JP3238238B2 - イオン交換膜 - Google Patents

イオン交換膜

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JP3238238B2
JP3238238B2 JP11070393A JP11070393A JP3238238B2 JP 3238238 B2 JP3238238 B2 JP 3238238B2 JP 11070393 A JP11070393 A JP 11070393A JP 11070393 A JP11070393 A JP 11070393A JP 3238238 B2 JP3238238 B2 JP 3238238B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、イオン交換膜、特に高
温、酸、アルカリおよび有機溶剤に対して良好な耐久性
を有するイオン交換膜に関する。
【0002】
【従来の技術】イオン交換膜の製造方法として、一般に
イオン交換基の導入に適した官能基を有するモノマー、
架橋剤および重合触媒を主たる成分とする混合溶液にポ
リ塩化ビニル等の微粉末を添加してなるペースト状物
を、ポリ塩化ビニルの織布などに塗布して重合した後、
イオン交換基を導入する方法(以下、単にペースト法と
もいう)が広く用いられている。この方法では、補強基
材であるポリ塩化ビニルの織布に対するモノマーの含浸
およびグラフト重合が適度であるため、得られるイオン
交換膜のイオン交換樹脂部と基材との接着性が良好であ
り、優れた電気化学的性能と取扱い易さを有する。しか
しながら、上記の製造方法で得られたイオン交換膜は、
ポリ塩化ビニルの基材中にイオン交換樹脂が含浸され、
イオン交換能を有するため、高温での使用において寸法
変化が大きく、また有機溶剤等に対するポリ塩化ビニル
それ自体に由来する耐久性のため限られた条件でしか使
用できないなど本質的な欠点を有している。
【0003】一方、特公昭57−34017号公報等に
おいて化学的安定性、熱安定性および寸法安定性の点で
優れた樹脂であるポリオレフィンを、イオン交換膜の基
材として用いる織布の素材として適用することが提案さ
れている。このうちポリエチレンは、特に高温、酸、ア
ルカリおよび有機溶剤等に対する化学的安定性に優れて
おり、上記基材の素材樹脂として好適である。ここで、
通常汎用されている一般的なポリエチレンの重量平均分
子量は、多くてもせいぜい5×104程度である。とこ
ろが、こうした重量平均分子量のポリエチレンは機械的
強度の弱さからマルチフィラメントに供するような細い
糸を紡糸することができず、前記ポリエチレン製の織布
としてはモノフィラメントで織ったものが使用されてい
る。しかして、こうしたモノフィラメントで織った織布
をイオン交換膜の基材として用いた場合、該イオン交換
膜は、ポリエチレンが本来無極性の樹脂であるためにイ
オン交換樹脂成分との親和性が充分でなく、使用時、特
に酸、アルカリと接触するような過酷な条件下での使用
時において、イオン交換樹脂部と該基材との剥離が生じ
膜の性能を低下させていた。
【0004】他方、特開昭64−22932号公報に
は、イオン交換膜の基材として、重量平均分子量が1×
105以上のポリオレフィン製の多孔性薄膜を使用する
ことが開示されている。しかしながら、該多孔性薄膜
は、上記超高分子量ポリオレフィンを流動パラフィンの
ような溶媒中で加熱溶融して均一な溶液とした後、シー
ト状に成形し、急冷してゲル状シートとした後、揮発性
溶剤を用いて処理し、延伸しながら溶媒を抽出し、その
後乾燥することにより得られる多孔性シートである。一
般に、溶媒抽出法で得る多孔性シートの空孔は径、ある
いは形を揃えることが困難であり、さらに空孔自身の分
布が均一ではない。従って、後で該空孔内に導入するイ
オン交換樹脂の分布が不均一となり、高性能のイオン交
換膜を得ることができない。また、こうした多孔性薄膜
の空孔内にイオン交換樹脂を導入するのでは、基材とイ
オン交換樹脂部との接触面積はさらに小さくなり、イオ
ン交換膜の耐久性はより低下する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上の背景にあって本
発明は、高温下に晒されたり、酸、アルカリ或いは有機
溶剤等と接触するような過酷な条件下で使用されても良
好な耐久性を有するイオン交換膜を開発することを目的
とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記したよ
うな従来技術の課題に鑑み、鋭意研究を続けてきた。そ
の結果、イオン交換膜の基材として、特定の重量平均分
子量を有する超高分子量のポリエチレン製のマルチフィ
ラメントからなる織布を用いることにより、上記課題が
解決できることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0007】即ち、本発明は、重量平均分子量が、1×
10以上のポリエチレンよりなる0.1〜20デニー
ルの太さのフィラメントで構成されたマルチフィラメン
トからなる織布を基材とするイオン交換膜である。
【0008】本発明において基材となる織布の素材樹脂
として使用するポリエチレンは、重量平均分子量が1×
105以上であることが必要である。重量平均分子量が
1×105より小さい場合、該ポリエチレンは機械的強
度が弱くなり、マルチフィラメントに供すような細い径
の糸を引くことが困難になる。また、こうした紡糸性を
勘案すればポリエチレンの重量平均分子量は、1×10
7以下であることが好ましい。本発明において最も好ま
しいポリエチレンの重量平均分子量の範囲は、5×10
5〜5×106である。なお、本発明においてポリエチレ
ンは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチエン等が何
等制限されることなく使用できる。
【0009】本発明の最大の特徴は、イオン交換膜の基
材の素材樹脂として上記超高分子量のポリエチレンを用
い、それにより該基材をマルチフィラメントで織ったポ
リエチレン製の織布とした点である。かかる構成により
得られるイオン交換膜は、上記基材樹脂の機械的強度の
強さに起因して単に破断強度等が強くなるだけでなく、
基材とイオン交換樹脂部の接触面積が増大し、また、マ
ルチフィラメントを構成する各フィラメントの間隙にイ
オン交換樹脂が浸透して該基材とイオン交換樹脂部が強
固に固着する結果、著しく使用時の耐久性が向上したも
のとなる。
【0010】本発明において、マルチフィラメントを構
成する各フィラメントの太さは、基材とイオン交換樹脂
との接触面積を大きくし、且つ各フィラメント間に生じ
る空隙を均一に分布させるためには、出来るだけ細いも
のとするのが好ましい。通常は、0.1〜20デニール
であり、更に0.5〜15デニールの範囲が好ましい。
マルチフィラメントとして束ねるフィラメントの本数
は、織布として得られる基材の厚みにも関係するが、通
常、2〜2000本好ましくは5〜300本の範囲とす
るのが好ましい。こうして得られるマルチフィラメント
の太さは、特に制限されるものではないが、0.2〜2
0000デニールの範囲であるのが好ましい。なお、こ
れらのマルチフィラメントは、必要に応じてよりをかけ
て製糸される。さらに、こうして得られたマルチフィラ
メントを織布に加工する際には、平織り、綾織り、畳織
り等の従来公知の技術が何等制限なく用いられる。ま
た、縦糸および横糸の目付け量は小さい方が得られるイ
オン交換膜の電気抵抗を小さくできるが、糸ずれによる
織物の保持が困難となるために、一般に1平方インチ当
たりの本数が縦糸、横糸共に10から1000の範囲と
するのが好ましい。以上により得られるマルチフィラメ
ント製の織布の厚みは、機械的強度を維持し、かつイオ
ン交換膜の基材として用いた際に小さい電気抵抗とする
観点から、一般に10〜500μm好ましくは50〜2
50μmの範囲とするのが好適である。
【0011】なお、本発明において、上記マルチフィラ
メント製の織布からなる基材に、カレンダー加工を施
し、縦糸と横糸の交点部分を圧縮することにより基材表
面の平滑性を向上させたり、予め基材に熱処理を施すこ
とにより、加熱重合工程における寸法変化を抑制する等
の処理を施しても良い。さらに、コロナ放電処理、クロ
ルスルホン酸処理等の従来公知のポリエチレン製基材の
表面処理方法は、基材とイオン交換樹脂部分の接着性を
向上させる手段として推奨される。
【0012】本発明のイオン交換膜は、上記特定の織布
を基材として用いる限り、どのような方法によって製造
されても良い。好適には、前記ペースト法、即ち、イオ
ン交換基の導入に適した官能基を有するモノマー、架橋
剤および重合触媒を主たる成分とする混合物を、基材に
付着させて重合した後、イオン交換基を導入する方法に
より製造するのが好ましい。
【0013】ここで、本発明において用いられるイオン
交換基の導入に適した官能基を有するモノマーとして
は、従来公知であるイオン交換膜の製造において用いら
れるモノマーが特に制限されずに使用される。具体的に
は、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α−
メチルスチレン、アセナフチレン、ビニルナフタリン、
α−ハロゲン化スチレン等、α,β,β’−トリハロゲ
ン化スチレン、クロルスチレン類などが挙げられる。特
に陽イオン交換膜の場合には、α−ハロゲン化ビニルス
ルホン酸、α,β,β’−ハロゲン化ビニルスルホン
酸、メタクリル酸、アクリル酸、スチレンスルホン酸、
ビニルスルホン酸、マレイン酸、イタコン酸、スチレン
ホスホニル酸、無水マレイン酸、ビニルリン酸など、そ
れらの塩類、エステル類などが用いられる。また、陰イ
オン交換膜の場合には、ビニルピリジン、メチルビニル
ピリジン、エチルビニルピリジン、エチルビニルピリジ
ン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ビニルイ
ミダゾール、アミノスチレン、アルキルアミノスチレ
ン、ジアルキルアミノスチレン、トリアルキルアミノス
チレン、メチルビニルケトン、クロルメチルスチレン、
アクリル酸アミド、アクリルアミド、オキシウム、ビニ
ルピロリドン、スチレン、ビニルトルエンなどが用いら
れる。
【0014】架橋剤としては、例えばm−、p−、o−
ジビニルベンゼン、ジビニルスルホン、ブタジエン、ク
ロロプレン、イソプレン、トリビニルベンゼン類、ジビ
ニルナフタリン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、
ジビニルピリジン類などのジビニル化合物が用いられ
る。
【0015】上記したイオン交換基の導入に適した官能
基を有するモノマーであるモノビニル化合物および架橋
剤であるジビニル化合物とともに、必要に応じて該ビニ
ル化合物と共重合可能なモノマーとして、例えば、スチ
レン、アクリロニトリル、エチルスチレン、ビニルクロ
ライド、アクロレイン、メチルビニルケトン、無水マレ
イン酸、マレイン酸、その塩またはエステル類、イタコ
ン酸、その塩またはエステル類などが適宜用いられる。
また、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、リ
ン酸トリブチル、スチレンオキサイドあるいは脂肪族
酸、芳香族酸のアルコールエステル等可塑剤、モノマー
を希釈するための溶媒等を適宜添加しても良い。
【0016】なお、上記したモノマー混合物の粘度を上
げるために、該モノマーに可溶性の線状高分子化合物例
えばポリスチレン類、ポリブタジエン類、ポリイソブチ
レン類、ポリブチレン類、スチレン−ブタジエン共重合
物、水素添加したスチレン−ブタジエン共重合物、ポリ
フェニレンオキサイド類、ポリアクリロニトリル類、ブ
タジエン−アクリロニトリル共重合物、水素添加したブ
タジエン−アクリロニトリル共重合物、スチレン−エチ
レン−ブチレン共重合物、スチレン−エチレン−プロピ
レン共重合物、スチレン−イソプレン共重合物、水素添
加したスチレン−イソプレン共重合物、クロロスルホン
化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン
化ポリプロピレン、塩素化ポリプロピレン等を適宜用い
る。またポリ塩化ビニル微粉末、ポリエチレン微粉末、
ポリプロピレン微粉末などは上記したモノマーに分散性
が良いため適宜用いられる。特に粒径が10μm以下で
ある球状のポリエチレン微粉体は、モノマー混合物に非
常に分散性が良く、ペースト状混合物の粘度を適度なも
のに調節し易いため好適である。得られるペースト状混
合物の20℃における粘度は、一般に0.1〜20ポイ
ズ好適には0.5〜5ポイズの範囲とするのが良い。
【0017】本発明において重合触媒は、公知のラジカ
ル重合開始剤が何等制限されることなく使用される。基
材と得られるイオン交換樹脂部分の接着性を強固なもの
にするためには、半減期10時間を得るための分解温度
が110℃以上であるラジカル重合開始剤を用いること
が好ましい。その理由は、110℃以上の高温で重合す
ることにより基材の素材樹脂である前記超高分子量ポリ
エチレンが若干軟化し、その結果、該基材表面に前記イ
オン交換基の導入に適したモノマーが馴染み易くなるた
めと考えられる。
【0018】上記の半減期10時間を得るための分解温
度が110℃以上であるラジカル重合開始剤の具体例と
しては、p−メンタンヒドロパーオキシド、ジイソプロ
ピルベンゼンヒドロパーオキシド、α,α’−ビス(t
ert−ブチル パーオキシ−m−イソプロピル)ベン
ゼン、ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−
ブチルヒドロパーオキシド、ジ−tert−アミルパー
オキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ジク
ミルパーオキシド、2,5−ジメチル2,5−ジ(te
rt−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル
2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン
−3、クメンヒドロパーオキシド、1,1,3,3−テ
トラメチルブチルヒドロパーオキシド、2,5−ジメチ
ル2,5−ジヒドロパーオキシヘキサン、2,5−ジメ
チル2,5−ジヒドロパーオキシヘキシン−3等が挙げ
られる。
【0019】上記のラジカル重合開始剤を用いて重合す
る際、一般に常温から加圧下で昇温されるが、その昇温
速度は、特に制限されるものではなく、適宜選択すれば
良い。重合温度は、通常、110℃以上で、ポリエチレ
ン基材の融点よりも低い温度に設定する。一般に、重量
平均分子量が約1×106のポリエチレンの融点は14
0から150℃付近である。
【0020】上記した各成分の配合割合は、特に制限さ
れないが、一般には、イオン交換基の導入に適した官能
基を有するモノマー100重量部に対して、架橋剤を5
〜150重量部、上記のモノマー及び架橋剤と共重合可
能なモノマーを0〜200重量部、上記のモノマー混合
液に可溶な重合体を0〜200重量部の範囲で、また、
重合開示剤を全モノマー量100重量部に対して0.1
〜30重量部の範囲で配合するのが好ましい。
【0021】以上の重合条件はラジカル重合開始剤の種
類、モノマー混合液の組成、超高分子量ポリエチレン基
材の重量平均分子量、フィラメントの太さ、織り方等の
種類によっても左右されるものであり、一概に決めるこ
とはできないが最適の成形加工条件、最適の電気化学
的、機械的性質等を考慮して適宜選定すれば良い。
【0022】なお、前記のモノマー混合物を基材に付着
する方法は、例えば塗布または含浸、浸漬等の公知の方
法を適宜採用すれば良い。以上により重合されて得られ
る膜状高分子は、これを公知の例えばスルホン化、クロ
ルスルホン化、クロロメチル化およびアミノ化、第4級
アンモニウム塩素化、第4級ピリジニウム塩素化、ホス
ホニウム化、スルホニウム化、加水分解等の処理により
所望のイオン交換基を導入して、陽イオン交換膜または
陰イオン交換膜とすることができる。このイオン交換基
の導入量は特に制限されないが、通常、イオン交換容量
が0.1〜20meq/g−乾燥膜好ましくは0.5〜
3meq/g−乾燥膜の範囲となる量とするのが一般的
である。また、本発明におけるイオン交換膜の厚さは、
所望の電気抵抗、機械的強度、輸率、耐久性等にも関係
するが、一般に10〜500μm好ましくは40〜30
0μmの範囲とするのが良い。
【0023】
【発明の効果】本発明のイオン交換膜は、重量平均分子
量が1×105以上のポリエチレン製のマルチフィラメ
ントからなる織布を基材とすることにより、特に高温下
に晒されたり、酸、アルカリ或いは有機溶剤等と接触す
るような過酷な条件下で使用されても良好な耐久性を有
する。
【0024】また、本発明のイオン交換膜は、機械的強
度等においても極めて優れたものであり、例えば濃厚な
中性塩、酸またはアルカリ溶液を電気透析する場合ある
いは電極反応の隔膜として用いる場合、その他の一般に
イオン交換膜を用いる系において優れた特性を示す。
【0025】
【実施例】以下、本発明の実施例及び比較例を示すが、
本発明はこれらの実施例に限定されるものでない。
【0026】製造例1 重量平均分子量が約1×106であるポリエチレン製で
あり、フィラメント1本当たり太さが10デニールの糸
(商品名:テクミロンNA210、三井石油化学製)を
10本束ねることにより100デニールのマルチフィラ
メントを得た。次いで、縦糸を1インチ当たり78本、
また横糸を1インチ当たり65本の目付けで平織りして
織布を得た。厚みは150μmであった。
【0027】他方、スチレン70重量部、クロルメチル
スチレン5重量部、純度約57%のジビニルベンゼン1
0重量部、ジオクチルフタレート10重量部、スチレン
オキサイド1重量部、クロロスルホン化ポチエチレンゴ
ム(商品名:TOS0−CSM、東ソー製)2重量部、
平均粒径9μmである球状の低密度ポリエチレン微粉末
(商品名:ミクロセンFN−500)50重量部および
ラジカル重合開始剤として半減期10時間を得るための
分解温度が117℃であるジクミルパーオキシドを1重
量部加えてペースト状混合物を得た。次いで、上記した
超高分子量ポリエチレン製のマルチフィラメントからな
る織布に上記したペースト状混合物を塗布し、ポリエス
テルフィルムを剥離材として被覆した後、ペースト法に
よる成形重合を行った。重合パターンは、20℃から1
30℃まで3時間かけて昇温し、120℃で10時間保
持した。得られた膜状高分子体の厚さは120μmであ
った。
【0028】次いで、得られた膜状高分子体を濃硫酸
(97%品)を用いて、60℃、6時間のスルホン化反
応を行い、厚さ170μmの陽イオン交換膜を得た。こ
の陽イオン交換膜の電気抵抗を25℃の0.5N−塩化
ナトリウム水溶液中で測定したところ、3.2Ω・cm
2であった。また、イオン交換容量を測定したところ、
2.0meq/g−乾燥膜であった。
【0029】さらに、得られた陽イオン交換膜について
ASTM D 882に準拠した破断強度を測定したと
ころ、5700kg/cm2であった。
【0030】比較製造例1 製造例1において、イオン交換膜の基材として、重量平
均分子量が約6×104の高密度ポリエチレン製の太さ
が100デニールのモノフィラメントを用いて、実施例
1と同様な目付けで平織りした織布を用いた以外は、実
施例1と同様にして陽イオン交換膜を得た。
【0031】得られた陽イオン交換膜は、電気抵抗が
3.1Ω・cm2であり、イオン交換容量が2.0me
q/g−乾燥膜であり、破断強度が220kg/cm2
であった。
【0032】製造例2 重量平均分子量が約6×105であるポリエチレン製で
あり、フィラメント1本当たり太さが約1.1デニール
の糸を45本束ねることにより50デニールのマルチフ
ィラメントを得た。次いで、縦糸を1インチ当たり50
本、また横糸を1インチ当たり50本の目付けで平織り
して織布を得た。厚みは60μmであった。
【0033】他方、クロルメチルスチレン70重量部、
スチレン5重量部、純度約57%のジビニルベンゼン1
5重量部、スチレンオキサイド5重量部、スチレン−ブ
タジエンゴム(商品名:JSR−SL552、日本合成
ゴム製)3重量部、平均粒径7μmである球状の低密度
ポリエチレン微粉末(商品名:フロービーズLE−10
80)30重量部およびラジカル重合開始剤として半減
期10時間を得るための分解温度が126℃であるジ−
tert−ブチルパーオキシドを15重量部加えてペー
スト状混合物を得た。
【0034】次いで、上記した超高分子量ポリエチレン
製のマルチフィラメントからなる織布に上記したペース
ト状混合物を塗布し、ポリエステルフィルムを剥離材と
して被覆した後、ペースト法による成形重合を行った。
得られた膜状高分子体の厚さは55μmであった。
【0035】次いで、得られた膜状高分子体をトリメチ
ルアミン10重量%およびアセトン20重量%水溶液を
用いて、30℃、16時間のアミノ化反応を行い、厚さ
60μmの陰イオン交換膜を得た。得られた陰イオン交
換膜は、電気抵抗が4.7Ω・cm2であり、イオン交
換容量が1.5meq/g−乾燥膜であり、破断強度が
5300kg/cm2であった。
【0036】比較製造例2 製造例2において、イオン交換膜の基材として、DSM
社(オランダ)製の重量平均分子量が約2×106であ
る超高分子量ポリエチレン製の多孔性シート(厚さ60
μm、空隙率50%)を用いた以外は、実施例2と同様
にして陰イオン交換膜を得た。
【0037】得られた陰イオン交換膜は、電気抵抗が
4.4Ω・cm2であり、イオン交換容量が1.5me
q/g−乾燥膜であり、破断強度が2800kg/cm
2であった。
【0038】製造例3 重量平均分子量が約2×106であるポリエチレン製で
あり、フィラメント1本当たり太さが約1.1デニール
の糸(商品名:ダイニーマSK−60、東洋紡製)を1
40本束ねることにより150デニールのマルチフィラ
メントを得た。次いで、縦糸を1インチ当たり75本、
また横糸を1インチ当たり70本の目付けで平織りして
織布を得た。厚みは220μmであった。
【0039】他方、4−ビニルピリジン70重量部、ス
チレン5重量部、ジビニルベンゼン15重量部、水素添
加されたスチレン−ブタジエンゴム(商品名:ダイナロ
ン1910P、日本合成ゴム製)30重量部およびラジ
カル重合開始剤として半減期10時間を得るための分解
温度が167℃であるtert−ブチルヒドロパーオキ
シドを8重量部加えてペースト状混合物を得た。
【0040】次いで、上記した超高分子量ポリエチレン
製のマルチフィラメントからなる織布に上記したペース
ト状混合物を塗布し、ポリエステルフィルムを剥離材と
して被覆した後、ペースト法による成形重合を行った。
重合パターンは、20℃から150℃まで5時間かけて
昇温し、150℃で5時間保持した。得られた膜状高分
子体の厚さは200μmであった。
【0041】次いで、得られた膜状高分子体をヨウ化メ
チル50重量%のメチルアルコール溶液を用いて、30
℃、16時間のピリジン環窒素の第4級化反応を行い、
さらに1Nー塩化ナトリウム水溶液中に、30℃、1時
間浸漬し、厚さ220μmの陰イオン交換膜を得た。得
られたイオン交換膜は、電気抵抗が4.9Ω・cm2
あり、イオン交換容量が1.5meq/g−乾燥膜であ
り、破断強度が8100kg/cm2であった。
【0042】実施例1 製造例1で得られた陽イオン交換膜、製造例2で得られ
た陰イオン交換膜を同時に2室型の電気透析装置に組み
込んで、硫酸の濃縮を行った。有効膜面積は200cm
2で、初期の硫酸水溶液濃度は希薄側、濃縮側共に0.
1Nであった。また運転条件は、電流密度0.1A/c
2、温度80℃、溶液流速10リットル/分であっ
た。運転開始後、濃縮側の溶液の濃度は徐々に上昇し、
3時間後に3.5Nに達した。その後、濃縮側の溶液濃
度は3.5N付近に保たれた。
【0043】運転を開始して6ヶ月後、電気透析装置の
運転を中止し、電気透析装置を解体し、陽イオン交換膜
および陰イオン交換膜の状態を観察した。製造例1で得
られた陽イオン交換膜と製造例2で得られた陰イオン交
換膜は、外観上特に変化はなかった。
【0044】また、通電した部分のイオン交換容量を測
定したところ、製造例1で得られた陽イオン交換膜は
2.0meq/g−乾燥膜、製造例2で得られた陰イオ
ン交換膜は1.5meq/g−乾燥膜であり、共に電気
透析に供する前と値に変化はなかった。
【0045】比較例1 実施例1において、比較製造例1で得られた陽イオン交
換膜、比較製造例2で得られた陰イオン交換膜を用いた
こと以外は実施例1と全く同様の条件で電気透析による
硫酸の濃縮を行った。運転を開始して6ヶ月後、濃縮側
の溶液濃度が突然低下し始めたため、電気透析装置の運
転を中止した。電気透析装置を解体し、陽イオン交換膜
および陰イオン交換膜の状態を観察したところ、比較製
造例1で得られた陽イオン交換膜と比較製造例2で得ら
れた陰イオン交換膜には、共にイオン交換樹脂部分が基
材から欠落しピンホールになっている部分が観察され
た。
【0046】また、通電した部分のイオン交換容量を測
定したところ、比較製造例1で得られた陽イオン交換膜
は1.6meq/g−乾燥膜、比較製造例2で得られた
陰イオン交換膜は1.3meq/g−乾燥膜であり、共
に電気透析に供する前(比較製造例1:2.0meq/
g−乾燥膜、比較製造例2:1.5meq/g−乾燥
膜)より値が大きく低下していた。
【0047】実施例2 実施例1において、製造例1で得られた陽イオン交換
膜、製造例3で得られた陰イオン交換膜を用い、また、
酸として硝酸を用いる以外は、実施例1と同様にして電
気透析による酸の濃縮を行った。
【0048】運転を開始して6ヶ月後、電気透析装置の
運転を中止し、電気透析装置を解体し、陽イオン交換膜
および陰イオン交換膜の状態を観察した。製造例1で得
られた陽イオン交換膜と製造例3で得られた陰イオン交
換膜は、外観上特に変化はなかった。
【0049】また、通電した部分のイオン交換容量を測
定したところ、製造例1で得られた陽イオン交換膜は
2.0meq/g−乾燥膜、製造例2で得られた陰イオ
ン交換膜は1.5meq/g−乾燥膜であり、共に電気
透析に供する前と値に変化はなかった。
【0050】実施例3 製造例1で得られた陽イオン交換膜、製造例2で得られ
た陰イオン交換膜を同時に2室型の電気透析装置に組み
込んで、水酸化ナトリウムの濃縮を行った。有効膜面積
は200cm2で、初期の水酸化ナトリウム水溶液濃度
は希薄側、濃縮側共に0.1Nであった。また運転条件
は、電流密度0.1A/cm2、温度60℃、溶液流速
10リットル/分であった。運転開始後、濃縮側の溶液
の濃度は徐々に上昇し、3時間後に3.9Nに達した。
その後、濃縮側の溶液濃度は3.9N付近に保たれた。
【0051】運転を開始して6ヶ月後、電気透析装置の
運転を中止し、電気透析装置を解体し、陽イオン交換膜
および陰イオン交換膜の状態を観察した。製造例1で得
られた陽イオン交換膜と製造例2で得られた陰イオン交
換膜は、外観上特に変化はなかった。
【0052】また、通電した部分のイオン交換容量を測
定したところ、製造例1で得られた陽イオン交換膜は
1.9meq/g−乾燥膜、製造例2で得られた陰イオ
ン交換膜は1.4meq/g−乾燥膜であり、共に電気
透析に供する前と値にほとんど変化はなかった。
【0053】比較例2 実施例3において、比較製造例1で得られた陽イオン交
換膜、比較製造例2で得られた陰イオン交換膜を用いた
こと以外は実施例3と全く同様の条件で電気透析による
水酸化ナトリウムの濃縮を行った。運転を開始して3ヶ
月後、濃縮側の溶液濃度が突然低下し始めたため、電気
透析装置の運転を中止した。電気透析装置を解体し、陽
イオン交換膜および陰イオン交換膜の状態を観察した。
比較製造例1で得られた陽イオン交換膜と比較製造例2
で得られた陰イオン交換膜には共にイオン交換樹脂部分
が基材から欠落しピンホールになっている部分が観察さ
れた。
【0054】また、通電した部分のイオン交換容量を測
定したところ、比較製造例1で得られた陽イオン交換膜
は1.3meq/g−乾燥膜、比較製造例2で得られた
陰イオン交換膜は1.1meq/g−乾燥膜であり、共
に電気透析に供する前より値が大きく低下していた。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量平均分子量が、1×10以上のポリ
    エチレンよりなる0.1〜20デニールの太さのフィラ
    メントで構成されたマルチフィラメントからなる織布を
    基材とするイオン交換膜。
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