール、エタノール、プロパノールなどの1価の水溶性アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール(重合度2〜50)などの2価以上の水溶性アルコールを、性能に悪影響のない範囲の量[例えば(A)と(B)の合計100重量部に対して40重量部以下]で配合してもよい。またこれらは2種以上を併用してもよい。
【0032】
本発明の(I)には、本発明の(a−1)、(a−2)以外のノニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤を配合してもよい。また、さらに、公知のキレート剤、pH調整剤、防腐剤、消泡剤などの添加剤および水を配合することができる。
具体的には、本発明の(a−1)、(a−2)以外のノニオン界面活性剤としては1:1型ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリルジメチルアミンオキシド、モノステアリン酸グリセリン、モノラウリン酸ソルビタンなどが挙げられる。
カチオン界面活性剤としては塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウムなどが挙げられる。
キレート剤としてはポリアクリル酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
pH調整剤としては酢酸、ほう酸、クエン酸、蓚酸、燐酸、塩酸などの酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリが挙げられる。
これらの添加剤の配合量は目的により種々変えることができるが、通常0.01〜40重量%、好ましくは0.01〜20重量%である。
本発明の(I)中の水の量は任意に変えることができるが、通常10〜80重量%である。
【0033】
本発明の(I)は予め(A)、(B)、水及びその他の添加剤を混合したものであっても、研磨用スラリーを作成時に(A)、(B)、水及びその他の添加剤を混合してもよい。
【0034】
本発明の第2発明である研磨用スラリーは、第1発明の研磨用砥粒分散剤(I)と砥粒(D)および水からなる研磨用スラリーである。
研磨用スラリーは、好ましくは、砥粒(D)を10〜30重量%、特に好ましくは15〜25%、(A)および(B)を好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは0.2〜2重量%含有する水分散液として構成される。
【0035】
本発明における砥粒(D)としては特に限定されないが、例えば、アルミナ、ジルコン砂、炭化珪素等を乾式または湿式ミル等を用いて平均粒径0.1〜50μmに粉砕したものが挙げられる。
本発明におけるスラリーは、シリコンウエハ、ガラス、アルミニウム、セラミック、合成石英、水晶、サファイア等の研磨に有用である。
【0036】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、部および%はそれぞれ重量部または重量%を示す。
【0037】
表1に記載した割合で実施例1〜5および比較例1〜4を配合した。
各分散剤の100倍の水希釈液の25℃における表面張力、砥粒の分散安定性を表1に記載した。
測定は以下の方法で行った。
表面張力 :各分散剤の100倍の水希釈液を作成し、協和界面化学株式会社製自動表面張力計で25℃における表面張力を測定した。
分散安定性:各分散剤の100倍の水希釈液に平均粒径10μmの炭化珪素製砥粒(フジミインコーポレーテッド社製C#400)を20重量%となるよう混合したスラリーを作成し、25℃においてスラリーを100ml活栓付きメスシリンダーにとり、上下に30回振り、よく混合した後静置し、砥粒の沈降面が表面から50mmを下降する間に要する時間を計り、同様に分散剤を使用しないで作成したスラリーについて測定した沈降時間で除し、水のみの場合に比べた分散安定性とした。
【0038】
【表1】
表中の数字は各重量部を表す
【0039】
a-11:ラウリルアルコールにEO7モルを付加したもの(HLB12.5)
a-12:ミリスチルアルコールにEO9モルを付加したもの(HLB13.0)
e :ノニルフェノ−ルにEO9モルを付加したもの(HLB12.9)
a-21:エチレングリコールにまずPO38モルを付加した後、EO48モル を付加したもの
a-22:a-21のメチルエーテル化物
a-31:ポリエチレングリコール(数平均分子量8000)100部とHDI 5.4部を170℃で5時間反応させて得られたポリウレタン化合物 b-1 :モノエタノールアミンのホウ酸塩
b-2 :シクロヘキシルアミンのEO1モル付加物
f :ケイ酸ナトリウム(無機防錆剤)
【0040】
表2に記載の分散剤が1.0重量%、砥粒(フジミインコ−ポレ−テッド社製FO1200)が18重量%となるように水を加え混合し、実施例6〜10、および比較例5〜8の研磨用スラリーを得た。
【0041】
これら実施例6〜10、比較例5〜8の研磨用スラリーを用い、直径3インチ、厚み600μmのシリコンウエハ20枚を精密平面ラップ盤9BF4M5G(浜井産業株式会社製)で15分間研磨した結果、および防錆性試験の結果を表2に示す。
評価と判定は以下の方法で行った。
【0042】
【表2】
【0043】
実施例1および5の分散剤が1.0重量%、砥粒(フジミインコ−ポレ−テッド社製GC400)が20重量%となるように水を加え混合し、実施例11および実施例12の研磨用スラリーを、また比較例1の分散剤が1.0重量%、砥粒(フジミインコ−ポレ−テッド社製GC400)が20重量%となるように水を加え混合し、比較例9の研磨用スラリーを得た。
【0044】
これら実施例11、12および比較例9の研磨用スラリーを用い、直径3インチ、厚み1000μmのガラスディスク20枚を精密平面ラップ盤9BF4M5G(浜井産業株式会社製)で7分間研磨した結果、および防錆性試験の結果を表3に示す。
評価と判定は以下の方法で行った。
【0045】
【表3】
【0046】
この結果から、本発明の研磨用砥粒分散剤を含むスラリーを用いて研磨するとキズの発生が少なく、加工速度が優れており、かつ本発明の研磨用スラリーは研磨機械に対するサビの発生がなく防錆性に優れていることが判る。
【0047】
【発明の効果】
本発明の研磨用砥粒分散剤を含む研磨用スラリーは、従来使用されていたノニルフェノール、オクチルフェノールなどのアルキルフェノ−ルのエチレンオキサイドを含む研磨用スラリーに比較して加工速度に優れ、表面にキズが生じることなく研磨を行うことができ、かつ研磨機械の錆の発生が少ないものである。 さらに、本発明の研磨用砥粒分散剤は本質的にノニルフェノール、オクチルフェノールなどのアルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物を含まないため、環境ホルモン様作用の心配がないものであり、またシリコンウエハ、ガラスのみならず、アルミニウム、セラミック、合成石英、水晶、サファイアなどの研磨に有用である。
Claims (8)
- 非アルキルフェノール型ポリエ−テル化合物(A)と有機防錆剤(B)からなり、100倍の水希釈液の25℃における表面張力が20〜40dyne/cmを示し、砥粒の分散安定性が水のみの場合と比べ1.1倍以上であることを特徴とする研磨用砥粒分散剤(I)であって、(A)が、アルキル基の炭素数6〜24のポリオキシエチレンモノアルキルエーテルもしくはポリオキシエチレンモノアルケニルエーテル(a−1)と下記(a−2)からなり、(a−1)と(a−2)の重量比が1/5〜5/1であり、(B)が、アルキルアミン(b−1)、アルキルアミンのエチレンオキサイド付加物(b−2)、アルカノールアミン(b−3)、アルキルアミンの弱酸塩(b−4)およびアルカノ−ルアミンの弱酸塩(b−5)からなる群より選ばれる1種以上の有機防錆剤であることを特徴とする研磨用砥粒分散剤(I)。
(a−2):下記一般式(1)で示される化合物の1種または2種以上の混合物からなる非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤
Z−〔{ (AO)n/(EO)m}R1〕p (1)
(式中、R1は炭素数1〜18のアルキルもしくはアルケニル基、炭素数2〜24のアシル基または水素原子;Zは炭素数1〜6のp価のアルコール類の残基;Aは炭素数3〜4のアルキレン基;Eはエチレン基;pは1〜6の整数;p個のnの合計は平均が10〜200となる正の整数;p個のmの合計は平均が1〜300となる0または1以上の整数;{(AO)n/(EO)m}は付加形式がブロック状またはランダム状を表す。) - (a−2)において、{(AO)n/(EO)m}がブロック状付加で、かつR1と結合する側の末端がオキシエチレン基である請求項1記載の研磨用砥粒分散剤。
- (a−2)において、m/nが1/10〜6/1である請求項1または2記載の研磨用砥粒分散剤。
- (a−1)のHLBが10〜15である請求項1〜3いずれかに記載の研磨用砥粒分散剤。
- シリコンウエハ研磨用である請求項1〜4のいずれかに記載の研磨用砥粒分散剤。
- ガラス研磨用である請求項1〜4のいずれかに記載の研磨用砥粒分散剤。
- (A)と(B)の重量比(A)/(B)が、1/1〜10/1である請求項1〜6のいずれかに記載の研磨用砥粒分散剤。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の研磨用砥粒分散剤(I)、砥粒(D)および水からなる研磨用スラリー。
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