JP3985959B2 - 核酸の測定方法に用いる核酸プローブおよびデータを解析する方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、核酸の測定方法、それに用いる核酸プローブ及びその方法によって得られるデータを解析する方法に関する。詳しくは蛍光色素で標識された核酸プローブを用いる各種核酸の各種測定方法に関し、蛍光色素で標識された核酸プローブを標的核酸にハイブリダイゼーションさせたときに生ずる、ハイブリダイゼーション前後における蛍光色素の発光の減少量を測定するという原理に基づく各種核酸の各種新規測定方法、それに用いる核酸プローブ及びデバイス(devices)、それら測定方法の一つであるPCR方法によって得られるデータを解析する方法、解析装置、解析方法の各手段をプログラムとして記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、蛍光色素で標識された核酸プローブを用いて核酸量を測定する各種方法が知られている。該方法には、以下のようなものがある。
(1)ドットブロッテング法
この方法は、標的核酸と当該核酸プローブをメンブラン上でハイブリダイゼーションさせた後、未反応の核酸プローブを洗い流し、標的核酸とハイブリダイゼーションした核酸プローブに標識された蛍光色素分子のみの蛍光強度を測定するものである。
【0003】
(2)インターカレーター方法(Glazer et al., Nature 359:959,1992):
この方法は、インターカレーターと称されるある種の蛍光色素が核酸の二重鎖内にはまりこんだときに、強く発光するのでその発光の増加量を測定する方法である。その蛍光色素として、例えば、エチジウムブロマイド(実験医学、15巻、7号、46〜51ページ、1997年、羊土社)、SYBR R グリーン(Green) I(LightCyclerTM System;1999年4月5日、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社発行のパンフレット)を挙げることができる。
【0004】
(3)FRET(fluorescence energy transfer)を利用する方法(Mergney et al., Nucleic Acid Res., 22: 920-928,1994.):この方法は、標的核酸にハイブリダイズする二つの核酸プローブからなる。二つの核酸プローブは、各々異なった蛍光色素で標識されている。二つのプローブの内の一方は、FRET現象を通して、エネルギーを他方のプローブの蛍光色素に送りこれを発光させることができる蛍光色素で標識されている。二つのプローブは、蛍光色素が向き合うように、かつ1〜9塩基離れてハイブリダイズするように設計されている。それで、二つの核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズすると蛍光色素の発光が起こり、発光の程度が標的核酸の複製量に比例する。
【0005】
(4)分子ビーコン方法(Tyagi et al., Nature Biotech.,14:303-308,1996.)
この方法で使用する核酸プローブは、核酸プローブの一端にレポーター色素、他端にクエンチャー色素が標識さている。そしてその両端部は塩基配列において互いに相補性があるので、プローブ全体としてhairpin stemを形成するように塩基配列が設計されている。その構造のために液中に浮遊している状態では、Forster共鳴エネルギーのため、レポーター色素の発光は、クエンチャー色素により抑制されている。しかし、標的核酸にハイブリダイゼーションするとhairpin stem構造が壊れるために、レポーター色素とクエンチャー色素の距離が大きくなるので、Forster共鳴エネルギーの移動が起こらなくなる。そのために、レポーター色素の発光が起こるようになる。
【0006】
(5)デービスの方法(Davis et al.、Nucleic acids Res.24: 702-706、1996)
デービスは、オリゴヌクレオチドの3’末端に蛍光色素を、炭素原子18個を有するスペサーを介して結合したプローブを作成した。これをフローサイトメトリーに適用した。3’末端に蛍光色素を直接に結合した場合より、ハイブリダイゼーションした場合、10倍の蛍光強度が得られることを報告した。
これらの方法は、核酸の各種測定方法、HISH方法(fluorescent in situ hybridization assays)、PCR方法、LCR方法(ligase chain reaction)、SD方法( strand displacement assays)、競合的ハイブリダイゼーション方法(competitive hybridization)などに適用されてめざましい発展をとげている。
【0007】
これらの方法は、現在一般的に使用されいるが、蛍光色素で標識した核酸プローブと標的核酸のハイブリダイゼーション反応を行った後、ハイブリダイゼーションしなかった当該核酸プローブを反応系から洗い流す必要があるという好ましくない手順を有している。このような手順を除くと測定時間の短縮、測定の簡便性、測定の正確性をもたらすことは明らかである。そこで、このような手順を有さない核酸測定方法の開発が望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前記の状況に鑑み、蛍光色素で標識された核酸プローブを用いる核酸測定方法において、より短時間に、より簡便、より正確に目的の核酸量を測定できる方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するにあたり、核酸プローブを用いた核酸測定方法について検討を重ねた。その結果、蛍光色素で標識された核酸プローブが標的核酸にハイブリダイゼーションしたときに、蛍光色素の発光が減少するという現象(蛍光消光現象)があり、特定の色素においてはその減少が顕著であり、かつその減少の程度は、蛍光色素が結合した部分の塩基の種類又は塩基配列に依存するということを発見した。本発明はかかる発見に基づいて完成されたものである。
【0011】
即ち、本発明は、
1)下記の何れかの蛍光色素で標識された核酸プローブが標的核酸にハイブリダイゼーションしたときに、上記蛍光色素が、その発光を減少させる核酸プローブであり、かつ、当該プローブは、その5’末端塩基がGまたはCで、その5’末端の燐酸基に炭素数6または7のスペーサーを介して蛍光色素で標識されており、当該核酸プローブが、標的核酸にハイブリダイゼーションしたとき、当該末端部分においてハイブリダイゼーションの塩基対がG(グアニン)とC(シトシン)のペアーを少なくとも一対以上形成するように、当該プローブの塩基配列が設計されていることを特徴とする核酸測定用核酸プローブ、
蛍光色素:6-joe、BODIPY TMR( 商標 )、BODIPY TR( 商標 )、Alexa 488( 商標 )、Alexa 532( 商標 )、BODIPY FL( 商標 )、BODIPY FL/C3( 商標 )、BODIPY FL/C6( 商標 )、fluorescein、FITC、EDANS、rhodamine 6G(R6G)、TMR、TMRITC、x-rhodamine、Texas red( 商標 )、BODIPY 5-FAM( 商標 )、BODIPY R6G( 商標 )、BODIPY 581( 商標 ) 。
【0015】
2)下記の何れかの蛍光色素で標識された核酸プローブが標的核酸にハイブリダイゼーションしたときに、上記蛍光色素が、その発光を減少させる核酸プローブであり、かつ、当該プローブは、その3’末端塩基がGまたはCで、その3’末端の水酸基、または燐酸基の水酸基に炭素数4〜7のスペーサーを介して蛍光色素で標識されており、当該核酸プローブが、標的核酸にハイブリダイゼーションしたとき、当該末端部分においてハイブリダイゼーションの塩基対がG(グアニン)とC(シトシン)のペアーを少なくとも一対以上形成するように、当該プローブの塩基配列が設計されていることを特徴とする核酸測定用核酸プローブ、
蛍光色素:6-joe、BODIPY TMR( 商標 )、BODIPY TR( 商標 )、Alexa 488( 商標 )、Alexa 532( 商標 )、BODIPY FL( 商標 )、BODIPY FL/C3( 商標 )、BODIPY FL/C6( 商標 )、fluorescein、FITC、EDANS、rhodamine 6G(R6G)、TMR、TMRITC、x-rhodamine、Texas red( 商標 )、BODIPY 5-FAM( 商標 )、BODIPY R6G( 商標 )、BODIPY 581( 商標 ) 。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
本発明において、DNA、RNA、cDNA、mRNA、rRNA、XTPs、dXTPs、NTPs、dNTPs、核酸プローブ、ヘルパー核酸プローブ(又は核酸ヘルパープローブ、又は単にヘルパープローブ)、ハイブリダイズ、ハイブリダイゼーション、インターカレーター、プライマー、アニーリング、伸長反応、熱変性反応、核酸融解曲線、PCR、RT−PCR、RNA−primed PCR、Stretch PCR、逆PCR、Alu配列を利用したPCR、多重PCR、混合プライマーを用いたPCR、PNAを用いたPCR法、ハイブリダイゼーション方法(hybridization assays)、HISH(fluorescent in situ hybridization assays)方法、PCR方法(polymerase chain assays )、LCR方法(ligase chain reaction)、 SD方法(strand displacement assays)、競合的ハイブリダイゼーション方法( competitive hybridization)、DNAチップ、核酸検出用(遺伝子検出用)デバイス,SNP(スニップ:一塩基置換多型)、複合微生物系等の用語は、現在、分子生物学、遺伝子工学、微生物工学等で一般的に使用されている用語と同じ意味である。
本発明の第一の特徴は、蛍光色素で標識された核酸プローブを用いる標的核酸の測定方法において、当該核酸プローブが標的核酸にハイブリダイゼーションしたときに生ずる、ハイブリダイゼーション前後における蛍光色素の発光の減少量を測定することにある。
【0018】
本発明において標的核酸の測定とは、定量若しくは定量的検出、または単なる検出のことを云う。
蛍光色素で標識された核酸プローブを用いる核酸測定方法とは、ハイブリダイゼーション方法(hybridization assays)、HISH方法(fluorescent in situ hybridization assays)、PCR方法(polymerase chain assays)、LCR方法(ligase chain reaction)、SD方法(strand displacement assays)、 競合的ハイブリダイゼーション方法(competitive hybridization)などのことをいう。これらの方法では、蛍光色素で標識された核酸プローブを加えた後、標的核酸にハイブリダイゼーションしなかった未反応の当該核酸プローブの蛍光色素を測定系から洗浄等の方法で除去し、標的核酸にハイブリダイゼーションした当該核酸プローブに標識された蛍光色素を当該プローブから直接的に、又は当該プローブに間接的な手段を施して(例えば、酵素を作用させたりして)、発光させて、その発光量を測定する方法である。本発明はこのような複雑な操作をしないで目的核酸を測定することに特徴がある。
【0019】
本発明において標的核酸とは、定量若しくは定量的検出、または単なる検出を目的とする核酸のことを云う。精製の有無を問わない。また、濃度の大小も問わない。各種の核酸が混在していてもよい。例えば、複合微生物系(複数微生物のRNA若しくは遺伝子DNAの混在系)又は共生微生物系(複数の動植物及び/又は複数の微生物のRNA若しくは遺伝子DNAの混在系)における定量若しくは定量的検出、または単なる検出を目的とする特定核酸である。尚、標的核酸の精製が必要な場合は従来公知の方法で行うことができる。例えば、市販されている精製キット等を使用して行うことができる。上記の核酸の具体例として、DNA、RNA、PNA、2−O−メチル(Me)RNA、デオキシリボオリゴヌクレオチド(deoxyribo-oligonucleotides)、リボキシオリゴヌクレオチド(riboxy-origonucleotides)等を挙げることができる。
【0020】
本発明において蛍光色素は、一般に核酸プローブに標識して、核酸の測定・検出に用いられるものが便利に使用できるが、蛍光色素で標識された核酸プローブが標的核酸にハイブリダイゼーションしたときに、プローブに標識した当該蛍光色素が、その発光を減少させるものが好適に用いられる。例えば、フルオレセイン(fluorescein)又はその誘導体類{例えば、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)(FITC)若しくはその誘導体等、Alexa 488、Alexa 532、cy3、cy5、EDANS(5-(2'-aminoethyl)amino-1-naphthalene sulfonic acid)}、ローダミン(rhodamine)6G(R6G)又はその誘導体(例えば、テトラメチルローダミン(teramethylrhodamine)(TMR)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(tetramethylrhodamine isothiocyanate)(TMRITC)、x−ローダミン(x-rhodamine)、テキサスレッド(Texas red)、ボデピー(BODIPY)FL(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、ボデピー(BODIPY)FL/C3(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、ボデピー(BODIPY)FL/C6(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、ボデピー(BODIPY)5-FAM(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、ボデピー(BODIPY)TMR(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、又はその誘導体(例えば、ボデピー(BODIPY)TR(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、デピー(BODIPY)R6G(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、ボデピー(BODIPY)564(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、デピー(BODIPY)581(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)等を挙げることができる。これらの中でも、FITC、EDANS、6-joe、TMR、Alexa 488、Alexa 532、ボデピー(BODIPY) FL/C3(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、ボデピー(BODIPY) FL/C6(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)等を好適なものとして、また、FITC、TMR、6-jeo、ボデピー(BODIPY) FL/C3(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)、ボデピー(BODIPY) FL/C6(商標名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)をより好適なものとして挙げることができる。
【0021】
標的核酸にハイブリダイゼーションさせる核酸プローブは、オリゴデオキシリボヌクレオチドで構成されていてもよいし、オリゴリボヌクレオチドで構成されていてもよい。また、それらの双方が介在しているキメリックオリゴヌクレオチド(chemiric oligonucleodite)でもよい。また、2−o−メチルオリゴリボヌクレオチド(2'-o-Methyl oligoribonucleotides)(oligoribonucleotideの5’末端のヌククレオサイド(nucleoside)部がシチジンで、そのシチジンの2’位のOH基がメチル(methyl)基で修飾されているもの)を使用してもよい。又はRNAとの親和性を高めるために、当該2’−o−メチルオリゴリボヌクレオチドをオリゴデオキシヌクレオチド(oligodeoxynuclueotide)の中に介在させていてもよい。
【0022】
尚、2’−o−メチルオリゴリボヌクレオチドのような修飾されたRNAをオリゴデオキシヌクレオチドの中に介在させた核酸プローブは主にRNAの測定に用いるものである。当該プローブを使用してRNAを測定する場合、試料であるRNA溶液を、当該プローブとハイブリダイゼーションさせる前に、80〜100℃、好ましくは90〜100℃、最適には93〜97℃で、1〜15分間、好ましくは2〜10分間、最適には3〜7分間加熱処理してRNAの高次構造を破壊することが好適である。また、当該核酸プローブの塩基鎖が35塩基以下の場合、配列領域へのハイブリダイゼーション効率を上げるためにヘルパープローブ、例えば、(5')AGGCCGGCCCTTGACTTTCC T(3')なる塩基配列のオリヌクレオチドを反応溶液に添加することが好適である。この場合、ヘルパープローブはオリゴデオキシヌクレオチド体でも、また、2−o−メチルオリゴリボヌクレオチド体でもよい。ただし、35塩基鎖を超える核酸プローブを使用する場合は、標的のRNAを熱変性するだけでよい。このような本発明の核酸プローブをRNAにハイブリダイゼーションさせると、反応液中のRNAの量に応じて蛍光強度が減少し、最終RNA濃度が約150pMまでRNAを測定できる。
【0023】
核酸プローブを用いる従来のハイブリダイゼーション方法によるRNAの測定において、核酸プローブとしてオリゴデオキシヌクレオチド体又はオリゴリボヌクレオチド体が用いられてきた。RNAはそれ自体が強固な高次構造をとるため、プローブと標的RNAとのハイブリダイゼーション効率が悪く、定量性に乏しかった。そのために、RNAを変性させた後、メンブランに固定してからハイブリダイゼーション反応を行うという繁雑性を従来方法は有していた。これに対して、前記の本発明方法は、RNAの特定構造部と高い親和性を有するリボース部修飾核酸プローブを用いているので、従来方法に較べて高い温度でハイブリダイゼーション反応を行うことができる。それで、RNAの高次構造の前記悪影響は、前処理としての加熱変性処理、ヘルパープローブの併用だけで克服可能である。これにより本発明方法においてハイブリダイゼーション効率は実質的に100%になり、定量性が向上する。また、従来方法に較べて格段に簡便になる。
【0024】
本発明のプローブの塩基数は5〜50であり、好ましくは10〜25、特に好ましくは15〜20である。50を超える場合は、HISH方法に用いたとき細胞膜の透過性が悪くなり、本発明の適用範囲を狭めることになる。5未満の場合は、非特異的ハイブリダイゼーションが惹起し易くなり、測定誤差が大きくなる。
【0025】
そのプローブの塩基配列は、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションするものであればよく、特に限定されない。好ましくは、蛍光色素で標識された核酸プローブが標的核酸にハイブリダイゼーションしたとき、
(1)当該プローブにハイブリダイゼーションした標的核酸の末端塩基部から1ないし3塩基離れて、標的核酸の塩基配列にG(グアニン)がすくなとも1塩基以上存在するように、当該プローブの塩基配列が設計されいる塩基配列、
(2)プローブの末端部分においてプローブ−核酸ハイブリッド複合体の塩基対がG(グアニン)とC(シトシン)のペアーを少なくとも一対以上形成するように、当該プローブの塩基配列が設計されている塩基配列、が好ましい。
【0026】
本発明における核酸プローブのオリゴヌクレオチドは、通常の一般的オリゴヌクレオチドの製造方法で製造できる。例えば、化学合成法、プラスミドベクター、ファージベクター等を使用する微生物法等で製造できる(Tetrahedron letters、 22巻、 1859〜1862頁、 1981年; Nucleic acids Research、 14巻、6227〜6245頁、1986年)。尚、現在、市販されている核酸合成機を使用するのが好適である(例えば、ABI394(Perkin Elmer社製、USA))。
【0027】
オリゴヌクレオチドに蛍光色素を標識するには、従来公知の標識法のうちの所望のものを利用することができる(Nature Biotechnology、 14巻、 303〜308頁、 1996年; Applied and Environmental Microbiology、 63巻、 1143〜 1147頁、 1997年; Nucleic acids Research、 24巻、 4532〜4535頁、 1996年)。例えば、5´末端に蛍光色素分子を結合させる場合は、先ず、常法に従って5´末端のリン酸基にスペーサーとして、例えば、-(CH2)n-SHを導入する。これらの導入体は市販されているので市販品を購入してもよい(メドランド・サーテイファイド・レージント・カンパニー(Midland Certified Reagent Company))。この場合、nは3〜8、好ましくは6である。このスペーサーにSH基反応性を有する蛍光色素又はその誘導体を結合させることにより標識したオリゴヌクレオチドを合成できる。このようにして合成された蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドは、逆相等のクロマトグラフィー等で精製して本発明で使用する核酸プローブとすることができる。
【0028】
また、オリゴヌクレオチドの3’末端に蛍光色素を結合させることもできる。この場合は、リボース又はデオキシリボースの3’位CのOH基にスペーサーとして、例えば、-(CH2)n-NH2を導入する。これらの導入体も前記と同様にして市販されているので市販品を購入してもよい(メドランド・サーテイファイフド・レージント・カンパニー(Midland Certified Reagent Company))。また、リン酸基を導入して、リン酸基のOH基にスペサーとして、例えば、-(CH2)n-SHを導入する。これらの場合、nは3〜8、好ましくは4〜7である。このスペーサーにアミノ基、SH基に反応性を有する蛍光色素又はその誘導体を結合させることにより標識したオリゴヌクレオチドを合成できる。このようにして合成された蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドは、逆相等のクロマトグラフィー等で精製して本発明で使用する核酸プローブとすることができる。このアミノ基を導入する場合、キット試薬(例えば、Uni-link aminomodifier(CLONTECH社製、米国)、フルオ・リポターキット(FluoReporter Kits) F-6082、 F-6083、 F-6084、 F-10220(いずれもモレクキュラー・プローベ(Molecular Probes)社製、米国))を用いるのが便利である。そして、常法に従って当該オリゴリボヌクレオチドに蛍光色素分子を結合させることができる。また、プローブ核酸の鎖内に蛍光色素分子を導入することも可能である(ANALYTICAL BIOCHEMISTRY 225, 32-38頁(1998年))。
以上のようにして本発明の核酸プローブが調製できるが、好ましいプローブの形態は、3’又は5’末端が蛍光色素が標識されたものであり、その標識されている末端の塩基がG又はCであるものである。5’末端が標識され、3’末端が標識されていない場合、3’末端のリボース又はデオキシリボースの3’位CのOH基をリン酸基等、また3’末端のリボースの2’位CのOH基をリン酸基等で修飾してもよく何ら制限されない。
【0029】
本発明の核酸プローブは、単に核酸測定だけでなく、標的核酸若しくは遺伝子の多型(polymorphism)または/および変異(mutation)を解析若しくは測定する方法に好適に利用できる。特に下記に述べるDNAチップと併用することによりより便利な方法を提供する。すなわち、本発明の核酸プローブと標的核酸若しくは遺伝子とのハイブリダイゼーションにおいて、GCペアーを形成するかどうかにより、蛍光強度が変化する。それで、本発明の核酸プローブを標的核酸若しくは遺伝子にハイブリダイゼーションさせ、発光強度を測定することにより、標的核酸若しくは遺伝子の多型(polymorphism)または/および変異(mutation)を解析若しくは測定することができる。具体的方法は、実施例に記した。この場合、標的核酸若しくは遺伝子は各種の核酸若しくは遺伝子の増幅方法のうちの一つの方法により増幅された増幅物でもよし、抽出されたものでもよい。また標的核酸はその種類を問わない。本発明を適用しうる標的核酸の例としてRNA、DNA、PNA、人工修飾核酸などを挙げることができる。ただ、鎖中または末端にグアニン塩基が存在しておればよい。鎖中または末端にグアニン塩基が存在しないと蛍光強度が減少しない。よって、本発明方法により、G→A、G←A、 C→T、C←T、G→C、G←Cの変異、または置換、すなわち、1塩基多型(single nucleotide polymorphism (SNP))などの多型(polymorphism analysis)等を解析若しくは測定することができる。なお、現在、多型分析は、マキサム・ギルバート(Maxam-Gilbert)法、ジデオキシ(dideoxy)法を用いて核酸若しくは遺伝子の塩基配列を決定することにより行われているのが現状である。
【0030】
それで、本発明の核酸プローブを標的核酸または/および遺伝子の多型(polymorphism)及び変異(mutation)を解析若しくは測定する測定キットに含有させることにより、標的核酸若しくは遺伝子の多型(polymorphism)または/および変異(mutation)を解析若しくは測定する測定キットとして好適に使用することができる。
【0031】
本発明の標的遺伝子の多型(polymorphism)または/および変異(mutation)を解析若しくは測定する方法により得られるデータを解析する場合に、標的核酸が蛍光色素で標識された核酸プローブとハイブリダイズしたときの反応系の蛍光強度値を、前記のものがハイブリダイズしていないときの反応系の蛍光強度値により補正する処理過程を設けると、処理されたデータは信頼性の高いものになる。
それで本発明は、標的核酸若しくは遺伝子の多型(polymorphism)または/および変異(mutation)を解析若しくは測定する方法のためのデータ解析方法を提供する。
【0032】
また、本発明の特徴は、標的核酸若しくは遺伝子の多型(polymorphism)または/および変異(mutation)を解析若しくは測定する測定装置において、標的核酸若しくは遺伝子が蛍光色素で標識された核酸プローブとハイブリダイズしたときの反応系の蛍光強度値を、前記のものがハイブリダイズしていないときの反応系の蛍光強度値により補正する処理手段を有することを特徴とする標的核酸若しくは遺伝子の多型(polymorphism)または/および変異(mutation)を解析若しくは測定する測定装置である。
【0033】
また、本発明の特徴は、標的核酸若しくは遺伝子の多型(polymorphism)または/および変異(mutation)を解析若しくは測定する方法により得られるデータを解析する場合に、標的核酸若しくは遺伝子が蛍光色素で標識された核酸プローブとハイブリダイズしたときの反応系の蛍光強度値を、前記のものがハイブリダイズしていないときの反応系の蛍光強度値により補正する処理過程をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体である。
【0034】
本発明のプローブは固体(支持層)表面、例えばスライドガラスの表面に固定されていてもよい。この場合、蛍光色素で標識されていない端が固定されているのが好ましい。この形式は現在DNAチップと言われる。遺伝子発現(gene expression)のモニタリング、塩基配列(base sequence)の決定,変異解析(mutation analysis),1塩基多型(single nucleotide polymorphism (SNP))などの多型解析(polymorphism analysis)等に使用できる。勿論、核酸測定用デバイス(チップ)として使用することができる。
【0035】
本発明のプローブを例えばスライドガラスの表面に結合させるには、ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポリアルキルアミンなどのポリ陽イオンをコートしたスライドガラス、アルデヒド基を導入したスライドガラス、アミノ基を導入したスライドガラスを先ず用意する。そして、i)ポリ陽イオンをコートしたスライドガラスには、プローブのリン酸基を反応させる、ii)アルデヒド基を導入したスライドガラスには、アミノ基を導入したプローブを反応させる、iii)アミノ基を導入したスライドガラスには、PDC(pyridinium dichromate)導入、アミノ基又はアルデヒド基導入したプローブを反応させる、などにより達成できる(Fodor,P.A.,et al.,Science,251,767-773(1991); Schena,M.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.,93,10614-10619(1996);McGal,G.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.,93,13555-13560(1996);Blanchad,A.P.,et al.,Biosens.Bioelectron.,11,687-690(1996))。
【0036】
核酸プローブを固体表面にアレー状に配列、結合させたデバイスは核酸測定用がより便利になる。
この場合、塩基配列の異なる多くの本発明のプローブを、個別に同一固体表面上に結合していデバイスをつくることにより、同時に多種遺伝子を検出定量できる。
このデバイスにおいては、プローブ毎に、前記固体のプローブを結合したと反対側の面に少なくとも一つの温度センサーとヒーターが設け、そのプローブを結合した前記固体の領域が最適温度条件になるように温度調節され得るように設計されているのが好適である。
【0037】
このデバイスにおいては、本発明のプローブ以外のプローブ、例えば、一つの分子内に二つの異なった蛍光色素を有し、標的核酸にハイブリダイゼーションしていないときは、二つの蛍光色素の相互作用により、消光若しくは発光しているが、標的核酸にハイブリダイゼーションすると蛍光若しくは消光するように設計された構造をもつ核酸プローブ、即ち、前記の分子ビーコン(Tyagi et al., Nature Biotech.,14:303-308,1996)等を結合したものも好適に使用できる。それで、このようなデバイスも本発明の技術的範囲内に含まれる。
【0038】
本発明のデバイスを用いる測定方法の基本的操作は、核酸プローブを結合した固体表面上にmRNA、cDNA、rRNA等の標的核酸を含む溶液をのせ、ハイブリダイゼーションさせるだけである。これにより、標的核酸量に応じて蛍光量の変化がおこり、その蛍光変化量から標的核酸の検出定量が可能となる。また、一つの固体表面上に塩基配列の異なる核酸プローブを多数種結合させることにより、一度に多くの核酸を検出定量することができる。それで、DNAチップと全く同じ用途で使用できるので新規のDNAチップである。最適の反応条件では標的核酸以外の核酸は蛍光の発光量を変化させないために、未反応な核酸を洗浄する操作は必要がない。更に、微小ヒーターにて核酸プローブの種類毎に温度コントロールすることにより、当該プローブ毎に最適反応条件にコントロールできるために正確な定量が可能となる。また、微小ヒーターにて温度を連続的に変化させ、その間、蛍光量を測定することにより、核酸プローブと標的核酸との解離曲線を解析することができる。その解離曲線の違いからハイブリダイゼーションした核酸の性質の判定や、SNPの検出ができる。
【0039】
従来の標的核酸測定用デバイスは、蛍光色素で修飾されていない核酸プローブを固体表面に結合(固定:fix)し、それに蛍光色素で標識した標的核酸をハイブリダイゼーションさせた後、ハイブリダイゼーションしていない標的核酸を洗い流して、残存している蛍光色素の蛍光強度を測定していた。
蛍光色素で標的核酸を標識するには、例えば、特定mRNAを標的とした場合、次のstepsを取る:(1)細胞から抽出されたmRNA全部を抽出する。(2)それから、逆転写酵素(reverse transcriptase)を用いて、蛍光色素で修飾されヌクレオサイドをとり込ませながらcDNAを合成する。本発明ではこのような操作は必要がない。
【0040】
当該デバイスには各種のプローブが多数スポットしてあるが、その各々のプローブにハイブリダイゼーションする核酸の最適ハイブリダイゼーション条件、例えば、温度等は各々異なる。よって本来であれば、プローブ毎(スポット毎)に、ハイブリダイゼーション反応、洗浄操作を最適な条件で行う必要がある。しかし、それは物理的に不可能であるので、すべてのプローブ毎に同一の温度でハイブリダイゼーションを行い、また、洗浄も同一温度で同一洗浄液で行われている。それで、ハイブリダイゼーションが期待されている核酸がハイブリダイゼーションしなかったり、ハイブリダイゼーションしてもハイブリダイゼーションが強固でないので容易に洗い流されてしまう等の欠点を有していた。そのような原因で核酸の定量性が低いものであった。本発明ではこの洗浄操作が必要がないのでこのような欠点を有しない。また、スポットの底に微小ヒータを設け、ハイブリダイゼーション温度をコントロールすることで、プローブ毎に最適温度でハイブリダイゼーション反応を行わせることができる。それで、本発明は定量性が格段に向上したものである。
【0041】
本発明においては、前記した核酸プローブ又はデバイスを使用することで、標的核酸を短時間で、簡便かつ特異的に測定することができる。
以下に測定法を述べる。
本発明の測定方法において、先ず、測定系に前記の核酸プローブを添加し、標的核酸にハイブリダイゼーションさせる。その方法は、通常の既知方法で行なうことができる(Analytical Biochemistry、 183巻、 231〜244頁、 1989年; Nature Biotechnology、 14巻、 303〜308頁、 1996年; Applied and Environmental Microbiology、 63巻、 1143-1147頁、 1997年)。例えば、ハイブリダイゼーションの条件は、塩濃度が0〜2モル濃度、好ましくは0.1〜1.0モル濃度、pHは6〜8、好ましくは6.5〜7.5である。
【0042】
反応温度は、前記核酸プローブが標的核酸の特異的部位にハイブリダイゼーションして得られるハイブリド複合物のTm値±10℃の範囲内であるのが好ましい。このようにすることにより非特異的なハイブリダイゼーションを防止することができる。Tm−10℃未満のときは、非特異的ハイブリダイゼーション起こり、Tm+10℃を越えるときは、ハイブリダイゼーションが起こらない。尚、Tm値は本発明で用いる核酸プローブを設計するのに必要な実験と同様にして求めることができる。すなわち、当該核酸プローブとハイブリダイゼーションする相補塩基配列のオリゴヌクレオチドを前記の核酸合成機等で化学合成し、当該核酸プローブとのハイブリダイゼーション物のTm値を通常の方法で測定する。
【0043】
また、その反応時間は1秒間〜180分間、好ましくは5秒間〜90分間である。1秒間未満のときは、ハイブリダイゼーションにおいて未反応の本発明の核酸プローブが多くなる。また、反応時間を余り長くしても特に意味がない。なお、反応時間は核酸種、すなわち、核酸の長さ、あるいは塩基配列によって大きく影響を受ける。
前記のようにして、本発明において核酸プローブを標的核酸にハイブリダイゼーションさせる。そして、ハイブリダイゼーションの前後で、蛍光色素の発光量を蛍光光度計で測定し、発光の減少量を計算する。その減少量の大きさは標的核酸量と比例するので、標的核酸の量を求めることができる。
【0044】
反応液中の標的核酸の濃度:0.1〜10.0nMであるのが好ましい。反応液中のプローブの濃度:1.0〜25.0nMであるが好ましい。検量線を作成する場合は、標的核酸に対して、プローブを1.0〜2.5の比率で用いるのが望ましい。
【0045】
実際、試料中の未知濃度の標的核酸を測定する場合、上記の条件で先ず、検量線を作成する。そして、複数の濃度のプローブを添加して、蛍光強度値の減少を測定する。そして、測定された蛍光強度の減少値を最大にするプローブ濃度を好ましいプローブ濃度とする。好ましい濃度のプローブで測定された蛍光強度の減少値もって、検量線から標的核酸の定量値を求めることになる。
【0046】
本発明の核酸測定法の原理は、前記のごとくであるが、各種の核酸測定方法、例えば、FISH方法、PCR方法、LCR方法、SD方法, 競合的ハイブリダイゼーション方法、TAS方法、 などに適用できる。
【0047】
以下にその例を記す。
a)FISH方法に適用した場合
即ち、本発明は色々の種類の微生物若しくは他の動物や植物が混在していて、相互に単離できない微生物系(複合微生物系、共生微生物系)の細胞内若しくは細胞のホモジネート等の核酸測定に好適に適用できる。ここでいう微生物とは一般的にいう微生物のことで、特に限定されるものではない。例えば、真核微生物、原核微生物、その他、マイコプラズマ、ウイルス、リッケチャ等を挙げることができる。そして、特定配列を有する核酸とは、これらの微生物系において、例えば、どのように活躍しているのか調べたい菌株の細胞に特異性を有する塩基配列をもつ核酸のことである。例えば、特定菌株の5SrRNA、16SrRNA若しくは23SrRNA又はそれらの遺伝子DNAの特定配列である。
【0048】
本発明において核酸プローブを複合微生物系又は共生微生物系に添加し、特定菌株の5SrRNA、16SrRNA若しくは23SrRNA又はそれらの遺伝子DNAの量を測定することにより、当該系における特定菌株の存在量を測定することできる。尚、複合微生物系又は共生微生物系のホモジネートに前記核酸プローブを添加して、ハイブリダイゼーション前後における蛍光色素の発光の減少量を測定して特定菌株の存在量を測定する方法も、本発明の技術的範囲内とする。
【0049】
前記の測定方法は、例えば、以下の如くである。即ち、核酸プローブを添加する前に、複合微生物系又は共生微生物系の温度、塩濃度、pHを前記の条件に調整する。複合微生物系又は共生微生物系における特定菌株は、細胞数として107〜1012個/ml、好ましくは109〜1010個/mlに調整することが好適である。それは希釈、又は遠心分離等による濃縮等で行うことができる。細胞数が107個/ml未満のときは、蛍光強度が弱く、測定誤差が大きくなる。1012個/mlを超えるときは、複合微生物系又は共生微生物系の蛍光強度が強すぎるため、特定微生物の存在量を定量的に測定することができなくなる。
【0050】
添加する核酸プローブの濃度は、複合微生物系又は共生微生物系における特定菌株の細胞数に依存する。細胞数1×108/mlに対して0.1〜10.0nM濃度、好ましくは0.5〜5nM濃度、より好ましくは1.0nM濃度である。0.1nM未満のときは、特定微生物の存在量を正確に反映したデータにならない。しかし、最適な核酸プローブの量は、細胞内の標的核酸量に依存するために一概にはいえない。
【0051】
次に本発明において前記核酸プローブと特定菌株の5SrRNA、16SrRNA若しくは23SrRNA又はその遺伝子DNAにハイブリダイゼーションさせるときの反応温度は、前記した条件と同様である。また、その反応の時間も前記の条件と同様である。
前記のような条件で核酸プローブを特定菌株の5SrRNA、16SrRNA若しくは23SrRNA又はそれの遺伝子DNAにハイブリダイゼーションさせ、ハイブリダイゼーション前後の複合微生物系又は共生微生物系の蛍光色素の発光の減少量を測定する。
【0052】
前記のようにして測定された蛍光色素の発光の減少量は、複合微生物系又は共生微生物系における特定菌株の存在量と比例する。それは5SrRNA、16SrRNA若しくは23SrRNA又はそれらの遺伝子DNAの量と特定菌株の存在量とが比例するからである。
【0053】
尚、本発明において、複合微生物系又は共生微生物系における微生物以外の成分は、本発明の核酸プローブと特定菌株の5SrRNA、16SrRNA若しくは23SrRNA又はそれらの遺伝子DNAとのハイブリダイゼーションを阻害しない限り、また、核酸プローブの蛍光色素の発光を阻害をしない限り、特に限定されない。例えば、KH2PO4、K2HPO4、NaH2PO4、Na2HPO4等のリン酸塩、硫安、硝安、尿素等の無機窒素類、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムイオン等の金属イオンの各種塩類、マンガン、亜鉛、鉄、コバルトイオン等の微量金属イオンの硫酸塩、塩酸塩、炭酸塩等の各種塩類、更にビタミン類等が適当に含まれていてもよい。もし、上記の阻害が観察される場合は、遠心分離等の操作で複数の微生物が混在する菌体系から菌体を分離し、再び緩衝液系等に懸濁すればよい。
【0054】
上記の緩衝液としては、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、トリス・塩酸緩衝液、トリス・グリシン緩衝液、クエン酸緩衝液、グット緩衝液等の各種緩衝液をも用いることができる。緩衝液の濃度は、ハイブリダイゼーション、FRET現象、蛍光色素の発光を阻害しない濃度である。その濃度は緩衝液の種類に依存する。緩衝液のpHは4〜12、好ましくは5〜9である。
【0055】
b)PCR methodsに適用する場合
PCR methodsであればどのような方法でも適用できるのであるが、リアルタイム定量的PCR方法に適用する場合を以下に記す。
即ち、リアルタイム定量的PCR方法において、本発明の特定の核酸プローブを用いてPCRを行い、反応前後の蛍光色素の発光の減少をリアルタイムで測定するものである。
本発明のPCRとは各種方法のPCRを意味するものである。例えば、RT−PCR、RNA−primed PCR、Stretch PCR、逆PCR、Alu配列を利用したPCR、多重PCR、混合プライマーを用いたPCR、PNAを用いたPCR法等をも含む。また、定量的とは、本来の定量測定の他に、検出程度の定量測定をも意味するものとする。
【0056】
前記のとおり、標的核酸とは、存在量を定量若しくは定量的検出するまたは単に検出する核酸のことを云う。精製の有無を問わない。また、濃度の大小も問わない。各種の核酸が混在していてもよい。例えば、複合微生物系(複数微生物のRNA若しくは遺伝子DNAの混在系)又は共生微生物系(複数の動植物及び/又は複数微生物のRNA若しくは遺伝子DNAの混在系)における増幅目的の特定核酸である。尚、標的核酸の精製が必要な場合は従来公知の方法で行うことができる。例えば、市販されている精製キット等を使用して行うことができる。
【0057】
従来公知の定量的PCR方法はdATP、dGTP、dCTP、dTTP若しくはdUTP、標的核酸(DNA又はRNA)、Taqポリメラーゼ、プライマー、並びに蛍光色素で標識した核酸プローブ若しくはインターカレーターを用いてMgイオンの存在下に、温度を低温、高温を繰り返しつつ標的核酸を増幅し、増幅過程の蛍光色素の発光の増加量をリアルタイムでモニタリングするものである(実験医学、15巻、7号、46〜51ページ、1997年、羊土社)。
【0058】
本発明の定量的PCR方法は、本発明の核酸プローブを用いて標的核酸を増幅させ、増幅過程において、蛍光色素の発光の減少量を測定することを特徴とするものである。本発明の定量的PCRにおいて、好ましい本発明のプローブとしては、その塩基数は5〜50であり、好ましくは10〜25、特に好ましくは15〜20で、PCRサイクル中に標的核酸の増幅産物とハイブリダイゼーションするものであれば、どのようなものでもよい。また、フォワード(forward)型、リバース(reverse)型のどちらに設計してもよい。
【0059】
例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)5’末端部、好ましくは5’末端が、本発明の実施に有用な蛍光色素で標識され、標的核酸に当該末端部においてハイブリダイゼーションしたとき、当該プローブと標的核酸とがハイブリダイゼーションした5’末端の塩基部分から1〜3塩基5’側に離れて、標的核酸の塩基配列にG(グアニン)が少なくとも1塩基以上存在するように、塩基配列が設計されている。
(2)前記(1)のプローブの内、3’末端が蛍光色素で標識されているプローブ。
【0060】
(3)前記(1)のプローブの内、3’末端、例えば、3’末端のリボース若しくはデオキシリボースの3’位CのOH基がリン酸基等で修飾されているもの、または、3’末端のリボースの2’位CのOH基がリン酸基等で修飾されているもの。
(4)3’末端部、好ましくは3’末端が、本発明の蛍光色素で標識され、3’末端の塩基がG又はCであるもの、または3’末端のリボースの2’位のOH基がリン酸基等で修飾されいるもの。
(5)前記(1)のプローブのうち、5’末端部、好ましくは5’末端が、本発明の蛍光色素で標識されているもの。
(6)5’末端部、好ましくは5’末端が、本発明の実施に有用な蛍光色素で標識され、5’末端の塩基がG又はCであるもの。
【0061】
前記(4)、(6)の場合、標的核酸の塩基配列から、どうしても5’末端がG又はCに設計できない場合は、標的核酸の塩基配列から設計したプライマーであるオリゴヌクレオチドの5’末端に、5’−グアニル酸又は5’−シチジル酸を付加しても、本発明の目的は好適に達成できる。よって、本発明において、3’、又は5’末端の塩基がG又はCになるように設計した核酸プローブとは、標的核酸の塩基配列から設計したプローブの他に、当該のプローブの3’又は5’末端に5’−グアニル酸又は5’−シチジル酸を付加してなるプローブを含むものと定義する。
【0062】
特に上記の(1)、(2)、(3)又は(4)のプローブはプライマーとして利用されないように設計したものである。FRET現象を用いるリアルタイム定量的PCR方法において使用する(蛍光色素で標識した)二つのプローブの代わりに、本発明の一つのプローブを用いてPCRを行うものである。PCRの反応系に当該プローブを添加し、PCRを行う。核酸伸長反応時、標的核酸若しくは増幅標的核酸にハイブリダイズしていた当該プローブがポリメラーゼにより分解され、ハイブリダイゼーション物から分解除去される。このときの反応系または核酸変性反応が完了した反応系の蛍光強度値を測定する。また、標的核酸若しくは増幅した増幅標的核酸が当該プローブとハイブリダイズしている反応系(アニーリング反応、若しくはポリメラーゼにより当該プローブがハイブリダイゼーション物から除かれるまでの核酸伸長反応時の反応系)の蛍光強度値を測定する。そして、前者からの蛍光強度値の減少率を算出することにより増幅された核酸を測定する。当該プローブが標的核酸若しくは増幅標的核酸から、核酸変性反応により完全に解離するか、または核酸伸長時にポリメラーゼにより当該プローブと標的核酸若しくは増幅標的核酸とのハイブリダイゼーション物から分解除去されたときは蛍光強度値は大きい。しかし、当該プローブが標的核酸若しくは増幅標的核酸に十分にハイブリダイズしているアニーリング反応が完了している反応系若しくは核酸伸長反応時にポリメラーゼにより当該プローブと標的核酸若しくは増幅標的核酸とのハイブリダイゼーション物から分解除去されるまでの反応系の蛍光強度値は前者より減少している。蛍光強度値の減少は増幅された核酸量に比例する。
この場合、当該プローブが標的核酸とハイブリダイゼーションしたときのそのハイブリダイゼーション物のTmが、プライマーのハイブリダイゼーション物のTm値の±15℃、好ましくは±5℃の範囲になるように、(2)、(3)、(4)のプローブの塩基配列が設計されることが望ましい。プローブのTm値が、プライマーのTm値−5℃、特に−15℃未満であると、プローブがハイブリダイゼーションしないために、蛍光色素の発光の減少は起こらない。反対にプライマーのTm値+5℃、特に+15℃を超えると、プローブが目的としない標的核酸ともハイブリダイゼーションするので、プローブの特異性が失われる。
【0063】
上記の(5)、(6)のプローブは、プライマーとしてPCRの反応系に添加するものである。蛍光色素で標識されたプライマーを用いるPCR方法は本発明以外未だ知られていない。PCRの反応が進むに従い、増幅された核酸は本発明の蛍光色素で標識される。それで、核酸変性反応が完了している反応系の蛍光強度値は大きいが、アニーリング反応完了しているか若しくは核酸伸長反応時の反応系においては、反応系の蛍光強度は前者の蛍光強度より減少する。
【0064】
PCRの反応は通常のPCR方法と同様の反応条件で行うことができる。それで、Mgイオン濃度が低濃度(1〜2mM)である反応系で標的核酸の増幅を行うことができる。勿論、従来公知の定量的PCRにおいて使用されている高濃度(2〜4mM)のMgイオン存在下の反応系でも本発明は実施できる。
【0065】
尚、本発明のPCR方法において、本発明のPCRを行い、その増幅産物について核酸の融解曲線を分析を行ってTm値を求めるできる。この方法は新規な核酸の融解曲線の分析方法である。本方法において本発明のPCR方法に用いた核酸プローブ又はプライマーとして用いた核酸プローブが好適に利用できる。
この場合、本発明のプローブの塩基配列を、SNP(スニップ;一塩基置換多型)を含む領域と相補的な配列にすることで、PCR終了後、その核酸の本発明のプローブから解離曲線を解析することにより、その解離曲線の違いからSNPの検出ができる。本発明のプローブの配列としては、SNPを含む配列と相補的な塩基配列を使用すれば、プローブ配列とSNPを含む配列との解離曲線より得られるTm値は、SNPを含まない配列との解離曲線から得られるTm値より高くなる。
【0066】
本発明の第二の特徴は、前記のリアルタイム定量的PCR方法ので得られるデータを解析する方法の発明である。
リアルタイム定量的PCR方法は、現在、PCRを行わせる反応装置、蛍光色素の発光を検出装置、ユーザーインターフェース、即ち、データー解析方法の各手順をプログラム化して、それを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体(別称:Sequence Detection Software System)、及びそれらを制御し、データー解析するコンピュータから構成される装置で、リアルタイムで測定されている。それで、本発明の測定もこのような装置で行われる。
【0067】
以下に、先ず、リアルタイム定量的PCRの解析装置から説明する。本発明において用いる装置は、PCRをリアルタイムでモニタリングできる装置であればどのような装置でもよいが、例えば、ABI PRISMTM 7700 塩基配列検出システム(Sequence Detection System SDS 7700)(パーキン・エルマー・アプライド・バイオシステム社(Perkin Elmer Applied Biosytems社、 USA))、ライトサイクラーTM システム(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社、ドイツ)等を特に好適なものとして挙げることができる。
【0068】
尚、前記の反応装置は、標的核酸の熱変性反応、アニーリング反応、核酸の伸長反応を繰り返し行う装置(例えば、温度を95℃、60℃、72℃に繰り返し行うことができる。)である。また、検出システムは、蛍光励起用アルゴンレーザー、スペクトログラフ並びにCCDカメラからなっている。更に、データー解析方法の各手段をプログラム化して、それを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、コンピュータにインストールされており、コンピュータを介して上記のシステムを制御し、検出システムから出力されたデーターを解析処理するプログラムを記録したものである。
【0069】
コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されているデータ解析用プログラムは、サイクルごとの蛍光強度を測定する過程、測定された蛍光強度を、サイクルの関数として、PCRのamplifcation plotをコンピュータのデスプレー上に表示する過程、蛍光強度が検出され始めるPCRサイクル数(threshold cycle number:Ct)を算出する過程、Ct値から試料核酸のコピー数を求める検量線を作成する過程、前記各過程のデーター、プロット値を印字する過程、からなっている。PCRが指数的に進行している場合、PCR開始時の標的核酸のコピー数のLog値と、Ctとの間には直線関係が成り立つ。従って標的核酸の既知量のコピー数を用いて検量線を作成し、未知コピー数の標的核酸を含有するサンプルのCtを検出することにより、標的核酸のPCR開始時のコピー数を計算できる。
【0070】
本発明のPCR関連発明は、前記のようなリアルタイム定量的PCR方法で得られたデーターを解析する方法である。以下に各特徴について記す。
第一の特徴は、リアルタイム定量的PCR方法で得られたデーターを解析する方法において、各サイクルにおける増幅した核酸が蛍光色素と結合したとき、あるいは増幅した核酸が蛍光色素で標識された核酸プローブとハイブリダイズしたときの反応系の蛍光強度値を、各サイクルにおける前記の結合したもの、あるいは前記のハイブリダイズしたものが解離したときの反応系の蛍光強度値により補正する演算処理過程、即ち、補正演算処理過程である。
【0071】
「増幅した核酸が蛍光色素と結合したとき、あるいは増幅した核酸が蛍光色素で標識された核酸プローブとハイブリダイズしたときの反応系」とは、具体的に例示すると、PCRの各サイクルにおける40〜85℃、好ましくは50〜80℃の反応温度を有する核酸伸長反応あるいはアニーリングのときの反応系を挙げることができる。具体的温度は増幅した核酸の長さに依存する。
また、「前記の結合したもの、あるいは前記のハイブリダイズしたものが解離したときの反応系」とは、PCRの各サイクルにおける核酸の熱変性の反応系、具体的には、例えば、反応温度90〜100℃、好ましくは94〜96℃のときのものである。
【0072】
補正演算処理過程の補正演算処理としては本発明の目的に合致するものであればどのようなものでもよいのであるが、具体的には、次の〔数式1〕あるいは〔数式2〕による処理過程を含むものを例示することができる。
fn=fhyb,n/fden,n 〔数式1〕
fn=fden,n/fhyb,n 〔数式2〕
〔式中、
fn:〔数式1〕あるいは〔数式2〕により算出されたnサイクルにおける補正演算処理値、
fhyb,n:nサイクルにおける、増幅した核酸が蛍光色素と結合したとき、あるいは増幅した核酸が蛍光色素で標識された核酸プローブとハイブリダイズしたときの反応系の蛍光強度値、
fden,n:nサイクルにおける、前記の結合したもの、あるいはハイブリダイズしたものが解離したときの反応系の蛍光強度値〕。
尚、本過程においては、本過程で得られた補正演算処理値若しくは当該値を各サイクル数に対してグラフ上にプロットし、コンピュータのデスプレー上に表示及び/又は印字する過程を含むものである。
【0073】
第二の特徴は、各サイクルにおける〔数式1〕あるいは〔数式2〕による補正演算処理値を次の〔数式3〕あるいは〔数式4〕に代入し、各サンプル間の蛍光変化割合あるいは蛍光変化率を算出し、それらを比較するデータ解析方法である。
【0074】
Fn=fn/fa 〔数式3〕
Fn=fa/fn 〔数式4〕
〔式中、
Fn:nサイクルにおける、〔数式3〕あるいは〔数式4〕により算出された蛍光変化割合あるいは蛍光変化率、
fn:〔数式1〕あるいは〔数式2〕による補正演算処理値
fa:〔数式1〕あるいは〔数式2〕による補正演算処理値で、fnの変化が観察される以前の任意のサイクル数のものであるが、通常は、例えば、10〜40サイクルのもの、好適には15〜30サイクルのもの、より好適には20〜30サイクルのものが採用される。〕。
尚、本過程においては、本過程で得られた算出値、比較値若しくは当該値を各サイクル数に対してグラフ上にプロットし、コンピュータのデスプレー上に表示及び/又は印字する過程を含むものであるが、〔数式1〕あるいは〔数式2〕による補正演算処理値については、それらの過程は含むものであっても、含まないものであってもよい。
【0075】
第三の特徴は、
31)〔数式3〕あるいは〔数式4〕により算出された蛍光変化割合あるいは蛍光変化率のデーターを用いて、〔数式5〕、〔数式6〕あるいは〔数式7〕による演算処理する過程、
logb(Fn)、ln(Fn) 〔数式5〕
logb{(1−Fn)×A}、ln{(1−Fn)×b} 〔数式6〕
logb{(Fn−1)×A}、ln{(Fn−1)×A} 〔数式7〕
【0076】
〔式中、
A、b:任意の数値、好ましくは整数値、より好ましくは自然数である。そして、A=100、b=10のときは、{(Fn−1)×A}は百分率(%)を表す。
Fn:〔数式3〕あるいは〔数式4〕により算出されたnサイクルにおける蛍光変化割合あるいは蛍光変化率〕、
32)前記31)の演算処理値が一定値に達したサイクル数を求める演算処理過程、
33)既知濃度の核酸試料におけるサイクル数と反応開始時の標的核酸のコピー数の関係式を計算する演算処理過程、
34)未知試料におけるPCR開始時の標的核酸のコピー数を求める演算処理過程、
を有するデータ解析方法である。そして、31)→32)→33)→34)の順からなる過程が好適である。
【0077】
前記31)〜33)の各過程においては、各過程で得られた演算処理値若しくは当該値を各サイクル数に対してグラフ上にプロットし、コンピュータのデスプレー上に表示及び/又は印字する過程を含むものであってもよい。前記34)の過程の演算処理値は、前記と同様であるが、少なくとも印字される必要があるので、その過程を含むものである。
尚、〔数式1〕あるいは〔数式2〕による補正演算処理値、〔数式3〕あるいは〔数式4〕による算出処理値は、各サイクル数に対してグラフ上にプロットし、コンピュータのデスプレー上に表示及び/又は印字されても、されなくてもよいので、それらの過程は必要に応じて追加すればよい。
【0078】
前記データ解析方法は、リアルタイム定量的PCR方法が蛍光色素の発光の減少量を測定するものである場合に特に有効である。その具体例として、前記の本発明のリアルタイム定量的PCR方法である。
【0079】
第4の特徴は、リアルタイム定量的PCRの解析装置において、前記本発明のリアルタイム定量的PCR方法のためのデータ解析方法を実行する演算及び記憶手段を有するリアルタイム定量的PCRの測定及び/又は解析装置である。
【0080】
第5の特徴は、リアルタイム定量的PCRの解析装置を用いてPCRを解析するデータ解析方法の各手段をプログラム化して、そのプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体において、前記本発明のデータ解析方法の各手段をコンピュータに実行させることができるようにしたプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体である。
【0081】
第6の特徴は、核酸測定方法において、前記本発明のデータ解析方法、測定及び/又は解析装置、記録媒体を利用する新規な核酸の測定方法である。
【0082】
また、第7の特徴は、前記の本発明の核酸の融解曲線の分析方法、即ち、本発明のPCR方法を行って核酸のTm値を求める方法によって得られるデータを解析する方法である。
即ち、本発明のPCR法により増幅された核酸について、低い温度から核酸が完全に変性するまで、温度を徐々に上げる過程(例えば、50℃から95℃まで)、この過程において、短い時間間隔(例えば、0.2℃〜0.5℃間隔)で蛍光強度を測定する過程、測定結果を時間毎にデスプレー上に表示する過程、即ち、核酸の融解曲線を表示する過程、この融解曲線を一次微分する過程、その値(−dF/dT、F:蛍光強度、T:時間)を微分値としてデスプレー上に表示する過程、その微分値から変曲点を求める過程からなる、解析方法である。本発明においては、蛍光強度は温度が上がるごとに増加する。本発明においては、各サイクルにおける核酸伸長反応時、好ましくはPCR反応終了時の蛍光強度値を熱変性反応時の蛍光強度値を用いて割る演算処理する過程を上記の過程に追加することにより、より好ましい結果が得られる。
【0083】
本発明においては、前記の本発明の新規なPCR方法のデータ解析方法に、本発明の核酸の融解曲線の分析をする方法を追加してなる本発明のリアルタイム定量的PCRの測定及び/又は解析装置も本発明の技術的範囲内である。
【0084】
更に、本発明の特徴の一つは、本発明の核酸の融解曲線の分析をする方法の各手段をコンピュータに実行させることができるようにしたプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体、また、前記本発明のPCR方法のデータ解析方法の各手段をコンピュータに実行させることができるようにしたプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体において、本発明の核酸の融解曲線の分析をする方法の各手段をコンピュータに実行させることができるようにしたプログラムを追加して記録したコンピュータ読取可能な記録媒体である。
【0085】
本発明の前記のデータ解析方法、装置、及び記録媒体は、医学、法医学、人類学、古代生物学、生物学、遺伝子工学、分子生物学、農学、植物育種学等の各種の分野で利用できる。また、複合微生物系、共生微生物系と云われ、色々の種類の微生物若しくは他の動物、植物が混在していて相互に単離できない微生物系等に好適に利用できる。ここで云う微生物とは一般的に云う微生物のことで、特に限定されるものではない。例えば、真核微生物、原核微生物、その他マイコプラズマ、ウイルス、リッケチャ等を挙げることができる。
【0086】
また、本発明の前記データ解析方法、装置及び記録媒体を用いて、複合微生物系又は共生微生物系における特定菌株の5SrRNA、16SrRNA若しくは23SrRNA又はそれらの遺伝子DNAのコピー数を定量することにより、当該系における特定菌株の存在量を測定することができる。それは、5SrRNA、16SrRNA若しくは23SrRNAの遺伝子DNAのコピー数は菌株よって一定であるからである。尚、本発明においては、複合微生物系又は共生微生物系のホモジネートを用いて、本発明のリアルタイム定量的PCRを行い、特定菌株の存在量を測定する方法も、本発明の技術的範囲内とする。
【0087】
【実施例】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
実施例1
大腸菌(Escherichia coli)の16SrRNAの核酸塩基配列にハイブリダイゼーションする、即ち、(3')CCGCTCACGCATC(5')の塩基配列を有する核酸プローブの調製を以下の通りに行った。
【0088】
核酸プローブの調製:(3')CCGCTCACGCATC(5')の塩基配列をもつデオキシリボオリゴヌクレオチドの3’末端のデオキシリボースの3’位炭素のOH基に、−(CH2)7−NH2を結合したものを、メドランド・サーテイファイド・レージント・カンパニー社(Midland Certified Reagent Company、 米国)から購入した。更に、モレキュラープローブ(Molecular Probes)社からフロオ・リポーターキット(FluoReporter Kits)F-6082(ボデピーFLのプロピオン酸サクシニミジルエステル(BODIPY FL propionic acid succinimidyl esters)の他に、当該化合物をオリゴヌクレオチドのアミン誘導体に結合する試薬を含有するキット)を購入した。当該キットを前記購入のオリゴヌクレオチドに作用させて、本発明で使用するボデピーFLで標識した核酸プローブを合成した。
【0089】
合成物の精製:得られた合成物を乾固し乾固物を得た。それを0.5M NaHCO3/Na2CO3緩衝液(pH9.0)に溶解した。当該溶解物をNAP−25カラム(ファルマシア社製)でゲルろ過を行い、未反応物を除去した。更に逆相HPLC(B gradient:15〜65%、25分間)を以下の条件で行った。そして、溶出するメインピークを分取した。分取した画分を凍結乾燥して、最初のオリゴヌクレオチド原料2mMより23%の収率で核酸プローブを得た。
【0090】
尚、上記の逆相クトマトグラフィーの条件は次の通りである:
【0091】
実施例2
殺菌したニュウトリエントブロス(NB)(Difco社製)液体培地50ml(組成:NB、0.08g/100ml)を含有する200ml容の三角フラスコを用いて、大腸菌JM109株を37℃で一晩振蘯培養した。次に、本培養液に99.7%エタノールを当量添加した。このエタノール添加培養液2mlを2.0ml容量のエッペンドルフ遠心チューブで遠心分離し、菌体を得た。30mMリン酸緩衝液(ソーダ塩)(pH:7.2)100μlで菌体を一回洗浄した。菌体を130mMのNaCl含有の前記リン酸緩衝液100μlに懸濁した。当該懸濁液を氷冷中で40分間超音波処理し(出力:33w、発振周波数:20kHz、発振法:0.5秒発振、0.5秒休止)、ホモジネートを作製した。
【0092】
前記ホモジネートを遠心分離した後、上澄液を採取し蛍光光度計のセルに移した。それを36℃に温調した。それに36℃に予め加温した前記核酸プローブの溶液を最終濃度で5nMとなるように添加した。36℃に温調しながら90分間大腸菌16SrRNAと核酸プローブとをハイブリダイゼーションさせた。そして蛍光光度計で蛍光色素の発光量を測定した。
【0093】
ハイブリダイゼーション前の蛍光色素の発光量は、上記の上澄液の代りに、130mMのNaCl含有の30mMのリン酸緩衝液(ソーダ塩)(pH:7.2)を用いて測定した値を採用した。核酸プローブの量と上澄液の量の比を変えて発光量を測定した(励起光503nm;測定蛍光色512nm)。その結果を図1に示した。図1から分かるように、上澄液の量比が増加することにより蛍光色素の発光が減少することが分かる。即ち、本発明においては、核酸プローブにハイブリダイゼーションする標的核酸量に比例して、蛍光色素の発光の減少量の大きさが大きくなることが分かる。
【0094】
実施例3
核酸プローブの調製:大腸菌JM109株の23SrRNAにハイブリダイゼーションする(5')CCCACATCGTTTTGTCTGGG(3')の塩基配列をもつオリゴヌクレオチドの5’末端ヌクレオチドの3’位炭素のOH基に、−(CH2)7−NH2を結合したものを、実施例1と同様にメドランド・サーテイファイド・レージント・カンパニー社(Midland Certified Reagent Company、米国)から購入した。更に、実施例1と同様にモレキュラープローブ(Molecular Probes)社からフロオ・リポーターキット(FluoReporter Kit) F-6082 (ボデピーFLのプロピオン酸サクシニミジルエステル(BODIPY FL propionic acid succinimidyl ester)の他に、当該化合物をオリゴヌクレオチドのアミン誘導体に結合する試薬を含有するキット)を購入した。当該キットを前記オリゴヌクレオチドに作用させて、ボデピーFLで標識した核酸プローブを合成した。得られた合成物を実施例1と同様に精製して、最初のオリゴヌクレオチド原料2mMより25%の収率でボデピーFLで標識した核酸プローブを得た。
【0095】
実施例4
実施例2で得られた大腸菌JM109株の菌体に実施例2と同一の培地及び培養条件で調製したシュウドモナス・プウシモビルス 421Y株(Pseudomonas paucimobilis)(現在名:スフィンゴモナス・プウシモビルス)(FERM P-5122)の菌体をOD660値で大腸菌JM109株と同濃度混合し、複合微生物系を調製した。得られた混合液(大腸菌JM109株の菌体濃度は実施例2と同一)について実施例2と同じ方法によりホモジネートを調製した。実施例3で調製した核酸プローブを用いて、励起光を543nm、また、測定蛍光色を569nmにする以外は、実施例2と同様な実験を行った結果、実施例2と同様な結果を得た。
【0096】
実施例5
蛍光消光現象における標的核酸の塩基選択性、即ち、本発明の塩基特異性を検討した。下記に示す標的合成デオキシリボオリゴヌクレオチド(30mer)のpoly a〜jの10種類をDNA合成機ABI394(Perkin Elmer社製、米国)で調製した。
【0097】
更に、上記の合成DNAに対応するデオキシリボオリゴヌクレオチドの5’末端にボデピーFLで標識した下記に示す本発明のプローブを調製した。
上記の合成DNAに対応するプライマーDNAの5’末端のリン酸基に、−(CH2)6−NH2を結合したものをメドランド・サーテイファイド・レージント・カンパニー社(Midland Certified Reagent Company、米国)から購入した。更に、モレキュラープローブ(Molecular Probes)社からフロオ・リポーターキット(FluoReporter Kits)F−6082(ボデピーFLのプロピオン酸サクシニジルエステル(BODIPY FL propionic acid succinidyl esters)の他に、当該化合物をオリゴヌクレオチドのアミン誘導体に結合させる試薬を含有するキット)を購入した。当該キットを前記購入のプライマーDNAに作用させて下記のボデピーFLで標識した本発明のプローブprobe a〜d、及びf〜hのを合成した。そして対応する合成デオキシリボオリゴヌクレオチドとハイブリダイゼーションしたときに、蛍光色素の発光がどの程度減少するかを下記の条件下に調べ、本発明のプローブの特異性を検討した。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
(1)ハイブリダイゼーション溶液のコンポーネント
合成DNA 320nM(終濃度)
核酸プローブ 80nM(終濃度)
NaCl 50mM(終濃度)
MgCl2 1mM(終濃度)
トリス−塩酸緩衝液(pH=7.2) 100mM(終濃度)
ミリQ純水 1.6992ml
終全量 2.0000ml
(2)ハイブリダイゼーションの温度:51℃
(3)測定条件:
励起光 :543nm
測定蛍光色 :569nm
【0103】
【表1】
【0104】
その結果を表1に示した。表1から分かるように、蛍光色素で標識された核酸プローブが標的DNA(デオキシリボオリゴヌクレオチド)にハイブリダイゼーションしたときに、当該末端部において、当該プローブと標的DNAとがハイブリダイゼーションした末端塩基部から1〜3塩基離れて、標的DNAの塩基配列にG(グアニン)が少なくとも1塩基以上存在するように、当該プローブの塩基配列が設計されていることが好適であることを示している。また、蛍光色素で標識された核酸プローブが標的DNAにハイブリダイゼーションしたときに、当該末端部においてハイブリダイゼーション物の塩基対がGとCのペアーを少なくとも一対以上形成するように、当該プローブの塩基配列が設計されていることが好適であることが表1から分かる。
【0105】
実施例6
下記のような塩基配列の標的核酸と本発明の核酸プローブを調製した。標的核酸内のG及び本発明の核酸プローブ内のGの数の影響について、前記実施例と同様にして調べた。
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【表2】
【0111】
表2から分かるように、標的核酸内のGの数、本発明のプローブ内のGの数はそれほど蛍光強度の減少に影響しないことが認識される。
【0112】
実施例7
下記のような塩基配列の標的核酸と本発明の核酸プローブを調製した。標的核酸内の塩基種及び本発明の核酸プローブ内の塩基種の影響について、前記実施例と同様にして調べた。
【0113】
【0114】
【0115】
【表3】
【0116】
表3及び前記の実施例から分かるように、(i)蛍光色素で標識される本発明のプローブの末端がCで構成され、標的核酸がハイブリダイゼーションしたとき、GC ペアーを形成するとき、(ii)蛍光色素で標識される本発明のプローブの末端がC以外の塩基で構成された場合、蛍光色素で標識されている個所の塩基と、標的核酸の塩基との塩基ペアーより、標的核酸の3’末端側にGが少なくとも1個以上存在する場合に、蛍光強度の減少率が大きいことが分かる。
【0117】
実施例8
本発明の核酸プローブに標識する色素の種類について、前記実施例と同様にして調べた。なお、本発明のプローブは、前記実施例7のプローブzを、また、標的核酸は前記実施例7のオリゴヌクレオチドzを用いた。
その結果を、表4に示した。表から分かるように、本発明に用いる蛍光色素として好適なものは、FITC、 BODIPY FL、 BODIPY FL/C3、 6-joe、TMRなどを挙げることができる。
【0118】
【表4】
【0119】
実施例9
核酸プローブの調製:大腸菌JM109株の16SrRNAの1156塩基目から1190塩基の塩基配列に相当するKYM−7株の16SrRNA塩基配列に特異的にハイブリダイゼーションする(5')CAT CCC CAC CTT CCT CCC AGT TGA CCC CGG CAG TC(3')(35塩基対)の塩基配列をもち、1〜16及び25〜35塩基目がデオキシリボヌクレオチド、17〜24塩基目が2’位炭素のOH基をアミノ基で修飾したリボオリゴヌクレオチドからなり、5’末端のリン酸基のOH基を-(CH2)7-NN2で修飾しを結合したものを、実施例1と同様にメドランド・サーテイファイド・レージント・カンパニー社(Midland Certified Reagent Company、米国)から購入した。更に実施例1と同様にモレキュラープローブ(Molecular Probes)社からフロオ・リポーターキット(FluoReporter Kits) F-6082(ボデピーFL/C6のプロピオン酸サクシニミジルエステル(BODIPY FL/ C6 propionic acid succinimidyl ester)の他に、当該化合物をオリゴヌクレオチドのアミン誘導体に結合する試薬を含有するキット)を購入した。当該キットを前記オリゴヌクレオチドに作用させて、ボデピーFL/C6で標識した核酸プローブを合成した。得られた合成物を実施例1と同様に精製して、最初のオリゴヌクレオチド原料2mMより23%の収率でボデピーFL/C6で標識した核酸プローブを得た。このプローブを35塩基鎖2-O-Meプローブと名づけた。
【0120】
(5’)AGG CCG GCC CTT GAC TTT CCT(3’)の塩基配列を有するリボキシオリゴヌクレオチドを前記同様にしてDNA合成機を用いて合成して、ホワード(forward)型のヘルパープローブとした。一方、(5’)AUG GGA GUU CAG UAG UAC CCG CAA UGC UGG UCC(3')の塩基配列を有するリボキシオリゴヌクレオチドを前記同様にしてDNA合成機を用いて合成して、バックワード(back ward) 型のヘルパープローブとした。
【0121】
前記の16SrRNAを95℃で5分加熱処理した後、下記に示す反応条件においたプローブ溶液に添加した後、蛍光測定機器パーキンエルマー(Perkin Elmer) LS-50Bで蛍光強度を測定した。その結果を図2に示した。尚、上記の加熱処理しない16SrRNAを用いたものをコントロールとした。加熱処理した実験区においては、蛍光強度の減少が大きいことが図2から分かる。この結果は、16SrRNAを95℃で加熱処理することで本発明のプローブとより強いハイブリダイゼーションをしていることを示している。
【0122】
実施例10(ヘルパープローブのハイブリダイゼーション効率への影響)
前記の16SrRNAにハイブリダイゼーションする下記の本発明のプローブ及びヘルパープローブを前記と同様にして調製した。そして下記の条件にて、本発明の2'-O-Meプローブの効果、当該プローブの塩基鎖の長さの影響、及びヘルパープローブの効果について検討した。その結果を図3のA、B、C、Dに示した。図から、本発明の2'-O-Meプローブがハイブリダイゼーション効率に寄与していることが分かる。また、2'-O-Meプローブの塩基鎖が短い場合にヘルパープローブがハイブリダイゼーション効率を高めるのに役立っている。
【0123】
1)前記と同じ35塩基鎖2'-O-Meプローブ、
2)前記1)と同じ35塩基鎖2'-O-Meプローブと同じ塩基配列であるが、オリゴヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチドで構成されているプローブ(35塩基鎖DNA プローブ)、
3)前記1)の35塩基鎖2-O-Meプローブと同じ塩基配列であるが、5’末端から8塩基分、3’末端から10塩基分のヌクレオチドを削除したプローブ(17塩基鎖2-O-Me プローブ)、
4)前記2)の33塩基鎖DNAプローブと同じ塩基配列であるが、3’末端から16塩基分のヌクレオチドを削除したプローブ(17塩基鎖DNAプローブ)、
【0124】
5)前記ホワード型ヘルパープローブの中央8塩基分のOH基をメチル基で修飾したヘルパープローブ(ファード型 2-O-Meヘルパープローブ)
6)前記リバース 型ヘルパープローブの中央8塩基分のOH基をメチル基で修飾したヘルパープローブ(リバース型 2-O-Meヘルパープローブ)
7)前記フォワード型ヘルパープローブの塩基配列と同じ塩基配列であるが、オリゴヌクレオチドがデオキヌクレオチドで構成されているヘルパープローブ(ファワード型 DNA ヘルパープローブ)
8)前記リバース 型ヘルパープローブの塩基配列と同じ塩基配列であるが、デオキリボヌクレオチドがで構成されているヘルパープローブ(リバース型 DNA ヘルパープローブ)
9)(5')GUGACGGUCACUAUUUGACCUCCUUCCACCCC(3')なる塩基配列を有するリボオリゴヌクレオチド(35塩基リボオリゴヌクレオチド)、
10)(5')GUGACGGUCACUAUUUG(3')なる塩基配列を有するリボオリゴヌクレオチド(17塩基鎖リボオリゴヌクレオチド)、
【0125】
【0126】
実施例11(rRNA測定のための検量線の作成)
0.1〜10nMの範囲の前記rRNAを95℃で5分間加熱後、予め下記反応条件においた反応液に添加し、1000秒後、蛍光強度の減少をパーキンエルマーLS-50Bを使用して測定した。その結果を図4に示した。図から検量線は0.1〜10nMにおいて直線性を示すことが分かる。
【0127】
実施例12(FISH方法)
セルロモナス(Cellulomonas)sp.KYM-7(FERM P-16806)及びアグロバクテリウム(Agrobacterium) sp. KYM-8(FERM P-11358)の各々のrRNAにハイブリダイゼーションする本発明のプローブ35〜36塩基鎖デオキシオリゴヌクレオチド 2-O-Meプローブを前記と同様にして調製した。各プローブの塩基配列は下記の通りである。
【0128】
セルロモナス sp.KYM-7のrRNA測定のための35塩基鎖デオキシオリゴヌクレオチド2−O−Meプローブ:
(5')CAT CCC CAC CTT CCT CCG AGT TGA CCC CGG CAG TC(3')(アンダーライン部分がメチル基で修飾されている。)。
アグロバクテリウム sp. KYM-8(FERM P-11358)のrRNA測定のための36塩基鎖デオキシオリゴヌクレオチド2−O−Meプローブ:
(5')CAT CCC CAC CTT CCT CTC GGC TTA TCA CCG GCA GTC(3')(アンダーライン部分がメチル基で修飾されている。)。
【0129】
セルロモナス sp. KYM-7及びアグロバクテリウムsp. KYM-8を下記の培地組成で下記の培養条件で混合培養し、培養時間毎に培養物を採取した。それらから、rRNAをRNeasy Maxikit(QIAGENE社)を用いて調製した。当該rRNAを95℃で5分加熱後、予め反応条件においた反応液に添加し、70℃、1000秒間反応させた後、蛍光強度をパーキンエルマーLS-50Bを使用して測定した。その結果を図5に示した。尚、全rRNAはリボグリーン(RiboGreen) RNA Kit (会社名:モレキュラープローブ(molecular probes)、所在地名:Eugene,Oregon, USA)を用いて測定した。
図から分かるように、各菌株のrRNAの動態は全 rRNAの動態と一致した。また、各菌株のrRNAの合計量は全rRNAと一致した。このことは、本発明方法はFISH方法において有効な方法になることを示している。
【0130】
培地組成(g/l):デンプン,10.0;アスパラギン酸,0.1; K2HPO4,5.0;
KH2PO4,2.0;MgSO4・7H2O ,0.2;NaCl,0.1; (NH4)2SO4;0.1. 培地100mlを500ml容のコニカルフラスコに分注し、該フラスコを120℃で10分間、オートクレーブ釜を用いて殺菌した。
【0131】
培養条件:前記の菌株を斜面培地で予め培養した。該斜面培地より1白金耳の菌体をとり、前記の殺菌したコニカルフラスコに接種した。30℃、150rpmで撹拌培養した。
【0132】
【0133】
以下実施例13に、標的核酸若しくは遺伝子の多型及び変異を解析若しくは測定する方法を記す。
実施例13
下記に示した塩基配列をもつ4種類のオリゴヌクレオチドを前記実施例5のDNA合成機を用いて合成した。また、前記実施例5と同様にして、下記の塩基配列の本発明の核酸プローブを合成した。該プローブと各々のオリゴヌクレオチドを溶液中でハイブリダイゼーションさせた後、蛍光強度の変化から1塩基置換の評価ができるかどうか検討した。本発明の核酸プローブの塩基配列は、標的オリゴヌクレオチドの3’末端にGが存在する場合に、100%マッチするように設計されている。ハイブリダイゼーション温度は、プローブと標的オリゴヌクレオチドの全塩基対(base-pairs)が100%ハイブリダイゼーションできる40℃に設定した。プローブ及び標的オリゴヌクレオチドの濃度、緩衝液の濃度,蛍光測定装置、蛍光測定条件、実験操作などは、前記実施例5と同様である。
【0134】
【0135】
その結果を表5に示した。表から、標的オリゴヌクレオチドNo.1〜3においては、蛍光強度に変化は観察されなかったが、標的オリゴヌクレオチドNo.4においては84%の減少が観察された。
【0136】
【表5】
【0137】
本発明において、標的核酸若しくは遺伝子(No.1〜4)の多型及び変異を解析若しくは測定若しくは測定する方法により得られるデータ(表5のカラムA及びBのデータ)を解析する方法において、標的核酸若しくは遺伝子が蛍光色素で標識された核酸プローブ(上記の核酸プローブ)とハイブリダイズしたときの反応系の蛍光強度値を、前記のハイブリダイズしていないときの反応系の蛍光強度値により補正するとは、表3の(A−B)/Bの計算をいう。
以上の結果より、標的核酸が2本鎖の場合、G→A、G←A、C→T、C←T、G→C、G←Cの置換を検出できることが明らかになった。
【0138】
実施例14
図6に本発明のDNAチップのモデルを図示した。先ず、実施例13で調製した本発明のプローブ、3'TTTTTTTTGGGGGGGGC5'BODIPY FL/C6の3’末端の3’位のOHにアミノ基を導入したもの、また、スライドガラスを反応基としてエポキシ基を有するシランカップリン剤でスライドガラスの表面を処理したものを用意する。上記の本発明のプローブを含む溶液をDNAチップ作成装置GMSTM417ARRAYER(TAKARA)で該スライドガラス上にスポットする。そうすると、3’末端で発明のプローブがガラス面に結合する。該スライドガラスを密閉容器内に4時間位おき反応を完結させる。そして該スライドガラスを0.2%SDS溶液、水に1分程度交互に2回づつ漬ける。更にホウ素溶液(水300mlにNaBH41.0gを溶かしたもの。)に5分位つける。95℃の水に2分つけてから、素早く0.2%SDS溶液、水に1分程度交互に2回づつ漬けて試薬を洗い流す。室温で乾燥する。このようにして本発明のDNAチップが調製される。
更に、各スポットのガラスの下面に図のような微小な温度センサーとヒータを設けることにより、高性能な本発明のDNAチップを作成することができる。
このDNAチップを用いて標的核酸若しくは遺伝子を測定する場合を説明する。該プローブに標的核酸若しくは遺伝子がハイブリダイゼーションしていないときは、又はハイブリダイゼーションしても本発明の蛍光色素標識末端でGCペアーを形成しないとき、若しくは当該プローブと標的核酸しくは遺伝子とがハイブリダイゼーションした末端塩基部分から1ないし3塩基離れて、標的核酸若しくは遺伝子の塩基配列にG(グアニン)が少なくとも1ないし3塩基存在しないときは、蛍光強度に変化ない。しかし、ハイブリダイゼーションすると蛍光強度が減少する。この蛍光強度はDNAチップ解析装置GMSTM418アレースキャナー(Array Scanner)(TAKARA)を使用して測定できる。
【0139】
以下、実施例15〜19に本発明のPCR方法を記す。
実施例15
大腸菌のゲノムDNAにおける16SrRNA遺伝子を標的核酸として、当該核酸の増幅のための(BODIPY FL/C6で標識した)プライマーを調製した。
【0140】
プライマー1(Eu800R:リバース型)の調製:(5')CATCGTTTACGGCGTGGAC(3')の塩基配列をもつデオキシリボオリゴヌクレオチドを、DNA合成機ABI394(Perkin Elmer社製、米国)を用いて合成し、更に当該オリゴデオキシリボヌクレオチドの5’末端のリン酸基をホスファターゼ処理してシトシンとし、そのシトシンの5’位の炭素OH基に、-(CH2)9-NH2を結合したものを、ミドランド・サーテイファイド・レージンド・カンパニー社(米国)から購入した。更に、モレキュラープローブ社からフロオ・リポーターキット(FluoReporter Kits)F-6082(ボデピーFL/C6のプロピオン酸サクシニミジルエステル(BODIPY FL propionic acid succinimidyl ester)の他に、当該化合物をオリゴヌクレオチドのアミン誘導体に結合させる試薬を含有するキット)を購入した。前記購入したオリゴヌクレオチドに当該キットを作用させて、本発明のボデピーFL/C6で標識したプライマー1を合成した。
【0141】
合成物の精製:得られた合成物を乾固し乾固物を得た。それを0.5M Na2CO3/NaHCO3緩衝液(pH9.0)に溶解した。当該溶解物をNAP−25カラム(ファルマシア社製)でゲルろ過を行い、未反応物を除去した。更に逆相HPLC(B gradient:15〜65%、25分間)を以下の条件で行った。そして、溶出するメインピークを分取した。分取した画分を凍結乾燥して本発明のプライマー1を、最初のオリゴヌクレオチド原料2mMより50%の収率で得た。
【0142】
尚、上記の逆相クロマトグラフィーの条件は次の通りである:
【0143】
実施例16
プライマー2(Eu500R/forward:フォワード型)の調製:(5')CCAGCAGCCGCGGTAATAC(3')の塩基配列をもつデオキシリボオリゴヌクレオチドの5’末端に蛍光色素(BODIPY FL/C6)で標識したプライマー2を実施例13と同様にして収率50%で調製した。
【0144】
実施例17
殺菌したニュトリエントブロス(NB)(Difco社製)液体培地5ml(組成:NB、0.08g/100ml)を含有する試験管を用いて、大腸菌JM109株を37℃で一晩振蘯培養した。培養液1.5mlを1.5ml容量の遠心チューブで遠心分離し、菌体を得た。この菌体から、DNeasy Tissue Kit(キアゲン社、ドイツ国)を用いてゲノムDNAを抽出した。その方法は本キットのプロトコルに従った。その結果、17ng/μlのDNA溶液を得た。
【0145】
実施例18
上記の大腸菌のゲノムDNA、プライマー1及び/又はプライマー2を使用して、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社発売のライトサイクラーTMシステム(LightCyclerTM System)を用いて常法通りにPCR反応を行った。操作は当該システム機器の手順書に従った。
また、上記システムにおいてPCRは、当該手順書に記されている核酸プローブ(FRET現象を利用する二個のプローブ)と通常のプライマー(蛍光色素で標識されていない通常のプライマー)の代りに本発明プライマー1及び/又は2を用いる以外は当該手順書通りに行った。
【0146】
PCRは次のコンポーネントで行った。
尚、標的核酸である大腸菌16SrDNAは、図7の説明欄に示される実験区の濃度で、また、プライマーは、同様に図7の注に示される実験区のプライマー1及び/又は2の組合せで実験を行った。
【0147】
また、上記のTaq溶液は次の試薬の混合液である。
Taq 溶液 96.0μl
ミリQ純水 68.2μl
Taq DNA ポリメラーゼ溶液 24.0μl
Taq スタート(start) 3.8μl
【0148】
尚、Taq 溶液、 Taq DNAポリメラーゼ溶液はロシュ・ダイアグノスティックス株式会社発売のDNAマスターハイブリダイゼーションプローブ(DNA Master Hybridization Probes)キットのものである。特にTaq DNA ポリメラーゼ溶液は10×conc.(赤いキャップ)を10倍に希釈して用いた。また、Taq スタートは、クローンテック社(USA)より販売されているTaq DNAポリメラーゼ用の抗体で、これを反応液に添加することで70℃までTaq DNAポリメラーゼの活性を抑えることができる。即ち、ホット・スタート(hot start)を行うことができるものである。
【0149】
反応条件は次の如くである。
測定は、ライトサイクラーTMシステムを用いて行った。その際、該システムにあるF1〜3の検出器にうち、F1の検出器を用い、その検出器のゲインは10、励起強度は75に固定した。
【0150】
その結果を図7及び8に示した。図7及び8から、蛍光色素の発光の減少が観察される時点のサイクル数と標的核酸の大腸菌16SrDNAのコピー数が比例していることが分かる。尚、図においては、蛍光色素の発光の減少量を蛍光強度の減少値として表現した。
図9は、サイクル数を関数として、大腸菌16SrDNAのコピー数を表現した大腸菌16SrDNAの検量線である。相関係数は0.9973で、極めてよい相関を示した。
以上の結果から分かるように、本発明の定量的PCR方法を用いると標的核酸の当初のコピー数を測定できるようになる。即ち、標的核酸の測定ができる。
【0151】
実施例19
実施例18においては、本発明のプローブをプライマーとしてPCRを行ったが、本実施例では従来法に用いるFRET現象を利用する二個のプローブの代わりに本発明のプローブを用いて下記の条件で本発明のPCRを行った。
a)標的核酸:大腸菌の16S-rDNA
b)使用プライマー:
・フォワードプライマー E8F: (3')AGAGTTTGATCCTGGCTCAG(5')
・リバースプライマー E1492R:GGTTACCTTGTTACGACTT(5')
c)使用プローブ: BODIPY FL-(3')CCTTCCCACATCGTTT(5')
d)使用PCR測定機器:ライトサイクラーTMシステム
e)PCRの条件:
変性反応:95℃ for 0秒 (60秒間、95℃)
アニーリング反応: 50℃ for 5秒
核酸伸長反応: 72℃ for 70秒
全サイクル数: 70サイクル
【0152】
f)蛍光測定(アニーリング反応と変性反応後各サイクル後一回づつ測定された。
g)反応液の組成:
反応液の全量:20 μl
DNA ポリメラーゼの量 (TaKaRa Ex taq): 0.5U
Taq スタート(抗体): 0.3μl
プライマーの濃度: 0.2μM (双方とも)
プローブの濃度: 0.05 μM
MgCl2 濃度: 2 mM
BSA(bovine serum albumin)濃度:0.25 mg/ml
dNTPs濃度: 2.5 mM (各ヌクレオチドについて).
【0153】
その結果を図10に示した。図から、蛍光色素の発光の減少が観察される時点のサイクル数と標的核酸の大腸菌16SrDNAのコピー数が比例していることが分かる。
以上の結果から分かるように、本発明の定量的PCR方法を用いると標的核酸の当初のコピー数を測定できるようになる。即ち、標的核酸の測定ができる。
【0154】
次に以下の実施例に、上記の本発明の定量的PCR方法を用いて得られるデータを解析する本発明のデータ解析方法について記す。
実施例20
ヒトゲノムDNA(ヒトβ−グロビン(globin)(TaKaRaカタログ商品番号 9060)(TaKaRa株式会社製)(以下、ヒトゲノムDNAという。)を標的核酸として、当該核酸の増幅のためのボデピー FL/C6で標識したプライマーを調製した。
【0155】
プライマーKM38+C(リバース型)の調製:(5')CTGGTCTCCTTAAACCTGTCTTG(3')の塩基配列をもつデオキシリボオリゴヌクレオチドを、DNA合成機ABI394(Perkin Elmer社製、米国)を用いて合成し、更に当該オリゴデオキシリボヌクレオチドの5’末端のリン酸基をホスファターゼ処理してシトシンとし、そのシトシンの5’位の炭素OH基に、-(CH2)9-NH2を結合したものを、ミドランド・サーテイファイド・レージンド・カンパニー社から購入した。更に、モレキュラープローブ社からリポーターキット(FluoReporter Kits)F-6082(ボデピーFL/C6のプロピオン酸サクシニミジルエステル(BODIPY FL propionic acid succinimidyl esters)の他に、当該化合物をオリゴヌクレオチドのアミン誘導体に結合させる試薬を含有するキット)を購入した。前記購入したオリゴヌクレオチドに当該キットを作用させて、本発明のボデピーFL/C6で標識したプライマーKM38+Cを合成した。
【0156】
合成物の精製:得られた合成物を乾固し乾固物を得た。それを0.5M Na2CO3/NaH2CO3緩衝液(pH9.0)に溶解した。当該溶解物をNAP-25カラム(ファルマシア社製)でゲルろ過を行い、未反応物を除去した。更に逆相HPLC(B gradient:15〜65%、25分間)を以下の条件で行った。そして、溶出するメインピークを分取した。分取した画分を凍結乾燥して本発明のプライマーKM38+Cを、最初のオリゴヌクレオチド原料2mMより50%の収率で得た。
【0157】
尚、上記の逆相クロマトグラフィーの条件は次の通りである:
【0158】
実施例21
プライマーKM29(フォワード型)の調製:(5')GGTTGGCCAATCTACTCCCAGG(3')の塩基配列をもつデオキシリボオリゴヌクレオチドを実施例18と同様に合成した。
【0159】
比較実験例1(本発明の、核酸伸長反応時の蛍光強度値を、熱変性反応時の蛍光強度値を用いて割る演算処理過程を有ないデーター解析用ソフトウエアを用いた実験例)。
上記のヒトゲノムDNA、プライマーKM38+C及びプライマーKM29を使用して、ライトサイクラー TMシステムを用いてPCR反応を行い、各サイクル毎の蛍光強度を測定した。
尚、本比較実施例のPCRは、前記に説明した蛍光色素色素で標識したプライマーを用いるものであり、蛍光発光の増加でなく、減少を測定する新規なリアルタイム定量的PCR方法である。データー解析用ソフトウエアは当該システムのものを用いて行った。上記システムにおいてPCRは、当該手順書に記されている核酸プローブ(FRET現象を利用する二個のプローブ)と通常のプライマー(蛍光色素で標識されていない通常のプライマー)の代りに本発明プライマーKM38+C及びKM29を用いる以外は当該装置の手順書通りに行った。
【0160】
PCRは次のコンポーネントで行った。
ヒトゲノムDNA 1.0μl(最終濃度1〜10000コピー)
プライマー溶液 4.0μl(最終濃度0.1μM)
Taq溶液 10.0μl
ミリQ純水 5.0μl
全容量 20.0μl
尚、ヒトゲノムDNAは、図11の説明欄に示される実験区の濃度で実験を行った。MgCl2の最終濃度は2mMであった。
【0161】
また、上記のTaq溶液は次に試薬の混合液である。
Taq 溶液 96.0μl
ミリQ純水 68.2μl
Taq DNA ポリメラーゼ 24.0μl
Taq スタート 3.8μl
【0162】
尚、Taq溶液、 Taq DNA ポリメラーゼ溶液はロシュ・ダイアグノスティックス株式会社発売のDNAマスターハイブリダイゼーションプローブ(DNA Master Hybridization Probes)キットのものである。特にTaq DNA ポリメラーゼ溶液は10×conc.(赤いキャップ)を10倍に希釈して用いた。また、Taqスタートは、クローンテック社(USA)より販売されているTaq DNA ポリメラーゼ用の抗体で、これを反応液に添加することで70℃までTaq DNAポリメラーゼの活性を抑えることができる。即ち、ホット・スタートを行うことができるものである。
【0163】
反応条件は次の如くである。
変性反応初期 :95℃、60秒
再変性反応 :95℃、10秒
アニーリング反応 :60℃、5秒
DNA伸長反応 :72℃、17秒
測定は、ライトサイクラーTMシステムを用いて行った。その際、該システムにあるF1〜3の検出器にうち、F1の検出器を用い、その検出器のゲインは10、励起強度は75に固定した。
【0164】
前記の如くにPCRを行って、各サイクルの蛍光強度を実測した結果を図11に示した。即ち、各コピー数のヒトゲノムDNAについて、各サイクルの変性反応時及び核酸伸長反応時の蛍光強度を測定し、印字したものである。どのサイクルにおいても変性反応時には蛍光強度値は一定であるが、核酸伸長反応時には、25サイクル目当たりから蛍光強度が減少しているのが観察される。そうして、減少はヒトゲノムDNAのコピー数がおおい順に起こることが分かる。
【0165】
図11においてヒトゲノムDNAの各コピー数について初期のサイクル数の蛍光強度値が一様でない。それで、本実験例で使用するデーター解析方法に以下の過程を追加した。
(b)10サイクル目の蛍光強度値を1として各サイクルの蛍光強度値を換算する過程、即ち、下記の〔数式8〕による計算をする過程、
Cn=Fn(72)/F10(72) 〔数式8〕
ただし、Cn=各サイクル値の換算値、Fn(72)=各サイクルの72℃の蛍光強度値、F10(72)=10サイクル目の72℃の蛍光強度値。
(c)前記(b)の過程で得られた換算値を、各サイクル数に対してプロットし、デスプレー上に表示及び/又は印字する過程、
【0166】
(d)前記(b)の過程で得られた各サイクルの換算値から下記の〔数式9〕による蛍光強度の変化率(減少率、消光率)を計算をする過程、
〔数式9〕
Fdn =log10{100−Cn×100)}
Fdn =2log10{1−Cn}
ただし、Fdn=蛍光強度変化率(減少率、消光率)、Cn=〔数式8〕で得られた値。
(e)前記(d)の過程で得られた換算値を、各サイクル数に対してプロットし、デスプレー上に表示及び/又は印字する過程、
【0167】
(f)前記(d)の過程で処理されたデーターの内、0.5をスレッシュホールド(threshhold)し、その値に達したサイクル数を計算する過程、
(g)前記(f)の過程で計算した値をX軸に、反応開始前のコピー数をY軸にプロットしたグラフを作成する過程、
(h)前記(g)の過程で作成したグラフをデスプレー上に表示及び/又は印字する過程、
(j)前記(h)の過程で描かれた直線の相関係数又は関係式を計算する過程、
(i)前記(j)の過程で計算された計算値又は関係式をデスプレー上に表示及び/又は印字する過程。
【0168】
上記のデーター解析用ソフトウエアを用いて、前記図11で得られたデーターを前記に引き続いて以下のようにデーターを処理した。
図12は、上記(b)の過程で処理されたデーターを印字した(前記(c)過程)したものである。即ち、10サイクル目の蛍光強度値を1として換算
し、その換算値をサイクル数に対してプロットしたものである。
図13は、前記(d)の過程で処理したデーターを印字した(前記(e)過程)ものである。即ち、図12の各プロット値から蛍光強度の減少率(消光率)を計算して、各計算値を各サイクル数に対してプロットしたものである。
【0169】
図14は、前記(f)の過程で処理したデーターについて、前記(g)の過程で作成したグラフを印字した(前記(h)の過程)ものである。即ち、蛍光強度減少率=0.5をスレッシュホールド(threshhold)し、その値に達したサイクル数をX軸に、ヒトゲノムDNAの反応開始前のコピー数をY軸にプロットしたグラフである。このグラフの直線の相関係数(R2)を前記(j)の過程で計算し、印字した(前記(i)の過程)もので、0.9514であった。このように、この相関係数では正確なコピー数を求めるは無理であった。
【0170】
実施例22(本発明のデーター解析方法を用いてデーター処理がなされた実験例)
PCRは比較実験例1と同様に行った。
データー処理は、比較実験例1の(b)の過程の前に下記の(a)の過程をおき、(b)、(d)の過程を以下のように変更する以外は比較実験例1と同様な過程で行った。
(a)各サイクルにおける増幅した核酸が蛍光色素で標識された核酸プライマーとハイブリダイズしたときの反応系の蛍光強度値(即ち、核酸伸長反応時(72℃)の蛍光強度値)を、増幅した核酸が核酸プライマーとハイブリダイズしたものが解離したときの反応系の蛍光強度値(即ち、核酸熱変性反応時(95℃)の蛍光強度値)で割る補正演算処理過程、即ち、実測の蛍光強度値を〔数式1〕で補正した。
fn=fhyb,n/fden,n 〔数式1〕
[式中、fn=サイクルの蛍光強度の補正値、fhyb,n=各サイクルの72℃の蛍光強度値、fden,n=各サイクルの95℃の蛍光強度値]
得られた値を各サイクル数にプロットしたのが図15である。
【0171】
(b)各サイクルにおける〔数式1〕における補正演算処理値を〔数式3〕に代入し、各サイクルにおける各サンプル間の蛍光変化率(減少率又は消光率)を算出する演算処理過程、即ち、下記の〔数式10〕で演算処理する過程、
Fn=fn/f25 〔数式10〕
[式中、Fn=各サイクルの演算処理値、fn=〔数式1〕で得られた各サイクルの値、f25=〔数式1〕で得られた値で、サイクル数が25回目のもの]。
〔数式10〕は〔数式3〕において、a=25とした場合におけるものである。
【0172】
(d)前記(b)の過程で得られた各サイクルの演算処理値を〔数式6〕による蛍光強度の変化率(減少率又は消光率)の対数値を演算処理をする過程、即ち、下記の〔数式11〕で演算処理する過程、
log10{(1−Fn)×100} 〔数式11〕
[式中、Fn=[数式10]で得られた値]。
〔数式11〕は〔数式6〕において、b=10、A=100とした場合におけるものである。
【0173】
上記の結果を図16及び17に示した。
図16は、前記(a)及び(b)の過程で処理された値をサイクル数に対してプロットし、印字したものである。
図17は、図16で得られた値について前記(d)の過程で計算された値を、サイクル数に対してプロットし、印字したものである。
【0174】
次に、図17のグラフを基に、前記(f)、(g)、及び(h)の過程で処理した。即ち、図17のグラフを基に比較実験例1と同様に、log10(蛍光強度変化率)のスレッシュホールド値として、0.1、0.3、0.5、0.7、0.9、1.2を選び、その値に達したサイクル数をX軸に、ヒトゲノムDNAの反応開始前のコピー数をY軸にプロットし、検量線を描かせた。その結果を図18に示した。これらの検量線について前記(j)及び(i)の過程で処理して求めた相関係数(R2)は、前記各スレッシュホールド値に対して、各々0.998、0.999、0.9993、0.9985、0.9989、0.9988であった。これらの相関係数から、スレッシュホールド値として0.5(相関係数0.9993)を採用することが望ましいことが認識できた。この相関係数をもつ検量線であれば、未知コピー数の核酸試料について反応開始前のコピー数を精度よく求めることができることが分かる。
【0175】
実施例23(核酸の融解曲線分析及びTm値分析の例)
本発明の新規なPCR法により増幅された核酸について、51)低い温度から核酸が完全に変性するまで、温度を徐々に上げるあるいは下げる過程(例えば、50℃から95℃まで)、52)前記51)過程において、短い時間間隔(例えば、0.2℃〜0.5℃間隔)で蛍光強度を測定する過程、53)前記52)過程の測定結果を時間毎にデスプレー上に表示する過程、即ち、核酸の融解曲線を表示する過程、54)前記53)過程の融解曲線を一次微分する過程、55)前記54)過程の微分値(−dF/dT、F:蛍光強度、T:時間)をデスプレー上に表示する過程、56)前記55)から得られる微分値から変曲点を求める過程からなるソフトウエアを作成し、前記本発明のデーター解析用ソフトウエアに合体した。当該データー解析用ソフトウエアを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体をインストールした前記ライトサイクラーTMシステムを用いて本発明の新規リアルタイム定量的PCR反応を行い、核酸融解曲線の分析を行った。本発明においては、蛍光強度は温度が上がるごとに増加する。
【0176】
実施例22と同じヒトゲノムDNAの1コピーと10コピーについて、実施例20と同様のPCRを行い、前記51)、52)、53)、54)及び55)の過程で処理されたデーターを印字したものが図19である。1コピーと10コピーの75回目の増幅産物について、本実施例の51)、52)及び53)の過程で処理した核酸融解曲線の図が図20である。54)の過程でこの曲線を微分し、55)及び56)の過程で変曲点(Tm値)を求めたものが図21である。図21から、1コピーと10コピーの増幅産物のTm値が異なる故に、各増幅産物は異なる産物であることが判明した。
【0177】
【発明の効果】
本発明は次のような効果を有する。
1)前記のように本発明の核酸測定方法、本発明のプローブ及びデバイスを用いると、測定系から未反応の核酸プローブを除く等の操作をすることがないので、標的核酸を短時間でかつ簡便に測定できる。また、複合微生物系又は共生微生物系に適用すると、当該系における特定菌株の存在量を特異的かつ短時間に測定できる。また、本発明は標的核酸若しくは遺伝子のSNPなどの多型または変異などの解析若しくは測定する簡便な方法を提供している。
2)また、本発明の定量的PCR方法は、次のような効果を有する。
a.TaqDNAポリメラーゼによる標的核酸の増幅に阻害的に作用する因子が添加されていないことから、従来公知の特異性のある通常のPCRと同様の条件で定量的PCRを行うことができる。
b.また、PCRの特異性を高く保つことができるので、プライマーダイマーの増幅が遅くなることから、従来公知の定量的PCRと比較すると定量限界が約1オーダー低くなる。
c.複雑な核酸プローブを用意する必要がないので、それに要する時間と費用が節約できる。
d.標的核酸の増幅効果も大きく、増幅過程をリアルタイムでモニタリングすることができる。
3)また、リアルタイム定量的PCR方法で得られたデーターを解析する際、本発明のデーター解析方法を用いて、未知核酸コピー数の核酸試料について核酸のコピー数を求める検量直線を作成すると、検量線の相関係数は従来の方法により得られたものに較べて格段に高い。それで、本発明のデーター解析方法を用いると核酸の正確なコピー数を求めることができる。
4)また、本発明のリアルタイム定量的PCR方法によって得られたデーターの解析方法に係るデーター解析用ソフトウエア、また、その解析方法の手順をプログラムとして記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、また、それを用いたリアルタイム定量的PCRの測定若しくは解析装置を用いると、相関係数の高い検量直線を自動的に作成することができる。
5)また、本発明の新規な核酸の融解曲線の分析方法を用いると、精度の高い、核酸のTm値を求めることができる。更に、当該方法に係るデーター解析用ソフトウエア、また、その分析方法の手順をプログラムとして記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、また、それを用いたリアルタイム定量的PCRの測定若しくは解析装置を用いると、正確なTm値を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得た核酸プローブを用いて大腸菌の16SrRNAの5´末端から数えて335から358番目の核酸塩基配列を測定した場合の蛍光強度測定データを示す図。
【図2】35塩基鎖2-o-Meプローブの標的核酸へのハイブリダイゼーションに対する熱処理の効果を示す図。点線:rRNAを加熱処理後、標的核酸が添加された。実線:非加熱処理rRNA。
【図3】プローブと標的核酸16SrRNAのハイブリダイゼーションに対するプローブの塩基鎖の塩基数、ヘルパープローブ及びプローブの5’末端のリボースの2’位OH基のメチル基修飾の効果を示す図。
【図4】本発明方法によるrRNA 測定のための検量線。
【図5】KYM7株及びKYM8株の複合培養系のrRNA量の時間経過についての本発明のFISH方法による分析。
【図6】本発明のDNAチップを説明する図。
【図7】ボデピーFLで標識したプライマー1及び2を用いた定量的PCR方法:サイクル数と蛍光色素の発光の減少量の関係を示す図。図中の▲1▼〜▲8▼なる記号は、下記の意味を表す。
【図8】ボデピーFLで標識したプライマー1及び2を用いた定量的PCR方法:サイクル数と蛍光色素の発光の減少量の対数値の関係を示す図。図中の▲1▼〜▲8▼なる記号は、図7と同じ意味を表す。
【図9】本発明の定量的PCR方法を用いて作成した大腸菌16SrDNAの検量線を示す図。n:10n
【図10】上図は、FRET現象を用いるリアルタイム定量的PCR方法において使用する蛍光色素で標識した二つのプローブの代わりに、本発明の一つのプローブを用いてリアルタイム定量的PCRを行った場合の蛍光強度の現象率の変化を示す図である。下図は蛍光強度の現象が有為に観察され始めるサイクル数(threshold number:Ct値)を算出し、検量線を作成した図である。
【図11】本発明の補正演算処理しない場合の、本発明のボデピーFLで標識したプライマーを用いたリアルタイム定量的PCRによって得られた蛍光減少曲線を示す図。
■:標的核酸=10コピー;蛍光強度測定の反応系の温度=72℃
●:標的核酸=100コピー;蛍光強度測定の反応系の温度=72℃
▲:標的核酸=1000コピー;蛍光強度測定の反応系の温度=72℃
◆:標的核酸=10000コピー;蛍光強度測定の反応系の温度=72℃
□:標的核酸=10コピー;蛍光強度測定の反応系の温度=95℃
○:標的核酸=100コピー;蛍光強度測定の反応系の温度=95℃
△:標的核酸=1000コピー;蛍光強度測定の反応系の温度=95℃
◇:標的核酸=10000コピー;蛍光強度測定の反応系の温度=95℃
【図12】各曲線の10サイクル目の値を1として補正する以外は、図11の曲線の場合と同様にして得られたリアルタイム定量的PCRの蛍光減少曲線を示す図。
■:標的核酸=10コピー;蛍光強度測定温度=72℃
●:標的核酸=100コピー;蛍光強度測定温度=72℃
▲:標的核酸=1000コピー;蛍光強度測定温度=72℃
◆:標的核酸=10000コピー;蛍光強度測定温度=72℃
【図13】図12の各曲線の各プロット値について、[数式9]の蛍光強度減少率(変化率)を計算し、計算値をプロットした曲線を示す図。
■:標的核酸=10コピー
●:標的核酸=100コピー
▲:標的核酸=1000コピー
◆:標的核酸=10000コピー
【図14】図13のデーターから求めたヒトゲノムDNAの検量直線を示す図。
y=ヒトβ−グロビン遺伝子コピー数
x=サイクル数(Ct)
R2=相関係数
【図15】図11の各サイクルの測定値を〔数式1〕で補正演算処理した値を各サイクル数に対してプロットした曲線を示す図。
■:標的核酸=10コピー
●:標的核酸=100コピー
▲:標的核酸=1000コピー
◆:標的核酸=10000コピー
【図16】図15の各サイクルの演算処理値を〔数式3〕で演算処理した値をサイクル数に対してプロットした曲線を示す図。
■:標的核酸=10コピー
●:標的核酸=100コピー
▲:標的核酸=1000コピー
◆:標的核酸=10000コピー
【図17】図16の各サイクルの演算処理値を〔数式6〕の式で演算処理した値をサイクル数に対してプロットした曲線を示す図。
■:標的核酸=10コピー
●:標的核酸=100コピー
▲:標的核酸=1000コピー
◆:標的核酸=10000コピー
【図18】図16の各log(蛍光変化率)値からCt値の候補として、0.1、0.3、0.5、0.7、0.9、1.2を適当に選んで、それに対応する検量直線を描かせた場合の図。尚、各検量線における相関係数を下記に示した。
▲:log10(蛍光変化率)=0.1;相関係数=0.998
■:log10(蛍光変化率)=0.3;相関係数=0.999
●:log10(蛍光変化率)=0.5;相関係数=0.9993
△:log10(蛍光変化率)=0.7;相関係数=0.9985
□:log10(蛍光変化率)=0.9;相関係数=0.9989
○:log10(蛍光変化率)=1.2;相関係数=0.9988
【図19】1コピー及び10コピーのヒトゲノムDNAについて、本発明のボデピーFLで標識したプライマーを用いてリアルタイム定量的PCRを行った場合の蛍光減少曲線を示す図。ただし、〔数式1〕の補正演算処理を施した。
1:標的核酸=0コピー
2:標的核酸=1コピー
3:標的核酸=10コピー
【図20】図19に示されるPCRの増幅産物についての核酸の融解曲線分析を行った場合の核酸の融解曲線を示す図。
1:標的核酸=0コピー
2:標的核酸=1コピー
3:標的核酸=10コピー
【図21】図20の曲線を微分して得られた、Tm値を示す曲線を示す図(谷がTm値)。
2:標的核酸=1コピー
3:標的核酸=10コピー
Claims (2)
- 下記の何れかの蛍光色素で標識された核酸プローブが標的核酸にハイブリダイゼーションしたときに、上記蛍光色素が、その発光を減少させる核酸プローブであり、かつ、当該プローブは、その5’末端塩基がGまたはCで、その5’末端の燐酸基に炭素数6または7のスペーサーを介して蛍光色素で標識されており、当該核酸プローブが、標的核酸にハイブリダイゼーションしたとき、当該末端部分においてハイブリダイゼーションの塩基対がG(グアニン)とC(シトシン)のペアーを少なくとも一対以上形成するように、当該プローブの塩基配列が設計されていることを特徴とする核酸測定用核酸プローブ。
蛍光色素:6-joe、BODIPY TMR( 商標 )、BODIPY TR( 商標 )、Alexa 488( 商標 )、Alexa 532( 商標 )、BODIPY FL( 商標 )、BODIPY FL/C3( 商標 )、BODIPY FL/C6( 商標 )、fluorescein、FITC、EDANS、rhodamine 6G(R6G)、TMR、TMRITC、x-rhodamine、Texas red( 商標 )、BODIPY 5-FAM( 商標 )、BODIPY R6G( 商標 )、BODIPY 581( 商標 )。 - 下記の何れかの蛍光色素で標識された核酸プローブが標的核酸にハイブリダイゼーションしたときに、上記蛍光色素が、その発光を減少させる核酸プローブであり、かつ、当該プローブは、その3’末端塩基がGまたはCで、その3’末端の水酸基、または燐酸基の水酸基に炭素数4〜7のスペーサーを介して蛍光色素で標識されており、当該核酸プローブが、標的核酸にハイブリダイゼーションしたとき、当該末端部分においてハイブリダイゼーションの塩基対がG(グアニン)とC(シトシン)のペアーを少なくとも一対以上形成するように、当該プローブの塩基配列が設計されていることを特徴とする核酸測定用核酸プローブ。
蛍光色素:6-joe、BODIPY TMR( 商標 )、BODIPY TR( 商標 )、Alexa 488( 商標 )、Alexa 532( 商標 )、BODIPY FL( 商標 )、BODIPY FL/C3( 商標 )、BODIPY FL/C6( 商標 )、fluorescein、FITC、EDANS、rhodamine 6G(R6G)、TMR、TMRITC、x-rhodamine、Texas red( 商標 )、BODIPY 5-FAM( 商標 )、BODIPY R6G( 商標 )、BODIPY 581( 商標 )。
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