JP3985527B2 - 瞬間冷却剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水に溶解する際に吸熱作用を示す物質と、無機の金属含水塩を用いる瞬間冷却剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、簡易瞬間冷却剤としては、蓄熱容量の大きな物質を使用した蓄冷剤、二種以上の物質を混合した際に発生する吸熱を利用した冷却剤が知られており、人体、食品、レジャー用として流通している。ところで、前者の蓄冷剤は、使用する前に予め冷蔵庫で冷却しておく必要があり、即座に使用することができない欠点を有していた。
【0003】
一方、後者の冷却剤は、事前に冷却しておく必要がなく、簡便に冷却効果が得られる利点はあるが、例えば、市販されている硝酸アンモニウム等が水に溶解する際の吸熱反応を利用した冷却剤は、長時間に渡って冷却効果が持続することができなかった。この欠点に対し、種々の技術が開示されており、例えば、水の供給源として、吸水性樹脂に担持された水を利用する方法(特開昭60−4581、特開平1−289889)、所謂ハイドロゲル中の水を利用する方法(特開昭57−96076)があるが、十分な冷却持続効果は得られなかった。又、硫酸ナトリウム10水和物等の無機金属塩水和物の結晶水を利用する方法が開示されており(特開昭57−73069、特開昭63−238378)、十分な冷却持続効果は得られるものの、粉末状の吸熱物質と含水塩を使用時に簡便に混合することが可能な形態の冷却剤ではなく、実用化に至っていないのが実情である。又、経時的に含水塩が固化する問題を有しており、それに対しては、含水塩に吸水性樹脂を配合する方法(特開平2−120387)、撥水性シリカを配合する方法(特開平9−53066)が提案されているが、同様に粉末状の吸熱物質と含水塩を使用時に簡便に混合することができない問題があった。
【0004】
又、これらの冷却剤は使用時に0℃以下となり、食品等を断熱庫で保管する際の蓄冷剤の代わりとすることができるが、より低い冷却温度が必ずしも望まれるわけではない使用場面、すなわち人体を局所的に冷やす等の使用においては低温となりすぎるため、適さなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、水に溶解する際に吸熱作用を示す物質と、無機の金属含水塩を使用時に混合する瞬間冷却剤において、容易に両者を混合し得る実用的な形態とし、水に溶解する際に吸熱作用を示す物質と、無機の金属含水塩を混合した際、低温になりすぎず、且つ長時間にわたって冷却効果を維持する冷却剤を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究した結果、2室より成る密閉された袋の1室に、水に溶解する際に吸熱作用を示す物質を充填し、他の1室には無機の金属含水塩とともに、その飽和水溶液を充填することにより、外的な圧力で区画部が容易に壊れ、無機の金属含水塩及びその飽和水溶液が、水に溶解する際に吸熱作用を示す物質と混合して瞬間的に冷却が行われることの知見を得て本発明を完成した。
さらには水に溶解する際に吸熱作用を示す物質の一部をポリビニルアルコール製の水溶性フィルム袋内に充填したものを、2室より成る密閉された袋の無機の金属含水塩及びその飽和水溶液を充填した室でない側の1室に充填することにより低温になりすぎず、且つ、より長時間にわたって冷却効果を維持する瞬間冷却剤と成り得る知見を得て本発明を完成した。
【0007】
本発明は次の瞬間冷却剤である。
(1) 易破壊性の区画部により区画された2室より成る密閉された袋の1室に、水に溶解する際に吸熱作用を示す物質を、全量の30%〜95%を水溶性フィルム袋内に充填した状態、残部を水溶性フィルム袋内に充填しない状態で充填し、
他の1室には無機の金属含水塩及びその飽和水溶液を充填して成り、
外的な圧力により区画部が壊れ、無機の金属含水塩及びその飽和水溶液が、水に溶解する際に吸熱作用を示す物質と混合する構造を有する瞬間冷却剤。
(2) 水に溶解する際に吸熱作用を示す物質が、硝酸アンモニウム、または硝酸アンモニウム及び尿素、無機の金属含水塩が硫酸ナトリウム10水塩である上記(1)記載の瞬間冷却剤。
(3) 無機の金属含水塩の沈降上端面がその飽和水溶液の液面よりも下となるように、無機の金属含水塩とその飽和水溶液を1室に充填し、押圧により区画部が破壊するように構成した上記(1)または(2)項記載の瞬間冷却剤。
(4) 水溶性フィルム袋がポリビニルアルコール製のものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の瞬間冷却剤。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
本発明の瞬間冷却剤は、易破壊性の区画部により区画された2室より成る密閉された包装袋の1室に、水に溶解する際に吸熱作用を示す物質を、全量の30%〜95%を水溶性フィルム袋内に充填した状態、残部を水溶性フィルム袋内に充填しない状態で充填し、他の1室には無機の金属含水塩及びその飽和水溶液を充填して成る。
【0009】
本発明に用いる水に溶解する際に吸熱作用を示す物質(以下において吸熱物質という場合がある)は、水に溶解する際に吸熱により溶液全体を冷却する物質であり、冷却したときの温度が0〜−20℃のものが好ましい。このような物質としては、例えば、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、燐酸アンモニウム、燐酸水素二アンモニウム、メタバナジン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、沃化アンモニウム等の無機アンモニウム塩、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等のアルカリ金属塩、尿素等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。本発明においては、特に硝酸アンモニウム、あるいは硝酸アンモニウムと尿素の混合物がよく、その場合の硝酸アンモニウムと尿素の比率は1:1〜4:1がより好ましい。
これらは、通常、粉末状あるいは顆粒状の形状で市販されている物質である。本発明の瞬間冷却剤において、これらの水に溶解する際に吸熱作用を示す物質は、後述する金属含水塩及びその飽和水溶液の総重量に対して、通常、4:1〜1:4の比率、好ましくは2:1〜1:2の比率で用いることができる。
【0010】
本発明に用いる無機の金属含水塩(以下、含水塩という場合がある)は、結晶水等として水を含む金属塩であり、できるだけ多量の水を含むものが好ましい。このような塩としては、例えば硫酸ナトリウム10水塩、メタ珪酸ナトリウム9水塩、炭酸ナトリウム10水塩、燐酸2水素ナトリウム12水塩、水酸化ストロンチウム8水塩等が挙げられる。本発明においては、硫酸ナトリウム10水塩が特に好ましい。
【0011】
本発明ではこれらの無機の金属含水塩を、これら無機の金属含水塩の飽和水溶液とともに用いる。この場合金属含水塩間の空隙より多い量の飽和水溶液を用いることにより、外的な押圧力を加えると固体の無機の金属含水塩の飽和水溶液が区画部を押すため、易破壊性の区画部が容易に破壊される。これにより無機の金属含水塩及びその飽和水溶液が、水に溶解する際に吸熱作用を示す物質と混合して冷却が行われる。飽和水溶液が吸熱作用を示す物質を溶解し、わずかな時間差の後、多量に存在する溶解していない塩の結晶水が溶解に利用されるため、結晶水を利用した冷却剤の特徴である長い冷却時間を有した瞬間冷却剤を得ることが可能となる。
【0012】
本発明においては、無機の金属含水塩をその飽和溶液に含浸させた状態で袋の1室に充填した際、無機の金属含水塩の沈降上端面がその飽和水溶液の液面よりも下となるような比率とすることが好ましい。これにより押圧により液を移動させて区画部を容易に破壊させることができ、無機の金属含水塩の飽和水溶液は、予め無機の金属含水塩を水に溶解したものを用いてもよいが、2室より成る密閉された袋の1室に充填する際、無機の金属含水塩とともに水を加え、結果的に無機の金属含水塩がその飽和溶液に含浸する状態としてもよい。
【0013】
本発明の瞬間冷却剤の袋は、易破壊性の区画部により区画された2室よりなり、外圧により区画部が破壊されて1室となる構造である。具体的には、ポリエチレン製、又はポリエチレンラミネートアルミ製等のヒートシールが可能な材質の袋を、易剥離性の癒着隔壁で2室に分割した袋、あるいは、ポリエチレン製、又はポリエチレンラミネートアルミ製等のヒートシールが可能な材質の袋の中に、少なくも一辺が易破壊性の癒着隔壁を有する密閉された袋を入れた形態の袋が挙げられる。前者の場合、左右のどちらの1室に無機の金属含水塩及びその飽和水溶液を充填してもよいが、後者の場合は、少なくも一辺が易破壊性の区画部を有する袋に無機の金属含水塩及びその飽和水溶液を充填して密閉し、その袋とともに、水に溶解する際に吸熱作用を示す物質をポリエチレン製、又はポリエチレンラミネートアルミ製等のヒートシールが可能な材質の袋の中に充填して密閉する。易破壊性の区画部はヒートシール温度を低くし、あるいは非相溶性のフィルムをヒートシールして易剥離性の癒着隔壁とすることにより、形成することができる。
【0014】
低温になりすぎず、且つ、さらに長時間に渡って冷却効果を維持する瞬間冷却剤とするために、水に溶解する際に吸熱作用を示す物質の全量に対して30%〜95%、より好ましくは50%〜90%の量をポリビニルアルコール製等の水溶性フィルム袋内に充填し、2室より成る密閉された袋の無機の金属含水塩及びその飽和水溶液を充填した室でない側の1室に充填する。ポリビニルアルコール製水溶性フィルムは水に短時間で溶解するフィルムであるが、高濃度の塩を含有する水溶液中では溶解速度が極めて遅くなり、徐々に水分がポリビニルアルコール製の水溶性フィルム袋内に浸透する現象を利用するものである。
【0015】
本発明の瞬間冷却剤には、以上の成分以外に、必要に応じて増粘剤、担体、色素等をどちら側の区画に含有させても良い。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、キサンタンガム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。担体としては、クレー類、炭酸カルシウム、ベントナイト、タルク、珪藻土、ゼオライト、アタパルジャイト、石膏、陶石、ホワイトカーボン、軽石、木粉、真珠岩や黒曜石よりなるパーライト等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの成分は必要に応じて適量を配合することができる。
【0016】
本発明の瞬間冷却剤は、通常、全体の重量が50g〜1000gとなるように調製されるが、これに限定されるものではない。
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面により説明する。
図1〜図2は別の実施形態を示す透視図である。
【0018】
図1において瞬間冷却剤1は2枚のポリエチレン製やポリエチレンラミネートアルミ製のプラスチックフィルム製の袋2がヒートシール部3により密封状に形成され、中間部に低温ヒートシールによる易剥離性の癒着隔壁からなる易破壊性の区画部4により第1室5および第2室6に区画されている。第1室5には吸熱物質7が充填されている。第2室6には含水塩8およびその飽和水溶液9が充填されている。飽和水溶液9は含水塩8間の空隙よりも多い量であり、含水塩8の沈降上端面11は飽和水溶液の液面より下となっている。第1室5内の吸熱物質7の一部をポリビニルアルコール製の水溶性フィルムからなる可溶性袋12内に収容する。
【0019】
上記の瞬間冷却剤1は第2室6側を握り、あるいは手で叩くことにより、飽和水溶液9が区画部4を破壊して第1室5に流入し、この飽和水溶液に吸熱物質7が溶解する。そのときの吸熱により冷却が開始し、わずかな時間差の後、多量に存在する含水塩8の結晶水が放出されて、吸熱物質7の溶解が起こり、冷却効果が持続する。第1室5内の吸熱物質7の一部をポリビニルアルコール製の水溶性フィルムからなる可溶性袋12内に収容することにより、可溶性袋12の溶解に時間がかかるため、冷却速度が遅くなり、冷却温度が低くなりすぎない。
【0020】
図2では、瞬間冷却剤1は全体が第1室5となるようにヒートシール部3で密封された袋2内に、三辺をヒートシール部3aで形成され、一辺が易破壊性の区画部4とされた別の袋2aが挿入されている。袋2aは第2室6aが形成され、含水塩8および飽和水溶液9が図1の第2室6と同様に充填されている。第1室5には吸熱物質7が充填され、その一部を図1の場合と同様にポリビニルアルコール製の水溶性フィルムからなる可溶性袋12内に収容するが、図示は省略されている。
【0021】
図2の瞬間冷却剤1は袋2aがある部分を瞬間冷却剤1の外側より握り、あるいは叩くことにより、飽和水溶液を押圧して区画部4を破壊し、図1の場合と同様に冷却を行うことができる。この場合もポリビニルアルコール製の水溶性フィルムからなる可溶性の袋に吸熱物質7の一部を収容することにより冷却温度を低くすることができる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び試験例にてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0023】
参考例1
燐酸2水素ナトリウム12水塩 130g、及びその飽和水溶液50gを、一辺が剥離可能な癒着隔壁を有したポリエチレン製の袋に入れ、ヒートシールして密閉した。本袋内において、燐酸2水素ナトリウム12水塩の沈降上端面はその飽和水溶液の液面よりも下にあった。本袋と燐酸一アンモニウム 150gをポリエチレン製の袋に入れ、ヒートシールして密閉し、瞬間冷却剤を得た。得られた瞬間冷却剤は、手で叩くことにより、燐酸2水素ナトリウム12水塩とその飽和水溶液が包装されている袋の剥離可能な癒着隔壁が壊れ、燐酸一アンモニウムと混合可能な状態となり、手でよく揉み解して使用する。
【0024】
参考例2
硫酸ナトリウム10水塩130g、及びその飽和水溶液60gを、一辺が剥離可能な癒着隔壁を有したポリエチレン製の袋に入れ、ヒートシールして密閉した。本袋内において、硫酸ナトリウム10水塩の沈降上端面はその飽和水溶液の液面よりも下にあった。本袋と硝酸アンモニウム 150gをポリエチレン製の袋に入れ、ヒートシールして密閉し、易破壊性の隔壁により区画された瞬間冷却剤を得た。得られた瞬間冷却剤は、手で叩くことにより、硫酸ナトリウム10水塩とその飽和水溶液が包装されている袋の剥離可能な癒着隔壁が壊れ、硝酸アンモニウムと混合可能な状態となり、手でよく揉み解して使用する。
【0025】
参考例3
剥離可能な癒着隔壁で2室に分割されたポリエチレン製の袋の1室に硫酸ナトリウム10水塩 130g、及びその飽和水溶液60gを入れ、もう1室には硝酸アンモニウム100g、及び尿素50gを入れ、ヒートシールして密閉し、瞬間冷却剤を得た。本袋内において、硫酸ナトリウム10水塩の沈降上端面はその飽和水溶液の液面よりも下にあった。得られた瞬間冷却剤は、硫酸ナトリウム10水塩とその飽和水溶液が包装されている側を手で強く握ることで、2室に分割している剥離可能な癒着隔壁が壊れ、硝酸アンモニウム及び尿素と混合可能な状態となり、手でよく揉み解して使用する。
【0026】
実施例1
剥離可能な癒着隔壁で2室に分割されたポリエチレン製の袋の1室に硫酸ナトリウム10水塩 130g、及びその飽和水溶液60gを入れ、もう1室には硝酸アンモニウム 50g、及び尿素25gと、ポリビニルアルコール製水溶性フィルム(ハイセロンS−600:日本合成化学工業株式会社製、膜厚40μm)に硝酸アンモニウム50g、及び尿素25gを入れて密閉した袋を入れ、ヒートシールして密閉し、本発明の瞬間冷却剤を得た。本袋内において、硫酸ナトリウム10水塩の沈降上端面はその飽和水溶液の液面よりも下にあった。得られた瞬間冷却剤は、硫酸ナトリウム10水塩とその飽和水溶液が包装されている側を手で強く握ることで、2室に分割している剥離可能な癒着隔壁が壊れ、硝酸アンモニウム及び尿素、硝酸アンモニウム及び尿素のポリビニルアルコール製水溶性フィルムの袋と混合可能な状態となり、手でよく揉み解して使用する。
【0027】
実施例2
剥離可能な癒着隔壁で2室に分割されたポリエチレン製の袋の1室に硫酸ナトリウム10水塩 130g、及びその飽和水溶液60gを入れ、もう1室には硝酸アンモニウム 20g、及び尿素10gと、ポリビニルアルコール製水溶性フィルム(ハイセロンS−600:日本合成化学工業株式会社製、膜厚40μm)に硝酸アンモニウム80g、及び尿素40gを入れて密閉した袋を入れ、ヒートシールして密閉し、本発明の瞬間冷却剤を得た。本袋内において、硫酸ナトリウム10水塩の沈降上端面はその飽和水溶液の液面よりも下にあった。得られた瞬間冷却剤は、硫酸ナトリウム10水塩とその飽和水溶液が包装されている側を手で強く握ることで、2室に分割している剥離可能な癒着隔壁が壊れ、硝酸アンモニウム及び尿素、硝酸アンモニウム及び尿素のポリビニルアルコール製水溶性フィルムの袋と混合可能な状態となり、手でよく揉み解して使用する。
【0028】
比較例1
剥離可能な癒着隔壁で2室に分割されたポリエチレン製の袋の1室に水150gを入れ、もう1室には硝酸アンモニウム 100g、及び尿素50gを入れ、ヒートシールして密閉し、瞬間冷却剤を得た。得られた瞬間冷却剤は、水が包装されている側を手で強く握ることで、2室に分割している剥離可能な癒着隔壁が壊れ、硝酸アンモニウム及び尿素と混合可能な状態となり、手でよく揉み解して使用する。
【0029】
比較例2
剥離可能な癒着隔壁で2室に分割されたポリエチレン製の袋の1室に硫酸ナトリウム10水塩 130gを入れ、もう1室には硝酸アンモニウム 100g、及び尿素50gを入れ、ヒートシールして密閉し、瞬間冷却剤を得た。得られた瞬間冷却剤は、硫酸ナトリウム10水塩が包装されている側を手で強く握ったり、叩いて衝撃を与えたが、2室に分割している剥離可能な癒着隔壁は壊れず、硫酸ナトリウム10水塩と硝酸アンモニウム及び尿素を混合可能な状態とすることができなかった。
【0030】
比較例3
剥離可能な癒着隔壁で2室に分割されたポリエチレン製の袋の1室に硫酸ナトリウム10水塩 130g、及びその飽和水溶液60gを入れ、もう1室には硝酸アンモニウム 20g、及び尿素10gと、ビニール袋に硝酸アンモニウム80g、及び尿素40gを入れ、熱した針金を用いて直系1mmの穴を10個開けた袋を入れ、ヒートシールして密閉し、瞬間冷却剤を得た。本袋内において、硫酸ナトリウム10水塩の沈降上端面はその飽和水溶液の液面よりも下にあった。得られた瞬間冷却剤は、硫酸ナトリウム10水塩とその飽和水溶液が包装されている側を手で強く握ることで、2室に分割している剥離可能な癒着隔壁が壊れ、硝酸アンモニウム及び尿素、硝酸アンモニウム及び尿素のビニール包装袋と混合可能な状態となり、手でよく揉み解して使用する。
【0031】
試験例1(冷却性能試験−1)
参考例1〜3および比較例1の瞬間冷却剤を使用状態とし、9リットル容の発泡スチロール製保温庫に入れ、5分毎に冷却剤の温度を測定した。又、対照として、市販の蓄冷剤300gを家庭用冷蔵庫の冷凍室で1日冷却したものについても同様に測定した。結果を図3に示す。図3より、参考例1〜3は比較例1及び市販の蓄冷剤と比較し、長時間の冷却能を有していた。
【0032】
試験例2(冷却性能試験−2)
参考例3、実施例1〜2および比較例3の瞬間冷却剤を使用状態とし、室温条件下、10分毎に冷却剤の温度を測定した。結果を図4に示す。図4より、参考例3と比較して実施例1〜2は冷却最低温度は高いものの、さらに長時間の冷却能を有した。一方、比較例3は実施例1〜2と比較し、短時間で温度が上昇した。
【0033】
試験例3(冷却性能試験−3)
水温を37.5℃に調整した恒温水槽に、アルミ製のバットを浮かべ、そこに実施例2の瞬間冷却剤を置き、アルミ製バットと瞬間冷却剤の間の温度を5分毎に測定した。又、対照として、市販の解熱用ジェル冷却シートについても同様に測定した。結果を図5に示す。図5より、対照の解熱用ジェル冷却シートと比較して、実施例2は長時間の冷却能を有した。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、易破壊性の区画部により区画された2室より成る密閉された袋の1室に、水に溶解する際に吸熱作用を示す物質を充填し、他の1室には無機の金属含水塩及びその飽和水溶液を充填したので、水に溶解する際に吸熱作用を示す物質と、無機の金属含水塩を使用時に混合する瞬間冷却剤において、外圧により両者を隔てる区画部を破壊させ、両者を容易に混合することが可能であり、長時間にわたって冷却効果を維持することができ、無機の金属含水塩を使用する瞬間冷却剤を実用的な形態とすることができる。また水に溶解する際に吸熱作用を示す物質の一部を水溶性フィルムに充填したので、低温になりすぎず、且つ、さらに長時間にわたって冷却効果を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態を示す透視図である。
【図2】別の実施形態を示す透視図である。
【図3】試験例1の試験結果のグラフである。
【図4】試験例2の試験結果のグラフである。
【図5】試験例3の試験結果のグラフである。
【符号の説明】
1 瞬間冷却剤
2,2a 袋
3,3a ヒートシール部
4 区画部
5 第1室
6,6a 第2室
7 吸熱物質
8 含水塩
9 飽和水溶液
11 含水塩8の沈降上端面
12 ポリビニルアルコール製袋
Claims (4)
- 易破壊性の区画部により区画された2室より成る密閉された袋の1室に、水に溶解する際に吸熱作用を示す物質を、全量の30%〜95%を水溶性フィルム袋内に充填した状態、残部を水溶性フィルム袋内に充填しない状態で充填し、
他の1室には無機の金属含水塩及びその飽和水溶液を充填して成り、
外的な圧力により区画部が壊れ、無機の金属含水塩及びその飽和水溶液が、水に溶解する際に吸熱作用を示す物質と混合する構造を有する瞬間冷却剤。 - 水に溶解する際に吸熱作用を示す物質が、硝酸アンモニウム、または硝酸アンモニウム及び尿素、無機の金属含水塩が硫酸ナトリウム10水塩である請求項1記載の瞬間冷却剤。
- 無機の金属含水塩の沈降上端面がその飽和水溶液の液面よりも下となるように、無機の金属含水塩とその飽和水溶液を1室に充填し、押圧により区画部が破壊するように構成した請求項1または2項記載の瞬間冷却剤。
- 水溶性フィルム袋がポリビニルアルコール製のものである請求項1ないし3のいずれかに記載の瞬間冷却剤。
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