JP3993805B2 - 薬液注入工法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、薬液注入工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
薬液注入工法により、地中に埋設されている構造物Kの直下の地盤改良を行う場合が存在する。
このような場合において、例えば、図9に示すように、構造物Kの直下の直方体形状の領域R’’に薬液を注入する際には、当該領域R’’に連通する直線状であるボーリング孔R1’’,R2’’を複数穿孔し、地上部から当該ボーリング孔R1’’,R2’’にロッド(図示せず)を挿通して薬液を注入することにより対応していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、構造物Kの真下に近接した領域Mにボーリング孔R3’’を穿孔するには、地盤とボーリング孔R3’’との角度を小さくし、当該ボーリング孔R3’’の長さを長く確保する必要があり、作業領域の関係から施工できない場合が存在してしまうことになり、有効な対策が望まれていた。
【0004】
本発明は、前記の問題点を解決するためになされたものであり、地盤中の所定幅である曲面形状を有する領域に有効である薬液注入工法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記問題点を解決するために、本発明は、以下の各工程を含むことを特徴とする薬液注入工法を提供する。
(1)少なくとも一部に曲線部を有し、かつ、薬液注入孔が形成されている外管と、前記外管に取り外し自在に内挿されており、先端部から高圧水及び瞬結剤を選択的に供給可能に構成されている削孔用内管と、を有する二重管を、前記削孔用内管における先端部から前記高圧水を吐出しながら対象地盤に貫入させる二重管貫入工程。
(2)前記削孔用内管における先端部から前記瞬結剤を吐出することで、前記外管の周囲を止水する一次注入工程。
(3)前記外管から前記削孔用内管を取り外し、前記外管に薬液注入用内管を挿入して、前記薬液注入用内管を移動させながら、前記薬液注入用内管から吐出された薬液を前記外管の薬液注入孔から前記対象地盤に注入する薬液注入工程。
【0006】
ここで、「外管の先端部から高圧水及び瞬結剤を選択的に供給可能に」とは、削孔用内管に高圧水供給装置と瞬結剤供給装置を切換可能に接続することや、前記各装置を手動で接続することにより、前記削孔用内管から高圧水及び瞬結剤を供給できるように構成されていることを意味する。
【0007】
本発明によれば、二重管を用い、少なくとも一部に曲線部を有する外管を使用して、当該外管に形成されている薬液注入孔から薬液を注入することができるため、前記曲線部に沿った領域に薬液を注入することができる。従って、前記曲線部の曲率を変化させて所望の形状に形成することで、従来、難しかった曲面部を有する領域に薬液を適切に注入することができる。
【0008】
また、本発明では、取り換え可能な削孔用内管及び薬液注入用内管と、一の外管とから形成される二重管を使用しており、当該削孔用内管及び薬液注入用内管を取り換えることにより、容易にその作業を行うことができる。
さらに、削孔用内管は、高圧水と瞬結剤を先端部から噴出することができるようになっており、二重管の貫入時には、外管の先端部から高圧水を注入しながら対象地盤に貫入させる役割と、二重管の貫入後には、瞬結剤を注入することで、外管の周囲を止水する役割を兼用させることによっても、容易に施工を行うことができる。
【0009】
また、前記薬液注入工法の前記薬液注入工程において、前記薬液注入用内管として、管軸方向における薬液吐出部の前後をシールするための2連のパッカーが設けられている管材を使用し、前記薬液吐出部から吐出された前記薬液を、前記薬液注入孔から前記対象地盤に注入することとすれば、薬液の注入作業をさらに確実に行うことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明において、本発明の薬液注入を行う領域は、地盤中に埋設されている構造物Kの直下の領域(以下、「薬液注入領域R」という)とし、地上部に設置されたスライドジャッキ7を用いて二重管2を施工するものとする(図1参照)。また、各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略するものとする。
【0011】
本発明の薬液注入工法は、(1)二重管貫入工程、(2)一次注入工程、(3)薬液注入工程の各工程から構成されている。
【0012】
(1)二重管貫入工程
本工程は、薬液注入に使用する二重管2を、薬液注入領域Rに設置する工程である。
【0013】
二重管2は、円弧形状の外管10と、当該外管10の曲がりに追従して変形可能となるように可撓性部材を用いて形成されている削孔用内管20とから形成されている。
図2及び図4(a)に示されているように、外管10は中空形状であり、所定位置には複数の薬液注入孔10aが設けられている。この薬液注入孔10aは、薬液注入領域Rにピンポイントで薬液Yを注入することができる適切な位置及び向きに設けられている。また、外管10の先端部10bは閉塞しており、当該先端部10bの中央にはノズル11が内側から突設している。
【0014】
図3(a)に示されているように、このノズル11は、内側の端部において、削孔用内管20と取り付け及び取り外しができるようになっており、先端部11aには、斜め方向に偏向して液体を吐出可能となるように偏向噴射孔12が形成されている。なお、ノズルの形態は、前記ノズル11に限られるものでなく、図3(b)に示されるように、一方向に偏向噴射孔12’を有するノズル11’であってもよい。
また、削孔用内管20の基端部20cには、高圧水供給装置3と瞬結剤供給装置4とが、切換装置5を介して切換可能に接続されており、高圧水と瞬結剤を選択的に供給可能となっている。
【0015】
本工程では、外管10の中空部10dに削孔用内管20を内挿して、当該削孔用内管20の先端部20bをノズル11に取り付けることにより二重管2を形成し、外管10の基端部10c側の所定位置にスライドジャッキ7のロッド7aに取り付けて(図1参照)、当該ロッド7aを伸長させることにより二重管2を押し出すとともに、削孔用内管20に高圧水供給装置3から供給し、ノズル11から高圧水Wを吐出させて削孔することにより、二重管2を対象地盤Gに貫入させる作業を行う(図5(a)参照)。
【0016】
(2)一次注入工程
本工程は、削孔用内管20における外管10の先端部10bのノズル11から瞬結剤Sを注入することで、前記外管10の周囲を止水する作業を行う工程である。
本工程では、削孔用内管20に接続されている高圧水供給装置3を、切換装置5により瞬結剤供給装置4との接続に切り換え、前記削孔用内管20のノズル11から瞬結剤Sを供給することで、前記外管10と孔壁H間の周囲を止水する作業を行う(図5(b)参照)。
【0017】
(3)薬液注入工程
本工程は、薬液注入領域Rに薬液Yを注入する作業を行う工程である。
まず、外管10のノズル11から削孔用内管20を取り外し、当該削孔用内管20を外管10の外部に引き抜いた後に、前記外管10の中空部10dに薬液注入用内管30を挿入する作業を行う(図6参照)。
【0018】
図4(b)に示されているように、注入用内管30は、外管10の曲がりに追従して変形可能となるように可撓性部材を用いて形成されている中空部材であり、基端部30cにおいて薬液供給装置6と接続されている。そして、先端近傍の側面部には薬液吐出孔30aが設けられるとともに、当該薬液吐出孔30aを挟んだ前後には、2連のパッカー31,32が設けられており、薬液吐出孔30a(薬液吐出部)から薬液Yを吐出可能となっている。
前記パッカー31,32は、注入用内管30の中空部30dに設けられているホース9を介してパッカー水供給装置8から供給されるパッカー水により膨張度を調節可能となっている。そして、薬液Yの注入時には、前記パッカー31,32を膨張させることにより、薬液吐出孔30aの周囲をシールし、薬液Yが外管10の中空部10dに拡散することがないようになっている。
【0019】
本工程では、外管10の先端部10bの近傍に前記注入用内管30を移動させ(図6(b)参照)、前後のパッカー31,32により、薬液吐出孔30aの周囲をシールした状態で、薬液注入装置6から送液された薬液Yを当該薬液吐出孔30aから吐出させ、外管10の薬液注入孔10aから対象地盤Gに薬液Yを注入する(図7参照)。そして、所定量の注入が終了した後に、パッカー31,32からパッカー水を排出することにより当該パッカー31,32を収縮させ、注入用内管30を所定の場所に移動して前記と同様の作業を繰り返すことにより、薬液注入領域Rの全域への薬液注入作業を行うことができる。
【0020】
なお、外管10は、作業終了後に撤去してもよいし、地盤改良領域Rにおける芯材としての効果を期待して、そのまま残置しておいてもよい。
また、外管10の曲線形状が注入対象領域Rの形状に完全に合致しない場合には、(1)二重管貫入工程〜(3)薬液注入工程の各工程を複数回繰り返して行うことになる。
【0021】
本発明によれば、二重管2を用い、少なくとも一部に曲線部を有する外管10を使用して、当該外管10に形成されている薬液注入孔10aから薬液Yを注入することができるため、前記曲線部に沿った領域に薬液Yを注入することができる。従って、前記曲線部の曲率を変化させて所望の形状に形成することで、従来、難しかった曲面部を有する薬液注入領域Rに薬液Yを適切に注入することができる。
【0022】
また、本発明では、取り換え可能な削孔用内管20及び薬液注入用内管30と、一の外管10とから形成される二重管2を使用しており、当該削孔用内管20及び薬液注入用内管30を取り換えることにより、容易にその作業を行うことができる。
さらに、削孔用内管20は、高圧水供給装置3と瞬結剤供給装置4を切換装置5により切り換えることにより高圧水Wと瞬結剤Sを外管10のノズル11から噴出することができるように構成されている。そのため、前記二重管2を用いることで、当該二重管2の貫入時には、ノズル11から高圧水を吐出しながら対象地盤Gに貫入させることができ、加えて、二重管2の貫入後には、瞬結剤Sを吐出することで、外管11と孔壁H間の周囲を止水することができる。
【0023】
以上、本発明について、好適な実施形態の一例を説明した。しかし、本発明は、前記実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜設計変更が可能である。
本発明は、適用場所についての制限はなく、図8に示すように、上下に近接したトンネルT,T’と官民境界間の領域R’を上部トンネルTの坑内から限定範囲で行う場合等に特に有効である。また、外管、削孔用内管、注入用内管及びノズルの形状等についても、適用する現場に応じて、適切に定めることができる。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、地盤中の所定幅である曲面形状を有する領域に有効である薬液注入工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薬液注入工法を示す側面図である。
【図2】外管を示す正断面図である。
【図3】(a),(b)ともにノズルを示す側断面図である。
【図4】(a)、(b)ともに、二重管の構成図である。
【図5】本発明の薬液注入工法を示す要部を拡大した側断面図であり、(a)は、二重管貫入工程、(b)は、一次注入工程を示す。
【図6】(a)、(b)ともに、本発明の薬液注入工法における薬液注入工程を示す要部を拡大した側断面図である。
【図7】本発明の薬液注入工法における薬液注入工程を示す要部を拡大した側断面図である。
【図8】本発明の薬液注入工法の他の施工場所を示す側面図である。
【図9】従来の薬液注入工法を示す概念図である。
【符号の説明】
R 薬液注入領域
2 二重管
10 外管
10a 薬液注入孔
11 ノズル
20 削孔用内管
30 薬液注入用内管
30a 薬液吐出孔
31,32 パッカー
Claims (2)
- 以下の各工程を含むことを特徴とする薬液注入工法。
(1)少なくとも一部に曲線部を有し、かつ、薬液注入孔が形成されている外管と、
前記外管に取り外し自在に内挿されており、先端部から高圧水及び瞬結剤を選択的に供給可能に構成されている削孔用内管と、を有する二重管を、
前記削孔用内管における先端部から前記高圧水を吐出しながら対象地盤に貫入させる二重管貫入工程。
(2)前記削孔用内管における先端部から前記瞬結剤を吐出することで、前記外管の周囲を止水する一次注入工程。
(3)前記外管から前記削孔用内管を取り外し、前記外管に薬液注入用内管を挿入して、
前記薬液注入用内管を移動させながら、前記薬液注入用内管から吐出された薬液を前記外管の薬液注入孔から前記対象地盤に注入する薬液注入工程。 - 前記薬液注入工程において、
前記薬液注入用内管として、管軸方向における薬液吐出部の前後をシールするための2連のパッカーが設けられている管材を使用し、
前記薬液吐出部から吐出された前記薬液を、前記薬液注入孔から前記対象地盤に注入することを特徴とする請求項1に記載の薬液注入工法。
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