JP3985655B2 - 回転電機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗用車やトラック等に搭載される車両用に適した回転電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、エンジンが低回転化してアイドリング回転時におけるトルクが低下する中で、補機類のトルク印加ショックやオートマチックトランスミッションの連結ショックなどをいかにして緩和するかが重要な課題となっている。例えば、従来の車両用発電機では、電気負荷が急に印加された場合であっても発電量を徐々に増加させる徐励発電などの対策がなされている。また、特に最近では、電気ステアリングなどのように、瞬間消費電力が大きく、かつ、その作動応答性やフィーリングが重要視されるものが多くなっており、原動機であるエンジンの駆動トルクの不足分を補うために、補機類の消費トルクを瞬間的に開放するという技術課題が生じている。このような技術課題に対しては、例えば、トランジスタ駆動の発電電動機を用いて電動トルクをベクトル制御などで高速制御する方法が一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−222436号公報(第3−5頁、図1−6)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この方法では、複雑な制御機構や大電流を流すことができるトランジスタが必要になるためコストが高くなるという問題がある。また、このような発電電動機は、電動動作を兼ねるためにどうしても機械時定数が大きくなるが、このような大きな機械時定数を有する部品を用いて瞬間的にトルク補償を行うためには、さらに大きなトランジスタやバッテリ容量が必要になるなど充電システム全体に影響を与えるという問題があった。そこで、例えば単に車両用発電機の界磁電流を調整することにより高速トルクを制御することができれば、大きな設計変更や高価な部品を使用する必要もないため、有効な手段となる。このため、時定数減少をねらって界磁抵抗値を増したり、界磁巻線の巻線数を減らすなどの方法も考えられるが、励磁力の低下により出力や発電効率が低下してしまい、電気負荷が増加している最近の傾向を考慮すると、採用は難しい。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、出力や効率などの性能を維持向上しつつ、界磁の電気的応答性と機械的応答性を改善することができる回転電機を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、三つの着眼点で回転電機の基本構造を変更している。具体的には三つの着眼点とは、(1)界磁の応答性を改善するために、基本構成として界磁起磁力を低下させたときに主磁束を急速に消失できうる磁気回路とすること、(2)インダクタンスと回路磁気抵抗とが反比例関係にあることから、回路磁気抵抗を増して界磁回路のインダクタンスを下げること、(3)機械的慣性を極力小さくすることである。
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の回転電機は、多相巻線を有する電機子と、界磁鉄心を構成するディスク部およびボス部と、ボス部に巻回された界磁巻線と、界磁鉄心と電機子との間に配置されて回転軸とともに回転自在に取り付けられたロータ磁極体と、電機子とディスク部とボス部とが固定されたハウジングとを備えている。また、このロータ磁極体は、軸方向に沿って第1インダクタ鉄心と第2インダクタ鉄心にほぼ2分されている。これらの第1インダクタ鉄心および第2インダクタ鉄心のそれぞれは、積層体であって、電機子の電気角に関して周期2πのピッチで径方向に着磁した第1の永久磁石を収納し、この第1の永久磁石の着磁の向きは界磁巻線の起磁力に対向する方向となっている。
【0008】
また、本発明の回転電機は、多相巻線を有する電機子と、界磁鉄心を構成するディスク部およびボス部と、ボス部に巻回された界磁巻線と、界磁鉄心と電機子との間に配置されて回転軸とともに回転自在に取り付けられたロータ磁極体とを備えている。また、このロータ磁極体は、軸方向に沿って第1インダクタ鉄心と第2インダクタ鉄心にほぼ2分されている。これら第1インダクタ鉄心および第2インダクタ鉄心のそれぞれは、電機子の電気角に関して周期2πのピッチで、径方向に沿って形成された複数のスリットと、これらのスリットの間に形成されて第1の永久磁石を収納するスロットとを有する。さらに、第1の永久磁石は、界磁巻線の起磁力に対向する向きであって径方向に着磁されている。
【0009】
第1の永久磁石の磁束が界磁巻線の磁束に対して主磁気回路で対向する位置関係に配置されているため、界磁巻線の起磁力が消失すると急速に界磁磁束が消失する。これにより、界磁の電気的応答性を改善することができる。
また、ディスク部の一部がハウジングに固定されてブラシレス磁気回路が形成されている場合に、上述したスロットは、第1インダクタ鉄心あるいは第2インダクタ鉄心の径方向に沿って電機子側に偏って配置されることが望ましい。
【0010】
第1の永久磁石のNS磁極の表面で漏洩する磁束が少なくなるとともに、隣の磁石のない領域に行くために第1の永久磁石の内径裏面側を通る磁束通路が絞られることがないため、総合的に電機子側に与える第1の永久磁石の磁力を強めることができる。
【0011】
また、ブラシレス磁気回路とすることにより主磁気回路中に存在するエアギャップの数が増えるとともに、第1の永久磁石を介在させることにより、界磁回路の磁気抵抗を増やすことができるため、主磁気回路のインダクタンスが非常に小さくなる。また、機械的にも、回転部はロータ磁極体を含む最小限の構成で済み、しかも磁束はディスク部側と電機子側との間で抜ける構造となっているため、重い鉄心の量を減らすことが可能になり、低慣性で高応答の機械特性が得られる。
【0012】
さらに、第1の永久磁石の偏在により、磁路肉厚側であるディスク部と第1および第2インダクタ鉄心との間の磁気抵抗が、界磁鉄心側からみて角度位置的にぼかし効果を奏するかたちとなるため、第1の永久磁石の起磁力の角度的ムラの発生が軽減され、ディスク部とロータ磁極体との間の通磁性を向上させることができる。このため、小型のロータ磁極体とすることができ、機械的慣性のさらなる低減が可能になる。
【0013】
また、上述した界磁鉄心は、ディスク部の外径面に、ディスク部の軸方向肉厚よりも軸方向に長い円筒部を備えることが望ましい。これにより、界磁鉄心のディスク部から第1および第2インダクタ鉄心へ流れる磁束の通磁性がよくなるため、相対的に小型のロータ磁極体とすることができ、機械的慣性の低減が可能となる。
【0014】
また、上述した第1インダクタ鉄心と第2インダクタ鉄心の間に、界磁巻線の起磁力と対向する向きに着磁した第2の永久磁石を配置することが望ましい。これにより、第1インダクタ鉄心と第2インダクタ鉄心の間に磁束の漏れが生じることを低減することができるとともに、この第2の永久磁石の磁束を界磁磁束として加算して電機子に供給することができるので、出力向上による高性能化が可能となる。すなわち、出力を維持する場合には、相対的に小型のロータ磁極体を採用することができ、機械的慣性の低減が可能となる。
【0015】
また、上述した界磁巻線とロータ磁極体の間に、ディスク部間の漏れ磁束を減じる方向に着磁した第3の永久磁石を配置することが望ましい。これにより、界磁鉄心のディスク部間の漏れを防止することができるとともに、この第3の永久磁石の磁束を界磁磁束として加算して電機子に供給することができるので、出力向上による高性能化や、相対的に小型のロータ磁極体の採用が可能となり、機械的慣性の低減が可能となる。特に、回転部でなく固定部に第3の永久磁石を配置することにより、エアギャップでの起磁力ロスもなく、また遠心力対策のためのスペースと関連部品の必要性、磁石自体の慣性増加などの数々の弊害要因を回避することができ、永久磁石を用いることによる高性能化、低慣性化効果を高めることができる。
【0016】
また、上述した界磁巻線の通電方向を可変に設定する制御手段をさらに備えることが望ましい。永久磁石を用いる場合には、発電を要しないとき、すなわち界磁巻線に通電しない無励磁のときにも、永久磁石の磁束によって発電量が完全にゼロにならないが、上述した制御手段によって永久磁石の磁束による発電を抑制することが可能になる。また、逆に界磁巻線に対して相対的に永久磁石の強度を強めることが可能となり、永久磁石による界磁磁束の急速な消失や、高性能化、低慣性化効果のすべてに対応することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の回転電機を適用した一実施形態の車両用交流発電機について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の車両用交流発電機の部分的な構成を示す断面図である。また、図2は図1に示したII−II線断面の部分的な展開図である。図3は、図1に示したIII−III線断面の部分的な展開図である。図4は、界磁ロータの側面の展開図である。
【0018】
これらの図に示すように、本実施形態の車両用交流発電機は、電機子1、ハウジング2、界磁鉄心3、界磁巻線4、回転軸5、ロータホルダ6、ロータ磁極積層体7、インダクタ積層鉄心8、9、永久磁石10、11を含んで構成されている。
【0019】
電機子1は、電機子鉄心1aと多相巻線1bとを有する。電機子鉄心1aには、内径側に開口した複数のスロット(図示せず)が形成されている、各スロットに所定の磁極ピッチで多相巻線1bが巻装されている。
界磁鉄心3は、ボス部3a、ディスク部3b、円筒部3cからなっている。ボス部3aは、回転軸5の周囲に配置された筒状部材である。ディスク部3bは、このボス部3aの端面より半径方向に広がっており、さらにこのディスク部3bの外径面には、このディスク部3bよりも軸方向に長い円筒部3cが固設されている。
【0020】
ハウジング2には、電機子1、ディスク部3b、ボス部3aが固設されている。また、このボス部3aには、界磁巻線4が巻装されている。
ロータ磁極積層体7は、磁気良導体を積層組み立てしたものであり、電機子1とディスク部3bとの間に、ディスク部3bおよびボス部3aの電機子1に対するインダクタ(誘導子)として配置されている。このロータ磁極積層体7は、ハウジング2と回転自在に軸承された回転軸5に固設されたロータホルダー6により回転駆動可能に保持されている。これにより、ブラシレス磁気回路が形成されている。
【0021】
また、回転軸5、ロータホルダ6およびロータ磁極積層体7によって界磁ロータが構成されている。ロータ磁極積層体7は、軸方向において第1インダクタ積層鉄心8と第2インダクタ積層鉄心9にほぼ二分されている。これらのインダクタ積層鉄心8、9には、ともに電機子1の電気角2πのピッチで、半径方向に抜開した複数のバリヤスリット8a、9aが設けられている。これらのバリヤスリット8a、9aのそれぞれの群間には、コアスロット8b、9bと、このコアスロット8b、9bに収納された永久磁石10あるいは11とが設けられている。
【0022】
永久磁石10は、第1インダクタ積層鉄心8において、半径方向であって、界磁巻線4の起磁力に対向する方向に着磁されている。また、永久磁石11は、第2インダクタ積層鉄心9において、半径方向であって、界磁巻線4の起磁力に対向する方向に着磁されている。
【0023】
具体的には、図2に示すように、第1インダクタ積層鉄心8に収納された永久磁石10は、外径側がS極、内径側がN極となっている。また、図3に示すように、第2インダクタ積層鉄心9に収納された永久磁石11は、外径側がN極、内径側がS極となっている。これらの永久磁石10、11の着磁の向きは、それぞれの内径側に配置されたディスク部3bの磁化方向に対して対向(逆方向)する関係にある。
【0024】
また、永久磁石10を収納した第1インダクタ積層鉄心8と永久磁石11を収容した第2インダクタ積層鉄心9は、図4に示すような周方向位置の関係を有している。すなわち、永久磁石12を挟んで、周方向に沿って相互に配置されている。また、永久磁石10、11により第1インダクタ積層鉄心8と第2インダクタ積層鉄心9の外周にはN極とS極が形成されるが、図4に示すように、それらの各極を、同極性のものがほぼ同一周方向位置になるように、具体的には、第1インダクタ積層鉄心8の外周に現れるNS極を、第2インダクタ積層鉄心9の外周に現れるNS極よりも、電機子1の電気角に関してπ/6(=30度)回転前進方向にずらして配置している。
【0025】
また、第1インダクタ積層鉄心8に設けられて永久磁石10を収納するコアスロット8bは、この第1インダクタ積層鉄心8自身の半径方向において電機子1と近接しているとともに、ディスク部3bの外径面からは大きく離間している。すなわち、コアスロット8bおよび永久磁石10は、第1インダクタ積層鉄心8内において、中央よりも径外方向に偏って配置されている。同様に、第2インダクタ積層鉄心9に設けられて永久磁石11を収納するコアスロット9bは、この第2インダクタ積層鉄心9自身の半径方向において電機子1と近接しているとともに、ディスク部3bの外径面からは大きく離間している。すなわち、コアスロット9bおよび永久磁石11は、第2インダクタ積層鉄心9内において、中央よりも径外方向に偏って配置されている。
【0026】
また、第1インダクタ積層鉄心8と第2インダクタ積層鉄心9との間に軸方向に沿って形成された空間には、界磁巻線4の起磁力と対向する向きに着磁されて、界磁巻線4に対して逆バイアス起磁力を与える界磁逆バイアス用の永久磁石12が配置されている。
【0027】
また、界磁巻線1には、発電制御を行う制御手段としての界磁電流調整器が接続されている。図5は、本実施形態の車両用交流発電機の回路図である。図5に示すように、本実施形態の車両用交流発電機には、発電制御を行う界磁電流調整器30と、4つのスイッチング用トランジスタからなるHブリッジ回路32が備わっている。界磁電流調整器30によって、Hブリッジ回路32に含まれる各トランジスタのオンオフ状態を制御することにより、界磁巻線4の両端に印加する電圧の極性を反転させたり、電流値を調整することができる。これにより、界磁電流の向き、すなわち界磁巻線4の通電によって生じる界磁磁束の向きを必要に応じて反転させることが可能になる。
【0028】
本実施形態の車両用交流発電機はこのような構成を有しており、次にその動作を説明する。
最初に、三種類の磁束の流れについて説明する。第1の磁束の流れ17は、界磁巻線4の通電による発生する。図1に示すように、ディスク部3bがNS極を形成する。このN極より出た磁束は、図2に示すように、第1インダクタ積層鉄心8のバリヤスリット8aに阻害されることもなく、この第1インダクタ積層鉄心8を通り、電機子鉄心1aのティース部、コアバック部、ティース部を貫いて、S極に磁化された第2インダクタ積層鉄心9に入り、さらにこの内径側に配置されたディスク部3b、ボス部3a、そしてもともとのディスク部3bへと戻る。
【0029】
また、このループとは別に、第2の磁束の流れ18が発生する。図1および図4に示す界磁逆バイアス用の永久磁石12のN極より出た磁束は、第1インダクタ積層鉄心8を通り、電機子1を経て、第2インダクタ積層鉄心9に戻り、元の永久磁石12のS極に戻る。
【0030】
また、上述した第1および第2の磁束のループとは別に、第3の磁束の流れ19が発生する。図2に示すように、第1インダクタ積層鉄心8に収納された永久磁石10のN極より出た磁束は、第1インダクタ積層鉄心8の内部でUターンして、上述した第1の磁束17の流れと平行して電機子鉄心1aに向い、他の磁束の流れと同様に電機子鉄心1aで多相巻線1bに鎖交した後、再び第1インダクタ積層鉄心8に入り、元の永久磁石10のS極に戻る。以上の第1、第2および第3の磁束17、18、19の流れを受けた状態で、周方向に沿ってNS磁極が形成された第1および第2インダクタ積層鉄心8、9が回転することにより発電が行われ、電機子1の多相巻線1bに誘導電圧が発生する。この多相巻線1bに誘導された交流電圧は、図5に示す整流器40によって整流されて直流電圧に変換される。
【0031】
次に、界磁電流がないときの磁束の流れを説明する。まず、上述した第1の磁束の流れ17は、界磁起磁力がゼロのため発生しない。また、上述した第3の磁束の流れ19は、電機子反作用をもたらす電機子1に向うのではなく、界磁起磁力がゼロであることと、界磁鉄心3の円筒部3cなどが存在することにより、より低磁気抵抗のディスク部3bおよびボス部3a側へ回り、元に戻る短絡回路が形成される。このため、この第3の磁束の流れ19の発電への寄与は無視できる程度となる。
【0032】
また、第2の磁束の流れ18は、界磁電流の変化に影響を受けることなく、上述した界磁電流が流れているときと同様に、界磁逆バイアス用の永久磁石12のN極より出た磁束は、第1インダクタ積層鉄心8を通り、電機子1を経て、第2インダクタ積層鉄心9に戻り、元の永久磁石12のS極に戻る。この残留磁束により、界磁電流をゼロとしても発電はゼロにできないが、界磁電流調整器30によって制御するHブリッジ回路32を用いて界磁電流を逆方向に流すことにより、電機子1への鎖交磁束の方向という視点でみると、第1の磁束の流れ17は、第2の磁束の流れ18と逆方向となるので、発電電圧を消滅させて発電量をゼロにすることができる。
【0033】
次に、本発明の第1の特徴となる永久磁石による界磁磁束の急速な消滅の動作について説明する。
上述したように、永久磁石によって発生する磁束を、発電を行う界磁磁束の一部として利用しているということは、界磁巻線4の通電によって発生する磁束はその分だけ少なくなっているということである。したがって、界磁巻線4の起磁力が消滅すると、磁束が少ない分電機子磁束も速く消滅する。また、第1インダクタ積層鉄心8、第2インダクタ積層鉄心9に収納された永久磁石10、11によって、界磁巻線4の起磁力に対して逆方向の起磁力をかけている。このため、界磁起磁力が消滅すると、直ちに、流れていた磁石磁束はディスク部3b内の磁束と逆方向に界磁鉄心3内を逆流する作用をし、それ以前に流れていた界磁鉄心3から電機子1に向かっていた磁束の消滅を早くすることができる。また、このようにして第1インダクタ積層鉄心8および第2インダクタ積層鉄心9では、内蔵された永久磁石10、11の磁束が流れるだけの低飽和傾向となるので、永久磁石10、11によって発生する磁束は、これらのインダクタ積層鉄心8、9内で漏れる量が多くなり、電機子反作用に打ち勝ってまで電機子1を貫こうとしなくなる。すなわち、この部分から電機子1側に行く磁束も少なくなる。このようにして、界磁電流が低下すると、界磁の全体について電機子1に与える磁束を急速に低減することができる。
【0034】
次に、本発明の第2の特徴となる界磁ロータのインダクタンスの低減について説明する。界磁ロータのインダクタンスは、その磁気回路の磁気抵抗に反比例する。空気に近くきわめて高い透磁率を有する永久磁石10、11が磁気回路に直列に入っているので、磁気抵抗が大きくなってインダクタンスは小さくなる。さらに、本実施形態の車両用交流発電機は、通常の車両用交流発電機と異なり、ブラシレス構造、すなわち磁気回路に直列に入ったエアギャップが1磁極対ループについて従来構造の2箇所から4箇所に増加している。このため、磁気抵抗が大幅に増え、インダクタンスが低下している。さらに、界磁ロータは、電機子1と向き合う磁極の大部分が積層体(第1インダクタ積層鉄心8、第2インダクタ積層鉄心9)となっているため、磁束が変化したときに内部に磁気誘導による渦電流とそれによる自己磁束保持の作用が生じにくくなっている。すなわち、界磁のインダクタンスを小さくすることにより、動的に磁束慣性を少なくして界磁ロータの動特性を良くすることができる。
【0035】
このように、本実施形態の車両用交流発電機では、発電量の調整を行うことができるとともに、界磁磁束を急速に消滅させることができる。また、界磁のインダクタンスを小さくし、永久磁石の追加による高性能化で相対的に小型ロータを採用することができることから、界磁の電気的応答性と機械的応答性を改善することができる。また、電機子と対向する第1インダクタ積層鉄心8および第2インダクタ積層鉄心9は積層体であるため、渦電流の発生による鉄損を少なくすることができ、しかも脈動を含む磁束の通りがよいことも、ロータの小型化に寄与していることはいうまでもない。
【0036】
実際に、電機子1の外径が128mmで、定格電圧14V、定格電流150Aの車両用交流発電機を組み立てて確かめたところ、従来の界磁時定数が180msであったのに対し、本実施形態の車両用交流発電機では約1/20の10msにすることができた。また、機械的時定数と比例関係にある慣性は、従来構造の28kgcm2 に対し、本実施形態の車両用交流発電機では1/2以下の12kgcm2 にすることができた。また、このように小さい界磁時定数および機械時定数ながら、出力電圧が14Vのときに出力電流が180Aとなって、約20%の出力向上を実現できた。さらに、発電効率では、従来構造では最高70%であったのに対し、本実施形態の車両用交流発電機では、約8%上昇して78%に改善することができた。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。
図6は、変形例の車両用交流発電機の部分的な構成を示す断面図である。この車両用交流発電機では、界磁巻線4とロータ磁極積層体7の間に、ディスク部3b間および円筒部3c間の漏れ磁束を防止する方向に着磁した固定磁石20が配置されている。また、第1インダクタ積層鉄心8と第2インダクタ積層鉄心9の間には、通気ファンとなる開口部を有する環状のアルミセパレータ21が備わっている。これにより、ディスク部3b間における磁束の漏れを防止することができるとともに、この永久磁石20の磁束を界磁磁束として加算して電機子1に供給することできるため、その分だけ界磁ロータを小型化することができる。特に、上述した実施形態のように、永久磁石12を回転部に装着するのではなく、固定部に配置することができるため、エアギャップでの起磁力ロスも生じない。さらに、永久磁石の遠心力対策のためのスペースと関連部品の確保の必要性や永久磁石自体の慣性増加などの数々の欠点を回避することができ、永久磁石による高性能化、低慣性化効果を高めることができるという格別な効果がある。
【0038】
図7および図8は、さらに他の変形例を示す図である。上述した実施形態では第1インダクタ積層鉄心8と第2インダクタ積層鉄心9とを、図4に示すようにπ/6の位相差を与えて配置したが、図7に示すように位相差がないように配置してもよい。また、上述した実施形態では第1インダクタ積層鉄心8と第2インダクタ積層鉄心9に図2、図3に示すようなバリヤスリット8a、9aを設けているが、図8に示すようにこれらのバリヤスリットを設けない磁極構成方法を採用してもよい。特に、回転機をインバータを用いて駆動する場合には電流ベクトル制御が可能であり、この場合にはスリットを設けない方がいわゆるq軸磁束が増加するため、逆突極特性によるリラクタンストルクによる電動力や発電力をより高めることができるという効果がある。
【0039】
なお、上述した実施形態では、界磁鉄心3や界磁巻線4を固定しているが、これらを回転軸5に一体固設した回転子を用いるようにしてもよい。この場合には、効果の程度は少なくなるが、永久磁石を用いることによる効果は得られるため、従来構造の車両用交流発電機よりも有利となる。
【0040】
また、上述した実施形態では、第1および第2インダクタ積層鉄心8、9に永久磁石10、11を完全に埋没させているが、第1および第2インダクタ積層鉄心8、9のそれぞれの端部にオープンスロットを設けて、永久磁石10、11を楔形状効果や接着などで固定するようにしてもよい。
【0041】
また、上述した実施形態では、第1および第2インダクタ積層鉄心8、9を用いているが、これらの代わりに塊状体の鉄心を用いるようにしてもよい。
また、各部の鉄心やエアギャップの仕様、電機子仕様、それら組み合わせや永久磁石の特性やその態様の細部などは、適宜変更することができ、また、相互に関連する各部の設計要素同士や、目標値との関係で態様を適宜変えて本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の車両用交流発電機の部分的な構成を示す断面図である。
【図2】図1に示したII−II線断面の部分的な展開図である。
【図3】図1に示したIII−III線断面の部分的な展開図である。
【図4】界磁ロータの側面の展開図である。
【図5】本実施形態の車両用交流発電機の回路図である。
【図6】変形例の車両用交流発電機の部分的な構成を示す断面図である。
【図7】他の変形例の界磁ロータの側面の展開図である。
【図8】他の変形例を界磁ロータの縦断面図を示す図7のIV−IV線断面図である。
【符号の説明】
1 電機子
2 ハウジング
3 界磁鉄心
3a ボス部
3b ディスク部
3c 円筒部
4 界磁巻線
5 回転軸
6 ロータホルダ
7 ロータ磁極積層体
8 第1インダクタ積層鉄心
9 第2インダクタ積層鉄心
10、11、12、20 永久磁石
21 アルミセパレータ
Claims (7)
- 多相巻線を有する電機子と、界磁鉄心を構成するディスク部およびボス部と、前記ボス部に巻回された界磁巻線と、前記界磁鉄心と前記電機子との間に配置されて回転軸とともに回転自在に取り付けられたロータ磁極体と、前記電機子と前記ディスク部と前記ボス部とが固定されたハウジングとを備え、
前記ロータ磁極体は、軸方向に沿って第1インダクタ鉄心と第2インダクタ鉄心にほぼ2分されており、
前記第1インダクタ鉄心および前記第2インダクタ鉄心のそれぞれは、積層体であって、前記電機子の電気角に関して周期2πのピッチで径方向に着磁した第1の永久磁石を収納し、この第1の永久磁石の着磁の向きは前記界磁巻線の起磁力に対向する方向であることを特徴とする回転電機。 - 多相巻線を有する電機子と、界磁鉄心を構成するディスク部およびボス部と、前記ボス部に巻回された界磁巻線と、前記界磁鉄心と前記電機子との間に配置されて回転軸とともに回転自在に取り付けられたロータ磁極体とを備え、
前記ロータ磁極体は、軸方向に沿って第1インダクタ鉄心と第2インダクタ鉄心にほぼ2分されており、
前記第1インダクタ鉄心および前記第2インダクタ鉄心のそれぞれは、前記電機子の電気角に関して周期2πのピッチで、径方向に沿って形成された複数のスリットと、これらのスリットの間に形成されて第1の永久磁石を収納するスロットとを有し、
前記第1の永久磁石は、前記界磁巻線の起磁力に対向する向きであって径方向に着磁されていることを特徴とする回転電機。 - 請求項2において、
前記ディスク部の一部はハウジングに固定されてブラシレス磁気回路が形成されており、
前記スロットは、前記第1インダクタ鉄心あるいは前記第2インダクタ鉄心の径方向に沿って前記電機子側に偏って配置されていることを特徴とする回転電機。 - 請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記界磁鉄心は、前記ディスク部の外径面に、前記ディスク部の軸方向肉厚よりも軸方向に長い円筒部を備えることを特徴とする回転電機。 - 請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記第1インダクタ鉄心と前記第2インダクタ鉄心の間に、前記界磁巻線の起磁力と対向する向きに着磁した第2の永久磁石を配置することを特徴とする回転電機。 - 請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記界磁巻線と前記ロータ磁極体の間に、前記ディスク部間の漏れ磁束を減じる方向に着磁した第3の永久磁石を配置したことを特徴とする回転電機。 - 請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記界磁巻線の通電方向を可変に設定する制御手段をさらに備えることを特徴とする回転電機。
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