JP3989978B2 - バリウムを含まず、良好なｘ線吸収を示す歯科用ガラス - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯科用ガラス、特にバリウムを含まず、良好なＸ線吸収を示す歯科用ガラスに関する。さらに、本発明は、かかるガラスの歯科用組成物を製造するためのガラス粉末およびフィラーとしての用途に関する。
【０００２】
歯科用組成物は、アマルガム製詰め物の副作用を妨げ、さらに美的外観をよくするために、歯の詰め物用にますます使用されている。歯科用組成物は、だいたい、無機物質と有機合成樹脂バインダーを含んでいる。無機含有物は、大部分がガラス粉末からなる。ガラス粉末は、良好な詰め物に必要とされる特性に加え、粉末として使用されるガラスの物理的および化学的な特性に関する要求を満たす必要がある。
【０００３】
ガラス粉末は、第１に高強度を有する必要がある。また、詰め物の屈折率は、歯の詰め物が美的要求を満たす、即ち歯のエナメル質とほとんど区別が付かなくなるように合成樹脂の屈折率と適合させるべきである。さらに、詰め物が使用される範囲、即ち３０℃〜７０℃の温度範囲におけるガラスの熱膨脹は、詰め物が温度変化に対して充分に耐性を有するように、歯の材料のそれと適合させることが重要である。冷たい食べ物と暖かい食べ物との繰り返しが完全な状態を破壊するという危険な状態は明らかである。最小の膨脹係数は、一般に、捜し出せる、というのは、合成樹脂バインダーの相対的に高い熱膨脹は補償できるからである。
【０００４】
さらに、歯の詰め物は、Ｘ線像において、歯の材料と明らかに識別されなけらばならない。これは、ガラスがＸ線不透明度に関してある種の最小値を持つ必要があることを示す。ＩＳＯ ４０４９：１９８８（Ｅ）によれば、厚さ２ｍｍの詰め物のＸ線不透明度は、同じ厚さのアルミニウム板よりも大きいことが必要である。詰め物のＸ線不透明度は、アルミニウム当量厚さ（Aluminiumgelichwertdicke）として表される。アルミニウム当量厚さは、充填材料の２ｍｍの厚みの板として同じＸ線吸収を示すアルミニウム板の厚さとして理解される。３のアルミニウム当量厚さは、２ｍｍの厚さの詰め物が３ｍｍのアルミニウム板と同じ吸収を起こすことを意味する。
【０００５】
また、水、酸類およびアルカリに対するガラス粉末の良好な化学的な安定性は、詰め物の長い寿命に寄与するに違いない。副作用のため、ガラス中のバリウム成分は良好なＸ線不透明度を起こさせるけれども、これらの使用は避けるべきである。鉛を含有する成分の使用は、毒性理由のため基本的に禁止される。
【０００６】
歯科医術用のフッ素アルミニウムシリケートガラス粉末は、米国特許４、７７５、５９２に記載されている。しかしながら、この粉末の基本ガラスは、その結晶安定性が乏しいので、その生産は極めて困難である。これらのガラスは約１０〜４０重量％の高い弗素を含有しており、充分な硬度と化学安定性を達成するために酸化アルミニウム（Ａｌ_２Ｏ_３）を４０重量％まで含む必要がある。それでも、ガラス粉末の加水分解安定性は満足できないものである。
【０００７】
さらに、高Ｘ線吸収を示し、バリウムを含まない歯科用ガラスは、旧ドイツ特許出願Ｐ４３ ２３ １４３．７に記載されており、次の組成（酸化物の重量％）を有する：ＳｉＯ_２ ４５〜６５％、 Ｂ_２Ｏ_３ ５〜２０％、Ａｌ_２Ｏ_３ ５〜２０％、ＣａＯ ０〜１０％、ＳｒＯ １５〜３５％およびＦ_２Ｏ ０〜２％。良好なＸ線不透明度は、相対的に高ＳｒＯ含量でもって達成される。
【０００８】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、良好なＸ線吸収を示し、バリウムと鉛とを含有せず、さらに良好な化学的、熱的に安定性を有する特別な歯科用ガラスを提供することにある。
【０００９】
さらに、本発明の目的は、かかるガラスの歯科用組成物を製造するためのガラス粉末およびフィラーとしての用途を提供することにある。
【００１０】
【課題を解決するための手段】
本発明は、次のように特定される。
【００１１】
［１］ 次の組成（酸化物の重量％）を特徴とするバリウムを含まず、良好なＸ線吸収を示す歯科用ガラス：ＳｉＯ _２ ５５〜７０ＺｒＯ _２ １０〜２５Ｌｉ _２ Ｏ ０〜 ５Ｎａ _２ Ｏ １０〜２５Ｋ _２ Ｏ ０〜２５アルカリ酸化物の合計 １５〜２５。
【００１３】
［２］ さらに次の成分（酸化物の重量％）を含有することを特徴とする前記１に記載の歯科用ガラス：ＣａＯ ０〜１０Ｆ_２ ０〜１０。
【００１４】
［３］ さらに次の成分（酸化物の重量％）を含有することを特徴とする前記１または２に記載の歯科用ガラス：ＳｒＯ ０〜１０ＭｇＯ ０〜 ５Ａｌ_２Ｏ_３ ０〜１０ＧｅＯ_２ ０〜１０Ｐ_２Ｏ_５ ０〜１０ＴｉＯ_２ ０〜 ５Ｌａ_２Ｏ_３ ０〜１０Ｙ_２Ｏ_３ ０〜１０Ｔａ_２Ｏ_３ ０〜１０Ｇｄ_２Ｏ_３ ０〜１０ＺｎＯ ０〜１０Ｂ_２Ｏ_３（ただし、１０は含まない。） ０〜１０Ｎｂ_２Ｏ_５ ０〜１０。
【００１５】
［４］ 屈折率ｎ_ｄが１．５〜１．６、アルミニウム当量厚さが≧２．５ｍｍであることを特徴とする前記１〜３のいずれか１項に記載の歯科用ガラス。
【００１６】
［５］ 前記１〜４のいずれか１項に記載の歯科用ガラスの、歯科詰め物用合成樹脂組
成物を製造するためのガラス粉末。
【００１７】
［６］ 平均粒子径が≦１０μｍである前記５に記載のガラス粉末の、歯科詰め物用の
合成樹脂ペースト（合成樹脂組成物）に使用されるフィラー材料。
【００１８】
【発明の実施の形態】
そのガラスは、ガラスの毒物学的判断（の可能な副作用）をかなり容易にする最小の成分から構成できる。
【００１９】
ＳｉＯ_２（５０〜７５重量％）とＺｒＯ_２（５〜３０重量％）とは、ガラス形成成分として使用される。ＺｒＯ_２含量が３０％を越えると、これらのガラスの溶融が極めて困難となって、ガラスの製造コストがたいへん高騰する。ＺｒＯ_２含量が１０〜２５重量％であることが好ましい。ジルコニウム含量により、物理的特性、特に引っ張り強さと圧縮強度、は明らかに改良され、ガラスの脆さが減少する。ＳｉＯ_２含量は５０〜７５重量％であるべきであり、５５〜７０重量％が好ましい。ＳｉＯ_２／ＺｒＯ_２ガラスの溶融を促進するため、アルカリ酸化物、例えばＮａ_２Ｏ（０〜２５重量％）、Ｋ_２Ｏ（０〜２５重量％）および／またはＬｉ_２Ｏ（０〜５重量％）を加えることができる。アルカリ酸化物の含量が２５重量％を越えると、ガラスの化学的および物理的な安定性が減少し、膨脹係数が明らかに増加する。Ｎａ_２Ｏ含量は１０〜２５重量％、Ｋ_２Ｏ含量は０〜１５重量％およびＬｉ_２Ｏ含量は０〜５重量％が好ましい、ただし、アルカリ酸化物の総量は１５〜２５重量％である。このアルカリが存在すると、ガラスは、容易に溶融し、良好な化学安定性を有する。
【００２０】
屈折率の修正のため、１０重量％まで、好ましくは０．０５〜３重量％、のフッ素の添加が好都合である。さらに、このガラスは１０重量％まで、好ましくは０．０５〜１０重量％、のＣａＯを含有できる。ＣａＯをガラスに添加してそのガラスの物理的特徴を変化させることができる。例えば、ＣａＯは、アルミニウム当量厚さの増加に寄与する。Ｓｉと比較すると、カルシウムは約３倍の質量減衰係数を有する。
【００２１】
ＣａＯの割合を越えると、ガラスのＸ線吸収を損なうと共に失透傾向の増加を伴うこととなる。
【００２２】
ガラスの特性を実質的に損なうことなく、ガラスは次の成分を含むことができる：ＳｒＯ １０重量％まで、ＭｇＯ ５重量％まで、Ａｌ_２Ｏ_３ １０重量％まで、ＧｅＯ_２ １０重量％まで、Ｐ_２Ｏ_５ １０重量％まで、ＴｉＯ_２ ５重量％まで、Ｌａ_２Ｏ_３、Ｙ_２Ｏ_３、Ｔａ_２Ｏ_３、Ｇｄ_２Ｏ_３、ＺｎＯ、Ｂ_２Ｏ_３およびＮｂ_２Ｏ_５ それぞれ１０重量％まで（ここで、それぞれの下限値は、好ましくは０．０５重量％である）。しかし、ガラスに存在するその他の酸化物の数は、ガラスの毒物学的判断を容易にする目的を見失うほど多くすべきではない。
【００２３】
できるだけ歯のエナメル質と詰め物との光学的特性を一致させるように、ガラスの屈折率を合成樹脂の屈折率と適合させる。使用する合成樹脂は、１．５〜１．６の屈折率を有する。本発明のガラスは、１．６に満たない屈折率を有するので、この要件を満たす。
【００２４】
実際の歯科医術において、詰め物がＸ線写真で容易に見えることは非常に重要である。本発明のガラスを用いる詰め物は、アルミニウム当量厚さ＞２．５ｍｍ、一般に＞３ｍｍを有するので、歯の回復の使用に要求される特性を有する。アルミニウム当量厚さは、厚さ２ｍｍの詰め物と同じＸ線を吸収するアルミニウム板の厚みと理解される。
【００２５】
製造後、ガラスはガラス粉末をつくる公知の方法、例えば粉砕、必要によりスクリーニングで処理される。スクリーニングすると、平均粒子径が＜１０μｍ、特に０．５〜５μｍのガラス粉末が得られる。ガラス粉末の粒子径は重要で、組成物の研磨に影響を与える可能性があり、そのうえ磨滅耐性と物理的な強度に影響を与える。良好な物理的な特性を得るために、通常、従来の粉砕および粗粒子を篩で除く方法で達成されるような、極めて狭い粒子分布とすることが好ましい。最大粒子径は４０μｍ、好ましくは２０μｍ、特に好ましくは１０μｍを越えるべきではない。この形態で、ガラス粉末は、歯科用詰め物として使用される歯科用組成物用のフィラーとして、特に、適している。
【００２６】
歯科用組成物用フィラーとして使用されるガラス粉末をシラン化処理（silanization) することは一般的であり、そのシラン化処理それ自体さらにその目的は公知である。シラン化処理は、組成物への高度充填を容易にし、その組成物の物理的特性に好ましい影響を与える。
【００２７】
歯科用詰め物として使用できる歯科用組成物を調製するために、ガラス粉末は、通常、歯科医術において使用される硬化用合成樹脂と混合する。アクリレート、メタクリレート、２，２−ビス−［４−（３−メタクリロキシ−２−ヒドロキシプロポキシ）−フェニル］−プロパン−（ビス−ＧＭＡ）、ウレタン−メタクリレート、アルカンジオールメタクリレートまたはシアノアクリレートなどが紫外線硬化樹脂として挙げられる。詰め物として使用されるガラス粉末は、最終合成樹脂ペーストに８０重量％まで含まれ、強度用にガラス粉末含量をできる限り高くする努力が成される。
【００２８】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明する。
【００２９】
実施例１〜６
一般的に入手できる、純粋な原料を溶融して６種類のガラスを製造した。得られたガラスは、表１に示される組成および特性を有する。屈折率は波長（ｎ_ｄ）５８７ｎｍで測定し、アルミニウム当量厚さ（ＡＧ）はＩＳＯ ４０４９によって測定した。
【００３０】
【表１】

Claims (6)

1. 次の組成（酸化物の重量％）を特徴とするバリウムを含まず、良好なＸ線吸収を示す歯科用ガラス：
   ＳｉＯ _２ ５５〜７０
   ＺｒＯ _２ １０〜２５
   Ｌｉ _２ Ｏ ０〜 ５
   Ｎａ _２ Ｏ １０〜２５
   Ｋ _２ Ｏ ０〜２５
   アルカリ酸化物の合計 １５〜２５。
2. さらに次の成分（酸化物の重量％）を含有することを特徴とする請求項１に記載の歯科用ガラス：
   ＣａＯ ０〜１０
   Ｆ_２ ０〜１０。
3. さらに次の成分（酸化物の重量％）を含有することを特徴とする請求項１または請求項２に記載の歯科用ガラス：
   ＳｒＯ ０〜１０
   ＭｇＯ ０〜 ５
   Ａｌ_２Ｏ_３ ０〜１０
   ＧｅＯ_２ ０〜１０
   Ｐ_２Ｏ_５ ０〜１０
   ＴｉＯ_２ ０〜 ５
   Ｌａ_２Ｏ_３ ０〜１０
   Ｙ_２Ｏ_３ ０〜１０
   Ｔａ_２Ｏ_３ ０〜１０
   Ｇｄ_２Ｏ_３ ０〜１０
   ＺｎＯ ０〜１０
   Ｂ_２Ｏ_３ ０〜１０（ただし、１０は含まない。）
   Ｎｂ_２Ｏ_５ ０〜１０。
4. 屈折率ｎ_ｄが１．５〜１．６、アルミニウム当量厚さが≧２．５ｍｍであることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載の歯科用ガラス。
5. 請求項１〜４のいずれか１項に記載の歯科用ガラスの、歯科詰め物用合成樹脂組成物を製造するためのガラス粉末。
6. 平均粒子径が≦１０μｍである請求項５に記載のガラス粉末の、歯科詰め物用の合成樹脂ペースト（合成樹脂組成物）に使用されるフィラー材料。