JP3988329B2 - 炭素繊維の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複合材料の成形において、取り扱い性、樹脂の含浸性等の高次加工性に優れた炭素繊維を製造する方法、およびその方法により得られる炭素繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維の需要は年々増加しており、航空機、スポーツの従来の用途から、建築、土木、エネルギー関係等一般産業用途へ需要が拡大している。一般産業用途の中でも、特に大型の構造材料を成型する場合は、炭素繊維はフィラメント・ワインディング法、プルトルージョン法等により太物の形態で使用されることが多いが、この場合、炭素繊維は、10,000〜20,000の単繊維で構成される繊維が束状に引き揃えられてさらに大きな繊維束となっており、炭素繊維を構成する単繊維の総数は100,000程度となっている。
【0003】
炭素繊維を構成する単繊維の総数とボビン1巻当たりの巻き量を増大すれば、高次加工において、クリール装置に炭素繊維を仕掛ける頻度を減らすことができ、さらにクリール装置の小規模化等により生産効率を高めることができる。
【0004】
上記単繊維の総数を増大する方法としては、複数本の炭素繊維を合糸して、単一のボビンに巻き取る方法が簡便であり多用されるが、ボビンから炭素繊維を巻き出す際、炭素繊維が合糸前の構成単位に分割される、いわゆる「糸割れ」が生じることが多い。これにより、フィラメント・ワイディング法、プルトルージョン法等により、炭素繊維に樹脂を含浸させて複合材料を製造する際のクリール工程においては、巻き出す際に炭素繊維に架かる張力ムラにより糸切れが生じたり、樹脂の含浸性が悪化することがある。
【0005】
上記問題点の対策として、特開平8−158163号公報には、構成する単繊維の総数が6,000以上の炭素繊維用前駆体繊維を耐炎化処理した後、炭化処理前、またはサイジング剤付与前に溝付きローラーにより合糸して構成する単繊維の総数が12,000以上の繊維束としながら、同時に炭化処理後に得られる炭素繊維の糸割れを改善する技術が開示されている。しかしながら、この技術によれば耐炎化処理後の繊維は、主として油剤の硬化等により単繊維間での接着が発生しており、合糸後に、圧縮空気の圧力を少なくとも5kgf/m2程度にして交絡処理する必要があり、繊維束を構成する単繊維が傷み易く、ひどい場合は単繊維が切断されることもあった。また、単繊維の切断により、繊維束の搬送過程で糸切れやガイドローラーへの巻き付き等工程通過性が悪化するだけでなく、得られる炭素繊維の強度特性の低下等品質面にも悪影響を与えていた。
【0006】
また、特開昭59−43113号公報には、アクリル系重合体溶液を紡糸し、2,000〜6,000の単繊維で構成される繊維を乾燥緻密化後、合糸して巻き取るアクリル系繊維の製造方法が提案されている。しかしながら、この技術によれば構成される単繊維の総数が50,000以上の繊維束を製造する場合は、繊維を少なくとも9以上合糸する必要があり、交絡ムラが生じ易く、そのために繊維束に糸割れが生じたり、毛羽が発生することがあった。
【0007】
さらに、炭素繊維用前駆体繊維束を構成する単繊維の総数を衣料用繊維並みに増やして生産効率を高める方法も知られているが、この場合、前駆体繊維束を紡糸する際に使用する口金の孔数を増やすことが必要となり、紡糸工程の初期で凝固液の濃度ムラが生じ易くなり、続く延伸工程や乾燥工程において繊維束の内外部での温度差が拡大し、前駆体繊維束に毛羽や糸切れが発生することがあった。
【0008】
前記前駆体繊維束に発生した毛羽は、耐炎化工程と炭化工程から構成される焼成工程を通過するにつれ、繊維束同士が絡み合う原因となる等して、さらに多くの毛羽を発生させ、繊維束の糸切れやガイドローラーへの巻き付きを惹起し、得られる炭素繊維の強度特性の低下等品質面にも悪影響を与えていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、実質的に無撚り、かつ太繊度でありながら、焼成後に毛羽や糸割れが僅少で高強度、高品質な炭素繊維が得られる炭素繊維の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するため、次の構成を有する。即ち、紡糸して一旦巻き取られた複数本のアクリル系繊維を、それぞれ独立して巻き出して合糸し、さらにフックドロップ法による交絡値が10〜30/mの範囲となるように交絡処理して一条の繊維束となした後、酸化性雰囲気中で耐炎化処理し、次に不活性雰囲気中で炭化処理する炭素繊維の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、紡糸して一旦巻き取られた複数本のアクリル系繊維を、それぞれ独立して巻き出して合糸して繊維束となし、さらにフックドロップ法による交絡値が特定される範囲となるように交絡処理した後、常法に従い炭化処理して炭素繊維を製造することによって、前記した課題を一挙に解決することを見い出すに至り、本発明に到達した。
【0012】
本発明でいうアクリル系繊維とは、アクリロニトリル90重量%以上からなるアクリル系重合体が紡糸されてなる繊維であって、前記重合体は8重量%以内で他のコモノマと共重合されていてもよい。コモノマとしてはアクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、メタクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、イタコン酸、アクロレイン等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0013】
アクリル系重合体溶液に使用される溶媒は特に限定されないが、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、塩化亜鉛水溶液、硝酸等が使用できる。
【0014】
紡糸は上記重合体溶液をギアポンプ等で口金から凝固浴中に吐出することによって行われ、次いで紡糸された糸条を延伸、水洗、乾燥緻密化処理等の公知のプロセスにより繊維とすることができる。ここで、繊維は紡糸後、複数本の繊維を合糸し、さらに多数の単繊維からなる1本の繊維とすることもできる。また、用いる口金の孔数は、紡糸する糸条を構成する単繊維の総数に応じて適宜設定できるが、通常2,200〜35,000、好ましくは4,400〜30,000の範囲である。
【0015】
前記繊維を構成する単繊維の繊度は特に限定されるものでないが、0.5〜2d(d:単繊維デニール)の範囲にあるのが好ましい。
【0016】
本発明では、乾湿式紡糸法等により紡糸され、前記したようなプロセスを経て得られた繊維を、一旦ボビン等に巻き取り、その後独立したボビン等から巻き出し、巻き出された複数本の繊維を、例えば溝付きローラー、好ましくはV字型溝を有するローラー等を使用する等して、単一の溝内を通過させる等して合糸し、さらに繊維束をフックドロップ法による交絡値が特定される範囲となるように交絡して一条の繊維束となした後、耐炎化処理し、炭化処理することにより炭素繊維が得る方法が採用される。
【0018】
本発明において、交絡処理には、糸割れの発生を抑止する効果が高いことから、繊維束が走行する方向と直交する方向から圧縮空気を噴射する方法が好ましく採用される。このとき、圧縮空気は、内径1〜5mmの小孔ノズルから噴射するのが好ましい。また、噴射時の空気の圧力は、繊維束に与える損傷を少なくし、繊維束の集束性を維持する観点から、0.5〜4.5kgf/cm2、好ましくは1〜3kgf/cm2、より好ましくは1〜2kgf/cm2とするのが良い。
【0019】
本発明では、上記繊維束の交絡は、後述するフックドロップ法による交絡値が10〜30/mの範囲、即ち、本発明でいう実質的に無撚りの状態となるように交絡することが必要である。10/m未満であると、交絡が不足し、繊維束に糸割れが生じることがあり、得られる炭素繊維にも糸割れが多く発生し、高次加工時に樹脂の含浸性が悪化することがある。30/mを越えると繊維束の集束性が過大となり、続く耐炎化工程で、繊維束が蓄熱し発火や糸切れを引き起こしたり、得られる炭素繊維において、高次加工時に樹脂の含浸性が悪化したり、さらには樹脂の含浸時に必要となる繊維の拡幅性が損なわれることもある。
【0020】
なお、交絡方法は、交絡値が上記したような範囲内になるよう交絡される限り、特に限定されない。
【0021】
本発明において、合糸前の繊維を構成する単繊維の総数は4,400〜30,000、好ましくは6,500〜30,000、より好ましくは8,000〜30,000、さらに好ましくは10,000〜30,000であるのが良い。4,400未満であると、合糸する繊維の数が2〜8の範囲内で、構成する単繊維の総数が35,000を越える太繊度の炭素繊維を得ることが事実上不可能となり、30,000を越えると、製糸工程における熱処理、乾燥緻密化、油剤付与の各工程で処理ムラが生じ易くなり、繊維束に毛羽が多量に発生し、得られる炭素繊維の品質が低下することがある。
【0022】
本発明においては、合糸して繊維束とするに際し、構成要素となる繊維の数は2〜8、好ましくは2〜7、より好ましくは2〜5の範囲であるのが良い。かかる範囲から外れると、繊維束に架かる張力のムラにより、繊維束の交絡が不均一になり、交絡が過剰となった部分には糸切れや毛羽の発生、交絡が不足した部分には糸割れが生じることがある。
【0023】
また、本発明において、合糸後の繊維束を構成する単繊維の総数、即ち、得られる炭素繊維を構成する単繊維の総数は35,000〜240,000、好ましくは40,000〜200,000、より好ましくは45,000〜150,000、さらに好ましくは45,000〜120,000の範囲であるのが良い。35,000未満であるとクリール装置への仕掛け頻度の減少、糸掛けに要する作業量の軽減が不充分となることがある。240,000を越えると、焼成工程での処理ムラによる炭素繊維の品質の低下や高次加工時に樹脂の含浸性が悪化することがある。
【0024】
本発明において、合糸前の繊維に生じた毛羽の数は15コ/m・12K以下、好ましくは10コ/m・12K、より好ましくは5コ/m・12K以下とするのが良い。15コ/m・12Kを越えると、合糸され、交絡処理された繊維束が実質的に無撚りの場合は、焼成工程で隣接する繊維束間で毛羽が絡み合い、毛羽の数が増すとともに、さらには糸切れや溝付きローラーへの巻き付きが多発し、得られる炭素繊維の品質が低下することがある。また、この場合、合糸する際にも繊維間で毛羽が絡み合い、見かけ上、繊維束の交絡値は適正化されるものの、耐炎化工程と炭化工程から構成される焼成工程を通過するにつれ、毛羽が収縮し、繊維束中に深く入り込み、得られる炭素繊維の糸割れの原因となることがある。
【0025】
こうして得られた繊維束、即ち炭素繊維用前駆体繊維束は、空気等の酸化性雰囲気中で200〜300℃、好ましくは250〜300℃で耐炎化処理し、次に窒素、アルゴン等の不活性雰囲気中で300〜600℃、好ましくは500〜600℃の温度領域で、昇温速度を500〜900℃/分、好ましくは600〜850℃/分として前炭化処理し、さらに1000〜1500℃、好ましくは1000〜1300℃の温度領域で、昇温速度を500〜900℃/分、好ましくは600〜850℃/分として後炭化処理することによって炭素繊維とすることができる。
【0026】
本発明においては、繊維強化複合材料を製造するにあたっては、エポキシ樹脂に代表される樹脂を、得られた炭素繊維に含浸させた後、加熱硬化する方法等、各種公知の方法が適用できる。具体的には、リキッド・コンポジット・モールディング法、フィラメント・ワインディング法、プルトルージョン法等が挙げられる。
【0027】
リキッド・コンポジット・モールディング法とは、炭素繊維よりなる、いわゆるプリフォーム、すなわち、最終成型品の形状にほぼ近似したところまで予備成型した、シート状もしくは三次元曲面を付与した織物、マット等に、液状の樹脂を注入した後、樹脂を硬化せしめ、複合材料とする方法である。本製造方法では、複雑な形状の部材を容易に成形でき、生産性にも優れることから、多用される成形法である。
【0028】
フィラメント・ワインディング法(以下、FW法と略記)とは、炭素繊維に樹脂を含浸せしめ、芯金に巻き取った後、樹脂を硬化せしめ、複合材料とする方法である。本製造方法は、円筒形状の部材を容易に成形でき、生産性にも優れることから、多用される成形法である。
【0029】
プルトルージョン法(以下、PT法と略記)とは、炭素繊維に、樹脂を含浸せしめた後、加熱金型中を通過させて樹脂を硬化せしめた後、成型体を引き抜き、複合材料とする方法である。PT法には、高強度、高剛性の複合材料が得られ易いという特徴がある。
【0030】
本発明により製造された炭素繊維が使用されてなる複合材料は、スポーツ用途では、ゴルフシャフト、釣り竿、テニス、バトミントン、スカッシュ等のラケット用途、ホッケー等のスティック用途、スキーポール用途等に好適に用いられる。また、航空宇宙用途では、主翼、尾翼、フロアビーム等の航空機一次構造材用途、フラップ、エルロン、カウル、フェアリング、内装材等の二次構造材用途、ロケットモーターケース、人工衛星構造材用途等に好適に用いられる。さらに一般産業用途では、自動車、船舶、鉄道車両等の移動体の構造材料、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラー、屋根材、ケーブル、補強筋、補修補強材料等の土木・建築材料用途等に好適に用いられる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。実施例においては、各特性値、物性値の測定は次に示す方法によった。なお、各実施例、比較例で得られた前駆体繊維束、炭素繊維、及びFW法により作製された円筒複合材料の外観等について表1に纏めて示した。
<単繊維の毛羽数>
被測定繊維を、撚りが入らないように注意しながら、黒色の板材にシート状に広げ固定する。この板材上で単繊維に注意深く分繊し、長さ15cmの範囲で単繊維が切断されている部分の数を数え、構成単繊維の総数が12,000、長さ1m当たりの繊維に換算し毛羽数(コ/m・12K)とする。
<前駆体繊維束の糸割れ発生数>
被測定繊維束2を目付が一定値となるよう維持しながらボビンに巻き取り、図1に示すように張力調整可能なクリール装置1に仕掛け、繊維束を巻き出し、複数のローラーを千鳥配列とした固定ガイドバー3により、40mgf/d(d:単繊維デニール)の張力を付与しながら、糸幅1mm当たりの繊維密度が1000D/mm(D:総デニール;単繊維デニールd×構成する単繊維の総数)になるよう拡幅後、ワインダー5で巻き取った。
【0032】
このようにして繊維束を約100m連続して走行させ、拡幅の終了位置4で目視により、繊維間に生じた幅1mm以上の隙間を、「糸割れ」としてその個数(発生数)を数えた。
<フックドロップ法による交絡値(CF値)>
被測定繊維束を2mの高さから垂下し、2mgf/dの張力を付与した状態で、図2に示すように一端に10gの錘(おもり)7を付けた、直径1mm程度のフック付き金具8のフック部分を被測定繊維束6中に刺し入れ、この金具8が繊維束の長さ方向に移動した距離を測定した。
【0033】
同様の操作により、50回測定を繰り返し、数値の大きい方から1〜10位までのものと、41〜50位までのものを除いたn=30の測定値の平均値をX(cm)とし、次式よりCF値を求めた。
【0034】
CF値=100/X(/m)
<炭素繊維の糸割れ発生数>
付与する張力を50mgf/dとした以外は、前記前駆体繊維束と同様にして「糸割れ」の個数(発生数)を数えた。
<炭素繊維の引張強度>
JIS R7601に準じ、樹脂含浸ストランド法によった。測定回数n=10の平均値とした。
<糸切れ回数(円筒複合材料の作製時)>
クリール装置から炭素繊維を引き出した後、樹脂を含浸せしめる前に目視により、発生した糸切れの回数を測定した。
<毛羽の総重量(円筒複合材料の作製時)>
樹脂含浸槽内の毛羽の量については、樹脂含浸槽の内容物を適当な形状の陶製容器に入れ、450℃に温調した電気炉内に30分間放置して樹脂のみを完全に焼き飛ばし、毛羽のみを残存させ、その量を秤量した。さらに毛羽の総重量はフィラメントワインディング工程のすべてのロール、ガイドバーに付着している毛羽を集めて重量を測定した。
(実施例1)
アクリロニトリル95重量部、アクリル酸メチル4重量部、イタコン酸1重量部を共重合した、アクリル系重合体を、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略記)の溶媒に溶かして紡糸原液を調整した後、乾湿式紡糸法により、孔数6,000の複数の口金より30℃、濃度60%のDMSO水溶液中に紡出して糸条とし、続いて水洗、延伸し、油剤を付与した。続いて出入口部にラビリンスを設けた高圧スチーム管中で延伸比2.0の延伸を行い、熱固定し、油剤を付与して複数の繊維とした後、独立した4本の繊維を溝付きローラーにより糸道を規制しながら単一の溝内で合糸し、単繊維の繊度が1d、単繊維の総数が24,000のアクリル系前駆体繊維を得た後、巻き取った。
【0035】
この前駆体繊維を独立した2個のボビンから上記と同様にして巻き出し、合糸した後、走行する繊維束に対し直交する方向から圧力1.5kgf/cm2に調整した圧縮空気を内径2mmの小孔ノズルから噴射し、繊維束を交絡させた。この後、糸割れすることなく、一条の前駆体繊維束となった。
【0036】
この前駆体繊維束を、空気中、温度240℃で延伸比0.94で延伸しつつ耐炎化処理後、窒素雰囲気中、300〜600℃の温度領域で、昇温速度を800℃/分として前炭化処理し、さらに1000〜1300℃の温度領域で、昇温速度を800℃/分として後炭化処理して、総繊度48,000Dの炭素繊維を得た。
【0037】
得られた炭素繊維を使用し、FW法により、自動車プロペラシャフト用円筒複合材料を作製した。
【0038】
即ち、繊維を巻き取ったボビンをクリール装置に仕掛け、クリール装置に仕掛けられたボビンから炭素繊維を巻き出し、エポキシ樹脂を樹脂含浸槽で含浸させ、マンドレル(内径70mm、長さ1000mm)に、炭素繊維の配向角を90/±10/90として、搬送速度30m/分、張力2.0kgfで巻き上げ、この後加熱してエポキシ樹脂を硬化させて円筒複合材料を作製した。
(比較例1)
交絡処理を施さない他は、実施例1と同様にして前駆体繊維束を得た。この前駆体繊維束のフックドロップ法による交絡値を測定したところ、1/mであった。 さらに、実施例1と同様にして耐炎化処理、炭化処理して炭素繊維を得た。得られた炭素繊維を使用し、実施例1と同様にして円筒複合材料を作製したところ、炭素繊維に糸割れが発生した。
(比較例2)
合糸後の繊維束の交絡処理に圧力5.0kgf/cm2に調整した圧縮空気を用いた以外は実施例1と同様にして前駆体繊維束を得た。この繊維束のフックドロップ法による交絡値を測定したところ、120/mであったが、糸割れの発生はなかった。
【0039】
さらに、実施例1と同様にして炭素繊維を得た後、実施例1と同様にして円筒複合材料を作製した。
(比較例3)
実施例1と同様にしてアクリル系前駆体繊維を得た。この前駆体繊維を独立した2個のボビンから巻き出し、合糸しないまま耐炎化炉へ導き、耐炎化処理した。この後、この2本の繊維を溝付きローラーにより糸道を規制しながら単一の溝内で合糸した後、走行する繊維束に対し直交する方向から圧力4.0kgf/cm2に調整した圧縮空気を内径2mmの小孔ノズルから噴射し、繊維束を交絡させた。この後、糸割れすることなく、一条の前駆体繊維束となった。
【0040】
さらに、実施例1と同様にして炭素繊維を得た後、実施例1と同様にして円筒複合材料を作製した。
(比較例4)
孔数12,500の口金を用いた以外は実施例1と同様にして、単繊維の繊度が1d、単繊維の総数が50,000のアクリル系前駆体繊維を得た後、ボビンに巻き取った。
【0041】
さらに、この前駆体繊維を単一のボビンより巻き出し、合糸しないこと以外は実施例1と同様にして炭素繊維を得た後、実施例1と同様にして円筒複合材料を作製した。
(実施例2)
合糸する繊維の本数を2本とした以外は、実施例1と同様にして単繊維の繊度が1d、単繊維の総数が12,000のアクリル系前駆体繊維を得た後、ボビンに巻き取った。
【0042】
この前駆体繊維を独立した4個のボビンから1本ずつ40mgf/dの張力で巻き出し、4本の繊維を溝付きローラーにより糸道を規制しながら単一の溝内で合糸した後、走行する繊維束に対し直交する方向から圧力2.0kgf/cm2に調整した圧縮空気を内径2mmの小孔ノズルから噴射し、繊維束を交絡させた。この後、糸割れすることなく、一条の前駆体繊維束となった。
【0043】
さらに、実施例1と同様にして炭素繊維を得た後、実施例1と同様にして円筒複合材料を作製した。
(実施例3)
実施例2と同様にしてアクリル系前駆体繊維を得た。
【0044】
この前駆体繊維を独立した12個のボビンから1本ずつ40mgf/dの張力で巻き出し、12本の繊維を溝付きローラーにより糸道を規制しながら単一の溝内で合糸した後、走行する繊維束に対し直交する方向から圧力2.0kgf/cm2に調整した圧縮空気を内径20mmの小孔ノズルから噴射し、繊維束を交絡させた。この後、糸割れすることなく、一条の前駆体繊維束となった。
【0045】
さらに、実施例1と同様にして炭素繊維を得た後、実施例1と同様にして円筒複合材料を作製した。
【0046】
【表1】
Figure 0003988329
【0047】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、実質的に無撚り、かつ太繊度でありながら、焼成後に毛羽や糸割れが僅少で高強度、高品質な炭素繊維を得ることができる。
【0048】
さらに、本発明により製造された炭素繊維は、複合材料の成形において、製造コストが低減でき、さらに取り扱い性、樹脂の含浸性等の高次加工性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】糸割れ発生数の測定装置の概略図である。
【図2】フックドロップ法による交絡値の測定方法を示す概略図である。
【符号の説明】
1:クリール装置
2:被測定繊維束
3:固定ガイドバー(直径30mm、表面平滑度3S)
4:拡幅の終了位置
5:ワインダー
6:被測定繊維束
7:おもり(10g)
8:フック付き金具

Claims (5)

  1. 紡糸して一旦巻き取られた複数本のアクリル系繊維を、それぞれ独立して巻き出して合糸し、さらにフックドロップ法による交絡値が10〜30/mの範囲となるように交絡処理して一条の繊維束となした後、酸化性雰囲気中で耐炎化処理し、次に不活性雰囲気中で炭化処理する炭素繊維の製造方法。
  2. 前記繊維を構成する単繊維の総数が4,400〜30,000である請求項1に記載の炭素繊維の製造方法。
  3. 前記繊維束を構成する繊維の数が2〜8である請求項1又は2に記載の炭素繊維の製造方法。
  4. 前記繊維束を構成する単繊維の総数が35,000〜240,000である請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維の製造方法。
  5. 前記繊維における毛羽の数が15コ/m・12K以下である請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維の製造方法。
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