JP3990004B2 - 光学用接着剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レンズ、プリズム、光導波路などの光学素子の接着に用いる光学用接着剤組成物に関わり、さらに詳しくは高い屈折率を有するとともに、硬化後の光学歪みも小さい高性能な光学用接着剤組成物に関わる。
【0002】
【従来の技術】
従来、カメラや顕微鏡などの光学機器の組立てにおいては、レンズやプリズムなどを接合するため、バルサムやエポキシ樹脂などの透明樹脂が接着剤として用いられていた。また近年、オプトエレクトロニクス産業の発展にともない、光ファイバーやマイクロレンズ等の高度な光学機能を持った光学素子類を接合する用途が増大しており、ビスフェノール−A−エポキシ(メタ)アクリレートやウレタン(メタ)アクリレート等のラジカル重合性モノマーを配合した接着剤も広く使用されるようになっている。
【0003】
特に、光変調器や光スイッチなどを光導波路素子とマイクロレンズや光ファイバなどを接合して光回路を作製する等の、高度な機能を有する光学装置を組み折率を有する接着剤が必要とされている。このような接着剤としては、例えば特開平3−157471には、N−ビニルカルバゾールを用いた接着剤が公知である。また例えば特開平2−113027には、4,4’−ジメルカプトジフェニルサルファイドジメタクリレートとポリチオールよりなる硬化性組成物が開示されており、接着剤として有用であるとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし前記の高屈折率接着剤の主成分である、N−ビニルカルバゾールや、4,4’−ジメルカプトジフェニルサルファイドジメタクリレートは、高い屈折率を有してはいるものの、常温で粉末状あるいはフレーク状の固体であるため、単独で接着剤として使用することができない。
【0005】
このためこれらの化合物は常温で液状の他の成分と混合して、はじめて接着剤として使用されるが、こうして得られた樹脂組成物は、温度が低下したり、振動などの機械的ショックを受けたり、あるいは長時間保存した場合等に結晶性の成分が組成物中に析出しやすく、屈折率が変動したり、塗布できなくなるといった欠点があった。
【0006】
また、4,4’−ジメルカプトジフェニルサルファイドジメタクリレートを用いて調整した接着剤は、硬化後の光学的な歪みが大きく、特に、光重合開始剤を添加して迅速に硬化するとその傾向が増大するという欠点も有していた。
【0007】
【問題を解決する技術的な手段】
本発明者等は、
1)下記構造式(1−1)又は(1−2)式で示される少なくとも1種の硫黄含有エポキシ(メタ)アクリレートとラジカル重合開始剤を成分として接着剤組成物を構成することにより、前記の問題を解決した。
【0008】
【化3】
【0009】
但し、Rは水素またはメチル基、Phはフェニル基を示す。
【0010】
すなわち、硬化後の屈折率が高く、液状の接着剤としての安定性に優れ、かつまた硬化後の光学歪みの小さい光学用接着剤を得た。
【0011】
また、
2)下記構造式(1−1)又は(1−2)式で示される少なくとも1種の硫黄含有エポキシ(メタ)アクリレートと下記A群から選ばれた少なくとも1種のフェニル基含有(メタ)アクリレートとラジカル重合開始剤を成分として接着剤組成物を構成することによっても、前記の問題を解決できることを見いだした。
【0012】
【化4】
【0013】
但し、Rは水素またはメチル基、Phはフェニル基を示す。
【0014】
A群 フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート
すなわち、硬化後の高屈折率が高く、液状の接着剤としての安定性に優れ、光学的な歪みが小さいとともに、屈折率や粘度などを目的に応じて微妙に調整することができる光学用接着剤組成物を得た。
【0015】
さらにまた、
3)ラジカル重合開始剤としてアシルフォスフィンオキシド、ジアシルフォスフィンオキシド、カンファーキノンから選ばれた少なくとも1種の光重合開始剤を使用して前記1)または2)の接着剤組成物を構成することにより、前記1)及び2)でそれぞれ達成される特長に加えて、優れた光硬化性を有するとともに、着色がなく耐光性にも優れる光硬化型の光学用接着剤が得られることを見いだした。
【0016】
本発明で用いる下記構造式(1−1)又は(1−2)で示される硫黄含有(メタ)アクリレートは、硬化後に1.63以上の高い屈折率を有する、常温で液状の化合物であり、硬化反応性に富み、また分子中にヒドロキシル基を有しているため、光学ガラスなどに対する良好な接着性を兼ね備えている。
【0017】
【化5】
【0018】
但し、Rは水素またはメチル基、Phはフェニル基を示す。
【0019】
このため、前記(1−1)又は(1−2)式の化合物にラジカル重合開始剤を添加することにより単独で接着剤として使用することができ、温度変化や機械的ショック等の各種の外的な変化に対しても常に安定な状態を維持し、したがって光学特性も安定している。
【0020】
また理由は不明であるが、前記(1−1)又は(1−2)式の化合物は硬化後の光学的な歪みが極めて小さいという特長があり、このため光重合開始剤などを用いて短時間で硬化する光硬化型接着剤とした使用した場合においても、光学歪みの問題のない優れた光学特性を発揮する。
【0021】
本発明の(1−1)又は(1−2)式で示される化合物の具体例としては、例えば
(1−2)式中のRがメチル基である、ビス(メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル−チオフェニル)スルフィド、
(1−1)式中のRがメチル基である、メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル−チオフェニル,4−チオフェニルスルフィド、
(1−2)式中のRが水素である、ビス(アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル−チオフェニル)スルフィド、
(1−1)式中のRが水素である、アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル−チオフェニル,4−チオフェニルスルフィドを挙げることができる。
【0022】
これら(1−1)又は(1−2)式の化合物は例えば、公知の有機硫黄化合物である4,4’−チオベンゼンチオール(住友精化(株)製 商品名MPS)とグリシジル(メタ)アクリレートを反応させることにより得られる。
【0023】
次に本発明で用いる下記A群の化合物であるが、
A群 フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート
これらはいずれも分子内にフェニル基を含有する低粘度の化合物であり、前記(1)式の化合物と任意の比率で混合でき、また硬化後の光学歪みが小さいという特長を有している。このためA群の化合物を(1)式の化合物に配合して使用することによって、高い屈折率領域で接着剤の屈折率を微調整したり、接着剤の粘度を広い範囲で調整することができ、本発明の接着剤の応用範囲をさらに拡大することができる。
【0024】
本発明においてA群のフェニル基含有(メタ)アクリレートは、好ましくは70重量%以下の範囲で用いる。なぜなら、A群の化合物が70重量%を超えると接着剤の屈折率が低下して、本発明の(1)式の化合物による卓越した高屈折率性が活かされにくくなるからである。
【0025】
しかし、本発明の(1)式の化合物の持つ良好な硬化反応性や、低光学歪みの特長を活用する場合には、必ずしもA群の化合物を70重量%以下にして使用する必要はない。
【0026】
またA群の化合物は溶解性に富むため、常温で結晶固体の重合開始剤を(1−1)又は(1−2)式の化合物に速やかに混合することができ、またヒドロキシメタクリレートやシランカップリング剤などの添加や、ウレタンアクリレートやエポキシアクリレートなどの公知の高粘度のオリゴマーなどを所望により容易に配合することができる等の利点も有している。
【0027】
本発明で用いるラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロパーオキシドなどの熱重合開始剤や1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル、クロロチオキサンソン、アントラキノン、アシルフォスフィンオキシド、ジアシルフォスフィンオキシド、カンファーキノン等の光重合開始剤を使用することができる。
【0028】
ラジカル重合開始剤として熱重合開始剤を用いた場合、接着剤は加熱硬化型となる。その使用方法としては、接着剤を塗布した光学部品を60℃から150℃の温度範囲で、30分から数時間程度加熱することにより接着硬化する。
【0029】
また光重合開始剤を添加した場合には、光硬化型の接着剤となる。その使用方法としては、接着剤を塗布した光学部品に紫外線や短波長の可視光を数秒から10数分間照射して接着硬化する。接着剤の硬化に使用できる光源としては、紫外線蛍光灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等の紫外線光源や、波長380nmから500nmの短波長の可視光領域に有効出力を有する可視光蛍光灯、照明用のメタルハライドランプ、ハロゲンランプ等の可視光光源が挙げられる。
【0030】
通常、接着剤を短時間で硬化させると、硬化した接着剤の光学歪みが増大する傾向があり、特に屈折率が高くなるとこの傾向が顕著に表れる。
【0031】
しかし本発明の接着剤は、高屈折率であるにも関わらず、光重合のように短時間で硬化しても光学歪みが極めて小さいという優れた特長を有している。
【0032】
本発明においてラジカル重合開始剤として光重合開始剤を使用し、光重合型接着剤として使用する場合には、アシルフォスフィンオキシド、ジアシルフォスフィンオキシド、カンファーキノンを用いることが好適である。これらの光重合開始剤を用いると優れた光硬化性が得られるとともに、硬化した接着剤に着色がなく、しかも耐光性に優れるという効果が得られる。
【0033】
これらの光重合開始剤は黄色に着色しているので、接着剤に配合した段階では、接着剤にも淡黄色ないし黄色の着色が生じる。通常こうした着色した光重合開始剤を用いると、接着剤の硬化後に褐色や暗赤色の着色が生じ、また硬化後の耐光性が低下して変色しやすくなるという傾向がある。
【0034】
しかし驚くべきことに、本発明の接着剤に本発明で特定した光重合開始剤を用いた場合は、光照射して硬化した接着剤は無色透明になり、さらに光硬化後に長時間にわたって強力な光を照射しても、変色や着色が殆ど生じないという極めて優れた性能を発揮する。また、これらの光重合開始剤を使用すると本発明の接着剤の接着特性も向上するという好結果が生じることも見い出された。
【0035】
本発明で用いるアシルフォスフィンオキシドとしては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、ベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイル メトキシ,フェニルフォスフィンオキシド等を挙げることができる。
【0036】
本発明で用いるジアシルフォスフィンオキシドとしては、下記構造式(2)で示されるビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4トリメチルペンチルフォスフィンオキシドを挙げることができる。
【0037】
【化6】
【0038】
さらに、本発明においては、本発明の特長を損なわない範囲において、任意成分を添加することができる。
【0039】
これらの任意成分としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸などの接着性モノマー、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸トリシクロ(5,2,1,02,6)デカン等のアルキル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールアルキレングリコール(メタ)アクリレート等の単官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0040】
また、任意成分としてエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートネオペンチルジ(メタ)や、脂肪族ウレタンアクリレート、脂肪族エポキシジ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート類を用いることもできる。
【0041】
これらの任意成分は屈折率は1.48〜1.55程度と低いため、接着剤の屈折率を低下させる短所はあるが、硬化後の光学歪みが小さいため、本発明の接着剤の接着性を改善したり、硬さを調整したり、対薬品性などの化学的性質を調整する場合に必要に応じて使用する。
【0042】
また本発明の(1−1)又は(1−2)式の化合物は常温で液状であり、各種の化合物との相容性に優れているので、光学歪みの許容範囲が広い比較的低精度な用途においては、30重量%以下の使用量の範囲でビスフェノール−A−エポキシジ(メタ)アクリレートや4,4’−ジメルカプトジフェニルサルファイドジ(メタ)アクリレート等の従来公知の化合物を併用することもできる。
【0043】
この場合においても、従来公知の化合物だけを使用した場合と比較して、接着剤の液状態の安定性を向上するとともに、屈折率を高めたり、硬化後の光学歪みを低減するなど、本発明の(1−1)又は(1−2)式の硫黄含有ジ(メタ)アクリレートによる効果が付与される。
【0044】
また本発明の接着剤には、接着強度を高めたり、接着耐久性を向上させるためにリメトキシビニルシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの公知のシランカップリング剤を添加することもできる。
【0045】
次に本発明を実施例を用いて更に詳細に説明する。
【0046】
実施例1
本発明の(1−1)又は(1−2)式で示される化合物として、Rがメチル基の硫黄含有モノメタクリレートであるメタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル−チオフェニル,4−チオフェニルスルフィド85重量部、Rがメチル基の硫黄含有ジメタクリレートであるビス(メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル−チオフェニル)スルフィド15重量部、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を混合して、常温で液状の接着剤組成物を調整した。
【0047】
この接着剤組成物をガラス容器に入れ、恒温槽を用いて60℃で5時間加温した後80℃で2時間加熱することにより硬化した。硬化物からダイアモンドカッターで幅5mm、厚み5mm、長さ10mmの直方体状の試験片を切り出し、直交する2面を研磨して屈折率測定用のテストピースとした。
【0048】
このテストピースの屈折率をアッベ屈折計を用いて測定したところ、1.63の高い屈折率を有していた。
【0049】
次に、両端を研磨した直径6mm高さ10mmと直径20mm高さ25mmの円柱状のパイレックスガラス製の試験片に、本実施例の接着剤を少量塗布し、続いて前述の屈折率測定用の試験片を作製する場合と同様の方法で加熱処理して、試験片を接着した。万能試験機を用いてこの接着試験片の接着試験を行ったところ、6.8Mpa(70Kgf/cm2)の圧縮剪断接着強度を有していた。
【0050】
次に、厚み1mmのスペーサーを介在させて50mm角の2枚の低アルカリガラスを対向させて、ガラスセルを構成した。
【0051】
このガラスセル内に本実施例の接着剤を注入し、引き続き前記の屈折率測定の場合と同様の加熱条件で加熱して接着剤を硬化した。
【0052】
こうして得られた試験片を互いに直行させた偏光板の間に配置し、一方の偏光板の裏から白色蛍光灯で照明して、試験片の光学歪みを観察した。
【0053】
本実施例の接着剤で作製した試験片は接着面全体が暗く観察され、光学的な歪みが極めて小さいことが確認された。
【0054】
また本実施例の接着剤を4℃の冷蔵庫に1ヶ月間保存したが、液の分離や結晶の析出などは発生せず、安定な液状態を維持していた。
【0055】
実施例2
本発明の(1−1)又は(1−2)式の化合物においてRがメチル基の硫黄含有メタクリレートであるメタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル−チオフェニル,4−チオフェニルスルフィド38重量部、Rがメチル基の硫黄含有ジメタクリレートであるビス(メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル−チオフェニル)スルフィド12重量部、フェニルメタクリレート50重量部、ラジカル重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトンを0.5重量部を混合して光重合型の本発明の接着剤を調製した。
【0056】
この接着剤を実施例1で用いたのと同一サイズのパイレックスガラスに塗布し、東芝ライテック(株)製の20Wの紫外線蛍光灯(商品名:ケミカルランプ)を用いて10分間の光照射を行って光硬化した。
【0057】
こうして得られた接着試験片の圧縮剪断接着強度を実施例1と同様に測定したところ5.7MPa(58Kgf/cm2)であった。
【0058】
本実施例の接着剤の硬化後の屈折率を求めるため、実施例1で用いた熱重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリルを0.1重量%添加して、実施例1と同様の方法で加熱重合して硬化し、屈折率測定用のテストピースを作製した。
【0059】
アッベ屈折計でこのテストピースの屈折率を測定したところ1.60であった。
【0060】
次にこの接着剤を実施例1と同様に1mmのスペーサーを介在した低アルカリガラス製のセルに注入し、20Wの紫外線蛍光灯により10分間の光照射を行って接着硬化した。
【0061】
この試験片を実施例1と同様に直交させた偏光板の間にセットし、白色蛍光灯で照明したところ、接着面全体は暗く、光学歪みが非常に小さいことが分かった。
【0062】
さらに、この試験片を、試料室を挟んで両側に偏光板を直交させて配置した、分光光度計内にセットし、波長550nmの光線透過率を測定したところ、0.02%の測定結果が得られた。
【0063】
次に試料をセットしない状態で同様に測定したところ、光線透過率は変わらず0.02%であった。
【0064】
光線透過率の測定結果から、本接着剤は光学歪み(複屈折)が極めて小さく、空の状態による測定と同様に、測定光の偏光軸をほとんど回転させないことが確認された。
【0065】
比較例1
実施例2において、本発明の(1−1)又は(1−2)式の硫黄含有(メタ)アクリレートの代わりに、従来の4,4’−ジメルカプトジフェニルサルファイドジメタクリレートを用いたものと、ビスフェノール−A−エポキシジメタクリレートを用いた2種類の接着剤組成物を調製した。
【0066】
この接着剤組成物を実施例2と同様の方法で光重合して、低アルカリガラス間に1mmの厚みに接着硬化した光学歪み測定用の試験片を作製した。
【0067】
この試験片を直交させた偏光板間に挟んで、偏光板の裏から白色蛍光灯で照明したところ、どちらの試験片にも多数の不規則な明暗の模様が観察され、明らかに光学歪みが発生していることが分かった。
【0068】
続いてこの試験片を、実施例2と同様に直交した偏光板を配置した分光光度計内にセットして波長550nmの光線透過率を測定した。
【0069】
4,4’−ビスメルカプトジフェニルサルファイドジメタクリレートを用いた接着剤組成物の光線透過率は0.76%であり、ビスフェノール−A−エポキシジメタクリレートを用いた接着剤では0.36%の光線透過率であった。
【0070】
この結果から比較例1の接着剤には、偏光軸を回転させる光学歪みが発生していることが定量的に示された。
【0071】
次に、比較例1で調製した接着剤組成物にアゾビスイソブチロニトリルを0.1重量%添加し、実施例1、2と同様の方法により加熱硬化して屈折率測定用のテストピースを作製した。
【0072】
このテストピースの屈折率を測定したところ、4,4’−ジメルカプトジフェニルサルファイドジメタクリレートを用いた接着剤では1.61、ビスフェノール−A−エポキシジメタクリレートを用いた接着剤では1.57の屈折率を示した。
【0073】
このことから比較例1の接着剤の屈折率は、本発明による実施例1または実施例2による接着剤と同程度か、低いにもかかわらず、光学歪みについては明らかに性能が劣ることが判明した。
【0074】
実施例3
本発明の実施例2において光重合開始剤として1−シクロヘキシル−フェニルケトンの代わりにトリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドを0.4重量部、カンファーキノンを0.05重量部添加して本発明の高屈折率接着剤を調製した。
【0075】
この接着剤を実施例2と同様にパイレックスガラス製の試験片に塗布して、20Wの紫外線蛍光灯により10分間の光照射を行った。
【0076】
この試験片の接着強度を測定したところ、7.7MPa(79Kgf/cm2)であり光重合開始剤を本発明で特定した種類に代えたことによって接着強度が有意に増大した。
【0077】
また実施例3で調製した接着剤をパイレックスガラスに塗布して、20Wの紫外線蛍光灯の代わりに、波長420nmにピーク出力を有する20Wの可視光蛍光灯で10分間光照射を行って接着試験片を作製した。
【0078】
この試験片の接着試験を実施したところ9.6MPa(98Kgf/cm2)の圧縮剪断接着強度が得られ、実施例2の結果の約2倍で、紫外線蛍光灯を用いて接着した場合と比較しても約25%大きな接着強度が得られた。
【0079】
このことから、本発明による接着剤を光重合型接着剤として使用する場合は、本発明で特定した光重合開始剤を使用することが有利であるとともに、光照射に用いる光源も短波長の可視光領域まで有効出力を有する長波長の光源を用いることにより更に良好な接着特性が得られることが確認された。
【0080】
次に、本実施例の接着剤を用いて実施例1,2の方法に準じて低アルカリガラス製のセルに注入し、前記の可視光蛍光灯で10分間の光照射を行い光学歪み測定用の試験片を作製した。
【0081】
直交する偏光板間に試験片をセットして、白色蛍光灯で照明したところ、接着面は暗く、10分間という短い時間で硬化させた場合においても、接着剤の光学歪みは実施例1や2と同様に非常に小さいことが確認された。
【0082】
さらに本接着剤を、厚み0.3mmのスペーサーを介して対向させた低アルカリガラス製のセルの間に注入し、20Wの可視光蛍光灯で10分間光照射して接着した。この試験片には無色透明であり、分光高度計により光線透過率を測定したところ、波長550nmにおいて91.4%であった。
【0083】
次にこの試料に50万ルックス以上の照度を有する照明用のメタルハライドランプで連続して光照射する耐光性テストを行った。500時間経過後の試料は無色透明性であり、550nmの光線透過率も90.7%を維持していた。
【0084】
この結果から本発明による接着剤が優れた耐光性を有していることが確認された。
【0085】
実施例4
本発明の(1−1)又は(1−2)式の化合物においてRがメチル基の硫黄含有モノメタクリレートであるメタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル−チォフェニル,4−チォフェニルスルフィド52重量部、Rがメチル基の硫黄含有ジメタクリレートであるビス(メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル−チォフェニル)スルフィド10重量部、本発明のA群化合物であるフェニルメタクリレート25重量部、本発明のラジカル重合開始剤としてトリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド0.5重量部に、任意成分としてグリシジルメタクリレート7重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート5重量部、トリエトキシビニルシラン1.5重量部を配合して接着剤を調製した。
【0086】
接着剤を用いて高圧水銀灯で10分の光照射によりパイレックスガラス同士を接着し、接着強度を測定したところ10.8MPa(110Kgf/cm2)の圧縮剪断強度が得られた。
【0087】
次に本接着剤を実施例1と同様に低アルカリガラス製のセルに注入して高圧水銀灯で10分間の光照射を行い、厚み1mmに硬化した光学歪み測定用の試験片を作製した。
【0088】
この試験片を直交した偏光板の間にセットして、白色蛍光灯で照明したところ、接着面には明暗の縞模様は見られず、光学歪みが非常に小さいことが確認された。
【0089】
またこの接着剤の屈折率を測定するため、前記組成にさらにアゾビスイソブチロニトリルを0.1重量部添加した後、加熱重合して屈折率測定用のテストピースを作製した。アッベ屈折計による屈折率の測定結果は1.60であり高い屈折率を有していた。
【0090】
実施例5
本発明の(1−1)又は(1−2)式の化合物においてRが水素の硫黄含有モノアクリレートであるアクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル−チォフェニル,4−チォフェニルスルフィド25重量部、Rが水素の硫黄含有ジアクリレートであるビス(アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル−チオフェニル)スルフィド5重量部、本発明のA群で示されるフェニル含有(メタ)アクリレートとして、フェニルメタクリレート50重量部、ベンジルアクリレート15重量部、本発明のラジカル重合開始剤として下記構造式(2)で示されるジアシルフォスフィンオキシドであるビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−ドリメチルペンチルフォスフィンオキシド0.25重量部、従来公知の光重合開始剤である2−ヒドロキシ−2メチル−1−フェニルプロパン−1−オン0.75重量部、任意成分としてヒドロキシメタクリレート5重量部、トリエトキシビニルシラン1.5重量部を混合して接着剤組成物を得た。
【0091】
【化7】
【0092】
この接着剤を用いて高圧水銀灯により10分間の光照射を行い、実施例2と同様にパイレックスガラスを接着し、接着強度を測定したところ6.2MPa(63Kg/cm2)の圧縮剪断接着強度が得られた。
【0093】
次に本実施例の接着剤を、実施例2と同様に厚み1mmのスペーサーを介した低アルカリガラス製のセルに注入し、高圧水銀灯で10分間光照射して接着硬化した試験片を作製した。得られた試験片は無色透明であった。
【0094】
この試験片を直交させた偏光板の間にセットしてて、白色蛍光灯で照明したところ他の実施例と同様に接着面は暗く、光学歪みが小さいことが確認された。
【0095】
さらにこの接着剤の屈折率を調べるため、接着剤にアゾビスイヒブチロニトリルを0.1重量部添加した組成物を調合して加熱重合し、機械加工を行ってテストピースを作製した。
【0096】
このテストピースの屈折率は1.58であり、高い屈折率を有していた。
【0097】
【発明の効果】
以上、述べたように本発明による接着剤は高い屈折率を有するとともに、透明性に優れ、短時間で硬化した場合においても光学歪みが極めて小さいという特長を有している。
【0098】
また、本発明の(1−1)又は(1−2)式の化合物は常温で液体であるため、温度の低下や機械的ショック等の外乱によって結晶化することもなく、光学的な品質が安定しているとともに、保存安定性や接着剤の塗布の作業性にも優れている。
【0099】
さらに本発明の接着剤はA群の化合物を適宜配合することにより、高い屈折率の範囲で屈折率を微妙に調整したり、粘度を変化することができる。
【0100】
さらに本発明の接着剤において、特定の光重合開始剤を使用すると、接着剤の光硬化特性が向上してより良好な接着強度が得られる。
【0101】
しかも380nm以上の長波長領域に光吸収を有する光重合開始剤開始剤を使用したにも関わらず、光硬化後の接着剤は無色透明であり、500時間の強力な光線に暴露しても着色や変色が殆ど生じないという優れた耐光性を兼備している。
【0102】
このような優れた性能は本発明で特定した(1−1)又は(1−2)式の化合物、A群の化合物、そして特定の光重合開始剤を適宜配合したことによって得られるものであり、本発明に特有の効果である。
Claims (4)
- ラジカル重合開始剤がアシルフォスフィンオキシド、ビスアシルフォスフィンオキシド、カンファーキノンから選ばれた少なくとも1種の光重合開始剤であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の光学用接着剤組成物。
- ラジカル重合開始剤がアシルフォスフィンオキシド、ビスアシルフォスフィンオキシド、カンファーキノンから選ばれた少なくとも1種の光重合開始剤であることを特徴とする特許請求の範囲第2項記載の光学用接着剤組成物。
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