JP3987627B2 - カチオン交換クロマトグラフィー用充填剤の製造方法及び該充填剤を用いる測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カチオン交換クロマトグラフィー用充填剤の製造方法及び該充填剤を用いる試料の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
イオン交換クロマトグラフィーは、イオン性を有する物質の分離に汎用されている。そのうち、カチオン交換クロマトグラフィーは、一定条件下でアニオン性を有する官能基をもつ充填剤を用いて、主にカチオン性物質の分離を行うものである。上記カチオン交換クロマトグラフィーによる測定対象となるカチオン性の物質としては、例えば、タンパク質や核酸などの生体試料;各種イオン類;各種薬物など多岐に渡っている。
【0003】
上記カチオン交換クロマトグラフィーに用いられる充填剤の官能基としては、カルボキシル基及びスルホン酸基が挙げられる。このうち、スルホン酸基を有する充填剤は、カルボキシル基を有する充填剤に比較し広いpH範囲で解離して測定を行える利点がある。
【0004】
スルホン酸基を有する充填剤の調製方法としては、(a)スルホン酸基を有さない粒子をまず調製し、その後該粒子とスルホン酸基あるいは類似基を有する化合物を反応させて、粒子にスルホン酸基を導入する方法;(b)スルホン酸基を有する素材自体を粒子の構成素材として選択し、粒子調製と同時に、スルホン酸基を導入する方法;(c)化学反応によりスルホン酸基を生成し得る官能基を粒子の構成素材として選択し、粒子調製後、化学反応により、該官能基をスルホン酸基に変換する方法などが挙げられる。
【0005】
上記(a)の例としては、特開平1-262468号公報に開示された方法が挙げられる。上記公報の方法は、グリシジル基を有する架橋重合体粒子からなり、該粒子表面のグリシジル基に基づくエポキシ基が加水分解によって水酸基に開環変性され、かつ該粒子内部のグリシジル基に基づくエポキシ基が自己架橋されているクロマトグラフィー用担体の前記水酸基に、有機溶媒中でアルカリ金属の水酸化物を触媒として、プロパンスルトン又は1,4−ブタンスルトンを反応させる方法である。しかし、この製造方法は、工程が非常に多くなるため煩雑である。また、測定対象試料によっては、試料の分離に要する時間が長くなる場合があるという問題もある。
【0006】
上記(b)の例としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのようなスルホン酸基含有単量体と架橋性単量体などとの混合物を、重合開始剤存在下に重合することにより調製され得る。しかしながら、このような単量体は極めて種類が少なく、入手が難かしい。もっとも、このような単量体を、充填剤を使用する者自身において調製することは、不可能ではないが、操作が非常に煩雑である。
【0007】
上記(c)の例としては、スルホン酸エステル含有単量体と架橋性単量体などとの混合物を重合開始剤存在下に重合し、重合後に加水分解等でエステルを分解することにより調製され得る。この場合も該当する単量体が非常に少ないため、測定試料に対する充填剤の最適化がしにくいという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来のスルホン酸基を有するカチオン交換クロマトグラフィー用充填剤の製造方法を改良し、より簡便な方法を提供すること、及び該充填剤を用いる測定方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のカチオン交換クロマトグラフィー用充填剤の製造方法は、アミノアルカンスルホン酸と反応する官能基をもつ高分子粒子に、アミノアルカンスルホン酸を反応させて、該粒子にスルホン酸基を導入することを特徴とする。
【0010】
以下、上記の製造方法について説明する。
【0011】
本発明においては、まず、アミノアルカンスルホン酸と反応する官能基をもつ高分子粒子を用意する。このような高分子粒子は公知の任意の素材及び方法を用いて調製し得る。
【0012】
上記高分子粒子の素材としては、例えば、シリカ、ジルコニアなどの無機系粒子;セルロース、ポリアミノ酸、キトサンなどの天然高分子粒子;ポリスチレン、ポリアクリル酸エステルなどの合成高分子粒子などが挙げられる。
【0013】
上記高分子粒子としては、導入されるスルホン酸基以外の構成成分は、より親水性であることが好ましく、また、耐圧性・耐膨潤性の点から架橋度の高いものが好ましい。
【0014】
高分子粒子がシリカ粒子の場合、該シリカ粒子は、例えばアルコキシラン誘導体をアルコール/水の混合溶媒に添加し、触媒存在下に重合することにより得ることができる。さらに必要に応じて、官能基含有シランカップリング剤を反応させることにより、適当な官能基を導入することもできる。
【0015】
高分子粒子がセルロース粒子の場合、該セルロース粒子は、例えば、三酢酸セルロースを有機溶媒に溶解し、さらにゼラチン水溶液を添加して有機溶媒を除去後、アルカリ性下で加水分解することにより得ることができる。
【0016】
高分子粒子がポリアミノ酸粒子の場合、該ポリアミノ酸粒子は、例えば、N−カルボン酸無水物を重合することにより得ることができる。
【0017】
高分子粒子が合成高分子粒子の場合、該合成高分子粒子は、例えば、スチレン、ジビルベンゼン、ジビニルトルエン;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの単量体を、重合開始剤存在下で重合することにより得ることができる。
【0018】
上述のように、本発明で用いられる高分子粒子は、アミノアルカンスルホン酸と反応する官能基(以下、反応性官能基という)をもつ必要がある。
【0019】
上記反応性官能基の具体例としては、例えば、水酸基、各種アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、メルカプト基、各種エステル基などが挙げられる。
【0020】
上記反応性官能基をもつ高分子粒子は、例えば、上記の高分子粒子の調製に際して、単量体として該反応性官能基をもつものを用いて重合(共重合も含む)させる方法;高分子粒子の調製後、化学反応により該反応性官能基を導入する方法;高分子粒子の調製後、高分子粒子の表面を化学的に変性させて該反応性官能基をもつようにする方法などが挙げられる。
【0021】
上記の反応性官能基をもつ単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸などの酸類;(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、グリシジル(メタ)アクリレート、2−アミノヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのエステル類が挙げられる。
【0022】
本発明の製造方法は、上記のような、アミノアルカンスルホン酸と反応する官能基をもつ高分子粒子に、アミノアルカンスルホン酸を反応させて、該粒子にスルホン酸基を導入する。
【0023】
本発明で言うアミノアルカンスルホン酸とは、アルカンの炭素鎖の両末端に含窒素基及びスルホン酸基を有する化合物を指す。この場合、含窒素基とは、第1級、第2級もしくは第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム基を指す。上記アミノアルカンスルホン酸において、アルカンは炭素数10以内の直鎖又は枝状のアルカンが好ましい。
【0024】
アミノアルカンスルホン酸の具体例としては、例えば、アミノメタンスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、2−アミノプロパンスルホン酸などのアミノアルカンスルホン酸類;ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス−(ヒドロキシメチル)メタン(以下、Bis−Trisという)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(以下、HEPESという)、2−(N−モリホリノ)エタンスルホン酸(以下、MESという)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(以下、MOPSという)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(以下、TESという)などのGoodの緩衝液に用いられる化合物などが挙げられる。
【0025】
反応性官能基をもつ高分子粒子にアミノアルカンスルホン酸を反応させて、該粒子にスルホン酸基を導入するには、高分子粒子上の反応性官能基と、アミノアルカンスルホン酸の含窒素基とを反応させて結合させる。反応方法は公知の技術で行える。
【0026】
例えば、反応性官能基がカルボキシル基の場合、該カルボキシル基をハロゲン化した後、アミノアルカンスルホン酸を添加して加熱する;カルボジイミド存在下にアミノアルカンスルホン酸を添加して加熱する;カルボキシル基をエステル化した後、アミノアルカンスルホン酸を触媒存在下に添加して加熱するなどの方法が挙げられる。
【0027】
例えば、反応性官能基が水酸基の場合、臭化シアンによる活性化処理後、アミノアルカンスルホン酸を添加して加熱する方法が挙げられる。
【0028】
例えば、反応性官能基がアミノ基の場合、チオシアナート誘導体化又はイソシアナート誘導体化した後、アミノアルカンスルホン酸を作用させる方法が挙げられる。
【0029】
例えば、反応官能基がエステル基の場合、ヒドラジン及び亜硝酸塩により酸アジドを生成させた後、アミノアルカンスルホン酸を作用させる方法が挙げられる。
【0030】
本発明の製造方法によって得られる充填剤は、少なくともアミノアルカンスルホン酸由来のスルホン酸基をもつ粒子であるが、スルホン酸基以外の官能基を有していてもよい。
【0031】
本発明の製造方法によって得られる充填剤の粒子形状は、より真球状が好ましい。上記充填剤の粒径は、特に制限されないが、好ましくは0.5〜20μmである。上記充填剤の粒度分布は、変動係数値(CV値)(粒径の標準偏差÷平均粒径×100)として、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましい。
【0032】
次に、本発明の測定方法について説明する。本発明の測定方法は、本発明の製造方法によって得られた充填剤を用いることを特徴とするカチオン交換クロマトグラフィーによる試料の測定方法である。
【0033】
本発明の測定方法の実施に際して、充填剤はカラムに充填されて液体クロマトグラフィー測定に利用される。上記カラムは公知のステンレス製、ガラス製、樹脂製など、特に限定されず、内径0.5〜10mm、長さ5〜300mmのものが好ましい。充填剤のカラムへの充填方法は、公知の任意の方法が使用できるがスラリー充填法がより好ましい。具体的には、例えば、充填剤粒子を溶離液などの緩衝液に分散させたスラリーを送液ポンプなどによりカラムに圧入することにより行う。
【0034】
本発明の測定方法の対象となる試料は、従来のカチオン交換クロマトグラフィーで測定可能なもののすべてが可能であり、特に限定されない。例えば、タンパク質、核酸などの生体試料;薬物類;糖類;界面活性剤;各種イオンなどが挙げられる。
【0035】
上記測定に使用される液体クロマトグラフは、公知のものでよく、例えば、送液ポンプ、試料注入装置(サンプラ)、カラム、検出器などから構成される。また、他の付属装置(カラム恒温槽や溶離液の脱気装置など)が適宜付属されてもよい。
【0036】
測定に用いられる溶離液は、イオン交換クロマトグラフィーに用いられる公知の溶離液の中から選択される。具体的には、リン酸、ホウ酸及びその塩を含む無機系緩衝液;各種アミノ酸類、クエン酸、コハク酸、フタル酸及びその塩などを含む有機酸系緩衝液;HEPES、MESなどのGoodの緩衝液類などが挙げられる。また、必要に応じて塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの各種塩類;塩酸などの無機酸類;酢酸などの有機酸類;水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの塩基類;メタノール、エタノール、アセトニトリルなどの水溶性有機溶媒類などを添加又は単独で使用してもよい。
【0037】
溶離液の濃度は、他の測定条件により異なるが、好ましくは1〜1000mM、より好ましくは5〜800mMである。また、上記の溶離液を複数混合して用いてもよい。また、溶離液を測定途中で切り替えたり、グラディエント溶出を行ってもよい。
【0038】
(作用)
本発明のカチオン交換クロマトグラフィー用充填剤の製造方法は、アミノアルカンスルホン酸を反応性官能基をもつ高分子粒子に結合させることを特徴とする。本発明の製造方法は従来法に比べ、操作が単純で容易に実施でき、反応後の夾雑物質の除去も容易に行え、反応収率も高い。また、反応の再現性も良いので、製造上、有利である。また、製造に際して有害な物質の使用や発生などが少ない。
【0039】
また、既知のアミノアルカンスルホン酸化合物が多く存在するため、アミノアルカンスルホン酸の種類により、高分子粒子とスルホン酸基間の距離を調節できるので、測定対象試料に合わせて最適の化合物を選択できる。また、スルホン酸基以外の部分の構造が異なるアミノアルカンスルホン酸を適宜選択することにより、該部分の分離への寄与も期待できる。
【0040】
また上記充填剤を使用することにより、従来の、カルボキシル基やスルホン酸基を有するカチオン交換クロマトグラフィー用充填剤では、測定時間がかかりすぎたり、分離が不十分であった測定試料の分析において、より短時間に、かつ高精度に分離が可能となる。
【0041】
【実施例】
以下、本発明の非限定的な実施例を挙げることにより、本発明を更に明らかにする。
(実施例1)
(1)高分子粒子の調製
テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製)400g及びグルシジルメタクリレート(日本油脂社製)100gの混合物に、過酸化ベンゾイル(和光純薬社製)1.5gを溶解した。これを4重量%ポリビニルアルコール(日本合成化学社製)水溶液2500mlに分散させ、撹拌しながら窒素雰囲気下で80℃に昇温し、8時間重合した。重合後、洗浄し乾燥した後、分級して平均粒径6μmの粒子を得た。
【0042】
(2)アミノアルカンスルホン酸の導入
上記(1)で得られた粒子100gにMES(和光純薬社製)の10重量%水溶液を500g添加し、70℃で24時間反応させた。得られた粒子を精製水で洗浄し乾燥した。
【0043】
(3)カラムへの充填
上記(2)で得られた粒子をカラムに以下のようにして充填した。上記粒子0.7gを、50mMリン酸緩衝液(pH6.0)30mlに分散し、5分間超音波処理した後、よく撹拌した。全量をステンレス製の空カラム(4.6φ×35mm)を接続したパッカー(梅谷精機社製)に注入した。パッカーに送液ポンプ(サヌキ工業社製)を接続し、圧力300kg/cm2 で定圧充填した。
【0044】
(4)ヘモグロビン(Hb)類の測定
得られたカラムを用いて、以下の測定条件でヘモグロビン類の測定を行った。測定条件
【0045】
測定試料
健常人血をフッ化ナトリウム採血し、以下の試料を調製した。
試料a(糖負荷血):健常人血に、500mg/dlとなるようグルコース水溶液を添加し、37℃で3時間反応させたもの。
試料b(カルバミル化ヘモグロビン(CHb)含有試料):健常人血10mlに、0.3重量%のシアン酸ナトリウムの生理食塩水溶液1mlを添加し、37℃で1時間反応させたもの。
試料c(アセチル化ヘモグロビン(AHb)含有試料):健常人血10mlに、0.3重量%のアセトアルデヒドの生理食塩水溶液1mlを添加し、室温で3時間反応させたもの。
試料d:上記試料bと試料cを等量混合したもの。
【0046】
次いで、上記試料aと試料dをそれぞれ以下のように処理して試料Aと試料Dを作製し測定試料とした。
試料A:上記試料aを、溶血希釈液X(0.1重量%トリトンX−100のリン酸緩衝液溶液(pH7.0))で溶血し、150倍に希釈して試料Aとした。
試料D:上記試料dを、溶血洗浄液Y(溶血洗浄液Xにポリリン酸ナトリウム(太平化学社製)を0.05重量%となるよう添加したもの)で150倍に溶血希釈し、35℃で2分間加温して試料Dとした。
【0047】
測定結果
上記測定条件により、試料A及び試料Dを測定して得られたクロマトグラムを図1に示す。図1(イ)は試料Aを測定した結果、図1(ロ)は試料Dを測定した結果を示す。ピーク1はヘモグロビンA1a(HbA1a)及びヘモグロビンA1b(HbA1b)、ピーク2はヘモグロビンF(HbF)、ピーク3は不安定型ヘモグロビンA1c(不安定型HbA1c)、ピーク4は安定型ヘモグロビンA1c(安定型HbA1c)、ピーク5はヘモグロビンA0(HbA0)、ピーク6はAHb、ピーク7はCHbを示す。
(イ)図では、ピーク3及び4が良好に分離されている。また、(ロ)図ではAHbやCHbのような修飾ヘモグロビンも良好に分離されていることがわかる。
【0048】
(5)核酸類の測定
上記のカラムを用いて、以下の測定条件で核酸類の測定を行った。
測定条件
【0049】
測定試料
チミン、グアニン、シトシン、アデニンの4種の核酸標準品(いずれもSigma社製)を混合し、上記溶離液に溶解した溶液を試料とした。
【0050】
測定結果
上記測定条件により、試料を測定して得られたクロマトグラムを図2に示す。図2においてピーク8はチミン、ピーク9はグアニン、ピーク10はシトシン、ピーク11はアデニンを示す。いずれのピークも短時間で良好に分離されていることがわかる。
【0051】
(実施例2)
トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製)200g及びメタクリル酸(和光純薬社製)100gの混合物に、過酸化ベンゾイル1.5gを溶解し、4重量%ポリビニルアルコール水溶液2500mlに分散した。撹拌しながら窒素雰囲気下で昇温し、80℃で8時間重合した。重合後、洗浄し乾燥した後、分級して平均粒径6μmの粒子を得た。
得られた粒子100gに、0.5重量%カルボジイミド水溶液100ml及び2−アミノエタンスルホン酸(和光純薬社製)30gを添加して60℃で24時間反応させた。得られた粒子を用い、実施例1に準じてHb類及び核酸類の測定を行った。得られたクロマトグラムは、図1及び2と同様であった。
【0052】
(比較例1)
実施例1の(1)と同様にして得られた高分子粒子を、10重量%亜硫酸ナトリウム水溶液に分散し、70℃で24時間反応させた。この反応は、反応中に亜硫酸ガスが発生したため、排気装置を装備して行った。
【0053】
得られた粒子を用い、実施例1に準じて(溶離液A及びBの通流時間は、実用的な測定時間の範囲内で、できるだけ良好な分離ができるように変えた)、Hb類の測定を行ったところ、図3のクロマトグラムを得た。図3(イ)は試料Aを測定した結果、図3(ロ)は試料Dを測定した結果を示す。図1に比較して、図3(イ)では、長時間を要しているにもかかわらず、ピーク3とピーク4の分離が悪い。図3(ロ)では、長時間を要しているにもかかわらずAHbとCHbの分離ができなかった。
【0054】
また実施例1に準じて、核酸類の測定を行ない得られたクロマトグラムを図4に示す。測定に長時間を要していることが分かる。
【0055】
(比較例2)
特開平1−262468号公報に記載の方法により、以下のようにしてスルホン酸基を有する充填剤を調製した。
トリエチレングリコールジメタクリレート50g及びグルシジルメタクリレート350gの混合物に、過酸化ベンゾイル1.5gを溶解し、4重量%ポリビニルアルコール水溶液2500mlに分散した。撹拌しながら窒素雰囲気下で昇温し、80℃で8時間重合した。重合後、得られた粒子100gにキシレン300gを添加し、さらにポリビニルアルコール40g及び硫酸15gを加えて80℃で1時間反応させた。粒子を洗浄後、100mlのジメチルスルホキシド中に懸濁し、1,3−プロパンスルトン5g及び水酸化ナトリウム10gを添加し、30℃で7時間反応させた。得られた粒子を洗浄し、乾燥した後、分級して平均粒径6μmの粒子を得た。なお、この充填剤の調製操作は、操作が多いため非常に煩雑であった。
【0056】
得られた粒子を用い、実施例1に準じてHb類の測定を行ったところ、得られたクロマトグラムは、図3と同様であった。
【0057】
【発明の効果】
本発明に係るカチオン交換クロマトグラフィー用充填剤の製造方法は、アミノアルカンスルホン酸を反応性官能基をもつ高分子粒子に結合させるので従来法に比べて簡便に行え、また有害な物質の使用や発生などが少ない。またアミノアルカンスルホン酸化合物には種々の化合物が存在するので、その種類を変えることにより、高分子粒子とスルホン酸基間の距離を調節できる。従って、測定対象試料に合わせて最適の充填剤を製造できる。また、スルホン酸基以外の部分の構造が異なるアミノアルカンスルホン酸を適宜選択することにより、該部分の分離への寄与も期待できる。
【0058】
本発明に係る測定方法は、請求項1記載の製造方法によって得られた充填剤を用いるので、従来のカルボキシル基やスルホン酸基を有するカチオン交換クロマトグラフィー用充填剤を用いる場合に比べ、ヘモグロビン類などのタンパク質や核酸類をはじめとする、従来から測定されていた試料について、より短時間に、より高精度に分離できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1によって得られた充填剤を用いて、ヘモグロビン類の測定を行ない得られたクロマトグラムを示す図。
【図2】実施例1によって得られた充填剤を用いて、核酸類の測定を行ない得られたクロマトグラムを示す図。
【図3】比較例1によって得られた充填剤を用いて、ヘモグロビン類の測定を行ない得られたクロマトグラムを示す図。
【図4】比較例1によって得られた充填剤を用いて、核酸類の測定を行ない得られたクロマトグラムを示す図。
【符号の説明】
1 HbA1a及びHbA1bのピーク
2 HbFのピーク
3 不安定型HbA1cのピーク
4 安定型HbA1cのピーク
5 HbA0のピーク
6 AHbのピーク
7 CHbのピーク
8 チミンのピーク
9 グアニンのピーク
10 シトシンのピーク
11 アデニンのピーク
Claims (2)
- アミノアルカンスルホン酸と反応する官能基をもつ高分子粒子に、アミノアルカンスルホン酸を反応させて、該粒子にスルホン酸基を導入することを特徴とするカチオン交換クロマトグラフィー用充填剤の製造方法。
- 請求項1記載の製造方法によって得られた充填剤を用いることを特徴とするカチオン交換クロマトグラフィーによる試料の測定方法。
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