JP3994689B2 - トルクコンバータのロックアップ解除制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無段変速機を含む自動変速機などに用いられるトルクコンバータの入出力要素間におけるロックアップを解除する時の制御を適切に行うための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トルクコンバータは、流体を介して入出力要素間で動力伝達を行うため、トルク変動吸収機能やトルク増大機能を果たす反面、伝動効率が悪い。
このため、これらトルク変動吸収機能や、トルク増大機能が不要な走行条件のもとでは、トルクコンバータの入出力要素間をロックアップクラッチにより直結するロックアップ式のトルクコンバータが今日では多用されている。
【0003】
ところで、トルクコンバータの入出力要素間を直結したロックアップ状態での走行中に運転者がアクセルペダルの踏み込みによりトルク増大を要求する時、トルクコンバータをロックアップ状態のままにしていたのでは、トルクコンバータがトルク変動吸収機能やトルク増大機能を持たない状態であるため、アクセルペダルの踏み込みでエンジントルクが急増して駆動系の捩れ振動が発生したのを吸収しきれないとか、トルク増大が得られないことからトルク不足感を運転者に与えるとかのため、運転性が損なわれる。
この傾向は、ロックアップ状態での惰性走行(コースト走行)後に運転者がアクセルペダルを踏み込んで加速する場合とか、ロックアップ状態での定常走行からアクセルペダルを踏み込む場合のように、エンジントルクが比較的小さい状態からアクセルペダルを踏み込む場合に特に顕著となる。
【0004】
そこで従来、例えば特開平8−233098号公報などに記載のごとく、上記のようなロックアップ状態での走行中にアクセルペダルの踏み込み操作があった時はトルクコンバータのロックアップを解除する技術が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところでこの際、アクセルペダルの踏み込み時に単純にロックアップを解除するのでは、以下の問題が発生する。
図10は、瞬時t1にアクセルペダルの踏み込みによりトルク増大要求があり、これに呼応して直ちにロックアップ解除指令が発せられた場合におけるエンジン回転数Ne(トルクコンバータ入力回転数)、タービン回転数Nt(トルクコンバータ出力回転数)、ロックアップクラッチ締結圧、ロックアップクラッチ締結容量(トルク)TLU、コンバータトルクTCV、エンジントルクTe、タービントルクTt(図8のようにトルクコンバータのトルク増幅率をtとするとTt=TLU+TCV×tで表される)の時系列変化を示す。
【0006】
瞬時t1のロックアップ解除指令によりロックアップクラッチ締結圧は図示のごとく一気に低下されてロックアップクラッチ締結容量TLUを即座に0となし、ロックアップを解除する。
ところでこの瞬間は未だエンジン回転数Neがほとんど上昇していないため、トルクコンバータ速度比eが図8のトルクコンバータ性能線図中に示すカップリングポイントCP近辺の値であってコンバータトルクTCVも0である。
そして、ロックアップの解除によりエンジン回転数Neが上昇し始めてタービン回転数Ntから乖離し始める瞬時t2よりコンバータトルクTCVが発生し、タービントルクTt(=TLU+TCV×t)も図示のごとくに上昇する。
【0007】
しかし瞬時t1〜t2間においてはロックアップクラッチ締結容量(トルク)TLUおよびコンバータトルクTCVが共に0であり、これらの和値であるタービントルクTt(トルクコンバータ出力トルク)も0となる。
従って、瞬時t1〜t2間においてトルク伝達ができない状態が発生することとなり、特に緩加速状態からアクセルペダルの踏み込みによりロックアップを解除する時は急激なトルクコンバータ出力トルクの落ち込みで大きな減速ショックが発生するという問題を生ずる。
【0008】
この対策としては図11に示すように、瞬時t1のロックアップ解除指令によってもロックアップクラッチ締結圧を一気に低下させず徐々に低下させ、ロックアップクラッチ締結容量TLUを瞬時t1〜t2間において0とならないようにすることで、ロックアップクラッチ締結容量TLUおよびコンバータトルクTCVの和値であるタービントルクTt(トルクコンバータ出力トルク)が瞬時t1〜t2間において0にならないようにすることが考えられる。
この場合、タービントルクTt(トルクコンバータ出力トルク)のトルク波形から明らかなように、瞬時t1〜t2間においてもトルク伝達ができない状態になることがなく、急激なトルクコンバータ出力トルクの落ち込みで大きな減速ショックが発生するという上記の問題を回避し得る。
【0009】
しかるに本対策では、ロックアップ解除の遅延によりトルクコンバータのトルク増大機能を速やかに利用することができず、図11にΔt0で示すようにタービントルクTt(トルクコンバータ出力トルク)の上昇遅れが発生し、加速応答の悪化を避けられないという別の問題を生ずる。
【0010】
請求項1に記載の第1発明は、上記したトルクの落ち込みによる減速ショックの低減と、加速応答の悪化の回避とを両立させ得るトルクコンバータのロックアップ解除制御装置を提案することを目的とする。
【0011】
第1発明は更に、エンジン要求負荷が小さい時に不必要にロックアップの解除が遅くならないようにして上記の作用効果を一層顕著なものにし得るようにすることをも目的とする。
【0012】
請求項2に記載の第2発明は、第1発明とは異なる対策によって、エンジン要求負荷が小さい時に不必要にロックアップの解除が遅くならないようにし、これにより上記第1発明の作用効果を一層顕著なものにし得るようにしたトルクコンバータのロックアップ解除制御装置を提案することを目的とする。
【0013】
請求項3に記載の第3発明は、エンジン要求負荷が小さい時に不必要にロックアップ解除速度が低くならないようにして上記第1発明の作用効果を一層顕著なものにし得るようにしたトルクコンバータのロックアップ解除制御装置を提案することを目的とする。
【0014】
請求項4に記載の第4発明は、アクセルペダルの踏み込み速度が速い時に不必要にロックアップ解除速度が低くならないようにして上記第1発明の作用効果を一層顕著なものにし得るようにしたトルクコンバータのロックアップ解除制御装置を提案することを目的とする。
【0015】
請求項5に記載の第5発明は、加速応答の悪化の回避を実現するためにロックアップ解除速度を速くしても大丈夫なようなコンバータトルクが発生したのを一層正確に判断し得るようにしたトルクコンバータのロックアップ解除制御装置を提案することを目的とする。
【0016】
請求項6記載の第6発明は、加速応答の悪化の回避を一層確実に実現し得るようにしたトルクコンバータのロックアップ解除制御装置を提案することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
これらの目的のため、先ず第1発明によるトルクコンバータのロックアップ解除制御装置は、
トルクコンバータの入出力要素間を直結したロックアップ状態での走行中にアクセルペダル操作によるトルク増大要求がある時、トルクコンバータ入出力要素間の直結を解いてロックアップを解除するようにしたトルクコンバータを、要旨構成の基礎前提とする。
【0018】
第1発明によるトルクコンバータのロックアップ解除制御装置は、上記トルクコンバータにおいて、
トルクコンバータの流体伝動による所定のコンバータトルクが発生するまではロックアップ容量を0にしないで最大値よりも小さな所定のロックアップ容量になるよう低下させ、
コンバータトルクが前記所定のコンバータトルクになった後にロックアップ容量の低下速度を速めて速やかなロックアップの解除が行われるよう構成し、
前記所定のコンバータトルクを前記トルク増大要求の直前におけるエンジン要求負荷が小さいほど小さくなるよう設定したことを特徴とするものである。
【0019】
第2発明によるトルクコンバータのロックアップ解除制御装置は、第1発明において、
前記所定のロックアップ容量を前記トルク増大要求の直前におけるエンジン要求負荷が小さいほど小さくなるよう設定したことを特徴とするものである。
【0020】
第3発明によるトルクコンバータのロックアップ解除制御装置は、第1発明または第2発明において、
前記ロックアップ容量の低下を前記トルク増大要求の直前におけるエンジン要求負荷が小さいほど高速で行わせるよう構成したことを特徴とするものである。
【0021】
第4発明によるトルクコンバータのロックアップ解除制御装置は、第1発明乃至第3発明のいずれかにおいて、
前記ロックアップ容量の低下を前記トルク増大要求が高速である時ほど高速で行わせるよう構成したことを特徴とするものである。
【0022】
第5発明によるトルクコンバータのロックアップ解除制御装置は、第1発明乃至第4発明のいずれかにおいて、
前記所定のコンバータトルクが発生したか否かを、トルクコンバータの出力回転数と入力回転数との比で表される速度比が所定速度比まで低下したか否かにより判断するよう構成したことを特徴とするものである。
【0023】
第6発明によるトルクコンバータのロックアップ解除制御装置は、第5発明において、
前記所定速度比をトルクコンバータがトルク増大作用を行うカップリングポイント相当値以上の領域における速度比に定めたことを特徴とするものである。
【0024】
【発明の効果】
第1発明によるトルクコンバータのロックアップ解除制御装置は、
トルクコンバータのロックアップ状態での走行中にアクセルペダル操作によるトルク増大要求がある時、トルクコンバータ入出力要素間の直結を解いてロックアップを解除することで、エンジントルクの急増による駆動系の捩れ振動を防止したり、トルク不足感をなくして運転性を確保することができる。
【0025】
ところでこの際、第1発明においては所定のコンバータトルクが発生するまでロックアップ容量を0にしないで最大値よりも小さな所定のロックアップ容量になるよう低下させ、上記所定のコンバータトルクが発生するようになった後にロックアップ容量の低下速度を速めて速やかなロックアップの解除を行わせる。
これがため図10につき前述したような現象、つまりコンバータトルクが未だ発生していないのにロックアップ容量が即座に0になるような現象を生ずることがなく、ロックアップ容量およびコンバータトルクが共に0になってこれらの和値であるトルクコンバータ出力トルクが0になる事態の発生により大きな減速ショックが発生するという問題を回避することができる。
【0026】
なおこの問題回避のために図11につき前述したごとく、ロックアップ解除指令によってもロックアップ容量を一気に低下させず徐々に低下させた場合は、ロックアップ解除の遅延によりトルクコンバータ出力トルクの上昇遅れが発生し、加速応答の悪化を生ずるが、第1発明によれば上記所定のコンバータトルクが発生した後にロックアップ容量の低下速度を速めて速やかなロックアップの解除を行わせることから、当該加速応答の悪化も生ずることがない。
【0027】
よって第1発明によれば、上記したトルクの落ち込みによる減速ショックの低減と、加速応答の悪化の回避とを両立させることができる。
【0028】
第1発明においては更に、上記所定のコンバータトルクを上記トルク増大要求の直前におけるエンジン要求負荷が小さいほど小さくなるよう設定したため、
トルク増大要求の直前におけるエンジン要求負荷が小さいほどロックアップ解除時におけるトルクの落ち込みが小さくて上記減速ショックの問題が小さい事実に良く符合し、トルク増大要求の直前におけるエンジン要求負荷が小さいときほど早期にロックアップ容量の低下速度を速めることとなり、トルク増大要求の直前におけるエンジン要求負荷が小さい時に不必要にロックアップの解除が遅くならないようにし得ることとなって上記の作用効果を一層顕著なものにすることができる。
【0029】
第2発明においては、前記所定のロックアップ容量を前記トルク増大要求の直前におけるエンジン要求負荷が小さいほど小さくなるよう設定したため、
トルク増大要求の直前におけるエンジン要求負荷が小さいほどロックアップ解除時におけるトルクの落ち込みが小さくて上記減速ショックの問題が小さい事実に良く符合し、エンジン要求負荷が小さいときほど速やかにロックアップが解除され得ることとなって、第1発明とは異なる対策により、エンジン要求負荷が小さい時に不必要にロックアップの解除が遅くならないようにすることができ、前記第1発明の作用効果を一層顕著なものにすることができる。
【0030】
第3発明においては、前記ロックアップ容量の低下を前記トルク増大要求の直前におけるエンジン要求負荷が小さいほど高速で行わせるよう構成したため、
トルク増大要求の直前におけるエンジン要求負荷が小さいほどロックアップ解除時におけるトルクの落ち込みが小さくて上記減速ショックの問題が小さい事実に良く符合し、エンジン要求負荷が小さい時に不必要にロックアップ解除速度が低くならないようにすることができ、前記第1発明の作用効果を一層顕著なものにすることができる。
【0031】
第4発明においては、前記ロックアップ容量の低下を前記トルク増大要求が高速である時ほど高速で行わせるよう構成したため、
トルク増大要求が高速である時、つまり運転者による加速要求が強い時に、ロックアップ容量の低下によるロックアップ解除を高速で行わせて、要求通りの加速応答を実現することができ、前記第1発明の作用効果を一層顕著なものにし得る。
【0032】
第5発明においては、前記所定のコンバータトルクが発生したか否かを、トルクコンバータの出力回転数と入力回転数との比で表される速度比が所定速度比まで低下したか否かにより判断するよう構成したため、
加速応答の悪化の回避を実現するためにロックアップ解除速度を速くしても大丈夫なようなコンバータトルクが発生したのを一層正確に判断することができて大いに有利である。
【0033】
第6発明においては、前記所定速度比をトルクコンバータがトルク増大作用を行うカップリングポイント相当値以上の領域における速度比に定めたため、
速度比がカップリングポイント未満になった時ロックアップ容量が低下していることから速度比の低下(トルクコンバータのスリップ増大)が促進される結果、トルクコンバータのトルク増大作用により加速応答の悪化の回避を一層確実に実現することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態になるトルクコンバータのロックアップ解除制御装置を示し、トルクコンバータ2は周知であるため詳細な図示を省略したが、エンジンクランクシャフトに結合されてエンジン駆動されるトルクコンバータ入力要素としてのポンプインペラと、自動変速機用歯車変速機構の入力軸に結合されたトルクコンバータ出力要素としてのタービンランナと、これらポンプインペラおよびタービンランナ間を直結するロックアップクラッチ2cとを具備するロックアップ式トルクコンバータとする。
【0035】
ロックアップクラッチ2cの締結力は、その前後におけるアプライ圧PAとレリーズ圧PRの差圧(ロックアップクラッチ締結圧)により決まり、アプライ圧PAがレリーズ圧PRよりも低ければ、ロックアップクラッチ2cは釈放されてポンプインペラおよびタービンランナ間を結合させず、トルクコンバータ2はスリップ制限しないコンバータ状態で機能する。
この間トルクコンバータ出力トルク(タービントルク)は、流体伝動によるコンバータトルクのみで決まる。
【0036】
アプライ圧PAがレリーズ圧PRよりも高い場合、その差圧に応じた力でロックアップクラッチ2cを締結させ、トルクコンバータ2はロックアップクラッチ2cの締結力に応じたロックアップ容量(トルク)とコンバータトルクとの和値で表されるトルクを出力するスリップ制御状態で機能する。
そして当該差圧が設定値よりも大きくなると、ロックアップクラッチ2cが完全締結されてポンプインペラおよびタービンランナ間の相対回転をなくし、トルクコンバータ2をロックアップ状態で機能させる。
この間トルクコンバータ出力トルク(タービントルク)は、ロックアップクラッチ2cの締結力に応じたロックアップ容量(トルク)のみで決まる。
【0037】
アプライ圧PAおよびレリーズ圧PRはスリップ制御弁11によりこれらを決定するものとし、スリップ制御弁11は、コントローラ12によりデューティ制御されるロックアップソレノイド13からの信号圧PSに応じてアプライ圧PAおよびレリーズ圧PRを制御するが、これらスリップ制御弁11およびロックアップソレノイド13を以下に説明する周知のものとする。
即ち、先ずロックアップソレノイド13は一定のパイロット圧PPを元圧として、コントローラ12からのソレノイド駆動デューティDの増大につれ信号圧PSを高くするものとする。
【0038】
一方でスリップ制御弁11は、上記の信号圧PSおよびフィードバックされたレリーズ圧PRを一方向に受けると共に、他方向にバネ11aのバネ力およびフィードバックされたアプライ圧PAを受け、信号圧PSの上昇につれて、アプライ圧PAとレリーズ圧PRとの間の差圧(PA−PR)で表されるロックアップクラッチ2cの締結圧を図2に示すように変化させるものとする。
【0039】
ここでロックアップクラッチ締結圧(PA−PR)の負値はPR>PAによりトルクコンバータ2をコンバータ状態にすることを意味し、逆にロックアップクラッチ締結圧(PA −PR )が正である時は、その値が大きくなるにつれてロックアップクラッチ2cの締結力(ロックアップ容量)が増大され、トルクコンバータ2のスリップ回転を大きく制限し、遂にはトルクコンバータ2をロックアップ状態にすることを意味する。
【0040】
そして、ソレノイド駆動デューティDを制御するコントローラ12には、エンジン要求負荷を表すスロットル開度TVOを検出するスロットル開度センサ21からの信号と、
エンジン回転数Ne(トルクコンバータ入力回転数)を検出するエンジン回転センサ22からの信号と、
タービンランナの回転数Nt(トルクコンバータ出力回転数)を検出するタービン回転センサ23からの信号と、
車速VSPを検出する車速センサ24からの信号とをそれぞれ入力することとする。
【0041】
コントローラ12は、これら入力情報のうち先ずスロットル開度TVOおよび車速VSPからロックアップ領域での運転中かコンバータ領域での運転中かを判定し、これらの判定結果に応じてロックアップクラッチ2cを締結または釈放させることによりトルクコンバータ2をロックアップ状態またはコンバータ状態にする。
一方でコントローラ12は、ロックアップ状態での走行中図3に示す制御プログラムを一定時間ごとの定時割り込みにより実行し、本発明が狙いとするロックアップ解除制御を以下のごとくに行う。
【0042】
先ずステップS31において、アクセルペダルの踏み込みによるトルク増大要求があって、ロックアップ状態のままだとエンジントルクの急増による駆動系の捩れ振動が発生したりトルク不足感を伴うことからロックアップを解除すべき運転状態になったか否かを判定する。
このトルク増大要求時のロックアップ解除条件としては、例えばスロットル開度TVOが設定開度TVOs以上で、且つ、本制御プログラムの演算サイクル中におけるスロットル開度TVOの増大量ΔTVO(スロットル開度増加速度:アクセルペダル踏み込み速度)が所定速度ΔTVOs以上となった時とすることができる。
【0043】
ロックアップ解除条件が成立しなければ制御をそのまま終了するが、ロックアップ解除条件が成立した時はステップS32において、ロックアップ解除時におけるロックアップクラッチ締結圧(PA −PR )の初期圧(ロックアップ解除初期圧)P1を図4のマップに基づき、ロックアップ解除条件立時(トルク増大要求時)の直前におけるスロットル開度TVOから求め、
また前期および後期のロックアップクラッチ締結圧低下速度ΔP1,ΔP2(ロックアップ解除速度)を図5のマップに基づき、ロックアップ解除条件立時(トルク増大要求時)の直前におけるスロットル開度TVOから求め、
更にロックアップ解除速度切り換え判定速度比e’を図7のマップに基づき、ロックアップ解除条件立時(トルク増大要求時)の直前におけるスロットル開度TVOから求める。
【0044】
図4に示したロックアップ解除初期圧P1は、ロックアップ解除時におけるトルクの落ち込み方に対応するロックアップ容量を持つようなロックアップクラッチ締結圧とし、当該ロックアップ解除条件立時(トルク増大要求時)の直前におけるスロットル開度TVO(エンジン要求負荷)が小さいほどロックアップ解除時におけるトルクの落ち込みが小さいことから、ロックアップ解除初期圧P1は図4に示すごとくロックアップ解除条件立時(トルク増大要求時)の直前におけるスロットル開度TVO(エンジン要求負荷)が小さいほど低くする。
【0045】
また図5に示す前期および後期のロックアップクラッチ締結圧低下速度ΔP1,ΔP2(ロックアップ解除速度)は、ロックアップ解除時におけるトルクの落ち込み方に対応するロックアップクラッチ締結圧低下速度とし、ロックアップ解除条件立時(トルク増大要求時)の直前におけるスロットル開度TVO(エンジン要求負荷)が小さいほどロックアップ解除時におけるトルクの落ち込みが小さくて速やかなロックアップ解除が可能であることから、前期および後期のロックアップクラッチ締結圧低下速度ΔP1,ΔP2(ロックアップ解除速度)は図5に示すごとくロックアップ解除条件立時(トルク増大要求時)の直前におけるスロットル開度TVO(エンジン要求負荷)が小さいほど速くする。
【0046】
ここで前期のロックアップクラッチ締結圧低下速度ΔP1は、後期のロックアップクラッチ締結圧低下速度ΔP2よりも遅くし、これにより前期では図10につき前述したトルクの落ち込みによる減速ショックの防止を実現し、後期では図11につき前述したロックアップ解除の応答遅れによる加速応答の悪化の防止を実現する。
【0047】
なお前期および後期のロックアップクラッチ締結圧低下速度ΔP1,ΔP2(ロックアップ解除速度)は図5に示すごとく予めマップとして与えておく代わりに、同図に式をもって表したが、ロックアップ解除条件立時(トルク増大要求時)の直前におけるスロットル開度TVO(エンジン要求負荷)ごとの基本的な低下速度ΔP1’,ΔP2’に、例えば図7のごときアクセルペダル踏み込み速度ΔTVOごとの踏み込み速度係数Kを乗じて求めることもできる。
【0048】
図7に示したロックアップ解除速度切り換え判定速度比e’は、前期のロックアップクラッチ締結圧低下速度ΔP1から後期のロックアップクラッチ締結圧低下速度ΔP2へと切り換えてロックアップ解除速度を速くすべき、所定のコンバータトルクを発生する速度比とし、
ロックアップ解除条件立時(トルク増大要求時)の直前におけるスロットル開度TVO(エンジン要求負荷)が小さいほどロックアップ解除時におけるトルクの落ち込みが小さくて早期にロックアップ解除速度を速くすることが可能であることから、
ロックアップ解除速度切り換え判定速度比e’(上記所定のコンバータトルク)は図7に示すごとく、ロックアップ解除条件立時(トルク増大要求時)の直前におけるスロットル開度TVO(エンジン要求負荷)が小さいほど大きく(小さく)する。
【0049】
図3の次のステップS33では、ロックアップクラッチ締結圧(PA−PR)が前記のロックアップ解除初期圧P1になるようロックアップソレノイド13の駆動デューティDを決定して出力する。
次いでステップS34において、トルクコンバータ速度比eがロックアップ解除速度切り換え判定速度比e’未満になったか否かにより、前記所定のコンバータトルクを発生する状態になったか否かを、つまり図10につき前述した減速ショックの問題を発生することがなくなってロックアップ解除速度を応答性の確保のために上昇させてもよくなったか否かを判定する。
【0050】
トルクコンバータ速度比eがロックアップ解除速度切り換え判定速度比e’未満になるまでは、ステップS35においてロックアップクラッチ締結圧(PA−PR)が前期の速度ΔP1で低下するようロックアップソレノイド13の駆動デューティDを漸減させて出力する。
ステップS34でトルクコンバータ速度比eがロックアップ解除速度切り換え判定速度比e’未満になったと判定する時は、ステップS36においてロックアップクラッチ締結圧(PA−PR)が0未満になったと判定するまでの間、ステップS37においてロックアップクラッチ締結圧(PA−PR)が後期の速度ΔP2で低下するようロックアップソレノイド13の駆動デューティDを漸減させて出力する。
【0051】
ステップS36においてロックアップクラッチ締結圧(PA−PR)が0未満になったと判定する時は、ステップS38においてロックアップソレノイド13の駆動デューティDを最低値にし、これによりロックアップクラッチ締結圧(PA−PR)をトルクコンバータがコンバータ状態にされるような値に保持する。
【0052】
上記実施の形態になるロックアップ解除制御装置の動作を図9に示すタイムチャートにより説明する。
図9は、瞬時t1にアクセルペダルの踏み込みによりトルク増大要求があり、これに呼応してロックアップ解除指令が発せられた場合におけるエンジン回転数Ne(トルクコンバータ入力回転数)、タービン回転数Nt(トルクコンバータ出力回転数)、ロックアップクラッチ締結圧(PA−PR)、ロックアップクラッチ締結容量(ロックアップ容量)TLU、コンバータトルクTCV、エンジントルクTe、タービントルクTt(=TLU+TCV×t)の時系列変化を示す。
【0053】
瞬時t1のロックアップ解除指令によりロックアップクラッチ締結圧(PA−PR)を図示のごとく初期圧P1まで一気に低下させるが、初期圧P1の前記設定によりロックアップクラッチ締結容量TLUが即座に0になることはなく、ロックアップクラッチ2cは締結状態を保つ。
その後はロックアップクラッチ締結圧(PA−PR)を前期の低下速度ΔP1で徐々に低下させる。この間に瞬時t2よりロックアップクラッチ2cが滑り始めてエンジン回転数Neの図示のごとき上昇を可能にし、トルクコンバータは瞬時t2以後エンジン回転数Ne(トルクコンバータ入力回転数)と、タービン回転数Nt(トルクコンバータ出力回転数)との差(スリップ)によりコンバータトルクTCVを発生するようになる。
【0054】
そして、コンバータトルクTCVが所定値に達したのをトルクコンバータ速度比e<e’により判定する瞬時t3以後は、ロックアップクラッチ締結圧(PA−PR)を後期の低下速度ΔP2で速やかに低下させ、ロックアップクラッチ締結圧(PA−PR)が0未満になる瞬時t4にこれを一気に最低値してロックアップを解除する。
【0055】
ところで、上記の通り所定のコンバータトルクTCVが発生する瞬時t3までロックアップクラッチ締結圧(PA−PR)を0にしないで、つまりロックアップクラッチ締結容量(ロックアップ容量)TLUを0にしないで、最大値よりも小さな所定の値(初期圧P1相当値)に低下させることとし、その後にロックアップクラッチ締結圧(PA−PR)の低下、つまりロックアップクラッチ締結容量(ロックアップ容量)TLUの低下を速めることとしたら、
エンジン回転数Neが上昇してコンバータトルクTCVを発生するようになる瞬時t2に、ロックアップクラッチ締結容量(ロックアップ容量)TLUが未だ存在していて、これらコンバータトルクTCVとトルク増幅率tとの乗算値およびロックアップクラッチ締結容量(ロックアップ容量)TLUの和値であるタービントルクTt(=TLU+TCV×t)が瞬時t1〜t2間において0になることがない。
【0056】
従ってトルクコンバータはタービントルク(トルクコンバータ出力トルク)Ttの波形から明らかなように、瞬時t1〜t2間においてもトルク伝達ができない状態になることがなく、アクセルペダルの踏み込みによりロックアップを解除する時に急激なトルクコンバータ出力トルクTtの落ち込みで大きな減速ショックが発生するという問題を回避することができる。
【0057】
しかも、所定のコンバータトルクTCVが発生する瞬時t3以後はロックアップクラッチ締結圧(PA−PR)の低下、つまりロックアップクラッチ締結容量(ロックアップ容量)TLUの低下を速めるため、ロックアップ解除の遅延を取り戻して所定通りの時間で当該ロックアップ解除を実現することができる。
従って、図11にΔt0で示すようなタービントルクTt(トルクコンバータ出力トルク)の上昇遅れを、図9に同符号で示すように短縮することができ、図11につき前述した加速応答の悪化に関する問題も生ずることがない。
よって本実施の形態によれば、図10につき前述したトルクコンバータ出力トルクTtの落ち込みによる減速ショックの低減と、図11につき前述した加速応答の悪化の回避とを両立させることができる。
【0058】
また前記した実施の形態においては図7に示すごとく、ロックアップ解除速度を切り換えるタイミングを判定するためのロックアップ解除速度切り換え判定速度比e’(前記所定のコンバータトルク)を、アクセルペダルの踏み込みによるトルク増大要求の直前におけるスロットル開度TVO(エンジン要求負荷)が小さいほど大きく(小さく)なるよう設定したため、
トルク増大要求の直前におけるエンジン要求負荷が小さいほどロックアップ解除時におけるトルクの落ち込みが小さくて前記減速ショックの問題が小さい事実に良く符合し、エンジン要求負荷が小さいときほど早期にロックアップ容量の低下速度を速めることとなり、エンジン要求負荷が小さい時に不必要にロックアップの解除が遅くならないようにして上記の作用効果を一層顕著なものにすることができる。
【0059】
更に、ロックアップ解除初期圧P1により規定した前記所定のロックアップ容量を図4に示すごとく、前記トルク増大要求の直前におけるエンジン要求負荷が小さいほど小さくなるよう設定したため、
トルク増大要求の直前におけるエンジン要求負荷が小さいほどロックアップ解除時におけるトルクの落ち込みが小さくて前記減速ショックの問題が小さい事実に良く符合し、エンジン要求負荷が小さいときほど速やかにロックアップが解除され得ることとなって、これによっても、エンジン要求負荷が小さい時に不必要にロックアップの解除が遅くならないようにすることができ、前記の作用効果を一層顕著なものにすることができる。
【0060】
加えて、ロックアップの解除に際して行う前記ロックアップ容量の低下を、図5にロックアップクラッチ締結圧低下速度ΔP1,ΔP2として示したごとく、トルク増大要求の直前におけるエンジン要求負荷が小さいほど高速で行わせるよう構成したため、
トルク増大要求の直前におけるエンジン要求負荷が小さいほどロックアップ解除時におけるトルクの落ち込みが小さくて前記減速ショックの問題が小さい事実に良く符合し、エンジン要求負荷が小さい時に不必要にロックアップ解除速度が低くならないようにすることができ、前記の作用効果を一層顕著なものにすることができる。
【0061】
またロックアップの解除に際して行う前記ロックアップ容量の低下を、図6に示す係数Kの採用によりトルク増大要求が高速である時ほど高速で行わせるよう構成したため、
トルク増大要求が高速である時、つまり運転者による加速要求が強い時に、ロックアップ容量の低下によるロックアップ解除を高速で行わせて、要求通りの加速応答を実現することができ、前記の作用効果を一層顕著なものにし得る。
【0062】
更に、前記所定のコンバータトルクが発生したか否かを、トルクコンバータの出力回転数と入力回転数との比で表される速度比eが所定速度比e’まで低下したか否かにより判断するよう構成したため、
加速応答の悪化の回避を実現するためにロックアップ解除速度を速くしても大丈夫なような所定のコンバータトルクが発生したのを一層正確に判断することができて大いに有利である。
【0063】
また、前記所定速度比e’を図7に示すごとくトルクコンバータがトルク増大作用を行うカップリングポイントCP相当値以上の領域における速度比に定めたため、
速度比がカップリングポイント未満になった時ロックアップ容量が低下していることから速度比の低下(トルクコンバータのスリップ増大)が促進される結果、図8から明らかなごとくトルクコンバータのトルク増大作用により加速応答の悪化の回避を一層確実に実現することができる。
【0064】
なお前記では、図9のロックアップ解除指令瞬時t1にロックアップクラッチ締結圧(PA−PR)を初期圧P1まで一気に低下させた後、ロックアップクラッチ締結圧(PA−PR)を前期の低下速度ΔP1で徐々に低下させることとしたが、瞬時t1〜t3の間に任意に定めた初期圧を保つようにしたり、瞬時t1に初期圧P1を与えずこの時の締結圧から徐々に低下させるようにして前記したと同様の作用が得られるようにしてもよい。
【0065】
また前記では、速度比eに応じてロックアップクラッチ締結圧の低下速度をΔP1,ΔP2間で切り換えるようにしたが、速度比eに応じてロックアップクラッチ締結圧の低下速度を連続的に変化させるようにしてもよい。
更に、制御を簡略化するためにロックアップ解除速度切り換え判定速度比e’をスロットル開度TVOに応じて変化させる代わりに定数としたり、ロックアップ解除速度の切り換え判定を速度比eではなくトルクコンバータ入出力回転差により行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態になるロックアップ解除制御装置を示す概略系統図である。
【図2】 同実施の形態においてロックアップソレノイドから出力される信号圧とロックアップクラッチ締結圧との関係を示す線図である。
【図3】 同実施の形態においてコントローラが実行する加速時ロックアップ解除制御プログラムを示すフローチャートである。
【図4】 同実施の形態において定めたロックアップ解除初期圧の変化特性図である。
【図5】 同実施の形態において定めたロックアップクラッチ締結圧低下速度の変化特性図である。
【図6】 同実施の形態において定めるべきロックアップクラッチ締結圧低下速度をアクセルペダルの踏み込み速度に応じても変化させるようにするための踏み込み速度係数の変化特性図である。
【図7】 同実施の形態において定めたロックアップ解除速度切り換え判定速度比の変化特性図である。
【図8】 トルクコンバータの速度比と、トルク増幅率との関係を示す、トルクコンバータ性能線図である。
【図9】 上記実施の形態になる加速時ロックアップ解除制御の動作タイムチャートである。
【図10】 従来の加速時ロックアップ解除制御の問題を説明するのに用いた動作タイムチャートである。
【図11】 同問題点を解消するための一般的な対策をした場合における加速時ロックアップ解除制御の動作タイムチャートである。
【符号の説明】
2 トルクコンバータ
2c ロックアップクラッチ
11 スリップ制御弁
12 コントローラ
13 ロックアップソレノイド
21 スロットル開度センサ
22 エンジン回転センサ
23 タービン回転センサ
24 車速センサ
Claims (6)
- トルクコンバータの入出力要素間を直結したロックアップ状態での走行中にアクセルペダル操作によるトルク増大要求がある時、トルクコンバータ入出力要素間の直結を解いてロックアップを解除するようにしたトルクコンバータにおいて、
トルクコンバータの流体伝動による所定のコンバータトルクが発生するまではロックアップ容量を0にしないで最大値よりも小さな所定のロックアップ容量になるよう低下させ、
コンバータトルクが前記所定のコンバータトルクになった後にロックアップ容量の低下速度を速めて速やかなロックアップの解除が行われるよう構成し、
前記所定のコンバータトルクを前記トルク増大要求の直前におけるエンジン要求負荷が小さいほど小さくなるよう設定したことを特徴とするトルクコンバータのロックアップ解除制御装置。 - 請求項1 において、前記所定のロックアップ容量を前記トルク増大要求の直前におけるエンジン要求負荷が小さいほど小さくなるよう設定したことを特徴とするトルクコンバータのロックアップ解除制御装置。
- 請求項1または2において、前記ロックアップ容量の低下を前記トルク増大要求の直前におけるエンジン要求負荷が小さいほど高速で行わせるよう構成したことを特徴とするトルクコンバータのロックアップ解除制御装置。
- 請求項1乃至3のいずれか1項において、前記ロックアップ容量の低下を前記トルク増大要求が高速である時ほど高速で行わせるよう構成したことを特徴とするトルクコンバータのロックアップ解除制御装置。
- 請求項1乃至4のいずれか1項において、前記所定のコンバータトルクが発生したか否かを、トルクコンバータの出力回転数と入力回転数との比で表される速度比が所定速度比まで低下したか否かにより判断するよう構成したことを特徴とするトルクコンバータのロックアップ解除制御装置。
- 請求項5において、前記所定速度比をトルクコンバータがトルク増大作用を行うカップリングポイント相当値以上の領域における速度比に定めたことを特徴とするトルクコンバータのロックアップ解除制御装置。
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