JP3987213B2 - 光学測定用プローブ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学測定用プローブに係り、特に、半導体製造工程における半導体ウェハの洗浄やエッチングなどのウェット処理工程に用いられる薬液の濃度を光学的に測定するためのプローブに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造工程において使用される薬液の濃度を測定する方法として、特開平3−175341号公報または特開平6−265471号公報に開示されている方法が知られている。これらの方法では、ポンプなどで薬液槽から薬液をサンプリングし、槽の外に設けられている分光器の測定セル内に薬液を吸引して光学測定を行っている。このような測定システムを採る場合、槽外のセルまで薬液を吸引する必要があるので測定時間がかかり、その時間だけ応答遅れの出てしまう問題がある。
【0003】
また、特開平7−198559号公報では、薬液槽内に浸漬された気体透過部に測定光を照射するために、槽外の近赤外吸収測定部から光ファイバを介して槽内の気体透過部へ測定光を導くようにしている。一般に、半導体製造に使用される薬液の金属汚染は、0.1ppb以下であることが望まれているが、そのような条件を満たして薬液槽内に金属部品を浸漬するには、薬液槽内への微粒子の拡散や金属成分の汚染を招かないように部品を選定することが極めて重要である。尚この先行文献では、薬液槽内に浸漬された気体透過部の材質等の耐薬品性に関して記載はなされていない。
【0004】
また、薬液槽内の構造が複雑になると、部品の選定並びに管理が非常に難しくなる。光ファイバは、導光する手段としては便利であるが、その柔軟性が測定時の変動の原因ともなり、実際には取り扱いの非常に難しい部材である。槽内の薬液は約80℃に加温されており、石英に対しては多少エッチング作用をなす薬液であるため、長時間の使用は光ファイバの光学特性に劣化を招く要因となり、そのことに対する何らかの対策が求められるものである。
【0005】
また、特表平6−506772号には、赤外線分光計に使用するために減衰全反射(ATR)メカニズムを使用する浸漬型プローブが開示されている。ATRは、全反射条件が成り立つとき、測定光の波長程度だけ、エバネッセント波としてATRプリズムの外へ漏出しで測定対象液を透過するもので、その透過時の吸収量を測定することで測定対象液の物性を測定することができるものである。しかしながら、1回の全反射あたりに数μm程度しか液中を光が透過しないので、十分な測定制度を得るためには、反射回数を増やすか、測定光波長を中赤外領域に限ることが要件となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術における上述の技術的課題を解決すべく創案されたものである。したがって本発明の目的は、測定対象の液体の槽中に測定時のみ浸漬するプローブであって、且つプリズムにおける測定光の全反射を利用しつつ測定光を十分な測定距離だけ透過させられるプローブを提供しようとするものである。
【0007】
また、測定対象の液体が過酸化水素水のように気泡を発生する液体である場合に、測定光が液体を透過する領域(プリズムにおける光軸に垂直な端面どうしの間)で測定の邪魔となる気泡が滞留するのを防止して、常に精度の高い測定を可能にするプローブを提供しようとするものである。
【0008】
さらに、測定対象の液体が半導体製造工程で用いられる薬液である場合にも浸漬して用いることができるように、薬液に対する汚染を防止できるプリズムの材質を限定するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述のような課題を解決するために、本願発明は以下のような特徴を備えている。すなわち、光学測定対象の液体中に少なくとも一部分が浸漬されるプリズムを有する光学測定用プローブであって、上記プリズムの液体中に浸漬される部分は、液体の外から該プリズム内に入射した測定光を前記液体との界面において内部で全反射させながら該プリズムから液体の外へ出射させるように導光する全反射面と、該プリズム内を導光される測定光の光路途中で、互いに所定距離隔てられて向かい合う1対の端面とを有しており、上記測定光は、上記1対の端面の一方からプリズム外へ出射してこれら端面間に存する上記液体を透過し、上記1対の端面の他方から再び上記プリズム内へ入射した後、前記液体の外へ導光されることを特徴とする。
【0010】
上記向かい合う1対の端面は、上記測定光の光軸に直交しており、且つ互いに平行であるのが好ましい。
【0011】
上記1対の端面間における光軸上の距離は0.5mm〜10cmであるのが好ましい。
【0012】
上記光学測定対象の液体が、フッ酸またはその混合液体を除く半導体製造薬液である場合、上記プリズムは、透明フッ素樹脂、あるいは石英で作成されるプリズムであるのが好ましい。
【0013】
上記光学測定対象の液体が、フッ酸またはその混合液体を含む半導体製造薬液である場合、上記プリズムは、透明フッ素樹脂、あるいはサファイア、ダイヤモンドで作成されるプリズムであるのが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明に係る光学測定用プローブの第1の実施形態が示されている。図2は,図1を側方から見て示している図である。図3は、第1実施形態におけるプリズムの下端部を拡大して示す図である。このプローブが浸漬される測定対象の薬液は、半導体製造工程においてシリコンウェハの洗浄液として用いられるアンモニアと過酸化水素水の混合水溶液とする。この混合水溶液の屈折率は水にほぼ等しく、この例においてはn=1.33とする。
【0015】
混合水溶液内に浸漬されるプローブの先端には、アンモニアと過酸化水素水の混合水溶液には腐食されない石英製プリズム10が取り付けられている。使用した石英は、日本石英硝子株式会社の合成石英硝子であり、金属含有量が少なく殆どSiO2のみからなるESグレードのもので、屈折率はn=1.45である。図中11および12は、入射測定光および出射測定光を導くように互いに平行に設けられた第1および第2の光ファイバであり、石英ファイバとする。13は光ファイバとプリズムとを連結し、アンモニアと過酸化水素水の混合水溶液に対して耐腐食性を有するフッ素樹脂(PTFEまたはPFA)製のフレームである。図において、測定光の光軸はRで示している。プリズム10の上端面14が、図示のように、入射光および出射光に対して垂直平面となるように、フレーム13は、光ファイバ11および13の光軸Rとプリズム10の測定光入出射面14とが直交するようにそれぞれを保持している。図中15は、第1ファイバ11からの測定光を平行光にする第1レンズであり、16は、プリズム10から出射した測定光を集光させて第2光ファイバ12へ導光する第2レンズである。第1レンズ15によって平行にされる光束の幅は、この例においては2mmとする。レンズ15,16は、石英レンズであり、フレーム13内に保持されている。
【0016】
第1光ファイバ11は、図示していないが測定光光源としてのハロゲン・タングステンランプに接続されており、第2光ファイバ12は、分光器に接続されている。
【0017】
プリズム10は、測定光入出射面14に直交して且つ入射光および出射光に平行となるように延在する側面17を有しており、その側面17の下端部に、測定光を順次全反射させるべく所定の角度で屈曲された第1〜第6の六つの反射面21〜26を有している。全反射の臨界角θは、スネルの法則より次式で求められる。すなわち、θ=sin-1(1.33/1.45)=66.5°である。したがって、入射角がθ(66.5°)以上となるように反射面が屈曲されていれば全反射が起こる。ここでは、各反射面に対して測定光が75°の入射角α1で入射するように角度が付けられている。出射角α2も75°である。したがって、3回の全反射で入射測定光の進路は90°屈曲される。
【0018】
第3反射面23と第4反射面24との間には、測定光がプリズム10からまっずぐに出射して測定対象の薬液中を所定の距離で通過し、再びまっすぐプリズム10内へ入射するように、測定光の光軸Rに垂直な二つの平行端面27,28を有する凹部18が形成されている。平行端面27,28どうしの間の距離は、この例では10mm、凹部18の深さは5mmとする。第1〜第3の反射面21〜23と第4〜第6の反射面24〜26は、凹部18を挟んでその両側で線対称の幾何学形状となるように与えられており、第1光ファイバ11からプリズム10に入射した測定光は180°反転して入射光と平行に進み、第2光ファイバ12へと導光される。測定光入出射面14および上述の二つの平行端面27,28が光軸に対して直交しているのは、測定光の光束には様々な波長の光が含まれているので、これが直交していない場合には波長の異なる光ごとに異なる方向へ屈折して進むことになり、これを防止するための好ましい態様である。
【0019】
なお、単一波長を用いる場合には、端面27,28を光軸に直交させなくとも互いに平行とすれば、光軸の角度は元に戻って反射面24以降の進路は上記と同様になる。
【0020】
さらに、単一波長を用いる場合、端面27,28が光軸に直交せず、しかもこれら端面27,28が平行でなくとも、端面28から入射した光軸の方向に応じて第4、第5、第6の反射面の角度を変化させて最終的に光ファイバ12に入射できるように設計することも可能である。
【0021】
アンモニアと過酸化水素水の混合水溶液は、過酸化水素が分解しやすく、気泡が多く発生する。この気泡が凹部18に滞留すると薬液を対象とした測定が行えなくなるので、そのような滞留を防止するために、凹部18を区画形成しているプリズム底部の箇所は、断面V字状(図2に破線で示す)に下方へ突出して斜面に形成されている。したがって凹部18内に気泡が入り込んでも、気泡はこの斜面に沿って上昇し、凹部から外へ逃げるので凹部18内に滞留することはない。勿論、この断面V字状はU字状等の下方突出曲滑面であってもよく、あるいは単に斜めに傾斜のつけられた平滑斜面であってもよい。さらには、プリズム自体を傾けて薬液中に浸漬することによって気泡の滞留を防止することも可能である。
【0022】
なお、この実施形態では凹部18がプリズム底部の箇所に形成されているが、凹部を区画形成するように測定光の光軸Rに垂直にされた二つの平行端面は、例えば第1反射面21よりも前で側面17に垂直に設けられてもよく、同様の考えで第6反射面26の後で側面17に垂直に設けられてもよい。また、任意の隣り合う反射面どうしの間で光軸Rに垂直となるように設けられてもよい。
【0023】
測定光は、光源から第1光ファイバ11および第1レンズ15を経てプリズム10へ導光され、プリズム10内では第1反射面21から第3反射面23までを経て全反射されて90°方向転換し、そのまま端面27からプリズム10の外へ出射して凹部18内の薬液を十分な距離だけ通過し、端面28から再びプリズム10内へ入射して、さらに第4反射面24から第6反射面で全反射されて第2レンズ16および第2光ファイバ12を経て分光器へ導かれる。
【0024】
この測定では、全反射減衰におけるエバネッセント波による測定対象薬液中の微小距離通過に比べて、十分に大きな距離を測定光が通過できる。十分な距離で薬液を通過した測定光は分光器で分光され、所定の波長値における光強度から正確にアンモニア濃度と過酸化水素濃度が求められる。
【0025】
図4に、本発明に係る光学測定用プローブの第2の実施形態が示されている。図5は,図4を側方から見て示す図である。図6は、第2実施形態におけるプリズムの下端部を拡大して示す図である。この例では、旭硝子株式会社のサイトップ(登録商標)を用いてプリズム30が形成されている。サイトップは図1の例で用いた合成石英硝子に比して屈折率が小さくn=1.34であり、測定対象の薬液を上述の場合と同様にアンモニアと過酸化水素水の混合水溶液とした場合、全反射の臨界角θは約83°である。したがって、この例では入射角が85°となるように各反射面が角度をつけて屈曲されており、総ての反射面で全反射が起こる。したがって、1回の全反射で10°ずつ方向転換するので、9回の全反射で入射測定光は90°屈曲される。この例において図6に示した各反射面の長さはL=3.35mmとされている。このように、反射面が細かく分割されると、プリズム30の底部は図4に示されるように全体として滑らかな曲面に近づく。
【0026】
入射光側の第1光ファイバ31および出射光側の第2光ファイバ32の端面とプリズム30の測定光入出射面34との間ができるだけ小さくなるように配置されており、これらは接触させてもよい。このような条件では、第1光ファイバ31からプリズム30に入射した光は、平行光以外は全反射条件を満たさなくなるのでプリズム出射側の端面には戻ってこない。換言すれば、プリズム出射側の端面に戻ってきた光だけが合計18回の全反射条件を満たした光であり、測定対象薬液を通過した光である。このように、多数回全反射させることによって必然的に平行光だけを取り扱うことができるようになり、図1の例で用いたようなレンズは不要になる。また測定光の光束の幅も狭くなるので、凹部38の深さDも浅くすることができる。この例では光束の幅は0.2mmにされ、その入射光の光軸Rがプリズム30内を通る位置は、プリズム30の側面37から0.14mmの位置とされ、凹部38の深さD=0.82mmとされる。測定光透過長は、図1の例と同様に10mmとした。
【0027】
【発明の効果】
以上のように、本願発明によれば測定装置手段をプローブとしているので、測定対象の液体に対して貯液槽内で直接測定が行える。しかもプリズムによる測定光の全反射を利用するので、反射面に鏡を利用する場合とちがって金属を貯液槽内に浸漬することがなくなる。したがって、プリズムの材質を適切に選定することで、測定対象液が半導体製造薬液であっても薬液を汚染する惧れがなくなる。しかも、全反射を利用しつつも液体に対する測定光の透過長を十分にとることができるようにしたので、使用できる測定光波長は中赤外領域に限られることがなく、近赤外、可視、紫外領域の波長光を用いることができ、しかも小型装置にして精度の高い測定が可能になる。また、薬液中に発生する気泡の影響を排除できる点においても測定精度の高さを維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る光学測定用プローブの第1の実施形態を正面側から見て示す模式図である。
【図2】 図1のプローブを側面側から見て示す模式図である。
【図3】 図1の要部を拡大して示す図である。
【図4】 本発明に係る光学測定用プローブの第2の実施形態を正面側から見て示す模式図である。
【図5】 図4のプローブを側面側から見て示す模式図である。
【図6】 図4の要部を拡大して示す図である。
【符号の説明】
10,30 プリズム
11,31 第1光ファイバ
12,32 第2光ファイバ
13 フレーム
14,34 プリズムの測定光入出射面
15 第1レンズ
16 第2レンズ
17,37 プリズムの側面
18,38 凹部
21〜26 反射面
27,28 平行端面

Claims (7)

  1. 光学測定対象の液体中に少なくとも一部分が浸漬されるプリズムを有する光学測定用プローブであって、
    上記プリズムの液体中に浸漬される部分は、液体の外から該プリズム内に入射した測定光を前記液体との界面において内部で全反射させながら該プリズムから液体の外へ出射させるように導光する全反射面と、該プリズム内を導光される測定光の光路途中で、互いに所定距離隔てられて向かい合う1対の端面とを有しており、
    上記測定光は、上記1対の端面の一方からプリズム外へ出射してこれら端面間に存する上記液体を透過し、上記1対の端面の他方から再び上記プリズム内へ入射した後、前記液体の外へ導光されることを特徴とする光学測定用プローブ。
  2. 上記向かい合う1対の端面が、上記測定光の光軸に直交しており、且つ互いに平行である請求項1記載の光学測定用プローブ。
  3. 上記1対の端面間における光軸上の距離は0.5mm〜10cmである請求項1又は2記載の光学測定用プローブ。
  4. 上記光学測定対象の液体は、フッ酸またはその混合液体を除く半導体製造薬液であり、
    上記プリズムは、透明フッ素樹脂、あるいは石英で作成されるプリズムである請求項1乃至3のいずれかに記載の光学測定用プローブ。
  5. 上記光学測定対象の液体は、フッ酸またはその混合液体を含む半導体製造薬液であり、
    上記プリズムは、透明フッ素樹脂、あるいはサファイア、ダイヤモンドで作成されるプリズムである請求項1乃至3のいずれかに記載の光学測定用プローブ。
  6. 請求項1から5のいずれか1つに記載の光学測定用プローブを備えた分光器。
  7. 請求項1から5のいずれか1つに記載の光学測定用プローブを備えた濃度計。
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