JP6489210B2 - (メタ)アクリル系樹脂組成物、樹脂成形体、樹脂積層体及び(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

(メタ)アクリル系樹脂組成物、樹脂成形体、樹脂積層体及び(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、(メタ)アクリル系樹脂組成物、樹脂成形体、樹脂積層体及び前記(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法に関する。
本願は、2016年3月24日に、日本出願された特願2016−059809号、2016年3月31日に、日本出願された特願2016−070516号、2016年4月18日に、日本出願された特願2016−082736号、2016年4月19日に、日本出願された特願2016−083664号、2017年2月2日に、日本出願された特願2017−017218号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
メタクリル酸メチルを主成分とする(メタ)アクリル系樹脂は、透明性、耐熱性及び耐侯性に優れ、且つ、機械的強度、熱的性質、成形加工性等においてバランスのとれた性能を有している。そのために、照明材料、光学材料、看板、ディスプレイ、装飾部材、建築部材等の多くの用途に使用されており、これらの用途には難燃性と耐熱性が求められている。
通常、(メタ)アクリル系樹脂に難燃性を付与するために難燃剤を添加すると、透明性や耐熱性が低下するという問題があった。そこで、これを損なわずに、難燃性を付与する検討が行われてきた。
例えば、特許文献1には、脂環式炭化水素基を側鎖に有する単量体を含有したメタクリル樹脂とハロゲン化リン酸エステルからなる難燃性メタクリル樹脂板が提案されており、実施例には脂環式炭化水素基を側鎖に有する単量体としてジシクロペンタニルメタクリレートが開示されている。
また、特許文献2及び特許文献3には、メチルメタクリレートとイソボルニル(メタ)アクリレートを含有する(メタ)アクリル系重合体と、難燃剤としてリン系化合物を含有する難燃性メタクリル樹脂板が提案されている。
特開2011−046835号公報 特開2015−086250号公報 国際公開第2016/063898号
しかしながら、特許文献1に記載のメタクリル樹脂板では、耐熱性は得られるものの、難燃性は十分ではない。
特許文献2に記載のメタクリル樹脂板では、難燃性が向上するものの、樹脂板の耐熱性は十分ではない。
さらに、特許文献3に記載のメタクリル樹脂板では、難燃性と耐熱性を両立することが可能であったが、ある特定の製造方法において難燃剤として用いたリン系化合物が、メタクリル樹脂板中で凝集する場合があり、そのために、難燃性に優れた樹脂板を安定に製造できないことがあった。
このような状況において、(メタ)アクリル系樹脂の特徴である耐熱性を損なわずに、高い難燃性を有する樹脂成形体、及び前記樹脂成形体を製造するための(メタ)アクリル系樹脂組成物、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物を安定に製造する技術が求められていた。
また、自動車用部品、照明用品、各種パネル等の用途では、高い難燃性に加え、耐衝撃性や耐擦傷性を求められることがあった。
本発明はこれらの問題点を解決することを目的とする。すなわち、本発明の第一の目的は、良好な耐熱性を有し、さらに高い難燃性を有する(メタ)アクリル系樹脂組成物及び前記(メタ)アクリル系樹脂組成物からなる樹脂成形体を提供することにある。
本発明の第二の目的は、上記の(メタ)アクリル系樹脂組成物を安定に製造する方法を提供することにある。
本発明の第三の目的は、高い難燃性を有し、さらに高い耐衝撃性を有する樹脂成形体及び前記樹脂成形体を製造するための(メタ)アクリル系樹脂組成物を提供することにある。
本発明の第四の目的は、高い難燃性を有し、さらに高い耐擦傷性を有する樹脂成形体及び前記樹脂成形体を製造するための(メタ)アクリル系樹脂組成物を提供することにある。
上記課題は、下記の発明[1]〜[27]により解決される
[1] (メタ)アクリル系重合体(P)、リン系難燃剤(C)及び両親媒性化合物(E)を含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、
前記(メタ)アクリル系重合体(P)が、芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を側鎖に有する(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位を含む重合体であり、
前記(メタ)アクリル系樹脂組成物中における、前記リン系難燃剤(C)の分散粒子径が0.8μm以下であり、
前記(メタ)アクリル系樹脂組成物が、前記リン系難燃剤(C)を、前記(メタ)アクリル系重合体(P)100質量部に対して、5.0質量部以上35.0質量部以下を含有し、且つ、JIS K 6911−1995の耐燃性試験A法において3分以内で自消する難燃性を有し、前記リン系難燃性剤(C)が、リン酸エステル及びホスホン酸エステルから選ばれる少なくとも1種であり、前記両親媒性化合物(E)が、陰イオン系界面活性剤である、(メタ)アクリル系樹脂組成物。
] 前記(メタ)アクリル系樹脂組成物が、前記(メタ)アクリル系重合体(P)100質量部に対して、両親媒性化合物(E)0.01質量部超2.0質量部以下を含有する、[]に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
] 前記陰イオン系界面活性剤が、アルキルスルホコハク酸のアルカリ金属塩である、[]に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
] 前記アルキルスルホコハク酸のアルカリ金属塩が、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムである、[]に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
] 前記(メタ)アクリル系重合体(P)が、(メタ)アクリル系重合体(P)の総質量に対し、メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位19.95質量%以上84.95質量%以下と、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位3.6質量%以上80.0質量%以下を含む重合体である、[1]〜[]のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
] 前記(メタ)アクリル系重合体(P)が、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位として、
芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を側鎖に有するメタクリル酸エステル(M1)由来の繰り返し単位と、
芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を側鎖に有するアクリル酸エステル(M2)由来の繰り返し単位とを含み、且つ、
前記メタクリル酸エステル(M1)由来の繰り返し単位10.0質量%以上79.5質量%以下、及び、
前記アクリル酸エステル(M2)由来の繰り返し単位0.50質量%以上20.0質量%以下を含む、[]に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
] 前記(メタ)アクリル系重合体(P)が、(メタ)アクリル系重合体(P)の総質量に対し、分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する単量体(B)由来の構造単位0.05質量%以上0.40質量%以下を含む重合体である、[]または[]に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
] 下記の測定方法1で測定した、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位の分解生成物のピークの半値幅が26℃以下である、[1]〜[]のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
<測定方法1>
発生ガス分析測定装置(EGA−MS)を用いて、(メタ)アクリル系樹脂組成物2mgを、ヘリウム雰囲気下(流速20ml/分)、昇温速度10℃/分にて、分解生成物の発生気体の質量分析を行ない、得られた温度−クロマトグラム曲線における、分解生成物のピークの半値幅を求める。
] 下記の測定方法2で得られた前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位の分解生成物の発生温度及び前記リン系難燃剤(C)の分解生成物の発生温度が、下記式(1)をみたす、[1]〜[]のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
|Tm−Tc|≦40 ・・・(1)
Tc:リン系難燃剤(C)分解生成物の発生温度(単位:℃)
Tm:(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位の分解生成物の発生温度(単位:℃)
<測定方法2>
発生ガス分析測定装置(EGA−MS)を用いて、(メタ)アクリル系樹脂組成物2mgを、ヘリウム雰囲気下(流速20ml/分)、昇温速度10℃/分にて、分解生成物の発生気体の質量分析を行ない、得られた温度−クロマトグラム曲線における、分解生成物の発生温度を求める。
10] 前記測定方法2で得られた前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位の分解生成物の発生温度及び前記メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位の分解生成物の発生温度が、下記式(2)をみたす、[]に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
100≦Ta−Tm ・・・(2)
Ta:メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位の分解生成物の発生温度(単位:℃)
11] 前記半値幅が21℃以下である、[]〜[10]のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
12] 固体NMR測定装置でスピンロック交差分極法により観測した緩和スペクトルのMC(τ)とMP(τ)を用いて下記式(a)より計算される値D1(%)について、スピンロック時間τ=30msecにおける値D1(%)が6.0(%)以下である、[1]〜[11]のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
D1(%)=|MC(τ)−MP(τ)|/MC(τ)×100・・・(a)
MC(τ):下記(A)及び(B)の値の平均値
(A)スピンロック時間τsecにおける13C核緩和スペクトルの160ppm〜180ppmに観測されるカルボニル基の炭素に対応するスペクトルの面積を、スピンロック時間10μsecにおける13C核緩和スペクトルの160ppm〜180ppmに観測されるカルボニル基の炭素に対応するスペクトルの面積で除した値。
(B)スピンロック時間τsecにおける13C核緩和スペクトルの30ppm〜65ppmに観測されるメチレン基の炭素に対応するスペクトルの面積を、スピンロック時間10μsecにおける13C核緩和スペクトルの30ppm〜65ppmに観測されるメチレン基の炭素に対応するスペクトルの面積で除した値。
MP(τ):スピンロック時間τsecにおける31P核緩和スペクトルの−40〜40ppmに観測されるリン系難燃剤(C)のリン原子に対応するスペクトルの面積を、スピンロック時間10μsecにおける31P核スペクトルの−40〜40ppmに観測されるリン系難燃剤(C)のリン原子に対応するスペクトルの面積で除した値。
13] 前記(メタ)アクリル系樹脂組成物において前記式(a)より計算される値D1(%)について、スピンロック時間τ=16msec、20msec、25msec、30msecにおける各々の値D1(%)の平均値D2(%)が7.0%以下である、[12]に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
14] 前記リン酸エステル及びホスホン酸エステルの重量平均分子量が200以上500以下である、[12]又は[13]に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
15] 前記(メタ)アクリル系樹脂組成物が、下記に記載の多重構造アクリル系共重合体粒子(D1)又はアクリル系ブロック共重合体(D2)から選ばれる少なくとも一種類の耐衝撃向上剤(D)を含む、[1]〜[14]のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
多重構造アクリル系共重合体粒子(D1):架橋構造を有するゴム状共重合体を含むエラストマー粒子(d1−1)の表面に、硬質樹脂層(d1−2)が形成された構造を有する多重構造アクリル系共重合体粒子。
アクリル系ブロック共重合体(D2):メタクリル酸エステル重合ブロック(d2−1)10質量%以上60質量%以下とアクリル酸エステル重合ブロック(d2−2)40質量%以上90質量%以下とを有するブロック共重合体。
16] 前記(メタ)アクリル系樹脂組成物が、前記(メタ)アクリル系重合体(P)100質量部に対して、前記耐衝撃向上剤(D)を2.0質量部以上50質量部以下含む、[15]記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
17] 前記多重構造アクリル系共重合体粒子(D1)において、前記エラストマー粒子(d1−1)を構成するゴム状共重合体がアクリル酸アルキルエステルを主成分とする(共)重合体からなり、前記硬質樹脂層(d1−2)がメタクリル酸エステルを主成分とする(共)重合体を含む、[16]記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
18] [1]〜[17]のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物からなる、樹脂成形体。
19] [18]に記載の樹脂成形体の少なくとも一方の表面に硬化被膜(F)を備えた、シート状の樹脂積層体であって、
前記硬化被膜(F)が、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する多官能単量体(F1)と、(メタ)アクリロイル基を2個有する多官能単量体(F2)を含有する硬化性組成物(f)の硬化物からなる、樹脂積層体。
20] 前記硬化性組成物(f)が前記多官能単量体(F1)50質量%以上80質量%以下と、前記多官能単量体(F2)20質量%以上50質量%以下を含有する、[19]に記載の樹脂積層体。
21] [1]〜[14]のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法であって、下記の工程1と工程2を含む(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法。
工程1:芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を側鎖に有する(メタ)アクリル酸エステル(M)単量体を含む単量体組成物(X1)と両親媒性化合物(E)を含有する混合物(X2)に、リン系難燃剤(C)を添加して重合性組成物(X3)を得る工程。
工程2:前記重合性組成物(X3)を重合する工程。
22] [21]に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法であって、前記工程1において、前記混合物(X2)が、両親媒性化合物(E)と、多重構造アクリル系共重合体粒子(D1)又はアクリル系ブロック共重合体(D2)から選ばれる少なくとも一種類の耐衝撃向上剤(D)を含有する、(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法。
多重構造アクリル系共重合体粒子(D1):架橋構造を有するゴム状共重合体を含むエラストマー粒子(d1−1)の表面に、硬質樹脂層(d1−2)が形成された構造を有する多重構造アクリル系共重合体粒子。
アクリル系ブロック共重合体(D2):メタクリル酸エステル重合ブロック(d2−1)10質量%以上60質量%以下とアクリル酸エステル重合ブロック(d2−2)40質量%以上90質量%以下とを有するブロック共重合体。
23] 前記単量体組成物(X1)が、単量体組成物(X1)の総質量に対し、メタクリル酸メチル単量体19.95質量%以上84.95質量%以下と、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)3.6質量%以上80.0質量%以下を含む、[21]に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法。
24] 前記単量体組成物(X1)が、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)として、
芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を側鎖に有するメタクリル酸エステル(M1)と、
芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を側鎖に有するアクリル酸エステル(M2)とを含み、且つ、
前記メタクリル酸エステル(M1)が10.0質量%以上79.5質量%以下、
前記アクリル酸エステル(M2)が0.50質量%以上20.0質量%以下である、[23]に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法。
25] 前記単量体組成物(X1)が、分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する単量体(B)0.05質量%以上0.40質量%以下を含む、[23]または[24]に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法。
26] 前記単量体組成物(X1)が、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位を含む重合体(P1)を予め含む、[21]〜[25]のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法。
27] 前記重合性組成物(X3)が、前記単量体組成物(X1)を100質量部として、前記リン系難燃剤(C)を5.0質量部以上35.0質量部以下と、前記両親媒性化合物(E)0.01質量部以上2.0質量部以下を含有する、[21]〜[26]のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法。
本発明により、良好な耐熱性を有し、さらに高い難燃性を有する(メタ)アクリル系樹脂組成物、及び前記(メタ)アクリル系樹脂組成物からなる樹脂成形体を安定に提供することができる。
また、本発明により、高い難燃性と高い耐衝撃性を有する(メタ)アクリル系樹脂組成物、及び前記(メタ)アクリル系樹脂組成物からなる樹脂成形体を安定に提供することができる。
また、本発明により、高い難燃性と高い耐擦傷性を有する(メタ)アクリル系樹脂組成物、及び前記(メタ)アクリル系樹脂組成物からなる樹脂成形体を安定に提供することができる。このような樹脂成形体は、看板等の高い難燃性が要求される用途に好適である。
プロトンスピンロック交差分極法により、スピンロック時間を可変して、13C核と31P核スペクトルを検出するためのパルスシークエンスである。 本発明の樹脂積層体の一例を示す側断面図である。硬化被膜が樹脂基材の一方の表面に積層した樹脂積層体の断面を示した模式図である。 本発明の樹脂積層体の一例を示す側断面図である。硬化被膜が樹脂基材の両方の表面に積層した樹脂積層体の断面を示した模式図である。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において、「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」は、各々「アクリレート」及び「メタクリレート」から選ばれる少なくとも1種並びに「アクリル酸」及び「メタクリル酸」から選ばれる少なくとも1種を意味する。
また、「単量体」は未重合の化合物を意味し、「繰り返し単位」は単量体が重合することによって形成された前記単量体に由来する単位を意味する。繰り返し単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換されたものであってもよい。
また、「質量%」は全体量100質量%中に含まれる所定の成分の含有量を示す。
<(メタ)アクリル系樹脂組成物>
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物の実施態様の一例として、後述する(メタ)アクリル系重合体(P)と後述するリン系難燃剤(C)及び後述する両親媒性化合物(E)を含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、(メタ)アクリル系樹脂組成物が、前記(メタ)アクリル系重合体(P)100質量部に対して、リン系難燃剤(C)を5.0質量部以上35.0質量部以下と、後述する両親媒性化合物(E)を0.01質量部以上2.0質量部以下とを含有し、且つ、JIS K 6911−1995の耐燃性試験A法において3分以内で自消する難燃性を有する(メタ)アクリル系樹脂組成物である。
また、別の実施態様の一例として、(メタ)アクリル系重合体(P)と後述するリン系難燃剤(C)及び後述する両親媒性化合(E)を含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、前記(メタ)アクリル系重合体(P)が、後述する(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位を含む重合体であり、(メタ)アクリル系樹脂組成物中における、リン系難燃剤(C)の分散粒子径が0.8μm以下であり、且つ、JIS K 6911−1995の耐燃性試験A法において3分以内で自消する難燃性を有する、(メタ)アクリル系樹脂組成物である。
(メタ)アクリル系樹脂組成物が、前記試験で3分以内で自消する難燃性を有するなら、火災発生時の延焼や類焼を防止できるので安全性の観点から好ましく、ガソリンスタンド等のサイン看板等での使用に適している。
前記(メタ)アクリル系重合体(P)は、後述する(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位を含む重合体とすることができる。
<リン系難燃剤(C)>
本発明では、樹脂成形体の難燃性を高めるために、(メタ)アクリル系樹脂組成物がリン系難燃剤を構成成分の一つとして含むことが好ましい。
リン系難燃剤の分散粒子径の上限は、特に制限されるものではないが、樹脂成形体の難燃性が良好となることから0.8μm以下とすることが好ましく、0.1μm以下がより好ましく、0.05μm以下がさらに好ましい。分散粒子径の下限は、特に制限されるものではなく、分散粒子径は小さいほど好ましい。
リン系難燃剤(C)の分散粒子径を制御する方法としては、例えば、前記両親媒性化合物の種類又は含有量、若しくは前記(メタ)アクリル酸エステル(M)の種類、並びに後述する(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法において記載する両親媒性化合物(E)とリン系難燃剤(C)を添加するタイミングを調整することが挙げられる。
なお、前記分散粒子径は、後述する分散粒子径の測定方法により得ることができる。
なお、本発明において、分散粒子径とは、光学顕微鏡を用いて倍率1000倍で観察された任意の分散粒子又は凝集粒子20個について、分散粒子の一次粒子径又は凝集粒子の二次粒子径を測定し、平均した値である。なお、上記の凝集粒子とは、分散粒子(一次粒子)が接触して形成された二次粒子のことをいう。
このような(メタ)アクリル系樹脂組成物においては、前記(メタ)アクリル系重合体(P)100質量部に対して、前記リン系難燃剤(C)を好ましくは、5.0質量部以上35.0質量部以下、より好ましくは10.0質量部以上30.0質量部以下、更に好ましくは15.0質量部以上25.0質量部以下を含有することができる。
(メタ)アクリル系重合体100質量部に対するリン系難燃剤(C)の含有量の下限は5.0質量部以上であれば、樹脂成形体の難燃性が良好となる。また、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対するリン系難燃剤(C)の含有量の上限は35.0質量部以下であれば、樹脂成形体の耐熱性は良好となる。
リン系難燃剤(C)としては、リン酸エステル系化合物(以下、「リン酸エステル」と略する。)やホスホン酸エステル系化合物(以下、「ホスホン酸エステル」と略する。)を挙げることができる。具体的には、以下の化合物を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、単独使用で又は2種以上を併せて使用できる。
1)ハロゲン非含有リン酸エステル:
モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、メチルアッシドホスフェート、エチルアッシドホスフェート、ブチルアッシドホスフェート、ジブチルホスフェート、トリメチルフォスフェート(TMP)、トリエチルフォスフェート(TEP)、トリフェニルフォスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート(EHDP)等の芳香族リン酸エステル、およびそれらの誘導体化合物や、それらの縮合物。
オキシ塩化リンと二価のフェノール系化合物、及びフェノール(またはアルキルフェノール)との反応生成物。例えばレゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェート、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート等の芳香族縮合リン酸エステル、およびそれらの誘導体化合物や、それらの縮合物。
2)ハロゲン含有リン酸エステル:トリス(クロロエチル)フォスフェート、トリス(クロロプロピル)フォスフェート、トリス(ジクロロプロピル)フォスフェート、トリス(ジブロモプロピル)フォスフェート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)−2,3−ジクロロプロピルフォスフェート、ビス(クロロプロピル)オクチルフォスフェート等、およびそれらの誘導体化合物や、それらの縮合物。
3)ホスホン酸エステル:ジメチルビニルホスホナート、ジエチルビニルホスホナート、ジフェニルビニルホスホナート、ジフェニルビニルホスフィンオキシド等、およびそれらの誘導体化合物や、それらの縮合物。
ハロゲン非含有リン酸エステルとしては、例えば、城北化学(株)製の「JAMP−2」、「JAMP−4」、「JAMP−8」、「JAMP−12」、「JP−501」、「JP−502」、「JP−504」、「JP−504A」、「JP−506H」、「JP−508」、「JP−512」、「JP−513」、「JP−518O」、「JP−524R」、「DBP」、「LB−58」、大八化学工業(株)製の「TMP」、「TEP」、「TPP」、「TCP」、「TXP」、「CDP」、「PX−110」、「#41」、「CR−733S」、「CR−741」、「PX−200」、「DAIGUARD−400/580/610」、ハロゲン含有リン酸エステルとしては、大八化学工業(株)製の「TMCPP」、「CRP」、「CR−900」、「CR−504L」、「CR−570」、「DAIGUARD−540」等の市販品を用いることができる。
ホスホン酸エステルとしては、例えば、片山化学工業(株)製の「Vシリーズ」、丸菱油化工業(株)製の「ノンネン73」等の市販品を用いることができる。
上述したリン系難燃剤(C)の中でも、リン酸エステル及びホスホン酸エステルから選ばれる少なくとも1種は、両親媒性化合物(E)により、凝集粒子の形成が抑制されやすく、その結果、樹脂成形体の難燃性が良好となることから好ましい。リン酸エステルとして、具体的には、ハロゲン含有リン酸エステルが挙げられる。
難燃性向上効果を有するリン系難燃剤(C)と、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位及び後述する単量体(B)由来の構造単位との相乗効果により、樹脂成形体の難燃性を向上できる。
<両親媒性化合物(E)>
本発明における(メタ)アクリル系樹脂組成物は、両親媒性化合物(E)を構成成分の1つとして含む。両親媒性化合物(E)を含むことにより、リン系難燃剤(C)の凝集粒子は抑制され、難燃性に優れた(メタ)アクリル系樹脂組成物を得ることができる。
ここで両親媒性化合物とは、1つの分子内に「親水基」と「疎水基(親油基)」の両方を持つ化合物のことをいう。ここで、「親水基」とは、後述する(メタ)アクリル系重合体(P)よりもリン系難燃剤(C)に対して高い親和性を有する部位のことをいい、「疎水基(親油基)」とはリン系難燃剤(C)よりも前記(メタ)アクリル系重合体(P)に対して高い親和性を有する部位のことをいう。
両親媒性化合物を含むことにより、樹脂成形体の難燃性が優れたものとなる理由は定かでないが、両親媒性化合物の親水基の部位がリン系難燃剤(C)に配位しやく、疎水基(親油基)の部位が(メタ)アクリル系重合体(P)に配位しやすいため、リン系難燃剤(C)が凝集粒子を形成せず、樹脂組成物に均一に微分散又は溶解しやすくなるためと推察される。
両親媒性化合物(E)の含有量の下限は、特に制限されるものではないが、リン系難燃剤(C)が凝集粒子を形成せず、樹脂成形体の難燃性が良好となることから、前記(メタ)アクリル系重合体(P)100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上がさらに好ましい。両親媒性化合物(E)の含有量の下限は、特に制限されるものではないが、樹脂成形体の難燃性を良好に維持できることから、2.0質量部以下が好ましく、0.6質量部以下がより好ましく、0.3質量部以下がさらに好ましい。
また、本発明においては、前記両親媒性化合物(E)として、陰イオン系界面活性剤を用いることにより、樹脂成形体の難燃性をより優れたものにできる。ここで陰イオン系界面活性剤とは、構造的に陰イオン性の親水基を持つ化合物のことをいう。樹脂成形体の難燃性が優れたものとなる理由は定かでないが、陰イオン系界面活性剤の陰イオン性の親水基の部位がリン系難燃剤(C)により配位しやすいため、リン系難燃剤(C)が凝集粒子を形成せず、樹脂組成物により均一に微分散又は溶解しやすくなるためと推察される。
なお、上述した両親媒性化合物(E)の説明では、陰イオン系界面活性剤について述べているが、使用するリン系難燃剤(C)の構造や特性に応じて、ノニオン系界面活性剤や、アニオン系界面活性剤を用いることももちろん可能であることは言うまでもない。
また、本発明においては、前記陰イオン系界面活性剤として、カルボン酸塩やスルホン酸塩、硫酸エステル塩などを用いることができる。中でも、アルキルスルホコハク酸のアルカリ金属塩を用いることにより、樹脂成形体の難燃性をより優れたものにできる。
また、本発明においては、前記アルキルスルホコハク酸のアルカリ金属塩として、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを用いることにより、樹脂成形体の難燃性をさらに優れたものにできる。
また、本発明においては、前記リン系難燃剤(C)としてハロゲン含有リン酸エステル及びハロゲン含有ホスホン酸エステルから選ばれる少なくとも1種類を用いて、且つ、前記両親媒性化合物(E)として下記化学式(I)で表されるハロゲン非含有リン酸エステルを用いることで、ハロゲン含有リン酸エステル又はハロゲン含有ホスホン酸エステルが有する優れた難燃性向上効果と、両親媒性化合物(E)が有するリン系難燃剤(C)の分散性向上効果とが相まって、樹脂成形体の難燃性をさらに優れたものにできる。
Figure 0006489210
(式(I)中、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボキシル基、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基、ポリオキシアルキレン基を示し、nは1又は2である。)
さらに、前記化学式(I)であらわされる両親媒性化合物(E)においては、式(I)中のRを炭素数2〜24の脂肪族アルキル基とすることで、両親媒性化合物(E)が有するリン系難燃剤(C)の分散性向上効果がより良好となるので、樹脂成形体の難燃性をより優れたものにできる。
<(メタ)アクリル系重合体(P)>
本発明における(メタ)アクリル系樹脂組成物は、下記の(メタ)アクリル系重合体(P)を構成成分の1つとして含む。前記(メタ)アクリル系重合体(P)を構成成分の1つとして含むことにより、後述する他の構成成分との相乗効果により、耐熱性と難燃性に優れた(メタ)アクリル系樹脂成形体を得ることが可能となる。
(メタ)アクリル系重合体(P)は、芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を側鎖に有する(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位を含む重合体を用いることができる。
(メタ)アクリル系重合体(P)が(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位を含むことにより、樹脂成形体の難燃性が向上するとともに、上述した両親媒性物質(E)の作用により、リン系難燃剤(C)が凝集粒子を形成することを抑制できる。
さらに前記(メタ)アクリル系重合体(P)においては、メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位と、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位と、後述する、分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する単量体(B)由来の構造単位を含むことができる。
(メタ)アクリル系重合体(P)がメタクリル酸メチル由来の繰り返し単位を含むことで、樹脂成形体の耐熱性及び耐侯性に優れ、且つ、機械的強度、熱的性質、成形加工性をより優れたものとできる。
(メタ)アクリル系重合体(P)が、単量体(B)由来の構造単位を含むことで、樹脂成形体の難燃性、耐熱性、機械的特性をより優れたものとできる。
メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位の含有量の下限は特に限定されるものではないが、樹脂成形体の耐衝撃性や機械強度が良好となることから19.95質量%以上が好ましく、40.0質量%以上がより好ましく、50.0質量%以上がさらに好ましい。また、含有量の上限は特に限定されるものではないが、樹脂成形体の難燃性が良好となることから84.95質量%以下が好ましく、82.0質量%以下がより好ましく、79.1質量%以下がさらに好ましい。上記の上限値及び下限値は、(メタ)アクリル系重合体(P)の総質量100質量%を超えない範囲で、任意に組み合わせることができる。
<(メタ)アクリル酸エステル(M)>
本発明において、(メタ)アクリル酸エステル(M)とは、芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を側鎖に有する単官能の(メタ)アクリル酸エステルである。(メタ)アクリル酸エステル(M)を含有することにより、樹脂成形体の難燃性は良好となる。
具体例としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアダマンチル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ノルボルニルメチル、(メタ)アクリル酸メンチル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロデシル、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル、及びそれらの誘導体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用できる。
前記(メタ)アクリル酸エステル(M)は熱が加わると、側鎖が脱離し、メタクリル酸構造単位に転化する。このメタクリル酸構造単位、リン系難燃剤(C)が作用し、その相乗効果により、炭化物(チャー)の生成量が増大する。また、ビニル基を2個以上有する単量体(B)が加わることで、チャーの生成が更に促進される。炭化物(チャー)は樹脂組成物の難燃性を高める。
さらに、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位は嵩高い側鎖を有しており、この嵩高い側鎖が分解により脱離して揮発成分が発生することにより、燃焼場の酸素濃度が低下して、樹脂組成物の難燃性が優れたものとなる。この嵩高い側鎖の分解は、例えば燃焼による熱エネルギーを利用して促進することができる。さらに、前述のリン系難燃剤(C)を樹脂組成物に添加しておくと、リン系難燃剤(C)の分解物が前記嵩高い側鎖の分解を促進して、樹脂組成物の難燃性を優れたものとすることができる。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物においては、下記の測定方法1で測定した、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位の分解生成物のピークの半値幅(以下、単に「分解生成物のピークの半値幅」と略する。)の上限を26℃以下とすることで、(メタ)アクリル系樹脂組成物及び前記(メタ)アクリル系樹脂組成物から製造される樹脂成形体の難燃性を優れたものとすることができる。分解生成物のピークの半値幅は、21℃以下とすることがより好ましく、19℃以下とすることがさらに好ましい。分解生成物のピークの半値幅の下限は特に制限されるものではないが、5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。
<測定方法1>
発生ガス分析測定装置(EGA−MS)を用いて、(メタ)アクリル系樹脂組成物2mgを、ヘリウム雰囲気下(流速20ml/分)、昇温速度10℃/分にて、分解生成物の発生気体の質量分析を行ない、得られた温度−クロマトグラム曲線における、分解生成物のピークの半値幅を求める。
分解生成物のピークの半値幅は、(メタ)アクリル系重合体(P)を構成する単量体単位の種類や前記単量体単位の含有量、リン系難燃剤(C)の種類や含有量などを調整することにより、制御できる。
さらに、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物において、下記の測定方法2で得られた前記(メタ)アクリル系重合体(P)中の(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位の分解生成物の発生温度Tc(単位:℃)及び前記リン系難燃剤(C)の分解生成物の発生温度Tm(単位:℃)から算出される|Tm−Tc|の値は、(メタ)アクリル系樹脂組成物の分解(脱離)ガスの発生のし易さを表す指標であり、この値が小さいほど、(メタ)アクリル系樹脂組成物の難燃性は良好となる。|Tm−Tc|の値は、(メタ)アクリル酸エステル(M)とリン系難燃剤(C)の種類を選択することで、制御できる。
本発明の樹脂成形体においては、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位の分解生成物及び前記リン系難燃剤(C)の分解生成物の発生温度が、下記式(1)を満たすことにより、樹脂成形体の難燃性と耐熱性をより良好にすることができる。
|Tm−Tc|の上限は40以下であれば樹脂成形体の難燃性が良好となることから好ましく、20以下とすることがより好ましく、10以下とすることがさらに好ましい。|Tm−Tc|の下限は特に制限されるものではないが、0を超えていればよい。
|Tm−Tc|≦40 ・・・(1)
Tc:リン系難燃剤(C)分解生成物の発生温度(単位:℃)
Tm:(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位の分解生成物の発生温度(単位:℃)
<測定方法2>
発生ガス分析測定装置(EGA−MS)を用いて、(メタ)アクリル系樹脂組成物2mgを、ヘリウム雰囲気下(流速20ml/分)、昇温速度10℃/分にて、分解物の発生気体の質量分析を行ない、得られた温度−クロマトグラム曲線における、分解生成物の発生温度を求める。
さらに、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物において、上記の測定方法2で得られた前記(メタ)アクリル系重合体(P)中のメタクリル酸メチル由来の繰り返し単位の分解生成物の発生温度をTa(単位:℃)とするとき、「Ta−Tm」(単位:℃)の値は、(メタ)アクリル系樹脂組成物の主たる分解生成物である、前記メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位の分解生成物が発生する温度と、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位中の側鎖に由来する分解生成物が発生する温度との温度差を表す指標である。
「Ta−Tm」の値が大きいほど、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物の主たる分解生成物である、前記メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位の分解生成物が発生する前に、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位中の側鎖に由来する分解生成物が発生するため、樹脂成形体の難燃性が良好となる。
「Ta−Tm」の値は、前記(メタ)アクリル系重合体(P)の共重合組成や前記(メタ)アクリル酸エステル(M)の種類や分子量、架橋剤などの添加剤の種類を適宜選択して制御することができる。
ここで、「(メタ)アクリル系樹脂組成物の主たる分解物」とは、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位中の側鎖に由来する分解生成物を除く、(メタ)アクリル系樹脂組成物の分解物のことをいう。
本発明の樹脂成形体においては、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位の分解生成物及び前記メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位の分解生成物の発生温度が、下記式(2)を満たすものである。
「Ta−Tm」の下限は、特に制限されるものではないが、100以上であれば樹脂成形体の難燃性が良好となることから好ましく、110以上がより好ましく、115以上がさらに好ましい。「Ta−Tm」の上限は、特に制限されるものではないが、(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位の側鎖が分解、脱離する温度が低温化して難燃性が不十分となることを防ぐことから200以下が好ましい。
100≦Ta−Tm ・・・(2)
Ta:メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位の分解生成物の発生温度(単位:℃)
(メタ)アクリル酸エステル(M)に由来する繰り返し単位の含有量の下限は特に限定されないが、樹脂成形体の難燃性が良好となることから3.6質量%以上が好ましく、15.0質量%以上がより好ましく、20.5質量%以上がさらに好ましい。含有量の上限は特に限定されないが、樹脂成形体の耐衝撃性や機械強度が良好となることから80.0質量%以下が好ましく、60.0質量%以下がより好ましく、40.0質量%以下がさらに好ましい。上記の上限値及び下限値は、(メタ)アクリル系重合体(P)の総質量100質量%を超えない範囲で、任意に組み合わせることができる。
前記(メタ)アクリル酸エステル(M)を含有する(メタ)アクリル系重合体(P)としては、芳香族炭化水素又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素を側鎖に有するメタクリル酸エステル(M1)由来の繰り返し単位、及び芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を側鎖に有するアクリル酸エステル(M2)由来の繰り返し単位を含む(メタ)アクリル系重合体(P)を用いることができる。
またメタクリル酸エステル(M1)及びアクリル酸エステル(M2)は、リン系難燃剤(C)と相互作用して、リン系難燃剤(C)が有する難燃性向上効果を相乗的に高める効果を有するので、樹脂成形体の難燃性を向上できる。
また、アクリル酸エステル(M2)を含むことにより、重合後の(メタ)アクリル系樹脂組成物中の未反応単量体は低減されるため、得られた樹脂成形体の耐候性は良好となる。
前記(メタ)アクリル酸エステル(M)を含有する(メタ)アクリル系重合体(P)としては、前記メタクリル酸エステル(M1)由来の繰り返し単位10.0質量%以上79.5質量%以下、及び前記アクリル酸エステル(M2)由来の繰り返し単位0.50質量%以上20.0質量%以下を含み、且つ前記メタクリル酸エステル(M1)由来の繰り返し単位と、前記アクリル酸エステル(M2)由来の繰り返し単位の合計が15.0質量%以上80.0質量%以下を含む(メタ)アクリル系重合体(P)を用いることができる。
メタクリル酸エステル(M1)由来の繰り返し単位の含有量の下限は特に限定されないが、樹脂成形体の難燃性と耐熱性が良好となることから10.0質量%以上が好ましく、20.0質量%以上がより好ましい。また、含有量の上限については特に限定されないが、樹脂成形体の耐候性が良好となることから79.5質量%以下が好ましく、70.0質量%以下がより好ましい。上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
アクリル酸エステル(M2)由来の繰り返し単位の含有量の下限は特に限定されないが、樹脂成形体の難燃性と耐候性が良好となることから0.50質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。含有量の上限は特に限定されないが、樹脂成形体の耐熱性が良好となることから20質量%以下が好ましく、6.0質量%以下がより好ましい。上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
メタクリル酸エステル(M1)由来の繰り返し単位と、アクリル酸エステル(M2)由来の繰り返し単位の含有量の合計の下限は特に限定されないが、樹脂成形体の難燃性が良好となることから15.0質量%以上が好ましく、20.5質量%以上がより好ましい。含有量の上限は特に限定されないが、樹脂成形体の耐熱性と耐候性が良好となることから80.0質量%以下が好ましく、40.0質量%以下がより好ましい。上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物において、前記メタクリル酸エステル(M1)には、難燃性及び耐熱性の向上効果に優れる観点から、メタクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸イソボルニルから選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物において、前記アクリル酸エステル(M2)には、難燃性及び耐候性の向上効果に優れる観点から、アクリル酸シクロヘキシル及びアクリル酸イソボルニルから選ばれる少なくとも1種(以下、「単量体(m2)」)を用いることができる。
単量体(m2)を含むことにより、重合後の(メタ)アクリル系樹脂組成物中の未反応単量体を、より低減することができ、樹脂成形の耐候性がより良好となる。さらに、単量体(m2)は、リン系難燃剤(C)と相互作用して、リン系難燃剤(C)が有する難燃性向上効果を相乗的に高める効果を有するので、樹脂成形体の難燃性を向上できる。
単量体(m2)の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、前記(メタ)アクリル系重合体(P)100質量部に対して、1.0質量%以上とすることで、樹脂成形体の難燃性と耐候性をより良好にできることから好ましく、2.0質量%以上がより好ましい。一方、含有量の上限は特に限定されるものではないが、含有量が4.99質量%以下であれば、樹脂成形体の耐熱性をより向上できることから好ましく、4.0質量%以下がより好ましい。上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
<単量体(B)>
単量体(B)はビニル基を2個以上有する単量体であり、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物の構成成分の一つである。(メタ)アクリル系樹脂組成物に単量体(B)を含有させることにより、樹脂成形体の難燃性を、より向上することができる。
(メタ)アクリル系重合体(P)が、単量体(B)由来の構造単位を含むことで、樹脂成形体の難燃性、耐熱性、機械的特性をより優れたものとできる。
前記単量体(B)由来の構造単位の含有量の下限は特に限定されないが、樹脂成形体の難燃性が良好となることから0.05質量部以上が好ましく、0.12質量部以上がより好ましい。また、含有量の上限は特に限定されないが、樹脂成形体の耐衝撃性や機械強度が良好となることから0.40質量部以下が好ましく、0.36質量部以下がより好ましい。上記の上限値及び下限値は、(メタ)アクリル系重合体(P)の総質量100質量%を超えない範囲で、任意に組み合わせることができる。
単量体(B)としては、二官能(メタ)アクリレートが好ましい。例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用できる。
上述した単量体(B)の中でも、炭素数10〜14の単量体は、原料の取り扱い性が良好であることから、(メタ)アクリル系樹脂組成物を製造するときの作業性を向上できる。
さらに、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の単量体であれば、原料の取り扱い性が優れることに加え、樹脂成形体の難燃性をより優れたものとできる点から好ましい。
<共重合可能な単量体>
本発明においては、必要に応じて、メタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エステル(M)と共重合可能な単量体を、(メタ)アクリル系重合体(P)100質量%に対して、0質量%以上12質量%以下、好ましくは0.8質量%以上9.0質量%以下の範囲で、アクリル重合体(P)に含有させることができる。
メタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エステル(M)と共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体、酢酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン及びそれらの誘導体、メタクリルアミド、アクリロニトリル等の窒素含有単量体、(メタ)アクリル酸グリシジルアクリレート等のエポキシ基含有単量体並びにスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物が挙げられる。
<(メタ)アクリル系樹脂組成物>
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、下記式(a)より計算される値D(%)について、スピンロック時間τ=30msecにおいて値D(%)を6%以下とすることができる。下記式(a)において、MC(τ)とMP(τ)は固体NMR測定装置でスピンロック交差分極法を用いて観測した緩和スペクトルの強度であり、後述する方法により測定できる。
(%)=|MC(τ)−MP(τ)|/MC(τ) ・・・(a)
MC(τ):下記(A)及び(B)の値の平均値
(A)スピンロック時間τsecにおける13C核緩和スペクトルの160ppm〜180ppmに観測されるカルボニル基の炭素に対応するスペクトルの面積を、スピンロック時間10μsecにおける13C核緩和スペクトルの160ppm〜180ppmに観測されるカルボニル基の炭素に対応するスペクトルの面積で除した値。
(B)スピンロック時間τsecにおける13C核緩和スペクトルの30ppm〜65ppmに観測されるメチレン基の炭素に対応するスペクトルの面積を、スピンロック時間10μsecにおける13C核緩和スペクトルの30ppm〜65ppmに観測されるメチレン基の炭素に対応するスペクトルの面積で除した値。
MP(τ):スピンロック時間τsecにおける31P核緩和スペクトルの−40〜40ppmに観測されるリン系難燃剤(C)のリン原子に対応するスペクトルの面積を、スピンロック時間10μsecにおける31P核スペクトルの−40〜40ppmに観測されるリン系難燃剤(C)のリン原子に対応するスペクトルの面積で除した値。
さらに本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、前記式(a)より計算される値D(%)について、スピンロック時間τ=16msec、20msec、25msec、30msecにおける各々の値D(%)の平均値D(%)が7%以下とすることができる。
ここで、(メタ)アクリル系樹脂組成物のカルボニル基の炭素とは、前記(メタ)アクリル系重合体(P)中のα炭素に隣接したエステル側鎖中のカルボニル基の炭素である。さらに詳しくは、前記(メタ)アクリル系重合体(P)中のメタクリル酸メチル由来の繰り返し単位、前記メタクリル酸エステル(M1)由来の繰り返し単位又は前記メタクリル酸エステル(M2)由来の繰り返し単位中のα炭素に隣接した炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基の側鎖中のカルボニル基の炭素である。
また、リン系難燃剤(C)のリン原子とは、リン系難燃剤(C)がリン酸エステルのときはリン酸基のリン原子、ホスホン酸エステルのときはホスホン酸基のリン原子である。
前記リン酸エステル及びホスホン酸エステルの重量平均分子量は、(メタ)アクリル系樹脂組成物中にリン系難燃剤(C)が局在化することなく、均一に溶解又は微分散することから、200以上500以下が好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂組成物のカルボニル基の炭素に対応したピークは、(メタ)アクリル系樹脂組成物の構成により異なるが、例えば、前記(メタ)アクリル系重合体(P)として、芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を側鎖に有する(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位を含む重合体を使用する場合だと、13C核緩和スペクトルの−180ppm〜−160ppm付近に観察される。
リン系難燃剤(C)のリン原子に対応したピークは、リン系難燃剤(C)の種類により異なるが、例えば、リン酸エステル又はホスホン酸エステルのときは、31P核緩和スペクトルの−10〜10ppm付近に観察される。
MC(τ)は(メタ)アクリル系重合体(P)を構成する分子の運動性を反映した数値であり、MP(τ)はリン系難燃剤(C)を構成する分子の運動性を反映した数値である。リン系難燃剤(C)が、(メタ)アクリル系重合体(P)に5nm以下のドメインで溶解又は微分散していると、MC(τ)とMP(τ)の値は、ほぼ一致する。リン系難燃剤(C)がそれ以上のサイズのドメインで分散しているとMC(τ)とMP(τ)の値の差が大きくなる。MC(τ)の値とMP(τ)の値の差が小さいほど、(メタ)アクリル系樹脂組成物中にリン系難燃剤(C)が局在化することなく、均一に溶解又は微分散しているので、リン系難燃剤(C)の難燃向上効果をより優れたものとする。
本発明者らは、(メタ)アクリル系樹脂組成物中のリン系難燃剤(C)の溶解状態又は微分散状態を規定する指標として、上記式(a)であらわされるD(%)が、6%以下のときに、リン系難燃剤(C)は局在化することなく均一に溶解又は微分散して、リン系難燃剤(C)の難燃性向上効果が顕著に発現するので、(メタ)アクリル系樹脂組成物の難燃性が顕著に優れるという効果が発現することを見出した。この効果は、前記式(a)より計算される値D(%)について、スピンロック時間τ=16msec、20msec、25msec、30msecにおける各々の値Dの平均値D(%)が7%以下のときにより優れたものになる。
上述した(メタ)アクリル系樹脂組成物は、後述する(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法を用いることにより、難燃剤としてリン系難燃剤(C)を(メタ)アクリル系重合体に単に混練しただけの従来の樹脂組成物に比べて、リン系難燃剤(C)が局在化することなく均一に溶解又は微分散しているので、燃焼時に難燃剤が一様に機能することにより難燃性が顕著に向上するという現象が起きていると考えられる。
<耐衝撃向上剤(D)>
本発明では、樹脂成形体の耐衝撃性を高めるために、(メタ)アクリル系樹脂組成物に耐衝撃向上剤(D)として、後述する多重構造アクリル系共重合体粒子(D1)又は後述するアクリル系ブロック共重合体(D2)から選ばれる少なくとも一種類の化合物を構成成分の一つとして含むことができる。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物においては、前記(メタ)アクリル系重合体(P)100質量部に対して、前記耐衝撃向上剤(D)を2.0質量部以上50.0質量部以下含むことができる。(メタ)アクリル重合体100質量部に対する耐衝撃向上剤(D)の含有量の下限は2.0質量部以上であれば、樹脂成形体の耐衝撃性が良好となるので好ましく、5.0質量部以上がより好ましい。また、(メタ)アクリル重合体100質量部に対する耐衝撃向上剤(D)の含有量の上限は50.0質量部以下であれば、樹脂成形体の難燃性及び耐候性は良好となるので好ましく、30.0質量部以下がより好ましく、20.0質量部以下がさらに好ましい。
<多重構造アクリル系共重合体粒子(D1)>
本発明に用いる前記多重構造アクリル系共重合体粒子(D1)は、少なくとも一層が架橋構造を有するゴム状共重合体層からなるエラストマー粒子(d1−1)を含む。架橋構造を有するゴム状共重合体層を有するものであれば、多重構造アクリル系共重合体粒子(D1)の各層の組成、粒径は限定を受けない。
例えば、前記エラストマー粒子(d1−1)の外側に、硬質樹脂層(d1−2)が形成された構造を有する多重構造アクリル系共重合体粒子(D1−1)を挙げることができる。
さらに、前記エラストマー粒子(d1−1)の内側に、架橋構造を有する硬質樹脂層(d1−3)が形成された多重構造アクリル系共重合体粒子(D1−2)を挙げることができる。
また、前記硬質樹脂層(d1−2)の内側、且つ、前記硬質樹脂層(d1−2)の外側に、さらに硬質樹脂層(d1−4)が形成された多重構造アクリル系共重合体粒子(D1−3)を挙げることができる。
<多重構造アクリル系共重合体粒子(D1−1)>
前記多重構造アクリル系共重合体粒子(D1−1)としては、架橋構造を有するゴム状共重合体からなるエラストマー粒子(d1−1)の表面に、硬質樹脂成分をグラフト重合して、硬質樹脂層(d1−2)を形成した多重構造アクリル系共重合体粒子(D1−1)を用いることができる。
(エラストマー粒子:d1−1)
前記エラストマー粒子(d1−1)を構成するゴム状共重合体としては、アクリル酸アルキルエステル由来の繰り返し単位を主成分とする(共)重合体を挙げることができる。
具体的には、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート由来の繰り返し単位70〜90質量%、芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位10〜30質量%、およびその他の共重合可能な単量体由来の繰り返し単位0〜20質量%を含む(共)重合体である。
前記のアルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。これらの単量体は単独または2種以上用いて使用される。
前記芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。これらの単量体は単独または2種以上用いて使用される。
前記のその他の共重合可能な単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物等が挙げられる。また、下記の多官能単量体を含むこともできる。
前記多官能単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等の架橋剤やトリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の架橋剤が挙げられる。これらの単量体は単独または2種以上用いて使用される。
前記エラストマー粒子(d1−1)の質量平均粒子径は、特に制限されるものではないが、一般的には100〜300nmである。
(硬質樹脂層:d1−2)
前記硬質樹脂層(d1−2)を形成する硬質樹脂成分は、メタクリル酸エステル由来の繰り返し単位を主成分とする(共)重合体を含むことができる。
具体的には、アルキル基の炭素数が1〜4のアルキルメタクリレート由来の繰り返し単位50質量%以上100質量%以下、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート由来の繰り返し単位0質量%以上50質量%以下、およびその他の共重合可能な単量体由来の繰り返し単位0質量%以上20質量%以下を含む(共)重合体である。
前記アルキル基の炭素数が1〜4のアルキルメタクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート等のメタクリルエステル類、メチルアクリレート、エチルアクリレート等のアクリルエステル類等が挙げられる。これらの単量体は単独または2種以上用いて使用される。
前記アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート由来の繰り返し単位0〜50質量%としては、先に挙げた架橋構造を有するゴム状共重合体を含むエラストマー粒子(d1−1)用いる例と同様のものを使用できる。
その他の共重合可能な単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等の非アルキルメタクリレート、およびそれらに対応した非アルキルアクリレート等が挙げられる。また、上述した多官能単量体を含むこともできる。
<多重構造アクリル系共重合体粒子(D1−2)>
本発明に用いる前記多重構造アクリル系共重合体粒子(D1)は、前記エラストマー粒子(d1−1)の内側に、架橋構造を有する硬質樹脂層(d1−3)を形成した多重構造アクリル系共重合体粒子(D1−2)を用いることができる。
(架橋構造を有する硬質樹脂層:d1−3)
前記硬質樹脂層(d1−3)を形成する硬質樹脂成分としては、アルキル基の炭素数が1〜4のアルキルメタクリレート由来の繰り返し単位を主成分とする(共)重合体を挙げることができる。
硬質樹脂層(d1−3)を形成する硬質樹脂成分としては、前記硬質樹脂層(d1−2)と同一の樹脂成分であっても異なる樹脂成分であってもよい。
具体的には、アルキル基の炭素数が1〜4のアルキルメタクリレート由来の繰り返し単位40質量%以上100質量%以下、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート由来の繰り返し単位0質量%以上60質量%以下、およびその他の共重合可能な単量体由来の繰り返し単位0質量%以上20質量%以下及び多官能単量体由来の繰り返し単位0.1質量%以上10質量%以下を含む(共)重合体を挙げることができる。組成を上述の各範囲内にすることにより、優れた落球・落錘衝撃強度、耐衝撃白化性が得られる。
この架橋構造を有する硬質樹脂層(d1−3)に用いられる、アルキル基の炭素数が1〜4のアルキルメタクリレート、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート、その他の共重合可能な単量体及び多官能単量体は、先に挙げた硬質樹脂層(d1−2)と同様なものを用いることが出来る。
前記エラストマー粒子(d1−1)を100質量部としたときの前記硬質樹脂層(d1−3)は、特に制限されるものではないが、一般的には30質量部以上100質量部以下である。
<多重構造アクリル系共重合体粒子(D1−3)>
本発明に用いる前記多重構造アクリル系共重合体粒子(D1)は、上述した多重構造アクリル系共重合体粒子(D1−1)又は(D1−2)の硬質樹脂層(d1−2)の外側に、さらに硬質樹脂層(d1−4)を形成した多重構造アクリル系共重合体粒子(D1−3)を用いることができる。
(硬質樹脂層:d1−4)
前記硬質樹脂層(d1−4)を形成する硬質樹脂成分としては、メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位を主成分とする(共)重合体を挙げることができる。
具体的には、アルキル基の炭素数が1〜4のアルキルメタクリレート由来の繰り返し単位50〜100質量%、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート由来の繰り返し単位0〜50質量%、および、芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位0〜20質量%を含む(共)重合体であって、且つ、硬質樹脂層(d1−4)のガラス転移温度(以下「Tg」と略す。)が、20〜80℃であり、前記硬質樹脂層(d1−2)のTgより低い、(共)重合体である。
上記以外の多重構造アクリル系共重合体粒子(D1)としては、例えば、三菱レイヨン(株)製のW−341、(株)カネカ製のM−210等の市販品を入手することができる。
なお、上述した多重構造アクリル系共重合体粒子(D1)は、公知の方法により製造できる。
前記(メタ)アクリル系樹脂組成物中の多重構造アクリル系共重合体粒子(D1)の含有量の下限は、樹脂成形体の耐衝撃性が向上する観点から、前記(メタ)アクリル系重合体(P)100質量部に対して2.0質量部以上が好ましく、5.0質量部以上がより好ましい。多重構造アクリル系共重合体粒子(D1)の含有量の上限は、樹脂成形体の難燃性及び耐候性を良好に維持する観点から、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。
<アクリル系ブロック共重合体(D2)>
本発明に用いる前記アクリル系ブロック共重合体(D2)は、メタクリル酸エステル重合ブロック(d2−1)とアクリル酸エステル重合ブロック(d2−2)とを有するアクリル系ブロック共重合体からなる。具体的には、メタクリル酸エステル重合体ブロック(d2−1)10質量%以上60質量%以下とアクリル酸エステル重合体ブロック(d2−1)40質量%以上90質量%以下とを有するアクリル系ブロック共重合体を挙げることができる。
さらに、前記アクリル酸エステル重合体ブロック(d2−2)がアクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸芳香族エステルとからなる場合、前記アクリル酸エステル重合体ブロック(d2−2)はアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位50〜90質量%と(メタ)アクリル酸芳香族エステルに由来する構造単位50〜10質量%とを含むことが好ましい。
上記以外のアクリル系ブロック共重合体(D2)として、例えば、クラレ(株)製の「クラリティ」等の市販品を入手することができる
前記(メタ)アクリル系樹脂組成物中のアクリル系ブロック共重合体(D2)の含有量の下限は、樹脂成形体の耐衝撃性が向上する観点から、前記(メタ)アクリル系重合体(P)100質量部に対して2.0質量部以上が好ましく、5.0質量部以上がより好ましい。アクリル系ブロック共重合体(D2)の含有量の上限は、樹脂成形体の難燃性及び耐候性を良好に維持する観点から、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。
<(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法>
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物を得る方法としては、後述する重合性組成物(X3)を重合する方法が挙げられる。
前記重合性組成物(X3)を重合して(メタ)アクリル系樹脂組成物を得る際に使用されるラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物及びベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。必要に応じて、ラジカル重合開始剤と共にアミン、メルカプタン等の促進剤を併用することができる。
重合性組成物(X3)を重合する際の重合温度は、通常、使用するラジカル重合開始剤の種類に応じて20〜150℃の範囲で適宜設定される。また、重合性組成物(X3)は必要に応じて多段階の温度条件で重合を行うことができる。
重合性組成物(X3)の重合法としては、例えば、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法及び分散重合法が挙げられるが、これらの中で、生産性の点で、塊状重合法が好ましく、塊状重合法の中でもキャスト重合(注型重合)法がより好ましい。
キャスト重合法により(メタ)アクリル系樹脂組成物を得る場合、例えば、重合性組成物(X3)を鋳型に注入して重合させることにより(メタ)アクリル系樹脂組成物を得ることができる。
上記の鋳型としては、例えば、2枚のSUS板の間の空間部のSUS板の端部に軟質塩化ビニル樹脂チューブ等のシール材を挟んだものを用いることができる。鋳型の空隙の間隔は所望の厚さの樹脂板が得られるように適宜調整されるが、一般的には1〜30mmである。
<重合性組成物(X3)>
重合性組成物(X3)は、(メタ)アクリル系樹脂組成物を得るための原料の一実施態様であり、後述する単量体組成物(X1)、前記リン系難燃剤(C)及び前記両親媒性化合物(E)を含有する組成物である。
また、前記単量体組成物(X1)は、予め(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含む重合体を含むことができる。具体的には、単量体組成物(X1)は、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位を含む重合体(P1)を、予め含むことができる。前記重合体を含むことにより、重合性組成物(X3)は粘性を有する液体(以下、「シラップ」という)となるため、重合時間を短縮でき、生産性向上することができる。
上述したシラップを得る方法としては、例えば、単量体組成物(X1)に重合体を溶解させる方法、或いは単量体組成物(X1)に公知のラジカル重合開始剤を添加して、その一部を重合させる方法が挙げられる。
また本発明の製造方法においては、前記重合性組成物(X3)は、前記単量体組成物(X1)と前記両親媒性化合物(E)、また必要に応じて前記重合体(P1)をあらかじめ含む混合物(X2)に、前記リン系難燃剤(C)を後から添加して、得ることが好ましい。
また、多重構造アクリル系共重合体粒子(D1)又はアクリル系ブロック共重合体(D2)から選ばれる少なくとも一種類の耐衝撃向上剤(D)とを含有する場合には、耐衝撃向上剤(D)は前記混合物(X2)に添加し、さらに前記リン系難燃剤(C)を後から添加して、前記重合性組成物(X3)を得ることが好ましい。
リン系難燃剤(C)を後から添加することにより、高い難燃性を有する(メタ)アクリル系樹脂組成物を安定に製造することができる。その理由は定かでないが、前記単量体組成物(X1)に、両親媒性化合物(E)が存在しない状態で、リン系難燃剤(C)を添加すると、リン系難燃剤が凝集粒子を形成するためと推察される。
また、前記重合性組成物(X3)は、前記単量体組成物(X1)を100質量部として、前記リン系難燃剤(C)5.0質量部以上35.0質量部以下と、前記両親媒性化合物(E)0.01質量部以上2.0質量部以下を含有することができる。なお、重合性組成物(X3)が重合体を含むシラップである場合には、前記単量体組成物(X1)と前記重合体の合計量を100質量部とすれば良い。
リン系難燃剤(C)の含有量の下限は5.0質量部以上であれば、樹脂成形体の難燃性が良好となる。また、リン系難燃剤(C)の含有量の上限は35.0質量部以下であれば、樹脂成形体の耐熱性は良好となる。
両親媒性化合物(E)の含有量の下限が0.01質量部以上であれば、リン系難燃剤(C)が凝集粒子を形成せず、樹脂成形体の難燃性が良好となるので好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上がさらに好ましいい。両親媒性化合物(E)の含有量の上限が2.0質量部以下であれば、樹脂成形体の難燃性が良好となるので好ましく、0.6質量部以下がより好ましく、0.3質量部以下がさらに好ましい。
また、重合性組成物(X3)の(メタ)アクリル酸エステル(M)、メタクリル酸メチル及び単量体(B)の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば(メタ)アクリル系樹脂組成物に含まれる(メタ)アクリル系重合体(P)が、総質量に対して、メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位19.95質量%以上84.95質量%以下と(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位3.6質量%以上80.0質量%以下と単量体(B)由来の構造単位0.05質量%以上0.40質量%以下を含むように、適宜決めることができる。
重合性組成物(X3)の一実施態様として、重合性組成物(X3)がシラップである場合には、下記の重合体(a)と単量体組成物(X1)を含む組成物が挙げられる。
重合体(a):
メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位19.95質量%以上84.95質量%以下と前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位3.6質量%以上80.0質量%以下と前記単量体(B)由来の構造単位0.05質量%以上0.40質量%以下を含む重合体。
単量体組成物(X1):
単量体組成物(X1)の総質量に対して、メタクリル酸メチル19.95質量%以上84.95質量%以下、(メタ)アクリル酸エステル(M)の単量体3.6質量%以上80.0質量%以下、前記単量体(B)0.05質量%以上0.40質量%以下を含む単量体組成物。
上述した方法で得られた重合性組成物(X3)は、従来の方法で得られた重合性組成物よりも可使時間を長くすることができる。具体的には、可使時間を168時間程度とすることができるので、製造現場において生産管理が容易になる効果がある。また、その際に、重合性組成物を保管する温度は特に限定されるものではないが、保管温度の下限は5℃以上であれば、設備上の制限が少ないために好ましく、10℃以上がより好ましい。一方、保管温度の上限は特に限定されるものではないが、40℃以下であれば、保管上の安全性の観点から好ましく、30℃以下がより好ましい。
<単量体組成物(X1)>
単量体組成物(X1)とは、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)を含む組成物である。(メタ)アクリル酸エステル(M)を含むことにより、樹脂成形体の難燃性が向上するとともに、上述した両親媒性物質(E)の作用により、リン系難燃剤(C)が凝集粒子を形成することを抑制できる。
さらに、前記単量体組成物(X1)は、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)を含む場合に、メタクリル酸メチルと前記単量体(B)を含むことができる。
メタクリル酸メチルを含むことにより、樹脂成形体の耐熱性及び耐侯性に優れ、且つ、機械的強度、熱的性質、成形加工性をより優れたものとできる。
前記単量体(B)を含むことにより、難燃性、耐熱性、機械的特性をより優れたものとできる。
単量体組成物(X1)中の(メタ)アクリル酸エステル(M)、メタクリル酸メチル及び単量体(B)の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば(メタ)アクリル系樹脂組成物に含まれる(メタ)アクリル系重合体(P)が、総質量に対して、メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位19.95質量%以上84.95質量%以下と(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位3.6質量%以上80.0質量%以下と単量体(B)由来の構造単位0.05質量%以上0.40質量%以下を含むように、適宜決めることができる。
また前記単量体組成物(X1)においては、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)は、芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を側鎖に有するメタクリル酸エステル(M1)10.0質量%以上79.5質量%以下と、芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を側鎖に有するアクリル酸エステル(M2)0.50質量%以上20.0質量%以下とを含むことができる。
メタクリル酸エステル(M1)及びアクリル酸エステル(M2)は、リン系難燃剤(C)と相互作用して、リン系難燃剤(C)が有する難燃性向上効果を相乗的に高める効果を有するので、樹脂成形体の難燃性を向上できる。
また、アクリル酸エステル(M2)を含むことにより、重合後の(メタ)アクリル系樹脂組成物中の未反応単量体は低減されるため、得られた樹脂成形体の耐候性は良好となる。
具体的なメタクリル酸エステル(M1)及びアクリル酸エステル(M2)としては、上述した化合物を挙げることができる。
前記メタクリル酸エステル(M1)には、難燃性及び耐燃性の向上効果に優れる観点から、メタクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸イソボルニルから選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
前記(メタ)アクリル酸エステル(M2)は、難燃性及び耐候性の向上効果に優れる観点から、アクリル酸シクロヘキシル及びアクリル酸イソボルニルから選ばれる少なくとも1種(以下、「単量体(m2)」)を含むことにより、樹脂成形の耐候性、難燃性を向上できる。単量体(m2)の含有量は1.0質量部以上4.99質量部以下とすることができる。
単量体(m2)を含むことにより、重合後の(メタ)アクリル系樹脂組成物中の未反応単量体を、より低減することができ、樹脂成形の耐候性がより良好となる。さらに、単量体(m2)は、リン系難燃剤と相互作用して、リン系難燃剤が有する難燃性向上効果を相乗的に高める効果を有するので、樹脂成形体の難燃性を向上できる。
単量体(m2)の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、前記(メタ)アクリル系重合体(P)100質量部に対して、1.0質量%以上とすることで、樹脂成形体の難燃性と耐候性をより良好にできることから好ましく、2.0質量%以上がより好ましい。一方、含有量の上限は特に限定されるものではないが、含有量が4.99質量%以下であれば、樹脂成形体の耐熱性をより向上できることから好ましく、4.0質量%以下がより好ましい。上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
前記単量体組成物としては、例えば、前記単量体組成物(X1)にさらに前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位を含む重合体(P1)を溶解させたもの、或いは前記単量体組成物(X1)を一部重合させて得られるものが挙げられ、粘性を有する液体(以下、「シラップ」という)の形のものが挙げられる。
単量体組成物(X1)の一実施態様として、例えば、重合性組成物(X3)が単量体のみからなる単量体組成物(X1)である場合には、単量体組成物(X1)の総質量に対して、メタクリル酸メチル19.95質量%以上84.95質量%以下、(メタ)アクリル酸エステル(M)の単量体15.0質量%以上80.0質量%以下、前記単量体(B)0.05質量%以上0.40質量%以下を含む組成物が挙げられる。
あるいは、単量体組成物(X1)の別の一実施態様として、例えば、単量体組成物(X1)の総質量に対して、メタクリル酸メチル19.95質量%以上79.1質量%以下、(メタ)アクリル酸エステル(M)の単量体20.5質量%以上80.0質量%以下、前記単量体(B)0.05質量%以上0.40質量%以下を含む組成物が挙げられる。
本発明は、前記単量体組成物(X1)が、分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する単量体(B)0.05質量%以上0.40質量%以下を含む、(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法が挙げられる。
<樹脂成形体>
上述した(メタ)アクリル系樹脂組成物を用いて樹脂成形体を製造することにより、高い難燃性を有する樹脂成形体を安定に得ることができる。
<樹脂成形体の製造方法>
樹脂成形体の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、以下の2つの方法が挙げられる。
(1)前記重合性組成物(X3)を、鋳型に注入して、公知のキャスト重合法を用いて重合させた後に、鋳型から取り出して樹脂成形体を得る方法。
(2)本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物のペレットを、押出成形又は射出成形等の公知の溶融成形法を用いて樹脂成形体を得る方法。
<樹脂積層体>
本発明の樹脂積層体は、前述の樹脂成形体を樹脂基材(A)とし、その少なくとも一方の表面に後述する硬化被膜(F)を備えた、シート状の樹脂積層体である。樹脂基材(A)は、樹脂積層体に高い難燃性、耐熱性、耐候性を付与するための層であり、硬化被膜(F)は、樹脂積層体に高い耐擦傷性を付与するための層である。
本発明の樹脂積層体の概略図を図2、図3に示す。図2は、樹脂基材(A)の一方の面に硬化被膜(F)を有する樹脂積層体の概略図である。図3は、樹脂基材(A)の両面に硬化被膜(F)を有する樹脂積層体の概略図である。
<硬化被膜(F)>
本発明の樹脂積層体において、前記硬化被膜(F)は、後述する(メタ)アクリロイル基を3個以上有する多官能単量体(F1)(以下、「多官能単量体(F1)」と略する。)と、後述する(メタ)アクリロイル基を2個有する多官能単量体(F2)(以下、「多官能単量体(F2)」と略する。)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物(f)(以下、「硬化性組成物(f)」という。)の硬化物からなる硬化被膜である。
また、本発明の樹脂積層体において、前記硬化被膜(F)に含まれる多官能単量体(F1)由来の繰り返し単位と多官能単量体(F2)由来の繰り返し単位の含有量は、特に制限されるものではないが、硬化被膜(F)の総重量を100質量%として、多官能単量体(F1)由来の繰り返し単位50質量%以上80質量%と多官能単量体(F2)由来の繰り返し単位20質量%以上50質量%を含有する樹脂組成物とすることができる。
多官能単量体(F1)由来の繰り返し単位の含有量の下限は、硬化被膜(F)の耐擦傷性が良好となることから、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。多官能単量体(F1)由来の繰り返し単位の含有量の上限は、硬化被膜(F)の硬化収縮率が小さくにクラックが発生しにくくなり、また硬化被膜(F)を形成した積層樹脂板に反りが生じにくくなることから、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
多官能単量体(F2)由来の繰り返し単位の含有量の上限は、硬化被膜の耐擦傷性が良好となることから、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。多官能単量体(F2)由来の繰り返し単位の含有量の下限は、組成物を硬化させる際の硬化収縮率が小さく、硬化被膜(F)にクラックが発生しにくくなり、樹脂基材(A)と硬化被膜(F)の密着性が良好となることから、20質量%以上が好ましく、30%質量%以上がより好ましい。上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
<多官能単量体(F1)>
本発明の樹脂積層体においては、多官能単量体(F1)由来の繰り返し単位を硬化被膜(F)に含有させることで、高い耐擦傷性を有する樹脂積層体を得ることができる。
具体的な多官能単量体(F1)としては、下記の(1)〜(5)が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(1)多価アルコールと、3モル以上の(メタ)アクリル酸とから得られるエステル化物;
具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等、公知の化合物を挙げることができる。
(2)多価アルコールと、多価カルボン酸またはその無水物と、(メタ)アクリル酸とから得られる、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する線状のエステル化物;
具体的には、マロン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、等、公知の化合物を挙げることができる。
(3)3量化により得られるポリイソシアネートと、活性水素を有するアクリルモノマーとを、ポリイソシアネート1モル当たりにアクリルモノマー3モル以上を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート;
3量化により得られるポリイソシアネートとしては、たとえば、トリメチロールプロパントルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、等の公知の化合物が挙げられる。
活性水素を有するアクリルモノマーとしては、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、等、公知の化合物が挙げられる。
(4)ポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチレン]イソシアヌレート;
具体的には、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート又はトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(5)公知のエポキシポリアクリレート
(6)公知のウレタンポリアクリレート
これらの中でも、前記(1)に記載したペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、
前記(2)に記載した多価アルコールと多価カルボン酸またはその無水物と(メタ)アクリル酸の縮合物が、硬化性及び得られる硬化被膜の耐擦傷性に優れるため、好ましい。
<多官能単量体(F2)>
本発明の樹脂積層体においては、多官能単量体(F2)由来の繰り返し単位を、硬化被膜(F)に含有させることで、硬化被膜(F)の硬化収縮率が小さくなるためクラックが発生しにくくなり、更に硬化被膜(F)と樹脂基材(A)の密着性が良好な樹脂積層体を得ることができる。
具体的な多官能単量体(F2)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート等、公知の化合物を挙げることができる。
これらの化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレートが、得られる硬化被膜の基材との密着性と耐擦傷性が優れるためより好ましい。
<硬化性組成物(f)>
前記硬化被膜(F)は、前記多官能単量体(F1)と前記多官能単量体(F2)を含有する硬化性組成物(f)を、公知の方法で硬化させて得ることができる。
前記硬化性組成物(f)としては、前記多官能単量体(F1)50質量%以上80質量%以下、と前記多官能単量体(F2)20質量%以上50質量%以下を含有する前記硬化性組成物(f)に、必要に応じて後述する光重合開始剤を所定の量だけ添加した硬化性組成物を用いることができる。
多官能単量体(F1)の含有量の上限は、硬化被膜(F)の硬化収縮率が小さくなり、クラックが発生しにくくなること、硬化被膜(F)を形成した積層樹脂板に反りが生じにくくなる傾向があることから、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。多官能単量体(F1)の含有量の下限は、硬化被膜(F)の耐擦傷性が良好となることから50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
多官能単量体(F2)の含有量の上限は、硬化被膜の耐擦傷性が良好となることから、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。多官能単量体(F1)の含有量の下限は、硬化性組成物を硬化させる際の硬化収縮率が小さく、硬化被膜(F)にクラックが発生しにくくなることから20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
<光重合開始剤>
前記光重合開始剤としては、公知の化合物を用いることができる。具体的には、ベンゾインとその誘導体、ベンゾフェノとその誘導体、アセトフェノンとその誘導体、アルキルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド等の硫黄化合物等を挙げることができる。これらの光重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤の添加量は特に制限されるものではないが、前記硬化性組成物(f)100質量部に対して光重合開始剤0.5質量部以上6.0質量部以下を添加することができる。
<その他の添加剤>
前記硬化性組成物(f)には、必要に応じて従来から使用されている種々の添加剤を添加することができる。具体的には、界面活性剤、レベリング剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、難燃剤、可塑剤等や機能を付与するための単官能単量体を挙げることができる。
添加剤の添加量は、得られる前記硬化被膜(F)の物性が損なわれない範囲内で適宜定められるが、前記硬化性組成物(f)100質量部に対し、10質量部以下とすることができる。
<樹脂積層体の厚み>
本発明の樹脂積層体の全体厚みは、特に制限されるものではないが、樹脂積層体の成形性と難燃性に優れることから、1mm以上30mm以下が好ましく、3mm以上10mm以下がより好ましい。なお、樹脂積層体の全体の厚さとは、樹脂基材(A)の厚みと、硬化被膜(F)の厚みの合計を意味する。
本発明の樹脂積層体の硬化被膜(F)の膜厚は、特に制限されるものではないが、樹脂積層体の耐擦傷性と難燃性に優れることから、0.1μm以上100μm以下が好ましく、3μm以上30μm以下がより好ましい。
<樹脂積層体の製造方法>
本発明において、樹脂積層体の製造方法は特に限定されるものではなく、バッチ式や連続式で行われる公知の樹脂積層体の製造方法を用いることができる。
連続式の製造方法としては、公知の連続キャスト法で、シート状の樹脂基材(A)を製造して、その後、インライン上で連続的に前記樹脂基材(A)の少なくとも一方の表面に、上述した硬化被膜(F)を積層させ、樹脂積層体を製造する方法が挙げられる。樹脂積層体の生産性が優れていることから連続キャスト法が好ましい。
バッチ式の製造方法としては、例えば、以下の2つの方法が挙げられる。
方法(1):樹脂基材(A)の少なくとも一方の表面に前記多官能単量体(F1)と前記多官能単量体(F2)からなる硬化性組成物(f)の層を形成した後、硬化させて、硬化被膜(F)の層を形成する方法。
方法(2):前記多官能単量体(F1)と前記多官能単量体(F2)からなる硬化性組成物(f)を硬化させて、硬化被膜(F)を形成した後に、前記硬化被膜(F)の表面に樹脂基材(A)の層を形成して樹脂積層体を得る方法。
<方法(1)>
バッチ式の製造方法の前記方法(1)として、具体的には以下の方法が挙げられる。
まず、鋳型内に、樹脂基材(A)の原料として、前記の重合性組成物(X3)を注入し、注型重合により、前記重合性組成物(X3)を硬化させ、鋳型から剥離し、樹脂基材(A)を得る。次いで、樹脂基材(A)の表面に前記多官能単量体(F1)と前記多官能単量体(F2)を含有する硬化性組成物(f)を塗布し、表面を樹脂フィルムで覆う。次いで、前記硬化性組成物(f)に、活性エネルギー線を樹脂フィルムを介して照射することにより、前記硬化性組成物(f)を硬化させて、硬化被膜(F)を得る。その後、樹脂フィルムを剥がして、樹脂積層体を得る。
鋳型の種類としては、例えば金型やシート等の型が挙げられる。鋳型は、通常2つの型を、硬化被膜が形成された面が内側となるように対向させて作成される。前記型において硬化被膜が形成される面は、平滑な表面を有することが好ましい。鋳型の材質としては、例えば、ステンレス鋼、ガラス及び樹脂等が挙げられる。鋳型は、同材質の2つの型を対向させた鋳型でも、異なる材質の2つの型を対向させた鋳型でもよい。
2つの型を対向させた鋳型においては、それらの型の間に形成された空間部の周縁部にガスケットを設けてシールすることにより、内側に一定の容積を有する積層鋳型を作製する。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムが挙げられる。これらの中で、コスト、及び硬化被膜の硬化性の点で、PETフィルムが好ましい。樹脂フィルムの厚みとしては8〜125μmが好ましい。
活性エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線及び可視光線挙げられるが、装置コストや生産性の観点から紫外線が好ましい。活性エネルギー線の光量は、特に制限されるものではないが、積算光量5〜2000mJ/cmが好ましい。
他にも、前記(メタ)アクリル樹脂組成物のペレットを用いて、押出成形や射出成形等の溶融成形法によりシート状の樹脂基材(A)を得た後、前記樹脂基材(A)の表面に、公知のデイッピング法を用いて、硬化被膜(F)の層を形成する方法が挙げられる。
<方法(2)>
前記のバッチ式の製造方法(2)としては、具体的には以下の方法が挙げられる。
まず、型の内面に前記多官能単量体(F1)と前記多官能単量体(F2)を含有する硬化性組成物(f)を塗布し、表面を樹脂フィルムで覆う。次いで、硬化性組成物(f)に、活性エネルギー線を樹脂フィルムを介して照射することにより、前記硬化性組成物(f)を硬化させて、硬化被膜(F)を得る。その後、樹脂フィルムを剥がし、型の内表面に硬化被膜(F)が積層された積層鋳型を得る。得られた積層鋳型に、樹脂基材(A)の原料として、前記の重合性組成物(X3)を注入し、注型重合により、この重合性組成物を硬化させることにより、硬化被膜(F)が積層された樹脂基材(A)を得る。その後、鋳型から剥離し、樹脂積層体を得る。
鋳型としては、前述の鋳型と同様の鋳型を用いることができる。
樹脂フィルムとしては、前述の樹脂フィルムと同様のフィルムを用いることができる。
活性エネルギー線としては、前述の活性エネルギー線と同様のエネルギー線を用いることができ、活性エネルギー線を用いた硬化方法としては、前述と同様の方法で硬化することができる。
以下、実施例により本発明を詳しく説明する。以下において、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。尚、実施例における各種評価は下記の方法により実施した。
また、実施例及び比較例で使用した化合物の略号は以下の通りである。
MMA:メタクリル酸メチル
IBXMA:メタクリル酸イソボルニル
IBXA:アクリル酸イソボルニル
TBMA:メタクリル酸t−ブチル
BA:アクリル酸n−ブチル
EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
CR−570:ハロゲン含有縮合リン酸エステル(商品名、大八化学工業(株)製)
CR−504L:ハロゲン含有縮合リン酸エステル(商品名、大八化学工業(株)製)
SDS:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム
SS:ステアリン酸ナトリウム
SLS:ラウリル硫酸ナトリウム
PEH:リン酸2−エチルヘキシル
HPP:t−ヘキシルパーオキシピバレート
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
DCPMA:メタクリル酸ジシクロペンタニル
ADMA:メタクリル酸アダマンチル
p−PPMA:メタクリル酸−p−ビフェニル
PhMA:メタクリル酸フェニル
MA:アクリル酸メチル
ST:スチレン
AMA:メタクリル酸アリル
BDMA:1,3−ブチレングリコールジメタクリレート
DBP:ジ−t−ブチルパーオキサイド
n−OM:n−オクチルメルカプタン
乳化剤(1):モノ(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)リン酸40%とジ(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)リン酸60%混合物の水酸化ナトリウム部分中和物
SFS:ソディウムフォルムアルデヒドスルホキシレート
CHP:クメンハイドロパーオキサイド
ゴムA:多重構造アクリル系共重合体粒子(製造例1)
ゴムB:多重構造アクリル系共重合体粒子(製造例2)
ブロックポリマー:市販のアクリル系ブロック共重合体(商品名:クラリティ、クラレ株式会社製)
ポリアクリレート1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(60質量%以上70質量%以下)とジペンタエリスリトールペンタアクリレート(30質量%以上40質量%以下)の混合物。
ジアクリレート1:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート
BEE:ベンゾインエチルエーテル
<評価方法>
実施例及び比較例における評価は以下の方法により実施した。
(1)難燃性(JIS)
JIS K 6911−1995の耐燃性試験A法に準拠して樹脂成形体の試験片(長さ127mm×幅12.7mm)を作製し、試験片の自消までに要した時間(自消時間)を測定した。
A:試験片の自消時間が1分未満である。
B:試験片の自消時間が1分以上2分未満である。
C:試験片の自消時間が2分以上3分未満である。
D:試験片の自消時間が3分以上である。
E:試験片が自消しない。
(2)難燃性(UL94)
UL94垂直燃焼試験法に準拠して樹脂成形体の試験片(長さ125mm×幅13.0mm)の難燃性を評価した。難燃性の判定は以下の表1に示す基準に基づいて行う。
Figure 0006489210
(3)耐熱性
JIS K 7191に準拠して樹脂積層体の試験片(長さ127mm×幅12.7mm)を作製し、試験片の荷重たわみ温度(以下、「HDT」と示す)(℃)を測定して耐熱性を評価した。
(4)分散粒子径
光学顕微鏡を用いて樹脂成形体又は(メタ)アクリル系樹脂組成物を倍率1000倍で観察し、観察された任意のリン系難燃剤(C)の分散粒子又は凝集粒子20個について、分散粒子の一次粒子径又は凝集粒子の二次粒子径を測定して、その平均値を分散粒子径とした。分散粒子が観察されないときは「N.D.」とした。なお、分散粒子(一次粒子)が接触して形成された二次粒子を凝集粒子とした。
(5)分解生成物のピークの半値幅
発生ガス分析測定装置としてガスクロマトグラフ質量分析計(ガスクロマトグラフとしてAgilent社製、製品名:HP6890、加熱炉(パイロライザ)としてフロンティアラボ社製、製品名:PY2020D、質量分析計としてヒューレットパッカード社製、製品名:HP−5973、パイロライザと質量分析計は不活性キャピラリ管(Ultra Alloy DTM 2.5m,0.15mmを用いて直結とした)を用いて、(メタ)アクリル系樹脂組成物に含まれる(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位の分解生成物のピークの半値幅を測定した。
発生ガス分析測定装置に、(メタ)アクリル系樹脂組成物2mgを設置し、ヘリウム雰囲気下(流速20ml/分)で、温度60℃から550℃まで昇温速度10℃/分で昇温して、分解生成物の発生気体について質量分析を行ない、温度−クロマトグラム曲線を取得した。温度−クロマトグラム曲線において、(メタ)アクリル酸エステル(M)の発生ガスとして特徴的な質量電荷比(m/z)においてクロマトグラムを描いた際に観測されたピークを、(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位の発生ガスのピークとして、ピークのベースラインからピークトップまでの高さの半分に位置のピーク幅をピークの半値幅とした。なお、ピーク形状が正規分布でない場合も、前記方法により半値幅を求めることとする。また、(メタ)アクリル酸エステル(M)の発生ガスやリン系難燃剤(C)の分解生成物の最も特徴的な質量電荷比(m/z)は、それぞれ単独の試料で測定を行う事で知ることができる。
本実施例及び比較例で使用した化合物の質量電荷比(m/z)を以下に示す。
MMA:m/z=100、IBXMA:m/z=93、CHMA:m/z=82、DCPMA:m/z=66、ADMA:m/z=135、TBMA:m/z=56、p−PPMA:m/z=170、PhMMA:m/z=94、CR570:m/z=76、CR504L:m/z=125、D1500:m/z=211、D880:m/z=123。
(6)分解生成物の発生温度
発生ガス分析測定装置としてガスクロマトグラフ質量分析計(ガスクロマトグラフとしてAgilent社製、製品名:HP6890、加熱炉(パイロライザ)としてフロンティアラボ社製、製品名:PY2020D、質量分析計としてヒューレットパッカード社製、製品名:HP−5973、加熱炉(パイロライザ)としてフロンティアラボ社製、製品名:PY2020D、質量分析計としてヒューレットパッカード社製、製品名:HP−5973、パイロライザと質量分析計は不活性キャピラリ管(Ultra Alloy DTM 2.5m,0.15mmを用いて直結とした)を用いて、(メタ)アクリル系樹脂組成物に含まれる(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位の分解生成物の発生温度Tm(℃)、メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位の分解生成物の発生温度Ta(℃)及び前記リン系難燃剤(C)の分解生成物の発生温度Tc(℃)を測定した。
発生ガス分析測定装置に、(メタ)アクリル系樹脂組成物2mgを設置し、ヘリウム雰囲気下(流速20ml/分)で、温度60℃から550℃まで昇温速度10℃/分で昇温して、分解生成物の発生気体について質量分析を行ない、温度−クロマトグラム曲線を取得した。温度−クロマトグラム曲線において、(メタ)アクリル酸エステル(M)の分解生成物発生ガスとして最も特徴的な質量電荷比(m/z)においてクロマトグラムを描いた際に観測されたピークを(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位の分解生成物の発生ガスのピーク、メタクリル酸メチルの発生ガスとして特徴的な質量数においてクロマトグラムを描いた際に観測されたピークをメタクリル酸メチル由来の繰り返し単位の分解生成物の発生ガスのピーク、またリン系難燃剤(C)の分解生成物発生ガスとして特徴的な質量数においてクロマトグラムを描いた際に観測されたピークをリン系難燃剤(C)の分解生成物の発生ガスのピークとして、温度−クロマトグラム曲線のピークの最高の点を分解生成物の発生温度とした。
なお、(メタ)アクリル酸エステル(M)の発生ガスやリン系難燃剤(C)の分解生成物の最も特徴的な質量電荷比(m/z)は、それぞれ単独の試料で測定を行う事で知ることができる。
サンプルは樹脂組成物から2mgを切り取るなどして、測定に供する。この際、サンプルの大きさによって分解特性が変わる恐れがあるため、1粒〜3粒で2mgとする。
(7)シャルピー衝撃強さ
JIS K7111−1/fUに準じ、ノッチなしシャルピー衝撃強度を測定した。
(8)耐候性
JIS K7350−4に準拠して、サンシャインウェザーメーター(条件:63℃、50%、水噴霧時間 12分/60分)で樹脂成形体を1000時間の暴露試験を行い、試験前後のイエローインデックス(ΔYI)を測定した。
(9)表面硬度
JIS K5600−5−4に準拠して、樹脂積層体の鉛筆硬度を測定し、表面硬度を評価した。
(10)板厚の測定
樹脂積層体の厚みを、ノギスを用いて測定した。
(11)膜厚の測定
樹脂積層体を厚み方向に対して平行方向に、パネルソー等の切断機を用いて切断した。次いで、切断した樹脂積層体の切断面を、端面鏡面仕上げ機を用いて研磨した。デジタルマイクロスコープを用いて、研磨した断面を観察することにより、膜厚を測定した。
(12)重量平均分子量(Mw)
リン系難燃剤(C)の重量平均分子量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)を用いて測定した。テトラヒドロフラン(THF、和光純薬工業社製、試薬特級)にリン系難燃剤(C)を2mg/mLの濃度になるよう溶解し、得られた溶液をGPC測定用のサンプルとした。GPC測定は、高速液体クロマトグラフィー測定装置(東ソー(株)製、装置名:HLC−8320型)に、ガードカラム(商品名:TSK−guardcolumn SUPERH−L、東ソー(株)社製)を接続した分離カラム(諸品名:SUPER H4000、6.0mmφ×150mm、東ソー(株)社製)に分離カラム(商品名:SUPER H2000、6.0mmφ×150mm、東ソー(株)社製)を繋いで使用し、検出器には示差屈折計を用いた。分離カラム温度40℃、移動層としてTHF、移動層の流量0.6ml/min、サンプル注入量10μlとして測定を行った。分子量既知のポリスチレン10種類(Mw5,970、〜6,770,000)、Irganox1010(Mw1178)オ及び2,2‘−メチレンビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)(Mw340)を用いて較正曲線(3次式)を作成し、重量平均分子量(Mw)を求めた。
(13)固体NMRによる緩和スペクトルの測定
樹脂成形体又は(メタ)アクリル系樹脂組成物を粉砕又は切断して5mm角程度の小片を得た。次いで、得られた小片2.5gを、凍結粉砕器(装置名:SPEX9750 FREEZER/MILL、SPEX CertiPrep Ltd社製、:条件 10cpsを2分間×2サイクル)を用いて、凍結粉砕して粉末状サンプルを得た。得られた粉末状サンプルを固体NMR用サンプル管(φ7mm、内径φ6mm)に充填して、これを固体NMR測定用試料とした。次いで、固体NMR測定装置で、プロトンスピンロック交差分極法により、スピンロック時間を可変して、13C核と31P核スペクトルを測定した。
測定条件の詳細は以下のとおりである。
・固体NMR測定装置:AVANCEII 300(ブルカーバイオスピン社製)
・測定温度:室温(22℃)
・観測核:13C (観測周波数75.4MHz)
31P (観測周波数を121MHz)
・コンタクトタイム:2000μs
・パルスシークエンス:図1に記載
・試料回転速度:6kHz
・繰り返し時間:4sec
・積算回数:512回
・スピンロック時間:16、20、25,30msec
13C核スペクトルの基準は、グリシンのカルボニルピークを176.03ppmとした。
31P核スペクトルは、最も強度の大きいピークを0ppmとした。
スピンロック交差分極法(CP法)で、所定のスピンロック時間τ(単位:msec)で13C核スペクトルと31P核スペクトルの測定を行なった。アクリル系樹脂組成物のカルボニル基の炭素に対応したスペクトル(ピーク)は13C核スペクトルの−180ppm〜−160ppm、リン系難燃剤(C)のリン原子に対応したスペクトル(ピーク)は31P核スペクトルの−40〜40ppmとして、下記MC(τ)と下記MP(τ)を測定して、下記式(a)より値D(%)を計算した。
(%)=|MC(τ)−MP(τ)|/MC(τ)×100 ・・・(a)
MC(τ):以下に示す(A)及び(B)の平均値
(A)スピンロック時間τsecにおける13C核緩和スペクトルの160ppm〜180ppmに観測されるカルボニル基の炭素に対応するスペクトルの面積を、スピンロック時間10μsecにおける13C核緩和スペクトルの160ppm〜180ppmに観測されるカルボニル基の炭素に対応するスペクトルの面積で除した値。
(B)スピンロック時間τsecにおける13C核緩和スペクトルの30ppm〜65ppmに観測されるメチレン基の炭素に対応するスペクトルの面積を、スピンロック時間10μsecにおける13C核緩和スペクトルの30ppm〜65ppmに観測されるメチレン基の炭素に対応するスペクトルの面積で除した値。
MP(τ):スピンロック時間τsecにおける31P核緩和スペクトルの−40〜40ppmに観測されるリン系難燃剤(C)のリン原子に対応するスペクトルの面積を、スピンロック時間10μsecにおける31P核スペクトルの−40〜40ppmに観測されるリン系難燃剤(C)のリン原子に対応するスペクトルの面積で除した値。
[実施例1]
(1)シラップ(A1)の製造
冷却管、温度計及び攪拌機を備えた反応器(重合釜)に、MMA68質量部、IBXMA20質量部、IBXA3質量部、TBMA8質量部、BA1質量部からなる単量体組成物を投入した。前記単量体組成物を、室温に維持して、窒素ガスでバブリングしながら撹拌した後、温度60℃まで攪拌しながら昇温した。次いで、前記単量体組成物100質量部に対して、ラジカル重合開始剤として2,2'−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.1質量部を添加して、前記単量体組成物を温度100℃まで攪拌しながら昇温した後、13分間保持した。その後、反応器の内温が室温になるまで冷却して、重合体30質量%と単量体組成物70質量%(内訳は、MMA68質量%、IBXMA20質量%、IBXA3質量%、TBMA8質量%、BA1質量%)からなるシラップ(A1)を得た。
(2)注型重合
上記のシラップ(A1)100質量部に対して、単量体(B)としてEDMA0.12質量部を添加し、室温で10分間撹拌しながら溶解させて、単量体組成物(X1)を得た。さらに前記単量体組成物(X1)に両親媒性化合物(E)としてSDS(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)0.2質量部を添加して、室温で10分間撹拌しながら溶解させ、混合物(X2)を得た。その後、リン系難燃剤(C)としてCR−570を10.5質量部、重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシピバレート0.3質量部を添加して、溶解したものを重合性組成物(X3)とした。
対向して配置した2枚のSUS板の間の周縁部に、2枚のSUS板の空隙間隔が4.1mmとなるように塩化ビニル樹脂製ガスケットを設置して、鋳型を作製した。前記重合性組成物(X3)を調整してから1時間静置した後に、上記の鋳型の中に、重合性組成物(X3)を流し込み、塩化ビニル樹脂製ガスケットで完全に封止した後、直ぐに82℃まで昇温して30分間保持し、次いで130℃まで昇温して30分間保持して、重合性組成物(X3)を重合させた。即ち、リン系難燃剤(C)を添加してから重合を開始するまでの時間は1時間であった。次いで、室温まで冷却した後、SUS板を取り除いて厚さ3mmの板状の樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体から切断機を用いて、難燃性評価用の試験片、耐熱性評価用の試験片を切り出した。切り出した試験片の端面をフライス盤で切削した。得られた樹脂成形体の評価結果を表2、4に示す。樹脂成形体の難燃性はJIS K 6911−1995の耐燃性試験A法(以下、「難燃性(JIS)」と略する)において自消時間は1.0分であった。また、得られた樹脂成形体を光学顕微鏡を用いて観察したところ、0.1μmを超える凝集粒子は観察されなかった。また、値Dは2.7%、値Dは5.1%であった。
[実施例2、3]
リン系難燃剤(C)としてCR−570を添加してから重合を開始するまでの時間を表2に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体の評価結果を表4に示す。
[実施例4〜6]
リン系難燃剤(C)の添加量と、リン系難燃剤(C)としてCR−570を添加してから重合を開始するまでの時間を表2に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体の評価結果を表4に示す。
[実施例7、8]
両親媒性化合物(E)の添加量を表2、4に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体の評価結果を表4に示す。
[実施例9、10]
両親媒性化合物(E)としてSS(ステアリン酸ナトリウム)0.2質量部を添加し、リン系難燃剤(C)の添加量を表2、4に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体の評価結果を表4に示す。
[実施例11、12]
両親媒性化合物(E)としてSLS(ラウリル硫酸ナトリウム)0.2質量部を添加し、リン系難燃剤(C)の添加量を表2、4記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体の評価結果を表4に示す。
[実施例13、14]
両親媒性化合物(E)としてPEH(リン酸2−エチルヘキシル)0.05質量部を添加し、リン系難燃剤(C)の添加量およびリン系難燃剤(C)を添加してから重合を開始するまでの時間を表2記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体の評価結果を表4に示す。
[実施例15]
リン系難燃剤(C)としてCR−504Lを使用して、添加量を表2、4記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体の評価結果を表4に示す。
[比較例1]
実施例1で作製したシラップ(A)を用いて、注型重合を行う際に、シラップ100質量部に対して、単量体(B)としてEDMA0.12質量部及びリン系難燃剤(C)としてCR−570を10.5質量部添加して、室温で10分間撹拌しながら溶解させた。CR−570を添加してから1時間後に、両親媒性化合物(E)としてSDS0.2質量部、重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシピバレート0.3質量部を添加して、溶解したものを重合性組成物(X3)とし、実施例1と同様の方法で直ちに重合を開始して樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体の評価結果を表5に示す。
[比較例2]
リン系難燃剤(C)の添加量を表3、5記載のとおりに変更した以外は、比較例1と同様の方法で樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体の評価結果を表5に示す。
[比較例3、4]
両親媒性化合物(E)の添加量を表3、5記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体の評価結果を表5に示す。
[比較例5]
(1)シラップ(A2)の製造
冷却管、温度計及び攪拌機を備えた反応器(重合釜)に、MMA91質量部、TBMA8質量部、BA1質量部からなる単量体組成物を投入した。前記単量体組成物を、室温に維持して、窒素ガスでバブリングしながら撹拌した後、温度60℃まで攪拌しながら昇温した。次いで、前記単量体組成物100質量部に対して、ラジカル重合開始剤として2,2'−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.1質量部を添加して、前記単量体組成物を温度100℃まで攪拌しながら昇温した後、13分間保持した。その後、反応器の内温が室温になるまで冷却して、重合体30質量%と単量体組成物70質量%(内訳は、MMA91質量%、BA1質量%)からなるシラップ(A2)を得た。
(2)注型重合
上記のシラップ(A2)100質量部に対して、単量体(B)としてEDMA0.12質量部を添加し、室温で10分間撹拌しながら溶解させて、単量体組成物(X1)を得た。さらに前記単量体組成物(X1)に両親媒性化合物(E)としてSDS(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)0.2質量部を添加して、室温で10分間撹拌しながら溶解させ、混合物(X2)を得た。その後、リン系難燃剤(C)としてCR−570を10.5質量部、重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシピバレート0.3質量部を添加して、溶解したものを重合性組成物(X3)とした。
この重合性組成物(X3)を用い、実施例1と同様の方法で重合を開始して樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体の評価結果を表5に示す。
[比較例6]
リン系難燃剤(C)の添加量を表3、5記載のとおりに変更した以外は、比較例5と同様の方法で樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体の評価結果を表5に示す。
実施例1〜3で得られた樹脂成形体は、光学顕微鏡で観察したところ、リン系難燃剤(C)の分散粒子は観察されず、難燃性(JIS)、耐熱性が良好であった。
実施例4〜6で得られた樹脂成形体は、光学顕微鏡で観察したところ、リン系難燃剤(C)の分散粒子は観察されず、難燃性(JIS)、UL94垂直燃焼試験法における難燃性(以下、難燃性(UL94)と略する)、耐熱性が良好であった。
実施例7で得られた樹脂成形体は、光学顕微鏡で観察したところ、分散粒子径が0.8μmのリン系難燃剤(C)の粒子が観察されたが、難燃性(JIS)及び耐熱性が良好であった。
実施例8で得られた樹脂成形体は、リン系難燃剤(C)の分散粒子は観察されず、難燃性(JIS)及び耐熱性が良好であった。
実施例9で得られた樹脂成形体は、光学顕微鏡で観察したところ、リン系難燃剤(C)の分散粒子は観察されず、難燃性(JIS)、耐熱性が良好であった。
実施例10で得られた樹脂成形体は、光学顕微鏡で観察したところ、リン系難燃剤(C)の分散粒子は観察されず、難燃性(JIS及びUL94)、耐熱性が良好であった。
実施例11で得られた樹脂成形体は、光学顕微鏡で観察したところ、リン系難燃剤(C)の分散粒子は観察されず、難燃性(JIS)、耐熱性が良好であった。
実施例12で得られた樹脂成形体は、光学顕微鏡で観察したところ、リン系難燃剤(C)の分散粒子は観察されず、難燃性(JIS及びUL94)、耐熱性が良好であった。
実施例13で得られた樹脂成形体は、光学顕微鏡で観察したところ、リン系難燃剤(C)の分散粒子は観察されず、難燃性(JIS)、耐熱性が良好であった。
実施例14で得られた樹脂成形体は、光学顕微鏡で観察したところ、リン系難燃剤(C)の分散粒子は観察されず、難燃性(JIS及びUL94)、耐熱性が良好であった。
実施例15で得られた樹脂成形体は、光学顕微鏡で観察したところ、リン系難燃剤(C)の分散粒子は観察されず、難燃性(JIS)、耐熱性が良好であった。
一方、比較例1で得られた樹脂成形体は、樹脂成形体中に分散粒子径が0.8μmを超えるリン系難燃剤(C)の粒子が観察され、D及びDの値が実施例1より大きかった。また、樹脂成形体の難燃性(JIS)は不十分であった。
比較例2で得られた樹脂成形体は、樹脂成形体中に分散粒子径が0.8μmを超えるリン系難燃剤(C)の粒子が観察され、樹脂成形体の難燃性(JIS及びUL94)は不十分であった。
比較例3で得られた樹脂成形体は、樹脂成形体中に分散粒子径が0.8μmを超えるリン系難燃剤(C)の粒子が観察され、樹脂成形体の難燃性(JIS)は不十分であった。
比較例4で得られた樹脂成形体は、光学顕微鏡で観察したところ、リン系難燃剤(C)の分散粒子は観察されなかったが、SDS(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)量が多いことで難燃性(JIS)が不十分であった。
比較例5で得られた樹脂成形体は、光学顕微鏡で観察したところ、リン系難燃剤(C)の分散粒子は観察されなかったが、(メタ)アクリル酸エステル(M)を含まないため、難燃性(JIS)が不十分であった。
比較例6で得られた樹脂成形体は、光学顕微鏡で観察したところ、リン系難燃剤(C)の分散粒子は観察されなかったが、(メタ)アクリル酸エステル(M)を含まないため、難燃性(UL94)が不十分であり、耐熱性も低かった。
Figure 0006489210
Figure 0006489210
Figure 0006489210
Figure 0006489210
[実施例16]
(1)シラップ(A3)の製造
冷却管、温度計及び攪拌機を備えた反応器(重合釜)に、MMA70質量部、(メタ)アクリル酸エステル(M)としてIBXMA30部の前記単量体組成物を投入した。前記単量体組成物を、室温に維持して、窒素ガスでバブリングしながら撹拌した後、温度60℃まで攪拌しながら昇温した。次いで、前記単量体組成物100質量部に対して、ラジカル重合開始剤として2,2'−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.1質量部を添加して、前記単量体組成物を温度100℃まで攪拌しながら昇温した後、13分間保持した。その後、反応器の内温が室温になるまで冷却して、重合体30質量%と単量体組成物70質量%(内訳は、MMA70質量%、IBXMA30質量%)からなるシラップ(A3)を得た。
(2)注型重合
上記のシラップ(A3)100質量部に対して、単量体(B)としてEDMA0.15質量部を添加し、室温で10分間撹拌しながら溶解させて、単量体組成物(X1)を得た。さらに前記単量体組成物(X1)に両親媒性化合物(E)としてSDS(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)0.2質量部を添加して、室温で10分間撹拌しながら溶解させ、混合物(X2)を得た。その後、リン系難燃剤(C)としてCR−570を19.0質量部、重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシピバレート0.3質量部を添加して、溶解したものを重合性組成物(X3)とした。
対向して配置した2枚のSUS板の間の周縁部に、2枚のSUS板の空隙間隔が4.1mmとなるように塩化ビニル樹脂製ガスケットを設置して、鋳型を作製した。前記重合性組成物(X3)を調整してから168時間静置した後に、上記の鋳型の中に重合性組成物(X3)を流し込み、塩化ビニル樹脂製ガスケットで完全に封止した後、直ぐに82℃まで昇温して30分間保持し、次いで130℃まで昇温して30分間保持して、重合性組成物(X3)を重合させた。即ち、リン系難燃剤(C)を添加してから重合を開始するまでの時間は168時間であった。次いで、室温まで冷却した後、SUS板を取り除いて厚さ3mmの板状の樹脂成形体を得た。
得られた成型体から2mgを切り取り、分解生成物のピークの半値幅及び分解生成物の発生温度を求めた。なお、メタクリル酸メチルとしてはm/z100を、(メタ)アクリル酸エステル(M)の側鎖脱離物としてはm/z93を、リン系難燃剤(C)としてはm/z76を用いた。
また、得られた樹脂成形体から、切断機を用いて、難燃性評価用の試験片及び耐熱性評価用試験片を切り出した後に、試験片の切り出した面をフライス盤で研磨した。樹脂成形体の評価結果を表7に示す。得られた樹脂成形体は、難燃性(JIS及びUL94)で良好な難燃性を有し、且つ耐熱性81℃と良好であった。
[実施例17〜21]
(メタ)アクリル酸エステル(M)の種類を表6記載のとおりとした以外は実施例16と同様にして樹脂成形体を得た。樹脂成形体の評価結果を表7に示す。実施例17、18の樹脂成形体は、難燃性(JIS及びUL94)、耐熱性が良好であった。実施例19〜21の樹脂成形体は、(メタ)アクリル酸エステル(M)分解物の半値幅が26を超えており、(Ta−Tm)が100未満のため、難燃性(JIS)がやや低かった。
[実施例22]
表6記載のとおり、(メタ)アクリル酸エステル(M)の種類をメタクリル酸エステル(M1)とアクリル酸エステル(M2)の併用とした以外は実施例16と同様にして樹脂成形体を得た。樹脂成形体の評価結果を表7に示す。実施例22の樹脂成形体は、難燃性(JIS及びUL94)、耐熱性が良好であった。
[実施例23、24]
リン系難燃剤(C)の種類と添加量を表6記載のとおりとした以外は、実施例15と同様にして樹脂成型体を得た。樹脂成形体の評価結果を表7に示す。実施例23及び24の樹脂成形体は、難燃性(JIS)、耐熱性が良好であった。
[実施例25]
(メタ)アクリル酸エステル(M)の添加量を表6記載のとおりとした以外は実施例16と同様にして樹脂成形体を得た。樹脂成形体の評価結果を表7に示す。実施例25の樹脂成形体は、難燃性(JIS)、耐熱性が良好であった。
Figure 0006489210
Figure 0006489210
[実施例26]
〔製造例1〕多重構造アクリル系共重合体粒子(ゴムA)の製造
1.混合物(a−1)の調製
MMA35部、BA5部、BDMA1部、AMA0.15部、DBP0.08部、乳化剤(1)1.4部を混合して混合物(a−1)を得た。
2.混合物(a−2)の調製
SFS0.2部、脱イオン水5部を混合して混合物(a−2)を得た。
3.混合物(a−3)の調製
ST10部、BA50部、BDMA0.2部、AMA1.2部、CHP0.2部、 乳化剤(1)2.0部を混合して混合物(a−3)を得た。
4.混合物(a−4)の調製
SFS0.2部、脱イオン水5部を混合して混合物(a−4)を得た。
5.混合物(a−5)の調製
MMA57.0部、BA3.0部、DBP0.1部、n−OM0.2部を混合して混合物(a−5)を得た。
6.多重構造アクリル系共重合体粒子(ゴムA)の製造
還流冷却器付き反応容器に、イオン交換水300部、炭酸ナトリウム0.09部、ほう酸0.9部を加え、撹拌しながら80℃に昇温した後、前記混合物(a−1)42.63部の内2.6部を添加して15分保持し、その後残りの前記混合物(a−1)を5.5部/時間の速度で連続的に添加し、その後1時間保持して最内層の重合を行った。
次いで、前記混合物(a−2)を5.2部加え、15分保持した後、前記混合物(a−3)63.6部を5.1部/時間の速度で連続的に添加し、その後2.5時間保持して中間層の重合を行った。
次いで、前記混合物(a−4)を5.2部加え、15分保持した後、前記混合物(a−5)60.3部を0.6部/時間の速度で連続的に添加し、その後1時間保持して最外層の重合を行い、多重構造アクリル系共重合体ラテックスを得た。
次いで、このラテックスを酢酸カルシウム水溶液で凝固し、洗浄、脱水、乾燥を行い、多重構造アクリル系共重合体の粒子(ゴムA)を得た。
(1)シラップ(A4)の製造
冷却管、温度計及び攪拌機を備えた反応器(重合釜)に、MMA71質量部、IBXMA25質量部、IBXA1質量部、TBMA2質量部、BA1質量部からなる単量体組成物を投入した。前記単量体組成物を、室温に維持して、窒素ガスでバブリングしながら撹拌した後、温度60℃まで攪拌しながら昇温した。次いで、前記単量体組成物100質量部に対して、ラジカル重合開始剤として2,2'−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.02質量部を添加して、前記単量体組成物を温度100℃まで攪拌しながら昇温した後、13分間保持した。その後、反応器の内温が室温になるまで冷却して、重合体5質量%と単量体組成物95質量%からなるシラップ(A4)を得た。
(2)注型重合
上記のシラップ(A4)に対して、単量体(B)としてEDMA0.15質量部を添加して、室温で10分間撹拌しながら溶解させて、単量体組成物(X1)を得た。さらに前記単量体組成物(X1)に両親媒性化合物(E)としてSDS(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)0.2質量部、及び耐衝撃向上剤(D)としてゴムA7.5質量部を添加して、室温で10分間撹拌しながら溶解させ、混合物(X2)を得た。その後、リン系難燃剤(C)としてCR−570を13.6質量部、重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシピバレート0.3質量部を添加して、溶解したものを重合性組成物(X3)とした。
対向して配置した2枚のSUS板の間の周縁部に、2枚のSUS板の空隙間隔が4.1mmとなるように樹脂製ガスケットを設置して、鋳型を作製した。前記重合性組成物(X3)を調整してから168時間静置した後に、上記の鋳型の中に、重合性組成物(X3)を流し込み、樹脂製ガスケットで完全に封止した後、直ぐに82℃まで昇温して30分間保持し、次いで130℃まで昇温して30分間保持して、重合性組成物(X3)を重合させた。即ち、リン系難燃剤(C)を添加してから重合を開始するまでの時間は168時間であった。次いで、室温まで冷却した後、SUS板を取り除いて厚さ3mmの板状の樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体から切断機を用いて、難燃性評価用の試験片、シャルピー衝撃強さ評価用の試験片及び耐候性評価用の試験片を切り出した。また、難燃性評価用及びシャルピー衝撃強さ評価用の試験片については、端面をフライス盤で切削した。得られた樹脂成形体の評価結果を表9に示す。樹脂成形体は、難燃性(JIS)が良好であり、且つシャルピー衝撃強さは35kJ/m2、耐候性(ΔYI)は5と良好であった。
[実施例27]
耐衝撃向上剤(D)の添加量を表8記載のとおりとした以外は実施例26と同様にして樹脂成形体を得た。樹脂成形体の評価結果を表9に示す。実施例27の樹脂成形体は、難燃性(JIS)、耐候性、シャルピー衝撃強度が良好であった。
[実施例28]
〔製造例2〕多重構造アクリル系共重合体粒子(ゴムB)の製造
1.混合物(b−1)の調整
MMA23部、ST1部、BA16部、BDMA1部、AMA0.15部、DBP0.08部、乳化剤(1)1.4部を混合して混合物(b−1)を得た。
2.混合物(b−2)の調整
SFS0.2部、脱イオン水5部を混合して混合物(b−2)を得た。
3.混合物(b−3)の調整
ST10部、BA50部、BDMA0.2部、AMA1.2部、CHP0.2部、乳化剤(1)2.0部を混合して混合物(b−3)を得た。
4.混合物(b−4)の調整
SFS0.2部、脱イオン水5部を混合して混合物(b−4)を得た。
5.混合物(b−5)の調整
MMA57.0部、MA3.0部、DBP0.1部、n−OM0.2部を混合して混合物(b−5)を得た。
6.多重構造アクリル系共重合体粒子(ゴムB)の製造
還流冷却器付き反応容器に、イオン交換水300部、炭酸ナトリウム0.09部、ほう酸0.9部を加え、80℃に昇温した後、前記混合物(b−1)41.33部の内2.5部を添加して15分保持し、その後残りの前記混合物(b−1)を5.4質量部/時間の速度で連続的に添加し、その後1時間保持して最内層の重合を行った。
次いで、前記混合物(b−2)を5.2部加え、15分保持した後、前記混合物(b−3)63.6部を5.1部/時間の速度で連続的に添加し、その後2.5時間保持して中間層の重合を行った。
次いで、前記混合物(b−4)を5.2部加え、15分保持した後、前記混合物(b−5)61.3部を0.61部/時間の速度で連続的に添加し、その後1時間保持して最外層の重合を行い、多重構造アクリル系共重合体ラテックスを得た。
次いで、このラテックスを酢酸カルシウム水溶液で凝固し、洗浄、脱水、乾燥を行い、多重構造アクリル系共重合体の粒子(ゴムB)を得た。
耐衝撃向上剤(D)としてゴムB7.5部を添加した以外は実施例26と同様にして樹脂成形体を得た。樹脂成形体の評価結果を表9に示す。実施例28の樹脂成形体は、難燃性(JIS)、耐候性、シャルピー衝撃強度が良好であった。
[実施例29]
耐衝撃向上剤(D)として市販のアクリル系ブロック共重合体(商品名:クラリティ、クラレ株式会社製)7.5部を添加とした以外は実施例26と同様にして樹脂成形体を得た。樹脂成形体の評価結果を表9に示す。実施例29の樹脂成形体は、難燃性(JIS)、耐候性、シャルピー衝撃強度が良好であった。
Figure 0006489210
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[実施例30]
(1)硬化被膜(F)の製造
多官能単量体(F1)としてのポリアクリレート1が40質量%、多官能単量体(F2)としてのジアクリレート1が60質量%からなる硬化性組成物(f)に、前記硬化性組成物(f)100質量部として、光重合開始剤としてBEEを1.5質量部添加して混合した(以下、光重合開始剤を添加した後の硬化性組成物も、「硬化性組成物(f)」という。)。
次いで、鏡面状のSUS304板上に、前記硬化性組成物(f)を塗布し、厚さ12μmのPETフィルムを被せ、PETフィルム上に、JIS硬度40°のゴムロールでしごいて、SUS304板上に前記硬化性組成物(f)からなる層を形成した。
次いで、硬化性組成物(f)の層が形成されたSUS304板を、蛍光紫外線ランプ(東芝(株)製、商品名:FL40BL、出力40Wの)の下方20cmの位置を、2m/分間のスピードで通過させながら、蛍光紫外線ランプの光をPETフィルムを介して前記硬化性組成物(f)に照射して、硬化処理した後に、PETフィルムを剥離した。
次いで、硬化処理後の前記硬化性組成物(f)の層が形成されたSUS304板を、高圧水銀灯(出力30W/cm)の下方20cmの位置を、3m/分間のスピードで通過させながら、高圧水銀灯の紫外線を前記硬化性組成物(f)照射して、さらに硬化処理して、SUS304板上に膜厚20μmの硬化被膜(F)を形成した。同様の作業を繰り返し、硬化被膜(F)が形成された2枚のSUS304板を得た。
(2)鋳型の作製
硬化被膜(F)が形成された2枚のSUS304板を、硬化被膜(F)が形成された面が内側になるようにして対向させて、2枚のSUS304板の間の周縁部に、空隙間隔が4.1mmとなるように樹脂製ガスケットを設置して、これを鋳型とした。
(3)シラップ(A5)の製造
冷却管、温度計及び攪拌機を備えた反応器(重合釜)にMMA67質量部、IBXMA25質量部、IBXA5質量部、TBMA2質量部及びBA1質量部の混合物を供給し、撹拌しながら、窒素ガスでバブリングした後、加熱を開始した。内温が60℃になった時点で、ラジカル重合開始剤である2,2'−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.1部を添加し、更に内温100℃まで加熱した後、13分間保持した。次いで、反応器を室温まで冷却して、重合体は30質量%、単量体組成物は70質量%からなるシラップ(A5)を得た。
(4)注型重合
上記のシラップ(A5)100質量部に、単量体(B)としてEDMA0.15質量部を添加し、室温で10分間撹拌しながら溶解させて、単量体組成物(X1)を得た。さらに前記単量体組成物(X1)に両親媒性化合物(E)としてSDS(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)0.2質量部を添加して、室温で10分間撹拌しながら溶解させ、混合物(X2)を得た。その後、リン系難燃剤(C)としてCR−570を13.6質量部、重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシピバレート0.3質量部を添加して、溶解したものを重合性組成物(X3)とした。
次いで、前記重合性組成物(X3)を調整してから168時間静置した後に、上記の鋳型の中に、重合性組成物(X3)を流し込み、樹脂製ガスケットで完全に封止した後、82℃で30分、次いで130℃で30分加熱して、重合性組成物(X3)を重合させた後、室温まで冷却した。次いで、SUS板を取り除いて厚さ3mmの板状の樹脂積層体を得た。
得られた樹脂積層体から、切断機を用いて、難燃性評価用の試験片及び耐熱性評価用試験片を切り出した後に、試験片の切り出した面をフライス盤で研磨した。樹脂積層体の評価結果を表11に示す。得られた樹脂積層体は、難燃性(JIS)の評価で難燃性を有し、且つ耐熱性95℃、耐候性(ΔYI)は3、また鉛筆硬度は4Hと良好であった。
[実施例31]
リン系難燃剤(C)の添加量を表10記載のとおりに変更した以外は、実施例30と同様の方法で樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体の評価結果を表11に示す。得られた樹脂積層体は、難燃性(JIS、UL94)の評価で良好な難燃性を有し、且つ耐熱性82℃、耐候性(ΔYI)は3、また鉛筆硬度は4Hと良好であった。
[実施例32、33]
硬化被膜(F)の硬化性組成物(f)の組成及びリン系難燃剤(C)の添加量を表10に示すとおりとした以外は実施例30と同様にして樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体の評価結果を表11に示す。実施例32で得られた樹脂積層体は、難燃性(JIS)の評価で難燃性を有し、且つ耐熱性95℃、耐候性(ΔYI)は3、また鉛筆硬度は8Hと良好であった。また、実施例33で得られた樹脂積層体は、難燃性(JIS、UL94)の評価で良好な難燃性を有し、且つ耐熱性82℃、耐候性(ΔYI)は3、また鉛筆硬度は8Hと良好であった。
Figure 0006489210
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本発明により、良好な耐熱性を有し、さらに高い難燃性を有する(メタ)アクリル系樹脂組成物、及び前記(メタ)アクリル系樹脂組成物からなる樹脂成形体を安定に提供することができる。このような樹脂成形体は、看板等の高い難燃性が要求される用途に好適に用いることができる。
1 硬化被膜
2 樹脂基材
3 樹脂積層体

Claims (27)

  1. (メタ)アクリル系重合体(P)、リン系難燃剤(C)及び両親媒性化合物(E)を含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、
    前記(メタ)アクリル系重合体(P)が、芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を側鎖に有する(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位を含む重合体であり、
    前記(メタ)アクリル系樹脂組成物中における、前記リン系難燃剤(C)の分散粒子径が0.8μm以下であり、
    前記(メタ)アクリル系樹脂組成物が、前記リン系難燃剤(C)を、前記(メタ)アクリル系重合体(P)100質量部に対して、5.0質量部以上35.0質量部以下を含有し、且つ、JIS K 6911−1995の耐燃性試験A法において3分以内で自消する難燃性を有し、前記リン系難燃性剤(C)が、リン酸エステル及びホスホン酸エステルから選ばれる少なくとも1種であり、前記両親媒性化合物(E)が、陰イオン系界面活性剤である、(メタ)アクリル系樹脂組成物。
  2. 前記(メタ)アクリル系樹脂組成物が、前記(メタ)アクリル系重合体(P)100質量部に対して、両親媒性化合物(E)0.01質量部超2.0質量部以下を含有する、請求項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
  3. 前記陰イオン系界面活性剤が、アルキルスルホコハク酸のアルカリ金属塩である、請求項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
  4. 前記アルキルスルホコハク酸のアルカリ金属塩が、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムである、請求項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
  5. 前記(メタ)アクリル系重合体(P)が、(メタ)アクリル系重合体(P)の総質量に対し、メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位19.95質量%以上84.95質量%以下と、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位3.6質量%以上80.0質量%以下を含む重合体である、請求項1〜のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
  6. 前記(メタ)アクリル系重合体(P)が、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位として、
    芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を側鎖に有するメタクリル酸エステル(M1)由来の繰り返し単位と、
    芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を側鎖に有するアクリル酸エステル(M2)由来の繰り返し単位とを含み、且つ、
    前記メタクリル酸エステル(M1)由来の繰り返し単位10.0質量%以上79.5質量%以下、及び、
    前記アクリル酸エステル(M2)由来の繰り返し単位0.50質量%以上20.0質量%以下を含む、請求項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
  7. 前記(メタ)アクリル系重合体(P)が、(メタ)アクリル系重合体(P)の総質量に対し、分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する単量体(B)由来の構造単位0.05質量%以上0.40質量%以下を含む重合体である、請求項またはに記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
  8. 下記の測定方法1で測定した、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位の分解生成物のピークの半値幅が26℃以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
    <測定方法1>
    発生ガス分析測定装置(EGA−MS)を用いて、(メタ)アクリル系樹脂組成物2mgを、ヘリウム雰囲気下(流速20ml/分)、昇温速度10℃/分にて、分解生成物の発生気体の質量分析を行ない、得られた温度−クロマトグラム曲線における、分解生成物のピークの半値幅を求める。
  9. 下記の測定方法2で得られた前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位の分解生成物の発生温度及び前記リン系難燃剤(C)の分解生成物の発生温度が、下記式(1)をみたす、請求項1〜のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
    |Tm−Tc|≦40 ・・・(1)
    Tc:リン系難燃剤(C)分解生成物の発生温度(単位:℃)
    Tm:(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位の分解生成物の発生温度(単位:℃)
    <測定方法2>
    発生ガス分析測定装置(EGA−MS)を用いて、(メタ)アクリル系樹脂組成物2mgを、ヘリウム雰囲気下(流速20ml/分)、昇温速度10℃/分にて、分解生成物の発生気体の質量分析を行ない、得られた温度−クロマトグラム曲線における、分解生成物の発生温度を求める。
  10. 前記測定方法2で得られた前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位の分解生成物の発生温度及び前記メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位の分解生成物の発生温度が、下記式(2)をみたす、請求項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
    100≦Ta−Tm ・・・(2)
    Ta:メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位の分解生成物の発生温度(単位:℃)
  11. 前記半値幅が21℃以下である、請求項10のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
  12. 固体NMR測定装置でスピンロック交差分極法により観測した緩和スペクトルのMC(τ)とMP(τ)を用いて下記式(a)より計算される値D1(%)について、スピンロック時間τ=30msecにおける値D1(%)が6.0(%)以下である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
    D1(%)=|MC(τ)−MP(τ)|/MC(τ)×100・・・(a)
    MC(τ):下記(A)及び(B)の値の平均値
    (A)スピンロック時間τsecにおける13C核緩和スペクトルの160ppm〜180ppmに観測されるカルボニル基の炭素に対応するスペクトルの面積を、スピンロック時間10μsecにおける13C核緩和スペクトルの160ppm〜180ppmに観測されるカルボニル基の炭素に対応するスペクトルの面積で除した値。
    (B)スピンロック時間τsecにおける13C核緩和スペクトルの30ppm〜65ppmに観測されるメチレン基の炭素に対応するスペクトルの面積を、スピンロック時間10μsecにおける13C核緩和スペクトルの30ppm〜65ppmに観測されるメチレン基の炭素に対応するスペクトルの面積で除した値。
    MP(τ):スピンロック時間τsecにおける31P核緩和スペクトルの−40〜40ppmに観測されるリン系難燃剤(C)のリン原子に対応するスペクトルの面積を、スピンロック時間10μsecにおける31P核スペクトルの−40〜40ppmに観測されるリン系難燃剤(C)のリン原子に対応するスペクトルの面積で除した値。
  13. 前記(メタ)アクリル系樹脂組成物において前記式(a)より計算される値D1(%)について、スピンロック時間τ=16msec、20msec、25msec、30msecにおける各々の値D1(%)の平均値D2(%)が7.0%以下である、請求項12に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
  14. 前記リン酸エステル及びホスホン酸エステルの重量平均分子量が200以上500以下である、請求項12又は13に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
  15. 前記(メタ)アクリル系樹脂組成物が、下記に記載の多重構造アクリル系共重合体粒子(D1)又はアクリル系ブロック共重合体(D2)から選ばれる少なくとも一種類の耐衝撃向上剤(D)を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
    多重構造アクリル系共重合体粒子(D1):架橋構造を有するゴム状共重合体を含むエラストマー粒子(d1−1)の表面に、硬質樹脂層(d1−2)が形成された構造を有する多重構造アクリル系共重合体粒子。
    アクリル系ブロック共重合体(D2):メタクリル酸エステル重合ブロック(d2−1)10質量%以上60質量%以下とアクリル酸エステル重合ブロック(d2−2)40質量%以上90質量%以下とを有するブロック共重合体。
  16. 前記(メタ)アクリル系樹脂組成物が、前記(メタ)アクリル系重合体(P)100質量部に対して、前記耐衝撃向上剤(D)を2.0質量部以上50質量部以下含む、請求項15記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
  17. 前記多重構造アクリル系共重合体粒子(D1)において、前記エラストマー粒子(d1−1)を構成するゴム状共重合体がアクリル酸アルキルエステルを主成分とする(共)重合体からなり、前記硬質樹脂層(d1−2)がメタクリル酸エステルを主成分とする(共)重合体を含む、請求項16記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
  18. 請求項1〜17のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物からなる、樹脂成形体。
  19. 請求項18に記載の樹脂成形体の少なくとも一方の表面に硬化被膜(F)を備えた、シート状の樹脂積層体であって、
    前記硬化被膜(F)が、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する多官能単量体(F1)と、(メタ)アクリロイル基を2個有する多官能単量体(F2)を含有する硬化性組成物(f)の硬化物からなる、樹脂積層体。
  20. 前記硬化性組成物(f)が前記多官能単量体(F1)50質量%以上80質量%以下と、前記多官能単量体(F2)20質量%以上50質量%以下を含有する、請求項19に記載の樹脂積層体。
  21. 請求項1〜14のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法であって、下記の工程1と工程2を含む(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法。
    工程1:芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を側鎖に有する(メタ)アクリル酸エステル(M)単量体を含む単量体組成物(X1)と両親媒性化合物(E)を含有する混合物(X2)に、リン系難燃剤(C)を添加して重合性組成物(X3)を得る工程。
    工程2:前記重合性組成物(X3)を重合する工程。
  22. 請求項21に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法であって、前記工程1において、前記混合物(X2)が、両親媒性化合物(E)と、多重構造アクリル系共重合体粒子(D1)又はアクリル系ブロック共重合体(D2)から選ばれる少なくとも一種類の耐衝撃向上剤(D)を含有する、(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法。
    多重構造アクリル系共重合体粒子(D1):架橋構造を有するゴム状共重合体を含むエラストマー粒子(d1−1)の表面に、硬質樹脂層(d1−2)が形成された構造を有する多重構造アクリル系共重合体粒子。
    アクリル系ブロック共重合体(D2):メタクリル酸エステル重合ブロック(d2−1)10質量%以上60質量%以下とアクリル酸エステル重合ブロック(d2−2)40質量%以上90質量%以下とを有するブロック共重合体。
  23. 前記単量体組成物(X1)が、単量体組成物(X1)の総質量に対し、メタクリル酸メチル単量体19.95質量%以上84.95質量%以下と、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)3.6質量%以上80.0質量%以下を含む、請求項21に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法。
  24. 前記単量体組成物(X1)が、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)として、
    芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を側鎖に有するメタクリル酸エステル(M1)と、
    芳香族炭化水素基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を側鎖に有するアクリル酸エステル(M2)とを含み、且つ、
    前記メタクリル酸エステル(M1)が10.0質量%以上79.5質量%以下、
    前記アクリル酸エステル(M2)が0.50質量%以上20.0質量%以下である、請求項23に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法。
  25. 前記単量体組成物(X1)が、分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する単量体(B)0.05質量%以上0.40質量%以下を含む、請求項23または24に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法。
  26. 前記単量体組成物(X1)が、前記(メタ)アクリル酸エステル(M)由来の繰り返し単位を含む重合体(P1)を予め含む、請求項2125のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法。
  27. 前記重合性組成物(X3)が、前記単量体組成物(X1)を100質量部として、前記リン系難燃剤(C)を5.0質量部以上35.0質量部以下と、前記両親媒性化合物(E)0.01質量部以上2.0質量部以下を含有する、請求項2126のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法。
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