JP3993068B2 - イオン交換膜の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン交換膜の製造方法に関する。詳しくは、長期に渡り優れた耐有機汚染性を示すイオン交換膜を効率的に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術および問題点】
一般に、有機物質、特に荷電を有する巨大分子(以下、巨大有機イオンともいう。)を含有する溶液をイオン交換膜法電気透析によって脱塩する場合、被処理液中の巨大有機イオンがイオン交換膜に付着して膜の性能が低下することが知られている。このような巨大有機イオンによりイオン交換膜性能が低下する現象は膜の有機汚染と呼ばれており、この有機汚染によりイオン交換膜の電気抵抗の増大や電流効率の低下、さらには溶液PHの変化等が引き起こされ、電気透析性能は低下する。
【0003】
従来、有機汚染が起こり難いイオン交換膜として、(i)巨大有機イオンを容易に透過させるようにしたイオン交換膜及び(ii)イオン交換基を有する樹脂膜内への巨大有機イオンの侵入を当該膜の表層部で阻止するようにしたイオン交換膜が提案されている。
【0004】
上記(i)のタイプのイオン交換膜は、膜構造をルーズにすることによって容易に製造できるが(非特許文献1参照)、膜構造がルーズになると必然的にイオン選択性は低下するので、脱塩効率は低下するという問題がある。他方、上記(ii)のタイプのイオン交換膜としては、イオン交換基を有する樹脂膜の表面に当該樹脂膜が有するイオン交換基とは反対の荷電を有する薄層を形成したもの、例えば、陰イオン交換基を有する樹脂膜の表層部に反対荷電のスルホン酸基を導入し有機陰イオンの膜内への浸入を抑制した陰イオン交換膜(特許文献1参照);膜表面に高分子層を形成させて巨大有機イオンのイオン交換膜への吸着を抑制したもの、例えば、オリゴウレタンセグメントを有する化合物を陰イオン交換膜表面に吸着させたイオン交換膜(非特許文献2参照);及びポリビニルアルコールを前記樹脂膜表面にコートしたイオン交換膜(非特許文献3参照)等が知られている。しかし、これらのイオン交換膜は、ある程度の耐有機汚染性を有しているものの、前記樹脂膜の表層部に設ける反対荷電層や高分子層により膜抵抗が著しく増大するという問題がある。さらに、形成された高分子層はイオン交換基を有する樹脂膜との結合が弱く剥離し易い為、初期の耐有機汚染性を長期間維持することができないという問題もある。
【0005】
【非特許文献1】
「ディーサラネイション(Desalination)」,1973年,第13巻,p.105
【非特許文献2】
「ディーサラネイション(Desalination)」,1998年,第115巻,p.313
【非特許文献3】
「ディーサラネイション(Desalination)」,1998年,第118巻,p.305
【特許文献1】
特公昭51−40556号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、このような問題のない上記(ii)のタイプのイオン交換膜としてポリエーテル化合物が膜表面及び/又は膜内部に固定化されてなることを特徴とするイオン交換膜を開発し、既に提案している(特願2001−198018号)。
【0007】
しかしながら、確実にポリエーテル化合物を固定化するためには一旦重合を行って膜を製造した後にポリエーテル化合物を結合させるための反応を行う必要がり、その製法は必ずしも効率的とは言えなかった。そこで本発明は、上記イオン交換膜を簡便且つ効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、重合を行って樹脂膜を得る際に、重合開始剤としてポリアルキレングリコールセグメントを有するアゾ基含有高分子重合開始剤を用いた場合には、特に後処理を行うことなく樹脂膜にポリアルキレングリコールセグメントが導入されること、更にこのようにしてポリアルキレングリコールセグメントが導入されたイオン交換膜は、膜抵抗が低く優れた耐有機汚染性を長期に渡り維持することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、イオン交換基を有する重合性単量体及び/又はイオン交換基の導入が可能な重合性単量体を含有する重合性単量体成分並びに下記式〔1〕
【0010】
【化2】
【0011】
{式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基またはシアノ基であり、基“−A−”は、−NH−または−O−であり、基“−B−”は、下記式
−(−M−O−)m−
(式中、基“−M−”は、メチレン基、ポリメチレン基またはポリメチレン基から誘導される2価の有機基であり、mは10〜500の整数である。)
で示される基であり、nは1〜1000の整数である。}
で示されるアゾ基含有高分子重合開始剤を含有してなる重合性組成物を基材膜に付着せしめた後に重合する工程を含むことを特徴とするイオン交換膜の製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法は、イオン交換基を有する重合性単量体及び/又はイオン交換基の導入が可能な重合性単量体を含有する重合性単量体成分並びに前記式〔1〕で示されるアゾ基含有高分子重合開始剤を含有してなる重合性組成物を基材膜に付着せしめた後に重合する工程を含む。即ち、本発明の製造方法は、基材膜にイオン交換基を有する重合性単量体及び/又はイオン交換基の導入が可能な重合性単量体を含有する重合性単量体成分を付着させた後に該重合性単量体成分を重合させ、更に必要に応じてイオン交換性基の導入を行うという従来のイオン交換膜の製造方法(以下、単に従来法ともいう。)において、重合開始剤として前記式〔1〕で示される特定の重合開始剤を使用することを最大の特徴とする。
【0013】
イオン交換膜に耐有機汚染性を付与するにあたり、膜抵抗を上昇させず、かつ、長期間にわたる耐有機汚染性能を維持するためには、イオン交換膜に親水性基を有する化合物を化学結合で固定化すること(別言すれば親水性基を導入すること)が、有効な方法と考えられるが、上記特定の重合開始剤を使用することによりイオン交換膜(或いはその母体となる樹脂膜)の形成と同時に親水性基(具体的にはポリアルキレングリコールセグメントを有する基)の導入を行うことが可能となる。このため、膜成形後に親水性基の付与反応を行う方法と比べて工程が省略され、効率的に目的物を得ることが可能となる。
【0014】
本発明で使用するアゾ基含有高分子重合開始剤は、前記式〔1〕で表されるものであれば特に限定されない。なお、前記〔1〕において、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基またはシアノ基であり、基“−A−”は、−NH−または−O−であり、基“−B−”は、下記式
−(−M−O−)m−
(式中、基“−M−”は、メチレン基、ポリメチレン基またはポリメチレン基から誘導される2価の有機基であり、mは1〜2000の整数である。)
で示される基であり、nは1〜1000の整数である。
【0015】
R1〜R4としての炭素数1〜6のアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、このようなアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基およびイソペンチル基等を挙げられることができる。R1〜R4がアルキル基である場合、当該アルキル基炭素数が多くなると疎水性が増すため、調製した膜の電気抵抗が上昇する要因となり好ましくない。
【0016】
また、式〔1〕の基“−B−”が“−(−M−O−)m−”で示される基である場合における好適な“−M−”としては、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等を例示することができる。また、この場合におけるmは、得られるイオン交換膜の性能(巨大有機イオンの吸着抑制効果および電気抵抗等)の観点から、10〜500である。
【0017】
上記式〔1〕で示されるアゾ基含有高分子重合開始剤の中でも、相分離のない均一な重合性組成物が得られるという観点から、混合する重合性単量体、特にイオン交換膜を製造する際に汎用的に使用されるスチレン、クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルピリジンに溶解しうるものを使用するのが特に好適である。
【0018】
上記式〔1〕で示されるアゾ基含有高分子重合開始剤は、市販されており工業的に入手可能なものであるが、アゾ基含有2塩基酸ジハライドとポリアルキレングリコールセグメントを有するビニル系ポリマーとを反応させるなどの方法(例えば、特開平10−81709号公報)により容易に製造することができる。
【0019】
本発明の製造方法における上記アゾ基含有高分子重合開始剤の使用量は特に限定されないが、その量が少なすぎると十分な耐有機汚染性が付与できず、逆に多すぎるとイオン交換膜単位体積あたりのイオン交換基量が低下してイオン選択透過性が低下するとともに膜抵抗が上昇するため、イオン交換膜が本来有する電気化学的特性を損なうことなく優れた耐有機汚染性を付与するという観点から前記重合性単量体成分と上記アゾ基含有高分子重合開始剤との合計重量を基準として0.1〜50重量%、特に1〜30重量%であるのが好適である。なお、後述するように上記重合性単量体成分とは、「イオン交換基を有する重合性単量体及び/又はイオン交換基の導入が可能な重合性単量体」および必要に応じて使用する架橋剤(該架橋剤も一種の重合性単量体である)を意味する。
【0020】
本発明の製造方法は、重合開始剤として上記アゾ基含有高分子重合開始剤を用いる以外は従来法と特に変わることがなく、該重合開始剤を用いて重合させる「イオン交換基を有する重合性単量体及び/又はイオン交換基の導入が可能な重合性単量体」およびこれら重合性単量体と上記アゾ基含有高分子重合開始剤とを含む重合性単量体成分を付着して重合させる際に用いる「基材膜」としては、従来法で使用されているものが特に制限なく使用できる。
【0021】
即ち、「イオン交換基を有する重合性単量体」としては最初からイオン交換基を有する公知の重合単量体が、また「イオン交換基の導入が可能な重合性単量体」としてはスルホン化、クロルスルホン化、クロロメチル化、及びアミノ化、第4級ピリジニウム塩素化、ホスホニウム化、スルホニウム化、加水分解などの処理によりイオン交換基を導入することができる官能基を有する公知の重合性単量体が特に制限なく使用できる。ここでイオン交換基とは、陽イオン交換基又は陰イオン交換基を意味し、陽イオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等が挙げられ、陰イオン交換基としては、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基等が挙げられる。本発明で好適に使用できるこれら重合性単量体を具体的に例示すれば、クロロメチルスチレン、スチレン、スチレンスルホン酸、メタアクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、スチレンホスホニル酸、ビニルリン酸、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール等を挙げることができる。
【0022】
また、基材膜に付着させて重合させる重合性単量体成分には、上記重合性単量体および上記アゾ基含有高分子重合開始剤以外にもイオン交換膜の膨潤を抑制し適度な強度を付与する目的で各種架橋剤を添加することもできる。このような架橋材としては、m−、P−、O−ジビニルベンゼン、ジビニルスルホン、ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、トリビニルベンゼン類、ジビニルナフタリン、トリビニルナフタリン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、ジビニルピリジン類等のビニル化合物が使用できる。これら架橋剤の使用量は特に限定されないが、架橋効果および得られるイオン交換膜の電気抵抗のバランスから「イオン交換基を有する重合性単量体及又はイオン交換基の導入が可能な重合性単量体」と架橋剤との合計重量を基準として0.1〜30重量%であるのが好適である。
【0023】
更に、基材膜に付着させる重合性組成物においては、該重合性組成物に適度な粘性を付与し膜調製を容易にしたり、イオン交換膜における柔軟性などの機械的特性や電気化学的性質、更に使用時の耐久性を向上させたりする目的で、重合性単量成分に対して可溶性若しくは良分散性を有する高分子化合物を添加してもよい。これら高分子化合物としては、ポリスチレン類、ポリブタジエン類、ポリイソブチレン類、スチレン−ブタジエン共重合物、アクリルニトリル−ブタジエン共重合物、ポリ塩化ビニル微粉末、ポリオレフィン微粉末等が挙げられる。これら高分子化合物の添加量は特に限定されないが、通常は重合性単量体成分100重量部に対して200重量部以下、好ましくは1〜100重量部である。
【0024】
また、重合を促進するために上記重合性組成物には上記アゾ基含有高分子重合開始剤に加えて、他の低分子量ラジカル重合開始剤を添加するのが好適である。当該他の低分子量ラジカル重合開始剤は特に制限されないが、アゾ基含有高分子重合開始剤と同程度の10時間半減期温度を有するラジカル重合開始剤が好ましい。具体的には、100℃以下、より好ましくは、50〜80℃の10時間半減期温度を有するアゾビスイソブチルニトリルなどのアゾ系重合開始剤や、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、アルキルパーエステル、パーカーボネートなどの有機過酸化物が例示される。これら他の低分子量ラジカル重合開始剤の使用量は特に限定されないが、上記アゾ基含有高分子重合開始剤100重量部に対して0.1〜1000重量部、特に1〜100重量部であるのが好適である。
【0025】
また、上記重合性組成物を付着させる基材膜はイオン交換膜に適度な強度を付与し耐久性を向上させるために用いられるものであるが、当該基材膜としては、従来法で使用されている公知の基材膜が特に制限なく使用できる。このような基材膜を具体的に例示すれば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン等の炭化水素系樹脂やフッ素系樹脂などからなる織布、不織布、多孔性フィルムなどが挙げられる。
【0026】
上記重合性組成物を基材膜に付着せしめて重合させる方法も従来法と特に変わるところはなく、例えば重合性組成物を基材に付着させる方法としては、塗布法、含浸法、コート法などの公知の方法が適宜採用される。また、重合方法としては加熱重合や光重合が好適に採用される。重合条件は、重合開始剤の種類、単量体成分の種類、基材膜の種類等に応じ、更に所望するイオン交換膜の電気化学的、機械的性質等を考慮して適宜最適の条件を選定すればよい。
【0027】
このようにして基材膜に付着させて重合することにより得られる膜状高分子体は、重合性単量体成分として「イオン交換基を有する重合性単量体」を用いた場合にはそのままイオン交換膜となるが、「イオン交換基の導入が可能な重合性単量体」を用いた場合にはスルホン化、クロルスルホン化、クロロメチル化、及びアミノ化、第4級ピリジニウム塩素化、ホスホニウム化、スルホニウム化、加水分解などの処理により所望のイオン交換基を導入することにより、陽イオン交換膜または陰イオン交換膜とすることができる。なお、広範囲なpH領域でイオン交換基が解離し安定したイオン交換能が得られる理由から、イオン交換基としては強酸性基であるスルホン酸基、或いは強塩基性基である4級アンモニウム基又は4級ピリジニウム基を導入するのが好適である。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を更に詳細に説明するため実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
なお、以下の実施例および比較例に示すイオン交換膜の特性は、以下の方法により測定した。
【0030】
1)イオン交換容量および含水率
先ず、イオン交換膜を0.5(mol/l)のHCl水溶液に10時間以上浸漬し、その後、イオン交換膜の種類によってそれぞれ次のようにして遊離イオン量{A(mol)}を測定する。すなわち、陽イオン交換膜の場合には、0.5(mol/l)NaCl水容液で水素イオン型をナトリウムイオン型に置換させ、遊離した水素イオンを電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量する。一方、陰イオン交換膜の場合には、0.5(mol/l)のNaNO3水溶液で塩素イオン型を硝酸イオン型に置換させ、遊離した塩素イオンを電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量する。
【0031】
次に、同じイオン交換膜を0.5(mol/l)のNaCl水溶液に4時間以上浸漬し、イオン交換水で十分に水洗した後膜を取り出しティッシュペーパー等で表面の水分をふき取り湿潤時の重さ{W(g)}を測定し、その後、膜を減圧乾燥機に入れ60℃で5時間乾燥させてから取り出した膜の重量(乾燥時重量){D(g)}を測定する。このようにして測定された、A、WおよびDに基づいて下記式によりイオン交換容量および含水率を決定した。
【0032】
イオン交換容量=A×1000/W (mmol/g−乾燥膜)
含水率=100×(W−D)/D (%)。
【0033】
2)膜抵抗の測定
白金黒電極板を有する2室セル中にイオン交換膜を挟み、イオン交換膜の両側に0.5(mol/l)のNaCl水溶液を満たし、交流ブリッジ(周波数1000サイクル/秒)により25℃における電極間の抵抗を測定し、該電極間抵抗とイオン交換膜を設置しない場合の電極間抵抗との差により求めた。なお、上記測定には、あらかじめ0.5(mol/l)のNaCl水溶液中で平衡にしたイオン交換膜を用いた。
【0034】
3)耐有機汚染性の測定
得られた陰イオン交換膜をコンデショニングした後、銀、塩化銀電極を有する二室セルに該イオン交換膜を挟み、その陽極室には0.1(mol/l)のNaCl水溶液100ccを入れ、陰極室にはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(500ppm)とNaCl(0.1mol/l)の混合溶液を入れた。両室とも1000rpmの回転速度で攪拌し、10mA/cm2の電流密度で電気透析を行った。その時、両膜表面の近傍に白金線を固定し、膜間電圧の経時変化を測定した。通電中に有機汚染性が起こると膜間電圧が上昇してくる。通電を開始して有機汚染が生じると膜間電圧が経時上昇する。通電開始直後の初期膜間電圧から電圧差(ΔE)が6Vとなるまでの時間を測定して膜の汚染性の尺度とした。ΔEが6Vになるまでの時間が長いほど、耐有機汚染性の優れた膜を意味する。
【0035】
実施例1〜3
クロロメチルスチレン90重量部、工業用ジビニルベンゼン57%品10重量部、過酸化ベンゾイル5重量部、スチレンオキサイド3重量部、ニトリルブタジエンゴム5重量部を溶解した混合物に下記式で示されるポリエチレンオキサイドセグメントを有するアゾ基含有高分子重合開始剤(和光純薬工業株式会社製、VPE−0201)を表1に示した量ほど添加してペースト状の混合物を得た。用いたアゾ基含有高分子開始剤は、分子量が約1.5万〜3万、ポリエチレンオキサイド部分の分子量が約2000、1gあたりのアゾ基のモル数が約0.45mol/gである。
【0036】
【化3】
【0037】
得られたペースト状の混合物をポリ塩化ビニルの織布に付着させ、100μmのポリエステルフィルムを剥離材として両側を被覆した後、0.4MPaの窒素加圧下、80℃で8時間加熱重合した。次いで得られた各膜状物を30%トリメチルアミン水溶液10部、水50部、アセトン5部よりなるアミノ化浴中、室温で5時間反応せしめ4級アンモニウム型陰イオン交換膜を得た。得られたイオン交換膜をFT−IRで分析したところエーテル結合に帰属する1108cm−1にピークが認められ、ポリアルキレングリコールセグメントの存在を確認した。得られた陰イオン交換膜のイオン交換膜特性を測定した。これらの結果を表1に示した。
【0038】
【表1】
【0039】
比較例1
実施例1においてVPE−0201をペースト状混合物に添加しなかった以外は実施例1と同じ操作を行い、4級アンモニウム型陰イオン交換膜を得た。得られた陰イオン交換膜のイオン交換膜特性を測定した。その結果を表2に示した。
【0040】
【表2】
【0041】
実施例4〜6
アゾ基含有高分子重合開始剤を和光純薬工業株式会社製VPE−0601(高分子開始剤の分子量が約2.5万〜4万、ポリエチレンオキサイド部分の分子量が約6000、VPE1gあたりのアゾ基のモル数が、約0.16mol/g)を用いた以外は、実施例1と同じ操作を行い、4級アンモニウム型陰イオン交換膜を得た。得られた陰イオン交換膜特性を測定した。その結果を表3に示した。
【0042】
【表3】
【0043】
【発明の効果】
本発明のイオン交換膜の製造法によれば、優れた耐有機汚染性を長期にわたり維持しうるイオン交換膜を簡便且つ効率的に製造することが可能となる。なお、本発明の製造方法により製造されるイオン交換膜は、上記したような優れた特徴を有するので、耐有機汚染性を必要としない用途は勿論、耐有機汚染性を必要とする食品、医薬品、農薬などの合成工程やかん水、廃水の脱塩工程における電気透析用の隔膜として好適に使用することができる。
Claims (2)
- イオン交換基を有する重合性単量体及び/又はイオン交換基の導入が可能な重合性単量体を含有する重合性単量体成分並びに下記式〔1〕
−(−M−O−)m−
(式中、基“−M−”は、メチレン基、ポリメチレン基またはポリメチレン基から誘導される2価の有機基であり、mは10〜500の整数である。)
で示される基であり、nは1〜1000の整数である。}
で示されるアゾ基含有高分子重合開始剤を含有してなる重合性組成物を基材膜に付着せしめた後に重合する工程を含むことを特徴とするイオン交換膜の製造方法。 - 前記重合性組成物におけるアゾ基含有高分子重合開始剤の含有割合が、前記重合性単量体成分と当該アゾ基含有高分子重合開始剤との合計重量を基準として1〜50重量%であることを特徴とする請求項1記載のイオン交換膜の製造方法。
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