JP3987943B2 - 長時間虚血による脳組織ネクローシスの抑制剤 - Google Patents

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Description

本発明は、長時間にわたる脳虚血により引き起こされる脳梗塞を抑制するための薬剤に関するものである。
脳梗塞とは、脳以外の血管でできた血栓が脳に運搬されたり、脳血管における動脈硬化等を原因として脳血管が閉塞したり細くなることによって、脳の血流が不足して血流障害組織が壊死に陥る疾病をいう。いったん脳梗塞が生じると、壊死した脳組織は元通りにはならないため、たとえ生命を取り留めた場合でも、運動麻痺や感覚障害、言語障害のみならず痴呆症状が残る場合が多い。その一方で、近年、高血圧、心臓病、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病といわれる疾病が増加しており、脳梗塞の危険性が増している。したがって、効果的な脳梗塞の処置手段が切望される。
ところが、これまでのところ、真に有効な治療手段は未だ見出されていない。例えば、脳梗塞の原因となった血栓を溶解して血流を再開させるために、血栓溶解剤が使用されている。しかし、血流再開により生じるフリーラジカルによる障害も脳梗塞の病態に深く関与しており、血栓溶解剤のみでは、脳組織の壊死に対する根本的な解決方法とはならない。
また、脳組織障害の原因となるフリーラジカルから脳組織を保護するためのフリーラジカルスカベンジャーであるエダラボンが市販されている。しかし、当該薬剤には肝機能障害や腎機能障害等の副作用が見られ、特に、肝機能検査値異常など臨床検査値の異常変動は、投与患者の実に21.4%にも及ぶというデータもある。いかに致死的な疾患である脳梗塞に対する治療手段といえども、この様に高い副作用発生率には問題がある。
薬剤以外の治療手段としては、低体温療法がある。しかし、その実施に要する費用が高額である上に、免疫力の低下による感染症や出血傾向などがあり、一般的な実施は困難である。
ところで、脳細胞の壊死(ネクローシス)には至らなくとも、短時間の虚血(一過性虚血)によって、神経細胞のプログラム死(アポトーシス)が引き起こされることが知られている。例えば、川本俊樹ら,「ラット一過性前脳虚血時におけるL−histidine(singlet oxygen scavenger)の脳保護効果」,脳神経,第49巻7号,第612〜618頁(1997年)によれば、5分または10分の一過性前脳虚血を負荷したところ、1週間後には海馬CA−1領域の錐体神経細胞の脱落が認められている(遅発性神経細胞死)。この一過性虚血によるアポトーシスの主な原因は、興奮性アミノ酸であるグルタミン酸の細胞外濃度の上昇とされている。つまり、グルタミン酸濃度の上昇により細胞内カルシウムイオン濃度が増加して、細胞死を誘発する遺伝子が発現したり生化学反応が進行する。当該文献には、斯かるプログラム死がL−ヒスチジンの一過性虚血前投与により抑制されることが記載されており、その理由の一つとして、グルタミン酸濃度の低減が挙げられている。
また、Naoto Adachiら,「Alleviation of ischemic neuronal damage by postischemic loading with histidine in the rat striatum」,Brain Research,第998巻,第136〜138頁(2004年)では、ヒスチジン投与を、ラットに15分間の一過性虚血を負荷した直後、6時間、24時間、48時間後の4回行なうことによって、虚血から7日後にアポトーシスによる神経細胞死を抑制できたことが開示されている。しかし、斯かる虚血後投与では、一過性虚血によるグルタミン酸濃度の上昇がヒスチジン投与時にすでに起こっているはずであるから、虚血前投与によるアポトーシス抑制メカニズムとは異なるメカニズムによって神経細胞死が抑制されていると考えられる。
これら公知の知見に関わらず、一過性虚血における神経細胞死の抑制方法が、実際の脳梗塞へそのまま適用できるとは限らない。それは、上述した様に、薬剤投与が虚血前であるか後であるかによっても神経細胞死の抑制メカニズムが異なる様に、虚血による細胞死の発生要因が複雑であることによる。その上、実際の脳梗塞(脳組織のネクローシス)の直接原因は数時間に及ぶ脳虚血であり、数分から十数分の虚血により7日後に生じる遅発性神経細胞死とはメカニズムが異なる。例えば、一過性虚血によりアポトーシスが生じるのは神経細胞のみであるが、長時間にわたる虚血によるネクローシスは、神経細胞のみならずグリア細胞や血管内皮細胞も含む脳組織全体で起こる。
脳梗塞に対する実際の治療を考慮すると、血栓や塞栓の発生から治療にかかるまでが数分程度ということはあり得ず、数時間経過しているのが普通である。そして、一刻も早く血栓を除去することにより血流を再開させることが第一であるが、一旦死滅した神経細胞は回復しないことから、再灌流障害による脳組織の壊死(ネクローシス)を最小限に抑えることが極めて重要になる。この際、後日進行するアポトーシス対策は二の次にすべきであり、また、アポトーシスの抑制に有効であった処置が、ネクローシスの抑制にも有効であるとは限らない。
上述した様に、短時間虚血から数日を経て生じる神経細胞のアポトーシスについては、学術的な興味もあって研究実績が発表されている。しかし、斯かる知見が、長時間にわたる虚血によって直接引き起こされる脳組織のネクローシスに対して適用できるとは限らない。その一方で、長時間にわたる虚血後に生じる脳組織のネクローシスに対しては、副作用の点も含めて真に有効な抑制方法がないことから、その処置方法が切望されている。
そこで、本発明が解決すべき課題は、実際の脳梗塞に相当する長時間にわたる虚血後の脳組織ネクローシスに対して有効であり、且つ副作用の少ない脳梗塞抑制剤を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、数時間にわたる虚血後の脳組織ネクローシスを抑制できる薬剤につき種々検討を進めたところ、ヒスチジンの再灌流後投与が極めて有効であることを見出して、本発明を完成した。
即ち、本発明に係る脳梗塞の抑制剤は、長時間虚血による脳梗塞を抑制するものであり、ヒスチジンを含むことを特徴とする。
また、本発明に係る使用は、長時間虚血による脳梗塞の治療剤を製造するためにヒスチジンを用いることを特徴とする。
本発明に係る脳梗塞の治療方法は、長時間虚血による脳梗塞を治療するものであり、ヒスチジンを投与することを特徴とする。
長時間に及ぶ虚血後にヒスチジンを投与した場合における脳梗塞の抑制効果を示す写真である。
本発明の脳梗塞抑制剤は、ヒスチジンを有効成分とする。このヒスチジンは、必須アミノ酸の一つであることから副作用が少ないと考えられ、大量投与も可能である。更にヒスチジンは、血液脳関門を容易に通過し、脳内で脱炭酸酵素によってヒスタミンに変換される。このヒスタミンが、脳組織に作用すると考えられる。
脳梗塞は、一般的に、脳血栓や脳塞栓等による虚血によって生じ、肉眼でわかる程度の大きさの形態的障害(ネクローシス)を伴う。一時的な脳血流の低下や小さな血栓等によるごく短時間(例えば、数分から十数分間)の虚血によるアポトーシスでは、数日後、虚血に弱い部位の神経細胞のみの脱落が生じる。このアポトーシスにより症状が生じたとしても、脳梗塞の場合よりもはるかに軽度で、生命を脅かすに至らない。しかも、これらネクローシスとアポトーシスの発生メカニズムは、明らかに異なる。そこで本発明の脳梗塞抑制剤は、長時間虚血による脳梗塞をターゲットにしている。
ここで、長時間虚血における「長時間」は、特に制限されないが、少なくとも虚血により脳組織のネクローシスが直接引き起こされる程度の時間をいう。具体的な時間としては、虚血の原因や程度、或いは個人差等にもよるが、虚血の発生から実際に処置が行なわれるまでを考慮して、例えば1時間以上、更には1.5時間以上、特に2時間以上を挙げることができる。
本発明の抑制剤の剤形や投与形態は特に問わないが、脳虚血に対する緊急性を考慮すれば、注射剤として静脈内投与することが好ましい。その場合、溶媒としては、pHを調整した生理食塩水、純水、蒸留水、滅菌水等を使用できる。
本発明におけるヒスチジンの投与方法は、一般的な薬剤の投与量よりも多い。後述する実施例で示す通り、体重約300gのラットに対して200、500、1000mg/kgのヒスチジンを2回投与した場合、用量依存的な脳梗塞の抑制効果が得られた。斯かる結果から考えると、ヒトに対する投与量は、1回当たり50〜500mg/kgとし得る。但し、この投与量は、今後における試験や患者の状態等によって適宜変更し、また、点滴による持続投与も考慮すべきである。
本発明に係る脳梗塞抑制剤の投与時は特に制限されないが、好適には虚血再灌流中または虚血再灌流後に投与する。ここで「虚血再灌流中または虚血再灌流後」において、「虚血再灌流中」と「虚血再灌流後」は明確に区別されず、例えば血栓溶解剤の投与など虚血再灌流のための何らかの処置の前後、当該処置と同時、或いは当該処置から所定時間後などを表す。少なくとも、虚血前の投与は「虚血再灌流中または虚血再灌流後」には含まれない。虚血前における投与は実質的に予防剤としての使用となり、突発的に発生しその時期を特定できない脳梗塞の場合、虚血前投与は不可能である。また、後述する実施例の結果によれば、ヒスチジンの虚血前投与のみでは、長時間に及ぶ虚血の場合には効果を示さない。
好適には、本発明の脳梗塞抑制剤は再灌流後に投与する。再灌流障害による脳組織のネクローシスを本発明の脳梗塞抑制剤の投与により最小限に抑えることが重要だからである。より好ましくは、再灌流の直後に投与する。ここでの「直後」は、厳密に再灌流の直後をいうものではなく、例えば血栓溶解剤の投与など虚血再灌流のために何らかの処置をしてから30分以内をいう。
また、本発明の脳梗塞抑制剤は、複数回にわたって或いは持続的に投与することが好ましい。脳血管の長時間にわたる閉塞では、血流が再開しても、好中球等による炎症細胞浸潤が深く関与する血管の再狭窄が起こることが多い。従って、脳梗塞の処置においては、この血管再狭窄や炎症反応を防ぐために、脳組織のヒスタミン濃度を長時間にわたって高く維持する必要があるからである。具体的には、虚血再灌流中または虚血再灌流直後とその後4〜8時間に1回、より好適には虚血再灌流中または虚血再灌流直後とその後4〜8時間ごとに2回以上(計3回以上)投与することが好ましい。また、持続的に投与する場合には、点滴等により1回分の投与量を1〜数時間かけて投与することが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1
51匹のウィスター系雄性ラット(体重:約300g)を、コントロール群(12匹)、虚血前における1000mg/kgヒスチジン投与群(8匹)、虚血後200mg/kgヒスチジン投与群(8匹)、虚血後500mg/kgヒスチジン投与群(10匹)、虚血後1000mg/kgヒスチジン投与群(13匹)の5群に分けた。これらラットを、2%ハロタン、49%酸素および49%空気ガス(NO)の混合ガスにより麻酔し、自発呼吸させた。次いで、仰向けにしたラットの頸部を正中切開し、右総頚動脈を露出させた。ヘパリン(100単位)を腹腔内投与した後、総頚動脈の内頚と外頚の分枝部からシリコンコーティングした4・0ナイロン糸を右内頚動脈に挿入することによって、右中大脳動脈の基始部を閉塞した。ナイロン糸の先端は、分岐部から18mmの位置に置いた。切開部を縫合した後、麻酔から回復させた。術中、電子式温度計を直腸に挿入し、ランプにより直腸温を37.0±0.1℃に維持した。麻酔から回復した後には、全てのラットで対側肢に麻痺が認められた。
血流を再開する5分前に、ラットを再度麻酔した。皮膚縫合を開いた後、ナイロン糸を5mm抜去することによって、中大脳動脈閉塞から2時間後に脳における血流を再開させた。再び切開部位を縫合し、生理食塩水若しくはヒスチジン(200、500または1000mg/kg)を腹腔内投与した。ヒスチジンは、pH4.0に塩酸で調整した生理食塩水にいったん溶解した後、水酸化ナトリウムによりpHを6.0に戻して使用した。麻酔から回復させた後、食餌と水を自由に与えた。コントロール群とヒスチジンの虚血後投与群には、生理食塩水またはヒスチジンの腹腔内投与を、再灌流から6時間後に初回投与と同量繰り返した。なお、虚血前ヒスチジン投与群には、中大脳動脈閉塞の10分前にヒスチジン1000mg/kgを投与し、血流再開後には何も投与しなかった。
血流再開から24時間経過した後、ペントバルビタールナトリウムを腹腔内投与することにより麻酔した。その後、ヘパリンを加えた生理食塩水で脳を灌流し、断頭した。速やかに脳を取り出し、生理食塩水ですすいだ。視交叉と乳頭体尾側端との間で脳を2mmの厚さで冠状にスライスし、これらの脳スライスを37℃の2%塩化トリフェニルテトラゾリウムのリン酸緩衝液(0.1mol/L、pH7.4)溶液でインキュベートした。その結果、生存細胞に存在する脱水素酵素の作用により塩化トリフェニルテトラゾリウムは還元され、組織が暗赤色に染色された。一方、梗塞部位における死滅組織は染色されなかった。これらの脳スライスを、リン酸緩衝ホルマリン中で一晩保存した。結果を図1に示す。その後、ヒスチジン投与に関与しなかった第三者的な実験者が、コンピュータを用いて梗塞部位の大きさを測定した。また、得られた脳梗塞部位の大きさを分散分析とシェッフェテスト(Scheffe test)で検定した。結果を表1に示す。
Figure 0003987943
表中の値(単位:mm)は脳梗塞の大きさ(平均±標準偏差)を示し、「*」は、コントロール群に対してp<0.05で有意であった場合、「**」はp<0.01で有意であった場合である。
以上の結果によれば、生理食塩水のみを投与したコントロール群では、2時間にわたる虚血によって、線条体と大脳皮質の両方で梗塞が生じていた(図1参照)。虚血前における1000mg/kgヒスチジン投与群では、梗塞の大きさはコントロール群と比べ有意な差がなかった。一方、虚血後にヒスチジンを投与したグループでは、投与量に応じて梗塞の大きさが低減した。即ち、2時間虚血後再灌流の直後と6時間後にヒスチジンを200、500または1000mg/kg投与した群では、コントロール群に比べて、梗塞部位がそれぞれ71%、39%、7%に抑制され、500mg/kg投与群と1000mg/kg投与群において、コントロール群との比較で有意差が認められた。以上の結果から、本発明によれば、長時間虚血を原因とする脳組織のネクローシスをヒスチジンの虚血後投与により低減できることが実証された。
実施例2
虚血による臓器障害の原因のひとつとして血流再開通後の再灌流障害があり、炎症反応は再灌流障害を引きおこす重要な因子である。そこで、血流再開後における炎症の指標として、好中球とマクロファージの数を測定した。
32匹のウィスター系雄性ラット(体重:約300g)を8匹ずつ4群に分け、上記実施例1と同様に中大脳動脈を2時間閉塞した。血流再開直後と6時間後の2回、コントロールである2群には生理食塩水を、残りの2群には1000mg/kgヒスチジンを上記実施例1と同様に腹腔内投与した。次いで、血流再開から12時間後または24時間後に生理食塩水で脳を灌流した後、脳を取り出した。この脳のブレグマ(大泉門)から1.7mm吻側、0.7mm吻側および0.3mm尾側近辺の冠状断において、厚さ6μmの凍結切片を作成した。
得られた凍結切片のうち、12時間後および24時間後に脳を灌流したコントロール群、並びに各ヒスチジン投与群(計4群)の凍結切片を、好中球のマーカーであるミエロパーオキシダーゼに対する抗体で免疫染色した。これらを光学顕微鏡で観察することによって、虚血側と非虚血側における好中球の総数をそれぞれ求めた。結果を表2に示す。また、同じラットから得られた所定部位の凍結切片をマクロファージの細胞表面マーカーであるED1に対する抗体で免疫染色した。なお、ED1はマクロファージ以外の細胞にも存在すると考えられており、実際、本実験でも非虚血側にもED1陽性細胞が認められた。しかし表2の通り、非虚血側には好中球は認められず、炎症は起こっていない。そこで、ED1陽性細胞に関しては、虚血側と非虚血側における細胞数の差も求め、これをマクロファージ数として各群で比較検討した。なお、表2と3中、「*」は、Fisher’s PLSD(protected least significant difference)テストによりコントロール群に対してp<0.05で有意であった場合、「**」はp<0.01で有意であった場合である。
Figure 0003987943
表2の通り、2時間の虚血から12時間後と24時間後において虚血側で好中球の浸潤が認められた。一方、ヒスチジン投与群では12時間後の好中球浸潤が有意に抑制された。
Figure 0003987943
表3の通り、2時間の虚血から12時間後、ヒスチジン投与群ではブレグマから+0.7mmの断面でED1陽性細胞数が有意に減少しており、24時間後には全ての断面で有意に減少した。
以上の結果より、長時間に及ぶ虚血後にヒスチジンを投与することによって、脳における好中球やマクロファージの浸潤を抑制することができ、結果として虚血後の炎症反応を抑制できることが明らかにされた。
本発明の脳梗塞抑制剤は、副作用が少ない上に、脳血栓や脳塞栓等による長時間にわたる虚血を原因とする脳組織ネクローシスを効果的に抑制することができる。従って、本発明の脳梗塞抑制剤は、これまで特に有効な処置手段のなかった脳梗塞を低減できるものとして、極めて有用である。

Claims (8)

  1. ヒスチジンを含むことを特徴とする1時間以上の長時間虚血による脳組織ネクローシスの抑制剤。
  2. 虚血再灌流中または虚血再灌流後に投与するものである請求項1に記載の脳組織ネクローシス抑制剤。
  3. 虚血再灌流の直後に投与するものである請求項1に記載の脳組織ネクローシス抑制剤。
  4. 複数回投与するものである請求項1〜のいずれかに記載の脳組織ネクローシス抑制剤。
  5. 虚血再灌流中または虚血再灌流直後と、その後4〜8時間後に投与するものである請求項に記載の脳組織ネクローシス抑制剤。
  6. 虚血再灌流中または虚血再灌流直後と、その後4〜8時間ごとに2回以上投与するものである請求項に記載の脳組織ネクローシス抑制剤。
  7. 持続的に投与するものである請求項1〜のいずれかに記載の脳組織ネクローシス抑制剤。
  8. 1回当たりの投与量が50〜500mg/kgである請求項1〜のいずれかに記載の脳組織ネクローシス抑制剤。
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