JP3975028B2 - サプレッションチェンバ再塗装方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はサプレッションチェンバ再塗装方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図3は原子炉設備の一例を示すもので、この原子炉設備は、蒸気発生源である原子炉圧力容器1と、上端が開口した格納容器本体2及び該格納容器本体2の開口を閉止する上蓋3で構成され且つ前記の原子炉圧力容器1を格納する原子炉格納容器4と、該原子炉格納容器4の下部を周方向に取り囲み且つ内部に水5を貯留するトーラス形状のサプレッションチェンバ6とを備えている。
【0003】
サプレッションチェンバ6は、複数のセグメント7を無端状に接続したものであり、所定のセグメント7の頂部には、着脱可能な閉止蓋8を有し且つ定期検査工事を実施する際にサプレッションチェンバ6へ作業者が出入りするためのマンホール9や、サプレッションチェンバ6に対する給排気系の配管(図示せず)が接続される管台10が設けられている。
【0004】
このサプレッションチェンバ6内には、周方向に延びるベントヘッダ11と、下端部が水5に没するようにベントヘッダ11に接続された多数のダウンカマ12とが設けられている。
【0005】
また、ベントヘッダ11の所定箇所には、圧力差に応じてベントヘッダ11の外部から内部への空気の流通を許容し得るバルブ13が取り付けられている。
【0006】
更に、ベントヘッダ11の内部空間は、サプレッションチェンバ6を貫通するベント管14を介して原子炉格納容器4の内部空間(ドライウエル)に連通している。
【0007】
サプレッションチェンバ6の内面、ベントヘッダ11の内面と外面、ダウンカマ12の内面と外面、ベント管14の内面、ベント管14のサプレッションチェンバ6内に位置する部分の外面は、防錆効果が高い無機ジンクリッチ系塗料、及び耐水性に優れたエポキシ樹脂系塗料により塗装されているが、塗膜の劣化に起因するサプレッションチェンバ6、ベントヘッダ11、ダウンカマ12、ベント管14の腐蝕を防止するために、これらの塗膜を更新する再塗装工事を原子炉設備の定期検査時に実施している。
【0008】
再塗装工事は、図2の下段の工程のように、サプレッションチェンバ6内の水5を外部へ移送する水抜き作業、マンホール9からサプレッションチェンバ6内に足場用資材を搬入し且つ作業足場を架設する足場組立作業、サプレッションチェンバ6の内面、ベントヘッダ11の内面と外面、ダウンカマ12の内面と外面、ベント管14の内面、ベント管14のサプレッションチェンバ6内に位置する部分の外面にそれぞれ形成されている既存の塗膜をサンドブラストにより剥離させ且つ塗料を吹き付けて新しい塗膜を形成する研掃塗装作業、作業足場を解体し且つ足場用資材をマンホール9から搬出する足場取外作業を順に施工する。
【0009】
更に、新たに形成した塗膜が硬化するまでの養生期間へ経た後、サプレッションチェンバ6内へ水5を戻している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したサプレッションチェンバ6、ベントヘッダ11、ダウンカマ12、ベント管14の各部分に対する研掃塗装作業の総面積は広大であり、定期検査期間内に再塗装工事を完了するためには、多数のサンドブラスト研掃器及び吹付塗装器を用意し且つこれらの装置を操作する作業者を手配する必要がある。
【0011】
これに加えて、近年、定期検査期間を短くして、原子炉施設の可動効率の向上を図りたいという要望もある。
【0012】
本発明は上述した実情に鑑みてなしたもので、サプレッションチェンバの再塗装に要する工程を繰り上げること目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載のサプレッションチェンバ再塗装方法では、サプレッションチェンバから外部へ水を移送する前、あるいは移送している間に、サプレッションチェンバ内に配置されているベントヘッダの内面及びベントヘッダに連通するベント管の内面の既存の塗膜を研掃除去したうえ、当該研掃面に塗料を塗布して新たに塗膜を形成し、サプレッションチェンバから外部への水の移送が完了した後に、サプレッションチェンバの内面、ベントヘッダの外面、ダウンカマの内面と外面、及びベント管のサプレッションチェンバ内に位置する部分の外面の既存の塗膜を研掃除去したうえ、当該研掃面に塗料を塗布して新たに塗膜を形成する。
【0014】
また、本発明の請求項2に記載のサプレッションチェンバ再塗装方法では、サプレッションチェンバから外部へ水を移送する前、あるいは移送している間に、下端部がサプレッションチェンバ内の水に没しているダウンカマとサプレッションチェンバ内に配置されているベントヘッダとの接続部分を閉塞させ且つベントヘッダに連通するベント管と原子炉格納容器のドライウエルとの接続部分を閉塞させた状態で、ベントヘッダの内面及びベント管の内面の既存の塗膜を研掃除去したうえ、当該研掃面に塗料を塗布して新たに塗膜を形成し、サプレッションチェンバから外部への水の移送が完了した後に、サプレッションチェンバの内面、ベントヘッダの外面、ダウンカマの内面と外面、及びベント管のサプレッションチェンバ内に位置する部分の外面の既存の塗膜を研掃除去したうえ、当該研掃面に塗料を塗布して新たに塗膜を形成する。
【0015】
本発明の請求項1あるいは請求項2に記載のサプレッションチェンバ再塗装方法のいずれにおいても、通常、水に没することがないベントヘッダの内面及びベント管の内面に対する研掃塗装作業を、サプレッションチェンバから外部への水の移送前、あるいは移送中に施工し、サプレッションチェンバの再塗装に要する工程を繰り上げる。
【0016】
また、本発明の請求項2に記載のサプレッションチェンバ再塗装方法においては、ダウンカマとベントヘッダとの接続部分、並びにベント管と原子炉格納容器のドライウエルとの接続部分をそれぞれ閉塞させて、研掃塗装作業に伴って生じる粉塵などが、サプレッションチェンバや原子炉格納容器のドライウエルへ飛散することを防止する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明のサプレッションチェンバ再塗装方法の実施の形態の一例であり、図中、図3と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0019】
このサプレッションチェンバ再塗装方法では、弾力性に富んだ合成ゴム系材料などによってダウンカマ12に挿入可能な形状に形成されたバルーン状の膨張プラグ15と、ベント管14の格納容器本体2側の接続端開口部分を被覆可能な閉止カバー16とを用いる。
【0020】
再塗装工事は、図2の上段の工程のように、サプレッションチェンバ6内の水5を外部へ移送する水抜き作業と並行して、ベントヘッダ11の内面及びベント管14の内面に対する研掃塗装作業を施工する。
【0021】
この研掃塗装作業にあたっては、図1に示すように、バルブ13を開放したうえ、サンドブラスト研掃器17の研掃材送給管18、研掃材回収器19の研掃材吸引管20、集塵器21の塵埃吸引管22、吹付塗装器23の塗料送給管24を、サプレッションチェンバ6の外部からマンホール9及びバルブ13のボディを介してベントヘッダ11内へ引き込んでおく。
【0022】
次いで、膨張プラグ15を各ダウンカマ12の上端部に挿入し、膨張プラグ15内に空気圧を付与してダウンカマ12の内面に密着させ、各ダウンカマ12とベントヘッダ11との連通を閉塞する。
【0023】
また、閉止カバー16により各ベント管14の格納容器本体2側の接続端開口部を順に被覆し、各ベント管14と原子炉格納容器4のドライウエルとの連通を閉止するとともに、全てのベント管14と原子炉格納容器4のドライウエルとの連通を閉止する前に、作業者がベントヘッダ11の内部に入り、研掃材送給管18の先端部に装着されている研掃ノズル(図示せず)を所定時間操作し、ベントヘッダ11の内面及びベント管14の内面の既存の塗膜を剥離したうえ、塗料送給管24の先端部に装着されている吹付ノズル(図示せず)を操作し、研掃面に塗料を塗布して新たに塗膜を形成する。
【0024】
このとき、各ダウンカマ12に膨張プラグ15を挿入し、ベント管14の格納容器本体2側の接続端開口部を閉止カバー16で被覆しているので、研掃塗装作業に伴って生じる粉塵などは、サプレッションチェンバ6や原子炉格納容器4のドライウエルへ飛散することなく、塵埃吸引管22を経て集塵器21に捕捉されることになる。
【0025】
サプレッションチェンバ6から外部への水5の移送が完了したならば、上記のベントヘッダ11の内面及びベント管14の内面に対する研掃塗装作業と並行して、マンホール9からサプレッションチェンバ6内に足場用資材を搬入し且つ作業足場を架設する足場組立作業を施工する。
【0026】
次いで、サプレッションチェンバ6の内面、ベントヘッダ11の外面、ダウンカマ12の内面と外面、ベント管14のサプレッションチェンバ6内に位置する部分の外面にそれぞれ形成されている既存の塗膜をサンドブラストにより剥離させ且つ塗料を吹き付けて新しい塗膜を形成する研掃塗装作業、作業足場を解体し且つ足場用資材をマンホール9から搬出する足場取外作業を順に施工する。
【0027】
また、適宜の時期に、前記の膨張プラグ15及び閉止カバー16を回収しておく。
【0028】
更に、新たに形成した塗膜が硬化するまでの養生期間へ経た後、サプレッションチェンバ6内へ水5を戻す。
【0029】
このように、上述した作業工程では、通常、水5に没することがないベントヘッダ11の内面及びベント管14の内面に対する研掃塗装作業を、サプレッションチェンバ6から外部への水5の移送中に施工するので、サプレッションチェンバ6の再塗装に要する工程を繰り上げることが可能になる。
【0030】
これに加えて、ベントヘッダ11の内面及びベント管14の内面に対する研掃塗装作業と、サプレッションチェンバ6の内面などの他の部分に対する研掃塗装作業とが輻輳しないので、サンドブラスト研掃器17及び吹付塗装器23の数を少なくすることができ、それぞれの研掃塗装工事における最大電力消費量の低減を図ることができる。
【0031】
また、ダウンカマ12とベントヘッダ11との接続部分を膨張プラグ15により閉塞させ、ベント管14と原子炉格納容器4のドライウエルとの接続部分を閉止カバー16により閉塞させるので、研掃塗装作業に伴って生じる粉塵などが、サプレッションチェンバ6や原子炉格納容器4のドライウエルへ飛散することを防止できる。
【0032】
なお、本発明のサプレッションチェンバ再塗装方法は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、サプレッションチェンバ6から外部への水5の移送に先だって、ベントヘッダ11の内面及びベント管14の内面に対する研掃塗装作業を施工すること、ダウンカマ12とベントヘッダ11との接続部分の閉塞手段に閉止カバー16と同等のものを用いるようにすること、ベント管14と格納容器本体2との接続部分の閉塞手段に膨張プラグ15と同等の構造のものを用いるようにすること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変更を加え得ることは勿論である。
【0033】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のサプレッションチェンバ再塗装方法によれば、下記のような種々の優れた効果を奏し得る。
【0034】
(1)本発明の請求項1あるいは請求項2に記載のサプレッションチェンバ再塗装方法のいずれにおいても、通常、水に没することがないベントヘッダの内面及びベント管の内面に対する研掃塗装作業を、サプレッションチェンバから外部への水の移送前、あるいは移送中に施工し、サプレッションチェンバの再塗装に要する工程を繰り上げるので、定期検査期間を短縮して、原子炉施設の可動効率を向上させることが可能になる。
【0035】
(2)また、ベントヘッダの内面及びベント管の内面に対する研掃塗装作業と、サプレッションチェンバの内面などの他の部分に対する研掃塗装作業とが輻輳しないので、サンドブラスト研掃器及び吹付塗装器の数を少なくすることができ、よって、それぞれの研掃塗装工事における最大電力消費量の低減を図ることができる。
【0036】
(3)本発明の請求項2に記載のサプレッションチェンバ再塗装方法においては、ダウンカマとベントヘッダとの接続部分を閉塞させ、ベント管と原子炉格納容器のドライウエルとの接続部分を閉塞させるので、研掃塗装作業に伴って生じる粉塵などが、サプレッションチェンバや原子炉格納容器のドライウエルへ飛散することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のサプレッションチェンバ再塗装方法の実施の形態の一例を示す概念図である。
【図2】本発明を適用した再塗装工程と従来の再塗装工程とを示す対比図である。
【図3】原子炉設備の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
4 原子炉格納容器
5 水
6 サプレッションチェンバ
11 ベントヘッダ
12 ダウンカマ
14 ベント管

Claims (2)

  1. サプレッションチェンバから外部へ水を移送する前、あるいは移送している間に、サプレッションチェンバ内に配置されているベントヘッダの内面及びベントヘッダに連通するベント管の内面の既存の塗膜を研掃除去したうえ、当該研掃面に塗料を塗布して新たに塗膜を形成し、サプレッションチェンバから外部への水の移送が完了した後に、サプレッションチェンバの内面、ベントヘッダの外面、ダウンカマの内面と外面、及びベント管のサプレッションチェンバ内に位置する部分の外面の既存の塗膜を研掃除去したうえ、当該研掃面に塗料を塗布して新たに塗膜を形成することを特徴とするサプレッションチェンバ再塗装方法。
  2. サプレッションチェンバから外部へ水を移送する前、あるいは移送している間に、下端部がサプレッションチェンバ内の水に没しているダウンカマとサプレッションチェンバ内に配置されているベントヘッダとの接続部分を閉塞させ且つベントヘッダに連通するベント管と原子炉圧力容器のドライウエルとの接続部分を閉塞させた状態で、ベントヘッダの内面及びベント管の内面の既存の塗膜を研掃除去したうえ、当該研掃面に塗料を塗布して新たに塗膜を形成し、サプレッションチェンバから外部への水の移送が完了した後に、サプレッションチェンバの内面、ベントヘッダの外面、ダウンカマの内面と外面、及びベント管のサプレッションチェンバ内に位置する部分の外面の既存の塗膜を研掃除去したうえ、当該研掃面に塗料を塗布して新たに塗膜を形成することを特徴とするサプレッションチェンバ再塗装方法。
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