JP3994461B2 - ヒドロキシアルキルピリジン誘導体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、N−アセチル−β−D−グルコサミニダーゼ(以下NAGと略記する。)、N−アセチル−β−D−ガラクトサミニダーゼ、N−アセチル−β−D−ヘキソサミニダーゼ等の活性測定用基質として有用な新規なヒドロキシアルキルピリジン誘導体及びそれを用いたNAG活性測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
NAGは、種々の細胞のリソソーム内に存在する糖質分解酵素の1つであり、特に腎の近位尿細管上皮細胞に多く含まれ、腎尿細管の障害により尿中へ放出される事から、尿中のその活性は腎疾患の重要な指標となっている。尿中NAG活性は、急性腎不全、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、更に糖尿病性腎症や薬剤による腎障害により上昇する事が知られており、これら腎疾患の早期診断指標となる。また、腎移植後の拒絶反応の早期診断の指標としても、尿中NAG活性は重要な役割を果たしている。即ち、NAG活性を測定することには、臨床的見地から極めて重要な意義がある。
【0003】
従来、NAG活性測定法として様々な方法が開発されているが、基本的にはNAGの作用により遊離する化合物を蛍光検出計、或いは紫外−可視吸光度計を用いて検出し、これに基づいてNAG活性を求める方法が一般に採用されている。現在の臨床検査分野に於ける測定法は、合成基質を用いた初速度測定法が主流となっている。
【0004】
以下に、従来のNAG活性測定方法の代表的な例を挙げる。
▲1▼4−メチルウンベリフェリル−N−アセチル−β−D−グルコサミニドを基質として、NAGによる酵素反応によって遊離した4−メチルウンベリフェロンの蛍光強度を測定する方法〔特開平1−265897号公報〕。
▲2▼p−ニトロフェニル−N−アセチル−β−D−グルコサミニドを基質として、NAGによる酵素反応によって遊離したp−ニトロフェノールをアルカリ性にすることで発色させ、それを比色定量する方法〔Clin.Chem.,27,1180(1981)〕。
▲3▼ソジオ−m−クレゾールスルホフタレイニル−N−アセチル−β−D−グルコサミニドを基質として、NAGによる酵素反応によって遊離したm−クレゾールスルホフタレインをアルカリ性にすることで発色させ、それを比色定量する方法〔Clin.Chem.,29,1713(1983)、特公昭63−7196号公報〕。
▲4▼ソジオ−3,3’−ジクロロフェノールスルホフタレイニル−N−アセチル−β−D−グルコサミニドを基質として、NAGによる酵素反応によって遊離したクロロフェノールレッドを直接比色定量する方法〔特開昭63−309199号公報〕。
▲5▼2−クロロ−4−ニトロフェニル−N−アセチル−β−D−グルコサミニドを基質として、NAGによる酵素反応によって遊離した2−クロロ−4−ニトロフェノールを直接比色定量する方法〔特開昭62−48399号公報等〕。
▲6▼2−フルオロ−4−ニトロフェニル−N−アセチル−β−D−グルコサミニドを基質として、NAGによる酵素反応によって遊離した2−フルオロ−4−ニトロフェノールを直接比色定量する方法〔特公平5−73398号公報、特公平5−55517号公報等〕。
▲7▼p−ニトロフェニル−N−アセチル−β−D−グルコサミニドを基質として、NAGによる酵素反応によって遊離したN−アセチルグルコサミンに、酸化酵素(N−アセチルグルコサミンオキシダーゼ:NAGOD)を作用させ、発生する過酸化水素をパーオキシダーゼ(POD)存在下で発色剤と反応させ比色定量する方法〔機器・試薬,13,887(1990)〕。
▲8▼6−メチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド(6−MPT−NAGS)を基質として、NAGによる酵素反応によって遊離する6−メチル−2−ピリジンチオールを特定波長に於けるその吸光度を求めることにより定量する方法〔特開平5−59083号公報〕
【0005】
しかしながら、これらの方法は各々に基質の水溶性、測定感度、溶液の安定性等の面で多くの問題を抱えている。
即ち、例えば上述した測定方法のうち、▲1▼の測定法では蛍光強度計の様な特殊な測定装置を必要とするという問題点を有している。
▲2▼及び▲3▼の測定法は、酵素反応により遊離する色原体のpKaが高く、NAGの至適pHでは比色定量を行うに足る測定感度が得られないため、反応停止後アルカリ性として比色定量を行わなければならず、現在主流を占めているレートアッセイには使用できない。即ち、迅速な多数検体処理には不向きな測定法である。
【0006】
そこでレートアッセイに適用可能な測定法として、色原体部分のpKaを低下させた基質を用いた▲4▼、▲5▼及び▲6▼の測定法も開発されているが、これらは、NAGの至適pHである4.5〜5.0において、酵素反応により生成した色原体の解離(即ち、発色)が不十分であるため、溶液中の僅かなpH変動によっても吸光度が変動し、測定誤差を生じやすく、しかも基質溶解後の液状での長期安定性が悪いという問題点を有している。
【0007】
また、▲2▼、▲5▼及び▲6▼の測定法では、遊離する色原体の極大吸収波長が400nm前後であるため、ビリルビン等生体成分の影響を受けやすいという問題点も有している。 ▲7▼に示される測定法はレートアッセイに適用可能であるが、酸化酵素を使用して過酸化水素を発生させる測定系であるため、生体成分に含まれるビリルビン等の還元性物質やその他の共存物質の影響を受けやすく、また、上記▲4▼、▲5▼及び▲6▼の基質と同様、基質の溶解後の安定性が悪いという問題点を有している。
【0008】
一方、これらの問題点を解決すべく▲8▼の測定法が開発されたが、この方法で用いられる基質の安定性は、短期的には向上しているもの、基質溶解後の長期安定性を考慮した場合、酸性からアルカリ性の領域で分解する傾向がみられるため、必ずしも満足できるものではなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した如き状況に鑑みなされたもので、感度及び安定性に優れたNAG活性測定用基質として有用なヒドロキシアルキルピリジン誘導体とこれを基質として用いたNAG活性測定方法及びそのための試薬を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一般式[1]
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、Gは還元性末端でβ結合している、アミノ基にアシル基が結合しているヘキソサミン残基を表し、Rはヒドロキシアルキル基を表す。)で示されるヒドロキシアルキルピリジン誘導体、及びこの誘導体を基質として用いることを特徴とするNAG活性測定方法、の発明である。
即ち本発明者等は、NAG活性測定に於いて有効に使用し得る合成基質について鋭意研究を重ねた結果、一般式[1]で示されるヒドロキシアルキルピリジン誘導体を基質として用いれば、上記した如き問題点を解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0013】
一般式[1]に於いて、Gで示される、アミノ基にアシル基が結合しているヘキソサミン残基に於けるアシル基としては、脂肪族カルボン酸由来、脂肪族ヒドロキシカルボン酸由来、脂肪族アミノカルボン酸由来、芳香族カルボン酸由来等のアシル基が挙げられる。ここで脂肪族カルボン酸としては、例えば炭素数が2〜8、好ましくは炭素数2〜4のものが挙げられ、具体的には例えば酢酸,プロピオン酸,酪酸,イソ酪酸等が挙げられる。脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、水酸基を有しているカルボン酸であれば何れのものでも良いが、好ましくは例えば炭素数1〜7、より好ましくは炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を有するカルボン酸が挙げられ、具体的には例えばヒドロキシメチル基,ヒドロキシエチル基,ヒドロキシプロピル基,ヒドロキシブチル基等を有するカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族アミノカルボン酸としては、アミノ基を有しているカルボン酸であれば如何なるものでも良いが、好ましくは所謂アミノ酸が挙げられ、より好ましくは例えばメチオニン,ロイシン,グリシン,アラニン等の必須アミノ酸が挙げられる。更に、芳香族カルボン酸としては、例えば安息香酸等が挙げられる。
【0014】
Gで示される、アミノ基にアシル基が結合しているヘキソサミン残基に於けるヘキソサミン残基としては、例えばグルコサミン残基,ガラクトサミン残基等が挙げられる。アミノ基にアシル基が結合しているヘキソサミン残基の好ましい具体例としては、例えばN−アセチルグルコサミン,N−アセチルガラクトサミン,N−プロピオニルグルコサミン,N−プロピオニルガラクトサミン,N−ベンゾイルグルコサミン,N−ベンゾイルガラクトサミン等のN−アシルヘキソサミンの1位の水酸基が脱離したしたもの(残基)が挙げられる。
【0015】
Rで示されるヒドロキシアルキル基としては、直鎖状でも分枝状でも何れにても良く、好ましくは炭素数1〜7、より好ましくは1〜3のヒドロキシアルキル基が挙げられ、具体的には例えばヒドロキシメチル基,1−ヒドロキシエチル基,2−ヒドロキシエチル基,1−ヒドロキシプロピル基,2−ヒドロキシプロピル基,3−ヒドロキシプロピル基,1−メチル−1−ヒドロキシエチル基,1−メチル−2−ヒドロキシエチル基等が挙げられる。
【0016】
一般式[1]に於けるピリジン環は更に置換基を有していても良く、好ましい置換基としては、例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。ここでハロゲン原子としては、例えば塩素,臭素,ヨウ素等が挙げられる。アルキル基としては直鎖状でも分枝状でも良く例えば炭素数1〜3のものが好ましく挙げられ、具体的には例えばメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基等が挙げられる。アルコキシ基としては直鎖状でも分枝状でも良く例えば炭素数1〜3のものが挙げられ、具体的には、メトキシ基,エトキシ基,n−プロポキシ基,イソプロポキシ基等が挙げられる。
【0017】
本発明のヒドロキシアルキルピリジン誘導体の好ましい具体例としては、例えば以下の化合物等が挙げられる。
3−ヒドロキシメチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド,4−ヒドロキシメチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド,5−ヒドロキシメチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド,6−ヒドロキシメチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド,5−(1−ヒドロキシエチル)−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド,5−ヒドロキシメチル−4−メチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド,5−ヒドロキシメチル−3−メチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド及び、上記化合物のグルコサミニドをガラクトサミニドに置き換えた化合物又は/及びアミノ基に結合しているアセチル基を例えばプロピオニル基,ブチリル基,ベンゾイル基,メチオニン残基,ロイシン残基,アラニン残基,グリシン残基等に置き換えた化合物等が挙げられる。
【0018】
本発明のヒドロキシアルキルピリジン誘導体は、水に200mM以上溶解する為、NAG活性測定用基質として十分な水溶性を有している。
また、水溶液とした場合、広いpH範囲、例えばpH4.5〜pH10の範囲で長期間安定であり、特にpH7〜pH10の範囲では長期間極めて安定に存在し得る。
更にこの誘導体は、320nm以上に吸収波長が無いため、この誘導体から遊離するヒドロキシアルキルピリジンチオール誘導体(極大吸収波長:320〜360nm)に由来する吸光度変化測定に影響を与えないという特性を有している。
尚、上記一般式[1]で示される化合物のうち、NAG活性測定のための基質として好適なものは、NAGに対してのKm値が、好ましくは0.5〜5.0mM、より好ましくは1.0〜3.5mM、更に好ましくは1.5〜1.7mM程度のものが良い。
【0019】
本発明のヒドロキシアルキルピリジン誘導体は、一般式[2]
【0020】
【化3】
【0021】
(式中、Rはヒドロキシアルキル基を表す。)で示されるヒドロキシアルキルピリジンチオール誘導体より容易に合成することができる。即ち、一般式[2]で示される化合物と、1位にSH基と反応し得る基(例えば−Cl,−Br,−I等のハロゲンなど)を有し、アミノ基が目的物に対応するアシル基で修飾されたものであって且つ水酸基が必要に応じて保護されていても良いヘキソサミン残基、例えば2−アセタミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシル クロリド(例えば、Org.Synth.46,1(1966)に記載の方法により合成したもの等)等とを、例えば臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム等の相間移動触媒の存在下、アルカリ水溶液と適当な有機溶剤(例えばクロロホルム,ジクロロメタン等)との混合溶媒中でグリコシル化反応させ、得られたS−グリコシル化体を例えばナトリウムメトキシド等の金属アルコキシドで水酸基の脱アシル化をすることにより、本発明化合物を得ることができる。又、上記のグリコシル化反応の代わりに、直接的或いは間接的な通常のグリコシド結合形成反応により本発明化合物を合成しても良い。
【0022】
本発明のヒドロキシアルキルピリジン誘導体の合成原料である一般式[2]で示されるヒドロキシアルキルピリジンチオール誘導体は、例えば以下の方法により合成できる。
即ち、先ず、一般式[3]
【0023】
【化4】
【0024】
(式中、R1はカルボニル基を有する置換基を表し、XはCl,Br,Iなどのハロゲン原子を表す。)で示される化合物を、例えばLiAlH4又はNaBH4等の還元剤を用いる常法により還元し、2−ハロゲノ−ヒドロキシアルキルピリジン誘導体とする。
【0025】
次に、得られた2−ハロゲノ−ヒドロキシアルキルピリジン誘導体を例えばNaSH等の一般的なチオール化剤を用いる常法により、チオール化することで一般式[2]で表されるヒドロキシアルキルピリジンチオール誘導体が得られる。一般式[1]で示される化合物を基質として、活性を測定できる酵素としては、例えばNAG,N−アセチル−β−D−ガラクトサミニダーゼ,N−アセチル−β−D−ヘキソサミニダーゼ等が挙げられるが、好ましくはNAG,N−アセチル−β−D−ヘキソサミニダーゼ、更に好ましくはNAGである。
【0026】
NAGと一般式[1]で示されるヒドロキシアルキルピリジン誘導体とを反応させることで、下記一般式[2]で示されるヒドロキシアルキルピリジンチオール誘導体が遊離する。
一般式[2]
【0027】
【化5】
【0028】
(式中、Rは前記に同じ。)
NAGなどの酵素反応によって本発明のヒドロキシアルキルピリジン誘導体から遊離するヒドロキシアルキルピリジンチオール誘導体は、320nm〜360nmに極大吸収を示すため、生体成分中の例えばビリルビンやヘモグロビン等の影響を受けない紫外領域(320nm〜380nm)での測定が可能である。特にピリジン環の3位或いは4位にヒドロキシアルキル基が置換した例えば3−ヒドロキシメチル−2−ピリジンチオール(極大吸収波長341nm)や4−ヒドロキメチル−2−ピリジンチオール(極大吸収波長339nm)等は、極大吸収波長が現在臨床検査分野で主流となっている自動分析機の設定波長(340nm)とほぼ同じであるため測定波長を極大吸収波長のピークに設定できる。即ち本発明のヒドロキシアルキル誘導体をNAG等の活性測定用基質として用いれば、NAG等の活性の測定に於ける分析機種間や測定条件により生じる測定値の誤差やばらつきを極力押さえることができる。
【0029】
本発明の化合物であるヒドロキシアルキルピリジン誘導体は、全pH領域に於いて試薬ブランク上昇が低く、特にpH7以上の溶液中で保存すれば少なくとも3カ月以上の長期に渡って試薬ブランクの上昇が抑えられることから、NAG活性測定用基質として非常に有用である。又、二液法によるNAG活性測定用試薬に本発明のヒドロキシアルキルピリジン誘導体を基質として用いれば、特にその溶液状態での保存性が増すので望ましい。
【0030】
一般式[1]で示されるヒドロキシアルキルピリジン誘導体を用いた本発明のNAG活性測定法は、基質として一般式[1]で示されるヒドロキシアルキルピリジン誘導体を用いる以外、自体公知の初速度法に準じて測定を行えば足りる。
具体的には、例えば以下の方法が挙げられる。
【0031】
(i)方法1
例えば、血清、血液、尿等の生体由来試料と、予め20〜50℃、好ましくは30〜40℃でインキュベートした、一般式[1]で示されるヒドロキシアルキルピリジン誘導体と適当な緩衝剤とを含有した試薬溶液(pHは通常3.0〜7.0、好ましくは4.0〜6.5)とを20〜50℃、好ましくは30〜40℃で反応させる。NAGの作用により生成するヒドロキシアルキルピリジンチオール誘導体の増加量を、例えば分光光度計等の適当な測定装置を用いて320〜380nmに於ける単位時間当たりの吸光度変化量として測定する。得られた吸光度変化量をヒドロキシアルキルピリジンチオール誘導体の分子吸光係数を用いて単位換算することで、試料中のNAG活性を求めることができる。
尚、ここで用いられる試料溶液は一般式[1]で示されるヒドロキシアルキルピリジン誘導体と適当な緩衝剤とを含有するpH7〜11好ましくはpH7〜9の試薬溶液と適当な緩衝剤を含有した試薬溶液(pHは通常3.0〜7.0、好ましくは4.0〜6.5程度)とを混合して調製されたものでも良い。
【0032】
(ii)方法2
生体由来試料と、適当な緩衝剤を含有する第一試薬溶液(pHは通常3.0〜7.0、好ましくは4.0〜6.5程度)とを混合し、20〜50℃、好ましくは30〜40℃で適当な時間インキュベートした後、これと予め20〜50℃好ましくは30〜40℃でインキュベートした、一般式[1]で示されるヒドロキシアルキルピリジン誘導体と適当な緩衝剤を含有する第2試薬溶液とを混合し、20〜50℃、好ましくは30〜40℃で反応させる。NAGの作用により生成するヒドロキシアルキルピリジンチオール誘導体の増加量を、例えば分光光度計等の適当な測定装置を用いて320〜380nmにおける単位時間当たりの吸光度変化量として測定する。得られた吸光度変化量をヒドロキシアルキルピリジンチオール誘導体の分子吸光係数を用いて単位換算することで試料中のNAG活性を求めることができる。
【0033】
尚、上記の方法に於いて、第2試薬溶液のpH及び緩衝剤の濃度は、第1試薬溶液と混合した場合のpHが3.0〜7.0好ましくは4.0〜6.5となるように設定されていれば良く、特に限定されないが、本発明のヒドロキシアルキルピリジン誘導体の水溶液中の安定性を考慮すれば、そのpHは7〜11、好ましくは7〜9の範囲で設定しておくことが望ましい。
【0034】
又、上記(i)及び(ii)の方法に於いて、基質として用いられる本発明のヒドロキシアルキルピリジン誘導体の使用濃度としては、NAGの活性測定を実施し得る濃度であれば良く、特に限定されないが、NAGとの反応時の濃度として0.1〜500mM、好ましくは1〜50mMの範囲から適宜選択すれば良い。
【0035】
上記(i)及び(ii)の方法における試薬溶液に用いられる緩衝剤としては、通常この分野で用いられるものであれば特に限定されないが、例えばグッド(Good’s)緩衝剤、クエン酸塩、ほう酸塩、リン酸塩が好ましく挙げられる。また、これら緩衝剤の使用濃度としては、NAGの活性測定を実施し得る濃度であれば良く特に限定されないが、NAG活性測定時の濃度として1〜1000mM、好ましくは10〜500mMの範囲から適宜選択すれば良い。また、上記(i)及び(ii)で用いた試薬溶液中には、必要に応じて、通常この分野で用いられる溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、界面活性剤等を適宜選択して含有させても良く、これらの使用量は通常この分野で用いられる範囲から適宜選択すれば良い。
【0036】
本発明のNAG活性測定用試薬は、本発明のヒドロキシアルキルピリジン誘導体を基質として含んで成るものである。より具体的には、▲1▼ヒドロキシアルキルピリジン誘導体と緩衝剤とを含んで成る一液法用試薬、▲2▼緩衝剤を含んで成る第一試薬と、ヒドロキシアルキルピリジン誘導体と緩衝剤とを含んで成る第二試薬とを含んで成る、二液法用試薬等が挙げられる。また、これら本発明試薬の構成要素の好ましい態様と具体例は上で述べた通りである。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0037】
【実施例】
実施例1
3−ヒドロキシメチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド〔IUPAC名:3−ヒドロキシメチル−2−ピリジニル 2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−1−チオ−β−D−グルコピラノシド 以下化合物[1]と略記する。〕の合成
【0038】
(1)2−クロロニコチン酸(和光純薬工業(株)品)15.76g(100mmol)とトリエチルアミン15.32ml(110mmol)を溶解したトルエン溶液(1L)にクロロ炭酸エチル10.52mlを加え、室温で1時間攪拌反応させた。析出した結晶を濾去し、トルエンを減圧留去して得られた褐色オイルをテトラヒドロフランに溶解し、これを予めテトラヒドロフランに水素化リチウムアルミニウム4.17g(110mmol)を加え窒素置換し−78℃に冷却しておいた溶液に滴下した。滴下後同温度で2時間攪拌反応させ、水(30ml)で反応を停止させた後室温とし、1N−NaOH(200ml)を加え、ジエチルエーテルで抽出処理を行った。抽出液から溶媒を減圧留去し得られた褐色オイルをヘキサンから結晶化することにより、2−クロロ−3−ヒドロキシメチルピリジン11.91g(収率75%)を得た。
融点:58〜59℃。
元素分析値 C6H6ClNO
実測値(%); C:50.24,H:4.11,N:9.74。
計算値(%); C:50.19,H:4.21,N:9.76。
【0039】
(2)(1)で得られた2−クロロ−3−ヒドロキシメチルピリジン8.61g(60mmol)と硫化水素ナトリウム3.36g(60mmol)とを1−メチル−2−ピロリドン中に加え140℃で2時間攪拌反応させた。攪拌後溶媒を減圧留去し、水(200ml)を加え、酢酸でpH4.0とした後、クロロホルムにより抽出処理を行った。抽出液から溶媒を減圧留去後、残渣をエタノールで再結晶し、黄色針状晶の3−ヒドロキシメチル−2−ピリジンチオール6.4g(収率67%)を得た。
融点:174〜175℃。
元素分析値 C6H7NOS
実測値(%); C:51.14,H:4.97,N:9.98。
計算値(%); C:51.04,H:5.00,N:9.92。
【0040】
(3)(2)で得られた3−ヒドロキシメチル−2−ピリジンチオール4.24g(30mmol)、1−クロロ−1−デオキシ−2,3,4,6−テトラアセチル−α−D−グルコサミン10.97g(30mmol)及びテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド9.67g(30mmol)を1N−NaOH50mlとジクロロメタン50mlとの混合溶媒中、室温で1時間攪拌反応させた。反応終了後反応液に水100mlとジクロロメタン100mlを加えて攪拌分液し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後溶媒を減圧留去した。得られた淡黄色の結晶をエタノールで再結晶することにより白色綿状結晶の3−ヒドロキシメチル−2−ピリジル−2,3,4,6−テトラアセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド5.14g(収率36.4%)を得た。
融点:172〜173℃。
元素分析値 C20H26N2O9S
実測値(%); C:51.14,H:5.44,N:5.98。
計算値(%); C:51.01,H:5.56,N:5.95。
【0041】
(4)(3)で得られた3−ヒドロキシメチル−2−ピリジル−2,3,4,6−テトラアセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド5.14g(11mmol)にメタノール100mlを加え、同溶液にナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液を10滴添加した後、室温で1時間撹拌反応させた。反応終了後、反応液を酢酸で中和し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣を、エタノールで再結晶することにより、白色針状結晶の3−ヒドロキシメチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド3.50g(収率93%)を得た(通算収率17%)。
融点:190〜193℃。
元素分析値 C14H20N2O6S
実測値(%); C:48.81,H:5.97,N:8.20。
計算値(%); C:48.83,H:5.85,N:8.13。
IR:1643cm-1(C=O)
【0042】
実施例2
4−ヒドロキシメチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド〔IUPAC名:4−ヒドロキシメチル−2−ピリジニル 2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−1−チオ−β−D−グルコピラノシド 以下化合物[2]と略記する。〕の合成
【0043】
2−クロロニコチン酸150mmolの代わりに2−クロロイソニコチン酸(東京化成(株)品)23.63g(150mmol)を用いた以外は、実施例1と同じ試薬を用い、実施例1と同様にして反応及び後処理を行って、4−ヒドロキシメチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド1.65gを得た(通算収率8%)。
融点:198〜199℃。
元素分析値 C14H20N2O6S
実測値(%); C:48.77,H:5.67,N:8.24。
計算値(%); C:48.83,H:5.85,N:8.13。
IR:1641cm-1。
【0044】
実施例3
5−ヒドロキシメチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド〔IUPAC名:5−ヒドロキシメチル−2−ピリジニル 2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−1−チオ−β−D−グルコピラノシド以下化合物[3]と略記する。〕の合成
【0045】
2−クロロニコチン酸150mmolの代わりに6−クロロニコチン酸(和光純薬工業(株)品)23.63g(150mmol)を用いた以外は、実施例1と同じ試薬を用い、実施例1と同様にして反応及び後処理行って、5−ヒドロキシメチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド5.15gを得た(通算収率25%)。
融点:213〜214℃。
元素分析値 C14H20N2O6S
実測値(%); C:48.80,H:5.78,N:8.17。
計算値(%); C:48.83,H:5.85,N:8.13。
IR:1643cm-1。
【0046】
実施例4
6−ヒドロキシメチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド〔IUPAC名:6−ヒドロキシメチル−2−ピリジニル 2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−1−チオ−β−D−グルコピラノシド 以下化合物[4]と略記する。〕の合成
【0047】
2−クロロニコチン酸150mmolの代わりに6−クロロピコリン酸(和光純薬工業(株)品)23.63g(150mmol)を用いた以外は、実施例1と同じ試薬を用い、実施例1と同様にして反応及び後処理を行って、6−ヒドロキシメチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド2.68gを得た(通算収率13%)。
融点:164〜165℃。
元素分析値 C14H20N2O6S
実測値(%); C:48.65,H:5.83,N:8.24。
計算値(%); C:48.83,H:5.85,N:8.13。
IR:1644cm-1(C=O)
【0048】
実施例5
5−(1−ヒドロキシエチル)−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド〔IUPAC名:5−(1−ヒドロキシエチル)−2−ピリジニル 2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−1−チオ−β−D−グルコピラノシド 以下化合物[5]と略記する。〕の合成
【0049】
6−クロロニコチン酸(和光純薬工業(株)品)39.39g(250mmol)をトルエン(0.5L)に懸濁し塩化チオニル(36ml)とN,N−ジメチルホルムアミド(1ml)とを加え、室温で18時間撹拌反応させた。次に反応溶媒を減圧留去し、残渣をクロロホルム(1.5L)に溶解後、ジエチルアミン(25.8ml)のクロロホルム溶液(100ml)とトリエチルアミン(70ml)のクロロホルム溶液(150ml)を添加した。添加終了後室温で2時間撹拌し、反応終了後精製水(1L)を加え有機層を分液洗浄した。有機層を、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた粗N,N−ジエチル−6−クロロニコチンアミド(49.16g)をテトラヒドロフラン(2L)に溶解し、窒素置換後、−78℃でメチルリチウム(165ml:1.4Mジエチルエーテル溶液)を滴下した。滴下終了後同温度で1時間撹拌反応させ、飽和塩化アンモニウム溶液で反応を停止後室温とし、溶媒を留去した。得られた残渣に精製水(0.5L)とクロロホルム(0.5L)を加えて分液し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後溶媒を留去した。得られた残渣をエタノールで再結晶することにより精製し、3−アセチル−6−クロロピリジン24.57gを得た(収率63%)。
融点:98〜99℃。
元素分析値 C7H6ClNO
実測値(%); C:55.15,H:3.83,N:8.24。
計算値(%); C:54.91,H:3.81,N:8.83。
【0050】
得られた3−アセチル−6−クロロピリジン23.79g(150mmol)を、テトラヒドロフランに溶解し、これを予めテトラヒドロフランに水素化リチウムアルミニウム6.25g(165mmol)を加え窒素置換し−78℃に冷却しておいた溶液に滴下した。滴下後同温度で2時間攪拌反応させ、水(30ml)で反応を停止した後室温とし、1N−NaOH(200ml)を加え、ジエチルエーテルで抽出処理を行った。抽出液から溶媒を減圧留去し得られた褐色オイルをヘキサンから結晶化することにより、3−(1−ヒドロキシエチル)−6−クロロピリジン20.48g(収率85%)を得た。
次に2−クロロ−3−ヒドロキシメチルピリジン8.61g(60mmol)の代わりに、上で得られた3−(1−ヒドロキシエチル)−6−クロロピリジン20.48g(127.5mmol)を用いた以外は実施例1の(2)〜(3)と同じ試薬を用い、実施例1の(2)〜(3)と同様にして反応及び後処理を行って、5−(1−ヒドロキシエチル)−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド5.93gを得た(全収率13%)。
融点:201〜202℃。
元素分析値 C15H22N2O6S
実測値(%); C:50.55,H:6.08,N:7.69。
計算値(%); C:50.27,H:6.19,N:7.82。
IR:1651cm-1(C=O)
【0051】
実験例1 本発明のヒドロキシアルキルピリジン誘導体のpH安定性の検討
従来品中、水溶液状態で最も長期間安定な6−メチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド〔N−アッセイNAGニットーボー(ニットーボーメディカル(株)商品名)で用いられている基質〕(以下6−MPT−NAGSと略記する。)と、本発明のヒドロキシアルキルピリジン誘導体のうち従来品と同じ位置に置換基を持つ6−ヒドロキシメチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド(化合物[4])との水溶液状態での安定性をpH4.5〜10の範囲で比較した。
【0052】
(操作法)
6−MPT−NAGSと化合物[4]を夫々精製水に溶解し、20mMの基質原液を調製した。同原液と、50mMクエン酸緩衝液(pH4.5,5.0,5.5,6.0)、50mM N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸緩衝液(pH7.0)又は50mMホウ酸緩衝液(pH8.0,9.0,10.0)とを各々1:1で混合して、各pHの基質溶液を調製し、10℃で16日間保存した。同基質溶液について、調製直後と16日目の340nmのOD値(吸光度)を測定した。
(結果)
各基質溶液の調製直後のOD値、16日目のOD値、及び16日目のOD値から調製直後のOD値を差し引いたOD値変化量(ΔOD値)を表1に併せて示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1の結果に基づいて作成したpHとΔOD値の関係を表すグラフを図1に示す。尚、図中、−●−は、従来品の6−MPT−NAGSについて得られたグラフを、また、−◆−は化合物[4]について得られたグラフをそれぞれ示す。
表1及び図1の結果から、本発明のヒドロキシアルキルピリジン誘導体は、従来のNAGの基質である6−MPT−NAGSに比べて、水溶液中で良好な安定性を有していることが判る。特に、NAGの至適pH付近での安定性は、従来品に比べて著しく向上しているので、本発明のヒドロキシアルキルピリジン誘導体がNAGの基質として好ましいものであることが判る。
実験例2 本発明化合物の水溶液状態での長期保存安定性の検討
従来品中、水溶液状態で最も長期間安定な6−MPT−NAGSと、本発明の化合物[1]〜[4]とのpH8.0の溶液中で安定性を比較した。
実験例1と同様にして調製した、従来品と化合物[1]〜[4]の基質溶液(25mM ホウ酸緩衝液、pH8.0)を10℃で保存し、各々の調製直後、保存後8日目、保存後16日目、保存後60日目、保存後90日目の340nmのOD値を測定した。
【0055】
(結果)
結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
また、表2の結果に基づいて作成した、保存日数とOD値の関係を表すグラフを図2に示す。尚、図2に於いて、−○−は従来品について得られた結果を、−◆−は化合物[1]について得られた結果を、−●−は化合物[2]について得られた結果を、−△−は化合物[3]について得られた結果を、−×−は化合物[4]について得られた結果をそれぞれ示す。
表2及び図2の結果から明らかな如く、本発明のヒドロキシアルキルピリジン誘導体は、従来品の6−MPT−NAGSに比較して水溶液中での長期保存安定性が著しく向上していることが判る。言い換えれば、本発明のヒドロキシアルキルピリジン誘導体は、所謂液状試薬用のNAG活性測定用基質として好適なものであることが判る。
【0058】
実施例6 3−ヒドロキシメチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド(化合物[1])を基質として用いたN−アセチルグルコサミニダーゼ活性の測定
(検体)
ヒト胎盤由来NAG(シグマ社品)を生理食塩水で適宜希釈して調製したもの34検体を用いた。
(試薬)
第1試薬溶液
100mMクエン酸緩衝液(pH4.40、at25℃)。
第2試薬溶液
化合物[1]を41.7mM含有するホウ酸緩衝液(pH8.0)。
【0059】
(操作法)
第1試薬溶液1.8mlと検体0.1mlとを混合し、37℃で5分間インキュベートした後、これに第2試薬溶液0.6mlを加えると同時に340nmにおける吸光度の測定を開始し、吸光度を1分毎に5分間測定した。得られた測定値から1分間当たりの吸光度変化量(ΔA)を求めた。又、試薬ブランク(ΔB)は、検体の代わりに生理食塩水を用いた以外、同じ試薬を用い、同様の操作を行って測定した。得られたΔA及びΔBを下記の式に代入し、N−アセチルグルコサミニダーゼ活性値を算出した。
検体のN−アセチルグルコサミニダーゼ活性(u/L)=
(ΔA−ΔB)×反応時の総液量×106/分子吸光係数×検体液量
ΔA :検体の340nmの1分間当たりの吸光度変化量
ΔB :試薬ブランクの340nmの1分間当たりの吸光度変化量
反応時の総液量 :2.5(ml)
分子吸光係数 :8354
検体液量 :0.1(ml)
【0060】
実施例7 4−ヒドロキシメチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド(化合物[2])を基質として用いたN−アセチルグルコサミニダーゼ活性の測定
(検体)実施例6と同じ
(試薬)
第1試薬溶液
実施例6と同じ
第2試薬溶液
化合物[2]を41.7mM含有するホウ酸緩衝液(pH8.0)
【0061】
(操作法)
上記の試薬を用いた以外は実施例6の測定方法と同じ操作方法により測定を行い、得られたΔAとΔBとを下記の式に代入し、N−アセチルグルコサミニダーゼ活性値を算出した。
検体のN−アセチルグルコサミニダーゼ活性(u/L)=
(ΔA−ΔB)×反応時の総液量×106/分子吸光係数×検体液量
ΔA :検体の340nmの1分間当たりの吸光度変化量
ΔB :試薬ブランクの340nmの1分間当たりの吸光度変化量
反応時の総液量 :2.5(ml)
分子吸光係数 :8397
検体液量 :0.1(ml)
【0062】
実施例8 5−ヒドロキシメチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド(化合物[3])を用いたN−アセチルグルコサミニダーゼ活性の測定
(検体)実施例6と同じ
(試薬)
第1試薬溶液
実施例6と同じ
第2試薬溶液
化合物[3]を41.7mM含有するホウ酸緩衝液(pH8.0)
【0063】
(操作法)
上記の試薬を用いた以外は実施例6の測定方法と同じ操作方法により測定を行い、得られたΔAとΔBとを下記の式に代入し、N−アセチルグルコサミニダーゼ活性値を算出した。
検体のN−アセチルグルコサミニダーゼ活性(u/L)=
(ΔA−ΔB)×反応時の総液量×106/分子吸光係数×検体液量
ΔA :検体の340nmの1分間当たりの吸光度変化量
ΔB :試薬ブランクの340nmの1分間当たりの吸光度変化量
反応時の総液量 :2.5(ml)
分子吸光係数 :8049
検体液量 :0.1(ml)
【0064】
参考例1 市販品によるN−アセチルグルコサミニダーぜ活性の測定
市販のN−アセチルグルコサミニダーゼ活性測定試薬(N−アッセイNAGニットーボー:ニットーボーメディカル(株)商品名)を用いて実施例6、7、8でN−アセチルグルコサミニダーゼ活性測定を行った34検体についてN−アセチルグルコサミニダーゼ活性の測定を行った。尚、測定操作は、商品に添付の現品説明書に記載の標準操作法に従って行った。
【0065】
又、実施例6、7及び8で得られた各検体の活性測定値と参考例1で得られた活性測定値との相関図を図3〜5に夫々示す。また、これら測定値を統計的処理して得られた回帰直線及び相関係数(r)は以下の如くであった。
1.X:参考例1で得られたNAG活性値、Y:実施例6で得られたNAG活性値。
回帰直線式:Y=0.93X−0.24
相関係数(r):0.993
2.X:参考例1で得られたNAG活性値、Y:実施例7で得られたNAG活性値。
回帰直線式:Y=0.90X+0.47
相関係数(r):0.993
3.X:参考例1で得られたNAG活性値、Y:実施例8で得られたNAG活性値。
回帰直線式:Y=0.84X+0.81
相関係数(r):0.993
以上の結果並びに図3〜5の結果から、本発明のヒドロキシアルキルピリジン誘導体を基質として用いるNAG活性測定法により、市販品と良好な相関関係を有するNAG活性値が得られることが判る。
【0066】
実施例9、直線性の検討
ヒト胎盤由来NAG(シグマ社品)を生理食塩水で10段階に希釈したもの(希釈率1/10〜1)を検体とし、実施例6〜8の試薬を夫々用い、同様の操作を行って、本発明のNAG活性測定方法の検量線の直線性の検討を行った。
実施例6の試薬を用いて得られた結果を図6に、実施例7の試薬を用いて得られた結果を図7に、また、実施例8の試薬を用いて得られた結果を図8に夫々示す。
図6〜図8の結果から明らかな如く、本発明のNAG活性測定方法の検量線は原点を通る良好な直線性を示していることが判る。
【0067】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明は、新規ヒドロキシアルキルピリジン誘導体、この誘導体を基質として用いるNAG活性測定方法及びNAG活性測定試薬を提供するものである。本発明のヒドロキシアルキルピリジン誘導体は、水溶性に優れていると共に、非酵素的分解が少ないため、酸性からアルカリ性の広い領域に渡って、水溶液中に於ける安定性が極めて高く、特に本発明のヒドロキシアルキルピリジン誘導体を含む溶液のpHを7以上に設定すれば(好ましくはpH7〜10)、水溶液状態で少なくとも3ヶ月以上の長期に渡って安定であるというNAG活性測定用基質として極めて優れた性質を有している。
また、本発明のヒドロキシアルキルピリジン誘導体は、NAG等の作用によりヒドロキシアルキルピリジンチオール誘導体を遊離するが、この誘導体はビリルビン等の生体成分による影響を回避できる紫外領域波長での測定が可能であると共に、極大吸収波長が自動分析機の設定波長と殆ど同じであるため、これを基質として用いるNAG活性測定法及び試薬は、用手法のみならず汎用の自動分析機へも容易に応用できるという効果を奏する。従って、本発明は斯業に貢献するところ極めて大なる発明である。
【0068】
【図面の簡単な説明】
【図1】実験例1で得られた、pHとOD値変化量(ΔOD値)との関係を表すグラフである。
【図2】実験例2で得られた保存日数とOD値との関係を表すグラフである。
【図3】実施例6で得られたN−アセチル−β−D−グルコサミニダーゼ(以下、NAGと略記する。)活性測定値と、参考例1で得られたNAG活性測定値との相関図である。
【図4】実施例7で得られたNAG活性測定値と、参考例1で得られたNAG活性測定値との相関図である。
【図5】実施例8で得られたNAG活性測定値と、参考例1で得られたNAG活性測定値との相関図である。
【図6】実施例9で得られた、本発明のNAG活性測定法の検量線の直線性を示す図である。
【図7】実施例9で得られた、本発明のNAG活性測定法の検量線の直線性を示す図である。
【図8】実施例9で得られた、本発明のNAG活性測定法の検量線の直線性を示す図である。
【0069】
【符号の簡単な説明】
図1に於いて、−●−は従来品の6−メチル−2−ピリジル−N−アセチル−1−チオ−β−D−グルコサミニド(以下6−MPT−NAGSと略記する。)を用いて得られた結果を、−◆−は化合物[4]を用いて得られた結果を夫々示す。
図2に於いて、−○−は従来品の6−MPT−NAGSを用いて得られた結果を、−◆−は化合物[1]を用いて得られた結果を、−●−は化合物[2]を用いて得られた結果を、−△−は化合物[3]を用いて得られた結果を、−×−は化合物[4]を用いて得られた結果を夫々示す。
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