JP3988978B2 - チェーン用ブレードテンショナシステム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブレードテンショナシステムに関し、詳細には、エンジン内の従動軸を駆動軸に駆動連結するチェーンに緊張力を作用させるためのブレードテンショナを含むチェーン用ブレードテンショナシステムに関する。
【0002】
【従来の技術およびその課題】
チェーンに緊張力を作用させるためのテンショナとして、従来より、ブレードテンショナが用いられている。一般に、ブレードテンショナは、弧状に湾曲したチェーン摺動面を有する樹脂製のブレードシューと、ブレードシューのチェーン摺動面と逆側に配置されるとともに、ブレードシューにばね力を作用させるための金属製の板ばね状ブレードスプリングとから主として構成されている。
【0003】
チェーンの運転時には、ブレードシューのチェーン摺動面上をチェーンが摺動しつつ走行し、このとき、ブレードシューおよびブレードスプリングの弾性反発力による押付荷重がチェーンに作用して、チェーンに緊張力が作用する。そして、運転中にチェーンに伸びが生じた場合には、曲率半径が大きくなる側に弾性変形していたブレードスプリングが、曲率半径が小さくなる側に戻り変形することにより、ブレードシューがチェーンの側に突出し、その結果、チェーンの弛みが吸収され、チェーンに常時一定の緊張力が維持されるようになっている。
【0004】
ここで、ブレードテンショナがエンジンのオーバヘッドカムシャフト駆動用のタイミングチェーンに適用された例を図7に示す。図7は、ブレードシューのチェーン摺動面側から見たブレードテンショナの側面図である。同図中、符号50はブレードシューを示しており、ブレードシュー50のチェーン摺動面50a上をチェーン60が走行するようになっている。ブレードシュー50の基部51には、貫通穴51aが形成されており、該貫通穴51aには、ショルダーボルト70が挿通している。ショルダーボルト70は、エンジンのシリンダブロック71に形成されたねじ穴に螺合している。
【0005】
この構成により、ブレードシュー50は、ショルダーボルト70の回りを回動自在になっており、チェーン60の伸びに応じてブレードシュー50がショルダーボルト70の回りを回動するとともに、ブレードスプリング(図示せず)の弾性変形量が変化することにより、ブレードシュー50のチェーン60の側への変位量が変化して、チェーン60に適切な緊張力が作用するようになっている。
【0006】
ところで、図7に示すように、ブレードシュー50がショルダーボルト70の回りを回動するためには、ショルダーボルト70を支持するブレードシュー50の貫通穴51aとショルダーボルト70の頭部外周面70aとの間に一定のクリアランスが形成されている必要がある。
【0007】
ところが、このようなクリアランスが形成されていることにより、運転中のチェーンの横方向(図7左右方向)の振れなどが原因で、図8に示すように、ブレードシュー50が側方に傾く場合が生じ得る。一般に、タイミングチェーンに適用されるブレードテンショナの場合、オイルポンプなどの補機駆動用のチェーンに比べて駆動軸および従動軸間の芯間距離が長いために、チェーンスパンが長く、ブレードテンショナのブレードシューの全長も長くなる。このため、ブレードシューが側方に傾くとブレードシューの先端側の振れも大きくなって、先端側の振れΔは3mm程度にも達することになる(図8参照)。
【0008】
また、このようなブレードシューの傾きにより、図8のIX部分拡大図である図9に示すように、ブレードシュー50の貫通穴51aの開口縁部であるエッジ部51bがショルダーボルト70の頭部外周面70aと干渉を起こし、この状態でブレードシュー50がショルダーボルト70にロックされてしまう場合が生じ得る。このとき、ブレードシュー50はショルダーボルト70の回りを自由に回転できなくなり、その結果、チェーンの伸びに対して、ブレードシュー50がチェーンの側に適切な量だけ変位することができず、チェーンに適切な緊張力を維持させることができなくなる。
【0009】
さらに、ブレードシュー50のエッジ部51bとショルダーボルト70との干渉により、エッジ部51bに摩耗が発生する。これにより、ブレードシュー50の貫通穴51aとショルダーボルト70との間のクリアランスがさらに大きくなり、その結果、ブレードシュー50の側方への傾きがさらに増すことにもなる。
【0010】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたもので、エンジン内のチェーンに適用されるブレードテンショナにおいて、運転中にブレードテンショナの側方への傾きを防止できるようにすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、エンジン内の従動軸を駆動軸に駆動連結するチェーンに緊張力を作用させるためのブレードテンショナを含むチェーン用ブレードテンショナシステムである。ブレードテンショナは、ブレードシューと、ブレードシューのチェーン摺動面と逆側に配置され、ブレードシューにばね力を作用させるための板ばね状のブレードスプリングとを備えている。ブレードシューは、弧状に湾曲するチェーン摺動面を有するシュー本体と、シュー本体の基端側に設けられた基端部と、シュー本体の先端側に設けられた先端部とから構成されている。そして、ブレードシューの基端部がこれを挿通する支軸の回りを回動自在に設けられるとともに、ブレードシューの先端部がエンジン内に設けられた支持面上をスライド自在に設けられており、先端部またはその近傍領域には、その側面において前記チェーン摺動面から突出しない位置に突起部が設けられている。さらに、エンジン内には、ブレードシューの先端部またはその近傍領域の側面との間に所定の隙間を隔てて、前記突起部が当接し得る平坦状の受け部が設けられている。
【0012】
請求項2の発明に係るチェーン用ブレードテンショナシステムは、請求項1において、エンジン内の支持面に、ブレードシューの先端部の側方への移動を規制する規制部材が設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明に係るチェーン用ブレードテンショナシステムは、請求項2において、前記規制部材が前記支持面に一体成形されていることを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明に係るチェーン用ブレードテンショナシステムは、請求項1において、前記突起部が球面状に形成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項5の発明に係るチェーン用ブレードテンショナシステムは、請求項1において、前記ブレードスプリングを幅方向に支持するように前記シュー本体に設けられた支持片の側面に前記突起部が設けられていることを特徴としている。
【0016】
請求項1の発明によれば、ブレードシューの先端部またはその近傍領域の側面に突起部が設けられるとともに、該突起部が当接し得る平坦状の受け部が突起部から所定の隙間を隔ててエンジン内の構成部品、たとえばシリンダブロックに設けられるので、運転中にブレードテンショナがシリンダブロック側に向かって側方に傾こうとした場合には、ブレードシューの突起部がシリンダブロックの受け部に当接し、これにより、ブレードシューの側方への傾きを防止できる。
【0017】
なお、突起部が当接する受け部が設けられるエンジン内の構成部品としては、シリンダブロックの他に、シリンダヘッド、チェーンカバーまたはオイルパンでもよい。
【0018】
請求項2の発明では、ブレードシューの先端部がスライド自在に当接する支持面に、該先端部の側方への移動を規制する規制部材が設けられるので、運転中にブレードテンショナがたとえばシリンダブロック側と逆側に向かって側方に傾こうとした場合には、ブレードシューの先端部が支持面の規制部材に当接し、これにより、ブレードシューの側方への傾きを防止できる。
【0019】
請求項3の発明では、規制部材が支持面に一体成形されているので、支持面の構造を簡略化でき、製造コストを低減できる。
【0020】
請求項4の発明によれば、ブレードシューが弾性変形することによって突起部が受け部の上を移動した場合でも、突起部が球面状に形成されていることにより、突起部は受け部と点接触状態を保っており、これにより、突起部は受け部の上をスムーズに移動することができるとともに、突起部と受け部との接触面に潤滑油を容易に引き込むことができ、接触面の摩耗を防止できる。
【0021】
請求項5の発明においては、ブレードスプリングを幅方向に支持するようにシュー本体に設けられた支持片に突起部が設けられており、この場合には、突起部により支持片を補強することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施態様を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施態様によるブレードテンショナを含むエンジンカムシャフトタイミングシステムの概略構成図、図2は図1のブレードテンショナのチェーン摺動面側の側面図、図3は図2の第1の変形例を示す図、図4は図1のエンジンカムシャフトタイミングシステムの背面側の概略構成図、図5は図4のブレードテンショナのチェーン摺動面側の側面図であって図2の第2の変形例を示す図、図6は図4のVI-VI 線断面図である。
【0023】
図1に示すように、このカムシャフトタイミングシステム1は、クランクシャフト2に固定されたクランクスプロケット20と、カムシャフト3に固定されたカムスプロケット30と、これらのスプロケット20,30間に巻き掛けられ、クランクシャフト2の駆動力をカムシャフト3に伝達するためのタイミングチェーン4とを備えている。なお、図中の矢印は、クランクシャフト2およびカムシャフト3のそれぞれの回転方向を示している。
【0024】
タイミングチェーン4の弛み側スパンには、ブレードテンショナ10が配置されている。このブレードテンショナ10は、弧状に湾曲する樹脂製のブレードシュー11と、ブレードシュー11のチェーン摺動面11aと逆側に積層配置されるとともに、ブレードシュー11にばね力を作用させるための板ばね状の複数枚のブレードスプリング12とから主として構成されている。
【0025】
ブレードシュー11の基端部13には、枢支穴(貫通穴)13aが形成されており、該枢支穴13aには、ショルダーボルト(支軸)14が挿通している。ショルダーボルト14は、エンジンのシリンダブロック5(図2)に形成されたねじ穴に螺合しており、ショルダーボルト14の頭部外周面14aとブレードシュー11の枢支穴13aとの間には一定のクリアランスが形成されている。これにより、ブレードシュー11は、ショルダーボルト14の回りを回動自在になっている。
【0026】
ブレードシュー11の先端部15は、エンジン内に設けられた支持面16に当接しており、該支持面16上をスライドし得るようになっている。またブレードシュー11には、ブレードスプリング12を幅方向に支持するための支持片19が設けられている。
【0027】
図2に示すように、ブレードシュー11の先端部15の両側面には、半球状の一対の突起部17,18が形成されている。一方、エンジンのシリンダブロック5には、ブレードテンショナ10側に突出する受け部51が設けられており、受け部51には、ブレードシュー11との間に所定の隙間を隔てて平坦状の受け面51aが形成されている。ブレードシュー11の先端部15のシリンダブロック5側の突起部17は、シリンダブロック5の受け面51aに当接し得るようになっている。なお、図2中の符号6はシリンダヘッドを示している。
【0028】
また、エンジン内の支持面16には、ブレードシュー11の先端部15の側方に配置され、ブレードシュー11の先端部15のシリンダブロック5側と逆側への振れを規制するための規制部材16aが設けられている。規制部材16aは支持面16と一体成形されている。ブレードシュー先端部15の突起部18は、規制部材16aに当接し得るようになっている。
【0029】
上記ブレードテンショナ10、支持面16および受け部51により、本実施態様によるブレードテンショナシステムが構成されている。
【0030】
チェーンの運転中には、チェーン4がブレードシュー11のチェーン摺動面11a上を摺動しつつ走行し、このとき、ブレードシュー11およびブレードスプリング12の弾性変形による反発力(ばね力)が押付荷重としてチェーン4に作用して、チェーン4に一定の緊張力が作用している。
【0031】
運転中に、ブレードテンショナ10がシリンダブロック5側に向かって側方に傾こうとした場合には、ブレードシュー11の突起部17が、シリンダブロック5の受け部51に形成された受け面51aに当接し、これにより、ブレードシュー11の側方への傾きが防止される。
【0032】
この場合において、運転中に、ブレードシュー11の突起部17がシリンダブロック5の受け部51に常時接触するようになった場合でも、シリンダ壁を伝わって滴下してくるエンジンオイルにより、これらの接触面が潤滑されることになるので、突起部17および受け部51間の接触面の摩耗を防止できる。
【0033】
また、ブレードテンショナ10がシリンダブロック5側と逆側に向かって側方に傾こうとした場合には、ブレードシュー11の突起部18が、支持面16に設けられた規制部材16aに当接し、これにより、ブレードシュー11の側方への傾きが防止される。
【0034】
なお、ブレードシュー11の各突起部17,18は、図2に示す位置よりもさらに先端側に設けるようにしてもよい。図3は、図2の第1の変形例を示しており、この場合には、ブレードシュー11の最先端側に突起部17′,18′が設けられている。一方、突起部17′が当接し得るエンジン側の構成部品としては、シリンダヘッド6においてブレードテンショナ10側に突出する受け部61が設けられており、受け部61には、ブレードシュー11との間に所定の隙間を隔てて平坦状の受け面61aが形成されている。また突起部18′は、規制部材16aに当接している。
【0035】
図4ないし図6は、図2の第2の変形例を説明するための図である。ブレードシュー11の背面側において先端部の近傍領域には、図4に示すように、ブレードスプリング12を幅方向から支持するための支持片19′が設けられている。
【0036】
支持片19′の外側面には、図5および図6に示すように、突起部17″が設けられている。突起部17″は、シリンダブロック5の受け面51aに当接している。
【0037】
この場合には、突起部17″によって、ブレードテンショナ10のシリンダブロック側への傾きを防止できるばかりでなく、運転中にブレードスプリング12からの力が作用する支持片19′を補強できるようになる。
【0038】
なお、本実施態様では、シングルオーバヘッドカムシャフト(SOHC)型式のエンジンを例にとったが、本発明におけるブレードテンショナシステムは、ダブルオーバヘッドカムシャフト(DOHC)型式のエンジンにも同様に適用できる。
【0039】
また、本発明におけるブレードテンショナは、図1に示すような構成のものには限定されず、ブレードシューのチェーン摺動面と逆側にブレードスプリングが配置されるようなブレードテンショナであれば、その他の任意の形状および構成のブレードテンショナに適用できる。
【0040】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るチェーン用ブレードテンショナシステムによれば、ブレードシューの先端部またはその近傍領域の側面に突起部を設けるとともに、該突起部が当接し得る平坦状の受け部を先端部またはその近傍領域の側面から所定の隙間を隔ててエンジン内に設けるようにしたので、運転中にブレードテンショナの側方への傾きを防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様によるブレードテンショナを含むエンジンカムシャフトタイミングシステムの概略構成図である。
【図2】図1のブレードテンショナのチェーン摺動面側の側面図である。
【図3】図2の第1の変形例を示す図である。
【図4】図1のエンジンカムシャフトタイミングシステムの背面側の概略構成図である。
【図5】図4のブレードテンショナのチェーン摺動面側の側面図であって、図2の第2の変形例を示す図である。
【図6】図4のVI-VI 線断面図である。
【図7】ブレードテンショナをタイミングチェーンに適用した場合の側面図である。
【図8】図7のブレードテンショナの問題点を説明するための図である。
【図9】図8のIX部分拡大図である。
【符号の説明】
1: カムシャフトタイミングシステム
2: クランクシャフト(駆動軸)
20: クランクスプロケット
3: カムシャフト(従動軸)
30: カムスプロケット
4: タイミングチェーン
5: シリンダブロック
51: 受け部
51a: 受け面
6: シリンダヘッド
61: 受け部
61a: 受け面
10: ブレードテンショナ
11: ブレードシュー
11a: チェーン摺動面
12: ブレードスプリング
13: 基端部
13a: 枢支穴(貫通穴)
14: ショルダーボルト(支軸)
15: 先端部
16: 支持面
16a: 規制部材
17,18: 突起部
17′,18′,17″: 突起部
19,19′: 支持片
Claims (5)
- エンジン内の従動軸を駆動軸に駆動連結するチェーンに緊張力を作用させるためのブレードテンショナを含むチェーン用ブレードテンショナシステムであって、
前記ブレードテンショナが、
弧状に湾曲するチェーン摺動面を有するシュー本体と、シュー本体の基端側に設けられた基端部と、前記シュー本体の先端側に設けられた先端部とからなるブレードシューと、
前記ブレードシューの前記チェーン摺動面と逆側に配置され、前記ブレードシューにばね力を作用させるための板ばね状のブレードスプリングと、
を備え、
前記ブレードシューの前記基端部がこれを挿通する支軸の回りを回動自在に設けられ、前記先端部がエンジン内に設けられた支持面上をスライド自在に設けられるとともに、前記先端部またはその近傍領域には、その側面において前記チェーン摺動面から突出しない位置に突起部が設けられており、
エンジン内には、前記ブレードシューの前記先端部またはその近傍領域の前記側面との間に所定の隙間を隔てて、前記突起部が当接し得る平坦状の受け部が設けられている、
ことを特徴とするチェーン用ブレードテンショナシステム。 - 請求項1において、
エンジン内の前記支持面には、前記ブレードシューの前記先端部の側方への移動を規制する規制部材が設けられている、
ことを特徴とするチェーン用ブレードテンショナシステム。 - 請求項2において、
前記規制部材が前記支持面に一体成形されている、
ことを特徴とするチェーン用ブレードテンショナシステム。 - 請求項1において、
前記突起部が球面状に形成されている、
ことを特徴とするチェーン用ブレードテンショナシステム。 - 請求項1において、
前記シュー本体には、前記ブレードスプリングを幅方向に支持する支持片が設けられており、前記支持片の側面に前記突起部が設けられている、
ことを特徴とするチェーン用ブレードテンショナシステム。
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- 2001-05-17 JP JP2001148440A patent/JP3988978B2/ja not_active Expired - Fee Related
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