JP7454423B2 - アニオン交換膜及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アニオン交換膜及びその製造方法に関するものである。
アニオン交換膜は、アニオン交換樹脂を特定の基材に保持させた構造を有している。アニオン交換樹脂単独で膜を形成した場合には、強度が低く、また、液中に浸漬して使用する際に生じる膨潤による形態変化が大きいため、実用に適さない。このため、所定の強度を有し、膨潤による形態変化がなく、しかもアニオン交換樹脂に特有のアニオン交換能を損なわない基材に対し、アニオン交換樹脂を保持させたものがアニオン交換膜として使用される。
上記のようなアニオン交換膜において、従来は、基材としてポリ塩化ビニル製の織布が広く使用されていたが、ポリ塩化ビニルを基材とするアニオン交換膜は耐熱性や耐薬品性が低いという欠点がある。そこで、最近では、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを基材とするアニオン交換膜が広く検討されている。
ところで、ポリオレフィンを基材とするアニオン交換膜は、ポリ塩化ビニルを基材とするものに比して耐熱性や耐薬品が極めて高いのであるが、該ポリオレフィン基材とアニオン交換樹脂との接着性に乏しい。これに伴い、膨潤や乾燥(収縮)が繰り返されたときにアニオン交換樹脂と基材との剥離を生じ易く、その結果、隔膜としての機能低下を生じてしまい、透水性が悪化し、電流効率が低下してしまうという問題がある。さらには、ポリオレフィン基材とアニオン交換樹脂との接着性の低さは、当然、耐久性の低さにも通じている。
ポリオレフィン基材とアニオン交換樹脂との接着性を向上するための手段としては、ポリオレフィン基材表面を電子線照射やコロナ処理する手法が通常考えられるが、かかる手法は装置が大がかりなものとなってしまうばかりか、ポリオレフィン基材の強度を損なうという問題があるため、実用化が困難である。また、ポリオレフィン基材にアニオン交換樹脂の前駆体であるモノマーを塗布して重合させる際に、重合温度をポリオレフィンの融点より少し高くすることによりポリオレフィンの一部を溶融させてイオン交換樹脂との密着性を高めることも行われているが、ポリオレフィン基材の強度が低下するため、あらかじめ基材厚みを大きくすることが行われているが、イオン交換膜の電気抵抗が大きくなってしまい、時間経過とともに密着性も低下してしまう。このため、種々の接着性向上手段が提案されている。
例えば、特許文献1には、アニオン交換樹脂形成用の重合組成物の粘度を上げるために、含有されるモノマーに可溶性の種々の線状高分子化合物を配合することが記載されている(0016段落)。ここで示されている線状高分子化合物の中で、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体等のいわゆるスチレン系熱可塑性樹脂エラストマーは、アニオン交換基が導入されず、かつ基材の素材樹脂との親和性を有する性状を有しており、各種樹脂基材との密着性をかなり向上させるものである。特にこれらスチレン系熱可塑性樹脂エラストマーは、前記例示のように、スチレンと、ブタジエンやイソプレン等の共役ジオレフィンとの共重合体が汎用的であるところ、これらに存在する不飽和結合は化学的安定性を低下させるため、これを水素添加処理により消失させた共重合体は、前記基材との接着性の向上効果に一層優れていることが知られている(特許文献2)。
特開平6-322156号公報 特開平6-329815号公報
しかしながら、前記スチレン系熱可塑性樹脂エラストマーは、たとえ特許文献2の水素添加体を用いても、前記基材がポリオレフィン製である場合には、その接着性向上効果は十分ではなく、基材とアニオン交換樹脂との間の隙間の形成を実用上満足できるだけ高度に防止することができなかった。特に低抵抗や高選択性が求められる電気透析に好適なアニオン交換膜においては、高いアニオン交換基密度が必要となる。この場合アニオン交換樹脂がより極性が高くより膨潤が大きくなるため、更にポリオレフィン基材との密着性が悪化する。従って、得られるアニオン交換膜は透水度が十分でなく、特には、アニオン交換樹脂が膨潤・収縮を過度に繰り返すと、前記基材とアニオン交換樹脂との間の隙間が増大し、該透水度は顕著に悪化し、結果として電流効率も低くなる問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ポリオレフィン系織布とアニオン交換樹脂との密着性が高いアニオン交換膜を提供することにある。
本発明のアニオン交換膜は、ポリオレフィン系基材と、アニオン交換樹脂とを備えたアニオン交換膜であって、さらに酸性基または酸無水物基により変性されたスチレン系熱可塑性樹脂エラストマーが含有されている構成を有している。
前記酸性基はカルボキシ基であることが好ましく、酸無水物基はカルボン酸無水物基であることが好ましい。
前記酸性基または酸無水物基により変性された前記スチレン系熱可塑性樹脂エラストマーは、ポリスチレン-ポリ共役ジオレフィン-ポリスチレン共重合体又はその水素添加物の前記酸性基また前記は酸無水物基による変性体であってもよく、さらに、前記ポリスチレン-ポリ共役ジオレフィン-ポリスチレン共重合体はポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン共重合体であってもよい。
前記ポリオレフィン系基材はポリエチレン系織布であってもよく、さらに、前記ポリエチレン系織布はポリエチレンのモノフィラメント織布であってもよい。
本発明のアニオン交換膜の製造方法は、アニオン交換基を導入可能な官能基又はアニオン交換基を有する単量体と架橋性単量体とを含む単量体成分、及び重合開始剤を含有するアニオン交換樹脂形成用の重合性組成物に酸性基または酸無水物基により変性されたスチレン系熱可塑性樹脂エラストマーを加えて、ポリオレフィン系基材の空隙へ含浸させる含浸工程と、前記含浸工程の後に、前記単量体成分を共重合させる工程とを含む構成を有している。ここで、前記ポリオレフィン系基材はポリエチレン系織布であってもよい。また、アニオン交換基を導入可能な官能基又はアニオン交換基を有する前記単量体は、アニオン交換基を導入可能な官能基又はアニオン交換基を有するスチレン系単量体であってもよい。
本発明に係るアニオン交換膜は、酸性基または酸無水物基により変性されたスチレン系熱可塑性樹脂エラストマーが含有されているので、それによってアニオン交換樹脂とポリオレフィン系基材との密着性が高度に向上する。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
背景技術及び発明が解決しようとする課題の欄で述べたように、安価なポリオレフィン系織布を基材とするアニオン交換膜を製造する場合、アニオン交換膜の強度を高く保ち、電気抵抗は低くし、さらにポリオレフィン系織布とアニオン交換樹脂との密着性を十分に大きくすることは困難であるところ、本願発明者らは様々な検討を行って、本願発明に想到するに至った。
(実施形態1)
実施形態1に係るアニオン交換膜は、ポリオレフィン系織布からなる基材と、アニオン交換基として4級アンモニウム基を有するアニオン交換樹脂とを備えたアニオン交換膜であって、基材以外の部分には、酸性基または酸無水物基により変性されたスチレン系熱可塑性樹脂エラストマーが含有されている構成を有している。
<ポリオレフィン系織布>
ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィンの単独重合体またはこれらのランダムあるいはブロック共重合体が挙げられる。具体的には、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテンが挙げられる。中でも、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、入手の容易さやアニオン交換樹脂との親和性の点から低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンなどのポリエチレン系重合体が最も好ましい。
ポリオレフィン系基材は、織布、不織布、多孔質フィルム等任意の形態を有するものであってよいが、強度の観点から織布が好ましい。織布の開口率は20%以上70%以下が好ましく、35%以上55%以下がさらに好ましい。織布の単糸は、マルチフィラメントとモノフィラメントのいずれでも使用することができるが、モノフィラメントの方が密着性の観点から好ましい。また、用途に応じて適宜選択すれば良いが、強度と膜抵抗をバランスさせる点で、ポリオレフィン系織布の厚さは60μm以上190μm以下が好ましく、単糸の線径は1~70デニール(10~100μm)が好ましい。
<酸性基または酸無水物基により変性されたスチレン系熱可塑性樹脂エラストマー>
スチレン系熱可塑性樹脂エラストマーは、脂肪族炭化水素系単量体から導かれる単量体単位とスチレン系単量体単位との共重合物からなる熱可塑性の弾性樹脂である。 その弾性樹脂はISO527に従い測定した引張弾性率が0.01MPa以上、より好適には0.1MPa以上1000MPa以下のものが好ましい。
これらスチレン系熱可塑性樹脂エラストマーは、スチレン系単量体単位部分がアニオン交換樹脂(特にポリスチレン系のアニオン交換樹脂)との親和性が高く、脂肪族炭化水素系単量体単位部分がポリオレフィン系基材との親和性が高いため、アニオン交換樹脂とポリオレフィン系基材との密着性を向上させる働きがある。
こうしたスチレン系熱可塑性樹脂エラストマーは、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体等であって良いが、通常は、重合のし易さ等から、スチレンと、ブタジエンやイソプレン等の共役ジオレフィンとの共重合体が好ましく用いられる。これらはスチレンと共役ジオレフィンとの共重合体には、前記共役ジオレフィンに起因して不飽和結合が存在するところ、これがアニオン交換膜に残存すると化学的安定性を低下させ、引いてはアニオン交換樹脂とポリオレフィン系基材との密着性も低下させる。従って、スチレン系熱可塑性樹脂エラストマーは、共重合体を構成した状態において、上記脂肪族炭化水素系単量体単位中に不飽和結合を有さないものが好ましい。具体的には、前記スチレンと共役ジオレフィンとの共重合体であれば、水素添加処理して不飽和結合を消失させたものが好ましい。なお、斯様に水素添加処理する場合においても、共重合体には若干の不飽和結合が残存しても良い。通常、こうした残存する不飽和結合の数は、水素添加処理を行う前の全不飽和結合の数に対して10%以内好ましくは5%以内とするのが望ましい。
上記脂肪族炭化水素系単量体単位とスチレン系単量体単位との共重合体において、各構成単位の含有量は、特に制限されるものではないが、アニオン交換基の導入に適した官能基を有する単量体との相溶性や得られる共重合体の柔軟性等を勘案すれば、スチレン系単量体単位が共重合体の全質量に対して10~80質量%とするのが好ましい。脂肪族炭化水素系単量体単位は、共重合体の全質量に対して90~20質量%とするのが好ましい。
脂肪族炭化水素系単量体単位は前記共役ジオレフィンが用いられるのが一般的であるが、水素添加処理後の共役ジオレフィンと同一化学構造を持つエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン等のエチレン性不飽和二重結合を有する肪族炭化水素系単量体を用いても良い。前記共役ジオレフィンを用いる場合において、その一部をエチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和二重結合を有する肪族炭化水素系単量体としても良く、その好適な含有量は、共役ジオレフィンの100質量部に対して30質量部%以下、より好適には10質量部以下である。
共重合体の分子量は、特に制限されるものではないが、通常、1,000~1,000,000好ましくは50,000~500,000の範囲とするのが好適である。
共重合の形態としては、いわゆるA-B型のジブロックタイプ、A-B-A型のトリブロックタイプ、またはランダムタイプなど如何なるものであっても良い。前記スチレン系単量ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン体単位部分のアニオン交換樹脂との親和性向上効果、及び脂肪族炭化水素系単量体単位部分のポリオレフィン系基材との親和性向上効果をより高く発揮させるためには、スチレン系単量体単位Aと脂肪族炭化水素系単量体単位Bとのブロックタイプであるのが好ましく、特に、A-B-A型のトリブロックタイプが好ましい。
以上から本発明において、特に好ましいスチレン系熱可塑性樹脂エラストマーは、ポリスチレン-(ポリ共役ジオレフィン)-ポリスチレン共重合体であり、最も好ましいのはその水素添加物である。
本願発明者らはこのスチレン系熱可塑性樹脂エラストマーに関して種々検討を行った結果、酸性基または酸無水物基により変性を行うことで、さらにアニオン交換樹脂とポリオレフィン系基材との密着性を向上させることができることを見出した。即ち、酸性基を導入したポリマーはカチオン交換機能を有している。他方、酸無水物基も水の存在下で容易に加水分解するため、該酸無水物基を導入したポリマーを、イオン交換膜の製造環境や使用環境におくと、これは上記酸性基に変換され、係るポリマーはカチオン交換機能を有するものになる。従って、このようなポリマーをアニオン交換樹脂に添加するとアニオン交換機能が低下する危惧もある。このような理由で酸性基を導入したポリマーをアニオン交換樹脂に添加してアニオン交換膜を作成しようとは通常は考えない。
しかしながら本願発明者らが検討を行ったところ、たとえ酸性基や酸無水物基を有していたとしても、分子量の大きいポリマーの形態であれば、アニオン交換の機能はさほど低下せずにアニオン交換樹脂とポリオレフィン系基材との密着性が向上することを見出したのである。酸性基はスルホ基やホスホ基、カルボキシ基など特に限定されないが、カルボキシ基が好ましい。他方、酸無水物基は、上記カルボキシ基を無水物化した基が好ましく、具体的には、環状酸無水物基であれば、無水マレイン酸基、無水フタル酸基、無水コハク酸基、無水グルタル酸基等が挙げられ、非環状酸無水物基であれば、無水酢酸基、無水プロピオン酸基、無水安息香酸基等が挙げられる。最も好ましい変成させる基は無水マレイン酸基である。スチレン系熱可塑性樹脂エラストマーに対する、酸性基または酸無水物基の変性量は、特に制限されるものではないが、重合体に対して0.1~20質量%、好ましくは、0.2~10質量%、さらに好ましくは、0.2~5重量%が望ましい。
環状酸無水物基は、例えば、無水マレイン酸基、無水フタル酸基、無水コハク酸基、無水グルタル酸基が挙げられ、非環状酸無水物基は、例えば、無水酢酸基、無水プロピオン酸基、無水安息香酸基が挙げられる。
変性したスチレン系熱可塑性樹脂エラストマーは未変性のものと比べ極性が高くイオン交換樹脂との密着性が向上すると考えられるが、酸変性の場合は酸性基がアニオン交換基と強く相互作用するため、密着性が特に大きく向上する。
ここで、前記変性されたスチレン系熱可塑性樹脂エラストマーの配合量は、特に制限されるものではないが、後述するアニオン交換樹脂形成用の重合性組成物に含まれる単量体成分100質量部に対して0.5質量部以上50質量部以下であるのが好ましい。0.5質量部よりも少ないと密着性の向上効果が不十分なおそれがあり、50質量部を超えるとアニオン交換の機能が低下してしまうおそれがある。配合量は3質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
<アニオン交換樹脂>
アニオン交換膜を形成するアニオン交換樹脂は、それ自体公知のもの、例えば、骨格を形成する樹脂にアニオン交換基が導入されたものである。骨格を形成する樹脂としては、例えば、ビニル系、スチレン系、アクリル系等のエチレン系不飽和二重結合を有する単量体を重合して得られるポリマー及びその共重合ポリマー、並びに、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾールなどの主鎖に芳香環を含有するポリマーなどの炭化水素系の樹脂が挙げられる。その中でも骨格を形成する樹脂としてスチレン系の単量体を主としたスチレン系アニオン交換樹脂が好ましい。
また、アニオン交換基は、水溶液中で正の電荷となり得る反応基なら特に制限されるものではない。例えば、アニオン交換基としては、1~3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基等が挙げられ、一般的に、強塩基性基である4級アンモニウム基や4級ピリジニウム基が好適である。
<アニオン交換膜の製造>
本実施形態に係るアニオン交換膜は、以下のように製造される。
アニオン交換基を有する単量体、架橋性単量体、重合開始剤等のアニオン交換樹脂形成用重合硬化性成分と酸性基により変性されたスチレン系熱可塑性樹脂エラストマーとを混合して重合性組成物を調整する。かかる重合性組成物を、基材であるポリオレフィン系織布に浸漬させて当該織布の空隙に充填せしめた後、重合性組成物を重合硬化せしめてアニオン交換樹脂を生成する。これにより、目的とする基材アニオン交換膜を得ることができる。
重合硬化温度は、基材の強度を低下させないようにポリオレフィン系織布の融点を下回る温度に設定される。ポリオレフィンや重合硬化性成分の種類、重合硬化時間にもよるが、重合硬化温度の上限は、基材を構成するポリオレフィンの融点よりも20℃以上低い温度とすることが好ましい。具体的には、重合硬化温度は40℃以上120℃未満が好ましく、より好ましくは50℃以上100℃未満である。過度に低温で重合をおこなうと、モノマーの重合が充分に進行せず未重合分が増加し、溶出するために空隙が生じ、電流効率の低下や透水量の増加につながる虞がある。一方、過度に高温にすると、ポリオレフィンの融点を超えることで、ポリオレフィン系樹脂製基材の強度が低下する虞がある。
重合硬化性成分におけるアニオン交換基を有する単量体は、アニオン交換樹脂を製造するために従来から使用されているもので良い。例えば、ビニルベンジルトリメチルアンモニウム、ビニルベンジルトリエチルアンモニウム等の芳香族アンモニウム系単量体、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリル酸誘導体系単量体、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の含窒素複素環系単量体、それらの塩類およびエステル類等を挙げることができる。これらの単量体は、1種単独で使用してもよいし、或いは互いに共重合可能である2種以上を組み合わせて使用することもできる。この中でもスチレン系の単量体を用いることが好ましい。
また、架橋性単量体は、アニオン交換樹脂を緻密化し、膨潤抑止性や膜強度等を高めるために使用されるものであり、特に制限されるものでは無いが、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルスルホン、ブタジエン、クロロプレン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン類、ジビニルナフタリン、ジアリルアミン、ジビニルピリジン等のジビニル化合物が挙げられる。このような架橋性単量体は、一般に、前述したアニオン交換樹脂形成用の重合性組成物に含まれる単量体成分全体の中の、0.1~50質量%が好ましく、さらに好ましくは1~40質量%を配合する。
更に、上述したアニオン交換基を有する単量体及び架橋性単量体の他に、必要に応じてこれらの単量体と共重合可能な他の単量体を添加しても良い。他の単量体としては、例えば、スチレン、クロロメチルスチレン、アクリロニトリル、メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、アクロレイン、メチルビニルケトン、ビニルビフェニル等が用いられる。他の単量体の配合量は添加の目的によっても異なるが、一般に、アニオン交換樹脂形成用の重合性組成物に含まれる単量体成分全体の中の、0.1~60質量%が配合されることが好ましく、特に可撓性を付与する場合には、1~50質量%、特に5~40質量%配合されることが好ましい。
重合開始剤としては、従来公知のものが特に制限されること無く使用できるが、半減期10時間を得るための分解温度が110℃以下であることが好ましい。具体的には、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカルボネート、t-ブチルパーオキシラウレート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ジベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、2,5-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、ジサクシニックアシッドパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジラウロイルパーオキシド、ジ(3,3,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、t-ブチルパーオキシビバレート、t-ヘキシルパーオキシビバレート、t-ブチルパーオキシネオデカネト、t-ヘキシルパーオキシネオデカネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート等の有機過酸化物が用いられる。重合開始剤は、アニオン交換樹脂形成用の重合性組成物に含まれる単量体成分100質量部に対して、0.1~20質量部配合することが好ましく、更に好ましくは0.5~10質量部を配合する。
上記の重合性組成物には、更に、熱可塑性樹脂からなる添加物を含有させてもよい。具体的には熱可塑性樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリアクリロニトリル類、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体およびその水素添加物や変性物、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどを好適に挙げることができる。これらの少なくとも1種を重合性組成物100質量部に対して0.5質量部以上50質量部以下添加することが好ましい。
また、上記の重合性組成物には、必要に応じて更に、公知の増粘剤、添加剤等を含有させてもよい。
増粘剤としては、平均粒形10μm以下のポリオレフィン粉末、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブチレン等の飽和脂肪族炭化水素系ポリマー、スチレンーブタジエン共重合体等のスチレン系ポリマーが挙げられる。このような増粘剤の使用により、成膜作業に際しての垂れを効果的に防止し得るような範囲に粘度調整を行うことができる。
添加剤としては、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、リン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、或いは脂肪酸や芳香族酸のアルコールエステル等の可塑剤、スチレンオキシド、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどの塩酸捕捉剤などが挙げられる。 添加剤の配合量は添加の目的によっても異なるが、アニオン交換樹脂形成用の重合性組成物に含まれる単量体成分100質量部に対して、0.1~50質量部、特に0.5~30質量部配合されることが好ましい。
かかる重合性組成物の、ポリオレフィン系織布である基材の空隙への含侵方法には特に制限はない。例えば、前述した重合性組成物が充填された槽内に、ポリオレフィン系基材を浸漬することで行われる。もちろん、浸漬の代わりに、スプレー塗布や、ドクターブレードを用いた塗布などの方法で重合性組成物の含侵を行うこともできる。
上記のようにして、ポリオレフィン系織布に含侵された重合性組成物は、加熱オーブン等の重合装置内で加熱されて共重合されて硬化される。
この重合工程では、一般に、重合性組成物が充填されたポリオレフィン系織布をポリエステル等のフィルムに挟んで加圧下で常温から昇温する方法が採用される。加圧は、一般に0.1~1.0MPa程度の圧力で、窒素等の不活性ガスやロール等による加圧によって行われる。この加圧によって、ポリオレフィン系織布の外側界面に存在している余剰の重合性組成物がポリオレフィン系織布の空隙内に押し込まれた状態で重合が行われ、樹脂溜りの発生などを効果的に防止することができる。
その他の重合条件は、重合硬化性成分の種類等によって左右されるものであり、公知の条件より適宜選択して決定すればよい。重合温度は、前述の通り、ポリオレフィン系織布の融点よりも大幅に低い温度(具体的には40℃以上120℃未満)に設定され、また、重合時間は、重合温度等によっても異なるが、一般には、3~20時間程度である。重合硬化の完了により、ポリオレフィン系織布に支持されたアニオン交換膜が得られる。
また、本実施形態においては、アニオン交換樹脂形成用重合硬化性成分に代えて、アニオン交換基を導入可能な反応基を有するアニオン交換樹脂前駆樹脂形成用重合硬化性成分を用いて、アニオン交換膜を形成することもできる。具体的には、前記アニオン交換基を有する単量体に替えて、アニオン交換基導入可能な反応基を有する単量体を重合性組成物に配合して、アニオン交換膜前駆体を製造する。この場合も、後述するアニオン交換基導入工程を追加する点を除き、アニオン交換基を有する単量体を配合する場合と同様にしてアニオン交換膜前駆体を作成すれば良い。
アニオン交換基導入可能な反応基を有する単量体は、アニオン交換樹脂を製造するために、従来から使用されているもので良い。例えば、ビニルピリジン、メチルビニルピリジン、エチルビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、アミノスチレン、アルキルアミノスチレン、ジアルキルアミノスチレン、トリアルキルアミノスチレン、クロルメチルスチレン、アクリル酸アミド、アクリルアミド、オキシウム、スチレン、ビニルトルエンなどが好適である。これらの単量体は、1 種単独で使用してもよいし、或いは互いに共重合可能である2種以上を組み合わせて使用することもできる。
アニオン交換基導入可能な反応基を有する単量体及び架橋性単量体の他に必要に応じて他の単量体を使用することができる。他の単量体としては、アクリロニトリル、アクロレイン、メチルビニルケトンなどが挙げられる。
アニオン交換基導入工程は、重合性組成物を重合硬化してアニオン交換樹脂前駆樹脂の膜を得た後に行う。かかる工程においては、1~3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基等を導入するために、得られた前駆樹脂にアニオン交換基導入剤として1~3級アミン等を作用させたり、アルキル化とアミノ化などの処理を施すことによりアニオン交換基を導入する。これにより、目的とするアニオン交換膜を得ることができる。
また、本実施形態においては、上記のアニオン交換樹脂形成用あるいはアニオン交換樹脂前駆樹脂形成用の重合性組成物を用いる方法に替えて、アニオン交換基含有高分子を溶媒に溶解させた、アニオン交換基含有高分子の溶液をポリオレフィン系織布の空隙に充填することもできる。
上記のようにして製造されるアニオン交換膜の厚みは50~300μmの範囲にあることが好適である。この厚みがあまり薄いと、交換膜の強度が大きく低下する虞がある。厚みが過度に厚いと、電気抵抗が上昇するなどの不都合を生じる虞がある。
アニオン交換膜の破裂強度は、厚さにもよるが、0.1MPa以上2.5MPa以下となるように、ポリオレフィン系織布のフィラメント径、厚さや重合硬化性成分中の架橋性単量体の配合量などを調整される。
このような性状を有する本発明のアニオン交換膜は、製塩や食品分野における脱塩工程などで利用される電気透析用膜や、燃料電池の電解質膜として、また、鉄鋼業などで発生する金属イオンを含んだ酸からの酸回収に用いられる拡散透析用膜など多くの分野で有用に利用できる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、アニオン交換膜についての各種特性は、次の方法により測定した。
1.アニオン交換膜の透水量
円筒状のセルにイオン交換膜を挟み、上部に50mlの水を入れ、更にその上から0.1MPaで圧力をかけた際に、イオン交換膜を1時間に透過してくる水量Wpwを測定し、下記式に従って透水量を算出した。この際、膜の有効面積は12.6cmである。
透水量(ml/(m×hr))=Wpw/(S×t)
上記式中、
S:膜の有効面積(m
t:試験時間(hr)
さらに、アニオン交換膜の密着性を評価する、透水量の高温(80℃)加速試験として、アニオン交換膜の一部を80℃の純水中に24時間浸漬し、その高温処理膜について、上記透水量の測定を実施した。
アニオン交換膜において上記透水量は、300ml/(m×hr)以下であることが好ましく、50ml/(m×hr)以下であることがより好ましい。なお、透水量の下限は0ml/(m×hr)である。
2.アニオン交換膜のアニオン交換容量および含水率
アニオン交換膜を1mol/L-HCl水溶液に10時間以上浸漬する。その後、1mol/L-NaNO3水溶液で対イオンを塩化物イオンから硝酸イオンに置換させ、遊離した塩化物イオンを硝酸銀水溶液を用いて電位差滴定装置(AT-710、京都電子工業株式会社製)で定量した(Amol)。
次に、同じイオン交換膜を1mol/L-NaCl水溶液に4時間以上浸漬し、イオン交換水で十分水洗した。その後ティッシュペーパーで表面の水分を拭き取り、湿潤時の膜の質量(Wg)を測定した。さらに、60℃で5時間減圧乾燥して乾燥時の重さ(Dg)を測定した。上記測定値に基づいて、アニオン交換膜のアニオン交換容量および含水率を次式により求めた。
イオン交換容量[meq/g-乾燥質量]=A×1000/D
含水率[%]=100×(W-D)/D
3.アニオン交換膜の厚さ
アニオン交換膜を0.5mol/L-NaCl溶液に4時間以上浸漬した後、ティッシュペーパーで膜の表面の水分を拭き取り、マイクロメ-タMED-25PJ(株式会社ミツトヨ社製)を用いて測定した。
4.アニオン交換膜の電気抵抗
白金黒電極を有する2室セル中にイオン交換膜を挟み、アニオン交換膜の両側に0.5mol/L-NaCl水溶液を満たし、交流ブリッジ(周波数1000サイクル/秒)により25℃における電極間の抵抗を測定し、該電極間抵抗とイオン交換膜を設置しない場合の電極間抵抗との差により電気抵抗(Ω・cm)を求めた。なお、上記測定に使用するイオン交換膜は、予め0.5mol/L-NaCl水溶液中で平衡にしたものを用いた。
アニオン交換膜において上記電気抵抗は、4.0Ω・cm以下が好ましく、特に1.0Ω・cm以上3.0Ω・cm以下であるのが消費電力の観点から有利である。
5.アニオン交換膜の電流効率
以下の構成を有する2室セルを使用した。
陽極(Pt板)(1.0mol/L-硫酸水溶液)/アニオン交換膜/(0.25mol/L-硫酸水溶液)陰極(Pt板)
液温25℃で電流密度10A/dm2で1時間通電した後、陰極側の溶液を回収した。回収した液と初期液の硫酸濃度を、水酸化ナトリウム水溶液を用いて電位差滴定装置(AT-710、京都電子工業株式会社製)により定量し、下記式を用いて電流効率を算出した。
電流効率(%)=(CB-CS)/(I×t/F)×100
上記式中、
CB:初期液の濃度
CS:通電後に回収した液濃度
I:電流値(A)
t:通電時間(sec)
F:ファラデー定数(96500C/mol)
6.イオン交換膜の破裂強度
アニオン交換膜を0.5mol/L-NaCl水溶液に4時間以上浸漬し、イオン交換水で十分水洗した。次いで、膜を乾燥させることなく、ミューレン破裂試験機(東洋精機製)により、JIS-P8112に準拠して破裂強度を測定した。
<実施例1>
下記処方の混合物を調製した。
スチレン(St)33.2質量部
ジビニルベンゼン(DVB)(純度57%、残りはエチルビニルベンゼン)16.8質量部
クロロメチルスチレン(CMS)50.0質量部
アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)25.0質量部
スチレンオキシド(StO)3.4質量部
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(BPE)(日本油脂製パーブチルO)3.3質量部
この混合物に、スチレン系熱可塑性樹脂エラストマーとして、無水マレイン酸変性されている、ポリスチレンの含量が30質量%である、水素添加されたスチレン-ブタジエントリブロック共重合体(商品名:タフテックM1913、旭化成製;無水マレイン酸変性量=2質量%)20.7質量部を加え、40℃で20時間攪拌して均一な重合性組成物を得た。
次いで、ポリオレフィン系織布として、下記の高密度ポリエチレンモノフィラメント織布(PE33D-120)を用意した。
高密度ポリエチレンモノフィラメント織布(PE33D-120);
縦糸:線径76μm-1インチあたり120本(33デニール)
横糸:線径76μm-1インチあたり120本(33デニール)
厚さ:132μm
開口率:54%
上記の高密度ポリエチレンモノフィラメント織布(PE33D-120)の上に、上記で得られた重合性組成物を塗布し、ポリエステルフィルムを剥離材として両面被覆した後、70℃で5時間重合を行った。
次いで、得られた膜状高分子体をメタノールに20時間浸漬し可塑剤および重合残渣を除去したあと、トリメチルアミン5重量%およびアセトン25重量%水溶液を用いて、30℃、16時間のアミノ化反応を行い、アニオン交換膜を得た。アニオン交換膜の構成を表1に示す。また、得られたアニオン交換膜の特性は、表2に示したとおりの次の結果であった。
厚さ:176μm
イオン交換容量:1.3meq/g-乾燥質量
含水率:28%
電気抵抗:2.3Ω・cm
透水量:8ml/(m・hr)
透水量〔80℃加速試験〕:25ml/(m・hr)
電流効率:43%
破裂強度:1.1MPa
<比較例1>
スチレン系熱可塑性樹脂エラストマーとして、酸性基または酸無水物基での変性はされていない、ポリスチレンの含量が30重量%である水素添加されたスチレン-ブタジエントリブロック共重合体(商品名:タフテックH1041、旭化成製)を用意した。
実施例1において、スチレン系熱可塑性樹脂エラストマーとして、上記スチレン-ブタジエントリブロック共重合体の未変性体を用いた以外は実施例1と同様にして、アニオン交換膜を作成した。得られたアニオン交換膜の膜特性を表2に示した。
<実施例2>
下記処方の混合物を調製した。
スチレン(St)16.6質量部
ジビニルベンゼン(DVB)(純度57%、残りはエチルビニルベンゼン)16.8質量部
クロロメチルスチレン(CMS)66.6質量部
アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)25.0質量部
スチレンオキシド(StO)3.4質量部
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(BPE)(日本油脂製パーブチルO)3.3質量部
この混合物に、無水マレイン酸変性されているポリスチレンの含量が30重量%である水素添加されたスチレン-ブタジエントリブロック共重合体(商品名:タフテックM1913、旭化成製)20.7質量部を加え、40℃で20時間攪拌して均一な重合性組成物を得た。
上記重合性組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明のアニオン交換膜を得た。得られたアニオン交換膜の膜特性を表2に示した。
<実施例3>
ポリオレフィン系織布として、下記性状の高密度ポリエチレンモノフィラメント織布(PE33D-100)
縦糸:線径76μm-1インチあたり100本(33デニール)
横糸:線径76μm-1インチあたり100本(33デニール)
厚さ:132μm
を用いた以外は、は実施例1と同様にして、本発明のアニオン交換膜を得た。得られたアニオン交換膜の膜特性を表2に示した。
Figure 0007454423000001
Figure 0007454423000002
各実施例で製造されたアニオン交換膜は、電気抵抗が各3.0Ω・cm以下の低さであるにもかかわらず、スチレン系熱可塑性樹脂エラストマーとして、無水マレイン酸による変性体が含有されている結果、透水量はいずれも8ml/(m×hr)の優れた値であり、これは80℃の加速試験後であっても25ml/(m×hr)に維持されていた。これに対して、比較例1で製造されたアニオン交換膜は、スチレン系熱可塑性樹脂エラストマーは酸変成されていないため、透水量は76ml/(m×hr)の高さであり、これは80℃の加速試験後において756ml/(m×hr)にまで悪化した。このことから、スチレン系熱可塑性樹脂エラストマーとして、無水マレイン酸により変性体を用いることにより、得られるアニオン交換膜において、アニオン交換樹脂とポリオレフィン系基材との密着性が大きく向上することが確認できた。
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。

Claims (10)

  1. ポリオレフィン系基材と、アニオン交換樹脂とを備えたアニオン交換膜であって、
    さらに酸性基または酸無水物基により変性されたスチレン系熱可塑性樹脂エラストマーが含有されている、アニオン交換膜。
  2. 前記酸性基はカルボキシ基であり、酸無水物基はカルボン酸無水物基である、請求項1に記載のアニオン交換膜。
  3. 前記酸性基または酸無水物基により変性された前記スチレン系熱可塑性樹脂エラストマーは、ポリスチレン-ポリ共役ジオレフィン-ポリスチレン共重合体又はその水素添加物の前記酸性基による変性体である、請求項1又は2に記載のアニオン交換膜。
  4. 前記ポリスチレン-ポリ共役ジオレフィン-ポリスチレン共重合体はポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン共重合体である、請求項3に記載のアニオン交換膜。
  5. 前記ポリオレフィン系基材はポリエチレン系織布である、請求項1から4のいずれか一つに記載のアニオン交換膜。
  6. 前記ポリエチレン系織布はポリエチレンのモノフィラメント織布である、請求項5に記載のアニオン交換膜。
  7. 前記アニオン交換樹脂はポリスチレン系のアニオン交換樹脂である、請求項1から6のいずれか一つに記載のアニオン交換膜。
  8. アニオン交換基を導入可能な官能基又はアニオン交換基を有する単量体と架橋性単量体とを含む単量体成分、及び重合開始剤を含有するアニオン交換樹脂形成用の重合性組成物に酸性基または酸無水物基により変性されたスチレン系熱可塑性樹脂エラストマーを加えて、ポリオレフィン系基材の空隙へ含浸させる含浸工程と、
    前記含浸工程の後に、前記単量体成分を共重合させる工程と
    を含む、アニオン交換膜の製造方法。
  9. 前記ポリオレフィン系基材はポリエチレン系織布である、請求項8に記載のアニオン交換膜の製造方法。
  10. アニオン交換基を導入可能な官能基又はアニオン交換基を有する前記単量体は、アニオン交換基を導入可能な官能基又はアニオン交換基を有するスチレン系単量体である、請求項8又は9に記載のアニオン交換膜の製造方法。
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