JP3996248B2 - 水タンクの壁面塗装装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子炉格納容器のサプレッションチェンバ、原子炉の廃液貯溜タンク、原子炉の廃液濃縮タンク等のように、放射性物質が混合した水を貯溜している水タンク内において、水中で内壁の塗装を行う水タンクの壁面塗装装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
純水を貯溜するようにしている原子炉のサプレッションチェンバ、原子炉の廃液貯溜タンク、原子炉の廃液濃縮タンク等の水タンクには、鋼製容器の内面に防錆用の塗装を施しているが、このような水タンクは、その健全性を確保するために、定期的に塗膜の点検を行い、劣化塗膜や錆等があった場合には、その塗膜の劣化塗膜や錆等を除去して、再度塗装する等の補修作業を行う必要がある。
【0003】
従来、水タンクの壁面の点検、劣化塗膜や錆等の研削、及び塗装といった作業は、先ず、水タンク内には配管の錆、金属片及びその他の塵等の放射性を帯びたクラッドがヘドロ状に堆積するために、このクラッドのみが残るように水タンク内の水を外部に取出した後、放射能に対して完全装備した作業員が水タンク内底部に降りて、スコップ等を用いて人海戦術によりクラッドを除去するようにしている。又、水タンクから外部に取出した水は、放射性を帯びているために廃棄することはできず、よって別の場所に一旦貯溜している。
【0004】
続いて、水タンク内に足場を設ける等して内壁等の点検作業を行い、その後劣化塗膜や錆等が発生している部分を、研削具を用いて研削加工し、その後切削加工した箇所に塗料を塗布するようにしている。
【0005】
また、前記塗料の塗布作業が終了したら前記外部に一端貯溜していた水を、再び水タンクに戻すようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記したように、クラッドの除去作業、点検作業、及び補修作業等の作業を、水タンク内の水を総て水タンクの外部に取出した後に行うようにしているために、例えばサプレッションチェンバのように3000トンにも及ぶ多量の水を貯溜している水タンクでは、水を出し入れするのみに幾日もの日数が掛かり、更に、広大な水タンクのクラッドをスコップ等を用いて除去する作業は、非常に大変であるばかりでなく、ヘドロを綺麗に除去するためには水で洗う等の更に面倒な作業が必要であるために作業に長期間を要する問題があり、しかも水の除去とヘドロの除去が終了するまでは点検、劣化塗膜や錆等の発生部分の研削、及び塗装といった作業を行うことが全くできず、このために作業能率が悪く、工期が延長されるという問題を有していた。
【0007】
また、前記したように水タンク内の大量の水を外部に取り出して一旦貯溜しておくための大型の容器が別個に必要となるという問題があった。
【0008】
従って、前記したクラッドの除去作業、壁面の研削作業、塗装作業を、総て水中で行うことができれば、作業能率を高めて、工期を大幅に短縮することができる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、水中において水タンクの内壁に、塗料を水中に飛散させることなく塗布できるようにした水タンクの壁面塗装装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水タンクの内壁に沿って移動して内壁の塗装を行う塗布装置と、該塗布装置に吸引管を介して接続された吸引ポンプと、該吸引ポンプに接続された水処理装置とを備えた水タンクの壁面塗装装置であって、前記塗布装置が、塗布具と、該塗布具を包囲して下部が開放され且つ上部が前記吸引管に接続された吸引フードと、を備えたことを特徴とする水タンクの壁面塗装装置、に係るものである。
【0011】
また、吸引フードに、塗料供給装置から供給される塗料の流量を調節して塗布具に供給するようにした塗料供給弁を備えている。
【0012】
本発明では、塗布具の下部を除く周囲を包囲する吸引フードによって、塗布を行う部分の廻りの水を吸引するようにしているので、塗布具から水中に浮遊しようとする余分な塗料を吸引フードによって確実に吸引することができ、よって塗布装置にて水タンクの壁面の塗装を行う際に、塗布装置の廻りの水を懸濁させるようなことがなく、よって良好な視界の中で壁面の塗装作業を的確に能率良く行うことができると共に、水タンク内の水を清浄な状態に保持することができる。
【0013】
また、吸引フードに、塗料供給装置から供給される塗料の流量を調節して塗布具に供給するようにした塗料供給弁を備えると、塗布作業を高能率に行うことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1はMARK−II型の原子炉格納容器の一例を示しており、基礎1に立設された中空構造の格納容器本体2と、該格納容器本体2の内方に位置するように基礎1に立設され且つ上部に原子炉圧力容器3を支持する円筒状のペデスタル4と、前記格納容器本体2の内周面の上下方向中間部分からペデスタル4の上部に向って略水平に延びるダイヤフラムフロア5とを備えている。
【0016】
前記格納容器本体2、ペデスタル4、ダイヤフラムフロア5は鉄筋コンクリート構造によって一体的に形成されており、また、格納容器本体2の内周面には、該内周面に沿って延びる鋼製ライナ6が設けられており、該鋼製ライナ6の内部に、蒸気を凝縮するための純水からなる水7が貯溜されることにより、水タンクとしてのドーナツ状のサプレッションチェンバ8が形成されている。図中9はダイヤフラムフロア5の上部に形成される上部ドライウェル、10はサプレッションチェンバ8内の上部位置に設けられた作業用のプラットホームである。
【0017】
上記のサプレッションチェンバ8の内部には、略垂直に延びる複数のベント管11が配置されており、その上端部がダイヤフラムフロア5を貫通して該ダイヤフラムフロア5に支持されており、また、下端部がサプレッションチェンバ8に貯留されている水7に没しており、このベント管11によって、主蒸気管等の配管が破断した際に、上部ドライウエル9に噴出する蒸気を前記サプレッションチェンバ8に導いて凝縮させ、上部ドライウエル9の圧力上昇を抑制するようになっている。
【0018】
前記したサプレッションチェンバ8の内部には、放射性物質であるヘドロ状のクラッドが溜まるため、この堆積したクラッドを除去した後に、サプレッションチェンバ8の内壁の点検を行い、劣化塗膜や錆等を研削して除去し、その後内壁を再度塗装するようにしている。
【0019】
一方、近年では、水中で塗装する方式が実施されるようになってきている。水中塗装方式は、エポキシ樹脂系の主剤と硬化剤との混合により、30分〜1時間程度で硬化する2液混合型の塗料を用いて、作業員が水中に潜って必要な壁面等に塗料をブラシやローラ等を用いて塗装するようにしている。
【0020】
従って、サプレッションチェンバ8内のクラッド除去作業、点検作業、劣化塗膜や錆等を除去する研削作業、及び塗装作業を、総て水中で行えるようにすると、従来点検の度に行っていたサプレッションチェンバ8内の水7を外部に取り出して一旦貯溜しておき、上記作業の終了後に再びサプレッションチェンバ8に戻すといった作業を無くすことができる。
【0021】
しかし、上記したサプレッションチェンバ8の壁面の塗装作業を、水中で行おうとすると、塗装の際にハケ等から塗料が飛散して水中を浮遊するようになるため、この浮遊塗料が生じないように、余分な塗料を確実に回収できるように工夫する必要がある。
【0022】
図1では、前記サプレッションチェンバ8の鋼製ライナ6の内壁に塗料を塗布するための壁面塗装装置を備えている。
【0023】
図1の壁面塗装装置は、水タンクであるサプレッションチェンバ8の鋼製ライナ6の内壁に沿って移動させて、研削された後の塗装を必要とする箇所に塗料を塗って塗装を行うようにした塗布装置12と、該塗布装置12に吸引管13を介して接続された吸引ポンプ14と、該吸引ポンプ14に吐出管15を介して接続され、且つ該吐出管15を介して送られてくる水中の塗料等の混合物を分離するようにしたフィルター又は遠心分離機等からなる水処理装置16とを備えている。また、水処理装置16で研削混合物が除去された水7は、配管17により再びサプレッションチェンバ8に戻すようにしている。
【0024】
サプレッションチェンバ8は、底面から水面までの高さが例えば約7メートル、水面からプラットホーム10までの高さが約7メートルと非常に大きな深さを有しているため、前記水面にフロート18を浮かべて、該フロート18上に前記吸引ポンプ14を設置することにより、該吸引ポンプ14の揚程を小さくするようにし、また水処理装置16はプラットホーム10に設けて、水処理装置16にて分離されたクラッドの処理やフィルターの交換等の作業が行い易いようにしている。
【0025】
図2及び図3は、前記塗布装置12の一例を示したもので、図中19は塗布具であり、該塗布具19は、取っ手部分19aとハケ部分19bとからなる塗布用ハケの場合が示してあり、該塗布具19は、該塗布具19を包囲して下部が開放された吸引フード20に保持されるようになっている。
【0026】
吸引フード20の上端は縮径されて図1に示した吸引管13に接続されており、また、前記塗布具19を包囲している吸引フード20の下端開口21からは、前記塗布具19のハケ部分19bが所要長さ突出されるようになっている。
【0027】
更に、図1のプラットホーム10上には、エポキシ樹脂系の主剤と硬化剤とを混合して、混合された塗料を塗料供給管22に供給するようにした塗料供給装置23が備えてあり、更に前記塗料供給管22の先端は、図2及び図3に示した吸引フード20の内部に導かれて、更に塗布具19に沿って配置されており、その下端はハケ部分19bの上部位置にて扁平な開口部24を形成している。
【0028】
また、前記吸引フード20の上部位置には、前記塗料供給管22に設けて塗料供給装置23から供給される塗料の流量を調節するようにした塗料供給弁25を取付けている。26は調節レバーを示す。
【0029】
尚、上記したように、プラットホーム10上に塗料供給装置23を設置した場合には、塗装を停止した時に、塗料供給管22内の塗料を排出(パージ)できるようにするために、塗料供給装置23に加圧空気が供給できるようになっていることが好ましい。
【0030】
次に、上記形態例の作用を説明する。
【0031】
図1のサプレッションチェンバ8の内壁に塗装を行うには、水処理装置16をプラットホーム10上に設置すると共に、フロート18上に固定した吸引ポンプ14を水面上に降ろし、塗布装置12をサプレッションチェンバ8の底部に降ろす。
【0032】
続いて、放射能汚染を防止する潜水服に身を包んだ作業員がプラットホーム10からサプレッションチェンバ8内に降りて水7中に潜水する。
【0033】
図1の吸引ポンプ14を駆動すると、図2及び図3の塗布具19を包囲している吸引フード20の下端開口21から、ハケ部分19bの廻りの水が吸引管13に吸引されるようになる。
【0034】
また、塗料供給装置23により、エポキシ樹脂系の主剤と硬化剤とを混合し、混合された塗料を塗料供給管22に供給する。
【0035】
サプレッションチェンバ8内に潜水した作業員が、塗布装置12を手で把持して、鋼製ライナ6の底部及び側部の壁面に向って塗布具19のハケ部分19bを軽く押しつけるようにし、調節レバー26を廻して塗料供給弁25を開けることにより開口部24から所定量の塗料をハケ部分19bに供給しながら塗布装置12をサプレッションチェンバ8の内壁に沿って移動させると、塗装を行うことができる。
【0036】
この塗装の際に、特にハケ部分19bから塗料が飛散して水中を浮遊しようとするが、前記したようにハケ部分19bを包囲するように開口している下端開口21から、ハケ部分19bの廻りの水を吸引するようにしているので、ハケ部分19bから水中に浮遊しようとする余分な塗料は吸引フード20に総て吸引されるようになる。
【0037】
吸引フード20に吸引された塗料の混入する水は、吸引管13から吸引ポンプ14、吐出管15を介して水処理装置16に導かれ、該水処理装置16にて塗料が除去され、塗料が除去された水は、配管17によってサプレッションチェンバ8内に戻される。このとき、前記塗布装置12によってサプレッションチェンバ8の側部の壁面を塗装する際には、足ヒレを付けた作業員が水中を泳ぐことによって行うことができる。
【0038】
前記したように、塗布具19の下部を除く周囲を包囲する吸引フード20によって、塗布を行う部分の廻りの水を吸引するようにしているので、塗布具19から水中に浮遊しようとする余分な塗料は吸引フード20に確実に吸引されるようになり、よって塗布装置12にてサプレッションチェンバ8の壁面の塗装を行う際に、塗布装置12の廻りの水を懸濁させるようなことがなく、よって良好な視界の中で壁面の塗装作業を的確に能率良く行うことができると共に、サプレッションチェンバ8内の水7を清浄な状態に保持することができる。
【0039】
また、吸引フード20に、塗料供給装置23から供給される塗料の流量を調節して塗布具19に供給するようにした塗料供給弁25を備えるようにしているので、塗料の供給を自動的に行って、塗布作業を高能率に行うことができる。
【0040】
図4は、本発明の他の形態例を示したもので、前記塗装用ハケによる塗布具19に代えて、塗装ローラからなる塗布具27を用いた場合を示している。図4においては、吸引フード20が、塗布具27のローラ外周面の下部を除いた上部外周を包囲するように形成されており、塗布具27の廻りを取り巻くように形成された下端開口21から、塗布具27周辺の水を吸引フード20により吸引して、吸引管13を介して図1の吸引ポンプ14に導くようにしている。また、塗料供給弁25を備えた塗料供給管22によって、前記塗布具27に塗料を供給できるようにしている。
【0041】
上記図4の形態例においても、前記図2及び図3に示した形態例と全く同様に作用することができる。
【0042】
尚、上記各形態例においては、塗料供給装置23から供給される塗料を、塗料供給管22を介して塗布具19,27に自動的に供給するようにした場合について説明したが、塗料供給装置23及び塗料供給管22を備えることなく、図1に示すように塗料を入れた容器28をサプレッションチェンバ8内に持込んで、塗布装置12を容器28に入れてハケやローラによる塗布具19,27に塗料を付着させるようにして塗装を行ったり、或いは、注射器のような塗料供給シリンダを用いて作業員が塗布具19,27に塗料を供給して塗装を行うようにしてもよい。
【0043】
尚、上述した実施の形態例では、水タンクとしてサプレッションチェンバに適用した場合を説明したが、本発明は、原子炉の廃液貯溜タンク、原子炉の廃液濃縮タンク、及びその他の種々の水タンクに適用できること、吸引フードの形状は種々変更し得ること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ること、等は勿論である。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、塗布具の下部を除く周囲を包囲する吸引フードによって、塗布を行う部分の廻りの水を吸引するようにしているので、塗布具から水中に浮遊しようとする余分な塗料を吸引フードによって確実に吸引することができ、よって塗布装置にて水タンクの壁面の塗装を行う際に、塗布装置の廻りの水を懸濁させるようなことがなく、よって良好な視界の中で壁面の塗装作業を的確に能率良く行うことができると共に、水タンク内の水を清浄な状態に保持することができる効果がある。
【0045】
また、吸引フードに、塗料供給装置から供給される塗料の流量を調節して塗布具に供給するようにした塗料供給弁を備えると、塗布作業を高能率に行える効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す全体側面図である。
【図2】本発明に使用する塗布装置の一例を示す側面図である。
【図3】図2のIII−III方向矢視図である。
【図4】本発明に使用する塗布装置の他の形態例を示す切断側面図である。
【符号の説明】
8 サプレッションチェンバ(水タンク)
12 塗布装置
13 吸引管
14 吸引ポンプ
16 水処理装置
19 塗布具
20 吸引フード
23 塗料供給装置
25 塗料供給弁
27 塗布具
Claims (2)
- 水タンクの内壁に沿って移動して内壁の塗装を行う塗布装置と、該塗布装置に吸引管を介して接続された吸引ポンプと、該吸引ポンプに接続された水処理装置とを備えた水タンクの壁面塗装装置であって、前記塗布装置が、塗布具と、該塗布具を包囲して下部が開放され且つ上部が前記吸引管に接続された吸引フードと、を備えたことを特徴とする水タンクの壁面塗装装置。
- 吸引フードに、塗料供給装置から供給される塗料の流量を調節して塗布具に供給するようにした塗料供給弁を備えたことを特徴とする請求項1に記載の水タンクの壁面塗装装置。
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