JP3669686B2 - 散乱光計測方法、尿検査方法および散乱光計測装置 - Google Patents

散乱光計測方法、尿検査方法および散乱光計測装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、尿などの液体の被検試料中に光を伝搬させた際に発生する散乱光を計測する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、被検溶液の散乱光を計測する場合には、投射光を被検溶液中に焦点させ、この焦点させた領域で発生した散乱光を積分球やレンズで光センサーの受光面に集光して検出し、あらゆる方向へ向かう散乱光をできるだけ多く捕捉する方法を採っていた。また、投射光を焦点させて、散乱光をより小さな領域で発生させることにより、大きな立体角、すなわち範囲で散乱光を捕捉できる。これにより、光センサーに到達する散乱光のパワーを大きくすることができ、光センサーの出力信号レベルも大きくすることができる。また、電気回路における信号対雑音比を大きくすることができるという利点もある。
【0003】
しかし、散乱光が光センサーに到達する経路が多数存在し、被検溶液中に存在する泡およびほこりなどの浮遊粒子による妨害を受ける確率が高くなる。また、被検溶液の濁度が高くなると、伝搬損失により光路長の長い経路によって光センサーに到達した散乱光パワーと濁度の比例関係が劣化し、同時に各経路の光路長の相違による伝搬損失の違いも大きくなる。そして、濁度と検出される散乱光パワーとの検量線が歪になり、結果的にダイナミックレンジが低下する。さらに、被検溶液の屈折率の影響も受けやすい。
このように、散乱光の捕捉率を上げて計測すると、電気的信号対雑音比は向上するが、光学的信号対雑音比、比例関係および再現性は低下する。特に、この光学的特性の低下は、尿のように屈折率の違いが大きく、泡およびほこりなどの浮遊粒子が多く、試薬混入、加熱などによる濁度変化が大きい被検溶液の場合、顕著である。このような場合、結果的に、光学的および電気的特性を合わせた総合的な計測特性が低下することがある。
【0004】
さらに、より多くの散乱光を捕捉することを目指した上記の従来の方法では、配置の容易性および散乱光の経路の均一化のために、通常は円筒形のサンプルセルまたは試験管を使用する。そして、これらサンプルセルまたは試験管の側面から光を入射し、中央部に投射光を焦点していた。しかし、このような構成にすると、サンプルセルから出射した光を集光させるための系が大型化および複雑化するという問題があった。
また、従来の尿検査方法としては、試薬を含浸した試験紙などに尿を浸し、これの呈色反応を分光器などによって観測し、尿の成分を検査するものがあった。ここで使用される試験紙は、グルコースおよび蛋白質などの個々の検査対象に応じてそれぞれ個別に作製しなければならないという難点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の技術の問題点を解決するために、各被検溶液の屈折率および光透過率の違いの影響を低減した散乱光計測方法および散乱光計測装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、光学窓の内部および面上の汚染物質などの影響を低減した散乱光計測方法を提供することを目的とする。
本発明はまた、信頼性が高く、維持管理が容易で、実用性が高い尿検査方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、1の光学窓および第2の光学窓を有するサンプルセル中の被検溶液に、第1の光学窓から光を入射および伝搬させ、前記被検溶液中で発生する散乱光のうち、前記被検溶液中を伝搬する光の伝搬方向と実質的に垂直方向に伝搬する散乱光を、前記光センサーに入射する散乱光の角度を制限する受光角制限手段を通して、前記第2の光学窓から光センサーにより計測する方法であって、
前記第2の光学窓の被検溶液側の面を、前記被検溶液中を伝搬する光の光軸に対して実質的に平行に位置させ、
前記被検溶液として純水を用いた場合に、前記第2の光学窓の内部および面上で発生する散乱光が前記光センサーの受光面に入射し始める位置に、前記被検溶液中を伝搬する光の光軸の位置Yを設定し、かつ前記第1の光学窓の内部および面上で発生する散乱光が前記光センサーの受光面に入射し始める位置に、前記光センサーの位置Zを設定する、
ことを特徴とする散乱光計測方法に関する
【0007】
また、前記第2の光学窓の内部および面上で発生する散乱光のうち前記光センサーの受光面に入射する散乱光のパワーが、実用上許容される範囲内の所定値以下になるように、前記被検溶液中を伝搬する光の光軸の位置Yを設定するのが有効である。
さらに、前記第1の光学窓の内部および面上で発生する散乱光のうち、前記光センサーの受光面に入射する散乱光のパワーが実用上許容される範囲内の所定値以下になるように、前記光軸の位置Y、および前記光センサーの位置Zを設定するのが有効である。
【0008】
一方、前記第1の光学窓の被検溶液側の面にもっとも近い領域内で発生した散乱光を計測できるように前記光センサーの位置Zを設定するのが有効である。
また、前記光軸の位置Yを、前記第2の光学窓の被検溶液側の面にもっとも近い位置に設定するのが有効である。
【0009】
また、前記被検溶液中を伝搬する光が直線偏光であり、前記光の電界の振動方向である偏光方向に対して垂直な方向に伝搬する散乱光を計測するのが有効である。
また、前記被検溶液中に伝搬させる光が略平行光で、前記光が前記光学窓の前記被検溶液側の面に対して垂直な方向に伝搬するように、前記光を入射させるのが有効である。
【0010】
前記被検溶液中に伝搬させる光のパワー中、前記第2の光学窓の内部および面上を伝搬する光のパワーが占める割合から、前記第2の光学窓の内部および面上で発生する散乱光のパワーを規定することにより、前記所定値を設定するのが有効である。
また、前記被検溶液中に伝搬させる光のパワー中、前記第1の光学窓のうち前記光センサーが受光しうる散乱光を発生する領域を伝搬する光のパワーが占める割合から、前記第1の光学窓の内部および面上で発生する散乱光のパワーを規定することにより、前記所定値を設定することも有効である。
【0011】
前記第1の光学窓および前記第2の光学窓を汚染した状態において、前記両光学窓で発生した散乱光のうち前記光センサーに入射する散乱光のパワーが前記所定値以下となるように、前記光軸の位置Yおよび前記光センサーの位置Zを設定するのが有効である。
また、最小の屈折率を有し、かつ散乱光を実質的に発生しない被検溶液を用いて測定される散乱光のパワーが前記所定値以下となるように、前記光軸の位置Yおよび前記光センサーの位置Zを設定するのも有効である。
【0012】
さらに、本発明は、被検溶液として、加熱してタンパク質を凝集させることにより白濁させた尿、またはタンパク質を凝集させる試薬を混入して白濁させた尿を用い、前記被検溶液の白濁度合いに対応して発生する前記散乱光を、上記散乱光計測方法により計測し、その計測値から、前記被検溶液中のタンパク質濃度を求めることを特徴とする尿検査方法にも関する。
【0013】
また、本発明は、光学窓として機能する隣接する少なくとも二つの透明な側壁を有し、被検溶液を保持する直方体状のサンプルセルと、前記サンプルセルの一方の第1の光学窓を通じて、第1の光学窓と前記被検溶液の接する面に垂直な方向において、前記被検溶液に光を投射する光源と、前記光が前記被検溶液中を伝搬する際に発生し、前記第1の光学窓と隣接する他方の第2の光学窓を通じて出射する散乱光を検出する光センサーと、前記光センサーに入射する散乱光の角度を前記被検溶液中に伝搬させる光の伝搬方向と垂直方向を中心とした所定の角度内に制限する受光角制限手段とを備え、前記光センサーの出力信号により前記被検溶液の散乱光強度を計測することを特徴とする散乱光計測装置に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明による散乱光計測方法は、被検溶液中に光を伝搬させた際に前記被検溶液中で発生する散乱光を計測する方法であって、前記散乱光のうち、前記被検溶液中に伝搬させた光の伝搬方向と垂直方向に伝搬する散乱光を光センサーにより計測することを特徴とするものである。
ここで、本発明においては、入射光の光軸に対して垂直方向の散乱光を計測するが、実際には全ての散乱光がこの垂直方向に伝搬するとは限らない。このことから、この垂直方向に対して所定の角度範囲において伝搬する散乱光を計測してもよい。
上記のように受光角を制限することにより、散乱光に対する各被検溶液の屈折率の違いの影響を低減でき、被検溶液内以外の領域で発生した散乱光による影響が低減されるので、被検溶液自身の光学特性に対応する散乱光を正確に計測することができる。
【0015】
本発明は、前記光センサーに面する第2の光学窓の被検溶液側の面を、被検溶液中に伝搬させる光の伝搬方向と平行に位置させることが好ましい。これによって、被検溶液の屈折率の違いの影響が一層低減された、被検溶液の散乱光強度を計測することができる。
さらに、上記本発明の各散乱光計測方法においては、前記被検溶液中に伝搬させる前記光が略平行光であるのが好ましく、前記光を、第1の光学窓の前記被検溶液に接する面に対して垂直方向に入射させることが好ましい。
また、前記被検溶液中に伝搬させる光が直線偏光である場合には、前記光の電界の振動方向である偏光方向に対して垂直な方向に伝搬する散乱光を検出することが好ましい。
【0016】
本発明の散乱光計測方法において、光センサーに面する第2の光学窓の内部および面上で発生する散乱光のうち、光センサーの受光面に入射する散乱光のパワーが実用上許容される範囲内の所定値以下になるように、前記被検溶液中に伝搬させる光の光軸の位置Yを設定することが好ましい。この光軸の位置Yは、光センサーに面する第2の光学窓の被検溶液側の面を基準にして設定する。これによって、前記光センサーに面する第2の光学窓の内部および面上の汚染物質などの影響を低減することができる。
【0017】
本発明の散乱光計測方法において、被検溶液中に伝搬させる光が入射する第1の光学窓の内部およびその面上で発生する散乱光のうち、光センサーの受光面に入射する散乱光のパワーが実用上許容される範囲内の所定値以下になるように、被検溶液中に伝搬させる光の光軸の位置Y、および光センサーの前記光軸方向における位置Zを設定することが好ましい。
光センサーの前記光軸方向における位置Zは、被検溶液中に伝搬させる光が入射する第1の光学窓の被検溶液側の面を基準にして設定する。これによって、前記光が入射する側の第1の光学窓の内部および面上の汚染物質の影響を低減することができる。
【0018】
ここで、前記「実用上許容される範囲内の所定値」は、被検溶液が最も低い濁度を有する場合において当該被検溶液が有する散乱光のパワーの最小値よりも充分小さいことが好ましい。なお、濁度は、被検溶液の種類、組成および温度などによって異なるが、当業者であれば被検溶液の群から適宜決定することができる。
このように、本発明においては、被検溶液中に伝搬させる光が入射する第1の光学窓の内部およびその面上で発生する散乱光、および光センサーに面する第2の光学窓の内部および面上で発生する散乱光のうち、光センサーの受光面に入射する散乱光のパワーを、この最小値よりも充分低くする。これにより、前記位置Yおよび位置Zのしきい値が決定されることになる。ここで、「充分小さい」とは、濁度の最小計測値に影響を及ぼさない程度で、例えば最小濁度の1/100以下では影響を及ぼさないと仮定すれば、前記所定値は前記最小値の1/100以下である。
【0019】
一方、前記それぞれの光学窓およびそれらの面上で発生する散乱光のうち光センサーの受光面に入射する散乱光のパワーが実用上許容される範囲内の所定値以下の範囲において、被検溶液中に伝搬させる光が入射する第1の光学窓の被検溶液側の面に最も近い領域内で発生した散乱光を計測することが好ましい。
また、前記所定値以下の範囲において、被検溶液中に伝搬させる光の光軸の位置を、光センサーに面する第2の光学窓の被検溶液側の面にもっとも近い位置に設定することが好ましい。
これらの好ましい方法により、光学窓およびそれらの面上の汚染物質で発生する散乱光の影響を一層効果的に低減できる。
【0020】
具体的には、光センサーに面する第2の光学窓およびその面上で発生する散乱光のうち、光センサーの受光面に入射する散乱光のパワーが実用上許容される範囲内の所定値は、被検溶液中に伝搬させる光のパワー中、前記光センサーに面する第2の光学窓の内部および面上を伝搬する光のパワーが占める割合から、前記第2の光学窓の内部および面上で発生する散乱光のパワーを規定することにより、設定することができる。
また、被検溶液中に伝搬させる光が入射する第1の光学窓の内部および面上で発生する散乱光のうち、光センサーの受光面に入射する散乱光のパワーが実用上許容される範囲内の所定値は、被検溶液中に伝搬させる光のパワー中、前記第1の光学窓のうち光センサーが受光しうる散乱光を発生する領域を伝搬する光のパワーが占める割合から、前記第1の光学窓の内部および面上で発生する散乱光のパワーを規定することにより、設定することができる。
【0021】
さらに、本発明においては、前記被検溶液中に伝搬させる光が入射する第1の光学窓および前記光センサーに面する第2の光学窓を汚染した状態において、前記両光学窓で発生した散乱光のうち前記光センサーに入射する散乱光のパワーが前記所定値以下となるように、前記被検溶液中に伝搬させる光の光軸の位置Y、および前記光センサーの前記光軸方向における位置Zを設定することが好ましい。これにより、各光学窓の汚染による影響が排除され、被検溶液の散乱光を高精度で計測することができる。
この場合、被検溶液中の最小の屈折率を有し、かつ散乱光を実質的に発生しない液体を用いて測定される散乱光のパワーが前記所定値以下となるように、前記被検溶液中に伝搬させる光の光軸の位置Y、および前記光センサーの前記光軸方向における位置Zを設定することがさらに好ましい。
【0022】
本発明の散乱光計測装置は、上述の散乱光計測方法を実施すべく、光学窓として機能する隣接する少なくとも二つの透明な側壁を有し、被検溶液を保持する直方体状のサンプルセルと、被検溶液中に伝搬させる光を前記サンプルセルの一つの前記光学窓を通じて前記被検溶液に垂直方向に投射する光源と、前記光が前記被検溶液中を伝搬する際に発生し、前記一つの光学窓と隣接する他の光学窓を通じて出射する散乱光を検出する光センサーと、前記光センサーに入射する散乱光の角度を前記被検溶液中に伝搬させる光の伝搬方向と垂直方向を中心とした所定の角度内に制限する受光角制限手段とを備える。そして、前記光センサーの出力信号により前記被検溶液の散乱光強度を計測する。
ここで、「受光角制限手段」とは、不要な光を遮断する遮光筒と、光源および光センサーの位置決め装置と、前記位置決め装置を制御するコンピューターとを含む位置決め制御装置などのことをいう。
【0023】
また、上記散乱光計測方法は、尿検査方法に応用できる。したがって、本発明は、被検溶液として、加熱してタンパク質を凝集させることにより白濁させた尿、またはタンパク質を凝集させる試薬を混入して白濁させた尿を用い、前記被検溶液の白濁度合いに対応して発生する散乱光を計測し、その計測値から、前記被検溶液中のタンパク質濃度を求める尿検査方法をも提供する。
これにより、信頼性の高い尿中タンパク質濃度の測定が可能となり、簡便で的確な尿検査を行うことができる。
【0024】
以下に、本発明による散乱光計測方法、散乱光計測装置および尿検査方法を、図面を参照しながら、より詳細に説明する。
図1および2は散乱光計測装置の模式図であり、図1はその一部を断面にした平面図、図2はその一部を断面にした側面図である。図1および2において、1は光源である半導体レーザモジュールであり、波長670nm、パワー3.0mWの直線偏光である略平行光2をz方向へ投射する。この略平行光2のビーム形状は楕円状で、電界方向はx方向である。この略平行光2の伝搬方向の中心軸、すなわち光軸4を点線で示した。
【0025】
ここで、この略平行光2はガウシアンビームで、伝搬方向に垂直な断面において、光軸4上での光パワー密度が最大になり、この光軸4から離れるに伴い、式(1):
【0026】
I(r)=I(0)×exp(−2r2/w0 2) (1)
(式中、rは光軸からの距離(m)、I(r)は光軸から距離rの地点のパワー密度(W/m2)、I(0)は光軸上のパワー密度(W/m2)、w0はパワー密度がI(0)の1/e2になる距離(m)、eは自然対数である。)に従ってパワー密度が低下する。
【0027】
上記略平行光2のビーム径をw0の2倍とすると、長軸ビーム径(y方向)が3.0mm、短軸ビーム径(x方向)が1.5mmである。言い換えるとy方向のw0は1.5mmで、x方向のw0は0.75mmである。半径r内に含まれるパワーは、パワー密度を積分することで得られ、半径w0内に略平行光2の全パワーの約86.5%が存在する。
この略平行光2は、幾何光学的には平行光であるが、実際は、伝搬するに伴って回折効果によりビーム径は拡大する。しかし、本発明で用いる上記程度のビーム径においては、実質的に平行光と見なしても支障はない。
【0028】
3は上部に開放された開口部を有する直方体状のガラス製サンプルセルで、その四方の側壁は透明な光学窓である。隣接する各光学窓は互いに垂直に接し、サンプルセル3の内寸は12mm角である。このサンプルセル3は、被検溶液を保持した状態で被検溶液に略平行光2を垂直に入射させることができるとともに、散乱光を外部に取り出すことができる。
5は被検溶液7中に光を伝搬させる際に発生した散乱光を検知する光センサーである。
【0029】
散乱光が出射してくる第2の光学窓(光センサー5に面する光学窓)と光センサー5との間に介在させた円筒形状の遮光筒6は、光センサー5の受光角を制限するものである。遮光筒6において散乱光の光路となる空洞の寸法は、長さL、内径Dである。この遮光筒6の中心軸はy方向にある。言い換えると、前記中心軸は、光軸方向(z方向)および電界方向(x方向)に対して垂直方向にある。また、この遮光筒6の空洞の内壁は、黒色つや消し加工が施されており、実質的に光を反射しない。従って、幾何光学的に考察すると、この遮光塔6により、受光角2θは式(2):
2θ=2×tan-1(D/L) (2)
で制限される。
【0030】
ここで、光センサー5の受光部分は、遮光筒6の空洞部分の断面以上の面積を備えている。すなわち、直径がDの円で囲まれる部分以上の面積を有する。ただし、この2θは、遮光筒6の空洞部分の空気、サンプルセル3の光学窓、および被検溶液7の屈折率の違いを考慮せずに算出した仮想的な受光角である。言い換えると、前記2θは、散乱光が同一屈折率を有する媒体を伝搬すると仮定した場合の受光角である。
【0031】
これらの屈折率の違いを考慮して得られる受光角を図3に示す。図3において、サンプルセル3の光センサー5に面する光学窓(第2の光学窓)の厚さはtである。空気、サンプルセル3の光学窓および被検溶液のそれぞれの屈折率をna、ngおよびnsとし、図3のように、被検溶液から光学窓への入射角をθ1、第2の光学窓における屈折角(空気への入射角)をθ2、空気中における屈折角をθ3と定義すると、スネルの屈折の法則により、式(3):
(sinθ2)/(sinθ1)=ns/ng (3)
および式(4):
(sinθ3)/(sinθ2)=ng/na (4)
が得られる。なお、θ3は式(2)におけるθに相当する。
【0032】
また、式(3)および式(4)から次の式(5):
sinθ1=na/ns×(sinθ3)≒1/ns×(sinθ3)(5)
が導出される。式(5)において、空気の屈折率をnaとした場合に、na≒1としても、実用上は問題ない。式(5)から明らかなように、被検溶液の屈折率nsが変化すると、実質的な受光角である2θ1も変化する。これが変化すると、光センサー5に到達する散乱光の発生領域の体積が変化するため、計測値に影響を及ぼす。
ここで、遮光筒6によって制限された受光角2θ3を小さくするほど、被検溶液の屈折率nsの差異による、実質的な受光角2θ1の変化量を小さくすることができる。従って、制限された受光角2θ3を小さく設定することで、被検溶液の屈折率の影響を低減することができる。
【0033】
次に、この実質的な受光角2θ1の変化による、検出する散乱光の発生領域の体積変化と被検溶液中に伝搬させる略平行光2の光軸4の位置との関係を、図4を用いて説明する。ここで、光軸4の位置Yを、光センサー5に面する第2の光学窓の被検溶液側の面から光軸4までの距離「Y」で表す。
図4において、略平行光2の光軸4の位置YをY1、略平行光2’の光軸4’の位置YをY2で示す(ただし、Y1<Y2)。また、被検溶液の屈折率の変化に伴い、光線8のθ1が光線8’のθ1’のように変化したとすると、光センサーで検出される散乱光の発生領域の体積は、後者の方が大きい。そして、屈折率の変化に基づく前記体積の変化は、距離Yが大きい場合に大きくなることがわかる。従って、試料溶液間の屈折率の違いの影響を低減させるためには、距離Yが小さいほど好ましいことが理解される。
【0034】
また、遮光筒6によって制限された角度θ3を変数として、以下のように考察することができる。式(5)より明らかなように、θ1が大きくなるに伴い、被検溶液の屈折率nsの変化に対するθ3の変化量が大きくなる。言い換えると、θ1が大きくなると、被検溶液の屈折率nsの変化に対するθ3の変化量が大きくなり、光センサーに到達する散乱光パワーも大きく変化する。
一方、θ1がゼロの場合、すなわち光学窓に対して垂直方向に伝搬する散乱光は、被検溶液の屈折率nsにかかわらず、θ3はゼロになり、光センサーに到達する散乱光8のパワーは変化しない。
以上のように、遮光筒6によって、受光角2θ3をできるだけ制限すること、および距離Yを縮小することで、被検溶液の屈折率変化の影響を低減することができる。
また、略平行光2を被検溶液に垂直に入射させることで、光軸4の位置Yおよび角度が被検溶液の屈折率によって変化しないため、屈折率変化の影響を一層低減することができる。
【0035】
次に、図1および2に示した光学系を用いて、被検溶液の濁度を散乱光の計測により求める例について説明する。
被検溶液が濁っている場合、略平行光2は伝搬するに伴い、そのパワーは式(6):
P(Z)=P(0)×exp(−τ×Z) (6)
(式中、Zは略平行光2が入射する光学窓の被検溶液側の面からz方向への距離(m)、P(Z)は略平行光2の位置Zにおけるパワー(W)、P(0)は略平行光2の距離0地点(被検溶液側の光学窓面)のパワー(W)、τは濁度(1/m)である。)にしたがって減衰する。
【0036】
散乱光は発生する地点の略平行光のパワーに比例して発生する。そのため、式(6)においてZが小さい場合、すなわち、略平行光が入射する第1の光学窓の被検溶液側の面からの距離Zが短い地点で発生する散乱光のパワーが大きい。特に、濁度τが大きくなると、略平行光2の入射側と出射側でのパワー差が拡大し、発生する散乱光のパワー差も拡大する。そのため、距離Zはできるだけ縮小することが好ましい。光センサー5の前記基準面からの光軸方向の位置Zは基準面から遮光筒6の中心軸までの距離Zで表すこともできる。
【0037】
発生した散乱光は電界方向以外の全方向に伝搬するので、従来は、積分球などで散乱光を集光することにより、散乱光の捕捉率を上げていた。しかし、散乱光が光センサーに到達する際に伝搬する経路が多いため、被検溶液中の泡およびほこりなどの浮遊粒子の妨害を受け易い。また、濁度が高い場合には、伝搬損失によって光センサーに到達した散乱光パワーと濁度の直線性が低下し、光路長の相違によって伝搬損失度合いが相違する。そのため、ダイナミックレンジが低下する。さらに、被検溶液の屈折率の影響も受けやすい問題もあった。
このように、従来の方法では、光学的信号対雑音比、直線性、再現性は低下し、特に、尿のように屈折率の違いや泡およびほこりなどの浮遊粒子の影響および試薬混入、加熱などによる濁度変化が大きい被検溶液を用いた場合には、特に大きな問題があった。
【0038】
一方、本発明では、光源にレーザを使用すると、散乱光のパワーそのものが大きくなるため、散乱光の捕捉率が低くても、光センサーの出力信号レベルが十分高い。そのため、電気的信号対雑音比の低下は実質的に無視できる程度に抑制できる。
このような観点から、本発明は、散乱光の捕捉率を上げるよりは、むしろ光源にレーザを使用し、散乱光の経路を限定することにより、結果的に、総合的計測特性を向上させることを可能にしたものである。本発明は、特に、尿のように、被検溶液間の濁度の差異が大きい場合に有効に用いることができる。
また、散乱光の経路を限定する際に、散乱光が第2の光学窓に対して垂直方向以外の角度で出射するように設定すると、被検溶液の屈折率により出射角度が変化して、濁度の計測値に影響を及ぼす。この問題は、式(3)、式(4)および式(5)を用いて説明したとおり、本発明により、受光角度を垂直方向に対して所定の角度以内に限定することにより、解決することができる。
【0039】
また、サンプルセルを繰り返し使用すると、光学窓にタンパク質成分や水道水中のスケールなどが付着することがある。このような汚染物質が付着した光学窓に光を投射すると、この光学窓面上で散乱光が発生する。また、光学窓が有する脈理(ガラスの内部に存在する屈折率の不均一な部分)によって、光学窓で散乱光が発生する。これらの被検溶液以外から発生した散乱光が光センサーに入射すると濁度の計測値に影響を及ぼす。
この影響は、上述のように受光角を制限し、光学窓およびその面上で発生した散乱光が直接的に光センサーに到達することを防止することで低減できる。すなわち、この散乱光が直接的に光センサーに到達しないように受光角を制限し、受光する散乱光の発生領域を限定することで、光学窓の脈理や汚染の影響を低減することができる。
以下に、本発明を尿検査に適用した具体的な実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
【0040】
【実施例】
《実施例1》
加熱して白濁させた尿を被検溶液として用い、その濁度に対応した散乱光強度を計測し、その計測値とタンパク質濃度との検量線から、タンパク質濃度を求めた。
本実施例においては、遮光筒6と光センサー5を密着させて一体化し、略平行光2に対して移動することで、距離Yおよび距離Zを変化させた。遮光筒6の空洞の寸法はL=20mm、D=2mmとしたので、θ3=tan-1(2/20)≒5.71であった。
【0041】
まず、内壁にタンパク質が付着して光学窓が汚染されたサンプルセル3を用意した。このサンプルセル3の光学窓にレーザ光2を投射すると、レーザ光2が強く散乱される。このサンプルセル3の光学窓の厚さtは1.0mmであった。微粒子などを含まず、散乱光を実質的に発生しない純水などの液体をこのサンプルセル3に導入した。そして、遮光筒6をサンプルセル3の中央部、すなわち距離Z(=6mm)の付近に一旦固定した。次に、光センサーに面する第2の光学窓の内部およびその面上で発生した散乱光が光センサー5に入射し始めるまで、距離Yを次第に縮小させた。このときの距離YをYminとした。本実施例の場合、Ymin≒2.5mmであった。そして、Ymin<Yを満たし、Yminに近似した3mmに距離Yを一旦固定した。
次に、略平行光2が入射する第1の光学窓の内部およびその面上で発生した散乱光が光センサー5に入射し始めるまで、距離Zを次第に縮小した。このときのZをZminとした。本実施例の場合はZmin≒1.5mmであった。そして、Zmin<Zの関係を満たし、Zminに近似した2.0mmに距離Zを一旦固定した。
【0042】
この状態で、タンパク質濃度≒0(mg/dl)の尿にタンパク質を添加してタンパク質濃度が2、5、15、30、60、100(mg/dl)のサンプル尿を調製した。これらの各サンプル尿とタンパク質濃度≒0(mg/dl)の尿を加熱して白濁化させた。このようにして調製した各被検溶液を、サンプルセル3に導入して、そのときの散乱光強度、すなわち光センサー5の出力信号を計測した。
その結果を図5に示す。図5において、横軸はタンパク質濃度を示し、縦軸は光センサー5で検出された出力信号(散乱光強度)を示す。図5は、距離Zを2.0mmに固定し、距離Yを3.0mm、3.25mm、3.5mm、および3.75mmに変化させた場合の結果を示している。
図5より明らかなように、距離Yが短いほどタンパク質濃度と散乱光強度との関係を示す検量線の直線性が良い。また、距離Yの値にかかわらず、タンパク質濃度≒0(mg/dl)のときには、計測された散乱光強度がゼロである。そのため、各計測値が光学窓の内部およびその面上の汚染物質から発生した散乱光の影響を受けていないことがわかる。
【0043】
次に、距離Yを3mmに固定して、距離Zを変化させて計測した場合に光センサー5で検出された出力信号(散乱光強度)と被検溶液のタンパク質濃度の関係を図6に示す。これは、距離Zを2.0mm、2.3mmおよび2.6mmに変化させて光センサー5の出力信号を計測した結果である。
図6より明らかなように、距離Zが小さいほどタンパク質濃度と散乱光強度との関係を示す検量線の直線性が良い。また、距離Zの値にかかわらず、タンパク質濃度≒0(mg/dl)のときには、計測された散乱光強度がゼロであることから、各計測値が光学窓の内部およびその面上の汚染物質から発生した散乱光の影響を受けていないことがわかる。
【0044】
以上のように、光センサーの受光角を制限し、距離Yを縮小し、さらに、略平行光が入射する第1の光学窓にできるだけ近い領域の被検溶液で発生した散乱光を光センサーへ入射させるように距離Zを縮小させることで、直線性が良く、ダイナミックレンジが広い散乱光強度の計測が実現できた。さらに、散乱光が実質的に発生しない純水などの液体によってあらかじめ、光学窓自体から発生する散乱光の影響が出現し始める位置(YminおよびZmin)を確認することにより、光学窓の内部やその面上の汚染物質の影響を除去できる的確な位置(距離Yおよび距離Z)を設定できた。即ち、前記被検溶液中に伝搬させる光を入射する第1の光学窓および前記光センサーに面する第2の光学窓を汚染した状態において、前記両光学窓で発生した散乱光のうち前記光センサーに入射する散乱光のパワーが所定値以下となるように、前記被検溶液中に伝搬させる光の光軸の位置Y、および前記光センサーの前記光軸方向における位置Zを適切に設定することができた。
また、これらの方法によって、光学窓による散乱光の影響を除去する以外に、被検溶液中の泡およびほこりなどの浮遊粒子による妨害も排除でき、被検溶液本来の光学特性を反映した正確な散乱光強度を計測できることが確認された。
【0045】
なお、本実施例においては、簡便性を重視して、純水を用いてYminおよびZminを実験的に求め、これらの値から適切な距離Yおよび距離Zを設定したが、以下のようにして設定することもできる。
即ち、略平行光の波長(670nm)での純水の屈折率は約1.331であり、被検溶液である尿の屈折率は約1.333〜1.344である。被検溶液の屈折率nsが小さいほど実質的な受光角2θ1が大きくなる。そのため、純水を用いると、尿を用いた場合よりもやや大き目の、YminおよびZminを求めることになる。従って、被検溶液である尿が示す最小の屈折率(1.333)を有する溶液を用いることによって、光学窓の内部およびその面上の汚染物質で発生した散乱光による妨害を阻止できるYminおよびZminを、より厳密に求めることができる。
簡便な手法として純水を用いても実用上は問題ないが、上記のように、被検溶液中の最小の屈折率を有し、かつ実質的に散乱光を発生しない液体を用いて測定される散乱光のパワーが所定値以下となるように、前記被検溶液中に伝搬させる光の光軸の位置Y、および前記光センサーの前記光軸方向における位置Zを設定することにより、直線性を初めとした計測特性をより一層向上させることが可能となる。
【0046】
《実施例2》
本実施例においては、試薬を混入させて白濁させた尿を被検溶液として用い、その濁度に対応した散乱光強度を計測した。そして、その計測値にもとづいて検量線を作成し、タンパク質濃度を求めた。
上記実施例1は、汚染されたサンプルセルを使用して、実験的にYminおよびZminを見出し、これから適切な距離Yおよび距離Zを設定する実施例1のような方式である。これに対し、本実施例は、各光学窓の内部およびそれらの面上で発生し、光センサー5に入射する散乱光が実質的に無視できる実用上問題のない程度の所定のパワーレベルを規定して、被検溶液の最小屈折率、略平行光2のパワー分布より、上記所定値を満足するような、適切な距離Yおよび距離Zを算出する方式である。
【0047】
略平行光2は、式(1)で示されるパワー密度を有するガウシアンビームであり、このパワー密度は無限遠方まで分布している。従って、どのように距離Xおよび距離Yを設定しても、各光学窓の内部およびそれらの面上で発生して光センサー5に入射する散乱光のパワーを原理的にゼロにすることはできない。さらに、実際には極微小ではあるが回折の影響も加わるので、光センサー5には回折成分も入射する。
しかし、実用上は、各光学窓の内部およびそれらの面上で発生した散乱光のうちの光センサー5に入射する散乱光のパワーが、実用上問題ないレベルに抑えられる範囲内で、距離Xおよび距離Yを最小に設定すれば良い。被検溶液から発生する散乱光を計測する上で妨げとなる上記各光学窓の内部およびその面上で発生した散乱光パワーの実用上の影響を評価するために、式(1)中のrを式(7): r=k×w0 (7)
(式中、kは比例定数)のように表現し直す。
【0048】
k=1のとき、半径r内に存在するパワーは、全パワーの86.47%に相当する。また、k=1.5のとき、半径r内に存在するパワーは、全パワーの98.89%に相当し、k=2のとき、半径r内に存在するパワーは、全パワーの99.97%に相当する。言い換えると、例えばk=2のとき、半径rの外に存在するパワーは、全パワーの0.03%にすぎない。
【0049】
光センサーに面する第2の光学窓の内部およびその面上で発生して光センサー5に入射する散乱光のパワーを決定するのは、光センサー5に面する第2の光学窓の内部とその面上を伝搬する略平行光2のパワー、すなわち、式(1)において、r=Yとしたときの半径Y外に存在するパワーである。
また、略平行光2が入射する第1の光学窓の内部およびその面上で発生して光センサー5に入射する散乱光のパワーを決定するのは、遮光筒6の受光角内にある散乱光を発生する第1の光学窓における略平行光2のパワー、言い換えれば、前記略平行光2の入射する第1の光学窓のうちの前記光センサーが受光しうる散乱光を発生する領域を伝搬する光のパワーである。
これらのパワーを、略平行光の全パワーに対して殆ど無視でき、実用上許容される所定値以下に抑えられる範囲内で、距離Yおよび距離Zを最小に設定することで、実用上十分な精度の計測を行うことができる。
【0050】
本実施例においては、上記実用上許容される範囲内の値にするための条件として、光センサーに面する第2の光学窓の内部とその面上を伝搬する略平行光2のパワーが、略平行光2の全パワーの0.05%となるように設定した。また、略平行光2が入射する第1の光学窓のうち遮光筒6の受光角内にある散乱光を発生する領域における略平行光2のパワーを、略平行光2の全パワーの1%となるように設定した。
これらの条件をを満たすために、以下のように、適切な距離Yおよび距離Zの値を算出し、設定した。
まず、距離Yを設定した。式(1)および式(7)より、Y=r=2w0のとき、半径r外に存在するパワーは、全パワーの0.03%となる。この半径r外に存在するパワーのうち、光軸よりも光センサーに面する光学窓側にあるパワーは、半分で、全パワーの0.015%であった。この一部が、光センサーに面する第2の光学窓の内部とその面上を伝搬する略平行光2のパワーに相当するので、所定パワー値である0.05%以下を十分満足した。これに基づき、距離Yをk×w0=2×1.5=3.0mmと設定した。
【0051】
次に、距離Zの設定に関して、図4を用いて説明する。図4において、遮光筒6によって制限された受光角の最外面を伝搬する散乱光の光線8’と、略平行光2が入射する第1の光学窓の被検溶液側の面との交点をCとした。この交点Cと光センサーに面する第2の光学窓面との距離をYcとした。このYcを超える部分に位置する第1の光学窓で発生した散乱光が受光角内に存在することになる。ここで、k=1.5のとき、k×w0=1.5×1.5=2.25mmの半径rの外に存在するパワーは、全パワーの約1.11%であった。この半径r外に存在するパワーのうち、図4において光軸4(または4’)よりも右方、すなわち光センサーに面する第2の光学窓の反対側にあるパワーは、全パワーの0.555%であった。この一部が、受光角内にある散乱光を発生する前記光学窓における略平行光2のパワーに相当するので、光学窓における所定パワー値である1%以下を十分満足した。
ここで、図3および4より、Ycは式(9):
c=(Z−(D/2+t×sinθ2))/tanθ1 (9)
で表され、式(8):
Y+k×w0<Yc (8)
が満たされる必要がある。
【0052】
波長760nmでの被検溶液の尿の屈折率は、約1.333〜1.344の範囲にある。実施例1で述べたように、屈折率が最小のとき、受光角が最大になるので、ns=1.333とした。また、サンプルセル3の光学窓のこの波長での屈折率ngは、約1.514であった。これらの屈折率、式(3)、式(4)、式(5)、θ3≒5.71°およびna≒1から、sinθ2≒0.0657、sinθ1≒0.0746となった。これらと、D=2mm、t=1mmを用いると、式(8)と式(9)から、次の式(10):
Y+2.25<(Z−1.0657)/0.0748 (10)
が得られた。
式(10)に、Y=3mmを代入すると、1.4584mm<Zとなる。これより、距離Zを1.5mmに設定した。
【0053】
このように距離Zおよび距離Yを設定して、サンプルセル3に実施例1で使用したのと同種類の無加熱のサンプル尿を導入したのち、スルホサリチル酸試薬(硫酸ナトリウムを2−ヒドロキシ−5−スルホ安息香酸水溶液に溶解した試薬)を混入した。スルホサリチル酸試薬が混入されると、サンプル尿中のタンパク質成分が凝集し、濁った被検溶液となった。これら被検溶液について測定した散乱光強度とタンパク質濃度との関係は、図5および6におけるY=3.0mmおよびZ=2.0mmのときの特性と同様な直線的関係を示した。
【0054】
以上のように、受光角を制限し、さらに散乱光が発生する領域から被検溶液外に出射する地点までの距離を最小化することで、光学窓の内部およびその面上に付着した汚染物質により発生する散乱光の影響を受けず、かつ、泡およびほこりなどの浮遊粒子による妨害の確率を低下させることができる。
また、散乱光が発生する領域から被検溶液外に出射する地点までの距離を最小化することで、散乱光が被検溶液中を伝搬する際の伝搬損失の影響を低減することができる。この最小化の際に、光学窓の内部およびその面上に付着した汚染物質により発生する散乱光の影響を受けることのない距離Xおよび距離Yの限界値をあらかじめ定量的に求め、妥当な距離を設定することができる。
【0055】
なお、上記の各実施例では、光センサーの受光角が一定の条件のもとで、光センサーに面する第2の光学窓および/または被検溶液中へ伝搬させる光の入射する第1の光学窓の内部ならびにこれら光学窓の面上の汚染物質によって発生して光センサーに入射する散乱光のパワー、いわゆる雑音となるパワーが所定値以下になるように、被検溶液中へ伝搬させる光の光軸の位置Yおよび/または光センサーの前記光軸方向における位置Zを設定した。しかし、光センサーの受光角もそのような雑音となるパワーが所定値以下になるように設定すべきことは当然である。
また、実施例では、略平行光2をガウシアンビームとしたが、他のパワー密度分布を有するビームを用いた場合でも、同様の方法で、距離Yおよび距離Zを設定することができる。また、サンプルセルとしては四方の側壁に透明な光学窓を備えた直方体形状のサンプルセルを用いたが、少なくとも二つの隣接する側壁が透明なものであれば良い。ただし、必ずしも必要でない他の二つの側壁が、磨りガラスなどであれば、ここで発生する散乱光が計測を妨害することがあるので、反射および散乱防止加工を施すことが好ましい。
【0056】
【発明の効果】
以上のように本発明の散乱光計測方法および装置により、被検溶液中の泡およびほこりなどの浮遊粒子による妨害、屈折率および透過率(濁度)の違いによる影響、ならびに光学窓の内部およびその面上に付着した汚染物質より発生した散乱光の影響などを、実用上満足できるレベルにまで排除された高精度の散乱光計測ができる。さらに、被検溶液に伝搬させる光の伝搬損失の影響を低減できるので、計測可能な濃度範囲を拡大できる。
また、本発明を適用することによって、維持管理が容易で、タンパク質の測定濃度範囲が広く、信頼性と実用性が高い尿検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における散乱光計測装置の光学系を断面にして模式的に示す平面図である。
【図2】同装置の光学系を断面にして模式的に示す側面図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するために図1の要部を拡大した図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を説明するために図1の要部を拡大した図である。
【図5】本発明の実施の形態における散乱光強度の計測値と尿タンパク質濃度との関係を示す図である。
【図6】本発明の他の実施の形態における散乱光強度の計測値と尿タンパク質濃度との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 光源
2、2’略平行光
3 サンプルセル
4、4’光軸
5 光センサー
6 遮光筒
7 被検溶液
8、8’ 計測される散乱光

Claims (7)

  1. 1の光学窓および第2の光学窓を有するサンプルセル中の被検溶液に、第1の光学窓から光を入射および伝搬させ、前記被検溶液中で発生する散乱光のうち、前記被検溶液中を伝搬する光の伝搬方向と実質的に垂直方向に伝搬する散乱光を、前記光センサーに入射する散乱光の角度を制限する受光角制限手段を通して、前記第2の光学窓から光センサーにより計測する方法であって、
    前記第2の光学窓の被検溶液側の面を、前記被検溶液中を伝搬する光の光軸に対して実質的に平行に位置させ、
    前記被検溶液として純水を用いた場合に、前記第2の光学窓の内部および面上で発生する散乱光が前記光センサーの受光面に入射し始める位置に、前記被検溶液中を伝搬する光の光軸の位置Yを設定し、かつ前記第1の光学窓の内部および面上で発生する散乱光が前記光センサーの受光面に入射し始める位置に、前記光センサーの位置Zを設定する、
    ことを特徴とする散乱光計測方法。
  2. 前記被検溶液中を伝搬する光が直線偏光であり、前記光の電界の振動方向である偏光方向に対して垂直な方向に伝搬する散乱光を計測することを特徴とする請求項1記載の散乱光計測方法。
  3. 前記被検溶液中に伝搬させる光が略平行光で、前記光が前記第1の光学窓の前記被検溶液側の面に対して垂直な方向に伝搬するように、前記光を入射させることを特徴とする請求項1または2に記載の散乱光計測方法。
  4. 前記受光角制限手段が遮光筒であり、前記遮光筒の一方の端が前記光センサーの受光面と接触し、他方の端が前記第2の光学窓と接触する位置に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の散乱光計測方法。
  5. 被検溶液として、加熱してタンパク質を凝集させることにより白濁させた尿、またはタンパク質を凝集させる試薬を混入して白濁させた尿を用い、前記被検溶液の白濁度合いに対応して発生する前記散乱光を、請求項1〜のいずれかに記載の散乱光計測方法により計測し、その計測値から、前記被検溶液中のタンパク質濃度を求めることを特徴とする尿検査方法。
  6. 光学窓として機能する隣接する少なくとも二つの透明な側壁を有し、被検溶液を保持する直方体状のサンプルセルと、
    前記サンプルセルの一方の第1の光学窓を通じて、第1の光学窓と前記被検溶液の接する面に垂直な方向において、前記被検溶液に光を投射する光源と、
    前記光が前記被検溶液中を伝搬する際に発生し、前記第1の光学窓と隣接する他方の第2の光学窓を通じて出射する散乱光を検出する光センサーと、
    前記光センサーに入射する散乱光の角度を前記被検溶液中に伝搬させる光の伝搬方向と垂直方向を中心とした所定の角度内に制限する受光角制限手段とを備え、
    前記第2の光学窓の被検溶液側の面を、前記被検溶液中を伝搬する光の光軸に対して実質的に平行に位置させ、
    前記被検溶液として純水を用いた場合に、前記第2の光学窓の内部および面上で発生する散乱光が前記光センサーの受光面に入射し始める位置に、前記被検溶液中を伝搬する光の光軸の位置Yが設定されており、かつ前記第1の光学窓の内部および面上で発生する散乱光が前記光センサーの受光面に入射し始める位置に、前記光センサーの位置Zが設定されており、
    前記光センサーの出力信号により前記被検溶液の散乱光強度を計測することを特徴とする散乱光計測装置。
  7. 前記受光角制限手段が遮光筒であり、前記遮光筒の一方の端が前記光センサーの受光面と接触し、他方の端が前記第2の光学窓と接触する位置に設けられていることを特徴とする請求項記載の散乱光計測装置
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