JP3992456B2 - スリット性に優れた導電性のシート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は複層のシートに関し、該シートは電子部品の包装容器に好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
ICをはじめとした電子部品はインジェクショントレー、真空成形トレー、マガジン、キャリアテープ(エンボスキャリアテープともいう)などにより包装される。これらの包装容器には静電気によるIC等の電子部品の破壊を防止するために導電性を有するシートが用いられることが多い(例えば、特願平7−10684、特願平7−87000)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これらのシートはその用途に応じてスリットされ使用に供されるが、本発明はその際に切断面に生じる毛羽やバリ等を著しく低減したシートを提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は衝撃強度が17〜31KJ/m 2 、引張強度が40〜55MPa、ゴム含有量が16〜19重量%のABS系樹脂の基材層と、その少なくとも片面に導電層を有するシートである。以下更に本発明の詳細を説明する。
【0005】
【発明の実施の形態】
シートを電子部品の包装用に用いるとき、その用途に応じてシートはスリットされる。ここでスリットとは必要な大きさ、幅にシートを裁断することをいう。この際に裁断面から毛羽やバリ等の裁断滓が多く発生し、それらはスリットした裁断面や表面に付着し、更には収納物である電子部品に付着し後の工程で問題を引き起こすこととなる。スリット性に優れるシートとは、スリット時に毛羽やバリ等の裁断滓の発生の少ないシートをいう。スリット性はスリットしたシートのロールの側面をネルで拭き取った時の汚れ度合いにより判定される。
【0006】
本発明のシートはABS系樹脂の基材層と、その少なくとも片面に導電層を有しスリット性に優れるものである。ABS系樹脂としてはその衝撃強度が17〜31KJ/m 2 、引張強度が40〜55MPaでゴム含有量が16〜19重量%の範囲にあり、好ましくは220℃におけるMFRが5〜13g/10minのものを用いるとスリット性を向上させることができる。スリット性が向上する理由は定かではないがABS系樹脂がこの範囲にあるとシートがスリット時にスリット刃で押し切られる様に切断され、その際にシートの撓みが少なく刃の入り方が均一となり、更に刃とシートとのずりが生じにくくなるためにスリット性が向上すると考えられる。
【0007】
ABS系樹脂の基材層は本発明においてはABS系樹脂からのみなる基材層を意味すると共に、ABS系樹脂を主成分としてそれにスリット性を低下させない範囲内でその他の成分を少量添加したものも意味する。基材層はABS系樹脂のみからなるものが好ましい。ここでABS系樹脂のみからなるとは通常市販されているABS系樹脂に含有されている程度の少量の添加剤等までをも排除するものではないが、それ以外のカーボンブラック、無機フィラー等は実質的に含まない事が好ましい。
【0008】
導電層は導電性のある層であり、その表面抵抗値が102〜1010Ωであることが好ましい。抵抗値がこの範囲よりも高いと静電気による電子部品の破壊を抑制することが困難となり、抵抗値がこの範囲よりも低いと外部から静電気等による電気の流入を容易にし電子部品が破壊してしまう可能性がある。導電層としては例えば導電性塗料による塗工層や、熱可塑性樹脂に導電性フィラーを練りこんだものが挙げられるが、中でも、ポリスチレン系樹脂とカーボンブラックを含有する、あるいは更にオレフィン系樹脂を含有する導電層が成形性等において好ましい。ここでポリスチレン系樹脂とは、スチレンの単独重合体あるいは共重合体であって、例えば一般用ポリスチレン又は共役ジエン重合体成分を含有する耐衝撃性ポリスチレン及びこれらのブレンド物を指す。オレフィン系樹脂とはオレフィン系炭化水素の単独重合体あるいは共重合体であって、例えばエチレン及びプロピレンのホモポリマー、エチレン又はプロピレンを主成分とする共重合体、更にこれらのブレンド物が挙げられる。共重合体としては、例えばエチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂があり、エチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン1、ヘキセン−1等がある。また導電層には滑剤、可塑剤、加工助剤などの各種添加剤や無機フィラーを添加することができる。
【0009】
カーボンブラックは、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等であり、好ましくは比表面積が大きく、樹脂への添加量が少量で高度の導電性が得られるもの、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラックが望ましい。その添加量はポリスチレン系樹脂あるいはポリスチレン系樹脂とオレフィン系樹脂の合計に対して5〜50重量%が好ましい。5重量%未満では静電気による電子部品の破壊を防止するために十分な表面抵抗値が得られず50重量部を超えると流動性が低下するとともに得られるシートの機械的強度も低下してしまう。
【0010】
シートの幅方向における巻き硬度の差を550以下好ましくは500以下とするとスリット性を向上させることができる。ここで巻き硬度の差とはパロテスター(PERCEQ社製)で巻き硬度の測定を行なった最大、最小の差のことである。巻き硬度の差を550以下とするとスリットする際に裁断面から発生する毛羽やバリ等の裁断滓の発生を著しく低減できる。巻き硬度の差を550以下とするには、自動厚み調整ダイによるシートの幅方向における厚みムラを抑える方法、金属ロールによるバンク成形、シートの巻き取り部でよう動をかける方法などが挙げられる。シートの幅方向の特定の場所に他より厚い部分があると、その部分がコブとなり巻き硬度のバラツキを生じ、その差が550以下とはならない。
【0011】
本発明のシートの全体の肉厚は0.1〜3.0mmであり、多層共押出法により導電層を積層した場合、全体の肉厚に占める導電層の肉厚は2%〜80%であることが好ましい。全体の肉厚が0.1mm未満ではシートを成形して得られる包装容器としての強度が不足し、3.0mmを超えると圧空成形、真空成形、熱版成形等の成形が困難となる。また表面層の肉厚が2%未満ではシートを成形して得られる包装容器の表面抵抗値が著しく高くなり十分な静電気抑制効果が得られず、80%を超えると圧空成形、真空成形、熱板成形等の成形性が低下してしまう。一方、コーティング、印刷、熱ラミネート法、ドライラミネート法、押出ラミネート法により導電層を積層した場合、全体の肉厚に占める導電層の肉厚は30%以下であることが好ましい。
【0012】
シートは基材層に導電層を積層することにより得ることができる、その方法としては、例えばコーティング、印刷、熱ラミネート法、ドライラミネート法、押出ラミネート法、共押出法が挙げられるが、より安価に製造するにはマルチマニホールドダイやフィードブロックを用いた多層共押出法により一括して積層シートを得ることが好ましい。
【0013】
(用途)
シートは成形して電子部品包装容器として好適に用いることが出来る。電子部品包装容器とは電子部品の包装容器であるが、例えば真空成形、圧空成形、熱板成形等の公知の方法によりトレー、マガジンチューブ、キャリアテープ(エンボスキャリアテープ)等の電子部品包装容器として用いることが出来るが、特にキャリアテープ、トレーに好適に用いられる。電子部品包装容器に電子部品を収納することにより電子部品包装体となる。この場合容器には必要に応じ蓋がされる。例えばキャリアテープについては、電子部品を収納した後にカバーテープによる蓋が施される。電子部品包装体にはこのようなものも含む。
【0014】
電子部品としては特に限定されず、例えば、IC、抵抗、コンデンサ、インダクタ、トランジスタ、ダイオード、LED(発光ダイオード)、液晶、圧電素子レジスター、フィルター、水晶発振子、水晶振動子、コネクター、スイッチ、ボリュウム、リレー等がある。ICの形式にも特に限定されず、例えばSOP、HEMT、SQFP、BGA、CSP、SOJ、QFP、PLCC等がある。
【0015】
【実施例】
以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1
基材層用として衝撃強度が22.1KJ/m 2 、引張強度が45.9MPaでゴム含有量が17.2重量%、220℃におけるMFRが8.0g/10minのABS系樹脂(電気化学工業社製)を用い、導電層用としてポリスチレン系樹脂(HI−E4 東洋スチレン社)100重量部に対して20重量%のカーボンブラック(デンカブラック粒状 電気化学工業社製)からなる導電性樹脂コンパウンドを使用し、φ65mm押出機(L/D=28)、φ40mm押出機(L/D=26)及び500mm幅のTダイを用いたフィードブロック法により全体の肉厚が300μm、導電層の肉厚が両側30μmとなるような3層シートを得た。このシートをスリッタ−で24mm幅にスリットした。なお、ABS樹脂の引張強度はASTM法D−638、衝撃強度はASTM法D−256に従い、220℃におけるMFRはJIS-K-6874に従って測定した。
【0016】
比較例1
基材層用として衝撃強度が6.0KJ/m 2 、引張強度が56MPaでゴム含有量が9.6重量%、220℃におけるMFRが20.0g/10minのABS系樹脂を用いた以外は実施例1と同様に行った。
【0017】
比較例2
基材層用としてポリスチレン系樹脂(HI−E4 東洋スチレン社)を用いた以外は実施例1と同様に行った。以上の作製したシートに対して次に示す評価を行なった。
(表面抵抗値)
三菱油化社ロレスターMCPテスターを用いて、端子間を10mmとし、シートを幅方向に等間隔に10箇所、表裏各2列計40箇所の表面抵抗値を測定し、対数平均値を表面固有抵抗値とした。
(スリット性)
スリットしたシートのロールの側面をネルで拭き取った時の汚れ度合いを判定した。汚れが殆どないものをスリット性○とし、少ない場合を△、汚れが多い場合を×とした。
(巻き硬度の差)
PERCEQ社パロテスターを用いて、シートの幅方向に等間隔に13点のシート巻き硬さを測定し、最大値と最大値の差を巻き硬度の差とした。
上記の評価項目の結果を表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
【発明の効果】
衝撃強度が17〜31KJ/m 2 、引張強度が40〜55MPa、ゴム含有量が16〜19重量%のABS系樹脂の基材層と、その少なくとも片面に導電層を有する優れるシートは、スリットする際の切断面の毛羽等を著しく減少させ、半導体包装に適するキャリアテープ用導電シートを得ることが可能となる。
Claims (7)
- 衝撃強度が17〜31KJ/m2、引張強度が40〜55MPa、ゴム含有量が16〜19重量%、220℃におけるMFRが5〜13g/10minのABS系樹脂の基材層と、その少なくとも片面にポリスチレン系樹脂とカーボンブラックを含有する、あるいは更にオレフィン系樹脂を含有する導電層を有するシート。
- 下記のいずれか一以上の要件を具備する請求項1のシート。
1.表面層の固有抵抗値が102〜1010Ωである。
2.シートの幅方向における巻き硬度の差が550以下である。 - 基材層がABS系樹脂のみからなる請求項1または請求項2に記載のシート。
- 電子部品包装容器用の請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載のシート。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載のシートからなる電子部品包装容器。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載のシートからなる電子部品包装体。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載のシートからなるキャリアテープおよびトレー。
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