JP3988870B2 - 測定器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、測定器に関する。
【0002】
【背景技術】
距離、長さ、角度などを測定する測定器が種々知られている。例えば、長さを測定する測定器としてノギスがある。ノギスは、一方の測定ジョーを有する本尺と、この本尺の長手方向へ摺動自在に設けられ前記一方の測定ジョーとともに被測定物に当接される測定ジョーを有するスライダとを備えて構成されている。
このようなノギスにおいては、測定精度を長期に亘って維持できることが重要である。そのため、本尺とスライダは、精密加工が可能でかつ摺動に耐える素材で構成されることが望ましい。そこで、一般に、ノギスの本尺およびスライダは、線膨張係数が小さく、かつ、耐磨耗性を備える熱処理された金属(例えば、ステンレスなど)で形成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、金属を所望の形態に機械加工するには、大変な時間と費用を必要とする。本尺とスライダの摺動性を良好にするためには、ラッピング加工などによって本尺とスライダとの摺動面の仕上がりを精密にしなければならない。このような工程は、ノギス以外の精密測定器にも必要とされるものである。このように多くの精密加工を経て製造される測定器には、生産ラインの複雑化や高コストなどの問題が生じる。
【0004】
測定精度を維持するためには、線膨張を一定の範囲内に抑える必要がある。そこで、一般の測定器では測定条件として、例えば、温度を20±10度に制限することによって線膨張による誤差を抑えている。しかしながら、高温や低温など過酷な測定環境においては、線膨張による測定誤差を生じるという問題がある。測定器を手で握る場合には、手の熱による温度分布のため場所により異なる線膨張が生じ、測定誤差が生じやすいという問題がある。
【0005】
ノギスのように摺動機構を備えた測定器においては、やはり、繰り返しの使用により摩耗するという問題がある。摩耗を低減して滑らかな摺動を維持するためには潤滑剤などを使用しなければならないが、潤滑剤などを使用した場合には、ゴミなどが付着しやすいという問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、従来の問題を解消し、簡便に製造でき、かつ、高性能な測定器を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の測定器は、内部に電気回路を有するケース体を備える測定器であって、前記ケース体は、ナノスケール物質を含む合成樹脂により形成され、前記ケース体は、導電性を有し、基部と、前記基部に対して摺動自在に設けられた摺動体とを有する摺動機構を備え、前記基部および前記摺動体の少なくともいずれか一方は、ナノスケール物質を含む合成樹脂により形成されていることを特徴とする。
ナノスケール物質は、合成樹脂に対して導電性付与剤としても絶縁性付与剤としても働くことができる。そこで、ナノスケール物質の導電性付与剤としての働きを利用して、ナノスケール物質を含んだ合成樹脂で形成されたケース体に電気回路を収納する。すると、ケース体自体が電磁シールドを構成する。その結果、電気回路を有する測定器、例えば、デジタルノギスやデジタルマイクロメータなどの電気回路を外部磁界および外部電界から保護することができる。この際、ケース体自体が電磁シールドとして機能するので、別個に電磁シールド部材などを設ける必要がなく、測定器の小型化、低コスト化を図ることができる
ここで、摺動機構の基部および摺動体の両方をナノスケール物質を含んだ合成樹脂で形成してもよく、いずれか一方でもよい。ナノスケール物質を含んだ合成樹脂は耐摩耗性能が向上することから繰り返しの使用でも摩耗することがなく、また、摩擦係数が小さいことから摺動性がよく潤滑剤なしでも摺動機構として使用できる。
【0008】
ここで、測定器とは、長さ、距離、角度などの物理量を測定する測定器、たとえば、ノギス、マイクロメータ、ダイヤルゲージなどである。構成部材とは、測定器を構成する部材、たとえば、ノギスの本尺やスライダ、マイクロメータのフレームやスピンドル、ダイヤルゲージのケース本体や歯車やスピンドルなどである。
【0009】
一般に合成樹脂は、脆弱で線膨張率が大きいものであるが、ナノスケール物質(例えば、カーボンナノファイバ)を合成樹脂の母材(例えば、ポリスチレン)に添加し、適宜諸条件を設定することにより、剛性の強化、線膨張の抑制、耐摩耗性能の向上、摩擦係数の低下、熱伝導率の向上、導電性または絶縁性の付与などの効果が得られる。この理由は正確には分かっていないが、ナノスケール物質が合成樹脂内でネットワークを築くことに基づくとされている。
【0010】
よって、ナノスケール物質を含む合成樹脂からなる構成部材を備えた測定器、たとえば、本尺やスライダをナノスケール物質を含む合成樹脂で形成されたノギスでは、線膨張係数を小さくすることが可能なので、線膨張による誤差を排除し精密な測定を行うことができる。線膨張係数が小さければ、測定の温度に制限を受けることなく高温や低温など過酷な条件でも精密な測定を行うことができる。
【0011】
耐摩耗性能が向上することから、繰り返しの使用でも摩耗することがなく、測定精度を維持することができる。
摩擦係数が小さいことから、摺動性がよく、潤滑剤なしでも摺動機構として使用できる。よって、汚れやゴミがつきにくいものとできる。
熱伝導率がよいことから、測定器を手で握って測定する場合でも手の熱が瞬時に拡散し、場所による膨張の差異を生じることがない。よって、手で握って使用するハンドツールタイプの測定器であっても、手の熱による測定誤差を生じることがなく、精密な測定を行うことができる。
【0012】
剛性が強化されるので、測定器の構成部材の変形を抑えることができる。特に、被測定物を挟持して測定するような測定器、例えば、ノギスやマイクロメータでも押圧力による変形を抑えることができるので、測定精度を向上させることができる。
剛性が強化されることから、剛性を維持したままで構成部材を薄型化、小型化することも可能である。
合成樹脂であるので測定器を軽いものとすることができる。合成樹脂であるので、金属に比べて手になじみやすく金属アレルギーなどの心配もない。
【0017】
内部に電気回路を有するケース体を備える測定器であって、前記ケース体は、ナノスケール物質を含む合成樹脂により形成され、前記ケース体は、導電性を有し、基部と、前記基部に対して摺動自在に設けられた摺動体と、前記基部および前記摺動体の対向面のいずれか一方に設けられ他方に当接して前記摺動体を案内する摺動案内部材とを備え、前記摺動案内部材は、前記ナノスケール物質を含む合成樹脂により形成されていることが好ましい。
【0018】
このように摺動機構において当接する摺動案内部材がナノスケール物質を含む合成樹脂によって形成されていることにより、摺動機構の摺動性、耐摩耗性が向上する。
ナノスケール物質を導電性付与剤として用いれば、摺動案内部材が導電性を有する。すると、摺動面に静電気が帯電することを防ぐことができる。よって、この摺動機構にリニアエンコーダなどを設けた場合でも、帯電を防ぎ、エンコーダの破損や誤作動を防止することができ、精密な測定を行うことができる。
【0021】
内部に電気回路を有するケース体を備える測定器であって、前記ケース体は、ナノスケール物質を含む合成樹脂により形成され、前記ケース体は、導電性を有し、動力を伝達する動力伝達部材を備え、前記動力伝達部材は、ナノスケール物質を含む合成樹脂により形成されていることが好ましい。
【0022】
動力伝達部材として、例えば、ラックや歯車列などがナノスケール物質を含む合成樹脂で形成されることにより、動力伝達部材の、剛性、耐摩耗性が向上する。よって、繰り返しの使用に耐えることができる動力伝達部材とすることができる。剛性が強化されることから、動力伝達部材を小型化、薄型化することができ、その結果、測定器自体を小型化、軽量化することができる。
【0023】
内部に電気回路を有するケース体を備える測定器であって、前記ケース体は、ナノスケール物質を含む合成樹脂により形成され、前記ケース体は、導電性を有し、被測定物を載置するための載物台を備え、前記載物台は、ナノスケール物質を含む合成樹脂により形成されていることが好ましい。
【0024】
測定器、例えば、表面性状測定器などの載物台は、精密な表面仕上げと、長い時間でも形状(サイズ)が変化しないだけの剛性および低線膨張係数を有していることが必要とされる。ナノスケール物質を含む合成樹脂は、長い耐用年数でも変化しない剛性と、低線膨張係数を有しているので、載物台の素材として多くの利点を有する。従来の金属や石(花崗岩)で形成される載物台に比べて、ナノスケール物質を含む合成樹脂で形成される載物台は軽いので、測定器自体を軽量化することができる。
また、ナノスケール物質を含んだ合成樹脂は、型転写性が良いので、射出成形した後、表面加工を行う必要がなく、製造工程を簡略化し、低コスト化を図ることができる。より高精度の仕上げをする場合にも、その仕上げ工程を従来よりも大幅に短縮することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
(第1実施形態)
図1に、本発明の測定器の第1実施形態としてノギスを示す。
このノギス1は、基部としての長手状の本尺11と、この本尺11の長手に沿ってスライド可能に設けられた摺動体としてのスライダ12とを備えて構成されている。
本尺11は、長手の一端側に設けられた外側用測定ジョー111および内側用測定ジョー112と、長手に沿って設けられた静電容量式エンコーダのメインスケール113とを備えて構成されている。
本尺11は、外側用測定ジョー111および内側用測定ジョー112を含めてナノスケール物質としてカーボンナノファイバを含んだポリスチレンによる合成樹脂によって一体成形されている。この成形は射出成形によって形成されたものである。
メインスケール113は、導電部113A、絶縁部113Bが本尺11の長手に沿って所定のピッチで形成されたものであり、この導電部113Aおよび絶縁部113Bはカーボンナノファイバを含む合成樹脂で形成されている。
【0028】
スライダ12は、スライダ本体121と、このスライダ12の一端側に設けられ本尺11の外側用測定ジョー111および内側用測定ジョー112とともに被測定物の被測定部位に当接される外側用測定ジョー122および内側用測定ジョー123と、メインスケール113の電極と静電結合してメインスケール113に対する相対移動量を検出する検出ヘッド(不図示)と、スライダ12の内部に設けられ検出ヘッドからの検出値を演算処理する電気回路(不図示)と、演算処理された結果を表示する表示部124とを備えて構成されている。ここで、スライダ本体121が電気回路のケース体となる。
スライダ本体121、外側用測定ジョー122および内側用測定ジョー123は、カーボンナノファイバを含んだポリスチレンによる合成樹脂によって一体成形されている。この成形は射出成形によって形成されたものである。カーボンナノファイバを含んだ合成樹脂は、カーボンナノファイバの添加によって導電性が付与されている。
【0029】
このような構成によれば、以下の効果を奏することができる。
本尺11およびスライダ12は、カーボンナノファイバを含んだ合成樹脂によって形成されているので、剛性の強化、線膨張の抑制、耐磨耗性能の向上、摩擦係数の低下、熱伝導率の向上、導電性または絶縁性の付与などの効果がある。
剛性が強化されることから、測定ジョー(本尺11の外側用測定ジョー111および内側用測定ジョー112、スライダ12の外側用測定ジョー122および内側用測定ジョー123)を剛性を保ちつつ薄く形成することができる。よって、狭い被測定部位であっても測定することができる。また、測定ジョーの剛性が向上すれば、被測定物に測定ジョーを当接させた場合でも、しなりなどの変形を生じることがなく、測定精度を向上させることができる。
【0030】
線膨張係数が小さいので、線膨張による本尺11の変形を抑えることができる。よって、精密な測定を行うことができる。線膨張係数が小さいので、測定の温度に制限を受けることなく高温や低温などの周囲の環境に影響されることなく精密な測定を行うことができる。
【0031】
耐摩耗性能が向上することから、スライダ12を本尺11に対して繰り返し摺動させても摩耗することがなく、耐用年数が長くかつ測定精度を長きに渡って維持することができる。
【0032】
摩擦係数が小さいことから、本尺11とスライダ12の摺動性がよく、潤滑剤なしで使用できる。よって、汚れやゴミがつきにくいものとできる。
熱伝導率がよいことから、本尺11を手で握って測定する場合でも手の熱が瞬時に全体に拡散し、本尺11の場所による膨張の差異を生じることがない。よって、手の熱による測定誤差を生じることがなく、精密な測定を行うことができる。
【0033】
本尺11およびスライダ12が共に合成樹脂で形成されているので、ノギス1を軽いものとすることができる。よって、持ち運びや操作性に優れたものとできる。合成樹脂であるので、金属に比べて、本尺11を握ったときに手になじみやすく、金属アレルギーなどの心配もない。
射出成形によって形成することができるので、ノギス1の製造が簡便であり、低コストで生産することができる。この際、カーボンナノファイバを含む合成樹脂は、型転写性が良いので、射出成形の後に機械加工や表面加工を施す必要がなく簡便である。
【0034】
スライダ本体121が導電性を有するので、スライダ本体121が電磁シールドとして機能し、内部の電気回路が外部の磁界および電界から遮蔽される。その結果、スライダ本体121の内部の電気回路が保護されるので、破損や誤作動を防ぐことができる。
【0035】
(第2実施形態)
図2に、本発明の測定器の第2実施形態としてダイヤルゲージ2を示す。図2は、ダイヤルゲージ2の裏蓋をはずした図である。
このダイヤルゲージ2は、ケース本体21と、このケース本体21の外周壁を貫通して軸方向摺動自在に支持された摺動体としてのスピンドル22と、このスピンドル22の変位を動力伝達する動力伝達部23と、動力伝達部23によって伝達された動力をスピンドル2の変位量として表示する表示部(不図示)とを備えて構成されている。
【0036】
ケース本体21は、スピンドル22を軸方向に摺動案内する摺動案内部材としてのブッシュ211Aと、図2中下方に突設されたステム212とを備えて構成されている。ケース本体21には、内周にスピンドル22の摺動方向に沿って係合溝213が形成されている。ステム212内には、スピンドル22の摺動案内部材としてブッシュ211Bが設けられている。ケース本体21、ブッシュ211A、ステム212およびブッシュ211Bは、カーボンナノファイバを含む合成樹脂によって形成されている。この形成は、射出成形による。
【0037】
スピンドル22は、軸方向に沿って設けられたラック221と、先端に設けられた接触部222とを備えて構成されている。スピンドル22には、その軸方向の中間部分にスピンドル22の軸に対して直角に係合ピン223が設けられ、この係合ピン223はケース本体21の係合溝213に係合されている。このスピンドル22は、ラック221と接触部222を含めてカーボンナノファイバを含んだ合成樹脂によって一体形成されている。この形成は射出成形による。係合ピン223は、カーボンナノファイバを含んだ合成樹脂により射出成形される。
【0038】
動力伝達部23は、スピンドル22のラック221から動力を伝達を伝達する動力伝達部材としての歯車列によって構成されている。歯車列は、スピンドル22のラック221に噛合したピニオン231と、このピニオン231と一体回転する大歯車232と、この大歯車232に噛合して表示部の指針241を回転させる指針軸233と、指針軸233に噛合してバックラッシュを防ぐバックラッシュ防止歯車234とを備えて構成されている。この歯車列の各歯車は、カーボンナノファイバを含んだ合成樹脂によって形成されている。この形成は射出成形による。
【0039】
このようなダイヤルゲージ2によれば、次の効果を奏することができる。
ケース本体21、スピンドル22、動力伝達部23が、カーボンナノファイバを含む合成樹脂によって形成されているので、剛性があり、線膨張係数が小さく、摺動性がよく、耐摩耗性能が向上される。よって、測定精度が向上されるとともに、耐用年数が伸びる。特に、スピンドル22とブッシュ211A、211Bとの間の摺動性、耐摩耗性が向上される。
動力伝達部23の各歯車が、カーボンナノファイバを含んだ合成樹脂によって形成されているので、剛性を維持したまま歯車(ピニオン231、大歯車232、指針軸233、バックラッシュ防止歯車234)を小型化、薄型化することができる。よって、ダイヤルゲージ2自体を小型化することができる。
【0040】
(第3実施形態)
図3に本発明の測定器としての移動量測定器に使用されるリニアエンコーダ3を示す。図3は、このリニアエンコーダ3の断面図である。
このリニアエンコーダ3は、基部としてのフレーム31と、このフレーム31に設けられたスケール32と、フレーム31に対して摺動自在に設けられた摺動体としてのスライド33と、このスライド33と一体的に移動してスケール32に対する相対移動量を検出する検出部34と、スライド33に設けられフレーム31およびスケール32に当接してスライド33の摺動を案内する摺動案内部材としてローラ型の摺動部材35とを備えて構成されている。図3において、スライド33の摺動方向は、紙面に垂直方向である。また、図4に、スライド33の側面図を示す。
【0041】
フレーム31、スライド33および摺動部材35は、カーボンナノファイバを含んだ合成樹脂で形成されている。この形成は射出成形による。ここで、摺動ロ部材35は、カーボンナノファイバを含んだ合成樹脂で形成され、導電性を有する。
摺動部材35は、スケール32と検出部34とのギャップを一定に保つとともに、スライド33の摺動を案内している。
【0042】
このような構成によれば、次の効果を奏することができる。
フレーム31およびスライド33がカーボンナノファイバを含む合成樹脂によって形成されているので、剛性があり、線膨張係数が小さく、摺動性がよく、耐摩耗性能が向上される。よって、測定精度が向上されるとともに、耐用年数が伸びる。
また、射出成形によって形成するので、簡便であり低コスト化を図ることができる。
摺動部材35が、カーボンナノファイバを含んだ合成樹脂によって形成されているので、摺動性能がよく、耐摩耗性が向上される。よって、繰り返しの使用に耐えることができる。
摺動部材35がカーボンナノファイバの添加により導電性を有する合成樹脂で形成されているので、静電気の帯電を防ぐことができる。よって、静電気の帯電によるリニアエンコーダ3の破損や誤作動を防ぎ、また、静電気によるゴミの付着も防ぐことができる。
【0043】
フレーム31が、カーボンナノファイバを含む合成樹脂で形成されているので、このフレーム31に導電性を付与することができる。すると、このフレームが、ケース体として内部のスケール32や検出部34を外部磁界および外部電界から遮蔽する電磁シールドとなる。よって、スケール32および検出部34の誤差動および破損を防ぎ、測定精度を長期に亘って維持することができる。
【0044】
本発明の測定器は、前記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはもちろんである。
本発明は、ノギスやダイヤルゲージに限られず、マイクロメータ、キャリパスゲージ、三次元測定器、表面性状測定器など種々の測定器に適用されるものである。本発明を適用すれば、剛性、線膨張、摺動性、耐摩耗性を向上させ、かつ、射出成形によって簡便に低コストで製造できる測定器とすることができるからである。
三次元測定器や表面性状測定器においては、被測定物を載置する載物台をカーボンナノファイバを含んだ合成樹脂で形成してもよい。また、ゲージブロックもカーボンナノファイバを含んだ合成樹脂で形成してもよい。耐用年数が長く、変形しない載物台、ゲージブロックとすることができる。
【0045】
第1実施形態のノギス1において、メインスケール113は、カーボンナノファイバを含んだ合成樹脂によって形成された絶縁体としての本尺11の表面に、カーボンナノファイバを含んだ合成樹脂によって形成された導電性の電極パターンを設けてもよい。さらに、この工程を二重射出成形によって行ってもよい。
【0046】
第2実施形態において、ブッシュ211Aはケース本体21と一体形成してもよい。カーボンナノファイバを含んだ合成樹脂は、剛性、摺動性、耐磨耗性を備えているので、ケース本体21自体が摺動軸受を兼ねることができる。よって、ブッシュ211を別個に設ける必要はないので、製造工程を簡略化することができ、低コスト化を図ることができる。
【0047】
第3実施形態において、摺動部材35はローラではなく、フレーム31に対して当接する単なる凸面を有する部材でもよい。カーボンナノファイバを含む合成樹脂で摺動部材35を形成すれば耐摩耗性、摺動性が向上されるので、ローラである必要はないからである。
【0048】
上記実施形態においては、本尺11とスライダ12、スピンドル22とブッシュ211など摺動機構の基部および摺動体のいずれもカーボンナノファイバを含んだ合成樹脂で形成されているが、必ずしも両方でなくともどちらか一方のみがカーボンナノファイバを含んだ合成樹脂で形成されていてもよい。また、動力伝達部23においても一部がカーボンナノファイバを含んだ合成樹脂で形成されていてもよい。カーボンナノファイバを含んだ合成樹脂は、剛性、成形性能、線膨張、耐磨耗性、摺動性等で高性能な素材であるので、測定器の構成部材の一部がカーボンナノファイバを含んだ合成樹脂である場合でも、測定器の性能は測定精度、耐用年数など様々な点で向上する。
【0049】
ナノスケール物質としては、カーボンナノファイバに限らず、カーボンナノチューブ、フラーレンなど炭素を主要構成要素とするナノスケール物質を用いることができる。
合成樹脂の母材としては、ポリスチレンやポリカーボネイトなどを用いることができる。
【0050】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明の測定器によれば、簡便に製造でき、かつ、高性能な測定器を提供することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の測定器の第1実施形態としてノギスを示す図である。
【図2】本発明の測定器の第2実施形態としてダイヤルゲージを示す図である。
【図3】本発明の測定器としての移動量測定器のリニアエンコーダの断面図である。
【図4】リニアエンコーダのスライドを示す図である。
【符号の説明】
1 ノギス(測定器)
2 ダイヤルゲージ(測定器)
3 リニアエンコーダ
11 本尺(基部)
12 スライダ(摺動体)
21 ケース本体
22 スピンドル(摺動体)
33 スライド(摺動体)
35 摺動部材(摺動案内部材)
121 スライダ本体(ケース体)
211 ブッシュ(摺動案内部材)
221 ラック(動力伝達部材)
231 ピニオン(動力伝達部材)
232 大歯車(動力伝達部材)
233 指針軸(動力伝達部材)
234 バックラッシュ防止歯車(動力伝達部材)

Claims (4)

  1. 内部に電気回路を有するケース体を備える測定器であって、
    前記ケース体は、ナノスケール物質を含む合成樹脂により形成され、
    前記ケース体は、導電性を有し、
    基部と、前記基部に対して摺動自在に設けられた摺動体とを有する摺動機構を備え、
    前記基部および前記摺動体の少なくともいずれか一方は、ナノスケール物質を含む合成樹脂により形成されていることを特徴とする測定器。
  2. 内部に電気回路を有するケース体を備える測定器であって、
    前記ケース体は、ナノスケール物質を含む合成樹脂により形成され、
    前記ケース体は、導電性を有し、
    基部と、前記基部に対して摺動自在に設けられた摺動体と、前記基部および前記摺動体の対向面のいずれか一方に設けられ他方に当接して前記摺動体を案内する摺動案内部材とを備え、
    前記摺動案内部材は、ナノスケール物質を含む合成樹脂により形成されていることを特徴とする測定器。
  3. 内部に電気回路を有するケース体を備える測定器であって、
    前記ケース体は、ナノスケール物質を含む合成樹脂により形成され、
    前記ケース体は、導電性を有し、
    動力を伝達する動力伝達部材を備え、
    前記動力伝達部材は、ナノスケール物質を含む合成樹脂により形成されていることを特徴とする測定器。
  4. 内部に電気回路を有するケース体を備える測定器であって、
    前記ケース体は、ナノスケール物質を含む合成樹脂により形成され、
    前記ケース体は、導電性を有し、
    被測定物を載置するための載物台を備え、
    前記載物台は、ナノスケール物質を含む合成樹脂により形成されていることを特徴とする測定器。
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