JP3987864B2 - 燃料噴射弁 - Google Patents

Description

この発明は、燃料噴射弁に関するものであり、特にわずかな燃料でも正確に噴射することのできる燃料噴射弁に関するものである。

従来の燃料噴射弁においては、噴射口を開閉するための弁体に固定された可動鉄心と、この可動鉄心に対してエアギャップ部を挟んで対向配置された固定鉄心が設けられ、又パイプが燃料をシールするために固定鉄心と可動鉄心の外側において配置され、このパイプは固定鉄心及び弁座の半径方向における位置決めを行うとともに、可動鉄心の摺動ガイドとなり、更にパイプの外側においては、コイル、ヨーク及びプレートによって電磁ソレノイドが構成されているものがあった。

そして上記のように構成された燃料噴射弁においては、燃料としてガソリンを使用する場合、一般的に固定鉄心として耐食性に優れた電磁ステンレス等の磁性材を使用していた（特許文献１参照）。

特開２００４−２９３３１４号公報

燃料噴射弁は閉弁時にコイルに供給されていた駆動電流が遮断されると、磁性材において渦電流が発生し、この渦電流によって発生する磁束により、コイルに供給されていた駆動電流による磁束は遅れを伴って減少することになる。従って電磁力も緩やかに減少するため、可動鉄心は駆動電流が遮断されてから時間遅れを伴って閉弁動作を開始する。

上記特許文献に示された燃料噴射弁においては、固定鉄心として耐食性に優れた電磁ステンレス等の磁性材を使用していたが、電磁ステンレスは電気抵抗率が小さいので、比較的大きな渦電流が発生し、可動鉄心の閉弁遅れが大きくなってしまう。燃料噴射弁はエンジンの排気ガスを排出するための気筒間のばらつきを小さくするため、僅かな噴射量であっても正確に噴射できるようにすることが必要であるが、従来の燃料噴射弁では閉弁遅れが大きく、前記要求を充分満足できないという問題点があった。

この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、閉弁遅れを小さくすることにより、可動鉄心の応答性を向上させ、燃料噴射弁の噴射量特性において、小噴射量であっても正確に噴射することができるとともに製品間のばらつきの少ない燃料噴射弁を提供することを目的とする。

この発明に係る燃料噴射弁は、弁座に離接して噴射口を開閉する弁体が結合された可動鉄心と、この可動鉄心に対向して配置された固定鉄心と、可動鉄心を移動させるためのソレノイド装置と、可動鉄心とソレノイド装置の間に設けられたパイプとを有するものであって、パイプにより固定鉄心を上流側の第１の固定鉄心と下流側の第２の固定鉄心に分割し、第１の固定鉄心を大きな電気抵抗を有する材料で構成したものである。

この発明に係る燃料噴射弁によれば、弁座に離接して噴射口を開閉する弁体が結合された可動鉄心と、この可動鉄心に対向して配置された固定鉄心と、可動鉄心を移動させるためのソレノイド装置と、可動鉄心とソレノイド装置の間に設けられたパイプとを有するものであって、パイプにより固定鉄心を上流側の第１の固定鉄心と下流側の第２の固定鉄心に分割し、第１の固定鉄心を大きな電気抵抗を有する材料で構成したので、閉弁時に大きな渦電流が発生せず、従って速やかに閉弁動作が開始されることとなり、可動鉄心の応答性が向上する。

実施の形態１．
図１はこの発明の実施の形態１による燃料噴射弁を示す断面図、図２は中心部を示す拡大断面図である。図において、燃料噴射弁１にはハウジング２が設けられ、このハウジング２の先端にはОリング３が装着されている。又ハウジング２と可動鉄心４の間にはパイプ５が設けられており、このパイプ５によって固定鉄心６は上流側の第１の固定鉄心６ａと下流側の第２の固定鉄心６ｂに分割されている。このパイプ５によって燃料が外に漏れないようになっており、又パイプ５は可動鉄心４、固定鉄心６などの各部品をガイドする役割も果たしている。

可動鉄心４は第２の固定鉄心６ｂに対向して設けられ、固定鉄心６の内部にはスプリング７が嵌装され、このスプリング７によって可動鉄心４が閉弁方向に付勢されている。又固定鉄心６の内部にはスプリング７のばね力を調整するためのアジャスター８が挿入されており、固定鉄心６とハウジング２の間には、磁気回路を形成するための電磁コイル９がボビン１０により覆われて挿入されることにより、ソレノイド装置を構成している。

電磁コイル９には、ターミナル１１を介して駆動用の電気信号が印加される。可動鉄心４の一端には弁体となるニードルバルブ１２が結合されており、このニードルバルブ１２はニードル部１２ａとボール弁体１２ｂとから構成されている。

燃料噴射弁１の先端部には燃料噴射口を有する弁座１３及びノズルプレート１４が設けられており、ニードルバルブ１２が弁座１３に離接することにより、燃料噴射口を開閉する。
以上のように構成された燃料噴射弁１はインテークマニホールドにおけるボス部に取り付けられるものである。

本発明による燃料噴射弁の基本動作について以下説明する。
電磁コイル９に電気信号が印加されると、スプリング７の復帰力に打ち勝ってニードルバルブ１２が可動鉄心４とともに固定鉄心６側に移動し、ボール弁体１２ｂが弁座１３から離れるため開弁し、燃料が吸気管内に噴射される。そして電磁コイル９に印加された電気信号を遮断すると、スプリング７の復帰力により、ニードルバルブ１２は弁座１３側に移動するので閉弁されることになる。

本発明においては、固定鉄心６を第１の固定鉄心６ａと第２の固定鉄心６ｂに分割し、第１の固定鉄心６ａは圧粉磁性材などの電気抵抗率の高い磁性材により構成するとともに、第２の固定鉄心６ｂは電磁ステンレス材等の耐食性の優れた磁性材によって構成する。圧粉材は鉄等を細かくして固めたものであり、表面に樹脂等の絶縁膜が被覆するものである。

そして圧粉材は溶接できないので、第１の固定鉄心６ａはプレート１５により押圧されることにより固定されている。この際プレート１５で直接圧粉材を押圧すると圧粉材は崩壊する可能性があるので、プレート１５と第１の固定鉄心６ａとの間に銅合金のプレートからなる弾性プレートなどの緩衝材を介在させてもよい。

プレート１５とハウジング２とは溶接により接合されている。又パイプ５によって第１の固定鉄心６ａには燃料が接触しないように構成されており、第１の固定子鉄心６ａとして焼結材等の耐食性の弱い材料を用いることができるように構成している。そして第１の固定鉄心６ａは外気に曝されないように構成されているので、第１の固定鉄心６ａは錆びにくくなる。

尚第２の固定鉄心６ｂを設置せず、可動鉄心４をパイプ５に直接対向させるようにすることも考えられるが、可動鉄心４をパイプ５に衝突させるとパイプ５は破損してしまうので、第２の固定鉄心６ｂが必要となるものである。第２の固定鉄心６ｂとパイプ５とは溶接により接合されている。

以上のように固定子鉄心６の一部を、耐食性は弱いが電気抵抗率が高い材料によって構成したので、その部分においては閉弁時に大きな渦電流が発生せず、従って速やかに閉弁動作が開始されることとなるので、可動鉄心４の応答性が向上する。

図３は燃料噴射弁に印加される駆動信号のパルス幅と噴射量との関係を示す特性図であり、図において、実線で示されたものが本発明による燃料噴射弁の噴射特性であり、点線で示されたものが従来の燃料噴射弁による噴射特性である。

図から判るように、同じパルス幅を持つ信号を印加した場合、本発明の方が明らかに噴射量は小さくなっており、製品間のばらつきの少ない燃料噴射弁を提供することができるようになる。尚図３において、Ａ点よりも大きなパルス幅を持つ信号が実際に使用できる駆動パルスであり、Ａ点よりも小さな信号は使うことができないものである。

この発明の実施の形態１による燃料噴射弁を示す断面図である。 この発明の実施の形態１による燃料噴射弁を示す断面図である。 燃料噴射弁に印加される駆動信号のパルス幅と噴射量との関係を示す特性図である。

符号の説明

４ 可動鉄心、５ パイプ、６ａ 第１の固定鉄心、６ｂ 第２の固定鉄心、
１２ 弁体、１３ 弁座、１５ プレート。

Claims (4)

1. 弁座に離接して噴射口を開閉する弁体が結合された可動鉄心と、この可動鉄心に対向して配置された固定鉄心と、上記可動鉄心を移動させるためのソレノイド装置と、上記可動鉄心と上記ソレノイド装置の間に設けられたパイプとを有する燃料噴射弁において、上記パイプにより上記固定鉄心を上流側の第１の固定鉄心と下流側の第２の固定鉄心に分割し、上記第１の固定鉄心を大きな電気抵抗を有する材料で構成したことを特徴とする燃料噴射弁。
2. 上記第１の固定鉄心はプレートで押圧されることにより固定されていることを特徴とする請求項１記載の燃料噴射弁。
3. 上記第１の固定鉄心と上記プレートとの間に緩衝材を介在させたことを特徴とする請求項２記載の燃料噴射弁。
4. 上記第１の固定鉄心は外気に曝されないように構成されていることを特徴とする請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の燃料噴射弁。

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