JP3991549B2 - 温度補償型発振器、通信装置及び電子機器 - Google Patents

温度補償型発振器、通信装置及び電子機器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、間欠的な発振制御を行う場合に好適な温度補償型発振器、通信装置及び電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子機器に使用される発振器は、広い温度範囲で安定した発振周波数の出力信号を出力する必要があるため、温度補償型発振器(TCXO)が使用されている。
この温度補償型発振器は、温度補償回路により温度に応じて負荷容量を変化させることにより、負荷容量に応じて圧電振動子の発振周波数を変化させ、圧電振動子の発振周波数を一定に温度補償するものである。
図9に、温度補償型発振器の概略構成を示すように、温度補償型発振器1は、温度補償回路3と電圧制御型発振回路(VCXO)4との間にフィルタ回路2を設けて構成される。
【0003】
また、この温度補償型発振器1には、温度補償回路3をアナログ回路により構成したアナログ型のものと、温度補償回路3をディジタル回路により構成したディジタル型のものがある。
ここで、フィルタ回路2を設けた理由は、以下の通りである。すなわち、温度補償回路3をアナログ回路により構成した場合は、温度補償回路3を構成する多くの抵抗素子及び半導体素子から熱雑音やショット雑音が発生するため、温度補償回路3が出力する温度補償電圧Vc1にノイズ電圧Vnが加算されてしまう。
従って、温度補償回路3が出力する出力電圧Vc1+Vnからノイズ電圧Vnを除去して出力信号の位相雑音を低減させるためにフィルタ回路が設けられるのである。
【0004】
また、図10にディジタル型の温度補償型発振器のブロック図を示すように、この温度補償型発振器10において、温度補償回路3は、例えば、温度センサ3A、アナログ/ディジタル(A/D)変換器3B、メモリ3C及びディジタル/アナログ(D/A)変換器3Dから構成される。
すなわち、この温度補償回路3は、温度センサ3Aが計測した温度情報をA/D変換器3Bによりアナログ/ディジタル変換し、メモリ3Cに予め記憶された圧電振動子X(図9)の温度特性を補償するためのディジタル信号に変換し、D/A変換器3Dによりディジタル/アナログ変換することにより、温度補償電圧Vc1を出力する。この場合、温度変化によりD/A変換器3Dに入力されるディジタル信号に変化が生じた場合は、D/A変換器3Dの分解能の影響により出力電圧にステップ状のノイズ電圧Vnが含まれる場合がある。
【0005】
このため、温度補償回路3をディジタル回路により構成した場合も、アナログ回路により構成した場合と同様に、温度補償回路が出力する温度補償電圧Vc1にノイズ電圧Vnが加算されてしまう。
従って、ディジタル型の温度補償型発振器においても、フィルタ回路2を設けることによって温度補償回路3の出力電圧Vc1+Vnからノイズ電圧Vnを除去し、出力信号の位相雑音を低減させている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図11(A)に示すように、現在の携帯電話装置においては、受信待受時は、消費電力低減の観点から温度補償型発振器1、10を含む間欠受信部(斜線部により示す)に間欠的に電力を供給して間欠受信を行う方法が採用されている。なお、表示部・キーボードは常時電力が供給されており、トランスミッタは送信時にのみ電力が供給される。ここで、図11(B)は、間欠受信部に供給される電力の波形である。
しかし、温度補償型発振器1、10は、上述したようにフィルタ回路2が挿入されているため、温度補償型発振器1,10の電源がON/OFFされる度にフィルタ回路2の一部を構成するコンデンサの充放電が発生し、温度補償電圧Vc1が安定するまでの時間が長くかかってしまう。
【0007】
すなわち、図12に温度制御型発振器の間欠受信時のタイミングチャートを示すように、例えば、時刻Taから時刻Tbの間に温度補償型発振器1、10に電力が供給されて間欠受信を行う場合(図12(B))、フィルタ回路2のコンデンサは、時刻Taにおいて、フィルタ回路2の時定数により徐々に充電される(図12(C))。このため、フィルタ回路の出力電圧は徐々に温度補償電圧Vc1に近づくこととなり、すぐには正確な温度補償電圧Vc1が電圧制御型発振回路4に入力されない。
従って、図12(F)に示すように、温度制御型発振器の出力信号の周波数fは時刻Taから所定期間経過しなければ目的の周波数f0にならないため、受信動作時に必要な周波数をすぐに得ることができない。従って、この場合、図12に示した動作時間(「TCXO動作時間」)を長くして目的の周波数f0に達するまで温度制御型発振器を連続動作させる必要がある。ここで、図12(F)は出力信号の周波数偏差df(df=f−f0)/f0を示しており、時刻Taから時刻Tbの時間、すなわち「TCXO動作時間」を100[ms]に設定した場合を示している。
【0008】
従って、携帯電話装置においては、動作時間の短時間化が困難で消費電力低減に不利であった。
この場合、特開平11−251836号公報に開示されるように、フィルタ回路による発振開始の遅れを回避すべく、発振回路の電源投入時にフィルタ回路のコンデンサを急速充電するという方法も考えられる。
しかし、この場合コンデンサを急速充電するための充電回路が必要になり、消費電力低減に不利で回路構成も煩雑な問題があった。
【0009】
そこで本発明の目的は、簡易な構成で位相雑音が低く、低消費電力で目的の周波数の出力信号を短時間で出力することができる温度補償型発振器、この温度補償型発振器を具備する通信装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1記載の温度補償型発振器は、制御電圧信号に応じて出力信号の周波数が変化する電圧制御型発振回路と、温度に基づいて前記出力信号の周波数を一定にするための温度補償電圧信号を出力する温度補償回路と、容量素子を有し、前記温度補償電圧信号に含まれるノイズ電圧を除去して前記制御電圧信号として出力するフィルタ回路と、前記温度補償回路の動作が停止した場合に前記容量素子の電圧を保持させる電圧保持回路とを備えることを特徴としている。
【0011】
請求項2記載の温度補償型発振器は、制御電圧信号に応じて出力信号の周波数が変化する電圧制御型発振回路と、温度に基づいて前記出力信号の周波数を一定にするための温度補償電圧信号を出力する温度補償回路と、容量素子を有し、前記温度補償電圧信号に含まれるノイズ電圧を除去して前記制御電圧信号として出力するフィルタ回路と、外部から供給される制御信号に応じて外部から供給される電力を前記電圧制御型発振回路及び温度補償回路に供給する電源スイッチ回路と、前記温度補償回路への電力の供給が停止した場合に前記容量素子の電圧を保持させる電圧保持回路とを備えることを特徴としている。
【0012】
請求項3記載の温度補償型発振器は、請求項1または2に記載の温度補償型発振器において、外部から供給される周波数制御信号に基づいて前記出力信号の周波数を設定すべき周波数にするための周波数制御電圧信号を出力する電圧変換回路と、前記フィルタ回路より出力される前記温度補償電圧信号に前記周波数制御電圧信号を加算して前記制御電圧信号として出力する加算回路とを有することを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の温度補償型発振器は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の温度補償型発振器において、前記電圧制御型発振回路は、圧電振動子を発振させる発振回路と、前記制御電圧信号に応じて容量が変化する可変容量素子とを有することを特徴としている。
【0016】
請求項5記載の通信装置は、温度補償型発振器を内蔵し、受信待受時は前記温度補償型発振器の間欠的な発振制御を行う通信装置であって、前記温度補償型発振器は、制御電圧信号に応じて出力信号の周波数が変化する電圧制御型発振回路と、温度に基づいて前記出力信号の周波数を一定にするための温度補償電圧信号を出力する温度補償回路と、容量素子を有し、前記温度補償電圧信号に含まれるノイズ電圧を除去して前記制御電圧信号として出力するフィルタ回路と、前記温度補償回路の動作が停止した場合に前記容量素子の電圧を保持させる電圧保持回路と、を備えることを特徴としている。
【0017】
請求項記載の通信装置は、電源と、温度補償型発振器と、この温度補償型発振器の発振を制御する制御回路とを有し、受信待受時は当該温度補償型発振器の間欠的な発振制御を行う通信装置であって、前記温度補償型発振器は、制御電圧信号に応じて出力信号の周波数が変化する電圧制御型発振回路と、温度に基づいて前記出力信号の周波数を一定にするための温度補償電圧信号を出力する温度補償回路と、容量素子を有し、前記温度補償電圧信号に含まれるノイズ電圧を除去して前記制御電圧信号として出力するフィルタ回路と、前記制御回路から供給される制御信号に応じて前記電源の電力を前記電圧制御型発振回路及び温度補償回路に供給する電源スイッチ回路と、前記温度補償回路への電力の供給が停止した場合に前記フィルタ回路に含まれる容量素子の電圧を保持させる電圧保持回路とを備えることを特徴としている。
【0018】
請求項記載の通信装置は、請求項5または6に記載の通信装置において、外部から供給される周波数制御信号に基づいて前記出力信号の周波数を設定すべき周波数にするための周波数制御電圧信号を出力する電圧変換回路と、前記フィルタ回路より出力される前記温度補償電圧信号に前記周波数制御電圧信号を加算して前記制御電圧信号として出力する加算回路とを有することを特徴としている。
【0019】
請求項記載の通信装置は、請求項5乃至7のいずれかに記載の通信装置において、前記通信装置は、前記発振制御の非動作時間を1秒から10秒以内にすることを特徴としている。
【0020】
請求項記載の電子機器は、温度補償型発振器を内蔵し、前記温度補償型発振器の間欠的な発振制御を行う電子機器であって、前記温度補償型発振器は、制御電圧信号に応じて出力信号の周波数が変化する電圧制御型発振回路と、温度に基づいて前記出力信号の周波数を一定にするための温度補償電圧信号を出力する温度補償回路と、容量素子を有し、前記温度補償電圧信号に含まれるノイズ電圧を除去して前記制御電圧信号として出力するフィルタ回路と、前記温度補償回路の動作が停止した場合に前記容量素子の電圧を保持させる電圧保持回路とを備えることを特徴としている。
いる。
【0021】
請求項10記載の電子機器は、電源と、温度補償型発振器と、この温度補償型発振器の発振を制御する制御回路とを有し、所定の場合は当該温度補償型発振器の間欠的な発振制御を行う電子機器であって、前記温度補償型発振器は、制御電圧信号に応じて出力信号の周波数が変化する電圧制御型発振回路と、温度に基づいて前記出力信号の周波数を一定にするための温度補償電圧信号を出力する温度補償回路と、容量素子を有し、前記温度補償電圧信号に含まれるノイズ電圧を除去して前記制御電圧信号として出力するフィルタ回路と、前記制御回路から供給される制御信号に応じて前記電源の電力を前記電圧制御型発振回路及び温度補償回路に供給する電源スイッチ回路と、前記温度補償回路への電力の供給が停止した場合に前記フィルタ回路に含まれる容量素子の電圧を保持させる電圧保持回路とを備えることを特徴としている。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0023】
(1) 実施形態
(1−1) 実施形態の構成
図1は、本発明の実施形態に係る携帯電話装置に使用される温度補償型発振器を周辺構成と共に示す機能ブロック図であり、図2は、図1の詳細ブロック図である。
この温度補償型発振器20は、電圧制御型発振回路21と、温度補償回路22と、フィルタ回路23と、電圧変換回路24と、加算器25と、電源スイッチ回路26と、電圧保持回路27とから構成される。
【0024】
図2に示すように、電圧制御型発振回路21は、水晶振動子やセラミック振動子等の圧電振動子Xを発振させる発振回路211や可変リアクタンス素子212等から構成される。この電圧制御型発振回路21は、例えば、図3に示すようなバイポーラトランジスタQ1、Q2を用いて構成したものや、図4に示すようなインバータIV1、IV2をMOS型トランジスタで構成したCMOS型のものが適用される。
なお、図3及び図4において、電圧VREGは、図1及び図2に図示していないが、温度補償型発振器20の電源端子VCCに供給される電力から作られる発振回路内部の電源である。
【0025】
温度補償回路22は、圧電振動子Xの周波数温度特性の変化を打ち消すような温度補償電圧Vc1を出力できる構成のものを広く適用することができる。
温度補償回路22は、例えば、従来技術で述べたように、温度センサと、アナログ/ディジタル変換回路と、メモリと、ディジタル/アナログ変換回路により構成し、温度情報をディジタル信号に変換した後、メモリに予め記録された温度補償用のデータに変換し、この温度補償用のデータをディジタル/アナログ変換することにより、温度補償電圧Vc1を出力するディジタル型のものや、サーミスタ等の素子の温度特性を利用して温度補償電圧Vc1を出力するアナログ型のものを適用することができる。
【0026】
フィルタ回路23は、抵抗R1とコンデンサ(容量素子)Cとから構成されるローパスフィルタであり、温度補償回路22より供給される温度補償電圧Vc1に含まれるノイズ電圧Vnを除去する。このフィルタ回路23の時定数は、温度補償電圧Vc1より温度補償回路21等で発生するノイズ電圧を除去するために、カットオフ周波数が十数Hz〜数百Hz程度になる値等に設定される。
【0027】
電圧変換回路24は、周波数制御電圧入力端子VCを介して供給される周波数制御信号φVCに基づいて周波数制御電圧Vc2を生成する回路である。
例えば、電圧変換回路24としては、図5に符号A、B、Cで示すように、周波数制御信号φVCに対して周波数制御電圧Vc2の傾きを変化させたり、周波数制御電圧Vc2の変化の極性を変化させる機能を持たせた回路が適用される。
【0028】
加算器25は、フィルタ回路23を介して供給される温度補償電圧Vc1と周波数制御電圧Vc2を加算して電圧制御型発振回路21に出力する。
従って、電圧制御型発振回路21は、温度補償電圧Vc1により温度が変化しても出力信号Pの発振周波数が一定になるように制御されるとともに、周波数制御電圧Vc2により出力信号Pの発振周波数が設定すべき周波数になるように制御される。
【0029】
電源スイッチ回路26は、スタンバイ端子STBYに供給される制御信号φSTBYに基づいて電源端子VCCに供給される電力を電圧制御型発振回路21及び温度補償回路22に出力する回路であり、スタンバイ端子STBYに入力される制御信号φSTBYに応じてオンオフ制御されるスイッチSWとから構成される。
すなわち、この温度補償型発振器20は、スタンバイ端子STBYに制御信号φSTBYを入力することにより、外部の制御回路により発振の開始または中止制御できるようになっている。
なお、図2においてはプルアップ抵抗R2が設けられた構成を示しているが、本発明の必須構成要件ではなく、プルアップ抵抗R2がなくても構わない。
従って、従来の電源スイッチ回路とスタンバイ端子STBYを備えていない温度補償型発振器においては、電源端子VCCに供給する電力をオンオフ制御して発振開始等の制御を行う必要があったため、間欠発振の制御を行うためには電源端子VCCの外にスイッチ回路を設ける必要があったのに対し、この温度補償型発振器20は、内部にスイッチ回路26を設けているのでその必要がない。
これにより、この温度補償型発振器20は、外部の間欠発振用電源制御回路30からの制御信号φSTBYをスタンバイ端子STBYに入力するだけで、簡易に間欠的な発振制御を行うことができるようになっている。
【0030】
電圧保持回路27は、電源スイッチ回路26のスイッチSWがオフの場合にフィルタ回路23のコンデンサCの電圧を保持させる回路であり、一端が電源スイッチ回路26のスイッチSWに接続された電流制御用の抵抗R3と、コレクタがフィルタ回路23のコンデンサCに接続されたPNP型バイポーラトランジスタ(以下、「トランジスタ」という)Trとが直列接続されて構成される。
このため、電圧保持回路27は、電源スイッチ回路26のスイッチSWがオンになると、トランジスタTrのエミッタに電流が供給されてトランジスタTrのコレクタとベース間のインピーダンスが極めて小さくなり、コレクタに接続されたコンデンサCの電流経路を形成する。
これに対して、電圧保持回路27は、電源スイッチ回路26のスイッチSWがオフになると、トランジスタTrのコレクタから見て、ベースとの間のインピーダンスが高くなるため、コンデンサCの両端電位差が発生せず、コンデンサCに蓄積された電荷が抵抗R1から放電されるのを防止し、コンデンサCの電圧を保持させるようになっている。
【0031】
(1−2) 実施形態の動作
次に、図6に示すタイミングチャートを参照しながら、この温度補償型発振器20の間欠受信時の動作について説明する。図6においては、受信の動作時間(TCXO動作時間)及び非動作時間(TCXO停止時間)をそれぞれ40[ms]及び680[ms]に設定した場合を想定している。
まず、図6(A)に示すように、時刻T1において携帯電話装置の電源がONにされると、携帯電話装置のイニシャライズが開始されると共に、図6(B)に示すように、スタンバイ端子STBYに入力される制御信号φSTBYがHレベルに立ち上がる。
【0032】
従って、温度補償型発振器20においては、電源スイッチ回路26のスイッチSWがONになり、電源端子VCCからの電力が電圧制御型発振回路21及び温度補償回路22に供給される。
また、電源スイッチ回路26のスイッチSWがONになると、電圧保持回路27のトランジスタTrのエミッタに電源端子VCCからの電流が供給され、コレクタとベース間のインピーダンスが極めて小さくなると共に、図6(C)に示すように、フィルタ回路23のコンデンサCの電圧保持回路27側に電圧Vc3が生じる。
このため、温度補償回路22から温度補償電圧Vc1の出力が開始されると、温度補償電圧Vc1と電圧Vc3の電位差がコンデンサCに生じ、図6(D)に示すように、この電位差に応じた電流I(C)がコンデンサCに流れる。
そして、図6(E)に示すように、コンデンサCの両端電位差Vc1−Vc3がほぼ温度補償電圧Vc1になるまで充電されると(時刻T2)、温度補償電圧Vc1によるコンデンサCの充電が終了し、出力信号Pの周波数が目的の周波数に安定する。
【0033】
この場合、時刻T1から時刻T2までの期間は、温度補償電圧Vc1がコンデンサCの充電に使用されるため、電圧制御型発振回路21からは正確に温度補償された周波数の出力信号Pが出力されない。
しかし、時刻T1から時刻T3までの期間は、携帯電話装置のイニシャライズ等に費やされる期間であり、この期間に正確に温度補償された周波数の出力信号Pを出力しなくても実用上問題が生じない。
従って、温度補償型発振器20は、携帯電話装置のイニシャライズの間にフィルタ回路23のコンデンサCの充電を完了するようになっている。
【0034】
そして、図6(B)に示すように、時刻T3において携帯電話装置のイニシャライズが終了すると、間欠発振用制御回路30からの制御信号φSTBYがLレベルに立ち下がる。
従って、温度補償型発振器20においては、電源スイッチ回路26のスイッチSWがOFFになり、電圧制御型発振回路21及び温度補償回路22への電力の供給が停止され、出力信号Pの出力が停止される(図6(F))。
このとき、電源スイッチ回路26のスイッチSWがOFFになると、電圧保持回路27のトランジスタTrのエミッタへの電流の供給が停止され、トランジスタTrのコレクタとベース間のインピーダンスが高くなる。
この結果、フィルタ回路23のコンデンサCに蓄えられた電荷が保持され、コンデンサCの電圧がスイッチSWがOFFになった時点の電圧に保持される。
【0035】
従って、図6(B)に示すように、時刻T4において再び間欠発振用制御回路30からの制御信号φSTBYがHレベルに立ち上がった場合、コンデンサCは所定の電圧を保持しているため、温度補償電圧Vc1がフィルタ回路23で遅延することなく、すぐに電圧制御型発振回路21に出力されることになる。
これにより、電圧制御型発振回路21は、温度補償電圧Vc1により正確に温度補償された周波数の出力信号Pをすぐに出力できるようになっている(図6(F))。
なお、このような間欠発振の場合は、間欠期間に温度変化が生じると温度補償電圧Vc1が変化することとなるが、非動作時間に生じる温度変化は微少であるため、温度補償電圧Vc1の変化に対応するコンデンサCの充電時における出力信号Pの周波数偏差は極めて小さく実用上問題とならない。
【0036】
(1−3) 実施形態の効果
以上の構成によれば、本実施形態に係る温度補償型発振器20は、電圧保持回路27を電源スイッチ回路26とフィルタ回路23の間に設けて、非動作時間の間はフィルタ回路23のコンデンサCの電圧を保持させることにより、フィルタ回路23により出力信号Pの位相雑音を低減しても、短時間で目的の周波数の出力信号Pを出力することができる。
このとき、温度補償型発振器20は、動作時間に充電されたコンデンサCの電荷の放電を防止して電圧を保持させておくことにより、従来技術で述べたコンデンサCを急速充電する必要がなく、消費電力を低減することができる。
また、電圧保持回路27は、原理的にはトランジスタTrだけで構成することができるため、回路構成を簡易にすることができる。
【0037】
従って、この温度補償型発振器20を使用した携帯電話装置は、短時間で受信動作を開始することができるため、間欠受信時の非動作時間を長くしたり、動作時間を短くすることができ、携帯電話装置全体の消費電力を低減させることができる。
このため、従来は、実質的な受信を開始するまで数百[ms]かかっていたことから、その分動作時間を長くして非動作時間を短く設定する必要があったのに対し、この携帯電話装置は、非動作時間を1[s]以上にして消費電力を低減しても実質的な受信時間を従来と同程度に維持することができる。
また、この携帯電話装置は、非動作時間を10[s]以下に設定すれば、この携帯電話装置に電話をかけた者から最悪でも10[s]程度で呼び出し情報を受信できるので、この携帯電話装置の使い勝手を悪化させることなく、消費電力を大幅に低減することができる。
【0038】
(2) 変形例
(2−1) 第1変形例
また、上述の実施形態においては、電圧保持回路27に電源端子VCCからの電力を供給する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、電源端子VCCからの電力に代えて、スタンバイ端子STBYに供給される制御信号φSTBYを電圧保持回路27に供給し、制御信号φSTBYにより直接トランジスタTrを制御してもよい。
【0039】
(2−2) 第2変形例
上述の実施形態においては、電流制御用の抵抗R3とトランジスタTrにより電圧保持回路27を構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、要は電圧保持回路27はON抵抗が小さいスイッチであればよく、電界効果型トランジスタ等の様々なスイッチング素子を広く適用することができる。
【0040】
(2−3) 第3変形例
上述の実施形態においては、電源スイッチ回路26とスタンバイ端子STBYを備え、スタンバイ端子STBYに供給される外部機器(間欠発振用電源制御回路30)からの制御信号φSTBYに基づいて発振の開始及び停止制御を行うことができる温度補償型発振器に本発明を適用する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、電源スイッチ回路26とスタンバイ端子STBYを具備しない温度補償型発振器に本発明を適用してもよいのは言うまでもない。この場合、電源端子VCCとフィルタ回路23のコンデンサCとの間に電圧保持回路27を設ければよい。詳しくは、電源端子VCCからの電力により制御されるスイッチによりコンデンサCの電圧保持回路側の電圧Vc3とGND間のスイッチングを行えばよい。
【0041】
(2−4) 第4変形例
上述の実施形態においては、温度補償型発振器20を構成する構成部品の実装状態については言及していなかったが、温度補償型発振器20は、温度補償電圧Vc1等のノイズ電圧を除去することができるので、温度補償型発振器20を構成する素子等を集積化することができる。
【0042】
従って、例えば、温度補償型発振器の圧電振動子X及びフィルタ回路23の構成素子であるコンデンサCを除く構成部品(図2において破線で囲まれた部分)をワンチップICとして構成することができ、図7に示すようにリッドとの間に圧電振動子Xを介して封止したセラミックパッケージの温度補償型発振器を構成したり、図8に示すように、ワンチップIC、圧電振動子X及びフィルタ回路23のコンデンサCをモールド封止したプラスチックパッケージの温度補償型発振器を構成することができる。なお、図7及び図8においては、ワンチップICをワイヤーボンディングにより基板に接続しているが、フリップチップボンディング(FCB)等の手法が適用できるのは言うまでもない。
【0043】
また、フィルタ回路23の抵抗素子等の構成素子を図7及び図8のC部分に実装してよいことは言うまでもない。なお、コンデンサCは、図7及び図8のパッケージの外部に実装しても本発明の効果は変わらない。これにより、温度補償型発振器を小型化することができ、かつ、部品点数を削減して組立工数及び製造コストを削減することができる。
【0044】
(2−5) 第5変形例
上述の実施形態においては、温度補償電圧Vc1と周波数制御電圧Vc2とに基づいて所定の周波数の出力信号Pを出力する温度制御型発振回路20に本発明を適用する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、温度補償電圧Vc1のみに基づいて出力信号Pの周波数の温度補償のみを行う温度補償型発振器に本発明を適用してもよい。この場合、図1に示す温度補償型発振器より周波数制御電圧入力端子VC、電圧変換回路24及び加算器25を削除すればよい。
【0045】
(2−6) 第6変形例
上述の実施形態においては、この温度補償型発振器を携帯電話装置に使用する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、PHS(Personal handy phone)、携帯型情報端末装置等の他の通信装置や、GPS(Global Positioning System)受信機等の電子機器に使用される温度補償型発振器に広く適用することができる。
【0046】
【発明の効果】
上述したように本発明の温度補償型発振器は、簡易な構成で位相雑音が低く、低消費電力で目的の周波数の出力信号を短時間で出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る温度補償型発振器を周辺構成と共に示す機能ブロック図である。
【図2】 図1の詳細ブロック図である。
【図3】 前記温度補償型発振器の電圧制御型発振回路の一例の回路図である。
【図4】 前記温度補償型発振器の電圧制御型発振回路の一例の回路図である。
【図5】 前記温度補償型発振器の電圧変換回路の説明に供する特性曲線図である。
【図6】 前記温度補償型発振器の間欠受信時のタイミングチャートである。
【図7】 第4変形例に係る温度補償型発振器の斜視図である。
【図8】 第4変形例に係る温度補償型発振器の斜視図である。
【図9】 従来の温度補償型発振器の概略構成を示すブロック図である。
【図10】 従来のディジタル型の温度補償型発振器の概略構成を示すブロック図である。
【図11】 図11(A)は、携帯型無線通信装置のブロック図であり、図11(B)は、前記携帯型無線通信装置の間欠受信部に供給される電圧波形図である。
【図12】 前記温度補償型発振器の間欠受信時のタイミングチャートである。
【符号の説明】
1、10、20……温度補償型発振器、
2、23……フィルタ回路、
3、22……温度補償回路、
4、21……電圧制御型発振回路、
24……電圧変換回路、
25……加算器、
26……電源スイッチ回路、
27……電圧保持回路、
212……可変リアクタンス素子、
C……コンデンサ(容量素子)、
X……圧電振動子、
Tr……PNP型バイポーラトランジスタ、
Vc1……温度補償電圧、
Vc2……周波数制御電圧、
φSTBY……制御信号、
φVC……周波数制御信号。

Claims (10)

  1. 制御電圧信号に応じて出力信号の周波数が変化する電圧制御型発振回路と、
    温度に基づいて前記出力信号の周波数を一定にするための温度補償電圧信号を出力する温度補償回路と、
    容量素子を有し、前記温度補償電圧信号に含まれるノイズ電圧を除去して前記制御電圧信号として出力するフィルタ回路と、
    前記温度補償回路の動作が停止した場合に前記容量素子の電圧を保持させる電圧保持回路と、を備える
    ことを特徴とする温度補償型発振器。
  2. 制御電圧信号に応じて出力信号の周波数が変化する電圧制御型発振回路と、
    温度に基づいて前記出力信号の周波数を一定にするための温度補償電圧信号を出力する温度補償回路と、
    容量素子を有し、前記温度補償電圧信号に含まれるノイズ電圧を除去して前記制御電圧信号として出力するフィルタ回路と、
    外部から供給される制御信号に応じて外部から供給される電力を前記電圧制御型発振回路及び温度補償回路に供給する電源スイッチ回路と、
    前記温度補償回路への電力の供給が停止した場合に前記容量素子の電圧を保持させる電圧保持回路と、を備える
    ことを特徴とする温度補償型発振器。
  3. 請求項1または2に記載の温度補償型発振器において、
    外部から供給される周波数制御信号に基づいて前記出力信号の周波数を設定すべき周波数にするための周波数制御電圧信号を出力する電圧変換回路と、
    前記フィルタ回路より出力される前記温度補償電圧信号に前記周波数制御電圧信号を加算して前記制御電圧信号として出力する加算回路と、を有する
    ことを特徴とする温度補償型発振器。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の温度補償型発振器において、
    前記電圧制御型発振回路は、
    圧電振動子を発振させる発振回路と、
    前記制御電圧信号に応じて容量が変化する可変容量素子と、を有する
    ことを特徴とする温度補償型発振器。
  5. 温度補償型発振器を内蔵し、受信待受時は前記温度補償型発振器の間欠的な発振制御を行う通信装置であって、
    前記温度補償型発振器は、
    制御電圧信号に応じて出力信号の周波数が変化する電圧制御型発振回路と、
    温度に基づいて前記出力信号の周波数を一定にするための温度補償電圧信号を出力する温度補償回路と、
    容量素子を有し、前記温度補償電圧信号に含まれるノイズ電圧を除去して前記制御電圧信号として出力するフィルタ回路と、
    前記温度補償回路の動作が停止した場合に前記容量素子の電圧を保持させる電圧保持回路と、を備える
    ことを特徴とする通信装置。
  6. 電源と、温度補償型発振器と、この温度補償型発振器の発振を制御する制御回路とを有し、受信待受時は当該温度補償型発振器の間欠的な発振制御を行う通信装置であって、
    前記温度補償型発振器は、
    制御電圧信号に応じて出力信号の周波数が変化する電圧制御型発振回路と、
    温度に基づいて前記出力信号の周波数を一定にするための温度補償電圧信号を出力する温度補償回路と、
    容量素子を有し、前記温度補償電圧信号に含まれるノイズ電圧を除去して前記制御電圧信号として出力するフィルタ回路と、
    前記制御回路から供給される制御信号に応じて前記電源の電力を前記電圧制御型発振回路及び温度補償回路に供給する電源スイッチ回路と、
    前記温度補償回路への電力の供給が停止した場合に前記フィルタ回路に含まれる容量素子の電圧を保持させる電圧保持回路と、を備える
    ことを特徴とする通信装置。
  7. 請求項またはに記載の通信装置において、
    外部から供給される周波数制御信号に基づいて前記出力信号の周波数を設定すべき周波数にするための周波数制御電圧信号を出力する電圧変換回路と、
    前記フィルタ回路より出力される前記温度補償電圧信号に前記周波数制御電圧信号を加算して前記制御電圧信号として出力する加算回路と、を有する
    ことを特徴とする通信装置。
  8. 請求項乃至のいずれかに記載の通信装置において、
    前記通信装置は、前記発振制御の非動作時間を1秒から10秒以内にする
    ことを特徴とする通信装置。
  9. 温度補償型発振器を内蔵し、前記温度補償型発振器の間欠的な発振制御を行う電子機器であって、
    前記温度補償型発振器は、
    制御電圧信号に応じて出力信号の周波数が変化する電圧制御型発振回路と、
    温度に基づいて前記出力信号の周波数を一定にするための温度補償電圧信号を出力する温度補償回路と、
    容量素子を有し、前記温度補償電圧信号に含まれるノイズ電圧を除去して前記制御電圧信号として出力するフィルタ回路と、
    前記温度補償回路の動作が停止した場合に前記容量素子の電圧を保持させる電圧保持回路と、を備える
    ことを特徴とする電子機器。
  10. 電源と、温度補償型発振器と、この温度補償型発振器の発振を制御する制御回路とを有し、所定の場合は当該温度補償型発振器の間欠的な発振制御を行う電子機器であって、
    前記温度補償型発振器は、
    制御電圧信号に応じて出力信号の周波数が変化する電圧制御型発振回路と、
    温度に基づいて前記出力信号の周波数を一定にするための温度補償電圧信号を出力する温度補償回路と、
    容量素子を有し、前記温度補償電圧信号に含まれるノイズ電圧を除去して前記制御電圧信号として出力するフィルタ回路と、
    前記制御回路から供給される制御信号に応じて前記電源の電力を前記電圧制御型発振回路及び温度補償回路に供給する電源スイッチ回路と、
    前記温度補償回路への電力の供給が停止した場合に前記フィルタ回路に含まれる容量素子の電圧を保持させる電圧保持回路と、を備える
    ことを特徴とする電子機器。
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