JP3988491B2 - メタクリル樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光拡散性および難燃性を有するメタクリル樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光拡散剤を配合したメタクリル樹脂は、照明カバーの材料等、光拡散性樹脂材料として各種用途に好適に用いられているが、比較的燃えやすいという欠点を有するため、従来、メタクリル樹脂に、光拡散性に加えて難燃性を付与することが検討されている。例えば、特公昭57−22930号公報には、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸を含む単量体を、水と、セバシン酸ジオクチルのような高級アルキルエステルと、必要によりトリス(ジブロモプロピル)ホスフェートのようなリン酸エステルと混合して、注型重合させることにより、樹脂板を製造することが提案されている。また、特開平5−311026号公報には、メタクリル樹脂、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートのようなリン系難燃剤、硫酸バリウムおよび酸化チタンからなる樹脂組成物が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来提案されているメタクリル樹脂組成物は、光拡散性および難燃性は有するものの、耐熱性が必ずしも十分でなく、使用環境下で変形しやすいことが問題となることがあった。また、リン酸エステルとして含ハロゲンリン酸エステルを配合すると、難燃性は向上するものの、燃焼時のハロゲンガスの発生や金属に対する腐食性が問題となることがあった。そこで本発明の目的は、光拡散性および難燃性を有し、耐熱性に優れ、燃焼時のハロゲンガスの発生や金属に対する腐食性が低減されたメタクリル樹脂組成物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、メタクリル酸メチルを主体とする単量体を、特定の重合体、光拡散剤および特定のリン酸エステルの存在下に重合させることにより、上記目的に適うメタクリル樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、メタクリル酸メチルを主体とする単量体を、メタクリル酸メチルを主体とする重合体、光拡散剤、および分子量に占めるリンの割合が15%以上である非ハロゲン系リン酸エステルの存在下に、重合させてなるメタクリル樹脂組成物に係るものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で用いるメタクリル酸メチルを主体とする単量体とは、メタクリル酸メチルを50重量%以上含むものであり、実質的にメタクリル酸メチルのみからなるものであってもよいし、メタクリル酸メチル50重量%以上とメタクリル酸メチル以外の単量体50重量%以下との混合物であってもよい。
【0006】
このメタクリル酸メチル以外の単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシルのようなアクリル酸エステル類;メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルのようなメタクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、スチレン等の、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1つ有する単官能単量体や、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に少なくとも2つ有する多官能単量体が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0007】
上記メタクリル酸メチルを主体とする単量体を、特定の重合体、光拡散剤、および特定の非ハロゲン系リン酸エステルの存在下に重合させることにより、本発明の樹脂組成物を得ることができる。ここで用いる重合体は、メタクリル酸メチルを主たる単量体とするものである。また非ハロゲン系リン酸エステルは、分子内にハロゲン原子を有さず、かつ分子量に占めるリンの割合が15%以上のものである。
【0008】
メタクリル酸メチルを主たる単量体とする重合体とは、メタクリル酸メチルを50重量%以上含む単量体の重合体であり、実質的にメタクリル酸メチルの単独重合体であってもよいし、メタクリル酸メチル50重量%以上とメタクリル酸メチル以外の単量体50重量%以下との共重合体であってもよく、共重合体である場合、メタクリル酸メチル以外の単量体としては、前記と同様の単官能単量体や多官能単量体を例示することができる。
【0009】
この重合体の使用量は、この重合体と前記メタクリル酸メチルを主体とする単量体との合計100重量部を基準として、好ましくは2〜25重量部であり、さらに好ましくは3〜20重量部である。
【0010】
本発明で用いる光拡散剤は、基材となるメタクリル樹脂と屈折率が異なる無機系または有機系の微粒子であることができる。無機系の微粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、ガラス、タルク、マイカ、ホワイトカーボン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。また、有機系の微粒子としては、例えば、架橋スチレン系重合体粒子、高分子量スチレン系重合体粒子、架橋アクリル系重合体粒子、高分子量アクリル系重合体粒子、架橋シロキサン系重合体粒子等が挙げられる。これらの粒子は、表面処理が施されたものであってもよいし、また、これらの粒子は、必要に応じて2種以上組み合わせて用いることもできる。これらの光拡散剤は、一般に、その平均粒子径が1〜30μm程度の範囲にあるのが有利である。
【0011】
この光拡散剤の使用量は、樹脂組成物に求められる光拡散性能や光透過性等に応じて適宜調整されるが、通常、前記メタクリル酸メチルを主体とする単量体とメタクリル酸メチルを主体とする単量体の重合体との合計100重量部を基準として、0.5〜10重量部程度である。
【0012】
本発明で用いる非ハロゲン系リン酸エステルは、分子内にクロロ基やブロモ基のようなハロゲノ基を有さないリン酸エステルであり、そしてかかるリン酸エステルとして、分子量に占めるリンの割合が15%以上のものを用いる。このリン酸エステルは、縮合リン酸エステルであってもよく、また、リンに結合した水酸基を有する酸性エステルであってもよい。
【0013】
このように本発明では、非ハロゲン系のリン酸エステルであって、その分子量に占めるリンの割合が比較的多いもの、換言すれば、リン酸エステルを構成するアルコール部分の嵩が小さいものを使用し、これをメタクリル酸メチル主体の重合体および光拡散剤とともに、メタクリル酸メチルを主体とする単量体の重合時から存在させることにより、得られる樹脂組成物の耐熱性を確保しながら、それに難燃性を付与している。このようなリン含有量の多い非ハロゲン系リン酸エステルを用いないと、樹脂組成物において十分な耐熱性が得られないことがある。
【0014】
上記リン酸エステルの代表的な例としては、トリメチルホスフェート(分子量140で、その中に占めるリンの割合は22%)、トリエチルホスフェート(分子量182で、その中に占めるリンの割合は17%)、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(CH2=CH−CO−O−CH2−CH2−O−PO(OH)2;分子量196で、その中に占めるリンの割合は16%)等が挙げられる。オルトリン酸エステルの中で、リンの占める割合が最も多いものとして、モノメチルアシッドホスフェート(CH3OPO(OH)2;分子量112で、その中に占めるリンの割合は28%)があるが、分子量に占めるリンの割合があまり多いと、取り扱い性の点で好ましくないことがあるので、リン酸エステルの分子量に占めるリンの割合は、25%程度までであるのが適当である。
【0015】
このリン酸エステルの使用量は、樹脂組成物に求められる難燃性能等に応じて適宜調整されるが、通常、前記メタクリル酸メチルを主体とする単量体とメタクリル酸メチルを主体とする重合体との合計100重量部を基準として、難燃性の観点から0.5重量部以上であり、耐熱性の観点から10重量部以下である。
【0016】
以上のメタクリル酸メチルを主体とする単量体、メタクリル酸メチルを主体とする重合体、光拡散剤、および非ハロゲン系リン酸エステルの各成分を含有する重合性混合物を重合反応に付することにより、本発明の樹脂組成物を調製することができる。この重合性混合物は、例えば、メタクリル酸メチルを主体とする単量体を部分重合させることにより得られた部分重合体シロップを、光拡散剤および上記リン酸エステルと混合することにより調製してもよいし、メタクリル酸メチルを主体とする単量体を塊状重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合等の方法で重合させることにより得られた重合体を、メタクリル酸メチルを主体とする単量体、光拡散剤および上記リン酸エステルと混合することにより調製してもよい。
【0017】
上記重合性混合物を重合反応に付する際、該混合物に含有させることができるラジカル重合開始剤としては、例えば、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルパーオキシジカーボネートのような過酸化物系開始剤や、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)のようなアゾ系開始剤等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。また、上記過酸化物開始剤を、アミン類や、メルカプタン類のような還元性化合物と組み合わせることにより、レドックス系開始剤を構成させてもよい。
【0018】
また、上記重合性混合物には、必要に応じて、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、染料等の添加剤を、1種または2種以上含有させてもよい。
【0019】
上記重合性混合物の重合は、例えば、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合等の方法により行うことができるが、中でも、塊状重合、特に注型重合により行うことが好ましく、この注型重合により、本発明の樹脂組成物からなる樹脂板を製造することができる。
【0020】
この注型重合は、通常、上記重合性混合物をセルに注入し、熱処理することにより行われる。このセルは、例えば、ガラス板や金属板等の板2枚と軟質シール材から構成されるものであってもよいし、2枚のステンレス製連続ベルトから構成される連続セルであってもよい。セルの空隙の間隔は所望の厚さの樹脂板が得られるように適宜調整されるが、一般的には0.1〜30mmである。
【0021】
上記熱処理は、温風、温水、スチーム、赤外線ヒーター等の熱源を用いて行うことができる。この熱処理の温度は一般的には50〜120℃であり、また熱処理の時間は一般的には1〜数十時間である。
【0022】
以上のようにして得られる注型板に代表される本発明の樹脂組成物は、例えば照明材料、光学材料、建築材料、装飾材料等として、好適に用いることができ、特に照明カバー、看板、ディスプレイ用光拡散板の材料として好適に用いることができる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、作製した樹脂板の難燃性の評価は、社団法人 日本照明器具工業会規格 JIL 5502−1987改正の試験方法Cに準拠して、水平燃焼速度を測定することにより行った。また、作製した樹脂板の耐熱性の評価は、JISK 7206に準拠して、針が1mm浸入したときの温度(ビカット軟化点:VSP)を測定することにより行った。
【0024】
実施例1〜6、比較例1
メタクリル酸メチル100重量部を、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.002重量部と混合し、80℃にて予備重合させ、5重量%の重合体を含有するシロップを得た。このシロップを、水酸化アルミニウム微粒子(光拡散剤)1.2重量部、酸化チタン微粒子(光拡散剤)0.16重量部、ならびに表1に示す種類および量のリン酸エステルと混合し、さらに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.08重量部、紫外線吸収剤0.01重量部、および離型剤0.05重量部と混合した。この混合物を、650mmHg(87kPa)にて30分脱気した後、ガラス板(厚さ10mm、30cm角)2枚と塩化ビニール樹脂製ガスケットより構成されるガラスセルに注入し、72℃にて3時間、次いで120℃にて1時間、熱風循環炉中で重合させ、厚さ2mmの樹脂板を作製した。得られた樹脂板の水平燃焼速度およびVSPを測定した結果を、表1に示す。
【0025】
【表1】
Figure 0003988491
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、光拡散性および難燃性を有し、耐熱性に優れ、燃焼時のハロゲンガスの発生や金属に対する腐食性が低減されたメタクリル樹脂組成物が提供される。

Claims (3)

  1. メタクリル酸メチルを50重量%以上含む単量体を、メタクリル酸メチルを50重量%以上含む単量体の重合体、光拡散剤、および前記の単量体と重合体との合計100重量部を基準として1〜3重量部の分子量に占めるリンの割合が15%以上である非ハロゲン系リン酸エステルの存在下に、重合させてなることを特徴とするメタクリル樹脂組成物。
  2. 光拡散剤が、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、ガラス、タルク、マイカ、ホワイトカーボン、酸化マグネシウムおよび酸化亜鉛から選ばれる無機系微粒子または、架橋スチレン系重合体粒子、高分子量スチレン系重合体粒子、架橋アクリル系重合体粒子、高分子量アクリル系重合体粒子および架橋シロキサン系重合体粒子から選ばれる有機系微粒子である請求項1記載の組成物。
  3. 非ハロゲン系リン酸エステルが、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェートおよび2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートから選ばれる請求項1または2記載の組成物。
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