JP3994773B2 - 在宅者健康状態遠隔診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は一人住まいの高齢者の生活状態によって健康状態や危急状態などを管理センタで遠隔診断して把握する在宅者健康状態遠隔診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高齢者の人口が増大する傾向にあり、いわゆる高齢化社会に変わりつつある。このために、一人暮らしの高齢者も増加する傾向にある。一人暮らしの高齢者の健康状態を常に把握するには、検査や問診を頻繁に行うことが必要となる。
【0003】
しかし、高齢者は医療機関に頻繁に通院するのは困難であり、医者や看護師(看護婦や看護士)が高齢者の住居に訪問して検査や問診を行わざるを余儀なくされている。高齢者が多くなると医者や看護師の負担が増大し、高齢者の健康状態を把握することが実質的に行えなくなる。
【0004】
ところで、特に一人住まいの高齢者は、体調不良で家の中で躓いて家具等にぶつかり怪我をして寝込んだり、あるいは発作を起こして倒れたりすることがある。本人の意識がはっきりしている場合には病院等に電話連絡できるが、最悪の事態になることが懸念される。家人がいる場合には、これらの事態に対して応急処置を迅速に行うことができるが、一人住まいの場合には不可能である。何らかの方法でこれらの事態に至る前に病院や介護施設等への連絡がなされれば、適切な対応が可能となる。
【0005】
高齢者に異常が発生する場合には、高齢者自身の身体に何らかの変化がある筈で、日常の生活で突然に体調が変化することは稀で、徐々に変化するのが普通である。高齢者の健康状態の悪化度合が軽い状態を予め把握できれば、病院や介護施設等での治療は少ない負担で済み、また、健康状態の悪化度合が軽ければ、治癒するまでの期間は短くて済み、かつその回復レベルは高くなる。
【0006】
このような情勢に対処するために、高齢者が一人住まいしている多数の住居において多数の高齢者に関する複数の異なる生活データを測定して管理センタに送信し、管理センタにおいて高齢者に関する複数の異なる生活データに基づき高齢者の健康状態を診断することが考えられている。
【0007】
なお、高齢者などの被介護者の健康状態を無拘束でかつ継続的に把握する方法として、被介護者のベッドの下にエアマットを敷いて、そのエアマットに加わる圧力変化に基づき被介護者の心拍数、呼吸数、イビキ回数、寝返り回数等の生体データを測定する技術が提案されている。この事は、例えば、特開2000―214号公報に記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術は測定した生体データを利用して高齢者の異常を判定しているが、特に、一人住まいの在宅高齢者の健康状態を含む生活状態を医療機関などの遠隔地で判定し健康状態が要注意レベルにあるかを把握できないという問題点を有する。
【0009】
高齢者の介護費用負担は年々増大し、健康保険料の財政的逼迫状態は社会的にも大きな問題となっているが、特に寝たきり状態の患者(高齢者)が増加することがこの問題を大きくしている。
【0010】
症状の軽い状態で治療ができれば、前述したように治療費の低減と患者の健康状態回復と維持を早期に図ることができることになるため、在宅の高齢者の体調悪化兆候を効果的に診断できる技術の開発が強く望まれている。
【0011】
本発明の目的は、一人住まいの高齢者の生活状態を管理センタで遠隔診断して健康状態が悪化する兆候を軽度の段階で把握できる在宅者健康状態遠隔診断装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の特徴とするところは、高齢者が一人住まいしている住居において高齢者に関する複数の異なる生活データを測定して管理センタに送信し、管理センタでは、一日単位毎に複数の異なる各生活データを取込み、単位期間における各生活データ毎の平均値と標準偏差を求めると共に単位期間における複数の各生活データ間の関連性を示す固有ベクトルを求めておき、高齢者に関する一日単位の複数の生活データの測定値を入力すると単位期間における各生活データ毎の平均値と標準偏差を用いて各生活データの標準化データを算出し、各生活データの標準化データと固有ベクトルの個有値の大きい第1主成分、第2主成分とによって高齢者の生活パターンのバラツキを求めて予め定めた通常パターン領域から外れたときに高齢者の健康状態を要注意レベルと判定するようにしたことにある。
【0013】
換言すると、本発明は、複数の各生活データ間の関連性を示す固有ベクトルのうち高齢者の生活リズムに影響度が大きい2つの固有ベクトル成分と各生活データの標準化データによって当該一日単位の生活パターン(行動パターン)を求め、過去の単位期間における生活パターン(通常生活パターンあるいは通常行動パターン)との総合的な隔たりを監視して高齢者の健康状態が要注意レベルにあるかを判定するようにしたことにある。
【0014】
具体的には、高齢者に関する一日単位の複数の生活データの測定値を入力すると単位期間における各生活データ毎の平均値と標準偏差を用いて各生活データの標準化データを算出し、固有ベクトルの個有値が大きく高齢者の生活リズムに影響度大の第1主成分および第2主成分と各生活データの標準化データの演算によって当該一日単位の第1主成分と第2主成分の値を算出して2次元座標に表示して遠隔診断する。
【0015】
本発明の複数の異なる生活データとしては、住宅の寝室、便所、玄関、居間、台所、浴室、洗面所などの出入口に設けた高齢者の行動パターン(行動データ)を測定する踏力マットのマット作動回数標準偏差、睡眠時間の情報値と補正値、マット作動頻度、移動頻度、移動速度、トイレ回数などがある。
【0016】
また、単位期間における各生活データ毎の平均値と標準偏差、複数の各生活データ間の関連性を示す固有ベクトルは高齢者の健康状態(生活状態)によって更新するのが望ましい。
【0017】
本発明は複数の各生活データ間の関連性を示す高齢者の生活リズムに影響度が大きい2つの固有ベクトル成分と各生活データの標準化データによって一日単位の生活パターン(行動パターン)を求め、過去の単位期間における生活パターン(通常生活パターンあるいは通常行動パターン)との総合的な隔たりを監視して高齢者の健康状態が要注意レベルにあるかを判定しているので、一人住まい高齢者の体調が徐々に悪化する状態を把握して大事に至る前に病院や介護施設等での治療を迅速に行える。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1に本発明の一実施例を示す。図1は一人住まい高齢者の住宅と病院や介護施設等の管理センタの状態を示している。
【0019】
図1において、1は一人住まい高齢者の住宅で、その間取が、寝室、便所(トイレ)、玄関、居間、台所、浴室、洗面所、押入などから構成されている。住宅1の便所、玄関、居間、寝室、台所、浴室、洗面所などの出入口には図示しない高齢者の行動パターン(行動データ)を測定する踏力マット2がそれぞれ設けられている。各踏力マット2にはマット番号と部屋種別が付与されている。高齢者の住居1の各部屋の出入口付近設置された踏力マット2は、内部に感圧抵抗体等のスイッチ手段を有し、このスイッチ手段のオンオフ信号(行動データ)を端末装置3で処理し通信回線(電話回線)4を介して管理センタ6のデータ処理装置9に伝送する。端末装置3は通常居間に設置され、1日単位の生活データ(行動データ)を伝送する。なお、通信回線4は有線と無線の何れでも用いることができる。
【0020】
管理センタ6にはデータ処理装置9が設置されており、端末装置3から伝送される1日単位の生活データ(行動データ)の測定値を入力してデータ処理を実行する。また、担当医10の机上には管理パソコン(管理用端末装置)11を設置し、担当医10が随時高齢者の身体状態を把握、監視するとともに、緊急時の高齢者異常通報を受けたり、電話等により適宜介護士の待機部屋に指示を出したり、携帯電話で連絡したりすることができるようになっている。管理センタ7は数十人から数百人の在宅高齢者の生活データを入力し、各高齢者毎に健康状態を診断する。
【0021】
図2にデータ処理装置9の一例詳細構成図を示す。
図2において、端末装置3で測定した複数個(7個)の異なる生活データ、すなわち、マット作動回数標準偏差、相関係数値、睡眠時間(情報値)、睡眠時間(補正値)、マット作動頻度、移動頻度、移動速度、トイレ回数は通信回線4を介して入力切替部14に入力される。
【0022】
入力切替部14は、高齢者の遠隔監視を行う前に、7個の異なる生活データを1ヶ月程度の単位期間だけ取込み、各生活データ毎の平均値、標準偏差および各生活データのバラツキを探す個有値問題の固有ベクトル値を算出する場合には定数演算部15に加える。
【0023】
定数演算部15は生活データを単位期間の時系列データとして、生活データの種類である解析項目に該当する変量を入力して平均値、分散値、標準偏差および共分散値を算出する。定数演算部15で算出された各生活データの平均値、標準偏差、分散値および共分散値は定数格納部16に格納される。
【0024】
相関係数演算部18は2つの生活データ間の関連性を求めるために、定数格納部16に記憶されている2個の生活データの分散値と共分散値によって相関係数を算出する。相関係数行列演算部19は相関係数演算部18で求めた相関係数値に基づき行列演算を行い固有ベクトルを算出する。固有ベクトルとしては、固有値と固有ベクトル値(主成分)が求められる。固有値は固有ベクトルの順番、すなわち、高齢者の生活リズムの影響度が大きい主成分を決めるものである。相関係数行列演算部19で算出された固有値と主成分はファイル20に格納される。
【0025】
高齢者の遠隔監視を実行する場合には、7個の生活データは入力切替部14を介して標準化データ演算部17に取込まれる。標準化データ演算部17は7個の生活データの測定値を入力すると、定数格納部16から平均値と 標準偏差を取込み各測定値の標準化データを算出する。
【0026】
標準化データ演算部17で求めた標準化データは、生活データのバラツキが多いと大きな値になり、無次元の値になる。標準化データは積和演算を行う主成分値演算部21に加えられる。主成分値演算部21は標準化データとファイル20に格納されている第1と第2の主成分との積和演算を行い第1主成分値と第2主成分値を算出する。
【0027】
主成分値演算部21で求められた第1主成分値と第2主成分値は、生活データを測定した当該日付を付けてファイル22に格納されると共に表示編集部23に加えられる。
【0028】
表示編集部23は第1主成分をY軸、第2主成分をX軸とする2次元座標を形成し、主成分値演算部21で今回求めた第1主成分値、第2主成分値とファイル22に格納されている過去分の第1主成分値、第2主成分値を取込み編集して表示制御部24に与える。表示制御部24は表示編集部23で編集された第1主成分値と第2主成分値を表示部25に表示する。表示部25には、1日単位での第1主成分値と第2主成分値が通常パターン領域と共に表示される。
【0029】
図3に高齢者の行動パターン(行動データ)を測定する踏力マット2の一例構成図を示す。
【0030】
踏力マット2は、3組のエリア2a、2b、2cから構成され、それぞれエリア2a、2b、2c内部には感圧抵抗等で構成されたスイッチを有している。例えば、図示の状態で入室の際に高齢者の右足13aでエリア2aが踏まれ、所定の踏力以上の圧力が加わると、端末装置3にオン信号が加えられる。マット2は高齢者の進行方向の全長が高齢者の歩幅より長くなるように製作されている。
【0031】
高齢者が入室の際に、例えば右足13aでエリア2aを踏んだ後に左足3bでエリア2cを踏むと、エリア2aが最初にオン信号を発し、次いでエリア2cのオン信号が発せられ、両足が離れるとエリア2a、2cの順にオフ信号が発せられる。これらの行動データ(オン、オフ信号)により踏み込み方向を判定できる。この際には、図示矢印方向が進行方向を示すことになる。
【0032】
退室の際にはこれらの方向が逆となるため、進行方向が図示矢印と逆になり、退室と判定される。その結果、踏力マット2の行動データによって進行方向の特定と、入室と退室の回数及び在室の時間が計数可能となる。
【0033】
なお、通常、同じエリアを続けて踏むことはなく、エリア2aを踏んだ後にエリア2bを踏んだ場合も同様に進行方向を判定できる。
【0034】
次に、遠隔診断の動作を説明する。
端末装置3は、部屋毎に設置される踏力マット2の番地(マット番号)を識別でき、例えば、浴室への入室から退室までの時間が異常に長い場合に、高齢者が浴室で倒れていると考えられ、管理センタ6において高齢者が危急状態にあると遠隔診断できる。また、各部屋に在室している時間や出入りする回数は勿論のこと、マット作動回数、マット作動頻度、移動速度、移動頻度、トイレ回数、睡眠時間を集計でき、これらの値を整理して高齢者の在宅時における日常の行動パターンを数値化することができる。
【0035】
端末装置3は、部屋毎に設置される踏力マット2のマット信号(オン、オフ信号)を入力して1日単位で次の7つの生活データを測定する。
【0036】
1.マット作動回数の標準偏差
1時間毎のマット作動回数から求めた1日のマット作動回数の標準偏差で、昼と夜の行動量のバランスを探るデータとなる。標準偏差は平均値からのデータのバラツキ具合を示す分散値を平均値と同じ単位と考えられる数値にした値で、分散値の平方根として求められる。分散値は、1時間毎の作動回数と平均回数の差を2乗して、24時間分を加算した総和を24時間で除した値である。分散値が0に近いほど昼と夜の行動量がほぼ同じことを意味している。
【0037】
2.睡眠時間(情報値)
マット作動回数の時間帯毎の分布により、1日の時間を活動時間、睡眠時間、在室時間に分け、マット作動回数があった時間帯は活動時間とし、睡眠時間は、寝室に入室した後にマット2の作動回数が零の時間帯が数時間継続した時は全ての時間を睡眠時間(情報値)とする。活動時間と睡眠時間のいずれにも該当しない時間を在室時間(不動時間)とする。
【0038】
3.睡眠時間(補正値)
睡眠時間(情報値)を高齢者の特質などによって日報で補正した睡眠時間の補正値を算出する。
【0039】
4.マット作動頻度(1時間当りのマット作動平均回数)
1日のマット作動回数の平均回数であるが、24時間での平均回数を算出すると、睡眠時間、不動時間の大小により平均回数がばらつくので、活動時間だけで算出することによりバラツキを抑えて、より正確な平均回数を算出する。
【0040】
5.移動頻度
1時間当りの移動平均回数で、マット作動頻度と同様に、活動時間における1時間当りの移動平均回数を算出する。
【0041】
6.移動速度(移動平均時間)
移動回数の対象になった各マット間の移動距離と移動時間に基づいて1m移動するのに要する時間を算出する。
【0042】
7.トイレ回数
1日のトイレのマット作動回数を算出する。
【0043】
このように端末装置3によって1日単位で測定された、マット作動回数標準偏差、睡眠時間(情報値)、睡眠時間(補正値)、マット作動頻度、移動頻度、移動速度、トイレ回数の7つの生活データ(行動データ)は通信回線4を介して管理センタ6のデータ処理装置9に送信される。7つの生活データは管理センタ6の入力切替部14を介して定数演算部15または標準化データ演算部17に取込まれる。
【0044】
さて、高齢者の遠隔監視を行う前に、管理センタ7のデータ処理装置9は、端末装置3から与えられる複数(7個)の異なる生活データを1ヶ月程度の単位期間だけ取込み、各生活データ毎の平均値、標準偏差および各生活データのバラツキを探す固有値問題の固有ベクトルを算出する。
【0045】
まず、定数演算部15は次のようにして平均値と標準偏差を算出する。このことを一般式により説明する。
【0046】
生活データを単位期間の時系列データ(i)として、生活データの種類である解析項目(j)に該当する変量をx(j、i)とする。
ここで、j=1、2、…p pは解析項目数
i=1、2、…n nはデータ収集日数
である。
【0047】
定数演算部15は変量x(j、i)を入力して式1により平均値Xm(j)を求める。
【0048】
【数1】
【0049】
また、定数演算部15は式2により分散値S(j、j)を算出し、式3によって標準偏差H(j、j)を算出する。
【0050】
【数2】
【0051】
【数3】
H(j、j)=√S(j、j) …(式3)
【0052】
さらに、定数演算部15は式4によって後述する相関係数を求める際に用いる共分散値S(j、k)を算出する。(k)は解析項目である。
【0053】
【数4】
【0054】
このようにして定数演算部15で算出された各生活データの平均値Xmと標準偏差Hは定数格納部16に格納される。図4は、2月のある日から2/28までの7個の生活データの測定値から求めた平均値Xmと標準偏差Hの値の一例を示している。生活データは2/25〜2/28までの分のみを示している。
【0055】
また、定数演算部15で算出された分散値S(j、j)と共分散値S(j、k)も定数格納部16に格納される。
【0056】
相関係数演算部18は2つの生活データ間の関連性を求めるために、定数格納部16に記憶されている2個の生活データの分散値S(j、j)、S(k、k)と共分散値S(j、k)に基づき式5によって相関係数r(j,k)を算出する。相関係数r(j,k)は2つの生活データの関連性を示しており、100%関連性があれば「1」となり、全く関係がなければ「0」になる。
【0057】
【数5】
【0058】
図5に7個の生活データの相関係数r(j,k)の値U1〜U7の一例を示す。相関係数値U1はマット作動回数標準偏差、相関係数値U2は睡眠時間(情報値)、相関係数値U3は睡眠時間(補正値)、相関係数値U4はマット作動頻度、相関係数値U5は移動頻度、相関係数値U6は移動速度、相関係数値U7はトイレ回数を示している。
【0059】
相関係数行列演算部19は相関係数演算部18で求めた相関係数値r(j,k)つまり値U1〜U7に基づき式6の行列演算を行い固有ベクトルVを算出する。
【0060】
【数6】
【0061】
式6のr(1,1)は「U1・U1」、r(1,p)は「U1・U7」、r(p,1)は「U7・U1」、r(p,p)は「U7・U7」となる。
【0062】
式6の行列演算を行うと、図6(a)に示す個有値λ1〜λ7と図6(b)に示す固有ベクトル値(主成分)a1〜a7が求められる。個有値λ1〜λ7と主成分a1〜a7の値は一例を示している。個有値λは固有ベクトル値aの順番、すなわち、高齢者の生活リズムの影響度が大きい主成分aを決めるものである。
【0063】
個有値λ1〜λ7と主成分a1〜a7は添字が同じものが対になって求められる。個有値λ1〜λ7は、その値が大きいと生活データのバラツキが大きくなる主成分a1〜a7を定めており、図6(a)ではλ1>λ2>…>λ7になっている。主成分a1〜a7は添え数字が大きくなるに伴い最大値と最小値の差が小さくなっている。したがって、本発明では高齢者の生活リズムのバラツキが良く見える第1主成分a1と第2主成分a2を用いて高齢者の生活状態を診断する。
【0064】
このようにして相関係数行列演算部19で算出された個有値λ1〜λ7と主成分a1〜a7はファイル20に格納される。
【0065】
このように高齢者の予め定めた複数の異なる生活データの単位期間における平均値Xm、標準偏差Hおよび固有ベクトル(主成分)a1、a2を求めた後に高齢者の遠隔監視を実行する。
【0066】
さて、端末装置3からは図7に示すように1日単位で7個(マット作動回数標準偏差、睡眠時間(情報値)、睡眠時間(補正値)、マット作動頻度、移動頻度、移動速度、トイレ回数)の生活データ(行動データ)が通信回線4を介して管理センタ6のデータ処理装置9に送信される。7個の生活データは入力切替部14を介して標準化データ演算部17に取込まれる。図7は3/1〜3/5までの測定値を示しているが、標準化データ演算部17には1日分の生活データが入力される。
【0067】
標準化データ演算部17は7個の生活データの測定値を入力すると、定数格納部16から平均値Xm(j)と式3に示す 標準偏差H(j、j)つまり√S(j、j)を取込み式7に基づき各測定値の標準化データX(j、i)を算出する。
【0068】
【数7】
【0069】
標準化データX(j、i)の(i)は1日であり、3/1〜3/5までの7個の生活データの標準化データX1〜X7は、例えば、図8に示すような値になる。標準化データX1〜X7は、生活データのバラツキが多いと大きな値になり、無次元の値になる。標準化データX1〜X7は主成分値演算部21に加えられる。
【0070】
主成分値演算部21は標準化データX1〜X7と第1と第2の主成分a1、a2を用いて式8、式9によって積和演算を行い第1主成分値Z1と第2主成分値Z2を算出する。
Z1=(X1・a11)+(X2・a12)+…+(X7・a17)…(式8)Z2=(X1・a21)+(X2・a22)+…+(X7・a27)…(式9)
【0071】
積和演算部(主成分値演算部)21で求められる第1主成分値Z1と第2主成分値Z2は、例えば図9に示すようになる。図9は3/1〜3/5までの第1主成分値Z1と第2主成分値Z2を示しているが、1日単位で算出される。積和演算部21で求めた第1主成分値Z1と第2主成分値Z2は当該日付を付けてファイル22に格納されると共に表示編集部23に加えられる。
【0072】
表示編集部23は第1主成分a1をY軸、第2主成分a2をX軸とする2次元座標を形成し、積和演算部21で今回求めた第1主成分値Z1、第2主成分値Z2とファイル22に格納されている過去分の第1主成分値Z1、第2主成分値Z2を取込み編集して表示制御部24に与える。
【0073】
表示制御部24は表示編集部23で編集された第1主成分値Z1と第2主成分値Z2を表示部25に表示する。表示部25には、例えば図10に示すように1日単位での第1主成分値Z1と第2主成分値Z2が通常パターン領域30と共に表示される。
【0074】
固有ベクトルの第1主成分a1と第2主成分a2は通常パターンに対するバラツキを示すものであり、通常パターン領域30内にあれば平常の生活をしており健康状態にあると判定できる。なお、通常パターン領域30内にある場合にも日付を付けるのが望ましい。
【0075】
一方、通常パターン領域30外にある場合には日付を付して表示する。今回の判定が2月18日とすると、過去に通常パターン領域30外になった日も日付を付けて表示する。なお、一般に、通常パターン領域30は遠隔診断の対象となる高齢者によって異なり、他の高齢者の場合には、例えば図11のようになる。
【0076】
固有ベクトルの第1主成分a1と第2主成分a2が、通常パターン領域30外になると高齢者の健康状態が要注意レベルであると判定する。
【0077】
担当医10は管理パソコン11を操作してデータ処理装置9で判定(診断)した高齢者が健康状態が要注意レベルであると認識すると看護師を高齢者の住宅1に派遣したり、あるいは遠隔に住んでいる家族にインターネットを介して連絡する。
【0078】
管理センタ7は高齢者の健康状態の遠隔診断を多数の在宅高齢者について実行する。
【0079】
図12は、一般的な生涯健康度パターンを模式的に表したものである。健康度は生活できる正常度と見なすことができ、最も高いのを数値の100で示している。
【0080】
若いときの健康度は高く、ほぼ一定期間持続されるが、ある時期を過ぎると年齢とともに低下し、何らかの処置、治療が必要となる。本発明は、ある時期から徐々に低下する健康状態を検知し、最悪状態、すなわち寝たきり状態となる前に処置、加療を行い、寝たきり状態が生じる時期をずらし、かつその期間を短縮できるようにする。
【0081】
健康度が低下して寝たきり状態となる年齢Aに対し、健康度の低下途中(変化点)で治療を行えば健康状態が回復し、一定期間健康状態が維持される。再び健康状態が低下する途中で治療を加えると、治療を加えなければ寝たきり状態になると予想される年齢Bに到らず、年齢Cまで延長されることになる。
【0082】
このようにして多数の在宅高齢者の健康状態を遠隔診断するのであるが、高齢者に関する複数の生活データから求めた生活パターンのバラツキが予め定めた通常パターン領域から外れたときに高齢者の健康状態を要注意レベルと判定しているので、一人住まい高齢者の体調が徐々に悪化する状態を把握して大事に至る前に病院や介護施設等での治療を迅速に行える。
【0083】
また、高齢者の生活パターンが過去に通常パターン領域外になった日も表示するようにしているので、通常パターン領域外になった頻度を把握でき、その経験則の従いより細かな遠隔診断を行うことができる。
【0084】
なお、上述の実施例は高齢者の7個の異なる生活データから生活パターンのバラツキを算出しているが、風呂回数などの他の生活データを組合せたりしてもよいことは勿論のことである。
【0085】
【発明の効果】
本発明は高齢者に関する複数の生活データから求めた生活パターンのバラツキが予め定めた通常パターン領域から外れたときに高齢者の健康状態を要注意レベルと判定しているので、一人住まい高齢者の体調が徐々に悪化する状態を把握して大事に至る前に病院や介護施設等での治療を迅速に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】 図1のデータ処理装置の一例を示す詳細構成図である。
【図3】 踏力マットの一例を示す図である。
【図4】 生活データの平均値と標準偏差の一例を示す図である。
【図5】 相関係数の一例を示す図である。
【図6】 固有ベクトルの一例を示す図である。
【図7】 生活データの測定値の一例を示す図である。
【図8】 生活データの標準化データの一例を示す図である。
【図9】 固有ベクトルの主成分値の一例を示す図である。
【図10】 高齢者診断の画面表示の一例を示す図である。
【図11】 高齢者診断の画面表示の一例を示す図である。
【図12】 一般的な生涯健康度パターンを模式的に表した図である。
【符号の説明】
1…住宅、2…踏力マット、3…端末装置、4…端末装置、6…管理センタ、9…データ処理装置、10…担当医、11…管理パソコン、15…定数演算部、16…定数格納部、17…標準化データ演算部、18…相関係数演算部、19…相関係数行列演算部、20、22…ファイル、21…主成分演算部、23…表示編集部、24…表示制御部、25…表示部。
Claims (5)
- 高齢者が一人住まいしている住居において前記高齢者に関する複数の異なる生活データを測定する生活データ測定手段と、前記生活データ測定手段で測定した生活データを管理センタに送信する住居用端末装置と、前記管理センタに設けられ、一日単位で前記複数の異なる各生活データを取込み、単位期間における各生活データ毎の平均値と標準偏差を求めると共に前記単位期間における前記複数の各生活データ間の関連性を示す固有ベクトルを求めておき、前記高齢者に関する一日単位の前記複数の生活データの測定値を入力すると前記単位期間における各生活データ毎の平均値と標準偏差を用いて各生活データの標準化データを算出し、前記各生活データの標準化データと前記固有ベクトルの個有値の大きい第1主成分、第2主成分とによって前記高齢者の生活パターンのバラツキを求めて予め定めた通常パターン領域から外れたときに高齢者の健康状態を要注意レベルと判定する管理用端末装置とを具備することを特徴とする在宅者健康状態遠隔診断装置。
- 高齢者が一人住まいしている住居において前記高齢者に関する複数の異なる生活データを測定する生活データ測定手段と、前記生活データ測定手段で測定した生活データを管理センタに送信する住居用端末装置と、前記管理センタに設けられた管理用端末装置とから構成され、前記管理用端末装置は、一日単位で前記複数の異なる各生活データを取込み、単位期間における各生活データ毎の平均値と標準偏差を求める定数演算手段と、前記一日単位で前記複数の異なる各生活データに基づく前記単位期間における前記複数の各生活データ間の関連性を示す固有ベクトルを求める固有ベクトル演算手段と、前記高齢者に関する一日単位の前記複数の生活データの測定値を入力すると前記単位期間における各生活データ毎の平均値と標準偏差を用いて各生活データの標準化データを算出する標準化データ演算手段と、前記固有ベクトルの個有値の大きい第1主成分および第2主成分と前記各生活データの標準化データの演算によって当該一日単位の前記第1主成分と第2主成分の値を算出する主成分演算手段と、前記主成分演算手段で算出した前記第1主成分と第2主成分の値を2次元座標に表示する表示手段とを具備することを特徴とする在宅者健康状態遠隔診断装置。
- 高齢者が一人住まいしている住居において前記高齢者に関する複数の異なる生活データを測定する生活データ測定手段と、前記生活データ測定手段で測定した生活データを管理センタに送信する住居用端末装置と、前記管理センタに設けられた管理用端末装置とから構成され、前記管理用端末装置は、一日単位で前記複数の異なる各生活データを取込み、単位期間における各生活データ毎の平均値と標準偏差を求める定数演算手段と、前記一日単位で前記複数の異なる各生活データに基づく前記単位期間における前記複数の各生活データ間の関連性を示す固有ベクトルを求める固有ベクトル演算手段と、前記高齢者に関する一日単位の前記複数の生活データの測定値を入力すると前記単位期間における各生活データ毎の平均値と標準偏差を用いて各生活データの標準化データを算出する標準化データ演算手段と、前記固有ベクトルの個有値が大きく前記高齢者の生活リズムの影響度大の第1主成分および第2主成分と前記各生活データの標準化データの演算によって当該一日単位の前記第1主成分と第2主成分の値を算出する主成分演算手段と、前記第1主成分と第2主成分を夫々軸とする2次元座標に、前記主成分演算手段で算出した前記第1主成分と第2主成分の値を表示する表示手段とを具備することを特徴とする在宅者健康状態遠隔診断装置。
- 高齢者が一人住まいしている住居において前記高齢者に関する複数の異なる生活データを測定する生活データ測定手段と、前記生活データ測定手段で測定した生活データを管理センタに送信する住居用端末装置と、前記管理センタに設けられた管理用端末装置とから構成され、前記管理用端末装置は、一日単位で前記複数の異なる各生活データを取込み、単位期間における各生活データ毎の平均値と標準偏差を求める定数演算手段と、前記一日単位で前記複数の異なる各生活データに基づく前記単位期間における前記複数の各生活データ間の関連性を示す固有ベクトルを求める相関係数行列演算手段と、前記高齢者に関する一日単位の前記複数の生活データの測定値を入力すると前記単位期間における各生活データ毎の平均値と標準偏差を用いて各生活データの標準化データを算出する標準化データ演算手段と、前記固有ベクトルの個有値が大きく前記高齢者の生活リズムの影響度大の第1主成分および第2主成分と前記各生活データの標準化データの積和演算によって当該一日単位の前記第1主成分と第2主成分の値を算出する積和演算手段と、前記第1主成分と第2主成分を夫々軸とする2次元座標に、前記高齢者に対し予め定めた通常パターン領域と前記積和演算手段で算出した前記第1主成分と第2主成分の値を表示する表示手段とを具備することを特徴とする在宅者健康状態遠隔診断装置。
- 高齢者が一人住まいしている住居において前記高齢者に関する複数の異なる生活データを測定して管理センタに送信し、前記管理センタにおいて前記高齢者に関する一日単位毎の複数の異なる生活データに基づき前記高齢者の健康状態を診断するものであって、一日単位で前記複数の異なる各生活データを取込み、単位期間における各生活データ毎の平均値と標準偏差を求めると共に前記単位期間における前記複数の各生活データ間の関連性を示す固有ベクトルを求めておき、前記高齢者に関する一日単位の前記複数の生活データの測定値を入力すると前記単位期間における各生活データ毎の平均値と標準偏差を用いて各生活データの標準化データを算出し、前記各生活データの標準化データと前記固有ベクトルの個有値の大きい第1主成分、第2主成分とによって前記高齢者の生活パターンのバラツキを求めて前記高齢者の健康状態を判定する前記管理センタのプログラム。
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