JP3989754B2 - 光磁気記録装置およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光磁気記録媒体に対して記録を行なう光磁気記録装置およびその製造方法に関するものであり、特に、光磁気記録装置に好適に用いられる摺動型の磁気ヘッドを有する光磁気記録装置およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録媒体(ディスク)の一種である光磁気ディスクは、大容量のデータを書き換えることができ、さらに、媒体交換可能であるという利点を有している。そして、この光磁気ディスクに情報を記録する磁気記録装置として、磁界変調方式を用いた光磁気記録装置が普及している。
【0003】
上記の磁界変調方式の光磁気記録装置の構成について、図11・図12参照して説明する。なお、図12は、図11のX−X’線矢視断面図である。
【0004】
光磁気記録装置は、磁気ヘッド105、光ピックアップ102、磁気ヘッドアーム107、およびサスペンション106を含む構成である。そして、光磁気記録装置には、光磁気ディスク101を収容した光磁気ディスクカートリッジ115が挿入されるようになっている。
【0005】
磁気ヘッド105は、図13・図14に示すように、磁気コイル111、磁気ヘッドコア110、摺動部109、および磁気ヘッド保持部108を備えている。
【0006】
磁気コイル111と磁気ヘッドコア110とは、両者で磁界を発生させるものである。なお、磁気ヘッドコア110は、大部分を構成する四方体部分と、その四方体の一平面(コア平坦部110a)から突起した部分(コア突起部110b)とから構成されている。また、上記四方体と結合していない側のコア突起部110bの端部の面をコア端面110cという。
【0007】
摺動部109は、磁気ヘッド保持部108から光磁気ディスク面側に突出して設けられていて、光磁気ディスク面と直接接触することにより、磁気ヘッドコア110と光磁気ディスク101との距離を一定に維持するものである。
【0008】
磁気ヘッド保持部108は、上記磁気コイル111および磁気ヘッドコア110を収容するものである。
【0009】
なお、磁気ヘッド105は、図12に示すように、サスペンション106および磁気ヘッドアーム107を介して光ピックアップ102に固定されている。したがって、光ピックアップ102と磁気ヘッド105とは、連動して動くようになっている。
【0010】
光ピックアップ102は、レーザー光を照射するものである。さらに、光ピックアップ102には、上記レーザー光を集光させる対物レンズ104と、その対物レンズを作動させる対物レンズアクチュエーター103とが備わっている。
【0011】
そして、上記の光磁気記録装置において、光磁気ディスク101にデータを記録するとき、光ピックアップ102からのレーザー光が、対物レンズアクチュエーター103に取り付けられている対物レンズ104を介して光磁気ディスク101に照射される。そして、磁気ヘッド105が、光磁気ディスク101の上記レーザー光が照射されている領域に、データ信号に応じて反転させる磁界を印加することによってデータを記録する。
【0012】
なお、上記磁気ヘッド105は、光ピックアップ102の対物レンズアクチュエーター103が動くことにより移動する光スポット(レーザー光が光磁気ディスク101に照射されている部分)の移動範囲内で、データを記録するために必要な磁界強度(例えば、11940A/m(150Oe)程度)を発生させる必要がある。
【0013】
ところで、近年では、光磁気ディスク等の高記録密度化を達成する研究が進められている。そのため、上記ディスクの高記録密度化を達成するためには、従来、データの記録に必要とされていた磁界強度よりも強い磁界強度(例えば、15920A/m(200Oe)以上の磁界強度)が必要とされている。
【0014】
また、光磁気ディスクの高記録密度化と合わせて、高速データ転送を達成するためには、磁界強度とともに記録周波数をあげる必要がある。したがって、記録周波数を上げるために、磁界を反転する時間を小さくする、すなわち磁気ヘッド105のインダクタンスを従来よりも小さくする(例えば、1μH以下)必要がある。
【0015】
しかし、磁界強度を強くするために磁気コイルの巻き数を増やすと、磁界強度は強くなるが、磁気ヘッドのインダクタンスを増加させることになってしまう。したがって、この方法では光磁気ディスクの高記録密度化、高速データ転送を達成するのは難しい。
【0016】
そこで、磁界強度を強くして、かつ磁気ヘッド105のインダクタンスを小さくするには、磁気ヘッドコア110の平板部110aから突出した部分(コア突起部110b)の一面(コア端面110c)の大きさを小さくすることが好ましい。
【0017】
または、光磁気ディスク面とコア端面110cとの距離を近づけることが好ましい。
【0018】
しかし、コア端面110cの大きさは、光磁気ディスク101を回転させるスピンドルモーター(不図示)の軸振れ等の機械精度、ターンテーブルと光磁気ディスク101とのチャッキング精度、および磁気ヘッド105の位置調整精度等によって決定されるため、コア端面110cの大きさを小さくするのには限界がある。
【0019】
そのため、光磁気ディスク101の高記録密度化を達成するためには、光磁気ディスク面とコア端面110cとの距離を近づける必要がある。
【0020】
上記の光磁気ディスク面とコア端面110cとの距離は、図15(図13のY−Y’線矢視断面図)に示すように、磁気ヘッド保持部108からの摺動部109の突出量(H)によって決定される。
【0021】
つまり、この突出量(H)の長さだけ、コア端面110cと光磁気ディスク面との間を、所定距離だけ遠ざけることになる。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の突出量(H)を小さく(短く)して、光磁気ディスク面とコア端面110cとの距離を近づけると、以下に示す種々の問題点が現れる。
【0023】
まず、磁気ヘッド105を光磁気ディスク面に近づけるには、磁気ヘッド105を厳密に設計基準高さに取り付ける必要がある。
【0024】
この該設計基準高さとは、光磁気記録装置を設計するとき、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク101)が磁気ヘッド105に押圧される力(押圧力)や、光磁気ディスク面が垂直方向にぶれたときの磁気ヘッド105の範囲(可動範囲)を考慮して決定される、光磁気ディスク面と磁気ヘッド105との距離のことである。なお、可動範囲とは、磁気ヘッド105が情報(データ)を光磁気ディスク101に安定して書き込むために垂直方向に動くことのできる範囲のことである。
【0025】
例えば、磁気ヘッド105が設計基準高さに取り付けられている場合、図16に示すように、磁気ヘッド保持部108の下面(磁気ヘッド保持部下面108a)と光磁気ディスク面とは平行になっている。
【0026】
しかしながら、例えば、磁気ヘッド105を支持するサスペンション106と磁気ヘッドアーム107との取り付け、または光ピックアップ102と磁気ヘッドアーム107との取り付けにおいて垂直方向(高さ)に変動が生じた場合、すなわち、磁気ヘッド105が設計基準高さからずれて取り付けられている場合、光磁気ディスク面に対する磁気ヘッド105の押圧力が変化してしまう。これにより、磁気ヘッド105(磁気ヘッド保持部108)がラジアル方向に傾く。
【0027】
具体的には、磁気ヘッド105を固定しているサスペンション106の左右の形状が異なっていたり、後述するオーバーコート材の盛り上がり部分を避けるために摺動部109が磁気ヘッド保持部8の中心からずらされて配置したりしているため、磁気ヘッド105が設計基準高さから所定以上ずれた場合に、サスペンション106は左右の力が均等になるように(左右のバネの変形量が同一になるように)磁気ヘッド105を支持することができなくなる。そのため、光磁気ディスク面に対する押圧力が変化してしまう。したがって、磁気ヘッド105を光磁気ディスク面に対して平行に支持することができない。
【0028】
例えば、磁気ヘッド105が上方向にずれている場合、光磁気ディスク面に対する押圧力が、設計基準高さに配置したときに比べて弱くなり、磁気ヘッド105、すなわち磁気ヘッド保持部108がラジアル方向に傾いてしまう。その結果、磁気ヘッド保持部下面108a(磁気ヘッド105)と光磁気ディスク101の面との間隔が大きくなってしまう(コア端面110cと光磁気ディスク101との間隔が大きくなってしまう)。したがって、光磁気ディスク面とコア端面110cとの距離を近づけることができない。なお、ラジアル方向とは、ディスク(光磁気記録媒体)面内におけるデータトラックに対して直交する方向である。
【0029】
その上、この傾き、すなわち磁気ヘッド保持部108の傾く角度は、設計基準高さからの磁気ヘッド105がずれが大きくなるのに応じて大きくなる。そのため、磁気ヘッド105の位置が設計基準高さからずれるのに伴って磁気ヘッド保持部108の傾く角度が大きくなってしまう。
【0030】
このため、磁気ヘッド105が光磁気ディスク表面の垂直方向かつ上方向に移動すると(ずれると)、図17に示すように、磁気ヘッド保持部108は、光磁気ディスク101の面に対して、例えば、+a°の範囲内で傾くことになる。また、磁気ヘッド105が垂直方向かつ下方向に移動すると、図18に示すように、磁気ヘッド保持部108は、光磁気ディスク101の面に対して、例えば、−a°の範囲内で傾くことになる。
【0031】
つまり、図17・図18に示すように、磁気ヘッド105が設計基準高さに対して垂直方向に移動すると、磁気ヘッド保持部108は、光磁気ディスク面に対して+a°〜-a°の範囲内で傾くことになり、光磁気ディスク面とコア端面110cとの距離を近づけることができない。
【0032】
また、磁気ヘッド105は後述するズレ量の影響のため、正確な設計基準高さに取り付けたとしても、磁気ヘッド保持部下面108aと光磁気ディスク101との間の間隔が変動することもある(コア端面110cと光磁気ディスク101との間隔が変動することもある)。
【0033】
上記のズレ量には、光磁気ディスク101の回転に無関係なズレ量とディスクの回転に応じて変化するズレ量とに大別される。
【0034】
上記光磁気ディスク101の回転に無関係なズレ量としては、(1)部品の寸法誤差によるズレ量と、(2)磁気記録装置を組み立てるときに生じる組立調整誤差によるズレ量とがある。
【0035】
また、光磁気ディスク101の回転に応じて変化するズレ量としては、(3)ディスクの面振れによるズレ量と、(4)光磁気ディスク101が載置されているターンテーブルが垂直方向にぶれることによるズレ量とがある。
【0036】
また、上記4つのズレ量を考慮して、磁気ヘッド105の上記可動範囲が決定される。なお、上記ズレ量が小さいほど、上記可動範囲を小さくすることができる一方、上記ズレ量が大きいほど上記可動範囲を大きくとらなければならない。
【0037】
例えば、磁気ヘッドアーム107の部品寸法誤差・取り付け誤差等により、磁気ヘッド105の位置が、サスペンション106に対して±0.3mmずれた位置に取り付けられたとき、磁気ヘッド105はラジアル方向に+0.25°〜−0.25°程度傾いてしまう。そして、この傾きの影響により、磁気ヘッド保持部下面8aと光磁気ディスク101との間の間隔が+20μm〜−20μm程度変動する。
【0038】
また、磁気ヘッド105を設計基準高さに取り付けた場合でも、光磁気ディスク101の面振れなどにより、その光磁気ディスク101が垂直方向に上下動するので磁気ヘッド保持部108がラジアル方向に傾いてしまう。
【0039】
そのため、例えば、磁気ヘッド105が設計基準高さから光磁気ディスク101の面振れなどにより±0.12mm上下動した場合、従来の磁気ヘッド105の傾き角度は、+0.1°〜−0.1°程度傾く。そして、この傾きの影響により、磁気ヘッド保持部下面108aと光磁気ディスク101との間の間隔が+8μm〜−8μm程度変動する。
【0040】
また、図19〜図21に示すように、一般に光磁気ディスク101の表面には、磁気ヘッドの摺動性の向上や光磁気ディスク101の保護のために、オーバーコート材113が塗布されている。
【0041】
しかし、オーバーコート材113をスピンコート法などで形成するために、光磁気ディスク101の外周部には、図21に示すように、上記オーバーコート材113の盛り上がり部分113aが十数μm程度になってしまうことがある。
【0042】
そのため、摺動部109の段差(突出量(H))を小さくして、コア端面110cと光磁気ディスク面との距離を近づけていったときに、光磁気ディスク面に対する磁気ヘッド105のラジアル方向の傾きが一定以上になってしまうと、図22に示すように、磁気ヘッド105が光磁気ディスク101の外周部を摺動するとき、摺動部以外の磁気ヘッド保持部とオーバーコート材113の盛り上がり部分113aとが接触する場合がある(ディスク叩きを起こす場合がある)。そのため、光磁気ディスク101に正常なデータ記録ができないおそれが生じる。
【0043】
以上のように、上記の例では、磁気ヘッド保持部下面8aと光磁気ディスク面との間隔が±20μmで変動する上、光磁気ディスクの面振れによる増分±8μmも加わって、計±28μm間隔が変動することになる。そのため、例えば、上記の磁気ヘッド保持部下面108aと光磁気ディスク面との間隔変動の+28μm〜−28μmと、オーバーコート材113の盛り上がり分113aの十数μmとを考慮して、コア端面110cと光磁気ディスク面との距離(摺動部の突出量(H))は、従来50μm程度に設定されていた。
【0044】
また、磁気ヘッド105の取り付け位置が設計基準高さからずれると、磁気ヘッド105の光磁気ディスクに対する押圧力が設計基準高さの時の押圧力に対して変化し、光磁気ディスク101を回転させるスピンドルモーターの負荷が変動して、その光磁気ディスク101を安定して回転させることができないという問題点も懸念される。
【0045】
また、磁気ヘッド105が光磁気ディスク101のデータトラックの方向(タンジェンシャル方向)に傾いた場合、摺動部109の前後の荷重バランスが変化してしまい、最悪の場合には磁気ヘッド105(磁気ヘッド保持部108)が、光磁気ディスク101に追従できなくなる。その結果、磁気ヘッド保持部108が光磁気ディスク面を叩く場合がある(ディスク叩きが発生する場合がある)。
【0046】
このディスク叩きが発生すると、摺動音が大きくなるだけでなく、光磁気ディスク101および磁気ヘッド保持部108の両方が振動するために、レーザー光の焦点位置の調整(フォーカスサーボ)に悪影響を与えるという問題点も懸念される。なお、タンジェンシャル方向とは、データトラックの方向、すなわちラジアル方向と直交する方向である。
【0047】
本発明は、上記のような従来の問題を解決するためになされたものである。そして、その目的は、光磁気ディスクの高記録密度化を達成するために磁気ヘッドを設計基準高さに精度よく取り付けることができる光磁気記録装置およびその製造方法を提供することにある。
【0048】
【課題を解決するための手段】
本発明の光磁気記録装置は、上記の課題を解決するために、凸形状の摺動部を備え、この摺動部が記録媒体の表面に接触することで、記録媒体に対し一定間隔を保つ磁気ヘッドと、この磁気ヘッドを支持するサスペンションと、記録媒体に光照射する光ピックアップとを備え、上記サスペンションと光ピックアップとが中間部材を介して接続されることにより、上記の磁気ヘッドと光ピックアップとが同期移動する光磁気記録装置において、上記光ピックアップと上記中間部材とは、上記磁気ヘッドの高さを調整することによって生じる隙間の間隔を保持するように、UV硬化型樹脂からなる樹脂層を介して接合されていることを特徴としている。
【0049】
また、本発明の光磁気記録装置の製造方法は、上記の課題を解決するために、凸形状の摺動部を備え、この摺動部が記録媒体の表面に接触することで、記録媒体に対し一定間隔を保つ磁気ヘッドと、この磁気ヘッドを支持するサスペンションと、記録媒体に光照射する光ピックアップとを備え、上記サスペンションと光ピックアップとが中間部材を介して接続されることにより、上記の磁気ヘッドと光ピックアップとが同期移動する光磁気記録装置の製造方法において、上記磁気ヘッドの位置調整後に、上記光ピックアップと上記中間部材とは、上記磁気ヘッドの高さを調整することによって生じる隙間の間隔を保持するように、UV硬化型樹脂からなる樹脂層を介して接合することを特徴としている。
【0050】
上記の構成によれば、充填された樹脂層によって、中間部材と光ピックアップとが接合されているので、中間部材と光ピックアップとの間には、厚みを持つ樹脂層が介在することになる。
【0051】
したがって、中間部材に光ピックアップを固定する場合に、磁気ヘッドの位置調整、例えば角度調整および高さ位置調整が完了した状態において、中間部材と光ピックアップとの間に樹脂層となる樹脂を充填することにより、上記の位置調整が完了したそのままの状態を維持しながら、上記両者を固定することができる。
【0052】
このように、中間部材と光ピックアップとを樹脂層を介して接合した場合には、樹脂層が接着層として機能するとともに、任意の高さに設定可能なスペーサーとしても機能するので、上記位置調整後、例えば上記両者(中間部材および光ピックアップ)をねじにより締結して固定した場合と比較して、上記両者を精度よく固定することができる。
【0053】
したがって、サスペンションに支持された磁気ヘッドを、精度よく設計基準高さに保つことができるとともに、光磁気記録装置は、磁気ヘッドが精度よく設計基準高さに取り付けられたものとなる。
【0054】
その結果、磁気ヘッドがサスペンションにより支持されている場合において、磁気ヘッドが設計基準高さに調整されていない場合に大きくなる該磁気ヘッドの傾きを抑制でき、従来よりも磁気ヘッドを記録面に近づけることができる。そのため、磁界発生効率を向上させることができ、記録媒体の高記録密度化を実現することができる。
【0055】
また、中間部材と光ピックアップとを樹脂層で固定する場合には、中間部材とサスペンションとを一体に形成することもできるので、例えば、ネジを設けることがなくなり部品点数の削減が可能である。また、樹脂層を設けないため中間部材のサスペンションを取り付ける部分の薄型化を図ることもできる。また、上記の一体形成により、磁気ヘッドの位置調整も簡単に行なうこともできる。
【0056】
また、本発明の光磁気記録装置では、上記の構成に加えて、上記樹脂層が、振動減衰機能を有していることを特徴としている。
【0057】
また、本発明の光磁気記録装置の製造方法では、上記の構成に加えて、上記樹脂層が、振動減衰機能を有していることを特徴としている。
【0058】
上記の構成によれば、樹脂層が振動の振幅を減衰させることにより、光ピックアップから発生する振動、または磁気ヘッドから発生する振動に起因する磁気ヘッドアームの共振(振動)の伝播を防止できる。
【0059】
そのため、磁気ヘッドアームの振動による記録媒体の振動(記録面の面振れ)や光ピックアップの振動を防ぐことができ、より安定してデータを記録することができる。
【0062】
また、本発明の光磁気記録装置の製造方法では、上記光ピックアップと上記中間部材との樹脂層を介しての接合が、UV硬化型樹脂で仮止めした後、上記仮止めした部分に振動減衰機能を有するUV硬化型樹脂を充填することにより行われることが好ましい。
【0063】
また、本発明の光磁気記録装置の製造方法では、上記の構成に加えて、磁気ヘッド位置の調整用の基準用ディスクに対して、上記サスペンションの取り付けられる中間部材の一面の角度を調整することにより、上記記録媒体の表面に対する上記磁気ヘッドの角度を適正にするための角度調整を行ない、さらに、上記基準用ディスクに対する上記中間部材の一面の垂直方向位置を調整することにより、上記記録媒体の表面に対する上記磁気ヘッドの垂直方向の位置を適正にするための垂直位置調整を行なった後、上記基準用ディスクに対する上記中間部材の一面の平行方向位置を調整することにより、上記記録媒体の表面に平行な方向に対して、上記磁気ヘッドの位置を適正にするための平面位置調整を行ない、その後、上記の樹脂層を介した接合を行なうことが好ましい。
【0064】
上記構成における角度の調整(角度調整工程)とは、光磁気ディスクの表面に対して磁気ヘッドの角度を適正にする調整であり、垂直方向の位置調整(垂直位置調整工程)とは、光磁気ディスク面に対する磁気ヘッドの高さを適正にすることであり、平行方向の位置調整(平面位置調整工程)とは、光磁気ディスク面と平行方向(光磁気ディスク面方向)の位置を適正にすることである。
【0065】
上記の構成によれば、樹脂層によって、光ピックアップと中間部材とを接合する前に(樹脂充填工程の前に)、磁気ヘッドの各種調整を行う、すなわち、磁気ヘッドの角度を調整した後、該磁気ヘッドの高さ(垂直方向の位置)を調整し、さらに、該磁気ヘッドの平行方向の位置を調整しているので、例えば、最初に垂直方向の位置の調整を行なった後、角度の調整を行なった場合に生じる垂直方向の位置ずれ(高さのずれ)を解消することになる。そのため、磁気ヘッドを光磁気ディスク面に対する設計基準高さに適切に調整できる。
【0066】
その上、例えば、部品寸法の誤差(部品のばらつき)、および光磁気記録装置を組み立てる際の組立誤差によるズレ量の影響を受けることなく、垂直方向の位置調整を行なうことになるので、上記ズレ量を抑制することができる(従来よりもズレ量を小さくできる)。そのため、磁気ヘッドを正確な設計基準高さに取り付けることができる。
【0067】
また、上記ズレ量を抑制できるので、そのズレ量に起因する光磁気ディスク面に対する磁気ヘッドの垂直方向の間隔変動をより小さく抑えることもできる(低減できる)。
【0068】
また、本発明の光磁気記録装置の製造方法では、上記の構成に加えて、上記基準用ディスクの主たる材質がガラスであることが好ましい。
【0069】
上記の構成によれば、上記磁気記録媒体の記録面の平面度が高くなるため、磁気ヘッドの、例えば、角度調整が精度よく行なえる。そのため、高い精度で磁気ヘッドを設計基準高さに合わせた光磁気記録装置を製造することができる。
【0070】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について図1〜図10、および図23・図24に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0071】
なお、以下の説明において、ラジアル方向とは、光磁気記録媒体(光磁気ディスク)面内における、データトラックに対して、直交する方向である。
【0072】
また、タンジェンシャル方向とは、上記データトラックの方向、すなわちラジアル方向と直交する方向である。なお、上記のラジアル方向・タンジェンシャル方向を、光磁気ディスク面方向(光磁気ディスク面内2方向)という。
【0073】
また、垂直方向とは光磁気ディスク面に対する法線方向を示している。
【0074】
また、ラジアル角度(ラジアルスキュー)とは、サスペンション取り付け面と光磁気ディスク面とのラジアル方向に対する傾きである。
【0075】
また、タンジェンシャル角度(タンジェンシャルスキュー)とは、同様にサスペンション取り付け面と光磁気ディスク面とのタンジェンシャル方向に対する傾きである。
【0076】
また、該設計基準高さとは、磁気ヘッドが光磁気ディスクを押し付ける力(押圧力)や、光磁気ディスク面が垂直方向にぶれたときの磁気ヘッドの可動範囲を考慮して、光磁気記録装置を設計する段階、つまり、設計図面上で決定される磁気ヘッドと光磁気ディスク面との距離(磁気ヘッドを支持するサスペンション取り付け位置と光磁気ディスク面との距離)のことである。
【0077】
なお、可動範囲とは、磁気ヘッドが情報(データ)を光磁気ディスクに安定して書き込むために垂直方向に動くことのできる範囲のことである。
【0078】
以下に、本実施の形態における光磁気記録装置の構成について説明する。
【0079】
図1・図2に示すように、光磁気記録装置は、光ピックアップ2、サスペンション6、磁気ヘッドアーム(中間部材)7、および磁気ヘッド5等を備えている。
【0080】
光ピックアップ2は、光磁気ディスク(記録媒体)1にレーザー光を照射するものであり、対物レンズアクチュエーター(アクチュエーター)3および対物レンズ4を備えている。そして、光ピックアップ2から照射されたレーザー光は、対物レンズ4を介して光磁気ディスク1に照射されるようになっている。
【0081】
アクチュエーター3は、対物レンズ4を介して光磁気ディスク1に照射されたレーザー光を、光磁気ディスク面の垂直方向やラジアル方向の、より小さな変位に対応して追従させることができる。
【0082】
つまり、アクチュエーター3の動作により、対物レンズ4を介して、光磁気ディスク1に照射されたレーザー光は、光磁気ディスク面に形成される光スポットの大きさを常に一定となるように調整されている。そして、光ピックアップ2とアクチュエーター3とが動くとともに、光磁気ディスク1を回転させることにより、光磁気ディスク1の全領域にレーザー光を照射できるようになっている。
【0083】
上記の光ピックアップ2と磁気ヘッド5とは、光磁気ディスク1を挟んで互いに対向する位置に配置されており、磁気ヘッド5はサスペンション6を介して磁気ヘッドアーム7に固定されている。
【0084】
また、磁気ヘッドアーム7は、後述する樹脂12を介して光ピックアップ2の固定部2aに固定されている。従って、磁気ヘッド5と光ピックアップ2とは、一体的に光磁気ディスク半径方向(ラジアル方向)に移動することができる。なお、磁気ヘッド5の構成については後述する。
【0085】
上記のサスペンション6は、通常、厚さが約30〜100μmの薄い金属等で形成されている。そして、サスペンション6は、磁気ヘッド5の質量や、想定される振動等を考慮して、3〜10mN程度の圧力をかけるように磁気ヘッド5を光磁気ディスク1に押圧している。
【0086】
これにより、光磁気ディスク1の光磁気ディスク面が垂直方向にぶれた場合であっても、磁気ヘッド5はその光磁気ディスク面に追従して摺動することができる。つまり、サスペンション6は、光磁気ディスク面が垂直方向にぶれた場合であっても、磁気ヘッド5を安定して摺動させることができるように、垂直方向に弾性変形するようになっている。なお、サスペンション6には、取り付け面6aが設けられている。
【0087】
また、上記サスペンション6には、図3(図2のA−A’線矢視断面図)に示すように、磁気ヘッド5のコア端面(後述する磁気ヘッドコアの突起部に形成されている面)が光磁気ディスク面に対して水平(平行)になるように取り付けられている。いいかえると、サスペンション6には、磁界の発生する方向が光磁気ディスク面に対して垂直になるように、磁気ヘッド5が取り付けられている。そして、サスペンション6における磁気ヘッド5が取り付けられていない側は、磁気ヘッドアーム7に固定されている。
【0088】
磁気ヘッドアーム7は、サスペンション6を介して磁気ヘッド5を支えるとともに、光ピックアップ2とサスペンション6との間を結合することによって、磁気ヘッド5と光ピックアップ2とを同期移動させるものである。
【0089】
ここで、磁気ヘッド5について詳細に説明する。
【0090】
磁気ヘッド5は、図4に示すように、磁気ヘッド保持部8、摺動部9、磁気ヘッドコア10、および磁気コイル11から構成されている。
【0091】
磁気ヘッド保持部8は、上記磁気コイル11および磁気ヘッドコア10を収容するものである。つまり、上記磁気コイル11および磁気ヘッドコア10が磁気ヘッド保持部8に取り付けられている。
【0092】
摺動部9は、磁気ヘッド保持部8から光磁気ディスク面側に突出して設けられていて、光磁気ディスク面と直接接触することにより上記磁気ヘッドコア10と光磁気ディスク1との距離を一定に維持するものである。なお、光磁気ディスク1を摺動する摺動部9の面は、凸形状、例えば、球面形状または曲面形状などの凸曲面形状に形成されている。
【0093】
磁気ヘッドコア10と磁気コイル11とは、両者で磁界を発生させるものである。なお、磁気ヘッドコア10は、フェライト合金等の磁気材料から形成されており、その構造としては、大部分を構成する四方体、その四方体部分の一平面のコア平板部10a、該コア平板部10aの略中央部から突起したコア突起部10bから構成されている。また、四方体と結合していないコア突起部10bの端部の面をコア端面10cとする。
【0094】
また、磁気コイル11は、磁気ヘッドコア10のコア突起部10bの周囲を取り囲むように設けられている。
【0095】
そして、磁気ヘッド5は、コア端面10cから主に磁界を発生するようになっており、データ信号にあわせて磁界の向きを反転させて、磁界を光磁気ディスク1に印加することにより、データを記録するようになっている。
【0096】
なお、光磁気ディスク1は、ディスクカートリッジ15に収容されている。そして、光磁気ディスク1は、スピンドルモーター(不図示)によって回転させることができる。また、磁気ヘッド5・光ピックアップ2は、光磁気ディスク1のラジアル方向に一体化して移動可能になっているので、光磁気ディスク1の全領域に対してデータの記録・再生・消去を行なうことができる。
【0097】
また、磁気ヘッドアーム7と光ピックアップ2とは、樹脂層12によって接合されている。この樹脂層12についての詳細は後述するものとする。
【0098】
ここで、本実施の形態にかかる光磁気記録装置の製造方法について、図1〜図4を用いて説明する。
【0099】
なお、以下の説明では、磁気ヘッド5とサスペンション6と磁気ヘッドアーム7とが一体になっている構成について説明するが、特に限定されるものではない。
【0100】
まず、図示しない5つの方向に移動可能な(5軸の自由度を有する)ステージに取り付けられている爪機構(磁気ヘッド調整機構)で、磁気ヘッドアーム7を把持する〔ヘッドアーム把持工程〕。
【0101】
上記の5つの方向とは、光磁気ディスク面に平行な2方向(ラジアル方向、タンジェンシャル方向;光磁気ディスク面内2方向)と、垂直方向と、光磁気ディスク面に対する2方向の角度(ラジアル角度、タンジェンシャル角度)とを調整する回転方向である。そして、上記ステージは、上記の5つの方向に移動または回動が可能になっている。
【0102】
次に、光磁気ディスク1に対して磁気ヘッド5を設計基準高さに設定するために使用する図示しない基準用ディスク(例えば、ガラス等でできている平面度の高いディスク)を、スピンドルモーター(不図示)のターンテーブル面に載置する。そして、サスペンション6が磁気ヘッドアーム7に取り付けられている部分の面(サスペンション取り付け面6a)の角度を、基準用ディスクの表面(基準用ディスク面)に対する2方向の角度に対して調整(タンジェンシャル角度調整およびラジアル角度調整)する〔角度調整工程〕。
【0103】
具体的には、例えば、サスペンション取り付け面6aの基準用ディスク面に対する角度(ラジアル方向およびタンジェンシャル方向の角度)を傾き検出器で検出し、上記角度が規定角度以内(例えば、0.3°以下)になるようにステージを回動させて、該サスペンション取り付け面6aと接続した磁気ヘッドアーム7の位置を調整する。
【0104】
上記工程によって、サスペンション取り付け面6aを、スピンドルモーターのターンテーブル面にチャッキングされた基準用ディスクの表面に対して平行になるように調整することができる。
【0105】
また、サスペンション取り付け面6aと磁気ヘッド保持部下面8aとは磁気ヘッドユニットを作製するときに互いが平行になるように作られている(平行度よく作られている)。その結果、磁気ヘッド保持部下面108aと、コア端面10cとが平行になっている。
【0106】
そのため、上記の角度調整工程においてサスペンション取り付け面6aを基準用ディスクの表面に対して平行にすることにより、十分な精度で磁気ヘッド保持部下面8aと基準用ディスク面とを平行にすることができるようになっている。
【0107】
次に、サスペンション取り付け面6aと基準用ディスク面との間隔が、設計基準高さになるように、該サスペンション取り付け面6aと接続した磁気ヘッドアーム7を上記ステージで移動させて、垂直方向の調整を行なう〔垂直位置調整工程〕。つまり、基準用ディスク面に対して磁気ヘッド5の垂直方向の位置を調整する。
【0108】
具体的には、基準用ディスク面とサスペンション取り付け面6aとの間の距離を、変位センサを用いて計測することにより、設計基準高さに対して、例えば、±30μm以内の誤差範囲となるように、磁気ヘッドアーム7の位置を調整する。上記の垂直位置調整工程によって、磁気ヘッド5を設計基準高さに調整することができる。
【0109】
次に、基準用ディスク面と平行な2方向(ディスク面方向)について、顕微鏡、もしくはビデオカメラを用いて、コア端面10cの中心を光ピックアップ2のレーザスポット、もしくは対物レンズの中心位置と一致するように、磁気ヘッドアーム7の平行方向の位置調整を行なう〔平面位置調整工程〕。この平面位置調整工程によって、サスペンション6を介して磁気ヘッドアーム7に接続した磁気ヘッド5の、基準用ディスク面に対する平面位置を調整することができる。
【0110】
なお、上記の工程(ヘッドアーム把持工程・角度調整工程・垂直位置調整工程・平面位置調整工程)の間、光ピックアップ2は、固定用の治具で固定されているが、磁気ヘッドアーム7とは固定されていない。すなわち、光ピックアップ2と磁気ヘッドアーム7とは、空間的に離れた状態であり、磁気ヘッドアーム7の位置のみが調整される。
【0111】
そして、磁気ヘッド5の位置を決定した後、磁気ヘッドアーム7と光ピックアップ2の固定部2aとの間に、樹脂を充填して磁気ヘッド5を固定する。すなわち、磁気ヘッドアーム7と上記固定部2aとの隙間(間隙)に、樹脂を充填し、樹脂の層(樹脂層12)を設けて固定することにより磁気ヘッド5を固定する〔樹脂充填工程〕。
【0112】
したがって、上記の工程(ヘッドアーム把持工程・角度調整工程・垂直位置調整工程・平面位置調整工程・樹脂充填工程)を行なうことにより、磁気ヘッド5(磁気ヘッド保持部下面8a)を、光磁気ディスク面に対して平行(水平)、かつ設計基準高さに調整でき、さらに、平行方向において所望の位置に固定することができる。
【0113】
以上のように、本実施の形態にかかる光磁気記録装置の製造方法は、まず、磁気ヘッド5の角度調整(タンジェンシャル角度調整およびラジアル角度調整)を行なった後に、垂直方向の調整を行ない、さらに、平行方向の調整を行なう構成である。
【0114】
つまり、角度調整によって生じた垂直方向のずれを、後の垂直方向の調整によりなくすことができるので、磁気ヘッド5を設計基準高さに常に合わせることができる。
【0115】
また、例えば、磁気ヘッド5の角度調整を行なう前に、垂直方向の調整を行なう構成に比べて、角度調整を行なうことによって生じる垂直方向のずれの調整を1回で行なうことができるので、効率よく調整を行なうことができる。
【0116】
また、磁気ヘッド5を正確な設計基準高さに取り付けるときの障害になっていたズレ量、特に光磁気ディスク1の回転に無関係なズレ量である、(1)部品の寸法誤差によるズレ量、および(2)光磁気記録装置を組み立てるときに生じる組立調整誤差によるズレ量の影響を受けなくなる。
【0117】
すなわち、光磁気ディスク1の回転に応じて変化するズレ量である、(3)光磁気ディスク1の面振れによるズレ量、および(4)光磁気ディスク1が載置されているターンテーブルが垂直方向にぶれることによるズレ量のみの影響を受けるのみになる(従来よりもズレ量を小さくすることができる)。
【0118】
したがって、磁気ヘッド5の可動範囲を小さくすることができ、従来よりも設計基準高さからの間隔変動を小さくすることができる。
【0119】
また、ズレ量を抑制できるため、磁気ヘッド5を従来よりも正確な設計基準高さに取り付けることができるので、該磁気ヘッド5を支えるサスペンション6に均等な力(荷重)をかけられる。そのため、磁気ヘッド5(磁気ヘッド保持部8)の傾きを低減させることにもなる。なお、設計基準高さに対して±30μmの精度で磁気ヘッド5を取り付けることができるが、それ以上精度をよくすることも可能である。しかし、調整時間等を考慮した場合、±30μmのが妥当な精度といえる。
【0120】
その上、平行方向の位置調整も行なうようになっているので、コア端面10cの中心を、所定位置(例えば、光ピックアップ2のレーザスポット、もしくは対物レンズの中心位置)と一致するように配置できる。
【0121】
また、樹脂充填工程によって、図1に示すように、上記磁気ヘッドアーム7と光ピックアップ2との間に、樹脂層12(樹脂の層)が設けられている。この樹脂層12が形成されていることにより、サスペンション取り付け面6aと基準用ディスク面とがタンジェンシャル方向・ラジアル方向の両方向ともに精度よく調整された状態に保つことができる(磁気ヘッド5を精度よく位置合わせした状態に保つことができる)。
【0122】
また、磁気ヘッドアーム7に光ピックアップ2を固定する場合に、磁気ヘッド5の位置調整、例えば角度調整および高さ位置調整が完了した状態において、磁気ヘッドアーム7と光ピックアップ2との間に樹脂層12となる樹脂を充填することにより、上記の位置調整が完了したそのままの状態を維持しながら、上記両者を固定することができる。このように、磁気ヘッドアーム7と光ピックアップ2とを樹脂層12を介して接合した場合には、樹脂層12が接着層として機能するとともに、任意の高さに設定可能なスペーサーとしても機能するので、上記位置調整後、例えば上記両者(磁気ヘッドアーム7および光ピックアップ2)をねじにより締結して固定した場合と比較して、上記両者を精度よく固定することができる。
【0123】
したがって、本実施の形態にかかる光磁気記録装置では、磁気ヘッドコア10のコア端面10cと光磁気ディスク1の表面(光磁気ディスク面)との距離を従来よりも近づけることができる。具体的には、磁気ヘッド5の磁気ヘッド保持部8と摺動部9との段差(突出量(H))を、30μm以内に近づけていることが好ましい。
【0124】
また、コア端面10cを従来に比べて、光磁気ディスク面に近づけることができるので、磁界発生効率の向上を図ることができる。
【0125】
例えば、磁気ヘッドのインダクタンス1μH、コア端面10cの寸法がラジアル方向に0.3mm、タンジェンシャル方向に0.15mmのときに、0.2AのDC電流(直流)を流して発生磁界の測定実験を行なってみた。
【0126】
具体的には、コア端面10cと光磁気ディスク面との距離を、従来の光磁気記録装置で設定されていた値である50μmにしたときと、その50μmよりも短い30μmのときとで、光磁気ディスク面の位置にホール素子を置いて発生磁界の測定を行なった。
【0127】
その結果、50μmの場合、発生した磁界は、約16710A/m(約210Oe)であった。一方、30μmの場合、約18300A/m(約230Oe)であった。つまり、従来に比べて、およそ10%の磁界強度の向上が確認できた。
【0128】
また、従来と同じ電流を印加しても従来よりも大きな磁界を発生させることができるので、同じ磁界強度を出す場合には電流が少なくてすみ、結果的に低消費電力化を図ることもできる。
【0129】
また、磁気ヘッド保持部8と摺動部9との間(突出量(H))を小さくした場合でも、磁気ヘッド保持部8の傾きが小さく抑えられているため、光磁気ディスク面と磁気ヘッド5とが接触すること(ディスク叩き)を防止することができる。
【0130】
そのため、図5・図6に示すように、磁気ヘッド5が、例えば、光磁気ディスク1の外周部を摺動するとき、磁気ヘッド保持部8とオーバーコート材113の盛り上がり部分113aとの距離が近くなっても、オーバーコート材113の盛り上がり部分113aと磁気ヘッド保持部8とが接触して磁気ヘッド5や光磁気ディスク1を振動させることがない。
【0131】
また、上記の振動が発生しないため、光ピックアップ2におけるレーザー光の焦点位置の調整(フォーカスサーボ)に悪影響を与えることもなくなる。
【0132】
また、磁気ヘッド5の取り付け位置が設計基準高さからずれないので、磁気ヘッド5の光磁気ディスク1に対する押圧力が設計基準高さのときの押圧力に対して安定し、光磁気ディスク1を回転させるスピンドルモーターの負荷も一定となり、その光磁気ディスク1を安定して回転させることができる。
【0133】
なお、角度調整工程後に、平面位置調整工程を行ない、その後に垂直位置調整工程・樹脂充填工程を行なっても、角度調整工程、垂直位置調整工程、平面位置調整工程、樹脂充填工程の順で行なったときと同様の効果を得られる。
【0134】
また、上記の説明では、サスペンション6と磁気ヘッドアーム7とが一体となった構成(図1参照)について説明した。しかし、図7に示すような、サスペンション6と磁気ヘッドアーム7とが分離した構成であっても構わない。この場合、サスペンション6が取り付けられる磁気ヘッドアーム7の一面を基準用ディスク面に対して、角度調整・垂直位置調整・平面位置調整・樹脂充填工程を行うようにすればよい。
【0135】
その上、上記の磁気ヘッドアーム7と光ピックアップ2とは、磁気ヘッド5調整時には分離されている。したがって、磁気ヘッドアーム7と光ピックアップ2とを、光磁気ディスク面に対してスキュー調整(角度調整工程)、高さ調整(垂直位置調整工程)、平行方向の調整(平面位置調整工程)を自由に行なうことができる。そして、その後に、樹脂層12を設けることにより容易に接合できるとともに、厳密に位置合わせを行なうことが可能となっている。
【0136】
また、樹脂層12は、アクチュエーター3のサーボ帯域より低い1kHz程度の固有振動数を有するもので、振動の減衰、すなわち、振動の振幅を時間とともに減少させていく特性(振動減衰特性)を有していることがより好ましい。つまり、樹脂層12が振動を吸収するようになっていることが好ましい。
【0137】
この振動の減衰は、固体表面の振動の振動エネルギーを、熱エネルギーに変換し、固体表面の振動を小さくする現象であり、特に、振動面の共振点近傍の振動低減に効果を発揮する。
【0138】
したがって、アクチュエーター3や磁気ヘッド5により発生する振動によって、共振する磁気ヘッドアーム7の共振周波数(例えば、700Hz〜1kHz)に合致する樹脂の材質または形状を選択することで、磁気ヘッドアーム7の共振ピークを低減できる。つまり、磁気ヘッドアーム7の振動の伝播を防止できる(例えば、数百Hz〜1kHzの共振周波数において、3〜5dBの振動低減効果を発揮する)。
【0139】
なお、光磁気記録装置は、サーボ帯域以下の周波数の範囲においてディスクが外乱等の影響で振動した場合(相対的にみると、アクチュエーター3が振動している場合)であっても、アクチュエーター3と光磁気ディスク1との間隔を決められた距離(例えば、1m±0.1μm)に位置しつづけようと、該アクチュエーター3を駆動して(電流を流して)、距離を一定に保とうと制御している。この位置を制御する力は、アクチュエーター3の駆動周波数が、サーボ帯域の周波数に近づくほど小さくなっていき、サーボ帯域の周波数以上では、もはや外乱等に打ち勝つほど、該アクチュエーター3を駆動する推力を発揮できなくなる。
【0140】
また、図9は、磁気ヘッドアーム7の共振状態(共振モード)を示している。この図面では、右側にいくほど、磁気ヘッドアームの変位(振動)が大きくなっている。そのため、樹脂層の振動減衰効果が一層発揮されることになる(振動減衰効果を大きくすることができる)。
【0141】
ここで、図23・図24を用いて、上記の振動の一例について具体的に説明する。
【0142】
図23に示すように、光磁気ディスク1の面振れ等に対して、アクチュエーター3の可動部が追従することにより磁気回路に反力(アクチュエーター駆動反力)が発生するため、光ピックアップ2が振動する。
【0143】
これにより、光ピックアップ2の振動が磁気ヘッドアーム107・サスペンション106を介して、磁気ヘッド105に伝わり、結果として、光磁気ディスク101を振動させる。そのため、光磁気ディスク101の振動がますます大きくなりフォーカスサーボが不安定になりやすい。
【0144】
本実施の形態にかかる光磁気記録装置では、図1に示すように、光ピックアップ2と磁気ヘッドアーム7との隙間の樹脂層12が上記振動を吸収する。そのため、樹脂層12を設けない場合と比較して、光磁気ディスク1の振動を小さくすることができるので、相対的にフォーカスサーボを安定させることができる。
【0145】
また、他の振動の一例として、例えば、光磁気ディスク面上を摺動している磁気ヘッド保持部108の摩擦力が変化した場合が挙げられる。この場合は、図24に示すように、光磁気ディスク101から磁気ヘッド保持部108(図13参照)に伝わった振動がサスペンション106・磁気ヘッドアーム107を伝わり、光ピックアップ102を振動させてしまう。
【0146】
本実施の形態にかかる光磁気記録装置では、図1に示すように、光ピックアップ2と磁気ヘッドアーム7との隙間に設けられた樹脂層12が、振動を吸収するため、光ピックアップ2への振動の伝播を防止することができるので、フォーカスサーボを安定に保つことができる。
【0147】
つまり、本実施の形態にかかる光磁気記録装置では、アクチュエーター3(光ピックアップ2)により発生する振動が、磁気ヘッドアーム7を介して、磁気ヘッド5に伝播することや、磁気ヘッド保持部8(磁気ヘッド5)により発生する振動が、磁気ヘッドアーム7を介して、光ピックアップ2に伝播することを防止できる。その結果、光磁気ディスク1の振動(光磁気ディスク面の面振れ)を防止し、より安定にデータを記録できる。
【0148】
なお、樹脂層12を設ける部分としては、光ピックアップ2と磁気ヘッドアーム7との隙間に限定されるものではなく、例えば、図7示すように、サスペンション6と磁気ヘッドアーム7との隙間であってもよい。また、光ピックアップ2と磁気ヘッドアーム7との隙間、およびサスペンション6と磁気ヘッドアーム7との隙間の両方の隙間に樹脂層12を設けてもよい。なお、図8は、図7の要部を示した平面図である。
【0149】
また、磁気ヘッドアーム7とサスペンション6との隙間を樹脂で充填した場合、および光ピックアップ2と磁気ヘッドアーム7との隙間およびサスペンション6と磁気ヘッドアーム7との隙間の両隙間に樹脂で充填した場合に現れる効果は、光ピックアップ2と磁気ヘッドアーム7との隙間を樹脂で充填したときと同様の効果になる。なお、光ピックアップ2と磁気ヘッドアーム7との隙間に樹脂層12を設ける場合では、磁気ヘッドアーム7とサスペンション6とを一体に形成することもできる。この場合、部品点数の削減が可能であり、磁気ヘッドアーム7のサスペンション6を取り付ける部分の薄型化を図ることができる。また、磁気ヘッド5の位置調整をより簡単に行なうこともできる。
【0150】
また、上記サスペンション6(サスペンション取り付け面6a)と磁気ヘッドアーム7との隙間に樹脂層12を設ける場合では、例えば、光ピックアップ2と磁気ヘッドアーム7をネジ等で固定する。そして、サスペンション6を上記磁気ヘッド調整機構で把持して、磁気ヘッド5の位置を調整する(上記の5つの方向を調整する)。その後、サスペンション6と磁気ヘッドアーム7との隙間に樹脂を充填することにより樹脂層12を設ける。
【0151】
上記の場合、光ピックアップ2と磁気ヘッドアーム7との間はネジ等でしっかりと固定されているため、樹脂層12は、磁気ヘッド5とサスペンション6とだけを支持するようになっている。つまり、上記樹脂層12は、磁気ヘッド5とサスペンション6とだけを支持すればよいので、樹脂層12の強度が小さくてもよい。そのため、比較的、接着力の低い樹脂を用いることもできる。したがって、使用する樹脂の選択の幅を広げることができる。これにより、例えば、接着力は弱いが振動減衰特性が高い等の特性を持った樹脂を使用することも可能になる。
【0152】
また、樹脂層12で固定されている質量(磁気ヘッド5およびサスペンション6だけの質量)が小さいので、衝撃を受けた場合でも安定して磁気ヘッド5、サスペンション6を固定することができる。
【0153】
なお、上記磁気ヘッドアーム7と光ピックアップ2との隙間に設ける樹脂としては、特に限定されるものではないが、UV(紫外線)を照射して数十秒で硬化するUV硬化型樹脂を用いることが好ましい。また、樹脂は、流体の持つ流動性を示す“粘性”と、固体の持つ復元性を示す“弾性”との両特性をかねそろえた粘弾性材料であることが好ましい。
【0154】
上記のUV硬化型樹脂は、樹脂が硬化するときの収縮の度合いが小さいので、高精度が要求される光ピックアップ2の光学系の固定、アクチュエーター3のベースの固定(対物レンズ4とアクチュエーター3との固定)、板バネのダンピング等に好適に用いられている。
【0155】
なお、十分にUVを照射できない部分については、例えば、上記UV硬化型樹脂を用いて上記部分を仮止めした後、2液硬化型の接着剤を仮止めした部分に充填することもできる。
【0156】
また、例えば、UV硬化型樹脂の接着力と振動減衰特性とが相反している場合、図10に示すように、磁気ヘッドアーム7と光ピックアップ2との隙間の一部を、「振動減衰特性(振動減衰効果)は低いが、接着強度が相対的に高いUV硬化型樹脂(樹脂層13)」で仮止めした後、上記仮止めした部分に「振動減衰特性が高く、接着強度が相対的に低いUV硬化型樹脂(樹脂層14)」を充填させてもよい。
【0157】
また、磁気ヘッドアーム7とサスペンション6との隙間に樹脂層13・14を設ける場合であっても、上記と同様の充填を行なうことができる。
【0158】
また、本実施の形態においては、平面度の高いガラスディスク(主成分がガラスである基準用ディスク)を用いた。このような平面度の高いガラスディスクだと、磁気ヘッドの、例えば、角度調整が精度よく行なえる。そのため、高い精度で磁気ヘッドの位置調整を行なうことができる。
【0159】
しかし、ガラスディスクに限定されるものではなく、該ガラスディスク同様に平面度が高く、精度よく磁気ヘッドの位置調整を行なうことができるような通常のPC(ポリカーボネート)基板を用いた基準用ディスクであっても構わない。また基板に膜を設けた場合には、それが透明でも不透明でも構わない。
【0160】
また、本実施の形態の光磁気記録装置の製造方法では、磁気ヘッド保持部8の傾きを磁気ヘッド5の傾き・高さの調整しない場合と比較して磁気ヘッド保持部下面8aと光磁気ディスク面との間隔の変動を、例えば、±8μm程度に押さえることが可能となるともいえる。
【0161】
また、ヘッドアーム把持工程において、磁気ヘッドアーム7を磁気ヘッド調整機構に固定する方法としては、特に限定されるものではない。例えば、磁気ヘッドアーム7と磁気ヘッド調整機構とをネジによって固定してもよい。また、磁気ヘッドアーム7が強磁性体の場合には、電磁石を用いて、磁気ヘッドアーム7と磁気ヘッド調整機構とを固定してもよいともいえる。
【0162】
また、従来の光磁気記録装置では、磁気ヘッド105を固定しているサスペンション106の左右の形状が異なっていても、磁気ヘッド保持部108が傾いてしまうこともあるともいえる。
【0163】
また、オーバーコート材113の盛り上がり部分113aを避けるために、摺動部109が磁気ヘッド保持部108の所定の位置(例えば、中心)からずらされて配置され、設計基準高さから所定以上ずれた場合、サスペンション106が、磁気ヘッド保持部108を左右の力が均等になるように支持することができないために、磁気ヘッド保持部108が傾いてしまう場合もあるといえる。
【0164】
また、上記のUV硬化樹脂は、アクチュエーター3と対物レンズ4との固定や、板バネのダンピングにも用いられるUV接着剤としても利用できる。
【0165】
また、本実施の形態の光磁気記録装置およびその製造方法は、以下のように表現することもできる。
【0166】
ディスクと上記ディスクを載置して回転駆動させるスピンドルモーターと、記録再生消去用の光スポットを与え上記ディスクの半径方向に移動可能な光ピックアップと、光磁気ディスク面の光スポット照射位置に記録消去用の磁界を与える磁気ヘッドと、上記磁気ヘッドと一体に形成され、かつ上記ディスクに接触して上記磁気ヘッドと上記ディスクの距離を一定に保つための摺動部が設けられている磁気ヘッド保持部と、上記磁気ヘッド保持部を片持ち梁状に支持し弾性変形により上記磁気ヘッド保持部を上下動可能に支持するサスペンションと、上記磁気ヘッドと上記光ピックアップを同期して移送させるための磁気ヘッドアームとを有する光磁気記録装置において、上記ディスクが載置された状態において、上記サスペンションが上記磁気ヘッドアームに取り付けられている面を上記光磁気ディスク面に対してスキュー調整を行なった後に、上記光磁気ディスク面に垂直方向の高さ調整、平行な面内2方向の調整を行なうことを特徴としているともいえる。
【0167】
また、上記ディスクの材質がガラスより構成されているともいえる。
【0168】
また、ディスクと上記ディスクを載置して回転駆動させるスピンドルモーターと、記録再生消去用の光スポットを与え上記ディスクの半径方向に移動可能な光ピックアップと、光磁気ディスク面の光スポット照射位置に記録消去用の磁界を与える磁気ヘッドと、上記磁気ヘッドと一体に形成され、かつ上記ディスクに接触して上記磁気ヘッドと上記ディスクの距離を一定に保つための摺動部が設けられている磁気ヘッド保持部と、上記磁気ヘッド保持部を片持ち梁状に支持し弾性変形により上記磁気ヘッド保持部を上下動可能に支持するサスペンションと、上記磁気ヘッドと上記光ピックアップを同期して移送させるための磁気ヘッドアームとを有する光磁気記録装置において、上記磁気ヘッドアームと上記光ピックアップ、もしくは上記磁気ヘッドアームと上記サスペンションのいずれかに間隙を有しており、その上記間隙に樹脂層を設けることにより上記磁気ヘッドアームが上記光ピックアップもしくは上記サスペンションと接合されていることを特徴とする光磁気記録装置ともいえる。
【0169】
また、上記樹脂層は振動減衰効果を有するものであるともいえる。
【0170】
【発明の効果】
以上のように、本発明の光磁気記録装置は、凸形状の摺動部を備え、この摺動部が記録媒体の表面に接触することで、記録媒体に対し一定間隔を保つ磁気ヘッドと、この磁気ヘッドを支持するサスペンションと、記録媒体に光照射する光ピックアップとを備え、上記サスペンションと光ピックアップとが中間部材を介して接続されることにより、上記の磁気ヘッドと光ピックアップとが同期移動する光磁気記録装置において、上記光ピックアップと上記中間部材とは、上記磁気ヘッドの高さを調整することによって生じる隙間の間隔を保持するように、UV硬化型樹脂からなる樹脂層を介して接合されている構成である。
【0171】
また、本発明の光磁気記録装置の製造方法は、凸形状の摺動部を備え、この摺動部が記録媒体の表面に接触することで、記録媒体に対し一定間隔を保つ磁気ヘッドと、この磁気ヘッドを支持するサスペンションと、記録媒体に光照射する光ピックアップとを備え、上記サスペンションと光ピックアップとが中間部材を介して接続されることにより、上記の磁気ヘッドと光ピックアップとが同期移動する光磁気記録装置の製造方法において、上記磁気ヘッドの位置調整後に、上記光ピックアップと上記中間部材とは、上記磁気ヘッドの高さを調整することによって生じる隙間の間隔を保持するように、UV硬化型樹脂からなる樹脂層を介して接合する構成である。
【0172】
これによると、中間部材に光ピックアップを固定する場合に、磁気ヘッドの位置調整、例えば角度調整および高さ位置調整が完了した状態において、中間部材と光ピックアップとの間に樹脂層となる樹脂を充填することにより、上記の位置調整が完了したそのままの状態を維持しながら、上記両者を固定することができる。このように、中間部材と光ピックアップとを樹脂層を介して接合した場合には、樹脂層が接着層として機能するとともに、任意の高さに設定可能なスペーサーとしても機能するので、上記位置調整後、例えば上記両者(中間部材および光ピックアップ)をねじにより締結して固定した場合と比較して、上記両者を精度よく固定することができるという効果を奏する。
【0173】
したがって、サスペンションに支持された磁気ヘッドを、精度よく設計基準高さに保つことができるとともに、光磁気記録装置は、磁気ヘッドが精度よく設計基準高さに取り付けられたものとなり、磁気ヘッドがサスペンションにより支持されている場合において、磁気ヘッドが設計基準高さに調整されていない場合に大きくなる該磁気ヘッドの傾きを抑制でき、従来よりも磁気ヘッドを記録面に近づけることができる。そのため、磁界発生効率を向上させることができ、磁気記録媒体の高記録密度化を実現することができるという効果を奏する。
【0174】
また、本発明の光磁気記録装置では、上記の構成に加えて、上記樹脂層が、振動減衰機能を有している。
【0175】
また、本発明の光磁気記録装置の製造方法では、上記の構成に加えて、上記樹脂層が、振動減衰機能を有している。
【0176】
これによると、樹脂層が振動の振幅を減衰させることにより、光ピックアップから発生する振動、または磁気ヘッドから発生する振動に起因する磁気ヘッドアームの共振(振動)の伝播を防止できるという効果を奏する。
【0177】
そのため、磁気ヘッドアームの振動による記録媒体の振動(記録面の面振れ)や光ピックアップの振動を防ぐことができ、より安定してデータを記録することができる。
【0180】
また、本発明の光磁気記録装置の製造方法では、上記光ピックアップと上記中間部材との樹脂層を介しての接合が、UV硬化型樹脂で仮止めした後、上記仮止めした部分に振動減衰機能を有するUV硬化型樹脂を充填することにより行われることが好ましい。
【0181】
また、本発明の光磁気記録装置の製造方法では、上記の構成に加えて、磁気ヘッド位置の調整用の基準用ディスクに対して、上記サスペンションの取り付けられる中間部材の一面の角度を調整することにより、上記記録媒体の表面に対する上記磁気ヘッドの角度を適正にするための角度調整を行ない、さらに、上記基準用ディスクに対する上記中間部材の一面の垂直方向位置を調整することにより、上記記録媒体の表面に対する上記磁気ヘッドの垂直方向の位置を適正にするための垂直位置調整を行なった後、上記基準用ディスクに対する上記中間部材の一面の平行方向位置を調整することにより、上記記録媒体の表面に平行な方向に対して、上記磁気ヘッドの位置を適正にするための平面位置調整を行ない、その後、上記の樹脂層を介した接合を行なうことが好ましい。
【0182】
これによると、樹脂層によって、光ピックアップと中間部材とを接合する前に(樹脂充填工程の前に)、磁気ヘッドの角度を調整した後、該磁気ヘッドの高さ(垂直方向の位置)を調整し、さらに、該磁気ヘッドの平行方向の位置を調整しているので、例えば、最初に垂直方向の位置の調整を行なった後、角度の調整を行なった場合に生じる垂直方向の位置ずれ(高さのずれ)を解消することができるという効果を奏する。
【0183】
その上、例えば、部品寸法の誤差(部品のばらつき)、および光磁気記録装置を組み立てる際の組立誤差によるズレ量の影響を受けることなく、垂直方向の位置調整を行なうことになるので、上記ズレ量を抑制することができる(従来よりもズレ量を小さくできる)。そのため、磁気ヘッドを正確な設計基準高さに取り付けることができるという効果を奏する。
【0184】
また、本発明の光磁気記録装置の製造方法では、上記の構成に加えて、上記基準用ディスクの主たる材質がガラスであることが好ましい。
【0185】
これによると、上記磁気記録媒体の記録面の平面度が高くなるため、磁気ヘッドの、例えば、角度調整が精度よく行なえる。そのため、高い精度で磁気ヘッドを設計基準高さに合わせた光磁気記録装置を製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の一形態における光磁気記録装置の概略を示す断面図である。
【図2】 図1の光磁気記録装置の要部を示す平面図である。
【図3】 図2の光磁気記録装置のA−A'線矢視断面図である。
【図4】 光磁気記録装置の磁気ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【図5】 磁気ヘッドが、オーバーコート材が塗布された光磁気ディスクの外周部を摺動している状態を示す平面図である。
【図6】 磁気ヘッドが、オーバーコート材が塗布された光磁気ディスクの外周部を摺動している状態を示す断面図である。
【図7】 本発明の実施の一形態における光磁気記録装置の他の構成の概略を示す断面図である。
【図8】 図7の光磁気記録装置の要部を示す平面図である。
【図9】 磁気ヘッドアームが共振している状態を示す側面図である。
【図10】 (a)は接着強度の異なる2種類の樹脂で磁気ヘッドアームと光ピックアップとを固定した光磁気記録装置の概略を示す断面図であり、(b)は(a)の光磁気記録装置の要部を示す平面図であり、(c)は(b)の光磁気記録装置のB−B'線矢視断面図である。
【図11】 従来の光磁気記録装置の概略を示す平面図である。
【図12】 図11の光磁気記録装置のX−X'線矢視断面図である。
【図13】 磁気ヘッドの構成を示す斜視図である。
【図14】 図13とは異なる方向からみた磁気ヘッドの構成を示す斜視図である。
【図15】 図13の光磁気記録装置のY−Y'線矢視断面図である。
【図16】 磁気ヘッドが設計基準高さに固定されている場合を示す断面図である。
【図17】 磁気ヘッドが設計基準高さよりも、垂直方向かつ上方向にある場合を示す断面図である。
【図18】 磁気ヘッドが設計基準高さよりも、垂直方向かつ下方向にある場合を示す断面図である。
【図19】 オーバーコート材が塗布された光磁気ディスクの平面図である。
【図20】 図19の光磁気ディスクの断面図である。
【図21】 図19の光磁気ディスクの要部の断面図である。
【図22】 磁気ヘッドが光磁気ディスクの外周部を摺動している状態を示す平面図である。
【図23】 対物レンズアクチュエーターに反力がかかることにより、光磁気記録装置全体が振動する現象を説明する該光磁気記録装置の断面図である。
【図24】 磁気ヘッドの振動が光ピックアップに伝わる現象を説明する光磁気記録装置の断面図である。
【符号の説明】
1 光磁気ディスク(記録媒体)
2 光ピックアップ
3 対物レンズアクチュエーター
4 対物レンズ
5 磁気ヘッド
6 サスペンション
6a サスペンション取り付け面
7 磁気ヘッドアーム(中間部材)
8 磁気ヘッド保持部
8a 磁気ヘッド保持部下面
9 摺動部
10 磁気ヘッドコア
10a コア平板部
10b コア突出部
10c コア端面
11 磁気コイル
12 樹脂層
13 樹脂層
14 樹脂層
Claims (5)
- 凸形状の摺動部を備え、この摺動部が記録媒体の表面に接触することで、記録媒体に対し一定間隔を保つ磁気ヘッドと、この磁気ヘッドを支持するサスペンションと、記録媒体に光照射する光ピックアップとを備え、上記サスペンションと光ピックアップとが中間部材を介して接続されることにより、上記の磁気ヘッドと光ピックアップとが同期移動する光磁気記録装置において、
上記光ピックアップと上記中間部材とは、上記磁気ヘッドの高さを調整することによって生じる隙間の間隔を保持するように、UV硬化型樹脂からなる樹脂層を介して接合され、
上記樹脂層が、振動減衰機能を有していることを特徴とする光磁気記録装置。 - 凸形状の摺動部を備え、この摺動部が記録媒体の表面に接触することで、記録媒体に対し一定間隔を保つ磁気ヘッドと、この磁気ヘッドを支持するサスペンションと、記録媒体に光照射する光ピックアップとを備え、上記サスペンションと光ピックアップとが中間部材を介して接続されることにより、上記の磁気ヘッドと光ピックアップとが同期移動する光磁気記録装置の製造方法において、
上記磁気ヘッドの位置調整後に、
上記光ピックアップと上記中間部材とは、上記磁気ヘッドの高さを調整することによって生じる隙間の間隔を保持するように、UV硬化型樹脂からなる樹脂層を介して接合し、
上記樹脂層が、振動減衰機能を有していることを特徴とする光磁気記録装置の製造方法。 - 上記光ピックアップと上記中間部材との樹脂層を介しての接合が、
UV硬化型樹脂で仮止めした後、上記仮止めした部分に振動減衰機能を有するUV硬化型樹脂を充填することにより行われることを特徴とする請求項2に記載の光磁気記録装置の製造方法。 - 磁気ヘッド位置の調整用の基準用ディスクに対して、上記サスペンションの取り付けられる中間部材の一面の角度を調整することにより、上記記録媒体の表面に対する上記磁気ヘッドの角度を適正にするための角度調整を行ない、
さらに、上記基準用ディスクに対する上記中間部材の一面の垂直方向位置を調整することにより、上記記録媒体の表面に対する上記磁気ヘッドの垂直方向の位置を適正にするための垂直位置調整を行なった後、
上記基準用ディスクに対する上記中間部材の一面の平行方向位置を調整することにより、上記記録媒体の表面に平行な方向に対して、上記磁気ヘッドの位置を適正にするための平面位置調整を行ない、
その後、上記の樹脂層を介した接合を行なうことを特徴とする請求項2または3に記載の光磁気記録装置の製造方法。 - 上記基準用ディスクの主たる材質がガラスであることを特徴とする請求項4に記載の光磁気記録装置の製造方法。
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